保育

保育事業所様向け情報(労務)4月号③

2021年3月からマイナンバーカードが健康保険証として利用できる予定です

現在の健康保険証は、会社に入社し社会保険の取得手続きが完了すると、協会けんぽ等の保険者から発行され、会社を通じて従業員やその扶養家族に交付される流れとなっています。今後、2021年3月(予定)からは、マイナンバーカードが健康保険証として利用できるように整備が進められています。

1.マイナンバーカードの利用イメージ

現在の健康保険証は、医療機関や薬局(以下、「医療機関等」という)の窓口で提示しますが、マイナンバーカードでは、医療機関等の窓口に設置されるカードリーダーにかざすことになります。併せて、カードの顔写真を機器が確認したり、窓口の職員が目視で本人の確認
をします。

マイナンバーカードをカードリーダーにかざした後は、マイナンバーカードのICチップにある電子証明書により健康保険の加入情報
等がオンラインで確認されることになっています。

2.マイナンバーカードを利用するメリット

マイナンバーカードを健康保険証として利用することによるメリットはいくつか示されています。そのひとつに、会社が被保険者の社会保険に関する手続きをすることで、マイナンバーカードの中の情報が書き換わるため、従業員(被保険者)やその家族(被扶養者)にとっては、就職や転職、引っ越しをしても、健康保険証の切り替え(交付)を待つことなく、マイナンバーカードで医療機関等を受診できるということが挙げられています。

なお、医療機関等の窓口でマイナンバーを取扱うことはなく、マイナンバーカードにあるICチップに受診歴や薬剤情報等は記録されない作りになっています。

3.利用のための事前手続き

マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、マイナンバーカードの申請を行うとともに、申請後に、マイナポータル(行政手続をワンストップでしたり、行政機関からのお知らせを確認する個人向け政府運営サイト)で事前に登録をする必要があります。登録の申し込みは2020年度はじめからできる予定となっています。実際に運用が開始されるときには、従業員に手続きを促す必要が出てくると思われます。

マイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになった後も、健康保険証は交付されることになっており、カードリーダーが設置されていない医療機関等では、健康保険証で被保険者資格の確認が行われることになります。ちなみに、2020年度から医療機関等で順次、必要な機器が導入され、2021年3月に予定される利用開始時には、全国の医療機関等の6割程度、2023年3月末には、おおむね全ての医療機関等での導入が目指されています。

保育事業所様向け情報(労務)4月号②

パートタイマー等に求められる正社員への転換推進措置

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:

先日、同業の社長から労働局の調査で、パートタイマーから正社員への転換推進措置に関して指導を受けたという話を聞きました。当社は、対応ができていますか?

社労士:

正社員への転換推進措置としては、次のいずれかの措置を講じることになっています。

  1. 通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者等に周知する
  2. 通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者等にも応募する機会を与える
  3. パートタイム労働者等が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける
  4. その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる

御社では、1.のしくみが導入されており、そのことがパートタイム就業規則に記載されています。

総務部長:

そうでした。正社員を募集する際に、求人票を社内の掲示板に貼り出し、パートタイマーにもお知らせしています。すべてのパートタイマーを対象に周知することが必要でしたね。

社労士:

そのとおりです。正社員に転換するところまでは求められていませんが、正社員になるチャンスを与えることが必要です。

総務部長:

実はまったく応募がなく、正社員に転換した実績がない状況ですが、問題ないのでしょうか?

