保育
A 採用までのスピード感と内定後のフォローが大事です。
面接から内定までの間をあけない
応募者は一般的な企業の求職者ほど就職先をさほど慎重に選んでいないのも実態ではないかと思います。もちろん「この職場でどうしても働きたい」という人は少なく、「ここを断って次でもおとされたらどうしよう」という不安もあるため、最初に内定をもらえたところの就職を決める傾向があります。
したがって「良い人材だ」と思ったらできるだけ早く結論を出すことが大事です。優秀な人材はどこからでも内定をもらえます。内定まで1週間程度空いた場合、同時に受けた他社から内定がでたらそちらに決めたしまう可能性は高まります。良い人材と判断したらできれば面接の翌日には内定を入れることが望ましいと思います。ただ、判断が難しい場合や、候補者が複数いる場合には、判断を留保する場合もあります。その場合でも1週間後には結論を出した方がよいと思います。面接から2週間も経過してしまうと、本人も「歓迎されていない」と感じ、就職する意欲が薄れてしまいます。
こちらも見られていることを忘れずに
面接する側も応募者から「見られている」という意識を持つ必要があります。他院を受けている応募者は、当然そこと比較し、自分なりに判断をしているわけで、いい印象を持たれなければ辞退されます。
私も面接に立ち会わせいただく機会がありますが、こちらの要望を伝えすぎてしまうケースがよく見られます。「うちに来たら、本来業務はもちろんだけど、院長秘書、掃除、診察の介助を幅広くおこなってほしい」などと一方的に並べ立ててしまうと、私には務まらないかも、と思って不安に感じてしまいます。要望は伝える必要がありますが「忙しくてもスタッフの助け合いで頑張っています」というように工夫して伝えることをお勧めします。
人は自分を求めてくれるところに行きたいもの
人は自分を必要としてくれているところに行きたいものです。内定の際にも「あなたを採用します」という一言でなく。「あなたのお人柄が当法人には合うと思いました。全員一致で○○さんに来ていただきたいという結論が出ましたので、ぜひ当社に来てください」と伝えた方は応募者の心に響きます。内定後も「あなたを必要としている」というメッセージを伝えることが大切です。入職までに時間が空くようでしたら、スタッフとの顔合わせの時間などを持っておくことも大切です。途中でユニフォームの準備などの連絡をいれたり「入職をまっている」というメッセージを間接的に伝えることも大切です。
株式会社コドモンが提供する職員間連絡アプリ「せんせいトーク」が、正式リリースからわずか2か月で全国700施設以上に導入され、利用職員数1万人を突破しました。従来の口頭・電話・紙メモや個人アプリ利用の課題(伝達ミス・情報漏洩リスクなど)を解消し、緊急連絡やシフト調整、ヒヤリハット報告まで一元化。パート含む全員への一斉連絡も可能で、既読確認や研修動画機能も搭載。導入施設では業務削減や職場雰囲気改善の効果が報告されています。
■ 人事担当者にとっての学び
保育現場の「連絡業務効率化」は職員の離職防止にも直結します。情報伝達の不備がストレスや人間関係悪化を招く中、業務専用ツールの導入は心理的負担軽減につながります。また、パート職員を含めた公平な情報共有は、チーム一体感を生み、採用後の定着率を高めるヒントになります。
■ 自分の事業所で検討できること
・既存のLINEやメールを業務連絡から切り離す
→ 私用アプリ混在を防ぐ
・職員全員がアクセスできる専用連絡ツールを導入
→ パート・短時間勤務者も含めた公平な情報共有
・研修動画やマニュアルの一元化
→ 新人教育の効率化と品質維持
・導入後は定量効果を測定
→ 業務削減時間や職員満足度を数値化し、人事戦略の改善に活用
A 本人の緊急連絡先や実家に連絡をとりましょう。
身元保証人の連絡先や緊急連絡先を2,3か所押さえておく。
突然出勤せず、連絡もつかない場合は、事故・事件に巻き込まれて出勤できない万が一の可能性を考える必要があるでしょう。何度か連絡しても連絡がつかない場合には、直接居場所まで出向いて無事を確かめることも必要かもしれません。本人と連絡がつかないときの連絡先を把握しておくために、契約の段階で身元保証をとるのも一つの方法です。連絡がつかないときは身元保証人に連絡し「〇〇さんと連絡がつかないのですがご存じですか」と伝えます。身元保証人そのほかの関係者から本人が無事であることが判明すれば、突然来なくなっている状況を伝え、本人から事業所に連絡してもらうようにします。賃金や退職手続きはその後に検討します。退職するにしても、届け出や返還させるものなどの手続きがあるので、いずれにしても一度は職場に来てもらうようにしましょう。もし
