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新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等により仕事を休まざるをえない保護者が増加しており、職場によってはいくらかの混乱も発生しているようです。厚生労働省では、こうした労働者を支援するため、今後、以下のとおり、「小学校休業等対応助成金・支援金」制度を再開するとともに、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の仕組みにより、労働者が直接申請することを可能とする予定であることを発表しました。その概要は以下のとおりです。
1.「小学校休業等対応助成金・支援金」制度の再開
令和2年度に実施していた「小学校休業等対応助成金・支援金」制度を再開する予定。
※令和3年9月1日以降12月31日までに取得した休暇を対象とする予定
※現在実施している「両立支援等助成金 育児休業等支援コース 新型コロナウイルス感染症対応特例」は、令和3年7月31日までに取得した休暇が対象となるものとする予定
[参考:令和2年度に実施していた小学校休業等対応助成金・支援金の概要]
●支給対象者
・ 子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇 (労働基準法上の年次有給休暇を除く。)を取得させた事業主
・ 子どもの世話を行うことが必要となった保護者であって、委託を受けて個人で仕事をする者
●対象となる子ども
① 新型コロナウイルス感染症への対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校等 (※)に通う子ども
※ 小学校等:小学校、義務教育学校の前期課程、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等
② ⅰ)~ⅲ)のいずれかに該当し、小学校等を休むことが必要な子ども
ⅰ)新型コロナウイルスに感染した子ども
ⅱ)風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
ⅲ)医療的ケアが日常的に必要な子ども又は新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
2.「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」の再開
「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」を今後全国の都道府県労働局に設置し、労働者からの「(企業に)この助成金を利用してもらいたい」等のご相談内容に応じて、事業主への小学校休業等対応助成金の活用の働きかけを行う予定
3.新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の仕組みによる申請
昨年度と同様に、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の仕組みにより、労働者が直接申請できることとする対応も行う予定
※当該労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意することが必要
※休業支援金・給付金は現在のところ11月末までの休業が対象ですが、今後の取扱いについては、雇用情勢等を踏まえて10月中に示される予定
まずは方針が示された段階ですので、実務としては詳細の情報を待つこととしましょう。
雇用保険手続きで一部省略できる免許証・通帳等の写しの添付
社会保険や雇用保険の手続き等では、各種証明書類等の添付が求められるものがあります。今回、雇用保険の手続きにおいて、運転免許証や通帳等の写し等の添付が一部で省略となりました。その内容を確認しておきましょう。
1. 運転免許証等の写しの省略
高年齢雇用継続給付金の申請をする際は、支給対象者が60 歳以上65 歳未満の被保険者であることを確認するため、運転免許証や住民票の写し等の被保険者の年齢を確認する書類の添付が求められていました。
この取扱いについて、マイナンバーを届け出ている被保険者については、ハローワークで年齢の確認ができるため、2021年8 月1日以降、添付が不要となりました。
対象となる申請書は、「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続支給申請書」です。
なお、マイナンバーの届出については、番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)および雇用保険法において義務となっています。
2. 通帳等の写しの省略
育児休業給付金、介護休業給付金、高年齢雇用継続給付金は、被保険者自身の銀行口座に振込まれることから、最初の支給申請に当たり、通帳やキャッシュカードの写し等(払渡希望金融機関確認書類)を添付することになっています。
この取扱いについて、2021年8 月1日以降、電子申請によって申請をするときには、原則として添付が不要となりました。手書きで申請書を作成する場合は、引続き添付する必要があります。
対象となる申請書は、「育児休業給付金受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」、「介護休業給付金支給申請書」、「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇
用継続支給申請書」です。
