2018年度法改正・報酬改定、財務省がメッセージ
2018年度介護保険法改正・報酬改定の本格議論開始に先駆けて開催された“財政制度文科会(4月20日開催)"。
ここには同省の、次期改正・改定に向けたスタンスが明確に表れています。
国の金庫番を担う財務省は、次期法改正・報酬改定にあたり、どのようなスタンスで臨もうとしているのか?今月のニュースレターでは、財務省が明示した7つの論点について、内容を確認してまいります。
「財政制度審議会」で示された7つの論点とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。先ずは一つ目の論点についてです。
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【改革の方向性案1】
前回改定の影響や介護サービス事業者の経営状況を検証するに当たっては、前回改定の趣旨を踏まえつつ、きめ細かな分析を行うとともに、平成30年度介護報酬改定に向けて、引き続き適正化・効率化すべきことは実施しつつ、質の高いサービス提供を促す改定を検討すべき。
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「介護サービス事業者の収支状況を踏まえた適正化(△4.48%)」「介護人材確保のための処遇改善加算の拡充(+1.65%)」「質の高いサービスを提供する事業者に対する加算(+0.56%)」等、基礎報酬を下げつつも、良質なサービスの提供に努める事業者には一定程度のリカバリーの余地を残す形となった、前回の介護保険法改正。改定前後における介護サービス事業者の収支状況(※最下部の「資料1:主な介護サービスの収支差率(平成27年度)」をご覧ください)を見る限り、結果として多くの介護サービスで収支差率が低下しているものの、プラスを維持しているサービスは未だ多く、特に、訪問、通所などの在宅サービスの収支差率は比較的高水準にとどまっている状況にある、との認識を財務省は示しています。
そのような環境下、次期改定においても引き続き、「良質なサービスを追求しようとする(≒積極的に加算取得の動きを行う)事業者」とそうでない事業者において、報酬単価の“落差"がうまれる仕組みを検討していくことは変わらないスタンスだと思われます。また、2016年に改定された「改革工程表」においては、「生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和やそれに応じた報酬の設定」のほか、「通所介護などその他の給付の適正化」についても、「関係審議具体的内容を検討し、平成30年介護報酬改定で対応」との文言が明記されています。
以上の様な状況を勘案する限り、特に訪問介護・通所介護の次期改定は、更に厳しさが増すもの、と理解しておくのが賢明と言えるでしょう。その流れから、通所介護に関する具体的な視点が明示されているのが次の「案2」です。
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【改革の方向性案2】
機能訓練などの自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービス提供がほとんど行われていないような場合には、事業所の規模にかかわらず、基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき。
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上記改革案は、資料2(※最下部の「資料2:通所介護の事業所規模別比較」をご覧ください)がその根拠になっています。このデータを見る限り、確かに個別機能訓練加算の取得率は規模が小さくなるにつれて低くなる、という傾向にはあるようです。
上記が実行されるとなると、個別機能訓練加算を取得していない小規模デイの事業者の経営は益々厳しくなる可能性が高くなるのは間違いありません。該当する事業者としては、現時点から対応方法について検討を進めておかれることを強くおススメする次第です。
では、続いて「案3」を見てまいりましょう。
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【改革の方向性案3】
大阪府の調査を参考にしつつ、「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型有料老人ホーム」といった高齢者向けの住まいを中心に、必要以上に在宅サービスの提供がなされていないか、平成30年度介護報酬改定に向けて実態調査を行った上で、給付の適正化に向けた介護報酬上の対応を検討すべき。
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(※最下部の「資料3:受給者1人当たりのサービス利用単位数の比較(1ヶ月当たり)」をご覧ください)
仮に上記データが現状を的確に表しているとするならば、大阪府のサ高住・住宅型有料老人ホームにおける利用単位消化率は確かに「異常値」と言ってもおかしくなようなレベルで推移しているように思われます。仮にこの実態が、居住系サービス事業の収支を成立させるための「囲い込み」だと判断される場合、ここにメスが入るのは「止む無し」なのではないでしょうか。今後、国としてどのような打ち手を具体的に提示していくのか?特に居住系サービスを展開されている事業者の方は、今後の議論の行く末をキャッチアップしておく必要があるでしょう。
続いて、「案4」です。
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【改革の方向性案4】
「自立支援・重度化防止に向けた介護」を促す介護報酬上のインセンティブについては、例えば、利用者の要介護度の改善度合い等のアウトカムに応じて、事業所ごとに、介護報酬のメリハリ付けを行う方向で検討を進めるべき。その際、クリームスキミング(改善見込みのある利用者の選別)を回避する必要性にも留意し、アウトカム評価のみならず、例えば、専門職による機能訓練の実施といったプロセス評価等を組み合わせることを検討すべき。
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こちらは上記「案2」とも類似する視点である、と理解して差し支えないでしょう。重ねての確認となりますが、国は「成果(=要介護度の維持・改善)」を上げる事業者とそうでない事業者に対する報酬上の「メリハリ」を効かせていく考えを強めていることをあらためて確認しておきましょう。続いては「案5」です。
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【改革の方向性案5】
介護ロボットの活用については、予算事業を有効活用しつつ、導入効果を分析・検証し、人員・設備基準の緩和につなげることで、生産性の向上を図り、介護人材不足にも対応していく観点から検討を進めるべき。
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国策的な視点も含め、益々勢いが増してくる介護ロボット。「見守り」「移動支援」「排せつ支援」「入浴支援」「移乗介助」の5分野を中心に今後、様々な実証実験が展開されると思います。現場視点で見るとまだまだ疑問符を付けたくなる状況が多い介護ロボットですが、「未来には必要不可欠」という視座のもと、国の補助・基準緩和等を有効活用しつつ、我々事業者としても積極姿勢で「育てていく」発想を持つ事が重要だと言えそうです。
最後、「案6」「案7」については、主に保険者に対する改革案なので、参照する程度で十分だと思います。
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【改革の方向性案6】
都道府県・市町村におけるデータ分析力を高め、需要を適切に見込みながら計画的な制度運営に努めるとともに、供給が需要を生む構造を排除する観点から、ケアプランの検証等を通じて、真に必要なサービスの利用を徹底すべき。
【改革の方向性案7】
市町村(保険者)による介護費の適正化に向けたインセンティブを強化するため、具体的かつ客観的な成果指標(例:年齢調整後一人当たり介護費の水準や低下率等)に応じて、調整交付金(介護給付費の5%)の一部を傾斜配分する枠組を導入すべき。
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情報を“咀嚼"し、前倒しで“思考の準備(備え)"を
本格議論に向けて正に今、“ゴングが鳴った"状態に突入したとも言える、次期介護保険法改正・報酬改定。上記改革案については今後、時間の経過と共に、更に内容が煮詰められていくものと思いますが、現場の経営者としては(実行の際は一定の投資が必要となる場合もあるかもしれない事を含め)、早め早めに頭の中で“PDCA"を回しておく事が重要だと思われます。
「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。
私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。