社労士:

長期間にわたって正社員に転換された実績がない場合、転換推進措置を講じたとは言えないと指摘される可能性があります。周知のみでは応募しにくい環境になっているなど、措置が形骸化していないか検証することが求められています。また、2020年4月以降は、「パートタイム労働法」が、「パートタイム・有期雇用労働法」に変更となるため、パートタイマーの他に、有期雇用労働者もこの転換推進措置の対象とする必要があります。

総務部長:

つまり、フルタイムの有期契約社員も対象になるということですね。

社労士:

そのとおりです。フルタイムの有期契約社員に対する就業規則が、パートタイマーと別にある場合には、その就業規則にも正社員への転換推進措置を講じているかを確認してください。

総務部長:

わかりました。さっそく就業規則を確認してみます。

【ワンポイントアドバイス】

  1. 2020年4月より、パートタイマーだけでなく有期雇用労働者についても、正社員への転換推進措置の対象となり、措置を講じなければならない。
  2. 長期間にわたって、正社員に転換された実績がない場合、措置が形骸化していないか検証することが求められる。

保育事業所様向け情報(労務)4月号①

パワハラ防止措置は6月より大企業で義務化に

職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)も、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントと同様に法制化され、企業に対して防止措置が義務化されます。以下では、パワハラの定義を確認するとともに、どのような防止措置が求められているのかを確認しましょう。

1.パワハラ防止措置の法制化

今回のパワハラ防止措置は、労働施策総合推進法の中で、相談体制の整備等の雇用管理上の措置が義務づけられ、また従業員が会社に相談等したことに対して不利益に取扱うことの禁止が規定されています。施行時期は、大企業が2020年6月1日、中小企業は2022年4
月1日(2022年3月31日までは努力義務)となっています。

2.パワハラの定義

今回、パワハラの定義が、パワーハラスメント防止のための指針(以下、「指針」という)の中で明確にされ、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素をすべて満たすものとされました。

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導についてはパワハラには該当しません。

3.パワハラの例示

指針では、パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が示されて
います。例えば、「精神的な攻撃」では以下の例が示されています。

[該当すると考えられる例]

業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う

[該当しないと考えられる例]

遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする

※優越的な関係を背景として行われたものであることが前提

この他、さまざまな例が示されていますが、個別の事案の状況によって判断が異なる場合があり、また例は限定列挙ではありません。そのため、パワハラに該当するか微妙なものも含め広く相談に対応するといった、適切な対応を行うことが求められます。

今回の法制化により、会社の責務のみでなく、従業員の責務も規定されました。会社は、
パワハラを行ってはならないこと等に対して従業員の関心と理解を高めたり、他の従業員
(取引先等の他社の従業員や、求職者も含む)に対する言動に注意を払うような研修の実施な
どが求められています。また従業員については、会社が講ずるパワハラ防止措置に協力する
よう努めなければならないとされています。今後、ハラスメント防止研修を行うこと等によ
り、パワハラの発生防止を推進しましょう。

【介護・保育】人材定着ブログ3月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑨」

【介護・保育】人材定着ブログ2月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは⑧」の続きです。

 

先月号までは「評価制度を効果的に運用するためのポイント」について説明させて頂きました。

今月号では、介護事業所で実際の活用されている人事評価制度の事例を用いて、評価制度を構築していく上でのポイントをご紹介させていただきます。

 

1、評価内容の設計(アウトライン)

評価内容の設計にあたり、留意すべき点として下記の2点について解説いたします。

(1)どんな評価を、誰に向けて、行うのかを決める

評価には成績評価、行動評価(情意)評価、能力評価の3種類があります。各評価の定義、本質、評価方法について下表にまとめてみました。

 

成績評価・行動評価(情意評価)・能力評価の比較

 

成績評価

行動(情意)評価

能力評価

定義

仕事を通じて実現した成果の評価

仕事に対する意欲・取り組み姿勢の評価

担当業務についての遂行能力の評価

本質

結果のみを考慮した評価であって、環境や条件を評価の対象にしてはならない。

仕事を遂行する上でのマインドの評価であり、結果は成績で評価するため、原則考慮しない。

結果のモトとなる本人の業務遂行能力を、結果を通じて評価する。

評価方法

目標設定・評価・面接制度を導入する。

目標の達成度度合いで評価する。

秘めたる意欲は評価しないこと

⇒理念、規範などに照らし具体的にどのような行動を行ったかを評価する。

職能要件書にて、階層別に必要となる職能を明示し、職場での実践状況を踏まえて評価する。

 

