医療

【医師が聞いた】開業からわずか6ヵ月…人員6名の小規模クリニックで起きた“ドロ沼退職劇”

軽視してはいけない「スタッフ間の不仲」

クリニックの運営は、いわずもがな医師だけでは成立しません。電話対応や受付窓口での対応をはじめ、採血やレントゲンの介助、医薬品の手配・医療廃棄物の対応、診療報酬請求や公費医療請求にいたるまで、看護師や医療事務のスタッフが多様な業務を遂行しています。

しかし、こうした重要な業務を行う人材を軽視し、ちょっとした特別扱いや失礼な言動をすることによって、勤務継続のモチベーションが低下し、退職者が出たり、最悪の場合クリニック運営自体が行き詰まったりするケースもあるのです。

スタッフが退職する要因としては「院長への信頼失墜」がもっとも多く、次いで「スタッフ間の不仲」による精神的ストレスが続きます。

ここでは、スタッフ間の不仲がクリニック全体の問題に発展してしまった例を見ていきましょう。

院内が“派閥で真っ二つ”…最悪の空気で業務不可能に

クリニックを開業した当時は、新型コロナウイルスの流行真っ只中で、受診控えが進みなかなか集患ができない時期でした。スタート時の人員配置は医療事務3名、看護師3名と、クリニックではよくある構成です。

緊急事態宣言の影響で業種問わず営業自粛をしているところが多く、患者数はなかなか思うように伸びませんでした。それでも、数ヵ月で1日20名~30名程度の受診患者を確保し、なんとか経営存続ができるレベルで運営していました。

患者数が多くない分、患者1人ひとりに対しては懇切丁寧に診療を行えていた反面、院長である筆者は経営管理の立場として、スタッフの様子をしっかりと把握することができていませんでした。

開業から2ヵ月が経つと、いつの間にか院内にはAとB、2つの「派閥」ができ、スタッフはそれぞれにはっきり分かれてしまいました。こちらの指示がなかなか全体に伝わらず、違和感を覚えたほどです。あとから聞くと、勤務終了後もそれぞれの派閥がクリニックの近くの喫茶店などで、互いの悪口などを言いあっていたようでした。

開業して3ヵ月が経ったある金曜日の午後、筆者は所属する医師会の乳児検診のため、午後の一部を休診にして外出しました。

帰ってくると、スタッフが皆涙目になっており、とても業務が遂行できる状態ではありません。聞けば、「仲違いを解消しようと院長抜きで話し合いをしたところ、50代のベテラン看護師を筆頭に、派閥Aのスタッフが派閥Bのスタッフに激しい言葉をぶつけていた」というのです。

派閥Aのスタッフは、派閥B看護師たちに対して
「技術がなっていない、あなたはどこで看護学を勉強してきたのか。一緒にやっていて恥ずかしい」
「点滴や採血が下手くそ過ぎる」
と、また派閥Bの医療事務スタッフにも
「あなたは空気が読めていない。病気かもしれないから、受診して検査を受けたほうがよい」
「患者に対して偉そう。何様のつもり」
などと、限度を超えた感情的な発言を繰り返していたようです。

やむなく筆者は1人ひとりに面談を行いましたが、時すでにおそし。
もはや冷静な議論は不可能で、派閥Bのスタッフには「向こうの3名を辞めさせなければ、我慢できないので私たちが全員退職する」と言われてしまいました。

1週間の夏休みを挟みましたが、仲違いの解消は困難と判断し、筆者はスタッフの半分を入れ替える方針を固めました。このままでは患者数の増加にも耐えられず、またかかりつけ医療機関として不可欠な「安心感」を提供できないと思ったからです。

また、院長である筆者が片方の派閥を特別扱いしたのが察知されたのか、派閥Aからは「もうこんなクリニックでは働けない、こういう判断をした院長についていけない」と言われてしまいました。最終的には、クリニックの定例ミーティングでも足を組む、寝たふりをする、朝礼にも出ないなど挑発行為がみられるようになりました。