添付が不要となることで、従業員や手続きの担当者の手間は減りますが、申請書に記載する内容について、より一層、正確な内容が記載されているかを確認する必要があります。また、すべての添付書類が不要になるわけではありませんので、従業員から提出してもらうべき書類を整理しておきましょう。
年休の取得義務化と時季指定にまつわる相談事例
2019 年4 月から年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得が義務化され、会社は年10 日以上の年休が付与される従業員について、年5 日の年休の時季を指定することにより確実に取得させることが求められるようになりました(従業員が自ら取得した年休は時季指定する5 日から控除可能)。ここでは、年休の取得義務化と取得時季の指定について、よくある相談を事例形式にて確認しておきます。
1. よくある相談事例
①時季の指定と実際の取得
Q . 年 5 日の年休の時季指定をしたが、年5 日以上取得できない従業員がいた場合、法違反に問われますか。
A. 会社の時季指定による年休の付与は、会社が5 日分の年休の時季を指定しただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に5 日取得させていなければ法違反として取り扱われます。
労働基準監督署から是正に向けての指導を受けるほか、場合によっては、罰則の適用を受けて処罰される可能性もあるため、確実に年5 日は取得させることができるよう、チェック体制を確立することが求められます。
②年の途中で退職する従業員
Q . 基準日からの 1 年間に休業期間がある従業員や、途中で退職する従業員についても、年 5 日の年休を取得させる必要がありますか。
A.Qにあるような従業員についても、年5 日の年休を取得させる必要があります。ただし、基準日から1年間継続して休業している場合や、基準日から5 日以内に退職する場合など、会社の義務の履行が不可能な場合についてまで法違反を問うものではありません。
③時季指定する年休の単位
Q . 会社が年休の時季指定をする場合に、半日単位での年休としてもよいですか。
A.時季指定に当たって、従業員の意見を聴いた際に、半日単位での年休の取得の希望があった場合には、半日単位で取得することとしても差し支えありません。なお、時間単位で取得した年休は、時季指定する5 日から控除できず、時季指定もできません。
2. 時季指定を行う場合の注意点
年休の取得時季を指定する場合、従業員数10 人以上の事業場では根拠となる条文を、就業規則に定める必要があります。少なくとも時季指定の対象となる従業員の範囲、時季指定の方法の2 点は記載が必要になります。
年休が付与される基準日に合わせて時季指定をすることや、1年の途中で取得した日数を確認して従業員に自らの取得を促したりすることで、年の終わりに取得が進んでいないというような事態を避けることができます。年の終わりに慌てることのないように、計画的に年休の取得を進めていきましょう。
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大が止まらず、8月27日から新たに北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県に緊急事態宣言が発令されることが発表されました。
新型コロナに感染し、それが業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。また、新型コロナによる症状が継続(遷延)し、療養や休業が必要と認められる場合にも、労災保険給付の対象となります。新型コロナの感染拡大により、この労災保険の請求は増加しており、2021年7月30日現在では、請求件数の累計が15,936件、決定件数の累計が11,480件に上りました。
当然ながら新型コロナの治療や看護の最前線になっている医療従事者等の請求が高い割合を占めていますが、医療従事者等以外では社会保険・社会福祉・介護事業において請求件数が多くなっています。
厚生労働省は、「職場で新型コロナウイルスに感染した方へ」というリーフレットを公開し、以下のような場合は労災保険給付の対象となるとして周知しています。
・感染経路が業務によることが明らかな場合
・感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務※に従事し、それにより感染した蓋然性が強い場合
※(例1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務
※(例2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務
・医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象
当然ながら感染防止をし、感染しないことが重要ですが、業務に起因して感染したものであると認められる場合には、適切な対応を進めましょう。
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大の影響により、小学校等の臨時休校が検討・実施され、児童等の感染により小学校等を臨時休校する事案も増えています。このように新型コロナへの対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を行う労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主は、要件を満たして申請することで両立支援等助成金が支給されます。
以前からある制度ですが、2学期始業に際し、厚生労働省が案内を強化しているので、以下で内容を確認しておきましょう。
1.支給対象
