保育
「130万円の壁、106万円の壁」について
厚労省から正式な情報が出始めましたので、共有いたします。
1.130万円の壁について
制度の概要としては「繁忙期の残業等により、一時的に収入が増加したために130万円をこえてしまったとしても、健康保険の扶養に入り続けることができる」というものです。
ただし、「一時的な収入増加」であることが条件なので、そもそもの雇用契約書の労働条件が年収130万円を超えてしまっている場合等、一時的と認められない場合はこの制度の対象外となります。そのために「一時的な収入増であることの事業主証明」が必要となります。また、最終的な扶養認定については、被保険者が加入している健康保険組合等の判断となります。
2.106万円の壁について
現在、社会保険に加入していないパートさんが、労働時間を延長することで社会保険の加入要件を満たした場合、キャリアアップ助成金として最大50万円の助成金が受けられるというものです。
この助成金はあくまでも、会社が申請して会社に振込まれるものなので、労働者本人に50万円が支給されるわけではありません。
あらたに社会保険に加入するパートさんが社会保険料の自己負担により手取りが減少しないような取り組みを会社が行うための助成として、 このキャリアアップ助成金のコースが新設されております。
詳細は当社にお問い合わせください。
Q
現在の就業規則では「欠勤が1か月以上にわたったとき・・・休職期間は3カ月」とあります。ただ、休職および復職を命ずる判断基準等の詳細の定めはありません。就業規則の規定についてアドバイスをお願いします。
A,
A 休職制度を設けるのであれば、休職と復職を命じるかどうかを判断する上での、公正な客観的な判断基準が必要です。その他にも就業規則に盛り込むべき内容は下記になります。
①休職について
・休職を命じる職員に要件
・休職を命じる判断基準
・休職期間
・休職中の賃金
・休職中の留意点
②復職について
・復職後の働き方
・復職を命じる判断基準
③休職期間完了時の取り扱い
上記の中で、休職を命じる判断基準では、例えば、「診断書の提出」はもちろん、「回復に何年もかかる場合には休職は命じない」または「業務外の同じ傷病が理由で欠勤と出勤を繰り返すようなときには休職は命じない」など、状況を想定しながら規定に落とし込んでいく作業が必要となります。休職期間については、「休職期間中であっても園は社会保険を負担しなければならないので、これまでの貢献度合いを考慮し、勤続年数が長い職員と短い職員では差を設ける」ことも大切です。
復職については、復職を命じる判断基準は、本人の復職願いの提出の他、主治医の診断書、
本人との面談実施や園指定の医療機関の受診なども必要です。また、復職後、もし同じ傷病で欠勤した場合には復職を取消、直ちに休職を命じることとし、休職期間は、前の休職期間と通算すること等の規程も必要です。
休職期間満了後の取り扱いについては、回復を見込んで休職を命じたけれど、回復できない場合には、残念だけど退職とせざるを得ない、ということで、休職期間満了日をもって
退職とします。
まずは、上記の内容を規定に明記しておくことで、いざというときには、冷静に対処できるようになります。
⇒保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
政府は、教育・保育施設における送迎バス園児置き去りなどの事故を受け、命の危険につながりかねない事例100件を取りまとめた「ヒヤリ・ハット事例集」を公表した。おもに子供の所在や行動を把握できなくなった事例を中心に掲載している。
政府は、教育・保育施設における送迎バス園児置き去りなどの事故を受け、命の危険につながりかねない事例100件を取りまとめた「ヒヤリ・ハット事例集」を公表した。おもに子供の所在や行動を把握できなくなった事例を中心に掲載している。
「ヒヤリ・ハット事例集」は、2022年度「子ども・子育て支援調査研究事業」の国庫補助を受け、日本経済研究所が作成し2023年3月付で公開した。事例集の作成にあたっては、有識者や教育・保育団体、先行自治体を構成員とする「意見交換の場」を開催し、各団体の協力のもと収集。場面ごとの傾向や共通の注意事項について分析し、試行的に重大さのレベルをリスクに応じてレベル0~3の4段階に分類している。
