保育

保育事業所様向け情報(労務)7月号④

新型コロナでシフトが減少した場合の雇用保険の給付の特例措置

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の影響により解雇等となった労働者(見込みも含む)は、2021 年5 月28 日現在、104,946 人となり、雇用への影響は相当大きなものとなっています。解雇等となった労働者で、雇用保険に加入していた人の中には、雇用保険の求職者給付を受給する人が多いかと思いますが、シフト制の労働者の求職者給付が支給される時期や給付日数にかかる取扱いについて特例措置が設けられました。

1. 雇用保険の加入要件

 雇用保険は、原則として1週間の所定労働時間が20 時間以上であり、かつ、31日以上の雇用見込みがある労働者が被保険者となります。雇用契約書等により1 週間の所定労働時間が定まっていない場合やシフト制などにより直前にならないと勤務時間が判明しない場合は、勤務実績に基づき平均の所定労働時間を算定して被保険者になるかが判断されます。

2. 設けられた特例措置

 新型コロナの影響を受け、シフトが減ったことで、雇用保険の被保険者資格を喪失したり、有期雇用契約を更新しなかったりした場合、雇用保険の求職者給付については次の取扱いになります。

①就労日数等の定めがある場合

シフト制労働者で、例えば、以下に該当するときは特定理由離職者または特定受給資格者として認められる場合があります。

・具体的な就労日数が労働条件として明示されている一方で、シフトを減らされた場合
・契約更新時に従前の労働条件からシフトを減らした労働条件を提示されたため、更新を希望せずに離職した場合

②シフトの減少で週20 時間を下回る場合

2021 年3 月31日以降に、以下の理由により離職したときは特定理由離職者として、雇用保険求職者給付の給付制限は設けられていません。

・新型コロナの影響により、シフトが減少し(労働者が希望して減少した場合を除く)、概ね1ヶ月以上の期間、労働時間が週20時間を下回った、または下回ることが明らかになったことにより離職した場合

 

シフト制の労働者でも、前年同時期のシフトや直近月のシフト等に基づいて労働日の設定を行い、それに基づき休業日を決め、休業手当を支払うときは雇用調整助成金の対象になりますが、新型コロナの影響が長引く中、労働契約の内容を見直すことも増えているでしょう。雇用保険の資格喪失手続きを行う際には、離職した状況により喪失原因も異なることがあるため留意しましょう。

保育事業所様向け情報(労務)7月号③

夫婦共働きの子どもを健康保険の扶養にする際の判断基準

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、
社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

 

総務部長
今回、女性従業員を管理職に登用することになりました。夫婦共働きなのですが、この登用でご主人よりも年収が高くなるようです。現状、健康保険について、ご主人の扶養となっているお子さんを、当社の従業員の扶養に変更しなくてもよいのでしょうか。
社労士                                                 健康保険では、いくつかの要件を満たした人について届け出ることで被扶養者として認定されます。その要件は、主として被保険者に生計を維持されていることです。夫婦共働きで子どもを扶養しているときには、夫婦の年間収入の多い方の被扶養者とすることになっています。
総務部長                                                  やはりそうですか。そうなると当社の従業員の被扶養者とすることが正しいのですね。
社労士                                                   基本的にはそうなりますが、夫婦で年間収入の差が大きくないときには、年によっていずれの年間収入が多いか変わることもあります。そうなると被扶養者の変更手続きを頻繁に行わなければならないこともあります。そのため、夫婦の年間収入が同程度の場合には、主として生計を維持する人の被扶養者とすることができます。
総務部長                                                                 確かに、毎年、夫婦双方の年間収入を確認して、健康保険証の発行手続きをしてると大変ですよね。同程度という表現はどの程度まで認められるのかあいまいですね。
社労士                                                              そうですよね。実は、2021 年8 月1日からは「同程度」が「夫婦双方の年間収入の差が、年間収入の多い方の1割以内」に変更になります。また、被扶養者の届出をする「前年の年間収入」で判断することになっているものが、「過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの」で判断することになります。
総務部長                                                 いろいろ変更になるのですね。
社労士                                                                      はい、これらの他にも配偶者が公務員の場合や、自営業の場合の考え方についても基準が明確に整理されています。内容について、確認しておくとよいでしょう。

 

ONE POINT                                               ① 夫婦共働きの場合の健康保険の被扶養者の認定に関する考え方が整理され、2021年8月1日から適用される。
② 夫婦双方の年間収入の差が1割以内であれば主たる生計維持者の被扶養者とすることができる。
③ 基準は「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」(令和3年4月30日 保保発0430第2号保国発0430第1号)で確認することができる。