派閥Bのスタッフも同様の雰囲気で、「朝起きられなくて微熱があるので休みたい」といった申し出が相次ぎました。結局、3ヵ月かけてスタッフの入れ替えを実行しました。前述のベテラン看護師1名には、試用期間を超えられないために退職を促しました。

9月のある朝、ベテラン看護師はいきなり院長室の前に立ちはだかりこう言い残し、クリニックを去りました。

「もう、辞めます。ありがとうございました。私も精神的におかしいですが、自分を辞めさせる先生もおかしいから、検査を受けられてみたらどうでしょう」

同じ派閥Aの医療事務スタッフも、一斉退職ではないものの、このベテランの看護師の退職をきっかけに他の医療機関へ転職していきました。

トラブルを起こさないために…院長がすべき「予防策」

クリニックのスタッフ間トラブルの原因のほとんどは、コミュニケーション不足と院長の管理能力不足によるものと考えられます。

院長は朝礼や定例ミーティングにおいて、クリニックの診療方針や経営の方向性を伝えるばかりでなく、チームミーティングや個別面談でスタッフへの傾聴を行い、不安や不満の解消に努めながら、院長としての期待を伝え続けていくことが重要です。

こまめなコミュニケーションを怠ると「自分の話を聞いてもらえない」「他のスタッフとの不平等感」が不満にあがることが多いです。したがって、院長が話を聞いて可能な限り対応したり、ビジョンを示したりと真摯に向き合うことが重要です。

また、働くうえで交通費の支給方法(給与に混ぜる、あるいは別途支給)や賞与の支給根拠についても、しっかりと伝える必要があります。スタッフ同士同じ条件でないとトラブルの火種になり、「特別扱いした」などといらぬ噂が掻き立てられます。

今回の事例は、院内の組織運営が円滑でなかったことが主な原因です。対応が遅かったものの、院長と数名のスタッフとのあいだに信頼関係を保つことができていたため、スタッフ全員の退職までには発展しませんでした。影響力の強いスタッフが派閥を作り、院長への不満が高まると、他のスタッフを巻き込んで一斉退職してしまうきっかけとなります。

悪影響を与えるスタッフは、他人のせいにする(「自分は悪くない」「〇〇さんの知識不足のせい」「△△さんの精神状態のせい」)と言い張ったり、事実ではなく感情で物事を判断し周りに押しつけたりする傾向があります。こうして、根拠のない噂を繰り返して自分の派閥を作り、他のスタッフがそれを事実と誤認して派閥を拡大させていくのです。

こうしたスタッフは面接時に、転職であれば以前の職場の退職理由を丁寧に聞き、自分本位の「危険なサイン」を見抜いて、入職をさせないことが予防策になります。履歴書を確認し、不自然に転職を繰り返しているようであれば要注意です。特に開院前でスタッフ募集に余裕がないと、見逃してしまいがちです。

万が一見抜くことが難しければ、こちらの経営理念・コンセプトを丁寧に伝え続け、「ここではやっていけない」と試用期間中に辞退してもらうことがトラブル回避のコツです。

著者:武井 智昭(たけい ともあき)
小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。
(編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン)
クリニック・医療業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

「2024年問題」の行方 医師確保へ働き方改革急げ

日本経済新聞 朝刊 経済教室(26ページ)2023/9/26 

医療提供の視点からみた2024年度は、まず団塊世代が全員75歳を超え、サービス需要が急増するタイミングだ。一方、ワークライフバランスを重視する医師が近年急増し、命に関わる状況に対処する医療の供給能力が急速に先細りしていく。さらに244月には新たな働き方改革が始まる。

 

 地域差は大きいが、救急のたらい回しや手術の待ち期間の長期化など大きな副作用が予測される。しかしこの機を逃して働き方改革を先送りすると、数年後には日本の医療提供体制は悲惨な状況に陥り、それがどんどん悪化する可能性が高い。働き方改革を進めると同時に、診療報酬改定でも救急、外科系診療科、産科など医師が不足する診療科に医師が集まるような内容の改定を進めるべきだ。