ヒヤリ・ハット事例は、「送迎バス」7件、「園外保育」25件、「園内(室外)保育」29件、「園内(室内)保育」39件の4場面100件。リスクレベルは、間違ったことが実施されたが子供には変化がなかった場合(実害なし)の「レベル1」が9割を占めている。
最多は、園内(室内)保育での「抜け出し」19件。ついで園外保育での「見失い・行方不明」10件、園内(室外)保育での「抜け出し」10件、「置き去り」9件。「抜け出し」の要因は、職員の思い込みや確認不足のほか、子供の行動把握ができていなかったことなどが多くみられた。
政府は、同事例集を各教育・保育施設が職員に対し園内で事故防止対策の研修を行う際に活用したり、行政などがヒヤリ・ハット事例集を作成する際の参考資料としての活用を想定。事故予防に役立ててもらいたいとしている。
⇒保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
どこかでこんな言葉を聞いたことがあります。「自立とは、たくさんの依存するものをもっていること」「自立」というと、自分で立っているようですが、実はそうでありません。人が生きている以上、必ず何かに依存して生活は成り立っているものです。なにかひとつのことに依存したり、しがみつたりしていては、それがなくなったときにバランスが崩れ、生きていけなくなります。ひとつのものがなくなってもちゃんと立っていられること、自分で自分自身を引き受けられることを「自立」と呼ぶのでしょう。
昔からよく日本人は「おかげ様」という感謝のことば、「お互い様」という謙虚さ、やさしさの言葉を挨拶にように口にしてきました。これは素晴らしくバランスのとれた言葉で、この二つを忘れなければ、たいていの人間関係はうまくいくといってもいいかもしれません。自分がうまくいったときは「おかげ様」。よかったねとかおめでとうと言われたときは「おかげさま」と返します。自分が今こうしていられるのは、多くの人やものに支えられているということ。周りにいる人だけでなく、陰となって支えてくれている祖先や自然に対しても「おかげ様」です。
他人のよくないことに接したときは「お互い様」。「迷惑かけちゃってごめんなさいね」と言われたときは「お互い様ですから」と返します。日常生活の中で、相手に腹が立ったり、失望したときでも、心の中で「お互い様」とつぶやくと「自分にも至らない点がある。知らず知らずのうちに迷惑をかけていることもあるのだろう」と多くは許せる気持ちになってきます。
人は他人のやったことに対して厳しくなりがち。余裕がなくなると、自分の利益だけを考えてしまう「エゴ」が顔を出します。エゴがあるから感情の行き違いや争いが起こります。
他人は「~してくれない」私は「こんなにしているのに」と嘆く前に、目に見えないところで人に支えられていること、助けられていることに気づけば、そんなエゴを「ちょっと待ってそうじゃないでしょう」と修正することもできます。
「おかげ様」「お互い様」を呪文のように繰り返していれば、こころの持ちようが変わります。不思議と自分は一人じゃない。多くの人に支えられている、と心強い感覚になります。
「おかげ様」「お互い様」で人やものや世界とつながることができれば、なにも怖いものはないとさえ思えてくるものです。自分がひとのために何かできることはあるし、人に何かをしてもらうこともある、という姿勢・・・。それが本当の「自立」ということだと思うのです。(有川真由美「上機嫌で生きる」より)
⇒福祉・医療人材の人間力向上研修 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
「皆さんは、“正直”と“誠実”の違いを説明しなさい、と言われたら、何と答え
ますか?」
・・・・・・・・
日常的に何となく使い分けていますが、あらためて
“違いは何?”と質問されたら、
なかなか答えずらいものがありますよね。
何だろう?
ある先生はこう表現されました。
「正直とは、“現実に言葉を合わせる”
ことであり、
誠実とは、
“言葉に現実を合わせる”ことである」
・・・・・
素晴らしい定義だと思いませんか?
