医療

Q クリニックは指示した研修に対して、職員から「こんな研修には興味ありません。出たくないのですが」と拒否されて困っています。

A、困ることはありません。クリニックにおける業務の一環として義務付けられる研修であれば、業務命令であり、興味がない程度の理由で拒否することはできません。そもそもその研修の目的や趣旨を改めて説明して受講することを促します。同時に、業務命令に従わず拒否した場合は懲戒対象になり得ることもお伝えしておきます。

【解説】

まずは、そのような職員に耳を傾け、なぜ受講したくないのか、また、クリニックとしてのこの研修の必要性をしっかりとお伝えします。クリニックが指示した研修ですので、スキルが身につく、あるいは仕事に関するノウハウや気づきが得られるなど、その職員にとってメリットはあるはずです。今回の研修を受講することで、どのようなメリットがあるかについて、職員が納得いくように話すことがまずは大切だと思います。ただ、どうしても受講しない場合には、先述の通り懲戒処分も選択肢としてはあり得ますが、まずは上記のとおり説明することで主体的に受講して頂きたいものです。

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医師働き方改革 ~ 評価センターの申込は471件、面接指導医講習は7117人が修了

厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が10月12日、およそ1年半ぶりに開かれ、同省から医師の働き方改革の施行に向けた準備状況について報告を受けた。それによると、特定労務管理対象医療機関(B、連携B、C水準)の指定を受けるのに必要な「医療機関勤務環境評価センター」による評価の受審申込件数(10月9日現在)は累計で471件であることが明らかになった。受審申込み件数は当初、全国の中核病院の1200~1500件程度に上るのではないかと予想されていたが、実際にはそれを大幅に下回る結果となった。

   

また1カ月の時間外労働が100時間以上になることが見込まれる医師に対して面接指導を実施する医師の養成講習修了者(10月10日現在)は7117人であることもわかった。

  

勤務環境把握に関する2022年調査の結果も報告された。この調査は16年以降、定期的に実施されているもので、今回は病院の常勤勤務医1万1466人を対象に分析。医師の働き方改革の施行に伴い、24年4月から医師の時間外労働(休日労働を含む、以下同じ)は最長でも年1860時間までに制限される(B水準などが適用される場合)。

  

調査結果をみると、この基準を上回る、時間外労働が年換算で1920時間超の医師の割合は16年調査時の9.7%から、8.5%(19年調査)、3.6%(22年調査)と徐々に減少していた。時間外労働が年1860時間を超える医師の割合が高い診療科は、脳神経外科(9.9%)、外科(7.1%)、形成外科(6.8%)、産婦人科(5.9%)、救急科(5.1%)などだった。

  

■医師引き揚げによる診療への影響が見込まれる医療機関は30施設

  

大学病院本院以外の病院、有床診療所を対象に23年6月下旬から7月上旬にかけて実施した医療機関の準備状況調査の結果も明らかになった。

  

それによると調査時点で副業・兼業先も含めた通算の時間外労働が年1860時間を超える医師の数は、病院515人、有床診1人。このうち宿日直許可の取得や労働時間短縮の取り組みを行ってもなお、24年4月時点で1860時間を超える見込みの医師数は病院83人、有床診0人だった。さらに大学病院による医師の引き揚げで診療機能への支障が見込まれる医療機関は30施設であることがわかった。(出典:WEB医療新報)

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「おかげさま」「お互いさま」で人とつながる

どこかでこんな言葉を聞いたことがあります。「自立とは、たくさんの依存するものをもっていること」「自立」というと、自分で立っているようですが、実はそうでありません。人が生きている以上、必ず何かに依存して生活は成り立っているものです。なにかひとつのことに依存したり、しがみつたりしていては、それがなくなったときにバランスが崩れ、生きていけなくなります。ひとつのものがなくなってもちゃんと立っていられること、自分で自分自身を引き受けられることを「自立」と呼ぶのでしょう。

