保育

保育事業所様向け情報(労務)6月号①

働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金

新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。

1.助成金の概要

この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。

2.助成額

助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。

[計画達成助成]

雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。

[目標達成助成]

労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

3.活用にあたっての注意点

新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。

この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。

(次号へ続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号④

時間単位年休を導入する際の注意点

年次有給休暇(以下、「年休」という)は1日単位での取得を原則としていますが、半日単位、
時間単位で取得することも認められています。特に時間単位年休は、従業員の都合にあわせて
柔軟に取得できることもあり、育児や介護、治療などとの両立の観点で従業員から導入の要望が
多く、導入を検討する企業もあるでしょう。そこで以下では、この時間単位年休を導入する
際の注意点を確認しましょう。

1.時間単位年休の導入要件

時間単位年休を導入するためには、過半数代表者等との間で労使協定を締結し、以下の
①~④の事項を定めなければなりません。併せて、就業規則に時間単位年休について規定
する必要があります。

①時間単位年休の対象者の範囲

対象者を定めるに当たり全従業員を対象にすることもできますが、製造ラインで一斉に
作業を行う場合など、時間単位年休を取得することが事業の正常な運営を妨げることがあ
ります。そのような場合、あらかじめ取得できる従業員の範囲を定めておきます。なお、
利用目的は従業員の自由となるため、育児や介護等、利用目的によって範囲を定めること
はできません。

②時間単位年休の日数

時間単位での年休取得は1年に5日が上限であり、5日以内で時間単位年休の日数を定めま
す。また、残日数(残時間数)は翌年へ繰り越すこともできますが、1年において時間単位
で取得できる日数は繰り越し分も含めて5日以内となります。

③時間単位年休1日の時間数

時間単位年休の1日当たりの時間数は所定労働時間を基に定めますが、1日の所定労働時間
に1時間未満の端数がある場合は、1日当たりで時間単位に切り上げることが必要です。そ
のため、所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位年休の1日当たりの時間数は8時間とな
ります。

④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

時間単位年休の最小単位は1時間であり、30分など1時間未満の時間を単位とするとはでき
ません。また、1時間以外の時間(2時間、3時間など)を単位とするときには、その時間数
を定めておきます。

2.時間単位年休の残日数管理

時間単位年休を導入した場合、1日単位だけでなく時間単位について取得時間数と残日数
(残時間数)を管理していく必要があります。これまでよりも年休の管理が煩雑になること
から、どのように管理していくか、事前に検討しておきましょう。

4月より年休の年5日取得義務化がスタートしましたが、この時間単位年休については5日
のカウント対象とはなりません。働き方改革の一環として導入を検討する企業もあるかと思
いますが、1日単位と半日単位の年休で確実に5日を取得できるようにしましょう。

(来月に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月③

電子申請で行うことが義務化される大企業の社会保険手続き

行政へ提出する書類は、これまで書面(紙媒体)で行うことが一般的となっています。電子化の
流れの中、政府は以前から電子申請での手続きを促してきましたが、特に社会保手続きでは利用
率が向上しない状態が続いてきました。そのため大企業では、2020年4月より一定の社会保険手
続きについて電子申請で行うことが義務化されます。

1.2020年4月以降の電子申請の義務化

電子申請が義務となる大企業とは、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人
ならびに相互会社、投資法人および特定目的会社に係る適用事業所です。義務となる時期
は、対象企業の2020年4月1日以後に開始する事業年度からです。
なお、社会保険労務士または社会保険労務士法人が、大企業に代わって社会保険の手続
きを行う場合も、同様に電子申請で行うことが義務となります。

2.電子申請が義務となる手続き

電子申請で行うことが可能な社会保険手続きは多数ありますが、今回義務化される手続
きは以下のとおりです。

①厚⽣年⾦保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
・70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届
②健康保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・健康保険被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
③労働保険
・労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書
・⽯綿健康被害救済法⼀般拠出⾦申告書
④雇用保険
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者転勤届
・⾼年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請

これらの手続きを電子媒体(CDやDVD)で行っている企業もありますが、電子媒体での
手続きも電子申請に切り換えることになります。

3.行政手続きの簡素化

電子申請の義務化は、行政手続きの簡素化が念頭にあり、事業主における手続きの簡素
化も進められています。その一つとして昨年10月から雇用保険の継続給付(高年齢雇用継
続給付金、育児休業給付金、介護休業給付金)における被保険者の署名・押印の省略が
可能となりました。
これは、継続給付の申請を行うときに必要な、申請書への従業員の署名・押印を省略で
きるものです。署名・押印を省略するためには、従業員本人に、「記載内容に関する確認
書・申請等に関する同意書」により事業主が申請を行うことに同意することの確認を行い、
その同意書を保存することになっています。
このような簡素化が今後も行われると想定されます。