 

 日本の医療提供体制が危機的な状況にある最大の要因は、04年に始まった新しい臨床研修制度だと筆者は考えている。それ以前の新人医師の多くは、診療科間の仕事内容の違いもわからないまま、いきなり大学の医局に入り研修を行った。大学医局で滅私奉公的な初期教育を510年程度受けた現在の50歳以上の医師の多くは「医療の王道は内科や外科。常に週80時間ほど病院にいる。請われれば過疎地でも働く」といった労働観を持つ人が多い。

 

 04年以降の初期臨床研修では、研修医は色々な診療科を回るようになり、「どこの診療科が大変か」を見極められるようになった。さらに午前9時~午後5時の研修時間を厳格に守ることが義務付けられ、現在40代前半以下の医師は、その前の世代の滅私奉公的な研修を経験せずに、最初の2年間の医師としての生活をスタートしている。その結果、価値観の変化も相まって、ワークライフバランスを重視する労働観を持つ若い医師が増えた。

 

 「お産や術後管理などで長時間労働を強いられる手術や救急は避けたい」という若い医師の声に象徴されるように、ワークライフバランスを重視する世代の医師の多くが夜勤のない定時勤務の診療を望むようになった。日本の医療は大都市の軽症向けのクリニックなどの受診は便利になった。一方で、がんになったときに手術をしてくれる外科医や、心筋梗塞や脳卒中が発症した時に対応してくれる救急部門で働く医師が減少し、「生命に関わる肝心な時に診てもらえない」方向に確実に向かっている。

 

 新臨床研修制度が始まるころから「医学部卒業生のうち、外科系診療科の入局を希望するのは12人あるいはゼロ」という話を聞くようになった。特に消化器の手術やケガへの対処をする一般外科への入局者は急速に減少した。198090年代には一般外科を希望する学生が多く、1学年10人以上が外科に入局することも珍しくなかった。

 

 98年から08年にかけて医師総数は249千人から287千人へと15%増え、さらに18年にかけては327千人へと14%増えている。一方、一般外科医に整形外科医・脳外科医・胸部外科医などを加えた外科系医師総数は同時期にそれぞれ5%10%の伸びにとどまった。一般外科を除くすべての診療科では98年から18年にかけて医師数が伸びているのに対し、一般外科ではいずれの期間も減少している。

 

 一般外科医の人数の推移を年齢階級別にみると、2039歳の減少率が突出して大きい。若い世代の一般外科医離れが影響しているとみられる。

 

 こうした環境でも、一般外科医不足がこれまで顕在化しなかったのは、一般外科医の多い現在55歳以上の世代が現役で働いているからだ。だが間もなくこの世代が引退を始める年齢に達し、手術提供能力が急低下することも予想される。

 

 そこへ追い打ちをかけるのが医師の働き方改革だ。244月から実施される医師の働き方改革では、時間外労働時間の上限は原則として年960時間、特例措置として年1860時間という2つの基準が設けられる。所定労働時間が週40時間とすると、年960時間の場合は週にならせば約58時間勤務、年1860時間の場合は約75時間勤務が上限となる。週58時間以上働く医師の大半は大学病院や救急患者を多数受け入れている病院で勤務し、診療科別では救急、外科系診療科、産科などに集中している。

 

 働き方改革とは、救急、外科系診療科、産科など人手不足を現在長時間労働で何とか成り立たせている診療科の労働時間を、強制的に週58時間もしくは75時間に短くする改革といえる。

 

 その結果、第1に夜間にこれまでのように医師を働かせることが困難になり、特に夜間救急患者を受け入れてくれる病院が非常に少なくなる。第2に手術提供能力の低下により手術の待ち期間が長くなり、がんになってもすぐに手術を受けられなくなる。こうした患者自身の命に関わる大きな副作用が伴う改革であることを国民は認識すべきだ。

