医療

医療機関におけるサイバーセキュリティ対策

年度内に取り組むサイバーセキュリティ対策
医療機関等を狙うサイバー攻撃が増加し、手口も多様化・巧妙化しています。オンライン資格確認や電子処方箋の導入も加わり、より高いレベルのセキュリティ対策が求められる中、厚生労働省はガイドライン※1を改訂しました。

チェックリストの作成が必須


ガイドラインの記載事項のうち、何を優先して取り組むべきかは、チェックリスト※2で把握できます。立入検査時にはこのチェックリストの全項目について、日付(確認日と目標日)や回答等が記入されているかの確認が行われますので、対策が必要です。

同チェックリストは、外部のシステム事業者の利用を想定した 2 部構成(医療機関用と事業者用)です。それぞれ 2023 年度用と 2024 年度用があり、進捗の目安にもなります。医療機関用では、2023 年度中に次の事項のすべてについて、対応することを目指します。

2023 年度のチェック項目 医療機関版


 医療情報システム安全管理者の設置
 サーバ、端末 PC、ネットワーク機器の台帳管

 リモートメンテナンス(保守)を利用した機器
の有無の確認
 システム事業者に対し、医療情報セキュリティ
開示書の提出要請
 利用者の職種・担当業務別の情報区分ごとの
アクセス利用権限設定
 不要なアカウントの削除(退職者や使用してい
ないアカウント等)
 アクセスログ管理
 セキュリティパッチ(最新ファームウェアや更
新プログラム)の適用
 接続元制限の実施
 インシデント発生時の連絡体制図の策定
さらに 2024 年度は以下が追加されます。
2024 年度の追加チェック項目 医療機関版
 バックグラウンドで動作する不要なソフトウェ
アやサービスの停止
 インシデント発生時に診療を継続するための
備え(必要な情報の検討、データやシステムの
バックアップ、復旧手順の確認)
 サイバー攻撃を想定した事業継続計画
(BCP)の策定
専門的な知識や経験が必要となる分野です。外部のシステム事業者に相談しながら、早めに対策されることをお勧めします。
※1 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第 6.0 版(令和 5 年 5 月)」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
※2 「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001125392.pdf
および、「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル」https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001105752.pdf

【感染症情報】新型コロナが2週連続で減少 ヘルパンギーナ・RSウイルスは5週連続減

国立感染症研究所がまとめた7日から13日までの1週間(第32週)の5類感染症の患者報告(小児科定点医療機関約3,000カ所、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は定点医療機関約5,000カ所、速報値)によると、ヘルパンギーナとRSウイルス感染症の定点医療機関当たりの患者報告数が5週連続で減少した。新型コロナウイルス感染症、感染性胃腸炎、インフルエンザ、手足口病は2連続で減った。

〔新型コロナウイルス感染症〕報告数は前週比10.4%減の15.16人。都道府県別の上位3位は、佐賀(24.59人)、石川(21.06人)、鳥取(20.76人)。

  

〔感染性胃腸炎〕報告数は前週比20%減の2.48人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、石川(5.79人)、大分(5.14人)、宮崎(3.92人)。

  

〔ヘルパンギーナ〕報告数は前週比40.8%減の1.81人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、山形(10.07人)、岩手(6.32人)、長野(4.68人)。

  

〔RSウイルス感染症〕報告数は前週比34.2%減の1.23人。定点当たりの報告数に変更された2018年以降の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、山形(5.22人)、岩手(6.32人)、長野(4.68人)。

  

〔インフルエンザ〕報告数は前週25.7%減の1.07人。過去10年の同期と比べて最も多い。都道府県別の上位3位は、大分(4.62人)、宮崎(4.16人)、鹿児島(3.78人)。

  

〔手足口病〕報告数は前週比23.8%減の0.93人。過去10年の同期の平均よりも少ない。都道府県別の上位3位は、島根(5.7人)、新潟(4.4人)、山口(2.95人)。

(医療介護CBニュースより)