 昔からよく日本人は「おかげ様」という感謝のことば、「お互い様」という謙虚さ、やさしさの言葉を挨拶にように口にしてきました。これは素晴らしくバランスのとれた言葉で、この二つを忘れなければ、たいていの人間関係はうまくいくといってもいいかもしれません。自分がうまくいったときは「おかげ様」。よかったねとかおめでとうと言われたときは「おかげさま」と返します。自分が今こうしていられるのは、多くの人やものに支えられているということ。周りにいる人だけでなく、陰となって支えてくれている祖先や自然に対しても「おかげ様」です。

 他人のよくないことに接したときは「お互い様」。「迷惑かけちゃってごめんなさいね」と言われたときは「お互い様ですから」と返します。日常生活の中で、相手に腹が立ったり、失望したときでも、心の中で「お互い様」とつぶやくと「自分にも至らない点がある。知らず知らずのうちに迷惑をかけていることもあるのだろう」と多くは許せる気持ちになってきます。

 人は他人のやったことに対して厳しくなりがち。余裕がなくなると、自分の利益だけを考えてしまう「エゴ」が顔を出します。エゴがあるから感情の行き違いや争いが起こります。

他人は「~してくれない」私は「こんなにしているのに」と嘆く前に、目に見えないところで人に支えられていること、助けられていることに気づけば、そんなエゴを「ちょっと待ってそうじゃないでしょう」と修正することもできます。

「おかげ様」「お互い様」を呪文のように繰り返していれば、こころの持ちようが変わります。不思議と自分は一人じゃない。多くの人に支えられている、と心強い感覚になります。

「おかげ様」「お互い様」で人やものや世界とつながることができれば、なにも怖いものはないとさえ思えてくるものです。自分がひとのために何かできることはあるし、人に何かをしてもらうこともある、という姿勢・・・。それが本当の「自立」ということだと思うのです。(有川真由美「上機嫌で生きる」より)

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【医療コンサルタントが解説】医療機関のクレーム対応…「炎上」しない接遇のコツ

医療機関におけるクレームは増加傾向!?

近年、医療機関における患者さまからのクレームは増加傾向にあるといわれています。コロナ禍を経てさまざまな「便利なサービス」が登場したことや、SNSの利用時間が増え自分の気持ちを発信することに慣れた影響もあってか、いままで「医療機関だから仕方ない」と我慢していたことでも、積極的に声を上げるようになってきました。

つまり患者さまにとって、医療機関はだんだんと「医療を享受する特別な場所」から、「その他にも代替可能な“サービス業”」へ意識が転換してきている、といえます。

クレームが発生しやすい医療機関

医療機関では、医師による医療行為や院内の環境・仕組み、受付での対応などさまざまな要因からクレームが発生します。しかし、クレームが発生する“心理”として共通しているのは、ユーザーの「期待値からのギャップ」です。

医療機関は、他のサービス業と比較しても期待値が高い業種です。「つらい」、「痛い」、といった負の感情を抱え、心身に不具合のある状態で来院された方にとって、医療機関というのはそれがよくなる(治る)のが当たり前の場所です。つまり、それが「期待値の基準」となっているため、ちょっとでも悪い体験をすると“期待外れ”となり、クレームへとつながってしまいます。

また前述のとおり、コロナ禍を経て「便利なサービス」に慣れた患者さまは、医療機関にも他のサービス業と同等のサービス水準を求める時代になってきています。

クレーム対応に悩んだ際には、まずはこのような業種の特徴や患者さまがクレームを訴える心理、そして時代背景の変化を、院長とスタッフ全員で共通理解として持っておくことが大切です。

「謝罪の仕方」が明暗を分ける【理想のクレーム対応5ステップ】

それではここから、クレームが発生してしまった際の具体的な対処のしかたについてみていきましょう。

【Step1】まずは真摯に受け止め、謝罪をする

クレームに対処する際には、「初期対応」がその後の明暗を分けるといっても過言ではありません。クレーム対応において“炎上”しやすいのも、この初期対応になんらかのミスがあった場合が多いです。