 

 「子供が熱を出したときに診てくれていた病院が夜間の救急を中止する」「がんの手術を受けるまでの期間が1カ月から4カ月に伸びた」「地元の病院でお産ができなくなる」といった問題が今後生じかねない。

 

 ならば医師の働き方改革を中止すべきだろうか。筆者は問題発生を予想しつつも、医師の働き方改革は予定通り進めるべきだと考える。働き方改革を実施しなければ、救急医、外科系医師、産科医などのなり手がさらに減り、早晩大変な状況になり、年を経るごとにその状況は悪化の一途をたどることが予想される。

 

 こうした事態を回避するには、上記の診療科に進もうとする医師を増やすことが必要だ。増やすために最も大切なことは、これらの診療科に進んでも週58時間以上働くことはなく、ワークライフバランスが可能な生活が送れることを保証してあげることだ。働くのを苦にしない50歳以上の医師が現役で働くいま、働き方改革を進める必要がある。時期が遅くなるほど改革の実施が難しくなるだろう。

 

 働き方改革を乗り切るためにデジタルトランスフォーメーション(DX)により医療の生産性を上げることや、医師から他職種へのタスク(業務)シフトを進めることの重要性が指摘されている。筆者が提案するのは、手術やお産や救急に関わる医師の仕事は大変だが、その代わりに給与が他の診療科より高くなることを明示し、その診療科を目指す医師を増やすことだ。

 

 その具体策は、手術やお産や救急に関する診療報酬の一部を、病院を介してではなく医師に直接支払うドクターフィーを導入することだ。医師が一人前になるには卒後10年以上の年限が必要だ。今から大変な診療科で働く医師に対する金銭的インセンティブ(誘因)導入や働き方改革を契機に医療の生産性を高める取り組みを早急に進める必要がある。そうしないと、心筋梗塞や脳梗塞患者のたらい回しや、胃がん手術を早期に受けるために海外で手術をすることが常態化する国になっていく可能性は決して低くないだろう。

 

<ポイント>

○ワークライフバランス重視する医師急増

○激務の救急、外科系、産科の人手不足深刻

○医師に直接診療報酬支払う仕組み検討を

年収の壁、抜本対策先送り 企業助成1人50万円

政府は年収が一定額に達すると社会保険料が発生して手取りが減る「年収の壁」の対応策をまとめた。賃上げなどで労働者の収入が減らないよう企業に1人あたり最大50万円を助成するのが柱。今回の対策は3年程度の時限措置で、2025年に予定する制度改正で抜本改革に踏み切れるかが問われる。

 足元で賃上げが進むなか、年収の壁に引っかからないよう就業時間を減らすパートや派遣社員が増えている。新たな対策で深刻な人手不足に歯止めをかけるとともに、優遇策を通じて企業にさらなる賃上げを促す。

 壁には大きく年収に応じて「103万円」「106万円」「130万円」の3つがあり、額ごとに対策を講じる。保険料負担が大きい106万円の壁向けに、政府は助成制度を設ける。

 岸田文雄首相は25日、「まずは106万円の壁を乗り越えるための支援策を強力に講じていく」と強調した。週内に正式に決める。

 従業員101人以上の企業に勤める労働者は月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たすと配偶者の扶養を外れる。壁を越えると約15万円の負担が発生するため、厚生労働省は年収換算で約106万円の壁の付近で就業時間を調整して手取りが減らないようにする人が最大60万人いると試算する。

 新たな対応策では手取りの減少を補うため、従業員が負担すべき保険料の増加分を手当として支給したり、基本給の増額と労働時間の延長に取り組んだりする企業を助成する。

 例えば、賃金の15%以上分を従業員に追加で支給すれば1~2年目でそれぞれ20万円、3年目にも一定の要件を満たせば10万円を助成する。扶養から外れた労働者の社会保険料分を、手当の支払いで支援した企業も支援する。