自社で電子申請を行うためには、電子証明書の取得を行うことが必要であり、また、社内
における社会保険手続き業務の流れも見直す必要が出てきます。書面での提出から、電子申
請に切り換えるまでには一定の時間を要することが考えられますので、早めに検討を進めま
しょう。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号②

確認しておきたい傷病手当金の支給要件(被保険者期間)

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:今年4月に入社した従業員が、休日にサッカーをしていて転んだそうです。足を
     骨折しており、数日は入院、その後も自宅での療養が必要とのことでした。ま
     だ年次有給休暇が付与されていないこともあり、欠勤として給与を減額するこ
     とになります。このようなケースで健康保険の傷病手当金は支給されるので
     しょうか。

社労士 :傷病手当金の支給要件には、①業務外の事由による病気やケガの療養のための休 
     業であること、②仕事に就くことができないこと、③連続する3日間を含み4日以
     上仕事に就けなかったこと、④休業した期間について給与の支払いがないこと、
     という4つがあります。今回のお話についても、これらの要件をすべて満たした
     ときに傷病手当金が支給されることになります。

総務部長:なるほど。実は入社して間もないにも関わらず、傷病手当金は支給されるのか
     ということが気になっていました。

社労士 :傷病手当金の支給要件に、被保険者期間はないため、資格取得後すぐに病気に
     なったりケガをしたりしたとしても、先ほど挙げた4つの支給要件を満たせば支
     給されます。一方で、傷病手当金には資格喪失後の継続給付がありますが、この
     継続給付には被保険者期間が関係します。

総務部長:なるほど。詳しく教えていただけませんか。

社労士 :資格喪失後の継続給付は、傷病手当金を受給している(受給する要件を満たして
     いる)上で、資格を喪失したときに、その後も継続して傷病手当金が支給される
     制度です。支給されるためには、被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)
     までに継続して1年以上の被保険者期間が必要になります。

総務部長:こちらは被保険者期間の要件があるのですね。

社労士 :はい、そうです。ちなみに、ここでいう「1年以上の被保険者期間」には任意継
     続被保険者による期間は含まれず、また、任意継続被保険者の期間中に傷病手当
     金の支給要件を満たしたとしても、支給されません。

総務部長:あくまでも資格喪失後の継続給付は、任意継続被保険者となる前の被保険者資格
     により支給されるということですね。よく分かりました。ありがとうございまし
     た。

【ワンポイントアドバイス】
1. 傷病手当金は、原則としてそれまでの被保険者期間に関わらず、支給要件に該当したとき
に支給される。
2. 傷病手当金が資格喪失後にも支給されるための条件のひとつに、資格喪失日の前日(退職
日)までに1年以上の被保険者期間が必要ということがある。
3. 任意継続被保険者の期間中に傷病手当金の支給要件に該当しても、傷病手当金は支給され
ない。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)5月号①

今後さらに重要性が増すハラスメント防止対策

企業には、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
(以下、「ハラスメント」という)の防止措置を講じることが、法律で義務付けられて
います。今後、法改正によりパワーハラスメントの防止措置についても同様の対応が
求められることになりそうです。
そこで今回は、企業に求められるハラスメント防止措置をとり上げます。

1.企業に求められているハラスメント防止措置

ハラスメント防止措置として会社が行うべきポイントは、大きく分けて以下の5つにまと
めることができます。

①事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を
解消するための措置(※)
⑤①~④と併せて講ずべき措置(相談者等のプライバシー保護のための措置、相談した
こと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと従業員への周知等)
※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントのみ

2.具体的な防止措置と実務上の注意点

上記5つのポイントのうち、ハラスメントを未然に防ぐための①、ハラスメント発生時に
適切に対応するための②、そして、ハラスメントの原因となる根本原因を解決するための
④について確認します。

[ポイント①]

事業主よりハラスメントがあってはならない旨の方針を示すとともに、ハラスメントを
行った人に対しては、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し
ておく。

[ポイント②]

あらかじめ相談窓口を設置した上で、従業員に周知を行う。窓口は形式的に設けるだけ
ではなく、実質的に対応が可能な窓口にする必要がある。

[ポイント④]

業務体制の整備など、企業は妊娠等した従業員等の実情に応じ、必要な措置を講ずる。
取組例として、妊娠等した従業員の周囲の従業員への業務の偏りを軽減するために、業務
分担を見直すことが挙げられる。これは、ハラスメントの原因や背景となり得る要因の一
つとして、周囲の従業員の業務負担の増大があると考えられていることによる。