新型コロナへの対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を行う労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主
2.助成額
労働者1人あたり5万円
一事業主につき10人まで(上限50万円)
3.対象となる子ども
①新型コロナへの対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校等(※)に通う子ども
※ 小学校等:小学校、義務教育学校の前期課程、特別支援学校、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園等
②a~cのいずれかに該当し、小学校等を休むことが必要な子ども
a.新型コロナウイルスに感染した子ども
b.風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
c.医療的ケアが日常的に必要な子どもまたは新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
4.支給要件
①次のどちらも実施されていること。
a.対象となる子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を取得できる制度の規定化。
b.小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みとして、次のいずれかの社内周知。
・テレワーク勤務
・短時間勤務制度
・フレックスタイムの制度
・始業または終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
・ベビーシッター費用補助制度 等
②労働者一人につき、1のaに定めた特別有給休暇を4時間以上取得したこと。
以前は、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」として助成が行われていましたが、両立支援等助成金に統合されています。臨時休校が長期にわたったり、取得を希望する人が多くいるような企業では助成が限定的になりますが、仕事と家庭の両立を支援する観点からも臨時休校する子どもの世話をする従業員がいる場合には、活用を検討したいものです
厚労省の案内はコチラ⇒
https://www.mhlw.go.jp/content/000824837.pdf
精神障害にかかる労災の支給決定件数 過去最高の608件
長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症するケースが増加しています。先日、これらの労災請求状況に関する令和2 年度の集計結果が厚生労働省より発表されました。以下では集計結果の内容についてとり上げましょう。
1. 脳・心臓疾患の労災補償状況
脳・心臓疾患の労災請求件数は784 件となり、前年の936 件から152 件減少しました。支給決定件数についても194 件と、前年の216件から22 件減少しています。支給決定件数について業種別にみていくと、「運輸業、郵便業」が全体の3 割近くを占め、「卸売業、小売業」、「建設業」と続いています。
2. 精神障害の労災補償状況
精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。
令和2 年度の請求件数は2,051 件となり、前年の2,060 件から9 件減少しました。一方、支給決定件数については608 件となり、前年の509 件から99 件増加し、過去最高となりました。また認定率については31.9%であり、申請の3 件に1 件の割合で労災として認定されています。このうち、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、上位項目は次のとおりです。
①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(99 件)
②悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(83 件)
③同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(71 件)
④仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(58 件)
⑤特別な出来事(54 件)
「①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」については、2020 年5 月29 日に心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、新規に追加されたものです。
3. パワーハラスメント防止措置の義務化
職場におけるハラスメントの問題は、年々深刻化しており、それが今回のように精神障害の原因にもなり得ます。そのため、企業においてはハラスメント防止に向けた積極的な取組みが求められます。
パワーハラスメント防止措置は、大企業では2020 年6 月1日より義務付けられていますが、中小企業でも2022 年4 月1日より義務付けられます(それまでは努力義務)。
企業としては、長時間労働対策を徹底するとともに、業務の内容において過剰な負荷がかかっていないかを確認し、さらにはパワーハラスメント防止に向けて、研修を行ったり相談窓口を周知したりするなどの取組みを進めていく必要があります。
国家公務員の定年延長の動き