何らかの理由で職場に来ない場合には、給与を振り込みでなく直接職場に取りに来るようにさせる方法もあります。毎月の給料は口座に振り込むことが多いのですが、手続きが終わっていない場合には直接現金を手渡しするということです。なおこの場合には就業規則にあらかじめ記載しておくとも大切です。とにかく一度は出社させることで退社手続きや挨拶など済ませることができます。
一方、だれにも連絡がつかないような場合には、現住所まで出向く必要もあるでしょう。自宅にもいない様子であれば、近隣に人に様子を聞き、伝言を頼んだり、直接メモを残しておくなどして、連絡するよう促します。
自動的に退職とする規定を設ける。
突然出勤しなくなって行方不明になってしまった場合は、就業規則に「職員が行方不明となり無断欠勤が続いた場合には退職とする」などと決めておくことで、自動的に退職の扱いとするが可能になります。
記載例)第〇条 職員が次の項目該当する場合には退職とする。
・職員が行方が不明となり、1か月以上連絡が取れないこと」
以上
世の中になくてはならない仕事でありながら、業務過多や給料の少なさなど課題が多いとされる保育士。実際にこの職に従事する人たちは、どんな思いや悩みを抱えているのだろうか?
日本生命保険はこのほど、20歳から59歳の保育士1,521名、保育士を除く20歳から59歳の一般社員 516名を対象に「保育士の働き方実態大規模調査」を実施し、その結果を発表した。
1. 保育士という仕事の魅力
保育士は、使命感とやりがいを実感できる仕事
「自分の仕事をどのように捉えているか」という問いには、「子どもの頃や学生の頃からこの仕事に就きたいと考えていた」(31.8%)、「誰かの役に立っていると実感できる」(30.4%)、「長く続けたいと思っている」(29.5%)、「社会的意義の高い仕事だと思う」(26.1%)といった回答が多く寄せられた。
また、一般社員比でも「子どもの頃や学生の頃からこの仕事に就きたいと考えていた」(+29.5pt)、「誰かの役に立っていると実感できる」(+19.5pt)、「社会的意義の高い仕事だと思う」(+16.8pt)といった項目で大きな差が見られる。これらの結果から、多くの現役保育士が幼い頃からの憧れを叶え、社会に貢献しているという実感や、自己成長を感じながら前向きに働いている様子がうかがえる。
全14項目中13項目の値が、就業後に上昇
就業前後の比較では、全14項目中13項目で数値が上昇。中でも「自分自身の学びにつながる」(+9.8pt)、「自分自身の成長を実感できる」(+6.2pt)、「自分の経験やスキルが生かせる」(15.0%→22.9%)、「いつも助けてくれる同僚がいる」(+4.2pt)といった項目が大きく伸びている。この結果からは、保育士という仕事が、同僚からのサポートを実感しながら、自身の成長に手応えを感じられる仕事であることが読み取れる。
保育士は「仕事とプライベートのバランスが取りやすい」
「保育士の仕事に対して思うこと」を尋ねたところ、「仕事とプライベートのバランスが取れている」(68.8%)の数値が高くなっていることから、多くの現役保育士が生活との両立を実感していることがわかる。また、「自分は職場で役に立っていると思う」(67.3%)、「仕事を通じて成長や達成感を実感できている」(66.2%)、「自分の強みや経験を仕事に生かせている」(65.3%)といった声も多く見られることから、保育士という仕事は、自らの成長や貢献を実感しやすい仕事であると考えられる。
やりがいや、人間関係の良好さが働き続ける原動力
保育士を辞めたいと思ったことがない理由としては、「職場の人間関係が良好で居心地が良いため」(20.4%)、「仕事とプライベートの時間を両立できているため」(19.5%)、「現在の仕事に強いやりがいを感じているため」と「通勤や勤務地が便利で負担が少ないため」(同率15.9%)といった回答が上位となった。
一般社員比では、「現在の仕事に強いやりがいを感じているため」(+12.3pt)や「職場の人間関係が良好で居心地が良いため」(+9.7pt)といった項目で、大きな差が見られる。
これらの結果から、多くの現役保育士が自分の成長や社会への貢献を実感しながら前向きに働いていること、そして現場で得られる学びや同僚とのつながりが、働くことの原動力となっていることがうかがえる。
元保育士と潜在保育士の4割以上が、保育士への復帰・挑戦に意欲的
元保育士と潜在保育士を対象に、短時間勤務であれば保育士として働きたいかと尋ねたところ、元保育士の42.9%が「働きたい」(「そう思う」16.0% +「ややそう思う」26.9%)と回答。保育士という仕事が経験者にとって、柔軟な働き方ができる環境があればまた戻りたいと思えるだけの価値と魅力を持つ仕事であることがわかる。