Q キャリアパス・評価制度を作っても、総務担当が変わったことで、継続性がなくなってしまった。

A、「キャリアパス規定」もしくは「人事評価規定」として、社内規定として文書化したり、また全職員へのキャリアパスの「見える化」にも工夫をしている。

社内規定の一つとして「人事評価規定」を文書化されることをお勧めしています。「評価制度が、いつの間にか運用しなくなってしまった」などということが無いように、キャリアパスや人事評価の運用は、社内監査等の対象として定期的にその運用が適切になされているかどうかチェックされなければなりません。つまり法人のガバナンス機能として、運用を継続していくためにも、それが文書化されルールに従った運用がなされているかが確認されなくてはなりません。下記の文書化の事例(抜粋)をご紹介いたします。

1,規程趣旨

この規程は、法人職員に対するキャリアパスの実施を通じて職員の資質向上を図り、もって人事管理の適正化、組織の活性化、地域貢献に資することを目的とする。

2 キャリアパスの定義

  この規程においてキャリアパスとは、法人が職員に対し職業人として必要な能力と処遇について具体的な内容を職能等級、職位、職層、求められる能力を示すことにより、職員が自らの目標を設定し努力するための道筋を示したものと定義する。

 

3 キャリアパスの意義

  キャリアパスを整備する意義は、法人が人材育成を何よりも重要であると認識し、働く人の成長を願い目標を設定し努力を重ねることができる環境整備の一つとすることにある。運用にあたって、資格等級制度、人事評価制度、研修制度との連動を図ることによりキャリアパスを法人経営の重要なツールとして定着させる。これにより、職員が自らの将来像を描きながら日々の業務に邁進できる環境を実現させる。

4 主管部門・担当部門・監査部門

  キャリアパスを実施するにあたり、以下の通り、主管部門・担当部門・監査部門を定める。

   主管部門 法人本部に「法人本部キャリアパス運営委員会」を組織する。

   担当部門 各事業所に、事業所責任者を中心とした「○○事業所キャリアパス運営委員会」を組織する。

   監査部門 「キャリアパス制度運営監査委員会」を第三者委員会として組織する。委員会は、人事考課制度等に専門知識を有した者、被評価者代表、評価者代表、法人本部代表者などから構成する。・・・・・

 また、キャリアパスの「見える化」ですが、本来の「見える化」とは「問題点の可視化」という意味ですが、ここでは「理解を深めるためのビジュアル表現」という意味で使用しています。つまり、キャリアパスをよりわかりやすく表現することで、求職者に対してアピールできるほか、在職している職員のモチベーションを高める効果もあります。さらに言うと、「退職したくなったが、少し我慢すれば次のステップに進めるので、もう少しだけ辛抱しよう」という、離職防止効果までを期待できます。

 

☞①医療分野キャリアパス

 クリニック人事サポートパック(評価制度、賃金制度の作成) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

②介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

③保育園のキャリアパス

 保育士キャリアアップの仕組みサポートパック | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

 

「モノ」より「経験」にお金をかける  ~経験を買うとかけがえのない人とのつながりが生まれる~

 

最近、ここ10年ぐらいは、生活費以外のほとんどのお金は「経験」に使ったといっていいかもしれません。もちろんお金をかけなくてもできる経験はありますが、お金を掛けなければできない経験もたくさんあります。旅行をしたり、おいしいものを食べたり、音楽を聴いたり、一流の仕事人の話をきいたり、本を読んだり、映画をみたり・・・。

経験は、それ自体が夢中になる「遊び」であるとともに。「成長」のチャンスでもあります。

人やモノや社会を理解したり、自分で稼いだり、人のために何かできたり、幸せを感じたり、

・・・より豊かな人生を送るベースになっているような気がいたします。

 高価なバッグや服を買っても、その価値は下がる一方です。貯金を数百万しても、無職になると、数年でなくなる金額です。

 しかし経験を買うと、失敗を含めてその価値はどんどん生きてきます。経験から得たことは自分自身を作る一部にもなります。様々な経験をすることで、行きたい方向も明確になります。いまでも、人生を豊かにするために「経験」に、出し惜しみをしません。

お金をある程度自由に使えるようになったことの喜びは、好奇心を満たしてくれる「経験」にお金を使える事のような気がします。

 

