保育
認知症などで要介護認定を受けたデイサービス利用者らが、社会参加の一環で働き手が不足するコンビニや配達業で有償ボランティアとして働く取り組みが各地で導入されている。人の役に立てる喜びが自立支援や生きがいにつながるとして、関係者は「介護福祉と企業双方の利益になる仕組みとして広めたい」と意気込んでいる。
「ここに来るのは楽しいよ。人に喜んでもらえるし」。セブンイレブンの制服と黒いエプロン姿の川下昌子さん(80)は談笑しながら慣れた手つきで積み上げられた買い物かごを消毒する。
川下さんが働くのは千葉県船橋市内の店舗。この店では、要介護2程度の軽い認知症がある60~90代のデイ利用者が施設職員のサポートを受けながら、接客を除く商品陳列や検品などに従事する。1回1時間、3回働くと系列店で使える千円分の商品券がもらえる。
取り組みを始めたのは介護事業者や店側が参加する「ななしょくプロジェクト」。「働く選択肢を当たり前に」を目標に、介護サービス利用者がレクリエーションの時間を使って働く仕組みとして立ち上げられた。
プロジェクトに加わった船橋市のデイ事業所「やすらぎの森前原」を運営する森重貴之社長は「普段つえを使う人も、店ではつえなしで仕事をするようになった」と驚く。店舗オーナーの鯨井祐介さんも「喜んで働きに来てくれると従業員もうれしい」と歓迎。有償ボランティア受け入れは鯨井さん経営の店舗のうち3店舗に拡大し、職場の活性化につながっているという。
プロジェクトの佐藤亜美事務局長は「仕事が早い、できるできないは認知症に関係なくある。いろんな人が働くコンビニだからこそ受け入れやすかった」と説明する。
厚生労働省は2018年、デイサービスの活動の中で利用者が地域で有償ボランティアに参加できるとする通知を全国の自治体に出した。
福岡県大牟田市では、介護事業所の利用者が徒歩圏でヤマト運輸のダイレクトメール便の配達を担う。9年前から先駆的に取り組む東京都町田市のデイサービス「DAYS BLG!」では、利用者がポスティングや自動車ディーラーでの洗車を行う。
全国の介護事業所にノウハウを伝える同サービスの前田隆行さんは「企業の求めることと利用者の状態や希望を把握し結び付ける人材育成が必要だ」と指摘。前例がないと自治体が消極的なケースもあり、理解促進も課題に挙げている。
日本経済新聞 夕刊 社会(9ページ)2021/10/25 14:30
女性の活躍支援を実現する助成金としての「両立支援助成金」は
以前からありますが、この度、厚労省から申請手続きや申請要件を
わかりやすくまとめた「手引き」として、新たに発行されましたので、
皆様にもご紹介いたします。
ご参考になれば幸いです。
12.65%に大幅上昇した男性の育休取得率
2022 年4 月より改正育児・介護休業法が順次施行され、今後、男性が育児休業を取得することについてさらに関心が高まることが予想されます。これに関連し、2021年7月に厚生労働省から「令和2 年度雇用均等基本調査」(以下、「調査」という)の結果が公表されました。
1. 男性の育児休業取得率
この調査は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に厚生労働省が実施しているものです。
この調査結果として公表された男性の育児休業取得率をみてみると、2020 年度に12.65%となり、2019 年度の7.48%から5.17 ポイントの大幅上昇となりました(下図参照)。
大幅上昇をしたものの、このうち、育児休業期間が5 日未満の割合が28.33%であり、比較的長期間の育児休業を取得する女性と比較し、短期間の取得となっているケースが多いことがわかります。
この男性の育児休業取得率については、2020 年5 月29 日に閣議決定された少子化社会対策大綱で、2025 年に30%にするという数値目標が立てられています。今後、この目標実現のための施策が実施されることになります。
2. 育児短時間勤務制度等の利用可能期間
育児短時間勤務制度では、法令で子どもが3歳に達するまで利用できる制度を導入することが義務となっています。この制度を導入している企業における最長利用可能期間の状況を確認すると、「3 歳未満」が55.7%と最も多く、「小学校就学の始期に達するまで」が15.0%、「小学校入学~小学校3 年生まで」が11.5% と続いています。
次に、所定外労働の制限についても、法令で子どもが3 歳に達するまで利用できる制度を導入することが義務となっています。この制度を導入している企業における最長利用可能期間の状況を確認すると、「3 歳未満」が 49.6%と最も多く、「小学校就学の始期に達するまで」が26.7%、「小学校卒業以降も利用可能」が6.7%、「小学校入学~小学校3 年生まで」が6.3%となっています。
このように法令を超える取扱いを設けることで、仕事と育児の両立が図られるようにしている企業が多く見られます。