ここでのポイントは、「事実関係はいったん差し置く」ということです。たとえば医療ミスを訴えられた場合、明らかに医療機関側のミスであることが明確にならない限り、焦って指摘内容をすべて認めてしまうのは逆効果です。

 

二次的なトラブルを避けるためにも、あくまで「相手を不快にさせてしまった」ことに対して真摯に受け止め、謝罪をするのが重要です。

【Step2】事実確認を行う

続いて、冷静に事実確認を行います。クレームを訴える際に感情的になっている方もいらっしゃいますが、ここでは患者さまの訴えを傾聴し、「感情」と「事実」を分けて整理することがポイントです。感情に対しては傾聴の姿勢で受け止めながらも、発生した事実を冷静に見定めましょう。

「5W1H(when:いつ、where:どこで、who:誰が、what:なにを、why:なぜ、how:どのように)」に沿って話を聞くと、簡潔に整理できます。さらに、「真摯に聞いている」ことを理解していただくためにも、メモをしっかり取りながら聞くようにしましょう。

【Step3】今後の対応について説明する

事実関係の整理ができたら、自院がとるべき対応について説明を行います。ここでは権限を持った責任者、なるべく院長が対応することが望ましいです。

今後の対応を説明する際のポイントは、【Step2】と同様に「5W1H」を明確にすることです。またなるべく具体的な数字を出し(例:「今週中」や「なるべく早く」ではなく、「今週金曜日の15時まで」など)、解釈の違いが生じないようにすることも重要です。

【Step4】再度謝罪を行い、感謝を伝える

【Step3】で患者さまの理解を得られたら、再度「不快にさせてしまったこと」に対して謝罪を行うとともに、そのうえで気づき・改善の機会をいただいたことに、感謝の意を伝えましょう。

クレームを訴えた人はまさか感謝をされるとは思っていませんので、ここで感謝を伝えられることで「改善意欲のあるいい医療機関だな」「言いづらかったけど、言ってよかった」とプラスの感情に変わり、また当院へ足を運んでくれる可能性が高まります。

【Step5】クレームを個人の問題にせず、組織内での学びとして共有する

クレームを訴えたご本人への対応が終わったら、組織内での学びとして共有するといいでしょう。これは直接的なクレーム対応ではありませんが、同じ失敗を繰り返さないためにも非常に大切なポイントです。

なぜクレームが発生してしまったのか、起こしてしまった「個人」ではなく「事象」に着目し、誰もが失敗を起こし得るという前提のもとに改善策を立て、共有することで、よりよい医療機関へと成長する貴重な機会となるのです。

クレーム対応は組織的な方針策定をしよう

本来であれば、医療機関内で起こるすべての事象は責任者である院長が対応すべきことですが、当然ながらすべてのクレームを院長1人が対応することは不可能です。また、矢面に立つことの多い受付スタッフなどは、マニュアルがないとクレームが入るたびに大きな負担がかかってしまいます。

そこで、院内で「クレーム対応」に関わるルールや方針をあらかじめ定めておき、スタッフからの理解と協力を得られるようにしておくことをおすすめします。

前述のとおり、一連のクレーム対応は医療機関全体の成長にもつながる非常に重要な機会です。上手なクレーム対応で評判を上げ、医療機関がますます発展することを願います。

著者:川本 浩史(かわもと・ひろし)より
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「正直」と「誠実」の違いは?

「皆さんは、“正直”と“誠実”の違いを説明しなさい、と言われたら、何と答え
ますか?」

・・・・・・・・

日常的に何となく使い分けていますが、あらためて

“違いは何?”と質問されたら、

なかなか答えずらいものがありますよね。

何だろう?


ある先生はこう表現されました。

「正直とは、“現実に言葉を合わせる”

ことであり、

誠実とは、

“言葉に現実を合わせる”ことである」

・・・・・

素晴らしい定義だと思いませんか?

