医療
介護現場へ専門家を派遣して実地研修を行ってもらう
取り組みについて、厚生労働省は5月31日、
参加する施設・事業所の2次募集を開始しました。
希望日は7月1日から12月24日までの間で選択可能、
受け付け上限は200事業所ほどだとのこと。
関心をお持ちの皆様は、下記をご確認下さい。
↓
https://www.mhlw.go.jp/content/000786022.pdf
骨太方針2021(仮称)を睨み、財政制度分科会(財務省)が建議を公表
今後の社会保障改革を睨み、“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に向けた改革論点の叩きをあらためて示したのが2021年4月15日(財政制度分科会にて)。その後、議論が更に精緻化される中、国の航海羅針盤とも表現できる“骨太方針2021(仮称)”への反映を念頭・目標に、財務省から正式な建議(正式名称:財政健全化に向けた建議)が5月21日に公表されました。今月のニュースレターでは、同省が作成した建議資料の中で特に介護事業者に関連するであろう9個の論点について確認してまいります。
「財政健全化に向けた建議」示された論点とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本資料で示された資料を一気に紹介する形で進めてまいります。尚、重要と思われる部分には下線を引いておりますので、併せて是非、ご確認いただければ幸いです。
ア)利用者負担の見直し
介護保険制度の持続可能性を確保するため、利用者負担の更なる見直しといった介護保険給付範囲の見直しに取り組む必要がある。
利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今般の後期高齢者医療における患者負担割合の見直しを踏まえ、令和6年度(2024年度)に開始する第9期介護保険事業計画期間からの実施に向けて、サービスの利用者負担を原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ることを検討していく必要がある。
イ)介護人材確保の取組と ICT 化等による生産性向上
今後、高齢化による介護需要の増加により、生産年齢人口が減少する中で、介護人材は増加が求められる。こうした中で、新型コロナの影響による離職者の介護分野への職業転換施策を一層強化し介護人材確保のための取組を進めるとともに、サービスの質を確保しつつ、より少ない労働力でサービスが提供できるよう、配置基準の緩和等も行いながら、業務の ICT 化等による業務効率化を進めていく必要がある。
また、介護サービスの経営主体は小規模な法人が多いことを踏まえ、令和4年(2022年)6月までに施行される社会福祉連携推進法人制度の積極的な活用を促すなど、経営主体の統合・再編等による介護事業所・施設の運営効率化を促す施策もあわせて講じていく必要がある。
こうした取組は、介護職員の働きやすい職場を実現するとともに、介護職員の処遇改善の余地をもたらす。今後、我が国において就業者数の大幅な減少が見込まれる中、介護サービスを安定的に提供していくために必要不可欠な取組である。
ウ)ケアマネジメントの在り方の見直し
居宅介護支援(ケアマネジメント)については、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担をとらない例外的取扱いがなされてきた。
しかしながら、介護保険制度創設から約20年が経ち、サービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然である。
そもそも、制度創設時、ケアプラン作成は「高齢者の自立を支援し、適切なサービスを確保するため、…そのニーズを適切に把握したうえで、ケアプランを作成し、実際のサービス利用につなぐもの」とされていたが、その趣旨にそぐわない実情も見られる。具体的には、ケアマネ(居宅介護支援)事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、「法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性の問題が存在することが窺うかがえる。さらに、ケアマネジャーは、インフォーマルサービスだけでなく、介護保険サービスをケアプランに入れなければ報酬を受け取れないため、「介護報酬算定のため、必要のない福祉用具貸与等によりプランを作成した」ケアマネジャーが一定数いることが確認されている。
利用者が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとすることは、ケアマネジャーのサービスのチェックと質の向上にも資することから、令和6年度(2024年度)に開始する第9期介護保険事業計画期間から、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきである。また、福祉用具の貸与のみを行うケースについては報酬の引下げを行うなどサービスの内容に応じた報酬体系とすることも、あわせて令和6年度(2024年度)報酬改定において実現すべきである。
エ)多床室の室料負担の見直し
制度創設時から、「施設介護については、在宅介護とのバランスや高齢者の自立が図られてきている状況から見て、食費等日常生活費は、利用者本人の負担とすることが考えられる」とされていた。