 また、経験することで得られる大きな価値があります。それは人とのつながりが生まれることです。家族や友人とのかけがえのない経験は、思い出として、繰り返し語ることが出来ます。新しい経験をすることで、新しい出会いがあったり、同じ経験をした人と意気投合したり、そこから人生の師を得られたりするかもしれません。経験を買うことで、人とのつながりや愛情が積み重なり、人間関係を広げ、世界を広げることが出来るのです。

 幸福度がいちばん上がるお金の使い方は、「モノ」より「経験」を買うことでだと私は確信しています。

社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

Q: 先日、職員から1 ヶ月後に退職したいと申し出がありました。その職員には重要な業務を任せていたので、後任への引継ぎを確実に行ってもらう必要がありますが、残りの年次有給休暇(以下、年休)をすべて取得してから退職したいという希望が出ています。年休を取得することによって、後任への引継ぎが終えられない事態となる場合、年休の取得を拒否することはできるでしょうか。

A:
施設には、年休取得時期を変更できる権利がありますが、退職日までまとめて年休を取得し、退職日以降に変更する出勤日がない場合、本人からの年休取得を拒否することはできません。よって、まずは退職日が変更できないか、年休を取得しながら引継ぎに協力してもらえないか、など職員と十分話し合いましょう。また、退職の申し出自体にとてもショックをうけ、さらに追い打ちをかけるように残っている年休をしっかり使ってから辞めたい、という希望に対して法的にはやむを得ないとは理解はしつつも、感情的なわだかまりが残ってしまう辞め方になってしまうこともあります。こうした事態を避けるためにも、重要な業務を分担できる体制を整備する、日頃から年休の取得促進をはかる、などの対策を講じておくことが重要になります。

詳細解説:
1.退職日までの年休取得
日常的に年休を取得しない職員のなかには、年休が数十日も残っているというケースが少なくありません。施設には、事業の正常な運営を妨げる場合、年休取得日を変更できる「時季変更権」がありますが、退職時にまとめて年休を取得するケースでは、変更する出勤日がないため、時季変更権を行使することはできません。

そのため、まずは退職日を変更できないか本人と話し合いを行い、可能であれば、引継ぎをしながら、並行して本人の希望する範囲で年休を取得してもらうようにします。

2.退職時に引継ぎを確実に行ってもらうために
就業規則等へ「1 ヶ月前までに退職の申し出をすること」と規定している施設が多いと思いますが、年休の残日数の多い職員の退職や、1 ヶ月に1 回しか実施しない業務の引継ぎがあると、十分な引継ぎが実施できないことがあります。退職の申し出は、自身の業務内容や年休取得の予定を考慮して、場合によっては1 ヶ月前より前に行うよう、あらかじめ職員に周知しておきましょう。

また、特定の人にしかわからない業務を作らない体制や、業務内容や作業手順がわかるようなマニュアルを整備しておくなど、業務の属人化を回避し、急な引継ぎとなった場合であっても、滞りなく進められるよう、日頃から対策を講じておくことが重要です。

職員の退職時に引継ぎを確実に行ってもらわないと、後任担当者が困ることになり、ひいては利用者様へ悪影響を及ぼすことになりかねません。職員それぞれに事情があるため、やむを得ず急な退職の申し出となる場合もありますが、業務に支障が出ないよう確実に引継ぎを行いながら、本人の希望する年休取得ができるような職場づくりが求められます。

3、年休の「買い上げ」について

最後に年休の「買い上げ」に関してもお伝えしておきます。年休に関する法の趣旨を考えれば、金銭に置き換えることは年休を与えたことにはならず、違法となります。ただ、年休を法の定めのとおり付与した後、職員がこのすべてを取得せずに退職することとなった場合において、在職中の取得を選択しない職員に対し、一定の社内基準に従って金銭の給付をもって年休の取得に替えるという扱いは違法ではありません。しかしながら、法人側がこのような制度を設けていないのに、職員の方から未取得の年休を金銭給付に替えることを請求する権利はありません。年休はそもそも労働者の健康管理と余暇利用に資するために設けられた制度ですから、これを確実に取得させることが法の要請です。安易に金銭給付に替えることとするのは差し控えるべきでしょう。