“正直”

は、時には難しいかもしれませんが、

実行するのは比較的容易な事かもしれません。

でも、

“誠実”

は、なかなか難しいですよね。「言葉に現実を合わす」

この積み重ねを継続することで、私たち経営者やリーダーは成長していくのかも
しれません。

自分自身や自分自身の家族は勿論、社員や社員の家族、

そして、ご利用者やその家族をしっかり守るためにも、

私たち経営者やリーダーは、

仕事や自分自身、全てに対して

“誠実に”

向き合い続けなければならないのでしょうね。

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Q クリニックの退職金は必ず支給しなければならないのでしょうか?

A いいえ、支給しなくても問題ありません。

 

退職金とは

退職金は法律で支払いが義務付けられているものではなく、これまで慣例的に行われてきたものです。もともとは終身雇用制において定年後の生活を保障するという目的がありました。

 また、賃金の後払い的性格を有し、これに功労報償的要素が加わり、長く務めるほど退職金も積みあがる仕組みで運用されるという特徴があります。

 

ほとんどのスタッフは退職金を意識していない

退職金請求権を直接義務付ける法律はありませんので、クリニックに制度が無ければ支給する必要はなく、退職金制度を設けるか否かは使用者の判断に委ねられています。

クリニックに定年まで働く事を想定して勤務している人はあまりいないのが実態かと思います。辞めるときになって退職金の有無や金額を知る場合がほとんどで、普段の業務の中で意識することはほとんど無いと思われます。もちろん退職金にこだわるスタッフもいますが、多くのスタッフはそもそも同じクリニックで何十年も働こうという感覚は無く、退職金に対する意識も希薄のように思われます。

 そのため、院長が都度、働きぶりを考慮して額を決定しているクリニックが多くある一方で、スタッフ退職のたびに退職金をどうするかで悩まされたくないことから、一定基準を作る場合もあります。基準を作る場合に二つのパターンがあります。一つは退職金規定をスタッフに公開する場合と、あくまで院長の目安として使うだけでスタッフには伝えない場合があります。

 但し、注意して頂きたいのは、退職金規定でスタッフに約束はしていなくても、基本給に勤続年数を乗じて支給することが慣例的に長年実施されているような場合、既得権となり約束したものとみなされる場合がある点です。つまり、5年務めたスタッフのほとんどが●万円をもらっている、などとスタッフが当たり前のように認識している場合には、事実上、制度を運用しているものとみなされるということになる場合もあるということです。

 その場合の退職金は、労基法上の賃金として保護を受け、使用者には支払い義務が生じます。同時にスタッフは使用者に対して退職金の請求権を有することになります。従って、内規などに基づいて退職金制度を運用しているクリニックでは、どこかのタイミングで正式に制度を導入するかどうかの判断が必要と思われます。正式導入までは行わないということであるならば、スタッフが当たり前のように退職金の金額を認識している状態には

ならないように、普段から注しておく必要があるでしょう。

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【しごと進化論】オムロン、理念が成長の礎 「より良い社会作る」仕事を評価 社長と社員、膝詰め対話

「よりよい社会をつくる」という創業者の理念を、社員が個々の持ち場で実践できる仕組みづくりに注力するオムロン。理念実践の成果を表彰する世界大会を開催し、経営トップは国内外の現場を足しげく訪ねて社員と膝詰めで対話する。理念への共感が組織を強くすると知っているからだ。ベクトルを合わせる努力は、営業利益で過去最高を更新する成長力の礎となっている。

 

TOGA世界大会」で開会の挨拶をするオムロンの辻永社長(京都市下京区)

 

 「創業90周年の記念すべき年にTOGAが開催できて本当にうれしい」。9月下旬、オムロンが京都市内で開催した「The OMRON Global Awards」、略称「TOGA」の世界大会で、辻永順太社長はこう挨拶した。TOGAは理念実践の好事例を国内外チームの代表が京都に集って発表するイベント。オンライン含め社員のほぼ半数にあたる14000人が参加した。

