保育

保育DXで育児の場支える 悩みは我が事、元SEの情熱

日本経済新聞 朝刊 社会2(31ページ)2026/7/20 2:00 より

元SEの経験を生かし、保育業界向けDX支援会社を設立した麦島さん「仕事も子育ても、自分の手で」。そう願いながら今もなお、出産を機にキャリアを断念する人は少なくない。麦島菜津子さん(41)もその一人だった。

 子育て期間中に直面した孤独や不安は、やがて新たな挑戦への原動力となった。保育園のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する会社を2025年に立ち上げた。

 子どもを産むのにハードルが低い世界に少しでも近づくよう、保育現場から変えていきたい――。自身の経験に根ざしているからこそ、本気でそう思っている。

 08年、大手シンクタンクに入社。システムエンジニア(SE)としてシステムの設計・開発に携わった。顧客の要望を形にする仕事にやりがいを感じる日々を過ごす中、同じ会社で出会った夫と結婚し、26歳で長男を出産した。

 10カ月の産休・育休中に部署の再編があり、復帰すると経験したことのない保守の業務を任された。

 時短勤務を選択したが、子育て中でも仕事の手を抜きたくはなかった。システムに不具合があれば夜中でも対応する。仕事が一息つくと、今度は夜泣きする長男に起こされた。123時間しか眠れない日々が続いた。

 「このままでは体が持たない」。子どもが必要とするときにいつでもそばにいられる存在でありたい。子育てを最優先してキャリアを考え直した。後ろ髪を引かれる思いで29歳のとき、退職を決断した。

 育児中心の生活が始まると、新たな悩みが待っていた。負担が大きい割に、いくら頑張っても周囲から評価されるわけではない。もっと多くの人が関わらないと無理があると感じた。

 社会から隔絶される不安にも襲われた。「誰かの役に立つことをしたい」。前に進んでいる実感がほしかった。

 発想を変えてみた。悩みの種である保育を正面から勉強しようと、保育補助として働き始めた。子どもが寝ている間など、123時間を勉強の時間にあて、家事や育児の間も試験科目の音声を流して耳から覚えた。次男を出産した15年、保育士の資格を取得した。

 保育経験が5年となる頃、園の運営法人の事務局長から「業務改善を担ってくれないか」と頼まれた。SEとしての経歴を見込まれてのことだった。

海外の保育事例を学ぶため昨年から大学院にも通っている

 連絡帳や保育日誌など、現場では「紙」が当たり前。子どもが帰ってから、保育士は膨大な書類業務に追われていた。

 顧客からニーズを聞き取ることはSE時代に培った。保育士、看護師、調理師など現場の声に耳を傾け、不便さや課題を丁寧に洗い出した。

 「勤怠管理のシステムを導入したい」「11台パソコンを使えるようにしたい」

 瞬く間に提案が集まり、実現のためのシステムやITツールを導入していった。

 子どもが卒園した後も関わり続け、保育士の年間休日を13日増やし、有給消化率を80%まで引き上げた。休みを取る前提で業務計画を立て、時間内に仕事を終える意識も浸透していった。

 労働環境の改善で、子どもと向き合うことに集中できる環境を整えられたら、保育士になりたいと思う人も増える。そうすれば、子育ての負担も減るのではないか――

 取り組みを広げようと、251月、株式会社「保助輪」を設立。伴走支援しつつも、いずれは自走してほしいという思いを社名に込めた。町の自転車店になぞらえ、いつでも困りごとに寄り添う存在でありたいとの思いも込めた。

 DXの浸透は時間がかかることが多く、園ごとに適したアプローチも異なる。難しさもあるが、保育士や親の笑顔にやりがいをもらえる。

 保育環境は社会情勢にも左右される。外国にルーツのある未就学児を受け入れる際、言語や食事の文化の違いに悩む現場を見たことを契機に、254月から大学院に通い出した。

 フランスなど移民政策が進む国の事例から学び、現場に生かしたい。27年には調査のため同国を訪問する予定だ。

 子どもを持った際、キャリアの選択肢が圧倒的に狭まったと感じたことがある。それでも、その時々で面白いと思う道を選んできたから今がある。

 「選択肢を自ら狭めないで」。かつての自分と同じように悩んでいた人を、保育の現場から支えていきたい。

 

文 石川友理彩

「酷暑日」時代、保育士2倍配置の保育園が実践する暑さ対策 子どもを守るために、まず保育士を守る――設備・運用・人員体制で備える夏の保育現場

 

社会福祉法人風の森が運営する認可保育園「Picoナーサリ」6園では、今夏も子どもと保育士双方の安全を守るための暑さ対策を実施します。

今年は新たに、ニューエラジャパン合同会社の協力により、屋外活動を担う保育士へ帽子を導入しました。

 

子どもの熱中症対策が広く呼びかけられる一方で、その子どもたちを見守る保育士自身の暑さ対策は、十分に注目されてきませんでした。風の森では、保育士の安全と心身の余裕を守ることが、子どもの体調変化を見逃さず、安全な保育を続けるために欠かせないと考えています。

保育士が屋外で子どもたちと過ごしている様子
ニューエラジャパン(同)の協力により保育士用の帽子を導入

実施期間:2026年7月から9月頃まで

実施場所:風の森が運営する各保育施設

実施内容:施設環境の整備、運用ルールの見直し、人員体制の確保等

酷暑で増す、保育現場の見守り負担

2026年4月、気象庁は最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と新たに定義しました。体温調節機能が未発達で、地面からの照り返しも受けやすい子どもたちを守るため、夏の保育現場では水分補給や体調変化の確認など、通常以上に細かな見守りが求められます。

 

一方、こども家庭庁の委託調査では全国の保育施設の8割(※1)が人手不足を感じている実態があります。人員に余裕がなければ、一人ひとりへの目配りや保育士自身の休憩・交代が難しくなります。

 

特にプール遊びに関し国の事故防止ガイドラインでは、子どもと一緒に活動する職員とは別に、監視に専念する職員を配置することが求められています(※2)。人員体制によっては実施が難しくなる場合もあり、人手不足の影響は子どもの安全だけでなく、夏ならではの体験機会の喪失にもつながります。

 

酷暑時代の子どもの安全と体験の機会を守るためには、設備だけでなく、保育士が無理なく見守れるルールや人員体制が欠かせません

 

※1 こども家庭庁令和6年度「保育人材確保にむけた効果的な取り組み手法等に関する調査研究」実施:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