保育事業所様向け情報(労務)7月号②

過重労働防止のために注意すべき労働時間管理

昨年11月に実施された「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果が公表されました。このキャンペーンは、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」が疑われる事業場等、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して監督指導が実施されたものです。この実施結果から、労働時間管理を行う上で注意すべき事項を確認します。

1. 主な違反内容

今回、重点監督の対象となった9,120 事業場のうち、6,553 事業場(全体の71.9%)で労働基準関係法令の違反がありました。主な法違反は、「違法な時間外労働があったもの」が2,807 事業場(全体の30.8%)「過重労働 による健康障害防止措置が未実施のもの」が1,829 事業場(全体の20.1%)「賃金不払残 業があったもの」が478 事業場(全体の5.2%)となりました。
 この中で、一番違反の多かった労働時間について、典型的な違反内容は以下のようなものとなっています。

[労働基準法第 32 条 ]
・時間外労働を行う場合、事業場単位で時間外・休日労働に関する協定(36 協定)を締結していない。
・過半数代表者の選出が適正に行われていない等で、36 協定が無効である。
・時間外労働を行う場合、36 協定で定める限度時間の範囲を超えて時間外労働をさせている。
・協定に定められた手続きを行わずに、特別条項に基づく時間外労働をさせている。
[ 労働基準法第 36 条第 6 項 ]
・時間外労働の上限規制を守っていない。

2. 労働時間の適正な把握

 今回の9,120 事業場のうち、1,528 事業場(全体の16.8%)に対して、労働時間の把握が不適正であるため、労働時間適正把握ガイドラインに適合するように指導が行われています。
指導事項で多かった上位2 つは、「始業・終業時刻の確認・記録」と自己申告制による場合の「実態調査の実施」となっています。
 「始業・終業時刻の確認・記録」では、会社は、労働時間を適正に把握するため、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することが求められています。
 また、自己申告制による場合の「実態調査の実施」では、自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かを、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正を行う必要があります。また、自己申告した労働時間を超えて事業場内に残っている時間について、その理由等を従業員に報告させる場合、その報告が適正に行われているかを、会社は確認する必要があります。

 

以前は、賃金不払残業の指導が主となっていましたが、近年は時間外労働の協定内容や手続きに着眼点が置かれるようになり、労働時間の把握も指導事項として多くみられます。自社の実務運用に問題がないか確認を行い、問題点は早急に改善しましょう。

保育事業所様向け情報(労務)7月号①

新様式となる母性健康管理指導事項連絡カード

妊娠中・出産後1年以内の女性従業員に対して、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に関する母性健康管理措置が追加されていますが、この期間が2022 年1月31日まで
延長されると共に、「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)の様式が変更されています。

1. 母性健康管理措置とは

 母性健康管理措置とは、男女雇用機会均等法により、妊娠中・出産後1 年以内の女性従業員が保健指導・健康診査の際に、主治医や助産師(以下、「主治医等」という)から指導を受け、
会社に申し出た場合に、その指導事項を守るために必要な措置の実施が会社に求められるというものです。具体的には以下のような措置があります。
・妊娠中の通勤緩和
・妊娠中の休憩に関する措置
・妊娠中または出産後の症状等に関する措置
(作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)

2. 新型コロナで追加された措置

この措置の中に、新型コロナに関する措置として、職場の作業内容等によって、新型コロナへの感染のおそれに関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医等から指導を受けたものが追加されました。「感染のおそれが低い作業への転換または出勤の制限(在宅勤務・休業)」が指導の例としてあり、会社は指導に基づいて適切な措置を講じる必要があります。対象期間は現在のところ2022 年1月31日までとなっています。

3. 新様式となる母健連絡カード

 主治医等から母性健康管理措置に関する指導があった場合、その指導事項を会社に的確に伝えるためのものとして、母健連絡カードが用意されています。
 様式について従前のものより求められる措置の内容が分かりやすくなるよう変更され、2021 年7 月1日から新様式を利用することになります。母性健康管理措置を求める女性従業員には、7 月より新様式の母健連絡カードを利用するように案内しましょう。

 