上記の評価内容のいずれかを、職員の成長に応じて選択していくことになります。ちなみに弊社は職員を「役職者」と「非役職者」に区分し、導入する評価制度を下記にすることをお勧めしています。

 

 

 

職員の成長段階

能力評価

成績評価

行動評価

役職者

 

非役職者(一般職員)

 

 

つまり、行動評価は役職者、一般職の双方で導入が必要と考えますが、能力評価は一般職における成長過程のプロセス評価として一般職のみに導入し、成果評価は職責に応じた結果評価として、役職者への導入が適しているものと考えております。

 

(2)評価対象者と評価者の設定

評価対象者は当然、法人職員ですが、パート職員、嘱託職員、契約職員などのいわゆる非正規職員まで含めるかどうかを決める必要があります。

正規・非正規というのは働き方の違いであり、利用者からみれば関係のないことです。したがって可能な限り、すべての職員を人事評価の対象として検討してほしいものです。

但し、正規・非正規を全く同じ評価内容・評価方法で行ってしまうと、両者の処遇差があることに合理的な説明がつかなくなる点においては注意が必要です。少なくとも評価項目に差をつけるなど違いに配慮した人事評価が必要です。また、非正規から正規への登用基準としての人事評価の活用も今後、重要な視点になってくるものと思われます。

 

  次回は能力評価の方法について具体例を用いて解説させて頂きます。お楽しみに。

 

ニュースレター臨時号~新型コロナウイルス感染症~②

新型コロナウイルス感染症に関する休業手当の考え方

新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、従業員に風邪の症状があったり、感染が疑われるような場合の休業手当の支払い等についての質問を多く受けます。そこでここでは、厚生労働省のホームページに掲載されている企業向けの新型コロナウイルスに関するQ&Aから、休業手当の支払いに関する内容をとり上げます。

1. 発熱などがある従業員

発熱などの症状がある場合、厚生労働省は会社を休むように呼びかけを行っています。その際、新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、従業員が自主的に休む場合は、通常の欠勤と同様の取扱いとなります。

一方、発熱の症状があることのみをもって、企業が一律に従業員を休ませるなど、企業の自主的な判断で休業させる場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、休業手当を支払う必要があります。

2.感染が疑われる従業員の対応

発熱などの症状があり、相談・受診の目安として公表されている以下のいずれかの条件に当てはまり、感染が心配される場合には、「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう案内されています。

  1. 風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(解熱剤を飲み続けなければならないときを含む)
  2. 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合

※高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など))がある人や透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている人は1.または2.の状態が2日程度続く場合に相談する。

この相談の結果を踏まえても、業務を行うことが可能で、企業の自主的な判断で休業させる場合、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

3. 感染した従業員を休業させる場合

従業員が新型コロナウイルスに感染したため、休業させる場合、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないため、会社は休業手当を支払う必要はありません。この場合、従業員は、傷病手当金により補償を受けることができるとされています。

 

従業員に発熱などの症状がある場合、従業員本人のためにも感染拡大の防止のためにも、休みやすい環境を整備していくことが企業に求められています。また、感染防止に向けた柔軟な働き方としてテレワークや時差出勤が推奨されています。厚生労働省のホームページでは各種案内が行われているので、実務の参考にされるとよいでしょう。

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

ニュースレター臨時号~新型コロナウイルス感染症~①

新型コロナウイルス感染症に関連した助成金

新型コロナウイルス感染症が猛威を奮い、小学校等の一斉休校の要請が行われたり、イベント等の自粛により経済の大幅な落ち込みが懸念されています。すでに業績面においても影響が出ている企業もあり、売上の減少により内定者の取消や従業員の解雇を検討する企業も出てきています。そこでここでは、企業を支援する新型コロナウイルス感染症に関連した助成金をご紹介します。