企業としては、これらのポイントを押さえた対応が行われているか、就業規則の定めや
従業員への周知などの実態を確認し、不備があれば対応を行いましょう。

現在、パワーハラスメント防止対策の法制化が盛り込まれた法律案が、国会に提出されて
います。法律案が成立すると、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相
談体制の整備等)が新しく設けられます。今後、企業におけるハラスメント対策の重要性が
より一層増すことは確実です。ハラスメント対策では、パワーハラスメントについても含め
て対応を進めましょう(※2019年4月15日時点の情報に基づいています)。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号④

中小企業にも適用されることとなる
月60時間超の時間外労働への割増賃金率引上げ

すでに大企業では、1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上とされて
いますが、2023年4月1日より中小企業にもその適用が拡大されます。今回は、割増賃金率と
中小企業への適用拡大について確認しておきましょう。

1.割増賃金率の確認

割増賃金率は大きく分けると、下表の3種類となります。

①時間外労働

労働基準法では原則として1日8時間、1週40時間を上限とする法定労働時間が定められて
おり、法定労働時間を超える労働(時間外労働)には25%以上の率で計算した割増賃金の
支払いが必要とされます。さらに、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えるときには、この割
増賃金率が25%以上から50%以上に引上げられています。

②法定休日労働

労働基準法における休日は、少なくとも週1日または4週間に4日であり、この法定休日に
おける労働(法定休日労働)に対しては、35%以上の率で計算した割増賃金の支払いが
求められます。

③深夜業

①の時間外労働と②の休日労働とは別に、午後10時から翌日午前5時までの深夜に労働さ
せたときには、25%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。

2.中小企業への適用拡大

現在、1ヶ月60時間を超えた際の割増賃金率(50%以上)は大企業のみの適用となってい
ますが、2023年4月1日より中小企業にも適用が拡大され全ての企業が対象となります。
50%以上の割増が必要となる時間は、①の時間外労働のみであり、②の法定休日労働は含
めません。
一方で、①の時間外労働が深夜に及んだときは、③の深夜業に対する割増賃金の支払い
も必要となり、その結果、割増賃金率は①の1ヶ月60時間超と②の深夜業を合わせた75%以
上で計算することになります。

時間外労働が多い会社にとっては、この割増賃金率の引上げは人件費の大幅な増加になる
可能性もあります。また、タイムカードの集計方法の変更や、勤怠システムの導入等の費用
の負担が発生することもあります。働き方改革により時間外労働の削減が社会的なテーマに
なっていますので、将来的な割増賃金率の引上げも念頭に置きながら取組みを強化していき
たいものです。

(来月号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号③

平成31年度の社会保険料率

全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率は、例年3月分
(4月納付分)から見直しが行われています。平成31年度の健康保険料率については
各都道府県によって、引上げ・引下げ・据え置きに分かれ、介護保険料率は引上げ
(全国一律)となりました。料率を確認し、徴収のタイミング間違いや保険料率の
変更漏れがないようにしましょう。

1.3月分からの協会けんぽの健康保 3.その他の社会保険料率険料率

協会けんぽの健康保険料率は、平成21年9月より、全国一律の健康保険料率から、各都
道府県支部別の健康保険料率に変更されており、平成31年3月分から適用される健康保険
料率は下表のとおりとなりました。全都道府県のうち、もっとも高い保険料率は佐賀県の
10.75%、もっとも低い保険料率は新潟県の9.63%となっており、両県の保険料率には実に
1.12%の開きがあります。

2.引上げとなった介護保険料率

介護保険の保険料率は毎年見直しが行われますが、平成31年3月分からは、1.57%から
1.73%への引上げとなりました。

3.その他の社会保険料率

①労災保険率
労災保険率はそれぞれの業種の過去3年間の災害発生状況等により、原則3年ごとに見
直すことになっています。前回は平成30年度に見直しが行われたため、平成31年度は変更
されません。
②雇用保険率
雇用保険率は毎年度、財政状況に照らして見直しが行われますが、平成31年度は平成30
年度から据え置きとなります。
③厚生年金保険料率
厚生年金の保険料率は、平成16年から段階的に引上げられましたが、平成29年9月を最
後に引上げが終了し、18.3%で固定されています。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号②

男性はいつから育児休業を取得できますか

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:今度子どもが生まれる男性従業員から、育児休業の取得を考えているという相
     談がありました。まだ、取得時期について具体的な話はありませんが、男性の
     場合、いつから育児休業を取得できるのでしょうか?