 実際の支給は最も早くて24年4月となる見通しだ。大企業の助成額は中小企業の4分の3になる。

 年収130万円の壁は、従業員100人以下の企業で年収が同額を超えると扶養から外れ社会保険料を納めなければならなくなることを指す。今回の対策では、急に残業が増えたなど一時的な収入増であれば、連続2年まで健康保険組合などの判断で扶養にとどまれるようにする。

 年収103万円の壁では、本人に所得税が発生するほか、企業のルール次第で配偶者手当が支給されなくなる。厚労省はガイドラインなどで企業に廃止や変更を含めて制度の見直しを働きかける。

 保険料の負担分を実質的に肩代わりする今回の助成策は、自ら保険料を納める他の労働者との公平性が保てない恐れがある。そもそも106万円の壁は負担が生じる代わりに年金額が増えたり、ケガや出産の際の給付が充実したりするなど、本来は「壁」と呼べないとの声も多い。

 支援策は25年の年金制度改正に合わせたつなぎ措置だ。今回の対策は、労働者が納めるべき保険料を国が実質的に補填する内容で、助成金による急場しのぎに過ぎない。

 厚労省は9月、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で年収の壁を解消するための議論を始めた。年収の壁問題の抜本解決には、壁の内側で働いているうちは保険料を支払わずに給付が受けられる第3号被保険者のしくみを変える必要がある。

 専業主婦などの第3号被保険者には、夫婦それぞれが保険料を支払う共働き世帯などから「優遇だ」と批判がある。保険料を負担せずに給付を受けるのは社会保険の原則に反する。少額でも働いて収入を得たのなら、それに応じた保険料を納めるのが本来の姿といえる。

 とはいえ、年収が106万円に満たない人にも等しく保険料負担を求めるとすれば大きな反発は避けられない。今後3年の間に国民全員により公平で納得感のある形で、持続可能な抜本改革を実現させる必要がある。(日本経済新聞 朝刊 総合23ページ)2023/9/26)

正社員転換、助成を増額 ~厚労省、雇用期間「3年以内」撤廃

日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

厚生労働省はパートや派遣といった有期雇用の労働者を正社員に転換した企業への助成金の要件を2024年度に緩和する。現在は同じ会社での雇用期間が通算6カ月以上3年以内の人を対象としているのを「6カ月以上」に変える。雇用の安定を後押しする。
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 現行制度は有期労働者を正社員にした場合、中小企業には1人あたり57万円、大企業には427500円を最大20人分まで支給している。有期の雇用期間が3年を上回る場合は対象外となっていた。
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 非正規の労働者を巡っては雇用の不安定さに加え、将来の低年金などの問題が指摘される。総務省の就業構造基本調査によると、非正規で働く女性は2210月時点で1447万人に上る。女性の雇用者に占める割合は53.2%と推計され、厚労省は改善の余地があるとみている。
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 今回あわせて助成金額も見直す。中小向けは60万円に、大企業向けは45万円に増額する。ただ、2人目以降はそれぞれ50万円、375千円に減額し、ばらまき色を薄めて財政に配慮する。
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 労働契約法は雇用期間が通算5年を超えた場合に、労働者は無期雇用への転換を申請できると定める。助成金がなくても有期雇用から脱する手立てがあることを考慮し、5年超の労働者に関しては助成金額を半額に抑える。
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 助成制度は13年度に導入し、22年度までの10年間で計78万人強の正社員転換を後押ししてきた。各業界で人手確保のため労働者を正社員として登用するなど処遇改善の動きは活発になっている。日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)2023/9/24

