医療

濃厚接触者の自宅待機、介護施設の団体が見直し要請 「体制が維持できない」

新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者となった医療職の取り扱いについて、厚生労働省は18日、自宅待機のルールの緩和を認める通知を発出した。介護職にも同様の措置を講じるよう、全国老人福祉施設協議会など介護施設の団体が要望書を提出している。

全国的な感染の急拡大に伴い、濃厚接触者となって14日間の自宅待機を余儀なくされる医療職・介護職が増えている。人材確保に苦労する現場の関係者からは、国に運用の見直しを求める声が噴出。厚労省は今月13日、新型コロナの感染者の診療にあたる医療職らに限って、例えば以下の要件を満たせば仕事を続けられるとする通知を出した経緯がある。

◯ 新型コロナ対策に従事する医療職であること。

◯ ワクチンを2回接種済みで、2回目の接種から14日間経過していること。

◯ 毎日、業務前に検査で陰性が確認されており無症状であること。

厚労省は今回、こうした取り扱いを新型コロナに対応していない一般の医療職にも広げる通知を発出した。介護職については依然として自宅待機が必要。今後、医療職を踏襲する形でルールが緩和される可能性もある。

全国老施協、全国老人保健施設協会などは18日、田村憲久厚労相へ要望書を提出。「濃厚接触者の自宅待機が増加しており、介護の提供に支障が出ている」と訴え、医療職と同様の取り扱いへ変えるよう注文した。

全国老施協は要望書の提出時に、田村厚労相へ「このままでは人手不足に拍車がかかり、サービス提供体制が維持できなくなる」と説明。「可能な限り早く対応して欲しい」と求めた。(介護ニュースJOINTより)

介護職のワクチン接種、在宅系で進まず 施設系と大きな格差 組合調査

新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、介護職では在宅系サービスの担い手だけ置き去りにされている実態がある − 。改めてそう問題を提起している。

全国の約8万6000人の介護職で組織する労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」が今月10日、介護職のワクチン接種の進捗を探った調査の結果を公表した。

それによると、全ての介護職が2回のワクチン接種を既に済ませている事業所の割合は、施設系で71.0%と高い水準に至っている。一方、施設に併設されている在宅系では37.0%、併設無しの在宅系では12.6%。非常に大きな格差が生じている現状が浮き彫りになっている。

ワクチン未接種の事業所(接種中など除く)の割合は、施設系が5.7%、施設併設の在宅系が16.1%、併設無しの在宅系が30.2%だった。

この調査は先月14日から今月2日にかけて実施されたもの。NCCUの組合員が働く4051事業所にFAXで調査票を送り、1003事業所から有効な回答を得たという。

NCCUは現下の感染状況と今回の調査結果を踏まえ、「今後は在宅のコロナ患者の増加が想定される。在宅系の介護職は、今まで以上に感染リスクの大きな不安を抱えながらサービスを提供しなければいけない」と指摘。在宅系の介護職もワクチンの優先接種の対象として明確に位置付けるべき、と重ねて訴えている。

政府はもともと、介護職の優先接種の対象を施設系のみに限定する方針を掲げていた。その見直しを求める声を各方面から受け、今年3月に運用を弾力化。一定の条件を設けつつ、在宅系を含めるかどうかの判断を自治体の裁量に委ねた経緯がある。(介護ニュースより)

【解説】適切なケアマネジメント手法って何? 厚労省が手引きを公表

今年6月、国の「適切なケアマネジメント手法の手引き」が新たに公表された。厚生労働省は現場のケアマネジャーらに活用を呼びかける通知を出したが、いったいどんな内容になっているのか? 日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長に策定の経緯や抑えるべきポイントなどを聞いた。

−− この手引きが作られることになった背景、問題意識を教えて下さい。

今から5年ほど前に遡ります。政府が2016年にまとめた「ニッポン1億総活躍プラン」に構想が書き込まれました。同じ年の審議会の報告書でも、「介護支援専門員の資質向上を図る観点からは、適切なケアマネジメント手法の策定も重要」と提起されていました。

議論の出発点は、以前から指摘されてきた、個々のケアマネジメントの質にバラつきがみられるのではないか、という課題認識です。求められる知識、スキルの高度化も進むなか、適切なケアプランを作れるよう介護支援専門員を支援していくことが必要、という意見もありました。こうした経緯でできあがったのが今回の手引きではないか、と拝察しております。

  −− ケアプランの画一化を促すものではないということですね?

