保育

『パート職員を正職員へ登用した際の年休付与の考え方』

Q

週3 日勤務・1 日の所定労働時間5 時間の勤続3 年8 ヶ月になるパート職員がいます。本人の希望もあり、4 月1 日から正職員へ登用することにしました。1 月1 日に年次有給休暇を8 日付与しましたが、4 月1 日時点で正職員の所定労働日数に応じた年次有給休暇を付与する必要がありますか?

A

パート職員から正職員へ登用した場合でも、年休を付与する日(基準日)は変わりません。よって、施設はパート職員を正職員に登用したタイミングで、改めて年次有給休暇を付与する必要はありません。

詳細解説

1.年次有給休暇の付与ルール

 施設は、正職員、パート職員などの雇用形態に関係なく、6 ヶ月間継続勤務し、所定労働日の8 割以上出勤した職員に対して、年次有給休暇(以下、年休)を付与しなければなりません(労働基準法第39 条)。付与する日数は、基準日における週の所定労働時間と所定労働日数をもとに決定され、基準日から1 年を経過するごとに、勤続年数に応じた日数を付与します。

2.パート職員を正職員へ登用した際の取扱い

 パート職員を正職員へ登用することにより、所定労働日数が増えたとしても、基準日を変える必要はありません。そのため、質問のように1 月1 日の基準日に年休を付与したのであれば、4 月1 日に改めて付与する必要はなく、また所定労働日数が増加した分の年休を追加して付与する必要もありません。次の基準日である1 月1 日に正職員としての年休を付与することで足ります。この取扱いは、正職員からパート職員へ転換した場合も同様です。
 正職員登用時の留意点として、年休を取得したときの賃金の取扱いがあります。職員が年休を取得した日の賃金は①平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③標準報酬日額のいずれかの方法で支払うと定められています。一般的には②の方法が多く採用されており、パート職員が年休を取得したときは、時給に所定労働時間を乗じて計算した賃金を支払っています。正職員へ登用後に、パート職員のときに付与した年休を取得した場合であっても、取得時(登用後)の雇用契約の内容に基づき賃金を支払う必要があります。そのため、1 日の所定労働時間が5 時間だったパート職員を、1 日の所定労働時間が8 時間の正職員へ登用した場合、登用後は8 時間働いたものとして取り扱います。正職員の場合、実質的には年休を取ったとしても月給分を支払うことになるでしょう。
 施設がパート職員を正職員へ登用しても改めて年休を付与する必要はありませんが、年休を取得した日の賃金の取扱いや、登用後の新たな基準日に付与する年休の日数が変わることがあります。そのため、勤怠システム等を利用して年休を管理しているときは、適切な管理ができるかを確認しましょう。

 

Q 評価者であるリーダーや管理者が、評価や面談に不安感を感じ、職場での実践ができていない状況です。どのような指導が必要ですか?アドバイスをお願いします。

評価者研修やフィードバック面談研修を受講し、方法論を学び実践で活用しています。

 

人事評価を行うことは、上司にとってかなりの負担で、ましてやその結果を部下に説明するフィードバック面談等は大変重荷、などと言うご意見は、評価者の方々からよく伺います。ただ、それは、「評価」という言葉の印象にとらわれている結果であって、実際には評価の仕方を具体的に理解していないがゆえに誤解されているケースがとても多いのです。

評価者として「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を理解し、それを実践すれば、だれでも評価を行うことができます。それにはまず評価者向けの研修を受講することをお勧めします。

医療

 クリニック人事サポートパック(評価制度、賃金制度の作成) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 介護

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 保育

 保育士キャリアアップの仕組みサポートパック | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

Q  慶弔休暇など特別休暇に関する相談です。頻繁にお悔やみ休暇を申請する職員が数名おり、他の職員から不満の声があがることもあります。特別休暇日数や運用ルールを見直したいと思っています。アドバイスをお願いします。

A まず検討したいのは付与要件です。ある園では、お悔やみ休暇を付与する期間は、一番多い付与日数が5日であり、従来の規定では、「連続5日」としているだけだったので、それを死亡日の翌日から5日以内などで設定します。例えば、配偶者が9月3日(金)に亡くなった場合の連続5日のお悔やみ休暇は9月8日(水)までの期間で、付与することにしました。

 結婚休暇の従来規定は、これも連続5日と規定していただけでした。ただ、実際には入籍後、落ち着いてからお披露目や旅行に行くケースが増えていることから、入籍後6か月以内に取得すること、としました。