1. 雇用調整助成金

今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、生産量や売上高が減少し、事業の縮小を迫られるような事態に陥ることが想定されます。そのような際、従業員を解雇せず、休業、教育訓練または出向といった雇用調整を実施することで、従業員の雇用を維持した場合に、雇用調整助成金が支給されます。この助成金はリーマンショックの際に多くの企業で活用されましたが、今回の新型コロナウイルス感染症に関しても、以下のように受給要件の一部が緩和され、活用されることが予想されます。

【原則】売上高または生産量などの事業活動を示す指標について、最近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること

【特例】生産指標の確認期間を3ヶ月から1ヶ月に短縮する

 

【原則】最近3ヶ月間の雇用保険被保険者数の月平均値が前年同期に比べて、一定以上増加していないこと

【特例】最近3ヶ月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象となる

 

【原則】雇用保険の被保険者として6ヶ月以上継続雇用されている

【特例】継続雇用された期間が6ヶ月未満の場合でも助成対象となる

 

なお、これらの特例は現在のところ、2020年1月24日から2020年7月23日までに休業の初日がある場合に適用されます。

2. 小学校休業等対応助成金

2020年2月27日に首相が全国の小中学校等に春休みまでの間、臨時休校を要請したことで、多くの小中学校等が休校の措置を実施しました。これに伴い、小学生の子どもを持つ従業員を中心に会社を休まざるを得ない状況が発生しました。

この状況に対応するため、新型コロナウイルス感染症に関して臨時休業等をした小学校等に通う子どもを持つ保護者(子どもの両親の他、祖父母等も含む)が子どもの世話をするために会社を休み、企業がその休みを年次有給休暇とは別の有給休暇として扱い、給与全額を支給した場合には、その全額(※)が助成される制度が創設されました。

※対象労働者1人、1日当たり8,330円が上限

 

いずれの助成金も、企業の申請に基づき支給されるものであり、細かな要件があります。申請を検討し、お困りごとがあるときには遠慮なくお問い合わせください。

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

令和2年度における処遇改善等加算の運用の改善

各施設・事業所における人員配置や賃金体系に応じた柔軟な対応を可能にするため保育士等の技能・経験に応じた処遇改善等加算Ⅱの要件について、加算額の配分方法の更なる柔軟化を図る。

上記の改正が令和2年から行われることになりますの、情報共有させていただきます。
詳細は下記を参照してください。

令和2年 処遇改善 運用改善

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

【介護・保育】人材定着ブログ3月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは⑨」

【介護・保育】人材定着ブログ12月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑧」の続きです。

(4)フィードバック面談を大切にする。

人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。

透明性とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合には、だれしも心穏やかでは、いられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。

面談で重要なポイントは「質」と「量」です。面談の質、それはもちろん会話の中身です。「上司としてあなたの事をしっかりサポートをします」というメッセージを伝えるとにより、上司・部下の信頼関係を築けるような会話を目指したいものです。一方「量」つまりは、面談時間と頻度です。特に面談実施の頻度です。なぜなら、その頻度によって、コミュニケーションの深まりとそれによる信頼関係の向上は、確実に正比例の関係にあるからです。そして、結果として職員の「離職率」に大きく影響します。

ただ、多くの事業所は、良くて半年に一回、多くは一年に1回。パートさんに至っては、面談は実施していないという状況です。面談の頻度に関し、筆者は、あえて「1回/月」の面談を推奨しています。特に導入当初は、1回の面談時間は短くてもいいので、面談の実施頻度を上げていくことがコツです。

 いくら推奨しても年に1回しか面談を行っていない事業所からは、すぐにネガティブな意見が続き、実施できない理由はいくらでも出てきます。ただ、管理者の仕事で最も大切な仕事は「部下の指導・育成」であることを考えれば、「部下との面談」は、まさに優先度の高い業務であることに気づくはずです。管理者やリーダーが部下の職員と向き合える時間をつくる為にはどうすればよいのか、しっかり組織で議論していただきたいものです。

次回のメルマガでは、介護事業所で実際の活用されている人事評価制度の事例を用いて、評価制度を構築していく上でのポイントをご紹介させていただきます。お楽しみに!!