はい。手引きではその趣旨や目的を、

○ ケアマネの先達たちが培ってきた知見の中で共通化できる知見に着目し、それを体系化したもの

○ どの介護支援専門員が担当しても一定レベル以上のケアマネジメントが提供されるようにすること

などと説明しています。あくまでもノウハウの共有、質の底上げを目指すもので、どんなケースでもこういう画一的な対応で済ませればいい、という標準化では決してありません。ケースごとの個別化が引き続き重要であることは重ねて強調されています。

  −− 手引きのポイントはどんなところですか?

それはやはり、ケアマネジメントで不可欠となる基礎的な知見が改めて分かりやすく整理されているところ、ではないでしょうか。我々介護支援専門員の日常的な業務との親和性は非常に高いと思います。

例えば、高齢者が地域生活を継続する基盤を支える「基本ケア」が土台として示されており、その考え方を再確認できる内容となっていることは重要です。また、それぞれ特有の視点も必要となる「疾患別ケア」の解説も十分に盛り込まれました。この2つを併記し、相互に結びつける構成となっていることが1つのポイントと言えるでしょう。

  −− 基本ケアと疾患別ケアの2階建てになっていると聞きました。

はい。疾患別ケアについては様々なエビデンスが出てきており、優れた調査・研究の報告書なども多く公表されています。逆に言うと高度で幅広く、少し学ぶのが大変な領域と言うこともできるでしょう。介護支援専門員はみんな非常に忙しいですから…。

今回の手引きでは、"最低限ここだけは"という知見が簡潔にまとめられています。まずはこれでポイントを抑え、新たな気付きを日々のケアマネジメントに活かしていく − 。その中で必要性が生じたら、より専門的な知見についても積極的に学習していく − 。そうした使い方もできるところが非常に便利だと思っています。

  −− ケアマネはどのように活用すればいいのでしょうか?

この手引きの目的の1つに、"ケアプラン検討時の視点の抜け漏れを防ぐ"ということもあります。例えば今、業務の効率化や負担軽減に力を入れている事業所は少なくないでしょう。そうした取り組みは重要ですが、どうしても欠かせない仕事まで省いてしまうとやはり問題ですよね。

ケアマネジメントでは最低限どこを抑えておかなければいけないのか − 。それを再確認する手段としても、今回の手引きは優れていると思います。ケアマネジメントの質の更なる向上に役立つことはもちろん、業務の"適切な効率化"を実現するツールとしても活用できるのではないでしょうか。

また、手引きには自己点検や研修、多職種カンファレンスといったシーンごとの活用方法もまとめられていますので、そちらも非常に参考になることと思います。(介護ニュースJOINT)

医療事業所様向け情報(経営)8月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『妊娠した職員に対して求められる雇用主としての配慮』

女性職員から妊娠したと報告を受けました。その際、本人から長時間連続して立ち続ける仕事を減らしてほしいという要望がありました。雇用主として、どこまで配慮をする必要があるのでしょうか?

妊娠中の職員からの要望について、主治医等が職員にどのような指導事項を出しているかを確認した上で、雇用主は主治医等の指導事項を守ることができるようにするための措置を講じることが求められます。具体的な措置の内容については職員と話し合い検討します。

詳細解説

1.雇用主に求められる母性健康管理措置

妊娠や出産は病気ではないため、通常通り勤務することが原則的な考え方となります。ただし、妊娠中の職員が健康診査等により、主治医や助産師(以下、主治医等)から指導を受けた場合には、その指導事項を守るために必要な措置を講じる必要があります。具体的には、以下のような措置があります。
● 妊娠中の通勤緩和
●妊娠中の休憩に関する措置
●妊娠中または出産後の症状等に関する措置(作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)
今回のケースは職員からの要望であるため、まずは主治医等が指導事項を出しているか確認すべきでしょう。

2.妊娠中の職員に対する配慮

主治医等の指導事項を雇用主へ適切に伝えるためのものとして、「母性健康管理指導事項連絡カード」(以下、母健連絡カード)が用意されています。この母健連絡カードは、主治医等が職員へ行った指導事項の内容を雇用主に伝えるものです。職員には状況を把握するためにも、このカードの提出を求めるとよいでしょう。
母健連絡カードでは、「作業の制限」として「長時間の立作業」の項目が設けられており、提出のあった母健連絡カードにこの指導があるときには、どの程度の作業時間が身体的負担となるか、本人と話し合うことになります。例えば、休憩回数を増やすことや、休憩時間を長くするなどの対応が考えられます。具体的な措置が分かりづらい場合は、本人の了承を得て、主治医等と直接連絡をとり、判断を求めることも可能です。
妊娠した職員への配慮をすることにより、周囲の負担が増えることもあるかと思います。妊娠した職員と話し合い、負担となる業務を明確にした上で対応するとともに、周囲の職員にも協力を求めることが必要になります。