 ※2 こども家庭庁等「教育・保育施設等におけるプール活動・水遊びの事故防止及び熱中症事故の防止について」

設備だけに頼らない、暑さ対策

Picoナーサリでは、設備の導入だけに頼らず、保育士が無理なく子どもたちを見守れる運用と人員体制まで含めて、暑さ対策を行っています。

1.設備|暑さを和らげ、危険を把握する

・ミストシャワーの設置
・大型日よけの設置
・暑さ指数計の活用

園庭に設置したミストシャワー

2.運用|状況に応じて活動と働き方を変える

・暑さ指数に応じた活動判断
・屋外業務のローテーション
・企業と連携し保育士へ帽子の提供

保育士用のニューエラ帽子

屋外活動中の直射日光や照り返しから保育士を守るため、今年は新たにニューエラジャパン合同会社の協力を受け、保育士用の帽子を導入しました。 

参考:【ニューエラ】「子どもの安全」を支える保育士の“隠れた暑熱リスク”に着目、都内の保育園で帽子提供支援を実施 (ニューエラジャパン合同会社)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000491.000015945.html

3.人員体制|無理なく見守れる余裕をつくる

・国基準2倍以上の保育士配置(10年以上継続)
・全職員の60分休憩を確保
・完全週休2日、残業ゼロ

Picoナーサリのカフェ風休憩室

保育士をしっかりと守ることが、子どもを守ることに繋がる  

保育士に心身の余裕があることで、子ども一人ひとりの小さな変化に目を配り、安全管理に必要な人員を確保しながら、戸外活動や水遊びなどの体験を届けることができます。

子どもの安全を支えるためには、保育士自身も暑さから守られなければなりません。保育士が休憩や交代を取りながら無理なく働ける環境は、単なる働きやすさではなく、保育の安全と質を支える基盤です。


野上 美希(のがみ みき)

保育士のゆとりは、子どもたちに返ってくるものです。ゆとりがあるから、子どもの小さなサインに気づける。酷暑の夏こそ、人の余裕が安全をつくると信じています。

暑さによって家庭での外遊びが難しくなる中、保育園が安全を守りながら、子どもたちに夏ならではの体験を届ける意味はこれまで以上に大きくなっています。

そのためにも、まずは保育士が安心して働ける環境を整えることが必要だと考えています。

社会福祉法人風の森 統括 野上美希

保育士は「子どもを預かる人」ではない。 東京児童協会、保育士の仕事の価値を社会へ伝えるブランドムービー『次の100年を育む仕事』を公開 

 

東京都内で24の認可保育園・認定こども園を運営する社会福祉法人東京児童協会は、保育士という仕事の価値を社会に伝えるブランドムービー『次の100年を育む仕事』を公開しました。

一人の保育士の一日に密着したドキュメンタリー作品で、出演しているのは演者ではなく、実際に園で働く職員と子どもたちです。

▼ 本編はこちら(YouTube) 

「子どものかわいさ」ではなく、保育士の仕事の本質を

本作の原点は、2018年に制作された一本の映像にあります。当時は職員に向けて「保育士が自分の仕事を誇りに思えるように」という想いでつくられた、社内向けの作品でした。本作はそのバトンを受け継いでいます。子どもたちの未来を育み、保護者を支え、地域を支える保育士という仕事の価値が、もっと社会に伝わること。それが、本作を制作した理由です。脚色を加えず、実際に園で働く職員と子どもたちの日常をそのままドキュメンタリーとして記録しました。社会へ公開するのに先立ち、まず2026年度の全職員向け辞令式で披露したところ、職員から「自分の仕事を誇りに思えた」「涙が出た」といった声が多数寄せられました。

■ 東京児童協会 経営戦略室 室長 菊地 元樹

私がずっと願っているのは、保育士の社会的地位の向上です。本当に価値のある仕事なのに、その価値が十分に伝わっていない。「保育士ってすごい仕事なんだ」——まずはそう思っていただくこと。そのきっかけになれば、この映像を作った意味があると考えています。

ムービー概要

タイトル:次の100年を育む仕事

公開URL:https://youtu.be/RsrwxeSSEUU

企画:社会福祉法人東京児童協会(ONE ROOF ALLIANCE)

制作:株式会社POOL(クリエイティブディレクター:丹野英之/コピーライター・プランナー:林潤一郎/映像ディレクター・撮影:大滝洋平)

音楽:Kan Sano(origami PRODUCTIONS)

 

今後の展開

私たちは、保育の現場と社会がつながることで、子どもたちにより質の高い体験価値を届けられると考えています。本映像をきっかけに、保育士という仕事の価値がより多くの方に伝わり、保育の現場に関心を寄せていただけることを願っています。(社会福祉法人 東京児童協会 発表記事より)

 

 

 

 

 

 

スタッフからの退職願は撤回できる?介護・医療・保育現場の労務トラブルを防ぐポイント

介護施設、クリニック、保育園など、慢性的な人手不足に悩む現場において、スタッフの「採用」と「退職」は経営を大きく左右する重要課題です。

こうしたなか、経営者や人事担当者を悩ませるのが、「一度は退職願を出したスタッフから『やっぱり辞めるのを止めたい(撤回したい)』と言われた」というトラブルです。

すでに次のスタッフの採用活動を進めていたり、人員配置を決めていたりする場合、急に退職を撤回されると現場のシフトや経営に大きな支障が出ます。では、法律上、スタッフからの退職願の撤回を拒否することはできるのでしょうか?

今回は、福祉・医療業界の労務管理に精通する「介護専門社労士」「クリニック専門社労士」「保育園専門社労士」の視点から、退職願の撤回の可否や、口頭での意思表示の有効性、現場で実践すべきトラブル防止策を分かりやすく解説します。

1. 結論:退職願の撤回はできるのか?

結論から言うと、「人事権を持つ経営者や管理職が退職願を受理(承諾)した後は、原則としてスタッフ側から一方的に退職を撤回することはできない」というのが法律上のルールです。

しかし、まだ受理していない段階(会社が承諾する前)であれば、スタッフは退職の申し出を撤回することができます。

つまり、「すでに受理したかどうか」というタイミングと状況によって、撤回ができるかどうかが決まります。まずはこの仕組みを正しく理解するために、法的な背景を確認していきましょう。

「退職願」と「退職届」の違い

実務上、混同されやすいのが「退職願」と「退職届」の違いです。この2つは法的な性質が大きく異なります。

  • 退職願(合意解約の申し入れ): 「退職させてほしい」という会社への“お願い(労働契約の合意解約の申し込み)”です。会社が「分かりました」と承諾するまでは、原則として撤回が可能です。

  • 退職届(辞職の意思表示): 「〇月〇日をもって辞めます」という、労働者からの“一方的な通告(辞職)”です。原則として、提出した時点で会社の承諾なしに効力が発生するため、出した後は原則として撤回できません(民法第627条)。

ブログの相談にある「退職願」の場合は、会社側が「承諾(受理)」したかどうかが運命の分かれ道となります。

2. 退職願の撤回の可否を決める「受理」の基準(判例解説)

では、どのような状態になれば「受理(承諾)」したとみなされ、撤回ができなくなるのでしょうか。過去の重要な裁判例をもとに解説します。

① 人事権を持つ者が受理した後は「撤回不可」

最高裁判所の判例(昭和62年)では、「退職願を人事部長が受理した時点で、労働契約の合意解約が成立した(承諾された)とみなされるため、その後の撤回は認められない」とされています。