 

 オムロンにとってTOGAは「投資」の一環だ。早稲田大学の教授が過去のイベントの費用対効果を試算したところ「108千万円の支出に対して業績に与えたインパクトは少なく見積もっても175千万円」と推計された。多様な発想を生むきっかけとなり、イノベーション創出数の増加につながったからだ。

 

 11回目となる今回は、オムロンヘルスケアの松島美帆さん(40)が先陣を切った。製品包装の脱プラスチック化を実現した仕組みを説明。所属する包装設計チームに加えて営業や製造、開発部門、中国やベトナム拠点など関わった約40人分の熱意を伝えた。

 

 プレゼンを終えると会場は拍手に包まれた。中途入社組の松島さんは「TOGAを通じてオムロンが今まで以上に好きになった」とほほ笑む。

 

 最高人事責任者(CHRO)の冨田雅彦執行役員専務は「TOGAは単なる表彰制度ではない」と力説する。評価は売り上げや利益の大きさではなく、企業理念の実現度合いで下す。よい取り組みを全社で共有するベクトル合わせが目的だ。最終選考に残っても順位は付けない。「社員にとってはこのプレゼン自体が働きがいの一つになっている」(冨田氏)

 

 創業者の立石一真氏が社憲を制定したのは1959年だ。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」との言葉は、90年に制定された企業理念に引き継がれた。オムロンは236月に取締役を刷新、設立後初めて創業家の取締役が不在となった。6月に取締役を退任した立石文雄名誉顧問は「経営の求心力を企業理念に置きかえてきた」と話す。

 

 冨田氏も「今の社員は創業者を直接知らない世代が大半。仕事で意思決定に迷ったときは、企業理念に立ち返る」と説明する。重要な判断の軸になるからこそ、理念浸透には手間を惜しまない。

 

 例えば、経営トップは国内外の社員と面談する「車座対話」を実施。辻永社長は23年4月の就任から頻繁に現場を訪ね、半年で20回以上の職場対話を続けてきた。企業理念と現場業務に乖離(かいり)がないか、自ら確かめるためだ。

 

 オムロンは働きがいなどを調べる「VOICE」というエンゲージメント調査を実施している。理念の実践に何が必要か、生の声を集めているのだ。22年度の調査では4万件近くコメントが集まった。辻永社長と冨田氏は移動時間などを使って全ての声に目を通す。

 

 「経営方針として理念実践を一層強化し、盤石にしていく」と辻永社長は力を込める。きれい事ではない。企業理念の徹底した浸透は利益につながる。経営は理論や手法などの技術面に加え、法人としての精神性まで重視される時代になっている。(日本経済新聞 朝刊 ビジネス10/19 )

「人を大切にする会社しか残らない」 ケア21に学ぶ職員が集まる介護現場の作り方

《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》

「企業文化は戦略に勝る」。ピーター・ドラッカーの言葉だ。これを大切にして成長を続けている介護事業者がいる。ケア21。主力は訪問介護、グループホーム、有料老人ホームなどで、他のサービスも合わせた施設・事業所の総数はグループで全国550件超にのぼる。

掲げている企業文化の1つが、「人を大事にし、人を育てる会社」。激化する人材確保の競争とどう向き合うべきか学ぶため、依田平会長を尋ねた。あわせて、今後の業界の変遷をどう予見しているかも伺った。


「これからは人を大事にする会社しか残らない」。そう笑顔で語った依田会長は、100年続く老舗企業を創りたいと意欲をみせた。

◆ 原点は小4の時の作文


  −− こんにちは。はじめまして、どうぞよろしくお願いいたします。


ありがとうございます! どうぞよろしくお願いいたします。


  −− 現在はCCO、最高文化責任者というお立場ですが、主にどのような職責と向き合っておられるのでしょうか?