Q 評価はするも、結果をフィードバックしていないので、職員は何がどう評価されたかわからない

A 評価フィードバックを年2回実施し、さらに個別面談(毎月)にて課題解決のフォローを行っている。

解説)人事評価でもっとも大切なキーワードは何でしょうか。それは「透明性」と「納得感」です。透明性とは、人事評価でいえば、どういう評価項目で、だれがどのようなプロセスで評価をしているのかが明確であること。また「納得感」とは、なぜその評価結果になったのか被評価者が理解し、納得することです。しかしながらこの納得感が生まれるのはそう簡単にはいきません。なぜなら多くの職員は、自分は一所懸命仕事をし、それなりに仕事で貢献していると思っているからです。しかしながら、上司の評価がそのようなものでない場合には、だれしも心穏やかでは、いられないはずです。半ばあきらめて、表面的に納得したフリをしている場合も多いのではないでしょうか。それでは納得感を醸成するにはどうすればいいのか。まず、絶対に必要なのが、フィードバック面談です。面談では、自己評価と上司評価が明らかに違っている項目に着目し、その評価にした根拠を具体的に話し合うことで、お互いの視点や期待レベルを知ることができ、初めて「納得感」が醸成されてくるものです。

 

Q、各事業所の責任者である管理者は、労基法上の管理監督者としての扱いで、残業代や休日労働の手当を支給していません。ただ、遅刻、早退、欠勤があった場合には、一般社員と同様に給与を減額しています。管理監督者の扱いに関してこの方法で問題ないでしょうか?

A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。

1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)

2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている

3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている

 これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。

例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。

先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。

 

 2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。

 3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱いについてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。

  つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残業手当はつかないことになります。

ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。

 

 

急患26人診療、2人みとり…でも休息扱い 宿日直の「特例」急拡大

「宿日直許可がおりた後も、宿直のときは毎回多くの救急患者を診ている」と話す男性医師

医師が宿直や日直をしても、労働時間とみなさない特例が医療現場に広がっています。来年4月からの「医師の働き方改革」に逆行しかねない動きですが、国や病院も後押ししています。なぜなのか、現場から伝えます。 宿直をこなしていても「休息」扱いに…その違いはどこから? 酷暑が続いていた8月上旬の夕方、東日本にある救急病院(約300床)に勤める40代の男性医師は、もう一人の医師と翌朝9時までの宿直に入った。 午後8時前、尿管結石の合併症で腎臓に炎症を起こした高齢女性が救急車で運ばれて来た。敗血症性ショックを起こす恐れがあった。

 

すぐ専門治療が必要と判断し、近くの病院3カ所に1時間かけて電話したが、「夜なので医師を呼び出せない」と受け入れを断られた。 女性に問診、血液や尿の検査、抗生剤の点滴、尿道カテーテルなどの処置をして入院してもらい、夜中は23回様子を見に行った。翌朝、泌尿器科がある病院に転院するのを見届けた。 午前0時前、急性アルコール中毒で意識のない若い男性が搬送されてきた。午前2時前に来たのは、ほかで受け入れを9回断られたという熱中症の中年男性だった。 朝までに受け入れた救急患者は計26人。男性医師は「夜間の救急では一人として手を抜ける患者などいない」と話す。 合間を縫って、病棟の約300人の入院患者も見回った。2人の末期がん患者をみとり、家族を呼んで説明し、死亡診断書を書いた。

 

死亡診断書を書き、病棟を見回り…でも「休息時間」に 午前4時前に仮眠室に入り、起きたのが午前7時。睡眠は3時間だった。 ところが、この宿直は一定の手当が出るものの、病院から労働時間ではなく、「休息時間」とみなされた。男性医師は翌日も休めず、夜まで通常診療をこなした。 これらが可能になったのは、この病院が今年に入り、労働基準監督署から「宿日直許可」を得たからだ。

 

許可があれば、夜間や土日、入院患者の急変や外来患者に対応するため医師が待機する「宿直」や「日直」について、特例的に労働時間としてみなさなくてもよくなる。 来年4月から「医師の働き方改革」が始まり、時間外労働が原則年960時間(月80時間相当)に罰則付きで規制されるのを前に、いま多くの病院が宿日直許可を申請している。 地域の病院は人手不足のため、宿日直は主に地元の大学病院から派遣される医師が担っている。時間外労働の上限は、大学病院と派遣先での労働時間を合計した上で適用される。