 また、特別休暇の申請時には、きちんと確認してから付与したいので、証明書も提出してもらうことにしました。公的なものでなくても、お悔やみ休暇なら葬儀案内などでも可としました。以上のような変更を行い、就業規則もその内容で改定しました。

 このルール変更を導入後、お悔やみ休暇については、付与要件が明確になり、証明書の提出をしてもらうようになったからか、申請件数が減りました。職員からも「わかりやすいし

納得できる内容になった」という声も聞かれたようです。

“正直”と“誠実”

「皆さんは、“正直”と“誠実”の違いを
説明しなさい、と言われたら、何と答え
ますか?」

・・・・・・・・

日常的に何となく使い分けていますが、

あらためて

“違いは何?”

と質問されたら、

なかなか答えずらいものがありますよね。

何だろう?

ひとしきり考えた後、

その講師の方から教わった定義は、

今なお、私の心の中に突然表れてくるほど、

大きなインパクトを残してくれました。

その方は、こう表現されました。

「正直とは、

“現実に言葉を合わせる”

ことであり、

誠実とは、

“言葉に現実を合わせる”ことである」

・・・・・

素晴らしい定義だと思いませんか?

“正直”

は、時には難しいかもしれませんが、

実行するのは比較的容易な事かもしれません。

でも、

“誠実”

は、なかなか難しいですよね。

「言葉に現実を合わす」

この積み重ねを継続することで、

私たち経営者やリーダーは成長していくのかも
しれません。

自分自身や自分自身の家族は勿論、

社員や社員の家族、

そして、

ご利用者やその家族をしっかり守るためにも、

私たち経営者やリーダーは、

仕事や自分自身、全てに対して

“誠実に”

向き合い続けなければならないのでしょうね。

それにしても、

人生の必要なタイミングにおいて、

普段忘れている言葉が、

スッと、脳裏に浮かび上がって来る。

“人の脳”



“深い言葉”

の力、恐るべし、です(笑)。

充実した1日を過ごせるよう、

“誠実”という言葉を胸に、

今日もお互い頑張りましょう!

今年も見られる「保育園預け控え」の傾向、補助金を出す自治体も

新型コロナウイルスへの感染の懸念から、今年も保育園への預け控えの傾向が見られます。特に第6波は子どもに感染が広がり、休園する施設が急増しているため、二の足を踏んでいる保護者が多いと考えられます。
しかし、園児が減少すると保育園の経営が悪化してしまうため、支援に乗り出す自治体も出てきました。

2021年の春からコロナを理由とした預け控えは目立っていました。厚生労働省の調査によると2021年4月の認可保育園の申込者数は2009年の調査以来、始めて前年を下回りました。
全国の待機児童の数は過去最少の5,634人となりましたが、その理由として「預け控え」があるようです。

一方で、悩んだ末に入園を決意した保護者もいます。一度は育休を延長する旨を職場に伝えても、さらに仕事を休むことへの不安感や、依然0,1,2歳児の保活は厳しいこともあり、ここで入園しないと来年は入れるかわからない、と考えたのでしょう。

しかし、度々休園になることも想定しなければなりません。仕事を休まざるを得なくなった場合、それが度重なると周りに迷惑をかけているような気持になってしまうでしょう。

少子化が進む中、共働きは増えているため、保育園の申込者は増加傾向でした。しかし、コロナの影響で、育休を延長する保護者が増えているようです。

定員割れの保育園に対し、補助金を出す自治体も

園児が定員に達しない場合、園の経営に影響が出てしまいます。そんな事態に対策を講じる自治体も出てきました。

保育士の人数は国によって最低基準が決められており、園児の定員に合わせて決まります。そのため園児が減っても保育士を減らすことはできません。

東京都文京区では、基準を超えた保育士分の人件費の半額を補助する仕組みを作りました。

この、保育士の人件費の一部を補助する事業は、現場からは大変歓迎されているようです。
多くの保育園では、保育士の勤務シフトが厳しくならないように、基準よりも多く配置しています。
昨年の4月は園児の数が定員に達しない園があり、この傾向が続くと、積立金を崩したり、職員の昇給のペースを抑えたりしなければなりませんでした。

そもそも、園児の数で支給額が決まる現システムこそ変えるべきかもしれません。しかし時間がかかるでしょう。
この文京区のように、臨機応変に補助金を出すようにするしか今保育現場と保育士を救う手立てはないのかもしれません。(2月20日朝日新聞)

 

 