“正直”
は、時には難しいかもしれませんが、
実行するのは比較的容易な事かもしれません。
でも、
“誠実”
は、なかなか難しいですよね。「言葉に現実を合わす」
この積み重ねを継続することで、私たち経営者やリーダーは成長していくのかも
しれません。
自分自身や自分自身の家族は勿論、社員や社員の家族、
そして、ご利用者やその家族をしっかり守るためにも、
私たち経営者やリーダーは、
仕事や自分自身、全てに対して
“誠実に”
向き合い続けなければならないのでしょうね。
⇒福祉・医療人材の人間力向上研修 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
ある園長先生からのご相談です。
この園の開園時間は9時から19時まででです。子供たちが順次登園し、9時半から午前中いっぱいまでがメイン活動です。年齢に応じて12時前後から昼食、12時30分以降は午睡クラス、クラス活動13時30以降は降園、または預かり保育・・・とさらに分かれていき19時の閉演に向けて子供の人数は段階的に減っていきます。園長先生の希望は、午前中は職員を手厚く配置し、メイン活動を充実させたいと思っていらっしゃいます。
しかし、遅番職員は10時に出社するので、9時半からスタートするメイン活動にと途中方はいることになり、落ち着いて取り組むことが出来ない、これを何とかする方法はないですか、というご相談です。
職員の配置をコントロールする。
園の一日の流れに応じた子供の活動状況や人数によって、職員の人数を手厚くしたり、配置基準通りの人数にしたりすることを可能にする職員配置を検討することも可能です。
現在の働き方は1日8時間の固定で、1か月変形を採用し、各月の労働日数は決まっていました。園長先生が実現したいメイン活動の充実を念頭に置きながら就業規則の運用を考えてみました。例えば下記のような運用です。
①1日労働時間は、6時間、8時間、10時間。の3種類とする。
②各月の6時間の日と10時間の日を、同じ日数で設定する。
③就業規則に定めていた1か月変形の各月の労働日数は変えずに、各月の6時間、8時間、10時間の日数を決める。
就業規則は下記のように書き換えます。
|
従来の定め |
今後の定め |
早番 |
8時間労働 7:00~16:00(休憩60分) |
6時間労働 7:00~13:00(休憩なし) |
普通番 |
8時間労働 8:00~17:00(休憩60分) |
8時間労働 8:00~17:00(休憩60分) |
遅番 |
8時間労働 10:00~19:00(休憩60分) |
10時間労働 8:00~19:00(休憩60分) |
但し書き |
|
月内において、早番と遅番の日は同じ日数とする |
6月の労働日数と労働時間を示した下記表のように6時間、10時間の日を同じ日数で設定し、各月にの労働日数は変えていません。これであれば、各月の労働時間数はこれまで通りです。
|
以前 |
これから |
所定労働日数 |
21日 |
21日(早番4日、普通13日、遅番4日) |
所定労働時間 |
168時間 |
168時間 |
このようにした結果、9時半から午前中のメイン活動にはその日に出勤する6時間、8時間、10時間すべての職員の配置が可能になります。
毎月の勤務表は、前月末日までに職員に提示します。勤務表の作成に当たっては週(日曜から土曜)に1日の休日を確保しながら、各月で決めた6時間、8時間、10時間の日数を労働日とします。
この運用を始めた園長先生にお伺いしました。
午前中に職員の手厚い配置が可能になり、子供への配慮が行き届き、子供の意欲にこたえる保育ができるようになりました。「メイン活動の充実」を実感することが出来ています。また育成担当職員に余裕が出来、OJTによる育成に成果が出始めました。当初は10時間労働になる日の仕事ぶりが心配でしたが、時間が長いことをうまく利用して計画的に業務を進めたり、行事の準備に取組む姿が見られ、心配は杞憂に終わってくれました。13時で勤務終了となる早番の日は休憩時間が無い為、拘束時間が短いので、職員はワークライフバランスを活かし、趣味や習い事を始めた職員もいたり、概ね職員にも好評のようです。
⇒保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
大阪・寝屋川市は、市内の保育園が子どもに「ごはんあげへんよ」と大きな声を上げるなど心理的苦痛を与えるような不適切な保育をしていたとして、改善を求める指導を行いました。
寝屋川市によりますと、指導を受けたのは、市内にある認可外保育園です。