医療事業所様向け情報(経営)8月号②

小規模医療機関等の給与データ

6 月号では 10~99 人規模の医療機関等における、看護師の給与データをご紹介しました。ここでは、今年 4 月に厚生労働省から発表された調査結果※から、企業規模 1~4 人の医療機関等(以下、医療,福祉)の給与データをみていきます。

男性の平均は 24.4 万円

上記調査結果から、企業規模 1~4 人の医療,福祉における、男性労働者のきまって支給する現金給与額(2020 年 9 月分)をまとめると、表 1 のとおりです。

年齢計は 24.4 万円となりました。年齢階級別では 40~44 歳が 33.7 万円で最も高く、55~59 歳と 35~39 歳も 30 万円を超えています。30~60 代では 20 万円以上の金額となっています。

女性の平均は 15.7 万円

同じく、女性労働者のきまって支給する現金給与額をまとめると、表 2 のとおりです。

女性の年齢計は 15.7 万円でした。年齢階級別では、20 万円を超える額は見当たらず、25~29 歳の 19.2 万円が最も高い状況です。

調査産業計と比べると

回答事業所全体の結果である調査産業計との比較では、医療,福祉の女性労働者の場合、年齢計はもちろん、多くの年齢階級で調査産業計の金額を上回りました。一方男性は、年齢計が 1.4 万円程度低くなったのをはじめ、調査産業計より低い年齢階級が女性より目立っています。
医療,福祉では、女性労働者の方が全体の結果よりも高い水準にあるようです。

 

※厚生労働省「小規模事業所勤労統計調査」
2020 年 10 月に、常用労働者を 5 人未満雇用する事業所約 2 万件を対象に行われた調査(有効回答率は 45.6%)です。きまって支給する現金給与額は、労働契約、就業規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法に基づき、毎月きまって現金で支給される給与額(超過勤務手当を含む)をいい、所得税、各種社会保険料等を差し引く以前の金額です。詳細は次の URL のページから確認いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/169-1.html

医療事業所様向け情報(経営)8月号①

デジタル改革法成立で医療への影響は?

デジタル改革関連法が成立し、5 月 19 日に公布されました。9 月 1 日には、今後の司令塔となるデジタル庁が発足する予定です。今回は、医療分野におけるデジタル化戦略について、目下推進中の政策の進捗と方向性に注目します。

マイナンバー活用を軸に推進

デジタル庁の目標の一つが、マイナンバーカードの普及を促進し、給付の迅速化や行政手続きのオンライン化を実現することです。
医療分野では、既にオンライン資格確認等システムの取組みの中で、マイナンバーカードと健康保険証の紐づけの試みが始まっています。このシステムは当初の今年 3 月下旬スタート予定を延期し、「遅くとも 10 月」の本格運用開始に計画が修正されています。
同システムは、医療分野のデジタル化推進の要。今後のスケジュールは次のとおりです。

2021 年 10 月~
マイナポータルで、特定健診情報と薬剤情報の閲覧開始
2021 年 11 月~
マイナポータルで、医療費通知情報の閲覧開始
2021 年分の確定申告
マイナポータルでの医療費控除の手続きで、医療費通知情報の自動入力が可能に

国家資格の手続きにも

今回成立した法案の一つ「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」には、マイナンバー活用による国家資格の事務手続きの効率化が含まれています。
これは、届出手続き等の簡略化や申告漏れ防止、資格の証明、就職情報の提供等にマイナンバー制度を役立てるものです。申請時に必要となる免許証や住民票・戸籍等、書類提出の省略等の簡素化が予定されています。社会保障関連の国家資格では、次の 31 資格が対象です。

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、歯科衛生士、歯科技工士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、救急救命士、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、管理栄養士、栄養士、保育士、介護支援専門員、社会保険労務士

こちらは4年以内の施行が予定されています。

参考:厚生労働省「オンライン資格確認等システムに関する運用等に係る検討結果について(令和 3 年 4 月版)」https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000726675.pdf