さらに、潜在保育士でも46.0%が「働きたい」(「そう思う」10.0% +「ややそう思う」36.0%)と回答しており、保育士免許を取得した多くの人が「資格を生かして現場で働きたい」という意欲を持っていることも明らかとなった。
2. 保育士を続けるうえでの課題
保育士の約半数が「辞めたいと思ったことがある」
現役保育士の51.5%が「辞めたいと思ったことがある」と回答。その理由として「給料が低い/業務内容に見合った報酬が得られない」(38.8%)や「人手不足で常に忙しい」(32.0%)、「求められることが重くて精神的な負担が大きい」(29.4%)などの声が多く寄せられた。
特に「求められることが重くて精神的な負担が大きい」(+18.8pt)、「人手不足で常に忙しい」(+18.4pt)、「業務量が多すぎて負担が大きい」(+15.6pt)は一般社員との差も大きく、慢性的な人材不足が過重労働やストレスにつながり、保育士の離職意向を高めていることが考えられる。
肉体的な負荷軽減策に加え、精神的な負荷の軽減策も検討必須
仕事の負担感に関する調査では、「からだを大変よく使う仕事である」(83.3%)、「肉体的な疲労感が蓄積しやすい」(81.4%)が突出して多い結果となった。一般社員比でも、「からだを大変よく使う仕事である」(+58.9pt)、「肉体的な疲労感が蓄積しやすい」(+46.3pt)の項目で大きな差が見られることから、肉体的な負荷を感じている現役保育士が多いことがわかる。
また、「かなり注意・集中を必要とする仕事である」(+29.2pt)、「物事の判断や決定する難しさ・責任の重さがある」(+28.5pt)、「プレッシャーや緊張感がある状況が続いている」(+24.5pt)といった精神面に関する項目でも、一般社員との比較で大きな差が確認された。負担は肉体面だけにとどまらず、精神面にも及んでいることがうかがえる。
<調査概要>
調査タイトル:保育士の働き方実態大規模調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2025年6月13日(金)~ 6月18日(水)
回答者:
(1) 20歳から59歳の保育士 1,521名(現役保育士767名、元保育士543名、潜在保育士211名)
元保育士:保育士を仕事としてやっていたが、今は保育士として勤務していない方
潜在保育士:保育士資格を持っているが、保育士として勤務したことがない方
(2) 保育士を除く20歳から59歳の一般社員 516名
一般社員:会社員・公務員であり、以下を職種としている人
(総務/人事/経営・経営企画/経理・財務/広報・宣伝/事務・アシスタント/受付・秘書)
出典元:日本生命保険相互会社
採用内定者にメンタル不調が発覚した時の対応
このような場合、一度出した内定を取り消すことができるものでしょうか。というご質問です。
内定取り消しのハードルは高い
1,採用内定とは、やむを得ない事情があった場合には内定を取り消すことがという条件付きの労働契約と解されます。内定を取り消すことが可能な事由とは「採用内定当時は知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として取り消すことが趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる」とされています(最高裁判例)。つまり採用内定時に知っていたら採用することはなかった、という客観的に合理的で社会通念上相当とみとめられるような重大な事実が存在しなければ、採用内定の取り消しは認められません。ご相談のメンタル疾患の場合、症状が重く通常の勤務ができないと予測される場合には、採用内定の取り消しが認められる可能性は高いと思われます、一方で、採用面接の際に、メンタル疾患が疑われるような言動があったにも関わらず内容を出した場合には取り消しが難しくなる場合もあります。
ではどうしたらいいのか(対応策)
まず、業務遂行能力や適性を判断する材料として、内定者に「病歴の申告」を求めることは有効でしょう。メンタル疾患を理由としての採用拒否は必ずしも違法ではありませんが、採用前の健康診断にメンタルヘルス疾患の検査を行うことは応募者の同意が必要になります。またプライバシー保護や人権侵害にならないように細心の注意が必要です。
また採用内定時に書面を取り交わしておくことも有効です。たとえば、入社時の労働条件を記載した「採用意向確認書」をわたし、同時に「入職承諾書」に署名・捺印をしてもらいます。この入職承諾書に「入職時期、疾病などで就業困難と認められるとき」という一文をいれることで、不測の事態が生じた場合の抑制効果あるものと思います。