母健連絡カードは、あくまでも主治医等の指導事項を会社に的確に伝えるためのものです。そのため、この母健連絡カードの提出がない場合でも、女性従業員の申し出からその内容等が明らかであれば、会社は必要な措置を講じる必要があります。また、その内容が不明確な場合、会社は女性従業員を介して主治医等と連絡をとり、判断を求める等の適切な対応が必要となります。

「マネージャーとリーダー」との違い

なぜ、不可能といわれたJAL再生は、わずか1年で可能になったのか?
大田嘉仁・著『JALの奇跡』(致知出版)の書籍で、とても印象に残っている部分が
ありますのでご紹介させていただきます。

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リーダーとマネージャーの違い
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企業経営をする上で最も大事なことは、
経営幹部に立派な人間性をもつ
すばらしいリーダーを据えることである。

どんな困難に直面しても逃げずに
真正面から取り組む勇気があって、
また部下や仲間を大切にする優しさをもっている。

さらに常に謙虚で努力を怠らない。
そういうリーダーでなければ
小さな部門さえまとめることはできない。

しかし、冒頭から説明している通り、
JALに着任し、会議に出席し、現場を訪問する中で、
JALには本当のリーダーと呼べる人間が
いないことを痛感していた。

それではいくら立派な再建計画を作っても、
達成できるはずはない。

また、上の立場の人間の意識が変わらないと、
部下の意識が変わるはずもない。

逆に、幹部の考え方が変われば、
自ずと部下の考え方も変わる。
だから、どうしてもリーダー教育を
早急に始めなければならないと思っていた。

そこで、当初より意識改革推進準備室のメンバーに、
「大西社長を含め役員や主要な幹部社員を
五十名ほど集めて、週五回、
一回三時間程度のリーダー教育を始めたい」
と伝えたのだが、そもそもリーダー教育という
コンセプトにも納得していなかったので、
最初は「絶対無理だ」と反対していた。

それでも私は、彼らに私の考えをまとめて
報告書を作ってほしいと頼んだ。

しかし、返ってくる報告書のタイトルは
マネジメント教育になっていた。

「そうじゃない。
 私はリーダー教育のプログラムを
 作ろうと思っているのだ」

と指摘しても、返ってきた報告書には
またマネジメント教育と書かれていた。

おそらく彼らは当初リーダーとマネージャーが
同じものだと理解していたのだろう。

これは無理もない。

普通の大企業でも管理職になったら
マネジメント教育を受ける。

そしてコンプライアンスの重要性、
人事評価の方法、目標数値の設定の仕方などを学ぶ。

それが一般的だから、リーダー教育というと
マネジメント教育のことだと考えてしまったのだ。

「部下を管理するマネジメントについては、
 あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。
 しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて
 同じ目標に向けて引っ張っていける
 リーダーを育てることなんだ。

 優秀なマネージャーであれば、
 困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。

 うまくいかなかったら、その言い訳を探して、
 責任逃れをするだろう。

 そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。

 再建を成功させるには、
 どんな困難にぶち当たってもあきらめずに
 やり遂げようとする、一つの目標に向かって
 部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、
 そんなリーダーが必要なんだ。
 これからはそのようなリーダーを
 育てなくてはいけない」

そのような話をしてリーダー教育の必要性を
どうにか理解してもらった。

以上が、大田嘉仁・著『JALの奇跡』(致知出版)から引用

させて頂きました。

 

以上 お読みいただいて、皆様はどのように感じられたでしょうか?

 「リーダーとマネージャーの違い」。

結構、混同しがちかもしれません。

しかし、その違いをよく理解したうえで、社員教育を行っていくことは

とても重要なことと思います。

 

 

 

 

 

 

 

保育事業所様向け情報(労務)6月号④

改定されたテレワークガイドライン

新型コロナウイルス感染症対策のため、テレワークを導入する企業が急増し、更なる感染拡大により、今後も導入を予定する企業は多いのではないかと思います。厚生労働省では、新たな日常・生活様式に対応する一層良質なテレワークの導入・運用を推進することを目的としてテレワークに関するガイドラインを改定し、2021年3月に公開しました。このテレワークガイドラインでとり上げられている労務管理上の留意点の中から、テレワークにおける人事評価制度とテレワークに要する費用負担の取扱いについて紹介します。

1.テレワークにおける人事評価制度

テレワークは非対面の働き方であるため、個々の従業員の業務遂行状況や、成果を生み出す過程で発揮される能力を把握しづらい側面があるとの指摘があります。そのため、企業が従業員に対してどのような働きを求め、どう処遇に反映するかといった観点から人事評価を実施することが基本となります。