このため、平成 17 年度(2005 年度)に、食費と個室の居住費(室料及び光熱水費)を介護保険給付の対象外とする見直しを実施(多床室は食費と光熱水費のみ給付対象外)し、平成 27 年度(2015 年度)に、特養老人ホームの多床室の室料負担を基本サービス費から除く見直しを行った。しかしながら、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。
居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料及び光熱水費)を求めていく観点から、令和6年度(2024年度)に開始する第9期介護保険事業計画期間から、給付対象となっている室料相当額について基本サービス費等から除外する見直しを行うべきである。
オ)地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の在り方の見直し
地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、保険者である各市町村が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、その枠内で交付金を措置する仕組みとしているが、厚生労働省が定めるガイドライン上、「一定の特殊事情」がある場合には、個別の判断により事業費が上限を超えても交付金の措置を認めることとされている。
「一定の特殊事情」の判断要件は、「費用の伸びが一時的に高くなるが、住民主体の取組等が確実に促進され費用の伸びが低減していく見込みである場合」とされているが、相当数の保険者が3年連続で上限を超過している。また、「介護予防に効果的なプログラムを新たに導入する場合」をはじめ、当該要件を充足する場合として例示されているケースも、エビデンスに基づくものとは言い難い。さらに、判断要件が例示にとどまり、例示以外の理由での申請も認めていることから、単なる事業量や利用者数の増加等を理由とした申請が相当数行われ、「一定の特殊事情」とは認めがたい申請も含めてすべての上限超過が認められている。
上限が機能せず、形骸化しており、重要な制度改革の根幹がこのような運用となっていることは看過できない問題であり、速やかに上限超過を厳しく抑制すべきである。
カ)区分支給限度額の在り方の見直し
介護サービスは生活に密接に関連し利用に歯止めが利きにくいこと等から、制度創設時に、「高齢者は介護の必要度に応じて設定された介護給付額の範囲内で、自らの判断と選択により実際に利用したサービスについて保険給付を受けることができることとすることが適当である」とされ、要介護度ごとに区分支給限度額が設定された。
しかしながら、制度創設以降、様々な政策上の配慮を理由に、区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加している。
制度創設時に企図したように、設定された限度額の範囲内で給付を受けることを徹底すべきであり、令和6年度(2024年度)に開始する第9期介護保険事業計画期間に向けて、特に生活と密接に関連している度合が高いと考えられる、居宅における生活の継続の支援を目的とした加算をはじめ、加算の区分支給限度額の例外措置を見直すべきである。
キ)居宅サービスについての保険者等の関与の在り方
居宅サービスについては、制度創設以来、事業所数が大きく増加している。また、居宅サービスが充実する中で、訪問介護や通所介護の1人当たり給付費が、全国平均と比べて極めて高い水準となっている地域もある。
こうした中、市町村が地域のサービス供給量をコントロールするための方策として、都道府県が指定権者である居宅サービスのうち、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護について、市町村が、都道府県に事前協議を申し入れ、その協議結果に基づき、都道府県が指定拒否等を行う枠組み(いわゆる「市町村協議制」)がある。しかしながら、あくまで定期巡回サービス等を普及させる観点から、事前協議を申し入れ、競合する訪問介護等の一部サービスを指定拒否できることとされる扱いに留まっている。同様に、市町村が指定権者である地域密着型通所介護についても、あくまで定期巡回サービス等を普及させる観点から指定拒否ができることとされている。
一方で、定期巡回サービス等は創設から約10年以上経過し、サービスの普及が進んでいる。こうした点も踏まえ、全サービスの居宅サービス事業者及び地域密着型通所介護の指定に取り組む必要がある。定期巡回サービス等の普及の観点にかかわらず、サービス見込み量を超えた場合に、市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否ができるようにし、保険者である市町村が実際のニーズに合わせて端的に地域のサービス供給量をコントロールできるようにすべきである。また、都道府県及び市町村がより積極的に制度を活用できるよう、国はガイドラインや取組例の発出等の支援を速やかに行うべきである。
ク)軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化