今後、育児・介護休業規程を見直す必要も出てくることから、自社の現行制度において不都合な状況が起きていないかを確認し、見直すきっかけにするとよいかもしれません。
昨年6月(2020年6月)に施行された年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改正法)が公布され、2022年10月から従業員数101人以上の規模の事業所について、社会保険の適用拡大の対象となります。
社会保険の適用拡大では、週労働時間が通常の労働者の4分の3以上の短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入していたものが、以下の4つの基準をすべて満たしたときに、社会保険に加入することになります。
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が88,000円以上であること
・学生でないこと
この際の「従業員数101人以上の規模の事業所」の判断基準は、以下の通りとなっています。
[従業員数の定義]
適用拡大以前の通常の被保険者の人数を指し、それ以外の短時間労働者を含まない。
[従業員数のカウント]
月ごとに従業員数をカウントし、直近12ヶ月のうち6ヶ月で基準を上回ったら適用対象となる。
[事業所の考え方]
従業員数のカウントは、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主なら個々の事業所単位で行う。
特に確認しておきたいポイントは2022年10月時点のみで判断するのではない点です。また、一度適用対象となった場合、被保険者の4分の3の同意で対象外となる手続きをしなければ、従業員数が基準を下回っても引き続き適用対象となります。特に従業員数が100人前後の事業所では、今後の人材の採用方針も含めて、社会保険料の負担額の増加等も確認しておきたいものです。
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関連情報
■参考リンク
日本年金機構「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」
健康保険証 10 月から従業員へ直接交付が可能に
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
社労士 従業員の社会保険の手続きをすると、会社に健康保険証が送付され、それを従業員に交付しますが、この流れについて10 月からは協会けんぽ等の保険者が「支障がない」と認めたときは、保険者から直接従業員に交付(以下、「直接交付」という)されるようになります。
総務部長
会社を経由せずに、従業員に直接届くということですね。従業員からは「早く健康保険証が欲しい」と言われることがあるので、直接交付はありがたいです。
社労士 健康保険証は、法令で保険者から事業主に送付し、それを事業主から従業員に交付すると決められています。コロナ禍でテレワークが普及したこと等に対応し、健康保険証を受け取るためだけに出社するといった状況をなくすため、今回の変更が行われました。
総務部長 なるほど。ところで「支障がない」というのはどのような状況でしょうか。
社労士 今回の変更によって、保険者は会社に送付すればよかった健康保険証について、従業員の自宅等に送付することになるため、事務負担や費用、送付先の住所の把握や管理等の負担が大きくなります。したがって、直接交付ができるかを、保険者・事業主・従業員の間で調整し、最終的に直接交付することに支障がないかを保険者が決めることになります。
総務部長 入社(資格取得)時に健康保険証を従業員に渡すことの不便さは感じていないのですが、退職(資格喪失)時の健康保険証の回収に苦労しています。退職日に出社しない従業員には、会社に郵送してもらうように伝えていますが、これも従業員から直接保険者に送付してもらってもよいのですか。
社労士 そのような要望が多いようですが、今回の変更は交付時の対応であり、資格喪失をしたときにはこれまで通り、会社が従業員やその家族の分の健康保険証を回収して保険者に返納する必要があります。
総務部長 承知しました。ありがとうございました。
ONE POINT
①2021年10月から保険者が支障がないと認めたときに限り、保険者から従業員に健康保険証を交付することができるようになる。
②資格喪失時の健康保険証は、これまで通り事業主が回収し、保険者に送付する必要がある。
厚労省のホームページで企業名公表される労働基準法の違反事案
過労死等ゼロを目指す取組みの強化の一つとして、労働基準関係法令違反にかかる公表事案が厚生労働省および都道府県労働局のホームページに一定期間掲載されることになっています。以下では、公表される事案の基準と労働基準法の公表事案をとり上げます。