社労士 :女性が出産をし、引き続き育児休業を取得するケースでは、産後休業の後に育児
     休業が開始となります。これに対し、男性の場合は、産前産後休業はありません
     ので、出産予定日から育児休業を取得することができます。

総務部長:出産日からではなく、出産予定日から取得することができるのですか。子ども
     が出産予定日より早く生まれたり、遅く生まれたりしたときはどのような取扱
     いになるのですか。

社労士 :はい。出産予定日より早く生まれたときは、育児休業開始日を繰り上げることが
     できます。これに対し、出産予定日に生まれていないときは、出産予定日から取
     得することになります。

総務部長:え! 生まれていないのに育児休業を取得できるのですか!?

社労士 :そうです。育児休業の取得のために、会社としてはすでに育児休業期間中の人員
     手配や業務分担等を進めていますので、たとえ子どもが生まれていなくても予定
     通り取得することになります。もちろん、出産予定日より遅く生まれたときは、
     従業員からの申出により育児休業開始日を繰下げることができるという規定も考
     えられます。

総務部長:なるほど。育児休業は、原則子どもが1歳に達するまでとなっていますが、出産
     日が出産予定日より遅くなった場合、この終了日はどのように考えるのでしょうか。

社労士 :この場合、出産予定日から子どもが1歳まで育児休業を取得することができます
     ので、1年よりも長い期間となります。育児休業の期間はこのようになりますが、
     雇用保険から支給される育児休業給付金は取扱いが異なり、出産日(出生日)か
     らが対象となります。

総務部長:そうか、男性も要件を満たせば、育児休業給付金を受給することができるのですね。

社労士 :これまでは育児休業の取得の申出は女性からが多く、会社ではその対応をスムー
     ズに行ってきましたが、今後は、男性からの申出が増加すると予想されますので、
     その対応も重要になります。また疑問点が出てきましたら、いつでもご相談ください。

【ワンポイントアドバイス】
1. 男性は、出産予定日から育児休業を取得することができる。
2. 男性も、要件を満たしていれば育児休業給付金を受給することができるが、出産日が出産
予定日より遅くなった場合、雇用保険から受給できる育児休業給付金は、出産日から対象
となる。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)4月号①

2019年4月からの産業医の機能強化等に伴い企業に求められる取組み

2019年4月から、働き方改革の一環として、改正労働安全衛生法が施行され、産業医・産業保健
機能の強化が行われます。今回はこの改正に伴い、産業医の選任を行っている企業において、
今後どのような取組みが求められるのかについて解説します。

1.従業員の健康管理等に必要な情報の提供

従業員の健康確保の観点から産業医の重要性が高まっています。そこで産業医がより一層効果的な
活動を行うことができるようにするため、企業は産業医に対し、以下のⅠ~Ⅲの情報を提供する
必要があります。

Ⅰ 以下の3項目に関する実施後に講じた(講じようとする)措置の内容に関する情報(措置
を講じない場合は、その旨・その理由)
①健康診断
②長時間労働者に対する面接指導
③ストレスチェックに基づく面接指導
①~③の結果についての医師または歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく提供する
ことが求められます。

Ⅱ 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた従業員の氏名・その従業員の1月当たり
80時間を超えた時間に関する情報
1月当たり80時間を超えた時間の算定を行った後、速やかに提供することが求められます。

Ⅲ 従業員の業務に関する情報であって産業医が従業員の健康管理等を適切に行うために
必要と認めるもの
産業医から情報の提供を求められた後、速やかに提供することが求められます。

なお、ⅡおよびⅢにある「速やかに」とは、おおむね2週間以内をいいます。

2.実務上の注意点

1.のとおり、企業は産業医に必要な情報を提供することになりますが、実務上の注意点
として、Ⅱの時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた従業員がいない場合、該当
者がいないという情報について産業医に提供する必要があります。
情報提供の方法は書面により行うことが望ましいとされており、事前に提供方法を産業
医と決めておくとよいでしょう。また、Ⅰ~Ⅲの情報については企業の中で取扱う人が異
なる場合があるため、確実に産業医への情報提供が行われるよう、誰が、どのようなタイ
ミングで産業医に報告をしていくか、流れを作っておくことで提供漏れを防ぎましょう。
なお、産業医の選任が必要ない事業場については、医師または保健師に対して、Ⅰ~Ⅲ
の情報について、各情報区分に応じて提供するよう努力義務が課されています。