介護施設であれば施設長や理事長、クリニックであれば院長、保育園であれば園長や理事長など、「採用や退職を決定できる権限(人事権)を持つ人」が退職願を受け取り、承認した時点で契約解除が確定します。

この段階以降であれば、スタッフ側から「転職先のクリニックから内定を取り消された」「やっぱり今の保育園で働き続けたい」と言われても、経営者は拒否することができます。

② 人事権のないスタッフが預かっただけなら「撤回可能」

一方で、岡山地裁(平成3年)の判例では異なる判断が下されました。 院長(人事権を持つ人)以外の、人事権を持たない一般的な先輩スタッフや、単に書類の受取次ぎをするだけの事務員が退職願を預かった段階では、まだ退職の承認(承諾)はなされていないと判断されたのです。

この場合、退職願が人事権を持つ経営者の元へ届き、承認される前であれば、スタッフは「やっぱり辞めるのを止めます」と退職を撤回することができます。

福祉・医療現場で起こりがちな落とし穴

介護、クリニック、保育園の現場では、リーダーや主任、婦長、副園長などがスタッフから退職願を直接手渡されるケースが多々あります。 もし、人事権を持たない主任が「分かりました、預かっておきますね」と言っただけで、経営者(院長や理事長)が中身を確認していない状態であれば、まだ法律上は「受理」されていません。その間にスタッフの気が変われば、撤回を認めざるを得なくなるため注意が必要です。

3. 「辞めます」という口頭のみの意思表示は有効か?

スタッフのなかには、書面を出さずに「もう限界なので辞めます」「来月で退職します」と口頭だけで伝えてくるケースもあります。こうした口頭での意思表示には、どのような法的効力があるのでしょうか。

法的には「口頭」でも有効

法律上、退職の意思表示は書面でなければならないという決まりはありません。そのため、人事権を持つ経営者(院長や理事長など)に対して直接向けられた言葉であれば、口頭であっても直ちに退職の申し出としての効果が発生します。

経営者がその場で「分かりました、承諾します」と答えれば、その瞬間に退職の合意が成立することになります。

なぜ口頭だけでは危険なのか?(トラブルのリスク)

しかし、実務において口頭のみの退職処理を進めるのは非常に危険です。 スタッフが一時的な感情や、業務上の混乱、人間関係の誤解から突発的に「辞める!」と言ってしまったようなケースでは、後から大きな紛争に発展することがあります。

トラブルが発生した場合、スタッフ側から以下のような主張をされるリスクがあります。

  • 「あの時は頭に血が上っていただけで、本気で辞めるつもりはなかった」

  • 「口頭での軽いやり取りであり、退職という重大な決断を真に望んだものではなかった」

  • 「辞めると言った覚えはない。会社から『来なくていい』と言われた(=不当解雇だ)」

口頭での意思表示は「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、法的な効力が曖昧になりがちです。特に「辞める」と言った翌日からも通常通りシフトに入って勤務を続けているような場合、周囲から見ても「本当に退職の合意があったのか」が不透明になります。 最悪の場合、「自主退職ではなく、会社から強制的に辞めさせられた(解雇された)」と主張され、不当解雇を理由に慰謝料や未払い賃金を請求される労務トラブルに発展しかねません。

そのため、どれだけ親しい間柄であっても、法律上で退職を確実なものにするためには、必ず「書面(退職願または退職届)」を提出してもらう必要があります。

4. 介護・クリニック・保育園で退職トラブルを防ぐための実務対策

介護施設、クリニック、保育園は、いずれも「人」が最大の経営資源であり、配置基準(人員基準)が厳格に定められているという共通点があります。スタッフの退職対応を曖昧にすると、経営へのダメージが直撃します。

トラブルを未然に防ぐため、経営者が実践すべき3つの実務対策をお伝えします。

対策①:就業規則に「退職手続き」を明記する

まずは、就業規則の退職規定を整備しましょう。 「退職を希望する者は、退職予定日の〇ヶ月前までに、所定の退職願(届)を人事権を持つ者(理事長・院長等)に提出しなければならない」といった具体的なルールを明記しておきます。これにより、スタッフも「まずは書面を出さなければならない」と認識し、突発的な口頭トラブルを減らすことができます。

対策②:退職願を受け取ったら速やかに「受領印」または「承諾通知」を出す

スタッフから退職願が提出され、それを受け入れる(引き留めをしない)と決めた場合は、人事権を持つ経営者が速やかに確認し、受理した旨を記録に残しましょう。 「〇月〇日に退職願を受領し、これを承諾した」という書面(承諾書)を交付するか、提出された退職願の控えに受領印と日付を押して本人に渡すことで、法的に「これ以降の撤回は不可」という状態を確定させることができます。

対策③:専門の社会保険労務士(社労士)に相談できる体制を整える

福祉や医療の現場は、労働基準法だけでなく、介護保険法や医療法、児童福祉法といった独自の業界特有のルール(人員配置基準など)が絡み合う複雑な環境です。

スタッフの退職に伴うトラブルや就業規則の変更、人間関係の改善など、日常的な労務問題が発生した際には、それぞれの業界に特化した専門家に相談するのが最も確実です。

  • 介護専門社労士: 訪問介護、通所介護、サ高住など、介護報酬改定や複雑なシフト管理、人員基準を理解した上で、スタッフの離職防止や労務管理をサポートします。

  • クリニック専門社労士: 医師、看護師、医療事務など、少人数の職場だからこそ起こりやすい人間関係のトラブルや、院長の負担を減らすための労務手続き、採用・退職の実務をサポートします。

  • 保育園専門社労士: 保育士の配置基準やキャリアアップ研修、処遇改善等加算の仕組みを踏まえ、保育士が安心して長く働ける職場環境づくりと、退職時の円満な手続きをサポートします。

独自の雇用環境を持つ業界だからこそ、一般的な社労士ではなく、それぞれの専門知識を持った社労士をパートナーに選ぶことで、より実効性の高いトラブル対策が可能になります。

5. まとめ

今回の内容を重要なポイントとして3つにまとめます。

  1. 退職願の提出後、人事権を持つ者(院長・理事長・園長など)が受理(承諾)した後は、原則としてスタッフ側から退職を撤回することはできない。

  2. 人事権を持たないスタッフ(主任や事務員など)が退職願を預かっただけの状態では、まだ承認されたとは言えず、スタッフ側からの退職の撤回が認められる可能性が高い。

  3. 「辞めます」という口頭のみの意思表示も法律上は有効だが、「言った・言わない」のトラブルや「不当解雇だ」と主張されるリスクを防ぐため、必ず書面(退職願)を提出してもらうべきである。

スタッフの退職は、残されたメンバーのモチベーションや日々の業務運営に大きな影響を与えます。だからこそ、手続きは感情論ではなく、法律に基づいた正確なステップで行うことが大切です。