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長 今後、国家公務員の定年が65 歳に引上げられると耳にしました。当社でも技能の伝承や人材の確保といった観点から定年延長について検討が必要ではないかと思っています。
今回の法改正の内容について教えてもらえませんか?
社労士 主な点としては3 点あります。まず1点目が定年の段階的引上げです。このように、定年が2023 年度から2 年おきに1歳ずつ引上げられて、2031年度に65 歳とされます。
総務部長 なるほど。2031年度以降は定年が65 歳となるということですね。
社労士 2 点目が役職定年制の導入で、組織活力を維持するため、管理監督職(指定職および俸給の特別調整額適用官職等)の職員は、60 歳(事務次官等は62 歳)の誕生日から同日以後の最初の4 月1日までの間に、管理監督職以外の官職に異動となります。これは、民間企業においてすでに取り入れられている、いわゆる役職定年制のことですね。
総務部長 定年を延長すると、役職が空かずに次世代を担う人材が管理監督職の経験を積めないという課題が想定されますので、その一つの対応策ということなのでしょう。
社労士 そして、3 点目が60 歳に達した公務員の給与であり、人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、公務員の俸給月額は公務員が60 歳に達した日後の最初の4 月1日以後、その公務員に適用される俸給表の職務の級および号俸に応じた額に7 割を乗じて得た額とするとしています。
今回の話は国家公務員ですので、民間企業において直接的な影響はありませんが、今後、定年を延長する場合の給与の設定におけるひとつの参考数値としてとらえることができると思います。
総務部長 たしかに以前、定年を引上げる話題になったときに、給与や賞与、退職金はどうするのかという結論が出ずに立ち消えになりました。
社労士 今回の動きは民間企業に先行する動きであり、今後、定年の引上げなどを検討する際の参考になるでしょう。自社の高年齢者の活用をどのようにしていくのか、検討の際に不明点等がございましたら、お声掛けください。
ONE POINT
①国家公務員法の改正案が成立し、定年の段階的引上げ、役職定年制の導入、60歳に達した公務員の給与について内容が決定した。
② 今回の動きは、民間企業に先行するものであり、今後、定年の引上げなどを検討する際の参考になる。
傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除に関する法改正
2021年の通常国会では、育児・介護休業法の改正のほかに、健康保険法や厚生年金保険法の改正案が成立しました。対象となる従業員への影響が大きな内容を含みますので、以下で改正点を確認しておきます。(各項目の括弧内の日付は施行日)
1. 傷病手当金(2022 年1月)
健康保険の傷病手当金は、支給が開始された日から起算して、最長1年6 ヶ月まで支給されます。この1 年6 ヶ月の間に、⼀時的に就労した期間(傷病手当金が不支給となる期間)がある場合には、その就労した期間も含めることになっています。
近年はがん治療など、長期間にわたって療養のため休みながら働くケースが増えて来ています。こうした状況に対応し、治療と仕事の両立の実現するため、就労した期間は含めず、傷病手当金が支給された期間を通算して最長、1年6ヶ月間、支給されることとなります。
2. 育休中の社会保険料免除(2022 年10 月)
育児休業(以下、「育休」という)中は、申し出により社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)が免除されます。この免除となる基準が見直され、以下の通りとなります。
①育休を取得する月にかかる社会保険料
月末時点で育休を取得しているときは、その月の社会保険料が免除される。これに加え、育休の開始日の属する月は、月末時点で育休を取得していないときでも、その月中に 2 週間以上育休を取得していれば社会保険料が免除される。
②賞与にかかる社会保険料
月末時点で育休を取得しているときは、育休の取得日数に関わらず、その月に支給される賞与にかかる社会保険料が免除されていたものが、今後は育休を取得する期間が1ヶ月を超える場合に限り、免除される。
3. 任意継続被保険者制度(2022 年1月)
従業員は、退職した後でも⼀定の要件を満たせば、任意継続被保険者として退職前に加入していた健康保険の被保険者となることができます。
任意継続被保険者が負担する健康保険料は、会社が負担していたものを含めてその金額を負担します。この保険料の算出根拠について、「従前の標準報酬月額または全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」となっていたものが、健康保険組合は規約で、従前の標準報酬月額とすることができるようになります。
また、任意継続被保険者の資格の喪失について、任意継続被保険者からの申請によりできることとなります。
育休中の社会保険料免除は、これまで以上に期間の管理が重要になります。また改正点について、従業員からの問い合わせも想定されます。詳細な情報を今後確認していきましょう。
男性の育休取得促進等を目的に成立した改正育児・介護休業法
2019 年度の男性の育児休業取得率は7.48%に留まっており、男女ともに仕事と育児等を両立できる仕組みが求められています。そこで2021年の通常国会では、男性の育児休業の取得促進等を目的とした育児・介護休業法の改正案が成立しました。ここでは改正点の概要を確認しておきましょう。
1.有期雇用労働者の取得要件緩和