社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

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Q、人事評価の項目は「一般的」「抽象的」な評価項目が多いため、評価が難しく、どうしても評価者の主観で評価してしまい、職員の納得が得られない。

A,

 評価項目を具体的な「行動表現」にすることで、評価がより客観的になり、また職員の課題を具体的に指導できます。

評価することは非常に難しく、評価者訓練を受けないと評価は出来ないと言われています。しかしそれは、評価項目が抽象的で何を評価すればいいのかわからないという原因が考えられます。

評価を行う難しさには、①人によって評価が変わる ②評価項目が不明確なので評価する人も、される人もわかりにくい、さらに③誤評価の原因(ハロー効果、偏り傾向、寛大化など)評価するということに困難さが付きまとっています。例えば「協調性」という表現で終わってしまう評価項目の場合、何が協調性なのか評価者が判断しなければなりません。抽象的な表現は職員をいろいろな視点から評価できることになり有用ですが、評価の公平性や客観性からみるとかなり深い問題が含まれています。具体的な行動表現にすることで、だれでも同じ理解とすることが大切です。

 

【具体的行動表現の実例】

評価項目:「感謝の気持ちをもってご利用者、職員に接する」

を具体的な評価項目にした場合に、例えば下記のような例となります。

例1:ご利用者や職場の仲間に感謝の気持ちで接することが出来、「○○さんのおかげです」や「ありがとう」が素直に笑顔で言える。

例2:ご家族様や見学、来訪者の目を見て、笑顔でお名前を添えて「ありがとうございます」と伝えている。

例3:他部署等の協力や理解があって自分が仕事ができる事に感謝して、相手の状態を配慮し、「お手伝いしましょうか」「何か私にできる事はないですか」と声掛けしている。

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②介護分野キャリアパス

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③保育園のキャリアパス

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Q 当法人では残業は、所属長による許可制としていますが、課長や主任により対応がまちまちでルールが形骸化しています。運用面でどのように改善していけば良いでしょうか。

A 労働時間管理は「時間外労働の管理」といっても過言ではありません。各部署の所属長が残業の必要性を判断し、適切時間を指示するなど、管理職の役割は重要です。職員、個々に勤務時間内に仕事を終える意識をいかにもたせるかが重要です。

一方、始業時刻=出勤時刻、終業時刻=退勤時刻 という認識で時間管理を行っている事業もいまだ多くあります。このような事業所には、労働時間の定義についてまずは指導教育する必要があります。つまり始業終業時刻と出退勤時刻は違うという認識をまずは持っていただくことです。労働時間に関する意味を理解することで、その時間管理意識を持って業務を遂行していくことは、今後、さらに重要なポイントになります。そのためには、まず指導いただきたいのは、時間外労働の「許可制」です。当然ながら業務は所定時間内に行うのが前提ですが、事情により残業になりそうな場合には、その理由と終業時刻を明記し、許可制とする必要があります。それにより、所定外労働割増をつける時間が明確になりますし、何より大切なことは各職員の時間管理意識を高めることができます。ただし、残業の許可制を規定に定めていても、許可を受けない残業のすべてが無効になるかというとかならずしもそうではありません。通常の業務をこなすうえで,所定時間内終わらないような業務量を要求したならば、残業時間に対して、黙示の承認があったということになり、残業時間に該当するという判断になりますので、適宜の指導が必要になります。

 

ただ、残業を所属長の許可制にしていても、申請された残業内容をよく理解せずに全部承認していたり、逆に、明らかに残業が必要な業務量にも関わらず許可をしなかったりと、所属長により対処の仕方はまちまちになりがちです。本当に必要な残業かどうか、どの程度の時間が必要かなどを判断して、適切な許可を与える必要があります。

 

残業許可制運用のポイント

  • 残業の理由を明確にさせる

 「何のために残業をするのか」「なぜ、その業務が残ってしまったのか」を確認します。例えば、許可申請の残業理由に「介護記録作成の為」とだけ記入させるのではなく、「なぜ