厚労省も促進の「宿日直許可」、浮上した二つの課題 許可がない病院では宿日直の時間すべてが労働時間とみなされるため、大学病院は上限超えを心配し、派遣医師を引きあげる動きがある。各病院は宿直を回せなくなり、救急や出産の対応が止まってしまう事態を避けようと許可を申請している。 地域医療の崩壊を防ぎたい厚生労働省も、病院に宿日直許可の申請を促している。労基署による許可は2021年が233件、22年が1369件と約6倍に急増した。

ただ、宿日直許可をめぐって、二つの課題が浮上している。 厚労省の基準では、許可には「軽度または短時間の業務」「十分な睡眠がとれる」などの条件を満たす必要があるが、表現があいまいなため、厳密には基準に該当しないような病院も許可されることがある。 また、許可の取得後でも、宿日直中に通常業務が発生すれば、病院は労働時間として扱い、時間相応の手当も支払わなければならないが、適切に運用していないケースがある。 これらが原因で、実際には働いているのに労働時間とみなされない「隠れ宿日直」が存在すると専門家は指摘する。 男性医師は訴える。

「労基署は病院の実態をよく把握せずに許可したのではないか。長時間労働の医師が患者を治療すれば、事故も起きかねない。働き方改革に逆行している」    朝日新聞社

自信のあることほど「まだまだ」と思う ~謙虚な人ほど、自分の価値がわかっている~

これまで、様々な分野で活躍されている優れた仕事人に会ってきましたが、一番の共通点は

「謙虚である」ということのように思います。謙虚な人は、自信のあることほど「まだまだ」と思って、更に努力しています。

適当にやっていると「この程度でいいかな」と思ってしまいますが、とことん追及していると、上には上があること、自分がまだまだ及んでいないことが見えてくるからです。

もう十分と慢心すれば、成長が止まることをよくわかっているのだと思います。

 このような方は、どんな人の話でも謙虚に耳を傾けます。「自分はまだまだ実力が足りない、もっと努力しよう」と、目指すところは、ずっと先にあるので、情熱をもって成長していけるのだと思います。

 反対に、一時的に儲かった若手経営者が贅沢三昧するようになった話はよくあるのですが、次には大抵、ドン底に落とされる展開が待っています。一気にツキに見放されることがよくあります。

 また謙虚な人ほど、心の奥には自分を信じる気持ちがあります。自信があるからこそ、相手を恐れず、謙虚な姿勢を抜けるのです。卑屈になったり、傲慢になったりする人は、実は自信がないから相手を恐れて、自分を大きく見せようとしたり、反対に小さく委縮したりするものです。

 謙虚さは、こころのクセです。

謙虚な人ほど、「自分に価値があること」は分かっています。自信があることを活かすことで「自分の価値がさらに高まること」も分かっています。

「まだまだ」と思うからこそ、さらに自信がつくられるのです。

副業と兼業に関するルール作り

Q, ある職員から「勤務終了後に夜間に、他の事業所でも働いてみたいのですが、問題ありませんか?」という質問がありました。金銭的な理由ということなので、現業に支障のないようにしてもらえれば副業を認めていきたいと思いますが、認めるにあたり留意点などあれば教えてください。

A,

厚労省の「副業、兼業に関するガイドライン」によると副業は、新技術開発や第2の人生の準備として有効であると書かれています。人口減少期を迎え 労働力の減少が叫ばれている我が国において、副業の推進により国は労働力の確保や生産性の向上を期待しているものと思われます。

では事業所としては副業を認めなければいけないのでしょうか。法律上、副業禁止の可否に定めはありませんが、過去の判例でみると「労働時間以上の時間をどのように利用するかは、労働者の自由」との考え方に立っていて、副業を認めることが基本的な対応と考えられます。