具体的には、上司が部下に期待する役割やその達成水準等をあらかじめ具体的に示し、必要に応じてその達成状況について上司と部下が共通の認識を持つための機会を設けるなど、非対面の働き方において適正な評価を実施できるように、人事評価者訓練を実施する等の工夫が考えられます。

2.テレワークに要する費用負担の取扱い

テレワークを行うことによって、通信費や電気料金などの面で、従業員に過度の負担が生じることは望ましくありません。企業ごとの業務内容、物品の貸与状況等によって費用負担の取扱いは様々であり、労使のどちらがどのように負担するか等についてはあらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等で規定しておくことが望まれます。

また、従業員自身が契約した電話回線等を用いて業務を行わせ、通話料、インターネット利用料などの通信費が増加する場合や、従業員の自宅の電気料金等が増加する場合、実際の費用のうち業務に要した実費の金額を在宅勤務の実態を踏まえて合理的・客観的に計算し、支給することも考えられます。これに関連して、費用負担等に関する源泉所得税の課税関係については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が出ています。

日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」が変更され、在宅勤務・テレワーク時の交通費や在宅勤務手当の社会保険の取扱いが示されました。この事例集によると、テレワークを実施するために必要となる費用を従業員に支払う場合には、社会保険の対象となる報酬等には含まないものの、在宅勤務手当として、例えば毎月5,000円を渡し切りで支給する場合には報酬等に含むとしています。支給方法によって取扱いが変わるなど複雑な内容となっていますので、不明点等は、弊所までお問い合わせください。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)6月号③

従業員から無期転換の申込があった場合の対応

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長

先日、パートさんの1人から期間の定めのない契約に変更して欲しいという希望がありました。変更しなければならないのでしょうか。

社労士

そのパートタイマーの方との契約はどのようになっていますか。

総務部長

1年ごとの契約にしており、確か10年位、働いてもらっています。

社労士

なるほど。すでに長く雇用されており、今回、無期転換の申込をしてきたのですね。無期転換の概要を説明すると、①有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、②従業員が申込むことにより、③無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるというものです。今回申込があったパートタイマーの方は、いずれの要件にも該当していると思いますので、労働契約を無期にする必要があります。

総務部長

そうなのですね。契約更新の時期は毎年4月ですが、いますぐ無期契約に変更する必要があるのでしょうか。

社労士

いいえ。いまの有期労働契約は有効ですので、その内容を変更する必要はありません。次の労働契約から無期労働契約に変更することになります。

総務部長

それでは来年4月の契約時に無期契約に変更すればよいのですね。ちなみに、パートさんからの申込は口頭だったのですが、書面を提出してもらう必要がありますか。

社労士

従業員からの申込や会社の通知を書面で行う義務はありません。ただし厚生労働省は、トラブル防止のためにも「無期労働契約転換申込書」や「無期労働契約転換申込み受理通知書」のひな型を公開し、書面でやり取りすることが望ましいとしています。

総務部長

なるほど。今後、申込が増える可能性もあるので、書面を準備することにします。その他、何か注意点はありますか。

社労士

無期転換した従業員に適用する就業規則の整備が必要になります。パートタイマー就業規則は有期労働契約のパートタイマーの方にのみ適用となっていることもあるので、そのようなときは無期転換したパートタイマーの方に適用する就業規則を定めるとともに、特に定年の定めの部分をしっかり確認する必要があります。

総務部長

ありがとうございます。一度、確認してみます。

【ワンポイントアドバイス】

  1. 有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、従業員からの申込により、無期労働契約に転換する。
  2. 無期労働契約への変更は、申込時点の有期労働契約が満了した日の翌日から行われる。
  3. 無期転換の申込や受理の通知は書面で行うことが望ましい。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)6月号②

新型コロナの小学校休業に係る休暇・妊婦の母性健康管理の休暇に対する助成金

昨年、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大により設けられた小学校等の休業等に対応する助成金と、妊娠中の女性従業員の母性保護に対応する助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりのための「両立支援等助成金」として、再度整理されました。以下でその内容を確認します。

1.小学校等の臨時休業等に対応する助成金

小学校等が臨時休業等になることで、子どもの世話のために会社を休まざるを得ない従業員がいます。これに係る助成金は、育児休業等支援コースの中で「新型コロナウイルス感染症対応特例」として設けられました。