介護記録作成業務が残ってしまったのか」を記入させます。そうすることで、原因を本人と上司が確認しあうことで改善に繋げることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別指導や業務の標準化を進める必要があります。

  • 残業内容の緊急性・必要性を判断する

その業務が「要当日処理」か「翌日処理で可」なのかをメリハリをつけて確認します。

またその業務は、「あなたがやらなければならない業務」なのか「次の交代勤務者で対応できる業務」なのかを確認します。

  • 業務の上限時間(目安)を指示する

「その業務は30分で終えて」と目標時間を指示します。業務内容応じて適切な時間を指示することは必要です。但し、このことは「30分以上の残業は認めない」と上限設定をすることではありません。上限を超えて残業していても、事実上、黙認している状況であれば

それは「黙示の承認」に該当します。

 

  • 職員の健康状態にも配慮する

休憩はきちんととれたか、体調にお問題はないか、などを確認します。こうしたことは、日頃の部下とのコミュニケーションで行っておきたいところです。

 

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休めども 7割の目標遠く 有給休暇の取得率、58%に改善でも 職場改革、世界に遅れ

企業で働く人の有給休暇の取得率が高まっている。2021年は58.3%3年連続で過去最高を更新した。19年の労働基準法改正で企業に対し、従業員の有給取得に関する義務が加わったことが後押しした。ただ義務内容を正確に理解していない企業も多く、21年の有給関係の法令違反件数は前年の2.8倍となった。25年までに有給取得率70%という政府目標を前に、企業が抱える課題は多い。

 高い有給取得率は人材確保につながる(7月、横浜市のSCSKサービスウェア横浜センター)

「このままなら、正社員の今年度末の有給取得率は94.8%になる」。全国に約5500人の従業員を抱え、コールセンターなどを手がけるSCSKサービスウェア(東京・江東)。7月末、同社の幹部社員ら約100人が集まる連絡会で、秋庭洋一郎・労務部長が推定値を報告した。同社は社員の有給取得に力を入れ、毎月の連絡会で細かい数値を共有する。

秋庭部長は「13年度ごろまで取得率は約6割だったが、19年度80%22年度に84.2%と改善した。社長からは100%取得を目指すよう指示されている」と話す。様々な顧客からの問い合わせに応じなければならないコールセンター業務はストレスを伴う。しっかり有給を取れる環境づくりは、社員のつなぎ留めや採用で効果が大きいという。

  労働基準法39条は、企業などの使用者は、6カ月以上勤務した従業員に基本的に10日間の有給休暇を与えなければならないと定める。有給の日数は、勤続年数によって年20日まで増える。正社員だけでなく、パートタイマーにも勤務日数に応じて有給が与えられる。いつ有給を取るかは原則的に労働者の自由だが、「事業の正常な運営を妨げる」場合は、使用者がその時期(時季)を変更できる。

 

 与えられた有給のうち実際に消化した割合を示す有給取得率は2000年から17年間にわたり5割を切っていたが、17年ごろから大幅に改善。21年は16年に比べ8.9ポイント上昇し、6割に迫る水準になった。取得率向上の大きな後押しになったとみられるのが、19年の労基法改正だ。

 企業にも義務

 働き方改革の一環の法改正で、企業は労働者に有給を与えるだけでなく、実際に取得させる義務も負うようになった。10日以上の有給の権利を持つ労働者に対しては、5日分の時期を指定し取得させねばならない。義務違反には、対象の労働者1人につき30万円以下の罰金が定められている。

 当時法改正を担当した厚生労働省幹部は「過労死するほど追い詰められても休まない日本の実態を変えるため、法学者から異論は出たが労使ともこの形の義務化で合意した」と明かす。

 「人的資本経営」を重視する動きも、企業が従業員の有給取得を促すことを後押ししている。

エスビー食品は、5月に策定した263月期までの中期経営計画で「有給取得率80%」を非財務目標のひとつに入れた。有給が子育て支援や社員の自己研さんなど人的資本充実に効果的とみるためだという。濱畠啓子・人事総務室長は「当社のミッションである『グローバル社会に対応した多様化の推進』に沿った目標設定だ」と話す。 同社は独自の取得促進策を進めてきた。19年には5日間の一斉取得で83%に達したこともある。2122年度とも取得率は76%台で、80%は目前にある。