このCCOという役職を設ける企業は、アメリカはもちろん日本でも増えてきています。我々もやはり、優れた経営戦略を策定・遂行していくことだけでなく、より良い社風を持つことが非常に大切だと考えています。企業として業績を上げ、幅広く社会に認めて頂けるように成長するためには、多くの方に支持される社風づくり、文化づくりが欠かせません。


我々は「人を大事にし、人を育てる」「福祉理念と市場原理の融合」「常に考え、変わり続ける」「最高のサービスの提供」などを掲げ、その具体化を目指してきました。これらを体現することが、弊社で働く職員の皆さんの幸せにつながり、サービスを受ける利用者さんの喜びにつながり、結果として社会全体を良くすることにつながっていく − 。そんな良い循環を生み出すことを主な仕事にしています。


  −− 介護・障害福祉の事業をはじめたきっかけを教えてください。


私は商売人の家系に生まれました。会社を経営している身内が多く、食事の時もいつも仕事の話ばかりしているような家族でした。


原点はおそらく、小学4年生の時の作文ですね。将来の夢として「株式投資で大儲けする」と書いて、当時の先生に呼び出されたんです。

《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》

「金儲けもいいが、人間はそんなことのためだけに生きるんじゃない。世のため人のために尽くすことが、人間の生きがい、喜びなんだ」。そんな趣旨のことを力説されました。最初は「この人なに言ってんだ」という気持ちだったのですが、やがてよく理解できるようになったんです。


その先生からは本当に多くのことを教わりました。私はこれまで様々な仕事をしてきましたが、先生の言葉がいつも心の奥底にあったんです。


  −− 現在、目標としていることがあれば教えて下さい。


これは創業の時からなのですが、長く続いていく老舗企業を作りたいなと思っています。少なくとも100年続く会社にしていくことが目標です。


実はそのために、世にある老舗企業を私なりに真剣に調査・研究したんですよ。なぜ長く続けることができるのか、見つけた共通点は大きく3つでした。

《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》

1つは経営理念に重きを置くこと。利益を出すことを目的とせず、理念を達成するために利益を出すと考えることが大切なんですね。


2つ目は、人を大事にするということ。お客さんはもちろん、取り引き先の方々、従業員の方々、広く社会の方々、全てです。


3つ目は常に変わり続けるということ。老舗は不変というイメージがありますが、実は改善すべきところをドラスティックに変えている企業が多いんです。我々の会社では、私なりに見つけたこうした老舗の特徴を取り入れています。


◆ カギは「貢献」と「成長」


  −− 今の介護業界の課題をどうみていますか?


そうですね…。かなりたくさんありますが、やはり人材不足が最も深刻ではないでしょうか。介護報酬の水準が十分でない、ということが大きな要因の1つだと捉えています。


国にはぜひ改めて頂きたいですし、業界としても一致団結して訴えていかなければいけません。事業者としては厳しい環境ですが、とにかくできることを精一杯するしかありません。

《 株式会社ケア21・依田平代表取締役会長/CCO 》

  −− 御社では人材確保にどう向き合っているか、教えて下さい。


給与面も含めて働く条件、環境を良くしていくことがやはり重要です。テクノロジーの有効活用など施策を総合的に講じるわけですが、私は多くの職員が気持ちよく、楽しく働ける職場を作ることが非常に重要だと考えています。


それをどう実現していくのか − 。例えば人生の喜び、または仕事の充実感などは「貢献」と「成長」に起因するという教えがあります。この2つが満たされると幸せを感じる、という話ですが、これは的を得ているのではないでしょうか。


介護の仕事は日頃から、「貢献」を感じやすいという特徴があるんです。利用者さんやご家族から「ありがとう」と言われると嬉しくなる、という職員は少なくないですよね。

−− そうですね。


では「成長」はどうか。資格取得など様々な方法がありますが、重要な要素の1つは他の職員に仕事を教える立場につくことではないでしょうか。それが「成長」を最も感じられる機会だ、と我々は捉えています。