主な要件は、以下のとおりであり、対象従業員1人あたり5万円で、1事業主あたり10人まで支給されます。

①次のいずれも実施していること

  • 小学校等が臨時休業等になり、それに伴い子どもの世話を行う必要がある従業員が取得できる特別有給休暇制度(賃金が全額支払われるもの)を、就業規則等に規定している
  • 小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組み(※)を社内に周知している

※テレワーク勤務/短時間勤務制度/フレックスタイムの制度/始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤の制度)/ベビーシッター費用補助制度等のいずれか

②従業員1人につき、特別有給休暇を4時間以上取得させていること

2.妊婦の休暇取得支援のための助成金

妊娠中の女性従業員に対し、新型コロナに関する母性健康管理措置として休暇を取得させるときは、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース」に基づき助成金が支給されます。

具体的には以下のa.~c.のすべての条件を満たした事業主が支給対象となります。

  1. 新型コロナに関する母性健康管理措置として、医師等の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性従業員が取得できる有給(年次有給休暇で支払われる賃金相当額の6割以上)の休暇制度を年次有給休暇とは別に整備していること
  2. a.の有給休暇制度を新型コロナに関する母性健康管理措置の内容とあわせて従業員に周知していること
  3. 2020年5月7日から2022年1月31日までの間にa.の有給休暇を合計して20日以上取得させたこと

支給額は対象従業員1人当たり28.5万円で、1事業所(雇用保険の適用事業所)当たり5人までとされています。

更に、2.に関連する助成金として、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金」が設けられています。これは2.と同様の母性健康管理措置として有給休暇制度の整備等を行い、2021年4月1日から2022年1月31日までの間に合計して5日以上の休暇を取得させた場合に対象となります。支給額は1事業場(労災保険の適用事業場)につき1回限り15万円であり、2.と併給することが可能です。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号①

5月から変更された雇用調整助成金の特例措置等

新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大により、雇用調整助成金に特例措置が設けられ、これまで多くの申請が行われてきました。現状でも一部地域で緊急事態宣言が発出されるなど、未だ新型コロナの感染拡大が収束する見通しは立ちませんが、5月からは雇用調整助成金の原則的な措置の縮減が行われる一方、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業等についての特例が設けられました。

1.助成額と助成率の見直し

新型コロナの影響に伴う雇用調整助成金の特例は、2021年5月および6月について、①全国の原則的な措置、②地域特例(まん延防止等重点措置対象地域の知事による基本的対処方針に沿った要請を受けて、一定の営業時間の短縮等に協力する飲食店等の事業所)の措置、③業況特例(生産指標が前年または前々年の同期と比べ、最近3ヶ月の月平均値で30%以上減少した全国の事業所)の措置、の3つに分かれます。②③については2021年4月までの特例が、2021年5月および6月にも適用されることになりますが、①については、雇用調整助成金等の1人1日あたりの助成額の上限が13,500円に、事業主が解雇等を行わず、雇用を維持した場合の中小企業の助成率が9/10に引き下げられました(右表参照)。

なお、緊急事態宣言が発令された地域では、厚生労働省令の改正等が行われ、特例措置が設けられる予定です。

2.対象者と支給上限日数の見直し

1.のほか、支給対象者と支給上限日数について、以下の見直しが行われました。

  • 継続して雇用された期間が6ヶ月未満の雇用保険被保険者についても助成の対象者とすること等について、雇用調整助成金の対象期間の初日が2020年1月24日から2021年6月30日までの間にある場合に変更する。
  • 新型コロナの影響による休業等について、雇用調整助成金に係る支給上限日数に加えて支給を受けることができること等とする期間を、2020年4月1日から2021年6月30日までに変更する。

2021年3月25日の厚生労働省の発表によると、7月以降については雇用情勢が大きく悪化しない限り、1.の措置についても、それぞれさらに縮減される予定です。新型コロナの感染状況とともに、雇用調整助成金の情報についても確認することが求められます。(2021年5月6日現在の情報に基づき作成しています。)

(次号に続く)

【介護・保育】人財定着ブログⅣ6月号~ 「福祉事業所のキャリアパスと㉔」

【介護・保育】人財定着ブログ5月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉓」

の続きです。

 面談のポイント

①「評価点」「改善点」の両方をしっかりと部下に伝える

「ここがダメだった、あれも悪かった」などと、悪かった部分の指摘ばかりをすると、

部下・後輩は「失点を少なくすること」を意識し過ぎ、積極性を失います。人事評価の最大のねらいは「部下育成」です。評価においては、「しっかりとほめる」ことを忘れずに、必ず「評価できる点」と「改善点」の両方をしっかりと被評価者にフィードバックしてください。この明確なフィードバックが評価の透明性および納得性につながります。