「退職の撤回を求められて困っている」「スタッフとの間で退職を巡るトラブルが起きそう」とお悩みの経営者様は、ぜひ一度、介護専門社労士・クリニック専門社労士・保育園専門社労士などの専門家へご相談ください。適切なアドバイスにより、貴園・貴院の健全な経営を守るサポートをいたします。

「“15分の研修”が、園を変える」無料オンラインセミナー開催! 品川区に学ぶ、対話から生まれる保育の質の向上と人材育成の実践

 

株式会社学研ホールディングス(東京・品川/代表取締役社長:宮原博昭)のグループ会社である株式会社Gakken SEED(東京・品川/代表取締役社長:小林伸一)は、2026年7月8日、自治体の公立保育所担当者や園長、研修担当者を対象とした無料オンラインセミナー「“15分の研修”が、園を変える 現場に根ざす園内研修-品川区の実践から考える-」を開催します。

 品川区では、2025年9月1日より公立保育所において、保育の質の向上を目的として、保育所・幼稚園・認定こども園向けの園内オンライン研修サービス「学研せんせいサポートHOINQ(ほいんく)」(以下、当サービス)をご利用いただいております。本セミナーでは、当サービスを導入いただいている品川区の実践事例をもとに、忙しい保育現場でも継続できる“15分の園内研修”のあり方をご紹介します。

■セミナー概要

 保育現場において「保育の質向上」が強く求められる中、人材育成や研修体制の充実は喫緊の課題となっています。一方で、多忙な業務の中で十分な研修時間を確保することや、職種を問わず継続的な学び・コミュニケーションの機会を提供することに課題を抱える保育所も少なくありません。

 そんな現場の課題を踏まえ、本セミナーでは、以下の内容についてご紹介します。

・短時間でも継続できる園内研修の仕組み

・保育者一人ひとりの主体的な学びを促す方法

・保育の質の向上につながる職員間の対話の生み出し方

 品川区の担当職員の方および公立保育所の園長先生にもご登壇いただき、当サービスの導入背景や運用の工夫、現場で感じている効果についてお話しいただきます。

【開催概要】
“15分の研修”が、園を変える

現場に根ざす園内研修-品川区の実践から考える-

日時:2026年7月8日(水)14:00~15:00

会場:オンライン(Zoom)

対象:公立保育所の運営・管理担当者、研修担当職員、園長ほか

定員:100名

主催:株式会社Gakken SEED

申込方法:以下、QRコードよりお申し込みください。

下記、URLからもお申込みいただけます。

https://gbpb.f.msgs.jp/n/form/gbpb/HCaHbRSesNQRw9AVnchQM

【このような方におすすめ】

・日々の保育の中の「どうしたらいいだろう」を立ち止まって考えたい方

・園内研修の進め方に悩んでいる方

・職種を問わず学びの機会を届けたい方

・職員間のコミュニケーション活性化を図りたい方

 ぜひお申し込みください。

 

 

【医療・介護専門社労士が解説】面接での「嘘」や「スキル不足」を理由に職員を解雇できる?介護施設長・保育園長・クリニック院長が知っておくべき労務の現実と対策

はじめに:採用後の「こんなはずじゃなかった…」に悩む経営者・管理職の皆様へ

  • 「面接では『即戦力として動ける』と言っていたのに、指示待ちばかりで業務が回らない」

  • 「『前職でリーダー経験がある』という言葉を信じて採用したのに、現場の人間関係を引っかき回されている」

  • 「高度なスキルがある前提の給与設定にしたのに、実務レベルが低すぎる」

介護施設の施設長、保育園の園長、そしてクリニックの院長の皆様、このような「採用ミスマッチ」に頭を悩ませていませんか?

人手不足が深刻な福祉・医療業界において、優秀そうな人材の応募は喉から手が出るほど欲しいものです。しかし、いざ入社してみると、面接時に申告していたスキルや能力を全く持っていない職員だった……というトラブルは後を絶ちません。

経営者や管理職としては「騙された」「すぐにでも辞めてほしい」と思うのが本音かもしれませんが、感情に任せて「解雇」に踏み切るのには極めて高いリスクが伴います。

本記事では、医療・福祉業界の労務管理に精通する「介護社労士」「保育園社労士」「クリニック社労士」の視点から、スキル不足の職員を解雇できるのかという疑問にお答えし、リスクを最小限に抑える現実的な解決策を解説します。

1. 【結論】スキルや能力の不足を理由とした解雇は「極めて難しい」

結論から申し上げますと、「資格の有無」のように客観的に判断できるケースを除き、単なる「スキル不足」「能力不足」を理由に職員を解雇することは、日本の労働法において現実的には極めて困難と言わざるを得ません。

〇 資格や経歴の「詐称」は解雇事由になり得る

客観的な事実の有無は、白黒がはっきりしているため解雇の正当な理由になりやすいです。 例えば、クリニックにおいて「診療報酬の算定(専門看護師など)に必要な専門研修等の履修実績がある」と偽っていた場合や、介護施設・保育園で必須となる資格(介護福祉士、保育士など)を実は持っていなかったというケースです。これらは明らかな経歴詐称であり、業務に直接的な支障をきたすため、解雇事由に該当する可能性が非常に高くなります。

× 曖昧な「スキル不足」での解雇はリスク大

一方で、以下のようなケースは非常に厄介です。

【よくあるトラブル例】 「在宅医療の経験が3年以上あり、一通りのことはできる」と面接で言っていたのに、実際に勤務させてみると、3年も経験してきたとは到底思えないような低いスキルしか持ち合わせていなかった。

このような場合、「3年経験した」「一通りのことができる」という基準は主観的な要素を含みます。本人が「自分の中ではできている」と主張した場合、客観的にそれを否定して解雇の要件(客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること)を満たすのは非常に難しいのが現実です。

仮に強引に解雇してしまうと、後から「不当解雇」として訴えられ、多額のバックペイ(解雇期間中の給与)を支払う羽目になるリスクがあります。

2. リスクを最小限に抑えるなら「試用期間中」のアプローチが鍵

どうしても能力不足の職員に辞めてもらう、あるいは改善を促すのであれば、試用期間(一般的には3ヶ月〜6ヶ月)が終了するまでのタイミングが勝負となります。

なぜなら、試用期間を経て一度「正職員」として本採用してしまうと、「貴院(貴施設)は試用期間を通して、本人のスキルを含めて正職員として適格だと認めた」ということになり、解雇のハードルがさらに跳ね上がるからです。

試用期間中であれば、正職員登用後よりも「留保解約権の行使」として、一定の合理的な理由があれば本採用を拒否(解雇)することが認められやすい傾向にあります。ただし、それでも一発退場(即解雇)はできません。以下のプロセスを必ず踏む必要があります。