近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった医療系の居宅系サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加している。
居宅療養管理指導等のサービスは、原則、「通院が困難な利用者」に対して給付することとされているが、軽度者(要支援1・2、要介護1・2)の費用の伸びが顕著な状況であり、実態として「通院が困難な利用者」以外にもサービスが提供されていないか、速やかに把握を行う必要がある。
例えば、居宅療養管理指導については、薬局の薬剤師による軽度者へのサービス費用が大きく増加している。「必要以上に居宅療養管理指導を利用するプランを作成した」ケアマネジャーが一定数いることが確認されており、「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、居宅療養管理指導費は算定できない」と算定要件が明確化されたことも踏まえ、算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようにすべきである。
ケ)介護サービス事業者の経営状況の把握
介護及び障害福祉サービス等事業者は、法令上、サービス提供内容等の運営情報について都道府県に報告を行い、都道府県は、厚生労働省が設置する「介護サービス情報公表システム」及び「障害福祉サービス等情報検索」で報告を受けた内容を公表することとされている。このうち、障害福祉サービス等については、すべての法人について、「事業所等の財務状況」の都道府県への報告及び「障害福祉サービス等情報検索」における公表が法令上義務化されている一方で、介護サービスについては、法令上何ら規定がなく、公表が義務化されていない。
このため、介護サービスについても法令改正を行い、損益計算書をはじめとする事業報告書等の報告・公表を義務化し、介護サービス事業者の経営状況の「見える化」を速やかに推進すべきである。
また、障害福祉サービス等については、法令上、報告・公表が義務化されているにもかかわらず、「障害福祉サービス等情報検索」での財務状況の公表が低調であるため、法令に従い、財務状況を公表するように徹底すべきである。
国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、「財政健全化に向けた建議」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の視点に基づいた建議である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら↓
↓
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20210521/01.pdf
医療機関でみられる人事労務Q&A
『職員数51 人以上の事業所まで対象となるパート職員の社会保険適用拡大』
Q:
当院では、多くのパート職員が在籍しています。今後、パート職員の社会保険の加入基準が段階的に拡がると聞きましたが、その内容と留意点を教えてください。
A:
2022 年10 月から職員数101 人以上、2024 年10 月には職員数51 人以上の事業所において、週の所定労働時間が20 時間以上等の加入基準を満たしたパート職員(パートタイマー・アルバイト等)について、社会保険に加入することになります。早めに加入となる対象者を把握し、扶養の範囲で勤務を希望する職員に対しては労働時間等の調整が必要か確認しましょう。
詳細解説:
1.社会保険の加入基準
現状のパート職員の社会保険の加入基準(健康保険・厚生年金保険)は以下のとおりです。

2.適用拡大のスケジュール
社会保険の適用拡大により、2022 年 10 月より職員数 101 人以上、2024 年 10 月より 51 人以上の事業所について、職員数が上記 501 人以上の事業所の加入基準が適用されることになります。また、2022 年 10 月には、②の c の基準である「1 年以上の雇用が見込まれること」が、「2 ヶ月超の雇用が見込まれること」に変わります。
3.適用拡大となる職員数の判断
社会保険の適用拡大の対象となる職員数は、厚生年金保険の被保険者数(正職員数と、週の所定労働時間および1 ヶ月の所定労働日数が正職員の4 分の3 以上であるパート職員数の合計)で判断します。
例えば、厚生年金保険に加入している正職員が75 人、パート職員が40 人(うち、厚生年金保険に加入している人が10 人)の場合、全体の職員数は115 人ですが、厚生年金保険の被保険者数は85 人となり、2024 年10 月より適用拡大の対象となります。
配偶者の社会保険の被扶養者(国民年金第3号被保険者)となるために、年収130 万円未満の範囲で働くパート職員も多くいますが、年収130 万円未満であっても、前述の加入基準を満たした場合には、パート職員自身で社会保険に加入し、被扶養者からは除外されることになります。
社会保険の被扶養者での勤務を望むパート職員がいるときは、労働時間や賃金等について、今のうちから話し合っておきましょう。
(次回に続く)
医療機関等における各種手当の支給状況
医療機関等で支給される手当には、どのようなものが多いのでしょうか。ここでは、2021 年1 月に発表された調査結果※から、医療機関等(以下、医療,福祉)における各種手当の支給状況などをみていきます。