園の様子を不審に思った保護者が、先月(9月)、園内の様子を録音して市に連絡したということです。
音声データでは、園長が、子どもに対して「やかましい」とか「ごはんあげへんよ」などと繰り返し大きな声を上げていたということです。
市が立ち入り調査を行った結果、園側は録音されたやりとりがあったと認めたということです。
寝屋川市は、心理的苦痛を与えるような不適切な保育をしていたとして、今月6日、園に対して、改善を求める指導を文書で行いました。
市に連絡した保護者は、「なぜそういう保育になったのか説明してほしい。感情的に怒らないようにして今後は適切な保育をしていただきたい」と話していました。
市によりますと、保育園は保護者に謝罪したいという意向を示しているということです。(NHK 関西)
⇒保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
「よりよい社会をつくる」という創業者の理念を、社員が個々の持ち場で実践できる仕組みづくりに注力するオムロン。理念実践の成果を表彰する世界大会を開催し、経営トップは国内外の現場を足しげく訪ねて社員と膝詰めで対話する。理念への共感が組織を強くすると知っているからだ。ベクトルを合わせる努力は、営業利益で過去最高を更新する成長力の礎となっている。
「TOGA世界大会」で開会の挨拶をするオムロンの辻永社長(京都市下京区)
「創業90周年の記念すべき年にTOGAが開催できて本当にうれしい」。9月下旬、オムロンが京都市内で開催した「The OMRON Global Awards」、略称「TOGA」の世界大会で、辻永順太社長はこう挨拶した。TOGAは理念実践の好事例を国内外チームの代表が京都に集って発表するイベント。オンライン含め社員のほぼ半数にあたる1万4000人が参加した。
オムロンにとってTOGAは「投資」の一環だ。早稲田大学の教授が過去のイベントの費用対効果を試算したところ「10億8千万円の支出に対して業績に与えたインパクトは少なく見積もっても17億5千万円」と推計された。多様な発想を生むきっかけとなり、イノベーション創出数の増加につながったからだ。
11回目となる今回は、オムロンヘルスケアの松島美帆さん(40)が先陣を切った。製品包装の脱プラスチック化を実現した仕組みを説明。所属する包装設計チームに加えて営業や製造、開発部門、中国やベトナム拠点など関わった約40人分の熱意を伝えた。
プレゼンを終えると会場は拍手に包まれた。中途入社組の松島さんは「TOGAを通じてオムロンが今まで以上に好きになった」とほほ笑む。
最高人事責任者(CHRO)の冨田雅彦執行役員専務は「TOGAは単なる表彰制度ではない」と力説する。評価は売り上げや利益の大きさではなく、企業理念の実現度合いで下す。よい取り組みを全社で共有するベクトル合わせが目的だ。最終選考に残っても順位は付けない。「社員にとってはこのプレゼン自体が働きがいの一つになっている」(冨田氏)
創業者の立石一真氏が社憲を制定したのは1959年だ。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」との言葉は、90年に制定された企業理念に引き継がれた。オムロンは23年6月に取締役を刷新、設立後初めて創業家の取締役が不在となった。6月に取締役を退任した立石文雄名誉顧問は「経営の求心力を企業理念に置きかえてきた」と話す。
冨田氏も「今の社員は創業者を直接知らない世代が大半。仕事で意思決定に迷ったときは、企業理念に立ち返る」と説明する。重要な判断の軸になるからこそ、理念浸透には手間を惜しまない。
例えば、経営トップは国内外の社員と面談する「車座対話」を実施。辻永社長は23年4月の就任から頻繁に現場を訪ね、半年で20回以上の職場対話を続けてきた。企業理念と現場業務に乖離(かいり)がないか、自ら確かめるためだ。
オムロンは働きがいなどを調べる「VOICE」というエンゲージメント調査を実施している。理念の実践に何が必要か、生の声を集めているのだ。22年度の調査では4万件近くコメントが集まった。辻永社長と冨田氏は移動時間などを使って全ての声に目を通す。
「経営方針として理念実践を一層強化し、盤石にしていく」と辻永社長は力を込める。きれい事ではない。企業理念の徹底した浸透は利益につながる。経営は理論や手法などの技術面に加え、法人としての精神性まで重視される時代になっている。(日本経済新聞 朝刊 ビジネス10/19 )