試用期間中に踏むべきステップ

  1. 定期的な面談と証拠の記録 「あなたには、今の時点で〇〇というスキルが不足しています」と具体的に指摘し、話し合いの場を設けます。口頭だけでなく、指導内容や面談記録を必ず書面(またはデータ)で残してください。

  2. 試用期間の延長と教育の機会提供 必要に応じて、就業規則の規定に基づき「必要なスキルを身につけるまで」試用期間を延長します。会社として教育や改善の機会を与えたという事実が重要です。

  3. 条件変更の提案(解雇回避努力) 延長期間内でも改善が見られない場合、いきなり解雇するのではなく、「業務上このまま正職員として継続するのは難しい。一度退職するか、あるいは給与(職位)を下げて契約社員などとして残りますか?」と本人に選択肢を提示します。

これらの一連の「解雇回避努力」を尽くした上で、それでも本人が退職にも条件変更にも応じず、かつ業務の遂行が著しく困難な場合に初めて、試用期間満了に伴う本採用拒否(解雇)という流れに進むことができます。

3. 実務上最も現実的な解決策は「退職勧奨(話し合い)」

解雇は会社側にも労働者側にも大きな傷が残ります。そこで、介護施設長、保育園長、クリニック院長が実務上で選択すべき最も現実的な手段は、解雇ではなく「退職勧奨(たいしょくかんしょう)」です。

退職勧奨とは、会社から労働者に対して「辞めてもらえないか」と打診し、お互いの合意のもとで退職してもらう手続きを指します。

退職勧奨を成功させるポイント

  • 本人のプライドに配慮しつつ客観的事実を伝える 「あなたの能力が低いからクビだ」ではなく、「当院(当施設)が現在求めているスピード感や業務レベルと、あなたの得意分野の間にミスマッチが生じている。ここにいても、あなたが力を発揮して活躍するのは難しいのではないか」と、お互いのためを思ってのアプローチであることを伝えます。

  • 解決金(退職金の上乗せ)を用意する 円満な合意を促すため、給与の1ヶ月〜2ヶ月分程度の「解決金」を準備することが一般的です。次の仕事が決まるまでの生活保障という名目で提示すると、本人も納得しやすくなります。

  • 必ず「退職合意書」を取り交わす ここが最も重要です。合意退職が成立した際には、必ず「退職合意書(合意書)」を作成してください。 書面には「今後、本件(退職の経緯や労働契約)に関して、労働審判や裁判などの法的な手段を含め、一切の請求や異議申し立てを行わない」という「清算条項」を必ず盛り込みます。この合意書があれば、仮に後から本人が「やっぱり納得いかない」と訴えてきたとしても、裁判で極めて強い抑止力・証拠能力を持ちます。

4. 今後のトラブルを未然に防ぐ!「入り口」での賢い契約テクニック

ここまで「入社してしまった後」の対策をお伝えしてきましたが、最も理想的なのは、このような労務トラブルを「未然に防ぐ仕組み」を作っておくことです。

そこでおすすめしたいのが、採用時の「ステップアップ型有期雇用」という手法です。

【トラブル回避の具体策】 正職員としての採用を前提とする場合であっても、最初の「入社後6ヶ月間」は正職員ではなく**「契約期間6ヶ月の有期雇用契約(契約社員)」**として採用します。

求人票や面接の段階から、「当院(当施設)では、最初の6ヶ月間は有期雇用契約となります。期間中の勤務態度やスキル、周囲との協調性を評価した上で、双方の合意があれば、7ヶ月目から正職員として登用(または契約更新)します」とはっきりと伝えておくのです。

この方法のメリット

このスキームをしっかりと構築できれば、もし面接時のアピールとは裏腹に全くスキルが足りない職員だった場合、「期間満了に伴う更新終了(雇止め)」という形で、契約を終了させることができます。

解雇や退職勧奨のように、激しい心理的摩擦や法的な解雇規制のリスクを背負う必要がなくなるため、経営者・管理職にとって非常に精神的負担の少ない、おすすめの防衛策です。 (※ただし、有期雇用であっても「更新を期待させるような言動」を日常的に行っていると、雇止めが認められないケースもあるため、事前の契約書作成と運用には注意が必要です)

まとめ:医療・福祉の労務トラブルは専門の社労士にご相談を

介護施設、保育園、クリニックは、いずれも「人」が最大の財産であり、同時に人間関係や労働環境のコントロールが難しい職場です。一人のスキル不足や協調性の欠如した職員によって、現場全体のモチベーションが低下し、既存の優秀なスタッフが離職してしまうことこそが最大の恐怖ではないでしょうか。

しかし、焦って無理な解雇を行えば、今度は法的リスクという別の火種を抱えることになります。

  • 現在の就業規則の「試用期間」や「解雇事由」の規定は万全か?

  • 退職勧奨を行う際の「退職合意書」の文面は法的に有効か?

  • 「最初の6ヶ月を有期雇用にする」ための契約書や求人票の文面はどう作ればいいか?

これらの判断や対策には、業界特有の働き方(シフト制、夜勤、資格要件、診療報酬・介護報酬への影響など)を深く理解している専門家のサポートが不可欠です。

採用ミスマッチや職員の処遇にお悩みの経営者様は、ぜひ一度、業界の特性を熟知した「介護社労士」「保育園社労士」「クリニック社労士」などの専門特化した社会保険労務士へご相談ください。貴院・貴施設の健全な運営と、大切なスタッフの職場環境を守るための最適なリスクマネジメントをご提案いたします。

「保育人材白書 2026 ~少子化時代の保育キャリア~」を発行

 

〜保育人材不足の本質は「資格者の総数」ではなく「働ける条件と必要とされる場のずれ」へ。現役保育士108名・潜在保育士93名・求職経験者107名への独自調査結果を公開〜

■ 白書発行の背景と意義

少子化と保育需要の「再編」

わが国の出生数は2024年に約68.7万人まで減少し、合計特殊出生率も1.20と過去最低を更新しています。一方で、2025年4月施行の育児・介護休業法改正や、2026年度から本格実施予定の「こども誰でも通園制度」など、保育を取り巻く制度は大きな転換期を迎えています。

こうした変化に伴い、保育サービスの利用形態は多様化しつつあり、従来の「フルタイムでの長時間利用」だけでなく、短時間利用・スポット利用・園外での子育て支援・訪問型保育といった、多様な形態でのニーズが顕在化しつつあります。

「働ける条件」と「必要とされる場」のずれ

保育士登録者数は約179万人にのぼる一方、保育現場で従事しているのは約68万人にとどまり、「潜在保育士」は約111万人と推計されています。この数字は、人材の絶対的な不足ではなく、「働ける条件と必要とされる場のずれ」という構造的なミスマッチを物語っています。