違反2.8倍に

取得率が改善する一方、問題も露呈している。厚労省の就労条件総合調査によれば従業員1000人以上の企業の取得率63.2%に対し、3099人では53.5%にとどまる。企業規模による取得格差は深刻だ。

さらに21年には、全国の労働基準監督署が定期調査で約122千カ所の事業所を調べた結果、有給関係の違反を指摘されたのが約9800カ所と、前年の約2.8倍になった。

 どの業種もまんべんなく違反が増えている。厚労省担当者は有給について、5日間の時期を指定して取得させる義務を果たしていない例が多いようだと話す。

 司法処分に発展する悪質な例も出ている。217月には愛知県あま市の給食会社が、従業員6人に年5日以上の有給を取らせなかったことで書類送検された。今年5月にも複数店舗を展開する茨城県内の飲食店が、時期指定をせず従業員に有給を取らせなかったことで書類送検された。

 米旅行会社のエクスペディアが2323月に16の国と地域の約14000人を対象とした調査で、上司・会社が休暇取得に協力的か聞いたところ、日本から回答した人のうち「はい」と答えたのは58%で、香港の83%や米国の79%、ニュージーランドの76%に劣る。まだ職場風土の改革は進んでいない。国の目標である取得率70%に近づくためにも、労使双方の努力と考え方の変革が必要となる。 

日本経済新聞 朝刊 2023/8/7 

【核心】その仕事、医師じゃなくても

かつて医療界には動かし難い身分格差が存在した。

 

 山本薩夫がメガホンを握った「白い巨塔」(1966年)は、外科教授の総回診に助教授、助手、看護婦長がつき従い、病室では看護婦がかしずく大学病院の日常を映し出す。こんな因習にとらわれている病院は、よもやもうなかろう。看護師のみならず薬剤師や療法士などとのチーム医療なしには、医師の診察・診療は成立しない時代である。

 

 厚生労働省は来春、病院経営者に医師の残業規制を義務づける。勤務医の働き方改革だ。年間の残業時間上限を過労死ラインとされる960時間(月平均80時間)とする。時限つきの例外として、救急医療などの維持に不可欠と病院側が判断して都道府県に届け出たときは年間1860時間まで残業を認める。

 

 

 

 福岡県久留米市で新古賀病院などを経営する社会医療法人天神会の島弘志・総病院長(日本病院会副会長)は、働き方改革に精通した一人だ。

 

 前職の聖マリア病院(久留米市)で院長をしていた2017年、労働基準監督官の立ち入り調査を受けた経験をもつ。サブロク(36)協定に定めた以上の時間外勤務を医師や研修医にさせた、残業代の割り増しが不足している――などの法違反を指摘され、是正勧告された。

 

 これを受けて乗り出した人事・組織制度の大改革で、島氏は各診療科の外来部門の診療日・診療時間を縮小した。聖マリアは一千床規模の地域中核病院だ。その責務として夜間・休日を含めた救命救急センターには、手厚い医師配置が必要だと考えた末の決断だった。未払いだった時間外賃金は遡って払った。

 

 19年の取材時「最初は、はらわたが煮えくり返る思いだった」と島氏は振り返った。過酷な病院勤務は当然というある種の業界常識にお構いなく、不備を指摘されたことへの恨み節にも聞こえた。だが働き方改革という時代の流れにはあらがえない現実に気づくのも早かった。

 

 この7月、新古賀病院に島氏を再訪した。開口一番「勤務医を(時間規制から外し職務や成果をもとに報酬を決める)高度プロフェッショナルにすればよかった。厚労省内で旧厚生(医療政策)と旧労働(雇用政策)がうまく連携できなかったのは残念だ」と前置きしつつ、改革で医師が患者と接する時間が短くなったとしても「ミスを起こさない体制をつくる」と語った。

 

 基本給が低い若手医師は時間外手当を生活給に繰り入れている現実もある。改革で時間外勤務が減るぶんは手当で補い、総人件費を大きく減らないようにした。

 