これら以外にも法改正により、従業員に対して産業医の職務の具体的な内容・産業医に対
する健康相談の申出の方法、産業医による従業員の心身の状態に関する情報の取扱い方法を
周知することが義務付けられました。周知方法は、常時各作業場の見やすい場所に掲示し備
え付けるなど、就業規則の周知方法と同様になります。産業医等とより緊密な連携を築き、
適切に従業員の心身の健康管理をしていきましょう。

(次号に続く)

【保育園】人材定着ブログ4月号~ワークライフバランス

「スタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」

前号に引き続き、テーマは「ワークライフバランス」です。今回は、「導入に向けた取り組みについて」のステップ3から始めます。

ステップ3
ステップ2で組織風土の醸成が少しずつ出来てきたら、今度はいろいろな「制度」や人事施策を導入し、「職場ルールの変革」などに取り組んでいきます。
下記には、その一例をご紹介いたします。
 ●両立支援制度:育休・時短期間延長、子供手当・家族休暇の創設など。
 ●多様な働き方:フレックス制度導入、短時間正社員制度導入、副業制度など。
 ●効率化:IT活用、ペーパーレス化、仕組の見直しなど。
 ●人事評価制度:部下のワークライフバランス推進や休暇取得推進を評価。
 ●インセンティブ:残業削減分を社員に還元(賞与、ベースアップなどで)。
 ●オフィス革命:レイアウト、オフィス機能の見直しなど。

介護事業所で活用している「制度」や「ルール」の事例


それでは、実際に行っている介護事業者が具体的にどのような取り組みをされているのかを、いくつかの事例でご紹介させていただきます。
●風土づくり
ある法人では、職員満足度調査を10年間以上継続して実施し、その結果を理事会で共有化して審議しています。その効果として、徐々に建設的な意見が増えてきており、社員一人一人の意識の変化を実感していると言います。また、「風土改善チーム」といった委員会活動も行われており、活動資金的な財源も準備され、極力自主的な運営ができるような配慮がなされています。
●両立支援制度
産前産後の休暇制度を産前産後ともに8週間として、法定の制度を延長運用して出産前の「つわり」の期間に、休むことができるような配慮がなされている法人もあります。また、子女の看護休暇も法定の5日/人を10日/人として、職場復帰後の育児にも配慮して運用されています。
●多様な働き方
相談員・ケアマネ・事務職・栄養士にはフレックスタイム制を導入し、介護職には職場の状況に合わせて退勤時間を調整できる「退勤フレックス制」を導入している法人もあります。また、夜勤専従職員という働き方を用意し、日勤と夜勤の分業制度を導入することで、社員の体調管理面での働きやすさが大幅に改善されています。また副次的な効果として、3か月後などといった長期間のシフトが非常に作りやすくなったので、長期休暇も含めた有給休暇が取りやすくなったとのことです。また、別の法人では介護職が月に1日「日勤フリー」と呼ばれる日を設け、その日は一般業務にはつかず日ごろたまったデスクワークなどの片付けや、残った時間で利用者さんとお出かけや食事をしたり、スポーツ観戦に行ったりするなど一緒に過ごす時間にするといった取り組みも行われています。
●ICTの活用
ある法人では、介護ソフトを導入し、iPhoneな どの端末で日々の記録を入力するとともに、長い文章の記録を行う際は、音声入力(ボイスファン)を活用することで、職員の記録業務の負担を軽減しています。これにより記録作成時間を2分の1に短縮することができ、その結果ケア時間を増加させています。情報が集約されたiPhoneを持ち寄り、会議を行うことで会議時間の短縮にも繋げています。また見守りシステムを導入し、入居者の状態を見える化することで、夜間の見守りなど職員の不安や負担感を軽減することが出来、結果としてこの法人では残業ほぼ「ゼロ」を実現しています。


課題とまとめ
ご承知の通り、これからの介護事業の運営にとって、最も大切な視点は、社員の「採用力」と「定着力」です。そのためには社員目線に立って、「社員が働き続けたくなるような職場」とはどのような職場なのかを、今一度見つめなおすことで、事業所ごとに取るべき施策は見えてくるのではないでしょうか。そこで重要なことは、職場の現状を踏まえ
着実に、かつ継続的に推進してゆくことができる事。つまり無理をして、現場に「やらされた感」的な(または一方的な)「制度」ありきで推進するのではなく、現状の課題を社員が認識し、課題解決に向けて自発的に取り組むことができるような組織風土づくりから始められてはいかがでしょうか。そして、変化が少しずつ職場に表れてきた段階で、経営的な影響も熟慮しながら、具体的な「制度」やルールの見直しの行っていかれることをお勧めしたいと思います。

 

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