勤務・通勤手当は90%程度で制度有
上記調査結果から、医療,福祉の各種手当の支給状況などをまとめると、下表のとおりです。

医療,福祉で制度有の割合が最も高いのは、勤務手当で90.3%です。次いで通勤手当などが89.4%となっています。勤務手当の中では、役付手当などが87.5%と高い状況です。
調査産業計との比較では、特殊勤務手当などが、20 ポイント以上高くなっているのが目立ちます。
支給割合は役付・通勤手当が90%超
制度有の医療,福祉における手当の支給割合では、通勤手当などと役付手当などが90%を超えました。技能手当、技術(資格)手当なども70%を超えています。
調査産業計との比較では、特殊勤務手当などが20 ポイント以上高くなりました。
1 人平均支給額は業績手当が最も高い
支給した労働者1 人平均支給額をみると、業績手当などが最も高くなりました。支給割合の高い手当では、役付手当などが4 万円を超えています。通勤手当は8,700 円で1 万円に満たない額となりました。
貴院で支給している手当の状況と、比べてみてはいかがでしょうか。
※厚生労働省「令和2 年就労条件総合調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業を対象に、常用労働者30 人以上を雇用する民営企業(医療法人等の会社組織以外の法人を含む)から抽出した企業に対する調査です。数値は2019 年11 月分の賃金における手当の状況です。詳細は次のURL のページから確認いただけます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450099&tstat=000001014004&cycle=0&tclass1=000001147730&tclass2=000001149266&tclass3val=0
(次号に続く)
コロナ離職者のトライアル雇用に助成金
コロナ離職者に対するさまざまな救済策が講じられています。中でも令和2 年度第3 次補正予算により「トライアル雇用助成金」に新設された2 つのコースは、医療機関でも活用の幅が広がる内容です。概要をご紹介します。
未経験者の採用をサポートする助成金
次のコースが創設されました。
⚫ 新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
⚫ 新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース
いずれも、離職者の要件※を満たす離職者を、無期雇用契約へ移行することを前提に、一定期間試行雇用(トライアル雇用)した場合が対象です。
※離職者の要件
- 新型コロナウイルスの影響により離職を余儀なくされた労働者で、
- 離職 (シフト制労働者等のシフトが減少した場合等も含む) 期間が3ヶ月を超え、
- かつ、就労経験のない職業に就くことを希望する求職者
求職者が希望する無期雇用の週の所定労働時間が30 時間以上なら「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」、20 時間以上30時間未満なら「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」となります。
支給額
雇入れの日から1 ヶ月単位(最長3 ヶ月間)を対象に、支給対象者1 人につき、次の金額が支給されます。

事前にトライアル雇用求人をハローワーク、地方運輸局、職業紹介事業者に提出し、これらの紹介により、対象者を原則3 ヶ月の有期雇用で雇い入れ、一定の要件を満たした場合に、助成金を受けることができます。その他にもさまざまな注意点があり、今後の感染拡大の影響で変更が生じることも考えられますので、ご活用の際は、最新情報をご確認ください。
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_16286.html
(次号に続く)
新型コロナによる休業時の労働者支援の動き
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)については、様々な支援策が設けられているものの、企業が助成金の活用を行わないことにより、本来、労働者が享受できる支援が行き渡らない状況も発生しています。そこで、給付金等を企業を経由せず、直接労働者に給付する仕組みの構築が進んでいます。以下では、大企業のシフト労働者等に対する休業の支援と、小学校等が臨時休業になった際の支援について確認します。
1.大企業にも拡大される休業支援金・給付金
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」という)は、当初、新型コロナの影響により事業主が労働者を休業させたものの、休業手当が支払われない中小企業の労働者を対象に、労働者の直接申請により給付が行われるものでした。
この対象が大企業で雇用されるシフト労働者等にも拡大されており、労働契約上、労働日が明確でない人としてシフト制、日々雇用、登録型派遣の人についても支給されることになりました。
2.直接申請による小学校休業等対応助成金