シフト制で労働日や労働時間を 決定・変更する際の留意点

労働契約では、労働日や労働時間をあらかじめ確定させた上で契約を締結することが原則です。しかし、契約の締結時点では確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような、いわゆる「シフト制」により労働契約を締結することも多くみられます。このシフト制に関連し、厚生労働省は「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(以下、「シフト制による留意事項」という。)を取りまとめ、公表しました。この中から、特に確認しておきたいポイントをとり上げます。

1. 労働条件の明示と始業・終業時刻

 会社は労働契約の締結の際、労働者に対して「始業および終業の時刻」や「休日」に関する事項などを書面により明示する義務があります。シフト制の場合、具体的な労働日や労働時間などを「シフトによる」と記載しているケースがありますが、すでに始業や終業時刻が確定している日についてはこの記載では足りず、労働日ごとの始業および終業時刻を明記するか、原則的な始業や終業時刻を記載した上で、一定期間のシフト表をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
 この他、シフト表を労働者に通知する期限や方法等を定めておき、労働者に分かるようにします。

2.労働契約の定めと労働日・労働時間

 労働者が労働契約の内容の理解を深めるために、労働日や労働時間等について、基本的な考え方をあらかじめ労働契約で決めておくことが望まれます。例えば、以下のような事項について、会社と労働者で話し合い、合意しておくことが考えられます。
・ 一定の期間において、労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯
 [ 例] 毎週月・水・金曜日から勤務する日をシフトで指定する
・ 一定の期間において、目安となる労働日数、労働時間数
 [ 例]1ヶ月○日程度勤務、1 週間当たり平均○時間勤務

3. 労働日や労働時間等の変更

 基本的に、一旦シフトを確定させた後にそのシフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更にあたります。そのため、会社と労働者双方が合意した上で行うことが必要です。
 シフトの変更に関するルールとして、例えば、シフトの期間開始前に、確定したシフト表の労働日・労働時間等の変更を会社、労働者が申し出る場合の期限や手続等について、あらかじめ決めておくことが考えられます。

 

今回、シフト制による留意事項が公表された背景には、シフト制のメリットを認めつつも、会社の都合で労働日や労働時間等が設定され、トラブルとなるケースが起きていることがあります。
シフト制を採用している会社は、この機会に適切な運用ができているかを確認しましょう。

 

保育時間内に強制で習い事? 「幼児教育無償化後の追加料徴収にビジネスでは」との声も

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保育園で提供されるさまざまな習い事。親たちの教育熱も背景にはあるようだ(gettyimages)※写真はイメージ

 保育園で習い事を提供するケースが増えている。親からは便利だと歓迎される向きもあるが、「強制」には疑問の声が。選択制でも問題点はある。AERA2022年3月14日号の記事を紹介する。

「近く、保育園で英語のレッスンが始まるらしい。それも、1カ月2万円で」

 神奈川県で2人の子どもを育てる男性は、上の子どもが0歳で入園ししばらくすると、保護者との会話でそんな話を耳にするようになった。男性の子どもが通う認可保育園は、長く公立の保育園だったが、上の子どもが入園した年から民間事業者が市から委託され運営するようになっていた。

■共働き親の罪悪感

 習い事を希望するか否か、事前アンケートはなかった。なぜ「英語」なのかもわからない。下の子の入園のタイミングに合わせ、説明会に参加すると、重要事項説明書の内容から4、5歳児の英語レッスンは必須で、入園を決めた時点で拒む権利はないのだと知った。

 カリキュラムの内容を聞くと、外国人講師が常駐するわけではなく、「2万円」になる理由も不明。2019年に幼児教育・保育の無償化がスタートすると、「無償化により浮くことになった分が請求されるようなものではないか」という疑念を抱くようになった。男性は、市の保育課に相談し、何往復ものやりとりを経て、保育のコアタイムでは追加徴収をしてはいけない、という判断がなされた。けれど、いまもモヤモヤした気持ちは消えない。

 男性は言う。

「習い事がお金儲けの手段になってしまうのは問題だな、と思っています」

 近年は、保育園の保育時間内に、希望者に対して民間事業者が体操や英語などの習い事を提供するケースは増えている。共働きの親は、送迎なしで習い事ができると歓迎する向きもある。「忙しくて、子どもにさまざまな経験をさせられない」という罪悪感も薄れる。

■保育の質向上が大事

 ただ、前出の男性のようにそれが「強制参加」「強制徴収」となると、問題は違う。

「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんによると、年間数件ではあるが、こうした習い事に関する相談が寄せられるという。保育時間内に水泳教室にバスで送迎される例では、安全性への不安や、幼児教育無償化に乗じたビジネスではないかという疑問が寄せられた。