ですから、キャリアアップの仕組みを作って積極的にリーダーになって頂く。最小単位のリーダーから副主任、主任、管理者、施設長など立場が上がるに連れて、もちろん処遇も上がっていく仕組みです。

最近の若い人の中には、できればリーダーになりたくない、管理職になりたくないという人もいますよね。それはきっと、仕事の量と重い責任だけがついて回るイメージがあるからではないでしょうか。


そうではなくて、人生を豊かにするために、仕事を楽しく続けるために「成長」が不可欠で、それを実現する最も良い方法がリーダーになることなんだ、と理解して頂くことに尽力しています。


  −− 人材確保の具体策として、他に何か力を入れていることはありますか?


そうですね。大前提として処遇改善、賃上げが重要なのですが、他に1つあげるとすれば定年制の撤廃でしょうか。弊社では基本的に元気なら何歳でも働けます。


今、他の業界で年齢を重ねてきた方、近く定年を迎える方など50代以上の応募が増えています。可能なら早めに定年制のない会社へ移ろう、と考える方が多いんですね。


我々はそうした人材を、本人が希望すれば正社員として採用しています。70歳まで、75歳まで、あるいはもっと先まで、可能な限り働いていこうとやる気のある方も少なくありません。自分の定年って本来、自分で決めるべきことですよね。我々はそういう方々を応援しており、貴重な戦力として活躍して頂いています。

−− 中高年は人口も多いですから、活躍してもらえればありがたいですよね。


はい。例えば年金の受給開始年齢など、彼らには彼らの事情があるわけです。できるだけそれに合った環境を用意することが重要、と言えるでしょう。


いずれにせよ、人を大事にしない限り人は集まってきません。人材確保が難しさ増す中でこれは必須条件。これからは人を大事にする会社しか残れないでしょう。


◆「大規模化の流れには戸惑いも感じる…」


  −− それでも人材難は徐々に深刻化していく見通しです。業界の今後をどうみていますか?


将来を見通すことは簡単ではありません。ただ、生き残りをかけた戦いが更に激しくなっていくことは考えられます。規模の小さな事業者は、どうしてもより厳しい戦いを強いられるでしょう。

小規模な事業者は、ICTなどテクノロジーの導入、職場環境の改善に向けた十分な先行投資ができません。職員の教育・研修にかけられるリソースも限定的で、良い待遇を用意してあげる余力がほとんどないんですね。一方で大手は違います。これから選ばれる環境作りに力を入れており、その差は開いていかざるを得ないでしょう。


  −− そうかもしれません。


小規模な事業者が淘汰される、吸収されるという傾向は既に顕在化しています。M&Aなどが盛んに行われている現状も、業界の方ならよく知っていることでしょう。国も大規模化を推進する立場で、この流れが大きく変わる可能性は低いと考えられます。

私は戸惑いも感じます。その規模は小さくても、きらりと輝いている事業所、欠かせない活躍をしている方々がいることはご存知でしょう。地域で良質なサービスを提供している志ある方々が軽視され、厳しい立場に追いやられていく状況は好ましくありません。効率化の名のもとに、そうした方々の思いが失われていくような事態になれば、結果として地域共生社会は成り立たなくなると危惧します。


ただ、今の介護報酬の水準が大きく変わるようなことが起きない限り、そうした大規模化の流れは止まらないでしょう。悲しいことではありますが、私が懸念することも現実になりかねません。


  −− 今後、大企業の御社はどのように事業を展開していきますか?