小学校休業等対応助成金は、小学校等の臨時休業等に伴い、子どもの世話を行うため仕事を休まざるを得ない保護者に対して有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主が、休暇中に支払った賃金相当額を受給できる制度です。今回、この基本的な考え方は崩さずに、2020年2月27日から3月31日までの休みについては小学校休業等対応助成金を労働者が直接申請し、2020年4月1日から2021年3月31日までの休みについては、休業支援金の仕組みにより労働者が直接申請することにより給付する運用が開始されました。
支給対象は、以下を満たす必要があります。
- 助成金について労働局に労働者から相談があり、労働局から事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかった。
- 小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、通常通りの賃金等が支払われていない部分がある。
- 小学校休業等対応助成金(個人申請分)および休業支援金の申請にあたって、事業主記載欄の記載や証明書類の提供について、事業主の協力が得られる。
- 2020年4月1日から2021年3月31日までの期間の休業支援金の申請にあたり、その労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意する。
都道府県労働局に「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」が設けられ、労働者からの相談内容に応じて、企業への特別休暇制度導入・助成金の活用の働きかけ等を行うことになっています。労働者が相談した場合には、労働局から問い合わせが入るため、制度の概要を押さえておきましょう。
(次号に続く)
5月7日に発出された、厚労省からの通知概要です。
高齢者施設における過去の誤対応も示されている本通知、
関心をお持ちの皆様は、下記をご確認下さい。
https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/koureisyashisetu_ryuijiko.pdf
出向者の社会保険の取扱い
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
今後、当社の従業員の能力開発を進めるために、取引先の企業に在籍出向をさせたいと考えています。詳細はこれから検討することになりますが、社会保険の取扱いについて教えてください。
社労士:
わかりました。まず雇用保険については、出向者は出向元企業と出向先企業の双方と雇用関係がありますが、両方で適用されるわけではありません。生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている企業の方で適用します。
総務部長:
いまのところ、本人には当社から賃金を支給し、出向先企業から当社へ賃金の負担金を支払ってもらう予定です。この場合には、雇用保険は当社のまま加入し続けることになりますね。
社労士:
そうですね。次に労災保険ですが、実際に出向者が労務提供を行う先で適用となるため、出向先企業で適用します。出向先で被保険者となる手続きは不要ですが、労災保険料は出向先の被保険者として算入することになるため、出向元で出向者の賃金を支払っている場合には、出向先企業に支払った賃金額を連絡し、出向先で出向者の賃金を含めて労災保険料を算出します。
総務部長:
労災事故は実際に働いている現場で起きるため、労務提供を行う出向先で加入するのですね。
社労士:
その通りです。最後に、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業と出向先企業のうち、使用関係があり報酬を支払う企業(一方または双方)で適用を受けます。今回は、自社で賃金を支払う予定ですので、現行のままの適用になります。なお、出向元企業と出向先企業の両者で適用となる場合には、二以上事業所勤務届を提出することになりますので、ご注意ください。
総務部長:
ややこしい手続きになるのですね。
社労士:
賃金の支払い方等で取扱いが異なってくるため、出向規程で社会保険の取扱いを定め、具体的な出向の内容を出向先企業との出向契約書など書面で取り交わすべきでしょう。
総務部長:
なるほど。以前に、出向規程を作成していたと思いますので、中身を確認してみます。また不明点が出てきたら、相談します。
【ワンポイントアドバイス】
- 雇用保険、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業・出向先企業の賃金の支払い状況によって適用が異なる。労災保険については、賃金の支払い状況に関わらず、出向者が労務提供を行う企業で適用となる。
- 出向における社会保険の取扱いを出向規程に定め、実際に出向を行う場合には、出向元企業と出向先企業との出向契約書の中で社会保険の取扱いを明確にする。
(次号に続く)
次世代法の一般事業主行動計画策定と指針改正
次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにすることを目的として次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」という)が制定され、2005年4月1日に施行されました。当初は10年間の時限立法でしたが、法改正により2025年3月31日まで10年間延長されています。さらに、2021年2月には次世代法に基づく行動計画策定指針(以下、「指針」という)が改正され、2021年4月1日に適用となることから、ここでは次世代法の内容と改正された指針について確認します。
