施設・病院の「働き方改革」
「働き方改革」である。
病院・施設経営の優良格差が明確になってきた。
特に施設経営の利益の落ち込みが大きい。その主な要因は
人手不足で長時間労働の是正、所定労働時間の短縮、
単純労働職務の賃上げなどで急激な労働力人口減少の中
雇用を中心とした人事戦略の見直しは経営にとつて急務である。
また長時間労働の是正は仕事の抜本的な見直し、
仕事の手順、切捨て、改善、改革を意味している。
とりわけ経営にとって仕事と育児・介護等が両立する働く
環境づくりは社会的責任といえるが、生産性の向上がない
状況での経営負担だけでは働き方改革は成就しない。
1、モチベーションの高い企業(病院、施設)
モチベーションが高い企業(病院・施設)は当然ながら
人事制度もきめ細やかに働きやすい政策をあれこれと実施している。
昨今、良く耳にするワークライスバランス(仕事と生活の調和)
は病院、施設においては全く他人ごとのようにしか感じていない
経営者も多いように感じる。
「働きやすい職場には当然に人材が集まる。子育てや親の介護が
あるので2時間、3時間の短時間勤務だったら、働けると言う
看護師や介護士も大勢いる。
「いいじゃないですか、…そう言う窓口の広い採用だったら、
人材は集まりますよ。…なんでもありは現在のニーズです。
…病院・施設を幅広く経営するA理事長の言葉である。
このA理事長の病院、施設では看護師、介護士不足はないという。
働き方改革とは経営者および働き手双方にイノベーションを求めているのである。
2、自己職務遂行能力の管理責任。…
まず、経営側のイノベーションについていて考えてみよう。
嘗てのマネジメントの考え方には企業存続のためには個人の
論理は徹底的に排除する個人犠牲の考え方があつた。
企業の存続がなければ、個人のワークライフバランスなどは
成立しないと考える企業主義絶対論であったといえよう。
今の時代感覚とは随分と違う。職員が元気であれば組織も
元気になる。
組織が生き残るための重要で不可欠な条件は職員一人ひとりの
健康・健全なパワーを生み出す「元気」にある。
「元気」は組織生き残りのためのパワーでもある。
そこで、人事パーソンのミッションを一言で言えば、
職員の良質なパワーを120%発揮させる働き易い職場環境づくりと
そのしくみを作りにあると筆者は思う。人事パーソンは職員の
「元気」を作る仕掛け人でもある。
一方、働き手に求められる自己職務遂行の管理責任は
当然ながら自分にある。常日頃から自己の健康を保ち、
持てる
能力をリズム良く十二分に発揮することが求められる。
そのためには自分の「元気」のツボをしかりと知って
おかなければならない。
元気な組織では、院内外のルールや良い習慣を
各メンバーが良く遵守している。また、適材適所のジョブ
ローテーションを積極的に受け入れ、組織のマンネリ化を
排除している。
組織はシンプルで余分な階層やカベが少ない。コミュニ
ケーションはフェイス・フェイスで、トップや部長の方針
が素早く末端のスタッフまで浸透し、現場の情報や提案がタイムリーに届く。
各スタッフは目標達成のためにプロセス(行動)評価を
重視して働いている。難しい問題が起きたときには、
ポジテイブアクションが当たり前。「難しい…、できない。
私には無理…」ではなく、
「どうしたら、できるか…できる方法や手段を徹底して考えている」知恵を絞る習慣が身についている、などである。
例えば経団連の榊原定征会長は働き方改革の柱として
「脱時間給制度」¹を提言しているが、この問題解決は
労使双方の共通課題でもある。
どのように解決をするかである。
この問題を考える時、病院、施設では、まず看護師、
介護士の活性化を考える筈だ。例えば、看護師業務の実態把握
と管理監督者役割業務の遂行度の確認が必要になる。
役職者と一般の職員では仕事は当然に違ってくる。
その仕事明細は役割・職能要件書に明記されている。
未整備の所は至急総力を挙げて作成することが必要だ。これ等、
要件書(能力開発基準ともいう)作りは管理者もスタッフも
一緒になって、わいわい、がやがや言いながら、まず、
課業(一人分のやる仕事のかたまり、分けると効率が悪くなり、
やりにくい仕事である)を洗い出し、次に、その課業を遂行
するために必要な習熟要件(その課業はどんなレベルで
出来なければならないのか)と修得要件(その仕事を習熟要件
に書かれた期待のレベルで出来るためにはどのような勉強をしなければならないのか、知識・技術・技能)の明細書を作成する。
この要件書は職種別、等級別(能力ランク)に「部門別
役割・職能要件書」としてまとめる。すなわち、看護師の
課業の一例を上げれば、入院・入所時の対応、看護計画の
立案・実施、退院・退所時の対応、身体清潔の援助、診療・治療
の介助、救急時患者・急変時患者対応などである。
管理監督者の役割業務(権限と責任を持つ人達の仕事)は
経営方針の伝達、部門方針の策定、部下の掌握と指導育成、
人事考課・目標面接の実施、部門予算の作成と実績把握など
であり、組織目標達成に向けて部下を統括、日常業務を
推進する。
目標達成感は適切な目標の設定とその達成によって感じる
ことが出来る。従って目標達成のプロセスを可視化し、
そのプロセスの努力を分析することで、職員一人一人の
成長実感を作り上げる仕組み作りも求められている。