2024年度4月入所の認可保育園の申請の多くは、10月から12月に行われる。「保育園落ちた日本死ね」が流行語大賞を受賞したのは2016年のこと。待機児童問題に対して匿名のブログに書き込まれたこの言葉は、待機児童数2万3000人をこえる深刻な問題を明らかにしたものだった。 それから7年経った2023年4月、こども家庭庁が発表した2023年4月時点での待機児童数は2680人。子どもの人口が減少している面もあるとはいえ、2021年に初めて1万人を割ったことを考えると、かなりのスピードでの待機児童対策が進んでいることがわかる。 同時に、2024年6月からの施行が検討されている「こども誰でも通園制度」のように、就労要件を問わず時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付制度も検討されており、子育てを孤独にさせない仕組みが進んでいるともいえる。 しかし、並行して重要なのはやはり「意識」の問題だ。保育園に入園できること、男性育休が増えることはとても大切だが、それ「だけ」ではなく、「家事育児をするもの」という前提の意識改革が必要だ。家族の中で男性でも女性でも、家事育児をしていけばいい。そして「男性だから」「女性だから」ではなく、「家事育児をしながら働く人」に対してのケアも重要である。 地域でのサポートがファミリー・サポート・センター、通称「ファミサポ」。ベビーシッターに近い役割を担う人とサービスを必要とする人をマッチングさせる事業だ。2023年2月からファミサポで「役割を担う側」を始めたという原ゆかりさんは、お迎えに行った際に「お迎えが最後じゃなくてよかったね」という言葉を子どもに言っているのを聞いて、「一生懸命働いている親を誇らしく思っていいのに」とという疑問を抱き、その体験を綴ってくれた。その記事に対しての意見から、多くの気づきがあったという。
様々な立場での意見が寄せられた
前回、ファミリー・サポート事業の提供会員として保育士さんとのやりとりの中で感じた違和感について寄稿しました。記事に対しても改めてたくさんのフィードバックをいただき、またしてもハッとする気づきをもらいました。 記事にする前にどれだけ熟考したつもりになっていても、たくさんの方の声を聞いたつもりになっていても、こんなにもまだ考えが及んでいなかったのか...と、執筆の段階で持っていた知識の偏りや想像できていた幅の狭さを実感する経験でした。率直なご意見を寄せてくださった皆様、ありがとうございます。 この私の記事にはお子さんの立場、そして保育士さんの立場に寄り添った視点が欠けていたと感じました。近年報じられる保育現場での胸の痛くなる事件に触れ、それ自体は許されることではない大前提はありながらも、保育士の方々が置かれている環境が過酷であることや社会一般の保育士に向けられる偏った視点が、保育士のなり手減少や働きづらさにつながっていることを指摘くださる声を特に多く寄せていただきました。 大事な気づきと学びをくださった皆さんからのコメントをご紹介させていただきながら、改めて今感じていることを綴りたいと思います。
「お迎え最後じゃなくてよかったね」「ファミサポにも慣れたもんだね」……ファミサポ提供会員としてお子さんを迎えに行った際に、保育士さんから子どもにかけられた言葉に対して感じた違和感について記した前回の記事。言葉の真意がどんなものだったか……ということのほかに、表現の工夫についてたくさんのコメントを寄せていただきました。
「最後」「~じゃなくて」等の言葉にはネガティブな印象や否定の要素が伴うこと、「お迎え嬉しいね」や「いっぱい一緒に遊べて楽しかった」等、子どもも大人もそれを聞く人がなるべくポジティブに受け止められるような表現を選んで、ワードチェンジしてもらえた方が心地いいこと……同じことを伝えていたとしても、表現の仕方ひとつで受け止める側の気持ちが変わる場合があることを指摘くださるコメントが多数ありました。 また、言葉を覚える段階にある成長期の子どもたちにとって、優劣や競争を意識させるような「早い」「遅い」という言葉は気になる言葉なので使い方に気をつけるべきであることを指摘くださるお声もありました。 実際に、肯定的な言い回しで子どもや保護者の方と接することを心がけられている保育士さんや幼稚園の先生などとのコミュニケーションに本当に助けられた、自分にはできないからすごいと思うと尊敬と感謝の気持ちを共有してくださる方もいらっしゃいました。 言葉一つに傷ついたり、逆に涙が出るほど勇気づけてもらったり……私にも経験があります。肯定的な表現を心がけることで、周りに引っ掛かりを覚えさせないだけでなく、信頼や安心を生むことにもつなげることができるかもしれない。こうして文字を書く機会をいただいている身としても、一層気をつけていきたいなと背筋の伸びるコメントを寄せていただきました。