1.行動計画の策定
次世代法では、常時雇用労働者数101人以上の企業に対し一般事業主行動計画(以下、「行動計画」という)を策定し、一般への公表および従業員への周知を求めており、さらに行動計画を策定した旨を、都道府県労働局に届け出ることを義務としています(100人以下の企業は努力義務)。
行動計画の内容は各企業で検討し、決定することになりますが、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むにあたって、「計画期間」、「目標」、「目標を達成するための対策の内容と実施時期」を盛り込むことになっています。
2.行動計画策定指針の改正
行動計画の策定においては、指針の「一般事業主行動計画の内容に関する事項」に掲載されている項目を参考にするとよいでしょう。
今回の改正により、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」として、以下の内容が盛り込まれました。
- 不妊治療のために利用することができる休暇制度(多目的休暇を含む)、半日単位・時間単位の年次有給休暇制度、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク等の導入や、その他の措置を講ずる。
- 1.の場合、以下の取組みを併せて行うことが望ましい。
・両立の推進に関する取組体制の整備
・従業員に対するニーズ調査と、その結果を踏まえた措置を講ずること
・企業の方針や休暇制度等の具体的措置について従業員への周知、社内の理解促進、相談対応の実施 - 休暇制度等の運用にあたって、不妊治療に係る個人情報の取扱いに十分留意することが必要。
厚生労働省では、働きながら不妊治療を受けられるように、不妊治療と仕事の両立を支援しています。不妊治療をしている多くの従業員が会社にその旨を伝えられていない現状もあるようです。まずはニーズの調査といった取組みから始めてもよいかもしれません。
(次号に続く)
今国会で審議が進められる男性育休取得促進等
厚生労働省が行った令和元年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業(以下、「育休」という)の取得者の割合は7.48%となり、平成30年度の6.16%と比較すると上昇はしているものの、その上昇幅はわずかに留まりました。少子高齢化を止めるためにも男性の育休取得促進は最重要の政策となっており、今国会では以下の法改正(主だったもの)が審議されています。
1.男性育休取得促進策
①出生時育休の創設
子どもの出生後8週間以内に、4週間まで取得することができる柔軟な育休の枠組みが創設される予定です(出生時育休)。出生時育休では、より休業を取得しやすいように、休業の申出期限を原則休業の2週間前までとし、2回に分割して取得することができるよう検討されています。
また、労使協定を締結している場合に、従業員と事業主の個別合意により、事前に調整した上で出生時育休中に就業できるようにすることも改正法案に含まれています。
②雇用環境整備と個別の周知・意向確認義務
妊娠・出産をした従業員や、配偶者が妊娠・出産をした従業員が申し出たときに、個別に育休等の制度の周知および育休の取得意向の確認のための措置を講ずることが、事業主に義務づけられる予定です。
③育休の分割取得
現行の育休は、一定の事由がない限り1子につき1回のみの取得です。これを分割して2回まで取得することができるようになる予定です。
④育休取得状況の公表義務付け
常時雇用労働者数が1,000人超の企業に対し、育休取得状況の公表が義務付けられる予定です。
⑤有期雇用労働者の取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業および介護休業について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という取得要件が廃止される予定です。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することができるように検討されています。
2.社会保険関係の改正
1.の変更に伴い、雇用保険の育児休業給付に関しても必要な変更が行われ、また、出産日のタイミングによって育児休業給付の受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例が設けられる予定です。
さらに、短期の育休の取得に対応するため、月内に2週間以上の育休を取得した場合には、その月の社会保険料が免除されるようになり、
賞与に係る社会保険料については1ヶ月を超える育休を取得している場合に限り、免除の対象とすることも検討されています。
4月13日現在、国会で審議が行われている状況ですが、成立後には就業規則(育児・介護休業規程等)の大幅な変更が必要になる内容であるため、事前に概要を確認しておきましょう。なお、改正法が成立すると2022年4月以降、複数回に分けて施行される予定です。
※2021年4月13日現在の情報に基づき作成しています。
(次号に続く)