現在、有期雇用労働者は、①引き続き雇用された期間が1 年以上あること、②1 歳6 ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと、という要件のいずれも満たしたときに育児休業を取得できることとなっています。この要件のうち、①が廃止されます。
但し、現行制度でも労使協定を締結することで、入社1年未満の従業員からの育児休業の申し出を断ることができますが、有期雇用労働者もこの労使協定の対象にすることができます。
なお、介護休業についても同様の改正が行われます。
2. 雇用環境整備、個別周知・意向確認
育児休業の取得促進には、取得しやすい雇用環境を作る必要があることから、従業員に対し、育児休業に関する研修の実施や相談窓口の設置といった雇用環境の整備を行うことが会社に義務付けられます。
また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした従業員に対し、育児休業について個別の周知や意向確認をすることも会社に義務付けられます。
3. 出生時育児休業
男性の育児休業の取得促進として新たに「出生時育児休業」が設けられます。これは、子どもが1 歳まで取得できる現行の育児休業とは別の制度であり、子どもの出生後8 週間以内に4週間まで、2 回に分割して取得できるものです。労使協定を締結し、事前に調整した上で育児休業中に就業することができます。
4. 育休の分割取得
現在の育児休業は、原則として1回のみ取得できますが、今後は2 回に分割して取得できるようになります。
さらに1 歳から1 歳6 ヶ月までの育児休業の延長、1 歳6 ヶ月から2 歳までの育児休業の再延長についても、開始日が1 歳または1 歳6 ヶ月に限られているものが柔軟化され、夫婦交代で取得できるようになります。
5. 育休の取得状況の公表義務化
従業員数が1,000 人超の企業は、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。
施行は、1および 2 について 2022 年 4 月1日、3 および 4 について公布(2021年 6 月 9 日)後 1年 6 ヶ月以内の日、5 について 2023 年 4 月1日となっています。就業規則(育児・介護休業規程等)の変更が必要な改正もあるので、今後の詳細な情報を確認して対応を進めましょう。
A 「採用での失敗は、育成でカバーすることは難しい」とも言われます。
どのような人を採用するか、これは言うまでもなく、事業運営の中で最も重要な事項といっても過言ではないでしょう。社員の定着のためには「定着するような人材を採用する」といった方が現実的かもしれません。しかし、実際には人手不足の際には、「応募してくれた方は、多少気になる点があってもほとんど採用する」という状況は、決してめずらしいことではありません。このようなことを繰り替えしていると「すぐに辞めるような人」を採用していることになりかねません。
それでは「辞めない人材」とはいったいどんな人材なのでしょうか。それは法人理念に共感できる職員を選ぶことです。理念に共感できるとは、法人として「大切にしたい価値観」の共有ができる方と言ってもいいかもしれません。
現場が人手不足の状況なので、ついつい早く人を「補充」したいという考えから、候補者の過去の経験、職務のスキル、資格などを重視した基準で採用を決定する場合も多いと思います。ただ、結果として、このような情報は、意外とあてにならないという経験をされた経営者も多いのではないかと思います。そこで、重要なのは「その方の価値感が法人の価値観や考え方に合うかどうか」ということになるのですが、問題はそれをどのように見極めるか、ということになります。もちろん、価値観が垣間見れるような質問内容を、事前にしっかり準備しておく必要がありますし、その結果を面接官複数の目で見て、客観的な指標にまで落とし込んでいくことをお勧めしています。
一方、候補者もそれなりに準備をして面接に臨みますので、なかなかホンネの部分までは見極めるのは難しいものです。ある法人の理事長は、法人創設の経緯や経営理念をできる限りわかりやすく、そして何度も何度もしつこいぐらいに伝え(これが重要ということです)、それを聞いている表情や反応で、十分判断できるということをおっしゃいます。また、ある施設長は、事前に施設見学(かなり細部にわたる現場見学)を行っていただき、そこで感じた内容を、どれだけ自分の言葉で伝えられるかをみている、と言います。このような方法ですと、事前の準備ではなく、過去の経験が本人の言葉で出てくることが多く、その方の現在の感じ方や価値観が、よりリアルに伝わってくるといいます。
下記に面接のときの質問の留意点をお伝えいたしますのでご参考にしてください。
- 具体的な内容を質問する
漠然とした回答ではなく、具体的な回答を聞くことで本音を見出します。
・「なぜこの仕事を選んだのか、人の役に立つとはということは、どういうことなのか
具体的に言ってください」
・「採用された場合、あなたの能力をどういった仕事に活かしたいですか。具体的にこたえてください」
- 人間関係についてどう考えているか確認する。
人間関係の関する質問は、入職後のトラブル回避にためにも非常に重要です。
・「入職後、法人とあなたの方向性や想いが異なる時、あなたはどのようにしますか?」
・「同僚との意見が食い違う場合、あなたは意見を通しますか、黙りますか、また通すとしたらどんな方法で?」
- 求職者からの質問を引き出す
面接試験で一通り質問が終わったら、必ず求職者に対して質問がないか確認します。面接が終わったという安心感から本音が見え隠れすることがあり、人間性を確認できることもあるようです。求職者が質問する内容は、採用された場合のことを想定していることが多いため、「どの部分に興味を示しているか=本当の志望動機」がわかることも多いように思います。