保育士さんからかけてもらった言葉に救われた

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保育士さんからかけてもらった言葉に救われたという保護者の方々も大勢いらっしゃいました。申し訳なさそうに延長保育ギリギリにお迎えに行った際に、「大丈夫!」「安心して」「自信を持って」「お仕事お疲れ様です」という労いの言葉をかけてもらい、涙が溢れてしまったという経験を寄せてくださったのは、一人や二人ではありませんでした。 また、延長保育を楽しんでいるというお子さんのそばには、ある時間を過ぎると特別な玩具や遊びを用意してくれるなど、お子さんが保護者の迎えを楽しく待てるような仕掛けを工夫されている保育士さんの存在があるという事例をたくさん寄せていただきました。どの方もやはり、そんな風に子どもが延長保育を楽しめる環境を用意してくれた保育士さんに対する感謝の気持ちを言葉にされていました。
大切なのは子どもがどう感じているか
親が立派に仕事をしていることを誇らしく思っていると話す子もいる。でも「さみしさ」を感じてもいたら、その思いも大切にしたほうがいい
前回の記事では、「お迎えが最後」を楽しむ子どももいることについて記載させていただきました。ですが、それでもやっぱり最後になるのは嫌だと思っていたり、友達が先に帰っていくことを見送りながら待つことに寂しい想いをしている子どもがいることは看過すべきでなく、そこへの寄り添いが何よりも大事であることを指摘してくださるコメントが複数ありました。 まずは一番の当事者である子ども自身がどう思うか。子ども一人一人に多様な受け止め方や感じ方、考えがあるはずで、本音をすぐに話してくれることもあれば遠慮した応えを口にすることもある。大人がしっかり状況を子どもに説明して理解を求めることも大事だけれど、逆のベクトルも尊重されて然りで、子どもの思いにじっくり耳を傾けることが大事という声に多くの共感が寄せられていました。 そして「最後じゃなくてよかったね」を聞く、ほかの子ども達の気持ちに寄り添ったご意見もたくさんいただきました。ファミサポとして担当していたお子さんをお迎えに伺った際に聞いた「お迎え最後じゃなくてよかったね」という言葉を受けて、私がその心情を慮ったのはお子さん本人と保護者の方でした。 ですが、思い返すと教室にはまだ子どもたちがいました。その言葉が聞こえていたかもしれません。お友達が先に帰宅することを見送りながらお迎えを待つ身としてその言葉を聞いたらどう思うか、悲しく辛い気持ちになるのではないか……。最後のお迎え=嫌なこと、可哀想なことという刷り込みが、その声がけを受けた子どもだけでなく、周りで聞いている子ども達にとっても心にチクリとするものを生んでしまう可能性を孕んでいることをご指摘いただきました。 ◇子どもの気持ち、親の気持ち、保育士の気持ち……保育の現場では多くの人が様々な感情を持って、「保育」に向き合っている。後編「同じ保育園に通う兄弟、一人が体調を崩したら? 誰にとっても優しい保育環境とは」では、保育士の置かれたシビアな現状や、保育のときに困ったことの率直な親の立場のコメントもご紹介していく。
原 ゆかり(NGO MY DREAM. org設立者、獨協大学非常勤講師)
《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》
「企業文化は戦略に勝る」。ピーター・ドラッカーの言葉だ。これを大切にして成長を続けている介護事業者がいる。ケア21。主力は訪問介護、グループホーム、有料老人ホームなどで、他のサービスも合わせた施設・事業所の総数はグループで全国550件超にのぼる。
掲げている企業文化の1つが、「人を大事にし、人を育てる会社」。激化する人材確保の競争とどう向き合うべきか学ぶため、依田平会長を尋ねた。あわせて、今後の業界の変遷をどう予見しているかも伺った。
「これからは人を大事にする会社しか残らない」。そう笑顔で語った依田会長は、100年続く老舗企業を創りたいと意欲をみせた。
◆ 原点は小4の時の作文
−− こんにちは。はじめまして、どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございます! どうぞよろしくお願いいたします。
−− 現在はCCO、最高文化責任者というお立場ですが、主にどのような職責と向き合っておられるのでしょうか?