②改善点の指摘には具体的なアドバイスを添える

評価においてはほめることが重要ですが、やはり改善点に触れておくことが必要です。

改善点を指摘する際には、自身の経験などを交えながら具体的なアドバイスを心がけます。部下の立場に立った適切なアドバイスが評価の信頼性の確保につながります。

 

【アドバイス例】

×: 業務を進めるうえで独断的なところがある。直したほうがいいよ。

○:業務については、○○さんがスペシャリストだから、

○○さんと相談しながら進めたほうが良いと思うよ。私も若いころはすべて自分で

背負い込んでいたが、他の人の力を借りるのも大切な能力だって最近は思うよ。

(4) 下位評価を伝える際のポイント

①面談の流れ

・事前に問題だと感じることを徹底的に調べ、課題点を洗い出しておく(同時に解決策も考えておく)

・相手の気持ちに配慮しながら下位評価を伝える

・事前に用意しておいた課題点を本人と確認しながら、解決策を考える

・一緒に課題を解決しよう、という姿勢を示す

・期待をつげ、フォローする

②面談時のポイント

・何が問題なのかを明確にする

例えば仕事の手順が問題になっているということを伝えたい場合、必ず、「問題は仕事の手順だけ」であることをはっきりと伝えます。特に大切なのは、全てを否定しているわけではないということを明確にすることが必要です。

・自分の考えや意見を理解してもらうために、一度全てを受け入れる

自分の考えや意見を理解してもらうためには、一度相手の意見を受け入れた上で、

双方の問題点を整理していくようにします。

どちらかの意見に間違ったところがあっても、すべての意見を伝え合ったあとに話し合い、

修正していけば良いのです。

 

以上が、評価の結果を伝えるフィードバック面談の留意点となります。

 

2、重要なコミュニケーション手段としての面談

もちろん面談は評価結果を伝えるだけでなく、とても大切なコミュニケーションの手段です。介護職に携わるひとたちは、心に秘めた思いが強いがゆえに感情が先走ってしまい、その思いを言葉にして相手に伝えたり、自分の状態を認識して言葉にしたりするのが苦手な人が多いという特徴があります。そのためか、「うまく言葉にできないのですが・・・」ということをよく言います。また、ご利用者のためを思い、要求にこたえていくうちに際限がなくなり、自ら自己犠牲のモードに入っていき、結局はつらくなって辞めてしまう人もいるということをお伺いします。従って、上司はまずコミュニケーションをとりながら、かれらの気持ちや想いをよく聞くことが大切になります。そのような過程を経ずに、目標を押しつけてもそれは「やらされること」になってしまいストレスの温床になってしまうのではないでしょうか。したがって、まずはできるだけコミュニケーションの「場」を作ることが必要です。そもそも、日本人には求められないから主張しないという人が圧倒的に多いので、「ただコミュニケーションが大切」「部下とのコミュニケーションをとってください」といわれても「場」が無ければコミュニケーションをとることはなかなか難しいものです。ですから、上司やリーダー層の人たちは部下とのコミュニケーションの場をできるだけ多く、積極的に作っていくことが必要です。この「場」作りを、職場の「仕組み」にすることが出来れば

「場」づくりが業務の一つであるという認識が上司やリーダー層にできるようになり、

それによりコミュニケーションの「量」は飛躍的の増えることになります。

つまりここで大切なのは、コミュニケーションの時間は業務として作り出すものであって、「仕事に余裕があったら行う」ものではないという認識が必要であると考えています。

 

話を聞く「場」である面談を「定期的に」行う仕組みづくりを是非行っていただきたいと思います。そのような話をすると、現場管理者から言われるのは「人手不足でそんな時間的余裕がない」とか「上司と部下のシフトを調整するのが大変」もしくは「仕事でちゃんと声掛けでコミュニケーションをとっているからうちの職場は問題ない」といった言葉です。確かに慢性的な人手不足の中で現場を回していかなければならない現場管理者にとって、大きな負担であることはよくわかります。でも本当に部下とともに職場をよくしていきたいと思うなら、ぜひ「面談をやってみるには、どうすればいいのか」という発想で、施設長など経営陣の理解と協力を得ながら、実践のための知恵を絞っていただくことを、是非行っていただきたいと思います。

 

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