1. 公表事案となる基準
厚生労働省のホームページに掲載される事案は、労働基準関係法令違反の疑いで送検、公表された事案(送検事案)や、厚生労働省が企業名を公表するとして示された通達に基づき、都道府県労働局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨が公表された事案(局長指導事案)です。
掲載期間は公表日から概ね1年間で、公表日から1年が経過し最初に到来する月末にホームページから削除されます。また、公表日から概ね1年以内であっても、送検事案は、ホームページ
に掲載を続ける必要性がなくなったと認められる場合、局長指導事案は、是正および改善が確認された場合、速やかにホームページから削除されることになっています。
2. 労働基準法違反の公表事案
2020 年8 月1日から2021年7 月31日までに公表されたもので、労働基準法違反にかかる事案として次のようなものがあります。
[労働基準法第15 条違反]
労働者2 名に、労働契約の締結の際に労働条件を、書面を交付する等により明示しなかった
[労働基準法第32 条違反]
労働者1 名に、36 協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせた
[労働基準法第36 条違反]
外国人技能実習生5人に1ヶ月100 時間を超える違法な時間外・休日労働を行わせた
[労働基準法第37 条違反]
労働者4 名に対し、4 ヶ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金合計約37万円を支払わなかった
[労働基準法第39 条違反]
労働者6 名に、年5 日以上の年次有給休暇を取得させなかった
[労働基準法第75 条違反]
業務上負傷した労働者に、労災保険を使用させず、健康保険を使用し、治療費を全額負担しなかった
[労働基準法第104 条の2 違反]
労働基準監督署長による報告命令に対し、虚偽の事実が記載された書類を提出し、虚偽の報告を行った
働き方改革で年次有給休暇の取得義務化や、時間外労働の上限規制にかかる法改正が施行され、より一層、労務管理の重要性が高まっています。また、公表事案から分かるように、様々な面において監督指導が行われています。適切な労務管理が行われているかを確認し、課題があったときには早めに是正を進めていきましょう。
2021年9月8日ので案内した通り、新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等により仕事を休まざるをえない保護者を支援するための小学校休業等対応助成金・支援金再開されることとなっていました。9月30日に雇用保険法施行規則が改正・公示され、実際にこの助成金・支援金の申請受付が再開されました。再開された制度の概要は以下の通りです。
1.支給対象者
・子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた事業主【助成金】
・子どもの世話を行うことが必要となった保護者であって、委託を受けて個人で仕事をする人【支援金】
2.対象となる子ども
①新型コロナウイルス感染症への対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校等(※)に通う子ども
※小学校等とは、小学校、義務教育学校の前期課程、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等
②ⅰ)~ⅲ)のいずれかに該当し、小学校等を休むことが必要な子ども
ⅰ)新型コロナウイルスに感染した子ども
ⅱ)風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
ⅲ)医療的ケアが日常的に必要な子ども又は新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
3.支給額
・労働者を雇用する事業主:休暇中に支払った賃金相当額×10/10
※1日当たり13,500円(申請の対象期間中に緊急事態宣言の対象区域又はまん延防止等重点措置を実施すべき区域であった地域(以下「対象地域」)に事業所のある企業:15,000円)を支給上限
・委託を受けて個人で仕事をする人:就業できなかった日について、1日当たり6,750円(申請の対象期間中に対象地域に住所を有する人:7,500円) (定額)
4.対象期間等
対象となる休暇の取得期間(申請期限)
2021年8月1日~同年10月31日(2021年12月27日(月)必着)
2021年11月11日~同年12月31日(2022年2月28日(月)必着)
5.申請先(郵送)
【助成金】 本社所在地を管轄する 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)
