医療
都道府県別の熱中症による救急搬送人員数
1 年で最も熱中症の危険性が高い季節を迎えています。特に今年は、新型コロナウイルス感染予防のためにマスクの着用が求められており、例年以上に注意が必要です。ここでは、総務省消防庁の資料※1 から、2019 年5 月~9 月に熱中症で救急搬送された人数を都道府県別にみていきます。
2019 年は2018 年より減少
上記資料によると、2019 年5 月~9 月に熱中症で救急搬送された全国の人員は7.1 万人でした。2018 年は9.5 万人であったことから25%程度減少したことになります。とはいえ2015 年から2017 年は5 万人台であったことからすると、2019 年も高い水準にあるといえます。
都市部に多い搬送人員
都道府県別に搬送人員と人口10 万人当たりの搬送人員をまとめると、下表のとおりです。
搬送人員が最も多いのは東京都で6,046 人でした。次いで大阪府が5,182 人、愛知県が4,705 人などとなっています。一方、最も少ないのは島根県で452 人でした。次いで鳥取県が457 人、徳島県が482 人などとなりました。
人口10 万人当たりでは鳥取県が最多
人口10 万人当たりの搬送人員をみると、最も多いのが鳥取県で79.69 人となりました。鹿児島県が78.94 人、岡山県が75.36 人で続いています。
環境省や厚生労働省では、「令和2 年度の熱中症予防行動」※2 を発表して注意喚起を行っています。貴院でもこうした資料などを参考に、患者等への注意喚起を行ってはいかがでしょうか。
※1 総務省消防庁「2019 年(5 月から9 月)の熱中症による救急搬送状況」
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke004_houdou01.pdf
※2 環境省・厚生労働省「令和2 年度の熱中症予防行動」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000642298.pdf
(次号に続く)
医療機関の資金繰り支援、大幅に拡充
新型コロナウイルス感染症は、医療経営にも深刻な影響を及ぼしています。緊急対策として補正予算で医療事業者への資金繰り支援が講じられており、(独)福祉医療機構による無利子・無担保等の優遇融資が実施されています。
条件も優遇、融資枠も拡大
(独)福祉医療機構による医療貸付は平時より実施されていますが、第1 次・第2 次補正予算により貸付原資の積み増しが行われ、下表のように支援が強化されています。
融資には保証人が必要ですが、保証人不要制度(0.15%の利率を上乗せ)も用意されており、保証人が見つからない場合でも利用できます。
申し込みは法人単位ではなく、施設単位となります。例えば、医療法人が診療所を2 つ運営している場合で、法人全体として返済が可能であれば、8,000 万円(=2 施設×限度額4,000 万円)までの申し込みができます。
更に、既往の貸付けに関しても、事業者の状況に応じ3 年間(最長3 年6 ヶ月)の元利金支払いの返済猶予の相談を受け付けています。
この融資の他にも、医療機関の設備整備や環境整備、人材確保等に対し、多くの自治体が補助事業を設けています。厚生労働省や各自治体の発信情報をこまめにご確認ください。
〇第二次補正予算による優遇融資の内容
(※下表は一般の医療機関に対する条件です。コロナ対応を行う医療機関及び政策医療を担う医療機関には、これより更に手厚い条件が用意されています。)
問い合わせ先:独立法人 福祉医療機構 施設の開設地によって窓口が異なります。⇒ https://www.wam.go.jp/hp/fukui_shingatacorona/
(次号に続く)
先日、厚労省から新型コロナウィルス感染予防のための
チェックリストが発信されたましたので、皆様に共有させて頂きます。
職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について
直近の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は全国的に増加傾向にあり、一部地域
では感染拡大のスピードが増しています。このため、新型コロナウイルス感染症対策分科
会において、新規感染者数を減少させるための迅速な対応として、事業者に対しては、①
集団感染の早期封じ込め、②基本的な感染予防の徹底が提案されたところです。
このような状況を踏まえ、今般、集団感染発生事業場における要因分析等を踏まえて「職
場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」の改訂を
行うとともに、職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について最新の状況を踏まえた留意事項等を取りまとめたところですので、改めて周知をお願いします。併せて、感染拡大を予防する新しい生活様式の定着に向けた周知についても引き続き御協力いただきますようお願いします。
チェックリスト⇒
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000657476.xlsx
厚生労働省労働基準局長
高年齢労働者が安心・安全に働ける職場環境づくりとその支援のための補助金
労働災害による休業4日以上の死傷者数のうち、60歳以上の労働者の占める割合は増加傾向にあり、2018年は26.1%となっています。今後、70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境を作っていくことは重要な課題となります。そこで今回は、国が示している高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)の内容とそれを支援する補助金についてとり上げます。
1.エイジフレンドリーガイドライン
エイジフレンドリーガイドラインには、企業に求められる事項として、以下の5つが挙げられています。
① 安全衛生管理体制の確立等
② 職場環境の改善
③ 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
④ 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
