介護業界における人事評価制度とは
処遇改善加算取得にキャリアパス要件が規定されたことから、
人事評価に関する相談が増えており、評価に関する制度面、
運用面に課題を抱えている事業所が、非常に多いことを実感
します。
ご参考までに人事評価に関する相談内容の一例を下記に紹介
いたします。
【経営者・管理者の方から】
・外部コンサルタントにお願いし、人事評価は作ったけれど・・・一般企業と
同じ評価内容になっているので、介護の職場にはなんとなく
しっくりこない。
・人事評価自体に信頼感がない
・人事評価が「給与を決める為の手段」という認識で評価の
ための評価になっている。社員のヤル気やモチベーションを
促進するものにはなっていない
・マイナス評価に該当する職員が本当はいた筈なのに、ほとんど
マイナス評価は出ず、プラス評価の職員と現状維持職員ばかり
になり、「横一線」から抜け出せない
【職員からの意見】
一方で、下記は職員側から見て現行実施している人事評価に
対し、どのように思っているかをヒアリングしたものです。
(社会福祉法人の職員に実施)
・頑張っても怠けていても同じ評価はおかしいのではないか
・自分の仕事が公平・公正に評価され給与に反映されて
いないのではないか。
・評価の中身をおしえてほしい。
・いくら頑張っても認めてもらえないのでは。
・人を育成する仕組みになっていない
・評価のための評価になっていて意味がない、時間の無駄。
ところで、人事評価制度を導入する目的とは、いったい何でしょうか?経営者からは、処遇(給与)を決める為の物差し、処遇改善加算のキャリアパス要件を満たすため、達成感と働きがいのある職場を作る為、などの御意見をよく伺います。
もちろん、それらは大切な要素ではありますが、その先にある最終的な目的は「人材の確保と育成」にあると筆者は考えます。
特に介護業界においては、人材の「質」と「量」で、事業運営の全てが決まってしまう、といっても過言ではないほど重要な課題です。
法人幹部の方々には、まず、人事評価制度導入の目的を法人内で
共有していただきたいと思います。
なぜなら、それにより評価内容、方法、ツールのあり方など、
評価制度の中身が大きく変わってくるからです。
例えば「職員の優秀層の選抜」を目的に行う人事評価制度と、
「人材育成」を目的に行う人事評価では、その評価内容・方法は
大きく変わってくるはずです。経営陣、管理者層の方々は、
今一度、この視点で現状の評価制度を振り返ってみて頂きたいと
思います。
一方で、職員の目線から見てみると、自分の仕事に良し悪しの
判定基準が存在するのであれば、具体的に提示してほしいと
思うでしょう。少なくとも行っている職務は正しく認めてほしいし、
仮にそれが「未達」と判断される場合においても、客観的な
根拠に基づく指摘を受けたいものです。
さらに、今後どのような仕事の仕方や、技術、知識を身に
つければ良いのかを知り、習得の機会を得てそれが出来るように
なりたい。そして職務能力が向上し、期待される役割が上がって
いくに伴い、処遇も上がっていってほしい。
こうした職員の思いに応えるのが、「人を育てる」人事評価制度
なのです。