 

介事連・斉藤氏「次の介護報酬改定、過去最大規模の引き下げもあり得る」

今年4月の介護報酬の引き上げはあくまで一時的なもの。2024年度の次期改定は、2015年度のマイナス2.27%と同等かそれ以上の引き下げもあり得る」。

そう警鐘を鳴らすのは全国介護事業者連盟の斉藤正行理事長だ。7月28日に開催されたオンラインセミナーで、「事業者はパラダイムシフトを起こさなければいけない」と強調。今年度から本格稼働に至った新たなデータベース「LIFE」の積極活用などを重ねて呼びかけた。

斉藤氏は悲観的な見通しの根拠の1つに、コロナ禍で国の財政が一段と悪化したことをあげた。ワクチン接種などで事態が収束へ向かうタイミングで、政府は強烈な給付費の抑制策を断行すると予測。3年後には極めてシビアな報酬改定が待っていると分析した。

そのうえで、「2024年度以降の報酬改定では間違いなく、利用者のADLや口腔機能、栄養状態などの改善を図るLIFE関連のアウトカム評価が多く作られていく。こうした加算を取らないと経営は厳しくなる」と指摘。「LIFEをうまく活かすには半年から1年ほどの準備期間が必要。今のうちから考えていかないと対応できなくなる」と促した。

あわせて、「従来の体制のままで『LIFEに取り組め』と職員に言っても無理。生産性の向上、現場の負担軽減に努め、LIFEに取り組める時間を作ってあげないといけない」と説明。続けて以下のように語った。

「厚労省は今回の改定で、科学的介護、自立支援・重度化防止などに取り組む事業所が生き残れる環境を用意した。逆に取り組まない事業所は淘汰されていってもやむなし、という方向へ舵を切ったというメッセージを暗に示したのではないかと思う」(介護ニュースJOINT)

医療事業所様向け情報(労務)8月号④

精神障害にかかる労災の支給決定件数 過去最高の608件

長時間労働や仕事のストレスによって過重な負荷がかかり、従業員が脳・心臓疾患や精神障害を発症するケースが増加しています。先日、これらの労災請求状況に関する令和2 年度の集計結果が厚生労働省より発表されました。以下では集計結果の内容についてとり上げましょう。

1. 脳・心臓疾患の労災補償状況

脳・心臓疾患の労災請求件数は784 件となり、前年の936 件から152 件減少しました。支給決定件数についても194 件と、前年の216件から22 件減少しています。支給決定件数について業種別にみていくと、「運輸業、郵便業」が全体の3 割近くを占め、「卸売業、小売業」、「建設業」と続いています。

2. 精神障害の労災補償状況

 精神障害の労災補償状況は下図のとおりです。

令和2 年度の請求件数は2,051 件となり、前年の2,060 件から9 件減少しました。一方、支給決定件数については608 件となり、前年の509 件から99 件増加し、過去最高となりました。また認定率については31.9%であり、申請の3 件に1 件の割合で労災として認定されています。このうち、支給決定件数を具体的な出来事別に分類すると、上位項目は次のとおりです。
①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(99 件)
②悲惨な事故や災害の体験、目撃をした(83 件)
③同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(71 件)
④仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった(58 件)
⑤特別な出来事(54 件)
「①上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」については、2020 年5 月29 日に心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、新規に追加されたものです。

3. パワーハラスメント防止措置の義務化

 職場におけるハラスメントの問題は、年々深刻化しており、それが今回のように精神障害の原因にもなり得ます。そのため、企業においてはハラスメント防止に向けた積極的な取組みが求められます。
 パワーハラスメント防止措置は、大企業では2020 年6 月1日より義務付けられていますが、中小企業でも2022 年4 月1日より義務付けられます(それまでは努力義務)。 

 

企業としては、長時間労働対策を徹底するとともに、業務の内容において過剰な負荷がかかっていないかを確認し、さらにはパワーハラスメント防止に向けて、研修を行ったり相談窓口を周知したりするなどの取組みを進めていく必要があります。

医療事業所様向け情報(労務)8月号③

国家公務員の定年延長の動き

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

 

総務部長                                                                                                                             今後、国家公務員の定年が65 歳に引上げられると耳にしました。当社でも技能の伝承や人材の確保といった観点から定年延長について検討が必要ではないかと思っています。
今回の法改正の内容について教えてもらえませんか?
社労士                                                                                                                                      主な点としては3 点あります。まず1点目が定年の段階的引上げです。このように、定年が2023 年度から2 年おきに1歳ずつ引上げられて、2031年度に65 歳とされます。