【支援金】〒137-8691 新東京郵便局 私書箱132号 学校等休業助成金・支援金受付センター
厚生労働省は「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」を2022年1月31日までの期間、再開するとともに、全国の都道府県労働局に設置することも公表しています。労働者からの「(企業に)この助成金を利用してもらいたい」等の相談内容に応じて、事業主への小学校休業等対応助成金の活用の働きかけを行うことにしているとのことです。
詳細は下記パンフレットをご確認ください。
https://www.hayashi-consul-sr.com/wp-content/uploads/2021/10/30bebcaaa8751380b7623d36ce694d24.pdf
2年ぶりに大幅な引上げとなる2021年の最低賃金
1. 最低賃金の種類と改定タイミング
賃金については、都道府県ごとに最低額(最低賃金)が定められており、企業はその額以上の賃金を労働者に支払うことが義務付けられています。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2 種類がありますが、このうち「地
域別最低賃金」は、毎年10 月頃に改定されることになっています。2021年度について全都道府県の各地方最低賃金審議会で調査・審議が終了し、官報で公示されました。
2.2021 年度の地域別最低賃金と発効日
2021年度の地域別最低賃金と発効日は、下表のとおりです。コロナ禍で2020 年は据え置きか、わずかな引上げに止まりましたが、2021年度はすべての都道府県で28 円以上の引上げとなっています。なお、全国加重平均は902 円から930 円へ3.1%の引上げとなりました。この28 円の引上げは、昭和53 年度に目安制度が始まって以降の最高額です。
パートタイマー・アルバイト等の時給者の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するとともに、月給者についても1 時間あたりの賃金額を算出し、確認するようにしましょう。
従業員に注意を促したい育児休業給付金の支給対象期間の延長
従業員は会社に申し出ることで、原則として子どもが1 歳に達するまで育児休業を取得することができます。また、保育所等へ入所できない等の一定の理由があるときには、最長、子どもが2 歳に達するまで育児休業を延長することができます。今回は育児休業を延長する際に、支給対象期間が延長となる育児休業給付金の注意点について確認します。
1. 育児休業給付の概要
雇用保険の被保険者である従業員が育児休業を取得し、一定の支給要件を満たしたときには、育児休業開始前の給与額に応じた育児休業給付金が従業員に支給されます。
この育児休業給付金は、育児休業を延長した際も一定の要件を満たしていれば、支給対象期間が延長され、引続き支給されることになっています。
2. 延長時の2 つの要件
育児休業を延長する理由の大多数は、子どもが1 歳に達するときに保育所等に入所できないというものです。
この際、育児休業給付金の支給対象期間が延長となるものは、「職場に復帰するために保育所等の入所を希望し申込みをしたものの、子どもが1歳に達する日の翌日(誕生日)に保育所等に入所できない場合」に限定されています。具体的には、次の2 つが要件となります。
①市区町村で保育所等の入所申込みを行っている
②入所申込み時の入所希望日が1歳の誕生日以前となっている
育児休業給付金の支給対象期間について延長の申請を行うときは、これらを証明する書類の添付が必要となります。待機児童が多い地域等では、入所申込みを行おうと市区町村に問い合わせたところ、「入所が困難」との返答があり、実際の申込みを行わないような事例もありますが、問合せをするだけでは支給対象期間延長の対象にはなりません。
また、入所申込みの際に、入所希望日を1歳の誕生日の翌日以降とした場合は、原則として支給対象期間の延長はできません(申込みの時点で誕生日までの入所が締め切られていた場合等の例外的な取扱いあり)。
なお、1 歳6 ヶ月から2 歳までの育児休業を延長する場合の支給対象期間の延長にかかる要件の確認も同様に行われます。
厚生労働省は支給対象期間の延長が認められない事例を示したリーフレットを公開し、手続きに誤解のないよう注意喚起をしています。本来、子どもを保育所等に預けて育児休業から復帰するかは、従業員個人の選択にはなりますが、育児休業は延長するものの、育児休業給付金の支給対象期間の延長が認められないというような事態とならないように、従業員にしかるべき手続きを促すとよいでしょう。
2022 年10 月から始まるパートタイマーへの社会保険適用拡大
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。