 選択制であっても、追加料金を払い、習い事を選択するかどうかは、家庭の事情や保護者の考え方によるので、子ども自身の選択ではない点も問題視する。

「習い事の時間にわが子がお友だちと分けられることを心配して、習い事は不要と思っていても参加せざるを得ないという声も聞きます。幼児期は人格形成期であり、子ども同士が関わり合って社会性を育む時期なので、孤立感や差別感を覚えさせる環境をつくってしまうのだとしたら、罪深いことだと思います」(普光院さん)

 社会が豊かになるにつれ、“習い事ビジネス”はますます隆盛になっているが、普光院さんは、そこに親が乗せられてしまっているのではないかとも感じている。園での運動指導と運動能力の関係を調べた研究では、外部講師に任せるよりも、いつも遊んでいる保育者が指導する園のほうが結果がよかったり、一斉の指導を行うよりも、子どもがそれぞれ自由に動き回って遊ぶことを重視する保育のほうが高い結果が出たりしているという。普光院さんは言う。

「保育園側は、『習い事』として有料で切り分けるのではなく、保育の質そのものを高めていくことに力を注ぐべきだと思います。一方で、保護者もまた『幼児期から習い事をしないと、乗り遅れる』と考えるのではなく、“子どもの気持ち”で本当に楽しめるものとは何か、を考える。そうした意識の改革も必要だと思います」

(ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2022年3月14日号

Q 有給休暇を年5日取得できない職員が3人います。どうやってとらせたらいいのか・・・。一方、取得はしているのですが、手厚い職員配置をしたいときに有給休暇の取得があると 予定の保育ができないときもあります。どんな方法があるでしょうか?

A ご質問の有給を取得してくれても時期に問題があるような場合の一つの対処方法は

 労使協定を締結して「計画的付与」にて有給を取得してもらうことがあります。

 園児の登園が最も減る時期が813日から16日は子供の預かり保育は実施しておらず、

 2号子供と3号子供は5割ほどの登園になるとのことでしたので、この4日間に計画的付与を導入します。具体的には下記に次のようになります。年5日取得義務のある職員を2つのグループに分けます。グループごとに13日、14日の2日間のいずれかで取得させる割り振りを主任にお願いします。労使協定の締結後、計画通り8月に2日間の有給休暇を職員に取得させます。

 もう一つの課題である5日間の取得義務が果たせない職員への対応です。このような方には園が時期指定を行うことを定めます。例えば、年の後半となると行事や次年度行事が立て込むため、1号子供が夏休みになる7から8月の間に3日の時期指定を行います。具体的には3人に7月から8月のいつ頃取得したいかを聞き、できるだけ希望に沿うように取得を決め「A先生は731日、81日、820日の3日間は週休を取ってください」とそれぞれに伝えます。園が時期指定を有給休暇を踏まえて、勤務表の作成ができるように、主任に情報を共有します。

 導入後の状況を確認しましたが、計画的付与を導入した8月の4日間はクラスの垣根を取り払い、異年齢保育にするよう主任にお願いしました。主任中心に幼児リーダーと乳児リーダーの3人が夏ならでは遊びを取り入れた保育計画を作成しました。0歳児5歳児までが一緒に過ごす時間帯も計画されて打て、普段とは違う保育を少人数ならではのゆったりと雰囲気で園児も職員も楽しんでいました。

 以上のような方法もご参考にしていただければと思います。

Q,仕事が出来ず協調性もない問題のあった社員が、定年後の再雇用を申し出てきました。会社としては定年をもってやめてもらいたいが、どのような対応が出来ますか、尚、当社は雇用継続制度をとっており、再雇用基準を定めた労使協定があります。

A, 当該社員は定年迎えるということで、定年後再雇用をしないということが考えられますが、それが出来るかどうかが問題になるところです。

平成25年4月1日より改正高年齢者等の雇用の安定等の関する法律が施行されています。この改正では、定年に達した人を引き続き雇用する「雇用継続制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みが廃止されました。ただ、従来このような仕組みを設けていた場合には、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢(令和4年3月31日までであれば63歳)を超える年齢の者について、なお雇用継続制度の対象者を限定する基準を定めることは可能となります。

 逆にいうと、60歳定年で雇用継続制度をとっている場合、本人が希望するときは、解雇事由や退職事由にあたる事由がないかぎり、少なくとも上記支給開始までは再雇用する必要があります。再雇用基準を適用できるのは上記支給開始年齢を超えて再雇用するかどうかを判断するときになります。