株式会社カタグルマ(本社:東京都千代田区、代表取締役:大嶽広展)は、2025年9月25日(木)および26日(金)に開催される保育業界向けオンラインセミナー「なぜ、あの園はうまくいっているのか?導入事例から見える成功の秘訣」に共催企業として参加し、弊社代表の大嶽、弊社カスタマーサクセス部部長 近藤の二名が登壇することをお知らせいたします。物価高騰、人材不足、少子化といった喫緊の課題に直面している保育業界において、持続可能な保育提供体制の確保と質の向上が不可欠です。セミナーでは、これらの課題を解決し、成功を収めている保育園の事例を紐解き、その秘訣を具体的なソリューションとともにご紹介いたします。
セミナー概要
・タイトル: なぜ、あの園はうまくいっているのか? 導入事例から見える成功の秘訣
・開催日時: 2025年9月25日(木)、26日(金) 各日13:00~15:45
・開催形式: 無料/オンライン(Zoomウェビナー)
・対象: 保育園・幼稚園関係者、保育事業関係者
・共催企業: 株式会社アスカ、オイシックス・ラ・大地株式会社、株式会社ニシハタシステム、BABY JOB株式会社、GMOエンペイ株式会社、株式会社カタグルマ
・詳細・お申込みURL: https://go.tebura-touen.com/20250925-26seminar?form_cognitive_pathway=katagrma
※申込者全員に見逃し配信あり
セミナーの見どころ
成功している園の導入事例がわかる: 現場のリアルな声から、園運営の成功の秘訣を具体的に学べます。 基調講演で課題が見える化: 園の運営課題を整理し、改善のヒントを明確に得られます。 忙しい方でも安心: 興味のある講座だけの参加も可能です。途中参加・退出、見逃し配信にも対応しており、ご自身のペースで受講いただけます。
A、命令がなく、業務とは無関係な早めの出勤については、給料を支払う必要はありません。
労働時間とは
労働時間とは原則として「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことを言います。つまり、院長の指示命令がないのもかかわらず勝手に出勤している時間というのは労働時間ではありません。
業務命令はなくとも業務上必要な時間は労働時間
しかし、始業時間8時30分からでも「8時15分に出勤して、これとこれをやっておかなければ、診察の受付時間である8時30分には開始できない」という場合があります。このことを院長がわかっていながらスタッフの善意に頼ったままで積極的な対策を講じない場合、
この15分は黙示の業務命令の下行った業務として業務時間として扱われます。命令がなくとも15分前出勤が常態化しているのであれば、業務上必要な時間であり、それは労働時間になる可能性が高いといえます。
そもそもクリニックの始業時案は、診療受付までの準備を要する時間を見積もったうえで設定されますから8時30分の受付開始時間と同時に労働時間がスタートするといったところは聞いたことがありません。つまり、準備時間を15分と見積もるなら、8時15分が始業時間になるわけです。
掃除などをしてくれる場合には
質問のポイントは 例えば8時30分からの勤務時間開始でよいにも関わらず、8時からきて作業をしている場合にはどうするか」という点にあります。指示していないけれど、何かやっている、そしてタイムカードをおしている、するとこの時間に対価を支払うべきであるか、という疑問が出てくるであろうと思います。
しかし冒頭に述べたように、あくまで労働時間は指揮命令下にある時間です。自主的に作業をしていることに対して原則、給与の支払いは必要ありません。
職場の人間関係にも配慮する
また「8時30分始業なのに、一番の先輩社員が8時に出勤しているため他のスタッフが全員8時に出勤している」といったケースもあります。そうすると新しく入ったスタッフから「事実上強制的に出社させられているのになぜ給料がでないの」といった文句が出てきます。そのような場合に、早く出勤するスタッフに「ほかのスタッフが影響を受けるので、あまり早く出勤しないように配慮してほしいこと」もしくは「早く出勤するのは構わないが、他のスタッフに同時の時間に出勤することを強制しないように」と伝える必要があります。
自主的に早く出勤するスタッフにも、それぞれの理由があるのでしょう。準備をしっかりとしてから仕事を始めたいというプロ意識から早く出勤するスタッフもいるでしょう。仕事の喜び、積極性、職場への貢献やチームワークといった仕事観を否定することのないよう、伝え方には十分配慮する必要があると思います。
タイムカードの管理
タイムカードの打刻時間は原則としてクリニックに入った時間と出た時間を示しており、必ずしもそのすべてが労働時間になるわけではありません。業務がおわりスタッフ間でおしゃべりをして帰る場合などその時間まで給料を支払う必要はないのです。