このCCOという役職を設ける企業は、アメリカはもちろん日本でも増えてきています。我々もやはり、優れた経営戦略を策定・遂行していくことだけでなく、より良い社風を持つことが非常に大切だと考えています。企業として業績を上げ、幅広く社会に認めて頂けるように成長するためには、多くの方に支持される社風づくり、文化づくりが欠かせません。
我々は「人を大事にし、人を育てる」「福祉理念と市場原理の融合」「常に考え、変わり続ける」「最高のサービスの提供」などを掲げ、その具体化を目指してきました。これらを体現することが、弊社で働く職員の皆さんの幸せにつながり、サービスを受ける利用者さんの喜びにつながり、結果として社会全体を良くすることにつながっていく − 。そんな良い循環を生み出すことを主な仕事にしています。
−− 介護・障害福祉の事業をはじめたきっかけを教えてください。
私は商売人の家系に生まれました。会社を経営している身内が多く、食事の時もいつも仕事の話ばかりしているような家族でした。
原点はおそらく、小学4年生の時の作文ですね。将来の夢として「株式投資で大儲けする」と書いて、当時の先生に呼び出されたんです。

「金儲けもいいが、人間はそんなことのためだけに生きるんじゃない。世のため人のために尽くすことが、人間の生きがい、喜びなんだ」。そんな趣旨のことを力説されました。最初は「この人なに言ってんだ」という気持ちだったのですが、やがてよく理解できるようになったんです。
その先生からは本当に多くのことを教わりました。私はこれまで様々な仕事をしてきましたが、先生の言葉がいつも心の奥底にあったんです。
−− 現在、目標としていることがあれば教えて下さい。
これは創業の時からなのですが、長く続いていく老舗企業を作りたいなと思っています。少なくとも100年続く会社にしていくことが目標です。
実はそのために、世にある老舗企業を私なりに真剣に調査・研究したんですよ。なぜ長く続けることができるのか、見つけた共通点は大きく3つでした。

1つは経営理念に重きを置くこと。利益を出すことを目的とせず、理念を達成するために利益を出すと考えることが大切なんですね。
2つ目は、人を大事にするということ。お客さんはもちろん、取り引き先の方々、従業員の方々、広く社会の方々、全てです。
3つ目は常に変わり続けるということ。老舗は不変というイメージがありますが、実は改善すべきところをドラスティックに変えている企業が多いんです。我々の会社では、私なりに見つけたこうした老舗の特徴を取り入れています。
◆ カギは「貢献」と「成長」
−− 今の介護業界の課題をどうみていますか?
そうですね…。かなりたくさんありますが、やはり人材不足が最も深刻ではないでしょうか。介護報酬の水準が十分でない、ということが大きな要因の1つだと捉えています。
国にはぜひ改めて頂きたいですし、業界としても一致団結して訴えていかなければいけません。事業者としては厳しい環境ですが、とにかくできることを精一杯するしかありません。

−− 御社では人材確保にどう向き合っているか、教えて下さい。
給与面も含めて働く条件、環境を良くしていくことがやはり重要です。テクノロジーの有効活用など施策を総合的に講じるわけですが、私は多くの職員が気持ちよく、楽しく働ける職場を作ることが非常に重要だと考えています。
それをどう実現していくのか − 。例えば人生の喜び、または仕事の充実感などは「貢献」と「成長」に起因するという教えがあります。この2つが満たされると幸せを感じる、という話ですが、これは的を得ているのではないでしょうか。
介護の仕事は日頃から、「貢献」を感じやすいという特徴があるんです。利用者さんやご家族から「ありがとう」と言われると嬉しくなる、という職員は少なくないですよね。
−− そうですね。
では「成長」はどうか。資格取得など様々な方法がありますが、重要な要素の1つは他の職員に仕事を教える立場につくことではないでしょうか。それが「成長」を最も感じられる機会だ、と我々は捉えています。
ですから、キャリアアップの仕組みを作って積極的にリーダーになって頂く。最小単位のリーダーから副主任、主任、管理者、施設長など立場が上がるに連れて、もちろん処遇も上がっていく仕組みです。
最近の若い人の中には、できればリーダーになりたくない、管理職になりたくないという人もいますよね。それはきっと、仕事の量と重い責任だけがついて回るイメージがあるからではないでしょうか。
そうではなくて、人生を豊かにするために、仕事を楽しく続けるために「成長」が不可欠で、それを実現する最も良い方法がリーダーになることなんだ、と理解して頂くことに尽力しています。
−− 人材確保の具体策として、他に何か力を入れていることはありますか?