総務部長                                                                                                                                             なるほど。2031年度以降は定年が65 歳となるということですね。
社労士                                                                                                                                                      2 点目が役職定年制の導入で、組織活力を維持するため、管理監督職(指定職および俸給の特別調整額適用官職等)の職員は、60 歳(事務次官等は62 歳)の誕生日から同日以後の最初の4 月1日までの間に、管理監督職以外の官職に異動となります。これは、民間企業においてすでに取り入れられている、いわゆる役職定年制のことですね。
総務部長                                                                                                                                                 定年を延長すると、役職が空かずに次世代を担う人材が管理監督職の経験を積めないという課題が想定されますので、その一つの対応策ということなのでしょう。
社労士                                                                                                                                               そして、3 点目が60 歳に達した公務員の給与であり、人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、公務員の俸給月額は公務員が60 歳に達した日後の最初の4 月1日以後、その公務員に適用される俸給表の職務の級および号俸に応じた額に7 割を乗じて得た額とするとしています。
今回の話は国家公務員ですので、民間企業において直接的な影響はありませんが、今後、定年を延長する場合の給与の設定におけるひとつの参考数値としてとらえることができると思います。
総務部長                                                                                                                                              たしかに以前、定年を引上げる話題になったときに、給与や賞与、退職金はどうするのかという結論が出ずに立ち消えになりました。
社労士                                                                                                                                                  今回の動きは民間企業に先行する動きであり、今後、定年の引上げなどを検討する際の参考になるでしょう。自社の高年齢者の活用をどのようにしていくのか、検討の際に不明点等がございましたら、お声掛けください。

 

ONE POINT

①国家公務員法の改正案が成立し、定年の段階的引上げ、役職定年制の導入、60歳に達した公務員の給与について内容が決定した。
今回の動きは、民間企業に先行するものであり、今後、定年の引上げなどを検討する際の参考になる。

医療事業所様向け情報(労務)8月号②

傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除に関する法改正

2021年の通常国会では、育児・介護休業法の改正のほかに、健康保険法や厚生年金保険法の改正案が成立しました。対象となる従業員への影響が大きな内容を含みますので、以下で改正点を確認しておきます。(各項目の括弧内の日付は施行日)

1. 傷病手当金(2022 年1月)

健康保険の傷病手当金は、支給が開始された日から起算して、最長1年6 ヶ月まで支給されます。この1 年6 ヶ月の間に、⼀時的に就労した期間(傷病手当金が不支給となる期間)がある場合には、その就労した期間も含めることになっています。
 近年はがん治療など、長期間にわたって療養のため休みながら働くケースが増えて来ています。こうした状況に対応し、治療と仕事の両立の実現するため、就労した期間は含めず、傷病手当金が支給された期間を通算して最長、1年6ヶ月間、支給されることとなります。

2. 育休中の社会保険料免除(2022 年10 月)

育児休業(以下、「育休」という)中は、申し出により社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)が免除されます。この免除となる基準が見直され、以下の通りとなります。
①育休を取得する月にかかる社会保険料
 月末時点で育休を取得しているときは、その月の社会保険料が免除される。これに加え、育休の開始日の属する月は、月末時点で育休を取得していないときでも、その月中に 2 週間以上育休を取得していれば社会保険料が免除される。
②賞与にかかる社会保険料
 月末時点で育休を取得しているときは、育休の取得日数に関わらず、その月に支給される賞与にかかる社会保険料が免除されていたものが、今後は育休を取得する期間が1ヶ月を超える場合に限り、免除される。

3. 任意継続被保険者制度(2022 年1月)

従業員は、退職した後でも⼀定の要件を満たせば、任意継続被保険者として退職前に加入していた健康保険の被保険者となることができます。
 任意継続被保険者が負担する健康保険料は、会社が負担していたものを含めてその金額を負担します。この保険料の算出根拠について、「従前の標準報酬月額または全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」となっていたものが、健康保険組合は規約で、従前の標準報酬月額とすることができるようになります。
 また、任意継続被保険者の資格の喪失について、任意継続被保険者からの申請によりできることとなります。

 

育休中の社会保険料免除は、これまで以上に期間の管理が重要になります。また改正点について、従業員からの問い合わせも想定されます。詳細な情報を今後確認していきましょう。

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