ただし注意しなければならないのは、おしゃべりの時間わからないと、タイムカードの出勤時間から退勤時間までの時間がそのまま労働時間とみなされてしまう可能性があるということです。そのため「時間外労働は、院長の指示で行うものでおこなうものである」と周知しておくとともに、院長が承認しなかった時間がある場合にはその都度記載しておくなど、適切に把握しておくことが必要です。よくあるのは、タイムカードと時間外労働申請を並行して取り入れているケースです。例えば、17時間までの勤務の人が17時半にタイムカードが押されているような場合、時間外申請が「患者対応のため15分残業」となっていれば15分の残業代を支払えばよいということになります。このように時間外労働の管理があれば、タイムカードを押していたとしても、その分の給料をすべて支払う必要はないということになります。
1歳の男の子が給食中に食べ物を喉につまらせ死亡した事故で、札幌市長へ検証報告書
札幌市北区の私立認可保育所で2024年10月、1歳の男の子が給食中に食べ物を喉につまらせ死亡した事故で、検証ワーキンググループは2025年9月10日、札幌市長へ検証報告書を提出しました。
報告書では「離乳食の食材の大きさが男の子の咀嚼力に適合していなかったこと」や「119番通報が遅れた可能性」などが指摘されました。

アイグラン保育園拓北(札幌市北区)
この事故は、札幌市北区の私立認可保育所「アイグラン保育園拓北」で2024年10月、1歳の男の子が給食中に肉を喉につまらせ死亡したものです。 死亡した男の子は0歳児のクラスに入っていて、園児5人に対し、職員は2人。 職員が1対1で食事の介助をしていました。 検証ワーキンググループが9月10日に提出した報告書によりますと当時、男の子が食べ物を喉に詰まらせた様子を見せたため、園は救命措置を行い119番通報。 男の子は病院へ搬送されましたが、死亡が確認されました。
原因は、食事に含まれていた薄切り肉が気道内に詰まったことに伴う気道閉鎖による窒息だったということです。

男児に提供された「焼肉風炒め」(提供:札幌市)
具体的な事故の原因は提供された食材の大きさ
具体的な事故の原因として、提供された食材の大きさが、男の子の咀嚼力に適合しておらず、適切でなかったことを指摘しました。 園職員の間で男の子の咀嚼・嚥下力の状況や乳歯が生えているかなどの情報が共有されておらず、離乳の段階について認識に相違があったということです。 また、園は家庭での食事に関する情報を得ることができていなかったとされています。 離乳食に関する指針やマニュアル等に示された食材の大きさの目安には、解釈の幅が出る余地があり、現場の判断を難しくしていることも問題点として指摘されました。

検証報告書を提出
マニュアルの不徹底による119番が遅れた可能性を指摘
さらに報告書では、当時マニュアルと異なる救命措置がとられていて、大声で人を呼んだり、119番に連絡することなく救命措置(背部叩打法)に移行したため、119番通報が遅れた可能性を指摘。 園のマニュアルについて目を通していない職員がいたり、職員間での読み合わせが行われていなかったなど、安全管理に関する組織的な対応に問題があったとしています。 報告書では再発防止に向けて、児童ひとりひとりの発達状況を正確に把握し、複数の担当者間で認識内容について確認しあう必要があるとしていて、各園において実践的な研修を実施するよう、啓発の強化を求めることなどを提言しました。
昨年の8月、宮崎県で発生した地震をきっかけに、将来起きるとされる南海トラフ巨大地震について、国として初めての「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発せられたことは、読者の皆様の記憶にも新しいところだと思います。
■ 多くの園で、BCPは「作成されたまま」の状況となっている
本稿でもたびたびふれていますが、2022(令和4)年12月の厚生労働省の事務連絡により、保育所を含む児童福祉施設等には、感染症と自然災害の発生を想定したBCP(業務継続計画)の作成が求められることとなりました。
上述の事務連絡と併せて、同計画のひな形も示されており、以降、第三者評価でお訪ねする各園でも、作成にあたってはこれが最も多く用いられています。
安全計画とは異なり、BCPの作成は努力義務にとどまっていますが、行政の指導検査への対策とも相まって、ほとんどの園で作成までは済んでいます。
ただし、事務連絡でも要請されている「必要な研修及び訓練を定期的に実施すること」「定期的に業務継続計画の見直しを行うこと」については、特に前者の研修・訓練は、多くの園で行われていないままの状況です。
■ 実際の災害では、避難を終えた後にも、日常と異なる様々な状況が待っている