我々はいわゆる上場企業ですが、「福祉理念と市場原理の融合」という理念も掲げています。主力事業として介護・福祉サービスを提供しているということもあり、弱肉強食の世界を勝ち抜くということだけでない価値を創造したいと思っています。


「新しい資本主義」という言葉もありますが、社会も徐々にそうした方向を求めるようになってきているのではないでしょうか。競争で相手に勝てばいい、お金を稼げばいいということではない、と感じる方が増えています。我々もそうした信念を持って、皆で支え合う社会を作る前向きな動きにコミットしていきたいと思います。


  −− ありがとうございました。(介護ニュースより)

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『採用を決める前に、もう少し判断材料が欲しい! 前職について情報収集するには』

Q, 現在、正職員を募集しているのですが、当施設が希望しているような人材からの応募がなかなかありません。そのような中、条件は合致するものの、転職
歴が多い人から応募がありました。履歴書や面接で前職の仕事の内容や退職理由を確認する予定ではありますが、できれば直接、以前勤務していた職場に尋
ねることはできないかと考えています.

 

A、施設から直接、以前勤務していた職場に問い合わせることも考えられますが、個人情報でもあるため提供される可能性は低いものと思います。このような場合は、応募者から以前勤務していた職場に「退職証明書」を発行してもらい、その内容を確認するという方法があります。

 

2.退職証明書の発行義務
退職証明書は、労働者が退職したときに、その勤務先が必要事項を証明するために交付する書類です。退職者から請求があった場合に、遅滞なく交付することが義務付けられています(労働基準法第 22 条)。退職証明書には、次の事項のうち、退職者が請求した事項のみが記載されます。
 使用期間
 業務の種類
 当該事業における地位
 賃金
 退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあって
は、その理由を含む)


この退職証明書を応募者に提出してもらうことで、履歴書等の提出書類との齟齬がないか確認できます。採用したい人材かどうかの判断材料ともなります。応募者には、どの記載事項を必要としているのかを具体的に示した上で、提出を求めるとよいでしょう。なお、退職証明書の交付を請求できるのは、退職した本人のみで、退職後 2 年間となっています。つまり、貴施設から直接、前の職場に交付を依頼することはできません。応募者に「前職の勤務先に退職証明書の交付を請求し、当施設に提出してください」と依頼して取り寄せるようにしましょう。

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ひとりの時間をつくる ~心の中の自分はいつもあなたと話したがっている~

 

だれかと一緒にいる時間を楽しむためには、一人に時間が必要。

対極にあるようですが、どちらの時間もあってこそ、自分を幸せに生きられると実感するものです。

 人間関係とは、人との関係である前に、自分との関係が基本になっているからです。

私たちは、人間関係の中でつねに何かの役割を全うしようとしています。仕事人、母親、妻

子ども、恋人、友人・・・どんなに近しい関係でも、四六時中一緒にいると生きぐるしくなり、疲れてしまうでしょう。

もちろん、人と関わることでの喜びは計り知れません。

人間関係を通して成長できる事。ほとのために何かができる事。認めてもらえること。理解し合えること。支えられていること。愛し愛されること・・・・。そんな人としての幸せをしみじみ味わうためにも、本来の自分に戻るために時間は必要なのです。忙しければ、忙しいほど、わずかでもほっとできるひとりの時間が貴重であることは、誰も感じたことがあるでしょう。様々な人間関係から少し離れると、客観的に見えてくるものがあります。「あんなことを言われてカッとしたけれど、感情的になることでもなかったかも」とか「自分なりに頑張ったのだからあれはあれでよかった」とか・・・。自分の心の声に耳を傾けるかどうかで、人生に深みはまったく違ってきます。

ひとりでいる時間は、何もしていないようでも、無意識に頭を整理して、何かを創り出している時間でもあります。インスピレーションがあったり、いいアイデアを思いついたりするのも、一人でいるときが多いはずです。自由にやりたいことをやったり、没頭するのもいいでしょう。一人の時間がどんな人にも必要であり、自分を生きようとする贅沢な時間です。

なかなか一人になれないという人も、通勤時間やお風呂の時間、寝る前の10分など、テレビやスマホから離れて、自分だけの時間を過ごす時間を作ってみてください。

心の中に自分は、いつもあなたとおしゃべりしたがっています。自分を大切にする人は、人を大切にできるようになります。やさしさの基本になっているのは、こころの余裕なのです。

(「上機嫌にいきる」より)

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