 島氏が改革成功のカギを握るとみる一つが、ほかの医療職が医師の仕事の一部を代わって担うタスクシフトだ。

 

 

 

 医療現場がおかれた状況は都市圏と過疎地とで異なる。大学病院からの医師派遣に頼ってきたが、改革で派遣が細り、外来部門を中心に廃止・縮小に追い込まれるのを危惧する病院は地方に多い。患者の不利益を抑えるためにもタスクシフトが肝要だろう。

 

 長崎大病院の松本武浩・医療情報部長も看護師や薬剤師の専門性に期待する。離島や半島、中山間地が多い長崎県は医療界と自治体が連携して拠点病院と診療所をつなぐ患者情報システム「あじさいネット」を構築し、地域医療の質向上に努めている。

 

 その運営委員を兼ねる松本氏は「院内で働く薬剤師は処方箋しか確認できない調剤薬局と異なり、カルテ情報を医師と共有できる。この利点を生かして最新の薬の効果効能や副作用の説明など、本来あるべき服薬指導に専門性を発揮できる」と話していた。

 高齢者など慢性患者がいくつもの診療科にかかり、多種多様な薬を同時に出される多剤投与の問題点を医師に説明し、改善を求めるのも薬剤師の使命になる。

 

 主体的に医療を担う点では看護師も同様だ。日本看護協会の井本寛子常任理事は、働き方改革が「専門性を発揮するよい機会になる」とみる。たとえば救急外来で採血や検査をし、その結果を踏まえた重要な患者情報を医師の診察までにそろえておく。

 

 このケースは、医師の事前指示などがあれば採血が医師法20条に定める治療にあたらず、看護師の意志でできる。済生会熊本病院(熊本市)は従前から、三重大病院(津市)は働き方改革をにらみ、こうした取り組みを強めている。全国に浸透させるには、師長らのリーダーシップで個々の看護師に責任と自覚を促すのが課題になろう。

 

 長寿化で疾病構造は変わりつつあり、患者の暮らしを支える医療の必要性が強まっている。一方、デジタル化と医薬品・医療機器の技術革新は医療現場の密度と作業の煩雑さを高めた。タスクシフトにとって働き方改革はきっかけにすぎない。構造変化を見すえ、もっと踏み込むべきだ。

 

 英国にはナース・プラクティショナー(診療看護師)と呼ばれる資格があり、医師の指示がなくとも一定の患者を診察・診療し、処方箋を出せる。患者の満足度は医師に対するのに劣らず高い。日本で処方箋発行は医師独占だ。

 

 タスクシフトの先駆は高齢者施設のヘルパーに、たん吸引を認めた10年ほど前の規制改革だった。当時この実現には相当の時間をかけた。いま医療界にほしいのは、身分格差を取り払い、フラットな医療チームによる診察・診療を日常にするための、根拠に基づくスピード改革である。日本経済新聞 朝刊 2023/8/7

クリニック・医療業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

Q 評価者であるリーダーや管理者が、評価や面談に不安感を感じ、職場での実践ができない。どのように指導したらいいでしょうか

A 評価者研修やフィードバック面談研修を受講し、方法論を学び実践で活用している。

 

人事評価を行うことは、上司にとってかなりの負担で、ましてやその結果を部下に説明するフィードバック面談等は大変重荷、などと言うご意見は、評価者の方々からよく伺います。ただ、それは、「評価」という言葉の印象にとらわれている結果であって、実際には評価の仕方を具体的に理解していないがゆえに誤解されているケースがとても多いのです。

評価者として「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を理解し、それを実践すれば、だれでも評価を行うことができます。そのためには、評価者研修等で評価や面談の「ハウツー」をまず学び、それを実践に活かしながら経験を積んでいただく。これ以外に方法はないように思います。

 

①医療分野キャリアパス

 クリニック人事サポートパック(評価制度、賃金制度の作成) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

②介護分野キャリアパス

 処遇改善加算対応キャリアパス構築コンサルティング | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

③保育園のキャリアパス

 保育士キャリアアップの仕組みサポートパック | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

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