本白書は、現役保育士・潜在保育士・求職経験者への大規模調査と既存統計・制度分析を組み合わせ、保育人材不足の要因を解き明かしたものです。あわせて、認可保育所から院内・企業内保育、子育て支援拠点、訪問型保育まで、多様な保育・子育て支援の現場を運営してきた明日香の実績を踏まえ、2026年以降の保育人材戦略として5つの具体的な提言を行っています。

■ 調査結果サマリー

① 潜在保育士111万人 |「資格者不足」ではなく「条件のミスマッチ」

保育士登録者数は約179万人に対し、保育現場で従事している保育士数は約68万人にとどまっており、従事していない者は111万人程度に上ります。保育士資格保有者が保育職への就業を希望しない理由は「賃金が希望と合わない」(47.5%)が最多で、「他職種への興味」(43.1%)、「責任の重さ・事故への不安」(40.0%)が続きました。

② 現役保育士の課題|「給与」と「労働時間」がほぼ同率

現役保育士に現在の働き方において課題だと感じていることを尋ねたところ、「給与が低い」(38.0%)と「労働時間が長い」(37.0%)がほぼ同水準で並びました。3位には「キャリアアップの機会が少ない」(29.6%)が挙げられています。

この結果は、現役保育士の定着を図るには「賃金の改善だけ」「労働時間の短縮だけ」では不十分であり、両面を同時に改善する必要があることを示しています。

③ 4人に1人が「短時間正規」を希望 |多様化する働き方ニーズ

現役保育士が今後希望する働き方として、「正規職員(フルタイム)」が64.8%で最多となった一方、「正規職員(短時間勤務)」も25.0%と、約4人に1人が短時間正規の希望を持っていることが分かりました。

ライフステージやキャリアプランによって希望する働き方が変化することを示しており、画一的な雇用モデルの限界が浮かび上がりました。

④ 潜在保育士の復職条件 第1位は「短時間勤務」

復職に関心がある潜在保育士に対し、どのような条件であれば復職を検討するかを尋ねたところ、「短時間勤務が可能であれば」が51.2%と最も多く、「給与が改善されれば」(43.9%)、「柔軟な勤務時間が選べれば」(43.9%)が同率で続きました。

潜在保育士の約44.1%が復職に関心を示しており、条件次第では戻る意思を持つ層が一定数存在することが明らかになりました。

⑤ 現役保育士の約9割が「保育所以外の場」での勤務に関心

「こども誰でも通園制度」の本格実施を控え、保育人材が活躍する場は園内から地域へと広がりつつあります。

保育士として保育所以外の場所で働くことについて、現役保育士の88.8%が関心を示し、具体的には「一時預かり施設」(54.2%)、「子育て支援センター」(39.6%)、「放課後児童クラブ」(30.2%)への関心が高いことが分かりました。

⑥ 求職者の95.3%が生成AIに相談 |「雰囲気」が「給与」を上回る

直近1年以内にWebやAI等で保育業界の求人を探した経験がある保育士に調査を行ったところ、95.3%が生成AI(ChatGPTやGeminiなど)に相談や助言を求めた経験が「ある」と回答しました。生成AIを活用した求人探しは、もはや例外的な行動ではなく標準的な情報収集手段となっています。

さらに、生成AIで知りたい情報として最も多く挙がったのは「職場の雰囲気や働きやすさ」(52.3%)であり、「給与・待遇」(49.5%)を上回りました。求職者が最も知りたいのは、数値だけでは伝わりにくい「現場の実態」です。

■ 「集まり」「定着し」「移れる」仕組みづくり| 構造的課題を解決する5つの提言

本白書では、第三部において、保育人材が「集まり」「定着し」「移れる」仕組みを構築するための5つの提言を行っています。

提言1:ライフステージに応じて働き方を選べる雇用モデルの構築 育児期には短時間勤務、子どもの成長後にはフルタイム、経験を積んだ後には管理職や専門職へとキャリアアップを、といったように、ライフステージやキャリアプランに応じて働き方を柔軟に変えられる「辞めなくてもよい雇用サイクル」の創出。

提言2:地域全体での保育人材配置モデルの整備 保育所だけでなく、一時預かり施設・子育て支援センター・放課後児童クラブなど、地域全体で人材を配置する仕組みづくり。

提言3:給与・働き方の両面から待遇改善を進める 事業者と行政の連携による、短時間勤務者や復職者にも公平に届く待遇改善の設計と透明性の確保。

提言4:子どもと向き合う時間を確保する仕組みづくり ICTの段階的導入による事務負担軽減と、動画を活用した短時間の振り返りを日常化する「学び合いの仕組み」の整備。

提言5:求職者に届く・伝わる採用情報の整備 公式サイトに、給与や休日といった基本条件に加え、職場の雰囲気・育成体制・キャリアパスといった定性的な情報を具体的に発信。

■ 本白書のポイント

  • 現役保育士108名・潜在保育士93名・求職経験者107名への複合的な独自調査による定量データ

  • 「資格者の総数が足りない」のではなく「働ける条件と必要とされる場のずれ」という構造的課題を可視化

  • ライフステージ・キャリアプランに応じた多様な働き方ニーズを定量的に提示

  • 「こども誰でも通園制度」を見据えた、地域全体での人材配置モデルの提案

  • 生成AI時代における求職者の情報行動変化を踏まえた、採用情報設計の方向性を提示

  • 「集まり」「定着し」「移れる」仕組みを構築する5つの具体的提言を掲載

本白書は、以下のURLより無料でダウンロードいただけます。

https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/p6aorjnJqR/s-1x1_25d62221-7650-4345-aa98-94bc9bc0e1cd.pdf 

 

『残業代の計算における単価に関する注意点』

Q) 当院では、遅刻や欠勤をする職員が増えていることから、皆勤手当の支給を考えています。この皆勤手当を残業代の計算に含める必要はありますか?また改めて、残業代の計算における賃金に含めるもの・含めないものを確認しておきたいと思っています。 

A) 残業代にあたる割増賃金は、所定労働時間に対して支払われる 1 時間あたりの賃金を基に算出します。その際、皆勤手当は、算出する賃金に含める必要があります。なお、法律で定められている一定の賃金は除外できます。 

詳細解説:
1.割増賃金の計算方法労働基準法では、法定労働時間を超えた労働に対して、割増賃金を支払うことを義務付けています。その割増賃金額の計算方法は、以下のとおりです。
割増賃金額
=1 時間あたりの賃金 × 時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数 × 割増賃金率月給で支払われる賃金については、毎月支払われる賃金を 1 ヶ月の平均所定労働時間数で除して、1時間あたりの賃金を算出します。

2.1時間あたりの賃金の算出

1 時間あたりの賃金の算出では、基本給のみでなく、各種手当も含みます。ただし、次の①~⑦に限って、算出する賃金から除外できます。
① 家族手当(扶養家族の有無・人数に応じて算定するもの)② 通勤手当(通勤の距離・実費に応じて算定するもの)③ 別居手当④ 子女教育手当⑤ 住宅手当(家賃、持ち家のローン月額・管理費用など、住宅に要する費用に応じて算定するもの)⑥ 臨時に支払われた賃金⑦ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