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

保育事業所様向け情報(労務)3月号④

子の看護休暇・介護休暇2021年1月より時間単位での取得へ改正

育児・介護休業法では、子どもが病気になったりケガをしたときに世話をしたり、子どもに予防接種や健康診断を受けさせるために、従業員が請求することで取得できる子の看護休暇があります。また、要介護状態にある家族の介護やその他の世話をするために、介護休暇が用意されています。今回、育児・介護休業法施行規則が改正され、これらの休暇を時間単位で取得させる制度が導入されることになりました(施行:2021年1月1日)。

1.改正内容

子の看護休暇・介護休暇は、制度創設当時は1日単位での取得に限られていましたが、その後、取得する従業員の利便性を考慮し、半日単位でも取得できるように改正され、さらに今回、時間単位での取得ができるように改正されます。

この「時間」とは1時間の整数倍の時間(1時間、2時間、3時間等)をいい、1日の所定労働時間よりも短い時間のことを指します。会社は従業員から時間単位での取得の希望があったときは、その希望する時間について取得させなければなりません。

取得は始業時刻から連続する時間または終業時刻まで連続する時間となっており、労働時間の間で休暇を取得するいわゆる「中抜け」を認めることを求めるものではありません。

2.変更が必要となる就業規則

今回の改正により、現在、子の看護休暇および介護休暇を規定している就業規則(育児・介護休業規程等)を変更することが必要になります。

変更後の規定例は、次のとおりであり、時間単位での規定を盛り込みます。

<就業規則の規定例(子の看護休暇の場合)>

第○条
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
2 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。

※介護休暇も同様の変更が必要になります

3.労使協定の見直し

就業規則の変更とともに、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得することが困難な業務がある場合は、労使協定を締結することにより、時間単位の休暇の対象からその業務に従事する従業員を除外することができます。

必要に応じ、労使協定の内容を見直し、再締結しておきましょう。

子の看護休暇や介護休暇を取得した時間は、無給として扱って問題ありませんが、有給の制度を導入し、休暇を取得した従業員が生じたとき等、一定の要件を満たしたときには、両立支援等助成金が支給されます。この機会に併せて検討してもよいかもしれません。

(来月に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

保育事業所様向け情報(労務)3月号③

2020年度の社会保険料率の変更見込み

社会保険の料率は、財政状況等により、定期的に見直しが行われています。特に年度が切り替わるタイミングで変更されることが多いことから、今回は2020年度の社会保険料の料率の動向についてお伝えします。

1.健康保険料率の変更

協会けんぽの健康保険料率は例年3月分(4月納付分)から変更されています。2020年度についても、都道府県ごとの3月分からの健康保険料率が下表のとおり決定しました。

2.介護保険料率の変更

協会けんぽの介護保険料率は全国一律であり、健康保険料率の変更と同じタイミングである2020年3月分から1.79%に変更されます。この介護保険料率は、単年度で収支が均衡するよう、介護納付金の額を総報酬額で除したものを基準として保険者が定めることになっています。

3.雇用保険料の控除に関する留意点

雇用保険料率は現在、労働保険徴収法の改正案が国会に提出されており、今のところ決定していないため、動向を注視する必要があります(2020年2月14日現在)。

雇用保険料に関しては、今年度(2019年度)まで64歳以上の雇用保険の被保険者について徴収が免除されていましたが、4月からは徴収が始まるため雇用保険料を給与から控除することになります。

この他、労災保険率は3年に1度、見直しが行われていますが、前回は2018年度に変更されたため、2020年度には変更されない予定です。給与から控除する社会保険料については、4月の給与計算を始める前に、確認するようにしましょう。

(次号に続く)

社会保険労務士法人
ヒューマンスキルコンサルティング
林正人

お電話でのお問い合わせ

03-6435-7075(平日9:00~18:00)

営業時間外のお問い合わせはこちらから

相談・ご依頼の流れはこちら

menu