従って、御質問にある問題社員が再雇用を希望した場合、その時に再雇用基準を満たしていなかったとしても、少なくとも上記支給開始年齢までは再雇用をする必要があります。

 

2,解雇することはできるのか

仮に再雇用拒否が出来ない場合でも客観的合理性と社会的相当性の要件を満たしていれば解雇することはできます。ご質問のケースでは、当該社員は仕事も出来ず協調性もないとのことですので、解雇できるかどうかのポイントとしては、その問題事由を裏付ける客観的事実、問題性の程度、そして何度も注意指導しても改善しなかったという「改善可能性」が無いことや、他の部署に配転して解雇を回避する余地がないか、などが焦点になります。

 実際のケースでは、十分な注意指導が出来ておらず、直ちに解雇するのは難しいというケースが見受けられます。そのような場合には、一端、再雇用したうえで、当該社員の問題状況や注意指導の履歴を記録化するようにして、契約更新の段階で雇止めを検討するという方法も考えられます。ただ、社内で長年キャリアを積んだ年長社員に対して、どれだけの指導教育ができるかについては、現実的にかなり難しい部分もあるのではないでしょうか。

 

3,労働条件を変更することはできるか

定年後再雇用とする場合、雇用契約を締結しなおすことになりますので、その際に労働条件(給与、職種、業務内容)を改定し提示することは可能です。ただ、どのような変更をしてもいいかというと、厚労省QAによれば、継続雇用高齢者の安定した雇用を確保するという趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金など雇用に関するルールの範囲内で事業主と労働者の間で決めることが出来るとされています。そして最終的に合意できなかった場合でも、事業主が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば結果的に継続雇用に至らなかったとしても、法律違反になることはないとしています。

 

4,事業主側として現実的な対処方法としては。

 ご質問のケースのような場合、当該社員との雇用継続が難しいということであれば、実務対応としては、当該社員にこれまでの勤務をねぎらいつつも、会社の評価を伝えて、まずは退職勧奨を試みるのが現実的な対応であると考えます。また、場合によっては割り増し退職金を支払う等の方法も考えられるところです。

 

 以上

固定残業代の支給がある場合の 求人票の書き方

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

 

総務部長
先日、同業者の総務担当者と話をする機会があり、中途で入社した従業員から、求人票の内容と実際の労働条件が違うと指摘され、トラブルになったという話を聞きました。20 時間分の固定残業代を支払うと伝えていたものの、固定残業代が基本給に含まれており、それがトラブルの原因になったようです。
社労士                                                                    なるほど。従業員の方は想定した残業代が支払われずに、トラブルになったのですね。
総務部長                                                             そのようです。固定残業代がある場合に、求人票にはどのように書くべきなのでしょうか。
社労士                                                           ハローワークで募集する求人票には次の①から③の内容をすべて明示することが必要です。また、これはハローワークだけでなく、転職サイト等を運営する職業紹介事業者についてもこれに準じた取扱いが求められています。実際、適切な記載をしていないことで、変更を求められたケースもあります。
①固定残業代を除いた基本給の額
②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で 支払う旨
総務部長                                                                                 具体的にはどのように記載することになるのでしょうか?
社労士                                                            例えば、以下のような記載が考えられます。
・ 基本給:250,000 円(固定残業手当を除く額)
・ 固定残業手当:40,000 円(時間外労働の有無にかかわらず、20 時間分の時間外手当として支給)
・ 20 時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
総務部長                                                                               分かりやすく明示しておくことが重要ですね。そして、当然ながら、採用面接の際にも説明しておいたほうがよいですね。
社労士                                                                      そうですね。また、固定残業代以外のことにはなりますが、求人を行う際の注意点として、あらかじめ示した条件から労働条件が変更となった場合には、その内容を求職者に明示することが義務付けられています。この明示は、更前後の内容を対照できるようにして書面交付をする方法が望まれますが、変更された部分に下線やマーカーを引くような方法も考えられます。ただし、当初明示した労働条件を安易に変更してよいという意味ではありません。
総務部長                                                                             入社後に、採用面接の際に聞いていた内容と違うと言われることがないように、対応しておくことが必要なのですね。

 

ONE POINT
① 固定残業代の支給がある場合、求人票等に所定の事項を明示しなければならない。
② 求人票等で明示した労働条件が変更になったときは、求職者に変更内容を明示しなければならない。

 

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