除外できる手当は、名称にかかわらず、実質に照らして判断されます。質問にある皆勤手当は、①~⑦のいずれにも該当しないことから、算出する賃金に含める必要があります。


一般的に皆勤手当は、欠勤や遅刻・早退の有無によって支給の有無や支給額が変動する仕組みとします。そのため、皆勤手当の支給の状況に従い、月ごとに1時間あたりの賃金が変動することもあります。


なお、診療報酬には、医療機関などに勤務する職員の処遇改善を目的とした「ベースアップ評価料」などの仕組みがありますが、これに基づいて「ベースアップ手当」などの形で毎月支払われる手当も、除外できる手当には含まれていません。

 

保育士 負担減らし働きやすく…補助者やアプリ活用 効率化(読売新聞より)

人材確保が課題となっている保育現場で、保育士の業務負担を軽減する取り組みが進んでいます。ゆとりのある保育士の配置、ICT(情報通信技術)の活用などで働きやすい環境を整え、人材を集めるのが狙いです。国も働き方の改善を後押ししています。

子どもたちと遊ぶ保育士の藤原さん(中央)(18日、大阪市の「たからこども園」で)

 「電車動くよ。見ててね」。5月中旬、大阪市西淀川区の認定こども園「たからこども園」で、保育士の藤原衣美香さん(33)がおもちゃをレール上に走らせ、子どもの興味を引いていた。そばでは、ほかの保育士2人も子どもたちに目を配る。

 1歳児クラスでは、9人を3人の保育士で見守る。6人につき1人という国が定める配置基準より手厚い。国や市の補助金を人件費に充てている。

 藤原さんは「心と時間に余裕を持てる。私たちにゆとりがあると、子どもたちも落ち着いて過ごすことができる」と話す。

 同園では、年齢ごとのクラスに担任を2人置く。休みが取りやすく、お互いに悩み事を相談しやすいという。体育や音楽の指導には外部講師を招く。清掃も、登園・降園時の交通安全の見守りも、アルバイトの保育支援者の協力を得て保育士の仕事を減らしている。

 同園など、4か所の保育施設を運営する社会福祉法人「たから福祉会」では、完全週休2日制を取り入れているため、土曜日に働くと平日に休める。誕生日に取れる休暇を導入しており、3年目の保育士の浜田菜月さん(24)は「プライベートな時間を確保しやすいので、メリハリのある働き方ができている」と話す。同法人の待遇に魅力を感じ、大学卒業後、地元の神戸市から引っ越してきた。

 藤原晋作園長(32)は「働く場所として選ばれるよう、保育士がやりがいを持って働ける職場作りに努めたい」と話している。

 

人材不足が深刻

ICTシステムで連絡帳を確認する保育士(20日、東京都世田谷区で) 保育現場が待遇改善に取り組むのは、保育士の不足が深刻なためだ。こども家庭庁によると、求職者1人あたりの求人件数を示す有効求人倍率は今年1月時点で3・88倍と、全職種平均(1・27倍)を大きく上回る。子どもの事故防止や、体調変化に常に気を使うという責任の重さに比べ、賃金が低いことなどが背景にある。国は賃上げを進めてきたが、全産業平均より月約5万円低い。

 事務作業の負担も大きい。自治体に提出する書類や、保育の記録のほか、保護者への連絡を手書きすることが多く、手間と時間がかかる。こども家庭庁が2025年度に行った委託調査で、負担が大きいと感じる日常業務を保育士に尋ねたところ、週の予定表など書類の作成(50・8%)が最も多く、子ども一人ひとりの保育記録の作成(49・4%)が続いた。

 デジタル化で、書類に関する業務負担を減らす動きも進む。東京都世田谷区の「おおわだ保育園世田谷豪徳寺」は、ICTを使ったシステムを導入している。保護者との連絡帳をアプリ化し、指導計画をデータで管理する。子どもの体温といった記録の転記や、手書きの手間を大幅に削減している。

 保育士の森明日香さん(26)は「書き間違いを直しやすく、過去のデータも見ることができるので、とても便利だ」と言う。

 馬場睦代園長(59)は「デジタルの活用で保育士が子どもと接し、保育に時間を費やせる環境を作りたい」と語る。

国も後押し

 こども家庭庁は、保育現場の取り組みを後押しする。今年度から、ICTシステムを活用し、業務負担の軽減を進める施設に対し、保育サービスの費用を上乗せする。

 保育施設が市区町村に保育サービスの費用を請求する際も、オンラインでスムーズに手続きできるよう、今年度中に全国統一のシステムを稼働させる予定だ。

 また、保育士の資格がない人を保育補助者などとして採用した施設に、賃金の一部を補助する。掃除や、おもちゃの消毒などの業務を受け持ってもらうことで、保育士が保育に専念できるようにする狙いがある。

 桜美林大の大下純准教授(保育実践学)は「保育士が働きやすい環境は子どもたちのためになり、保護者の安心につながる。待遇の改善を進め、仕事の魅力をさらに発信してほしい」と話している。

「潜在保育士」ら現場へ 

 自治体も、保育現場の人手不足対策に知恵を絞る。

 神奈川県は昨年度から、シニアらが、保育補助者の仕事を体験できる「キッズサポーター派遣事業」を始めた。保育施設で4時間ほど業務に触れ、実際の就労を希望すれば、人材派遣会社がサポートする。昨年度は約150人が参加し、保育補助者として就労した人もいる。

 大阪府豊中市は昨年7月から、市立こども園で有償ボランティアを募集している。資格があっても保育現場で働いていない「潜在保育士」や、保育を学ぶ大学生らが対象だ。工作の準備や製作、遊びの見守りなど、1回3時間ほどで4000円の謝礼がある。潜在保育士の復職や、学生の志望を高めるのが狙いだ。これまでに3人の潜在保育士が、ボランティア先で非常勤職員として採用された。市の担当者は「今の保育現場を知るきっかけにしてほしい」とする。

 

【社労士解説】寝坊による遅刻を「時間単位有休」に振り替えるべき?クリニック・介護・保育園の適切な労務管理とは

「スタッフが寝坊して遅刻した際、『時間単位の有給休暇(有休)に振り替えてほしい』と言われたが、認めるべきだろうか……」

クリニックの院長先生や、介護施設・保育園の運営者様から、このようなご相談をいただくケースが増えています。人手不足が深刻な医療・福祉業界において、スタッフのモチベーション維持と職場規律のバランスに悩む経営者の方は少なくありません。

結論から申し上げると、寝坊による遅刻を時間単位有休へ振り替えるかどうかは、クリニックや施設のルール(就業規則)および経営者の判断に委ねられます。しかし、職場の規律を守るためには「原則として認めない」とするのが適切です。