そうですね。大前提として処遇改善、賃上げが重要なのですが、他に1つあげるとすれば定年制の撤廃でしょうか。弊社では基本的に元気なら何歳でも働けます。
今、他の業界で年齢を重ねてきた方、近く定年を迎える方など50代以上の応募が増えています。可能なら早めに定年制のない会社へ移ろう、と考える方が多いんですね。
我々はそうした人材を、本人が希望すれば正社員として採用しています。70歳まで、75歳まで、あるいはもっと先まで、可能な限り働いていこうとやる気のある方も少なくありません。自分の定年って本来、自分で決めるべきことですよね。我々はそういう方々を応援しており、貴重な戦力として活躍して頂いています。
−− 中高年は人口も多いですから、活躍してもらえればありがたいですよね。
はい。例えば年金の受給開始年齢など、彼らには彼らの事情があるわけです。できるだけそれに合った環境を用意することが重要、と言えるでしょう。
いずれにせよ、人を大事にしない限り人は集まってきません。人材確保が難しさ増す中でこれは必須条件。これからは人を大事にする会社しか残れないでしょう。
◆「大規模化の流れには戸惑いも感じる…」
−− それでも人材難は徐々に深刻化していく見通しです。業界の今後をどうみていますか?
将来を見通すことは簡単ではありません。ただ、生き残りをかけた戦いが更に激しくなっていくことは考えられます。規模の小さな事業者は、どうしてもより厳しい戦いを強いられるでしょう。
小規模な事業者は、ICTなどテクノロジーの導入、職場環境の改善に向けた十分な先行投資ができません。職員の教育・研修にかけられるリソースも限定的で、良い待遇を用意してあげる余力がほとんどないんですね。一方で大手は違います。これから選ばれる環境作りに力を入れており、その差は開いていかざるを得ないでしょう。
−− そうかもしれません。
小規模な事業者が淘汰される、吸収されるという傾向は既に顕在化しています。M&Aなどが盛んに行われている現状も、業界の方ならよく知っていることでしょう。国も大規模化を推進する立場で、この流れが大きく変わる可能性は低いと考えられます。
私は戸惑いも感じます。その規模は小さくても、きらりと輝いている事業所、欠かせない活躍をしている方々がいることはご存知でしょう。地域で良質なサービスを提供している志ある方々が軽視され、厳しい立場に追いやられていく状況は好ましくありません。効率化の名のもとに、そうした方々の思いが失われていくような事態になれば、結果として地域共生社会は成り立たなくなると危惧します。
ただ、今の介護報酬の水準が大きく変わるようなことが起きない限り、そうした大規模化の流れは止まらないでしょう。悲しいことではありますが、私が懸念することも現実になりかねません。
−− 今後、大企業の御社はどのように事業を展開していきますか?
我々はいわゆる上場企業ですが、「福祉理念と市場原理の融合」という理念も掲げています。主力事業として介護・福祉サービスを提供しているということもあり、弱肉強食の世界を勝ち抜くということだけでない価値を創造したいと思っています。
「新しい資本主義」という言葉もありますが、社会も徐々にそうした方向を求めるようになってきているのではないでしょうか。競争で相手に勝てばいい、お金を稼げばいいということではない、と感じる方が増えています。我々もそうした信念を持って、皆で支え合う社会を作る前向きな動きにコミットしていきたいと思います。
−− ありがとうございました。(介護ニュースより)
⇒介護業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)