災害に関して言えば毎月の避難訓練、感染症については日々の清掃・消毒や定期的に行う下痢・嘔吐発生時の対応に関する実技研修など、平時の対策や「起こった時」の対応については、どの園でも取り組みが行われています。
しかし、避難訓練の場合、一連の職員・子どもの動きなどを確認した後は、いつもの日常の生活に戻るまでであるのに対し、実際の大規模災害では、避難し終えた後も、日常とは異なる様々な状況が生じ、それがいかなるものであるか、災害が起こってみるまでわかりません。
その中で子どもや職員の安全を守り、時にはライフラインが途絶しているなかで、子どもたちと共に一定期間を園で過ごしたり、地域とも連携し、福祉避難所として園を開放したりする必要も生じます。
また、園の立地などによっては、避難したまま別の場所で、各家庭にすべての子どもを引き渡し終えるまで、保育や種々のケアを継続することとなるでしょう。
BCPはそのための計画であり、平時の避難訓練では想定されていない、「起こった後」の体制や行うべき事柄が定められるものです。
■ BCPを組織全体で共有し、有事の際の運営の継続をあらかじめ想定しておこう
災害が開所時間中に発生するか、夜間や休日に起きるかにもよりますが、開所中の発災であれば、一連の避難行動を終えてから初めてBCPを組織内で確認するよりは、事前に概要を共有しておいたり、その後の対応の流れを各職員があらかじめ知っていたりするほうが望ましいことは言うまでもないでしょう。
今年お訪ねしたある園では、実際の災害を、施設の損傷や電気・ガス・水道の停止、けが人の発生などまで具体的に想定して、BCPに定める対策本部を設置し、取るべき対処をシミュレーションする訓練を行っていました。
こうした訓練は、多くの園で毎年行っているであろう、保護者との通信や子どもの引き渡しに関する連携確認、あるいは心肺蘇生・応急手当等の実技研修などと組み合わせて行うことも可能ではないかと思います。発災から避難、避難終了後は園内の状況の確認と、負傷したり、ショックを受けたりしている子ども・職員の手当て、園内の関係者全員の安否確認などを並行して行い、その時点で利用可能な通信手段によって子どもの状況を保護者へ連絡するとともに、それ以降の業務継続について検討する、といった一連の流れを、模擬体験してみるイメージです。
感染症に関しては、先の新型コロナウイルス対策に忙殺された数年間の園運営から、概ねの運用は想定可能ではないかとも思いますが、園内の発生・まん延状況に応じた継続的な対応について、BCPに基づいて実際の措置を検討しておくとよいのではと思います。
■ 様々な情報を収集し、BCPの計画としての有用性を高める工夫も
上記の国のひな形は、項目別に記入欄が設けられているだけのごく簡素なものであるため、園によっては作成に苦心することもあるでしょうし、内容の質というか、計画としての実用性・有用性には、園ごとにばらつきが生じるのではという印象も否めません。
そうした場合は、介護施設向けの各ガイドライン(※)など、インターネット等で入手可能 なほかの資料も参考として、計画内容の具体化を図ることも一策でしょう。
A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。
まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。
1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)
2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている
3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている
これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。
例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。
先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。
2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。
これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。
3,今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱いについて
その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残業手当はつかないことになります。
ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。