本記事では、近年導入が進む「時間単位有休」の正しいルールや、寝坊・突発的な遅刻に対する適切な労務管理のポイントについて、医療・介護・保育業界に特化した社労士が分かりやすく解説します。

1. そもそも「時間単位有休」とは?導入時の法的ルールと留意点

働き方改革の一環として、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を図るために導入されたのが「時間単位有休」です。 1日単位ではなく時間単位での取得を認めることで、通院や子どもの送迎、役所の手続きなど、スタッフの柔軟な働き方をサポートできるメリットがあります。

しかし、この制度は「法律によってどの職場でも自動的に使えるもの」ではありません。 導入にあたっては、以下の法的要件とルールを厳守する必要があります。

① 労使協定の締結が必須(就業規則への記載も必要)

時間単位有休を有効に機能させるためには、事前に「労使協定」を締結しなければなりません。労使協定が締結されていない状態では、たとえスタッフから要望があっても、時間単位での有休を取得させることは法律上できません。

② 年間の取得上限は「5日以内」

時間単位有休として取得できる上限は、1年で5日以内と法律で定められています。 具体的な時間数は、そのスタッフの1日の所定労働時間によって計算されます。

  • 1日の所定労働時間が8時間の場合: (年間40時間まで)

  • 1日の所定労働時間が7時間の場合: (年間35時間まで)

この上限を超えた場合は、時間単位での取得は認められず、通常の「1日単位」または「半日単位」で取得させる必要があります。

2. 寝坊による遅刻を「時間単位有休」に振り替えるべきか?

では、本題である「スタッフが寝坊して遅刻した時間を、時間単位有休に振り替えたい」と申し出てきた場合の対応について考えてみましょう。

有給休暇は「事前申請」が原則

法律上、有給休暇は労働者が「事前に時期を指定して請求するもの」です。そのため、遅刻が確定した後や、出勤後に行われる「事後申請」を認めるかどうかは、基本的にはクリニックの院長や施設長の裁量(判断)に委ねられます。「事後申請の有休は一切認めない」というルールにすることも、法的には可能です。

現実的な運用と「寝坊」の境界線

実際のクリニックや介護施設・保育園の現場では、突発的な体調不良や、子どもの急な発熱、公共交通機関の遅延といった「やむを得ない理由」による遅刻・欠勤に対しては、事後申請であっても有休への振り替えを認めるケースが一般的です。

しかし、「寝坊」に関しては、有休への振り替えを認めるべきではありません。

理由の緊急性・やむを得なさ 事後申請の対応(推奨) 労務管理上のポイント
突発的な体調不良・家族の看病 認める(有休振り替え可) 予期せぬ事態であり、生活保障の観点からも許容が一般的
公共交通機関の遅延 遅延証明書等で対応 遅延証明書があれば、そもそも遅刻扱い(不就労)にしないケースも多い
本人の不注意(寝坊・勘違い) 認めない(欠勤・遅刻扱い) 自己管理不足。有休にすると職場の規律が乱れる原因に

なぜ寝坊による有休振り替えを認めてはならないのか?

最大の理由は、「職場の規律(モラル)が乱れる原因になるため」です。

「遅刻をしても、有休に振り替えれば給与も減らないし、怒られない」という安易な考え方がスタッフの間に蔓延してしまうと、遅刻に対する罪悪感が薄れ、真面目に出勤している他のスタッフのモチベーション低下を招きます。特にクリニックや介護・保育の現場は、1人の遅刻が現場の回し方(患者対応、シフト、園児の受け入れなど)に直結するため、チーム全体の負担に繋がります。

事後申請であっても「理由によっては有休への振り替えを認めない(欠勤または遅刻控除とする)」という運用を、事前に就業規則などで明確に規定しておくことが重要です。

3. 院長・経営者が必ず知っておくべき「時間単位有休」3つの注意点

時間単位有休を運用・管理するにあたり、クリニックの院長や施設長が勘違いしやすい、法的・実務上の注意点を3点解説します。

① 1日単位への変更を「強制」することはできない

スタッフが「時間単位有休(例:2時間)」を申請してきた場合、経営者側の都合で「中途半端だから1日休んでほしい」と、1日単位への変更を強制することはできません。逆のパターン(1日有休の申請を、時間単位に変更させること)も同様に不可です。有休の単位を変更できるのは、あくまでスタッフ本人の同意・希望がある場合に限られます。

② 「年5日以上の有休取得義務」の5日分にはカウントされない

2019年から、年10日以上の有休が付与される従業員に対して「年5日以上の有休を取得させること」が義務化されました。 ここで非常に重要なのが、時間単位で取得した有休は、この「義務化された5日」には一切カウントされない(含めることができない)という点です。

例えば、あるスタッフが年間で計24時間(日換算で3日分)の時間単位有休を取得したとしても、別途「1日単位」または「半日単位」で5日以上の有休を取得させなければ、法律違反(罰則の対象)となってしまいます。

③ 前年度の繰り越し分があっても、上限は「年間5日以内」

有休には2年間の時効があるため、前年度に使い切れなかった有休は翌年度に繰り越されます。しかし、時間単位有休の取得上限は、前年度の繰り越し分を含めても「年間5日以内」となります。

【間違えやすい具体例】

  • 前年度の使い残し:2日と4時間

  • 今年度新規付与分の枠:5日

この場合、足し算をして「今年は7日と4時間まで時間単位で取れる」ということにはなりません。前年の残りがあろうとなかろうと、その年度に時間単位として消化できるのは「最大5日分まで」となります。

4. 医療・介護・保育の現場に求められる適切な就業規則と労務管理

クリニック、介護施設、保育園は、いずれも「人」がサービスを提供する業界です。スタッフが安心して働ける環境を整えつつ、健全な組織体制を維持するためには、グレーゾーンを作らない明確なルール設計が不可欠です。

  • 遅刻や欠勤時の有休振り替えルールを明確にする(どのような場合に事後申請を認めるか、就業規則やマニュアルに明記する)

  • 時間単位有休の労使協定を正しく締結・運用する

  • 有休管理簿を整備し、義務化された「年5日」の未達を防ぐ

これらの労務管理を誤ると、スタッフ間の不公平感から離職に繋がったり、労働基準監督署からの是正勧告を受けたりするリスクが高まります。

まとめ:業界特化の社労士へお気軽にご相談ください

時間単位有休は、正しく運用すればスタッフの定着や採用力の強化につながる素晴らしい制度です。しかし、通常の有給休暇とは異なる複雑なルールが多いため、トラブルを未然に防ぐためには制度設計を正確に行う必要があります。

「うちのクリニックの就業規則で、寝坊のペナルティは課せる?」 「介護・保育のシフト制現場で、時間単位有休をスムーズに回すには?」

このようなお悩みがございましたら、業界特化の社労士である当事務所へお気軽にご相談ください。それぞれの業界特有の事情に合わせた、最適な労務管理ソリューションをご提案いたします。

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