しかし、副業を解禁していく場合の注意点もあります。

まず、職員から副業を始めたいという申し出があった場合、事業所として、まずは本業に影響がないことを確認する必要があります。たとえば、深夜業に従事して、寝不足になり本来の業務がおろそかになってはいけません。他には他の事業所で勤務するとなると、当事業所の情報が漏れるリスクもあります。従って、事業所として申し出があった場合に許可することを前提にしつつも、いつ、どのような業務に従事するのかをきちんと確認し、内容を精査する必要があるでしょう。また、就業規則にもその点を下記の内容にて表現することがあります。

 

○○条 法人は職員が副業兼業に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止または制限することが出来る。

①労務提供上の支障がある場合

②企業秘密が漏洩する場合

③会社の名誉や信頼を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

④競業により事業の利益を害する場合

 

また、残業代の計算にあたっても注意が必要です。複数の事業所で勤務する場合、労働時間を合算して1日8時間、1週で40時間を超えることも想定されます。労基法ではその場合、合算した労働時間として超過時間があれば残業代を支払う必要があります。この場合、支払う側は、後から雇用契約を締結した方、もしくは法定労働時間を超えて働く原因を作った方に支払の義務が生じます。

 

次に社会保険関係ですが、雇用保険については、たとえ複数の勤務先でそれぞれ週20時間以上勤務していたとしても、主たる勤務先(原則、収入が多い方)でしか加入できません。

 

健康保険と厚生年金金保険については、複数の勤務先それぞれ加入条件を満たした場合、どちらで加入するかは本人が選ぶことになります。そのうえで、例えば、加入する先での勤務先給与が月20万円、加入しない方が月10万円だとすると合計額30万円に基づいて社会保険が計算されます。つまり、それぞれの勤務先の給与額に応じて按分計算され、両方の勤務先から毎月の社会保険料が控除されることになります。因みに健康保険証は、加入する勤務先の保険者のみから発行されます。

 

最後に、副業兼業を認めていく流れにはあるものと思いますが、一方で、副業は長時間労働につながりやすい等懸念点も指摘されています。本業副業を問わず、他でも働いている職員がいる場合には、もう一方の勤務先の労働時間を意識して、法令順守と健康管理に配慮していくことが必要になります。

 

【感染症情報】新型コロナが3週連続で増加 感染性胃腸炎・インフル・手足口病は2週連続増

国立感染症研究所がまとめた8月28日から9月3日までの1週間(第35週)の5類感染症の患者報告(小児科定点医療機関約3,000カ所、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は定点医療機関約5,000カ所、速報値)によると、新型コロナウイルス感染症の定点医療機関当たりの患者報告数が3週連続で増えた。感染性胃腸炎、インフルエンザ、手足口病は2週連続で増加。咽頭結膜熱(プール熱)も増えた。ヘルパンギーナは減った。

〔新型コロナウイルス感染症〕報告数は前週比7.5%増の20.5人。都道府県別の上位3位は、岩手(35.24人)、宮城(32.54人)、秋田(30.61人)。

  

〔感染性胃腸炎〕報告数は前週比14.3%増の3.19人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、大分(8.19人)、石川(5.62人)、熊本(5.58人)。

  

〔インフルエンザ〕報告数は前週比82.9%増の2.56人。過去10年の同期と比べて最も多い。都道府県別の上位3位は、沖縄(9.41人)、宮崎(4.95人)、三重(4.42人)。

  

〔ヘルパンギーナ〕報告数は前週比1.8%減の1.07人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、山形(6.46人)、岩手(2.65人)、青森(2.53人)。

  

〔手足口病〕報告数は前週比42.6%増の1.34人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、佐賀(5.09人)、宮崎(4.36人)、福岡(4.18人)。

  

〔咽頭結膜熱〕報告数は前週比42.6%増の0.97人。過去10年の同期と比べて最も多い。都道府県別の上位3位は、大阪(3.22人)、福岡(2.68人)、兵庫(2.22人)。  

 

                         出典:Web医事新報

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