⑤ 安全衛生教育
このうち③は、企業・高年齢労働者双方がその高年齢労働者の健康や体力の状況を客観的に把握し、企業はその体力にあった作業に従事させ、高年齢労働者自らの身体機能の維持向上に取り組めるように、主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うことが望ましいとされています。具体的な体力チェックの方法として、以下のものが考えられます。
- 従業員の気づきを促すため、加齢による心身の衰えのチェック項目等を導入すること
- 厚生労働省が作成した「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用すること
- 事業場の働き方や作業ルールにあわせた体力チェックを実施すること
そして④は、健康や体力の状況を踏まえて必要に応じた措置を講じることが必要とされています。脳・心臓疾患が起こる確率は加齢にしたがって徐々に高まるため、基礎疾患の罹患状況を踏まえて、労働時間の短縮や深夜業の回数の制限、作業の転換等の措置を講じることが必要です。
2.エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリーガイドラインに関連して創設されたエイジフレンドリー補助金は、高年齢労働者(60歳以上)を常時1名以上雇用している中小企業が対象となり、高年齢労働者が安心して安全に働けるように職場環境の改善にかかった費用の一部を補助するものです。
補助対象は、スロープの設置といった身体機能の低下を補う設備・装置の導入を始め、数多くあります。
補助金額は、高年齢労働者のための職場環境改善に要した経費の2分の1で、上限額は100万円です。申請期間は2020年10月31日までとなっており、申請先はエイジフレンドリー補助金事務センターになります。
補助金については、予算があるため、申請期間中であっても受付が締切となる可能性があります。活用を検討される場合は、早めに補助金の交付申請をしましょう。
(来月に続く)
見直しておきたい自転車通勤等の取扱い
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
これまでも健康志向から自転車通勤を行う従業員がいましたが、最近、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを避けるために、自転車通勤をしたいと申し出る従業員が増えてきました。当社では、従業員からの申し出があれば、自転車通勤を認めていますが、注意すべき点はありますか。
社労士:
公共交通機関の通勤ラッシュが激しい都市部を中心に、自転車通勤が増加しているようですね。自転車通勤については条例で、自転車利用中の対人事故の賠償に備えるための保険(自転車損害賠償責任保険)等への加入を義務付ける動きが全国に広がっています。例えば、2020年4月1日現在、15都府県(山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、愛媛県、福岡県、鹿児島県)では義務化され、11道県では努力義務化されています。その他、政令指定都市で義務化されているところもあります。
総務部長:
そのような動きがあるのですね。この保険とは、どのようなものなのでしょうか?
社労士:
自動車事故と同様に、自転車事故においても高額な賠償を求められることがあるため、自転車事故の発生に備えて加入する保険です。自転車向け専用の保険のほか、自動車保険や火災保険の特約で付保されている場合等、様々な種類があります。
総務部長:
なるほど。保険があること自体を知らない従業員がいるかもしれないので、従業員に周知した方が良さそうですね。
社労士:
そうですね。安全運転をすることが第一ですが、万が一に備え、保険に加入することも重要です。通勤に自転車を利用するときには、保険への加入を義務付けることも考えられます。また、業務に自転車を利用することがあれば、通勤用の自転車を利用するのか、会社で保険に加入した自転車を用意するのかも検討しておきたいものです。
総務部長:
届け出ている方法で通勤をしているのか、正確な状況がわからない状態にあるため、現状を確認し、どのような取扱いとするか検討したいと思います。
【ワンポイントアドバイス】
- 条例で、自転車利用中の対人事故の賠償に備えるための保険等への加入を義務付ける動きが全国に拡がっている。
- 通勤に自転車を利用する際には、保険への加入を義務付けることも考えられる。
- 通勤への利用のみでなく、業務に自転車を利用していないかも確認し、保険への加入を検討したい。
(次号に続く)
コロナの状況は、留まることを知らず、感染が広がっている
状況です。
決定的なワクチンが開発されない限り、否応なしに新
型コロナウイルスと共存・共生しなくてはなりません。
そのようなウィズ・コロナでは、労務においても従来に
なかったような問題が押し寄せ、その対応により会社の
真価が問われる時代になりました。身近なところでは、
休業補償、安全配慮義務、そして採用リスクの高まりです。
1.休業補償という意識の高まり
コロナ関係のニュースでは、「休業補償」という言葉
が、よく出てきますが、働く人の意識もこの言葉にかつ
てないほど高くなっています。
●「休業要請」と「休業補償」
ニュースで飲食店などへ休業要請云々とくれば、必ず
「じゃあ、休業補償は」という話になります。国に直
接の責任があるわけではありませんが、営業の自由を
制限するわけですからそのようなことになります。
この話は、会社と従業員の間でも同じであり、「休ん
でください」といえば「じゃあ、休業補償は」となり
ます。
●不可抗力とはいうものの
コロナの影響による事業縮小のため従業員を休ませる
場合、要件を満たせば自然災害のようなもので不可抗
力ですから会社に休業補償義務はありません。しかし、
一般の従業員は不可抗力という言葉すら分からないは
ずです。そうなりますと、法律上はともかく、「会社
は休業補償をしない」と、社内に不満が蔓延(まんえん)
してくるのではないでしょうか。
●前もってルール化しておく
コロナでは事業縮小だけでなく、県外へ行ったとかで
感染の疑いがある場合などに用心のため休んでほしい
こともあります。このような場合は、法的には休業補
償が必要なのですが、支給する休業手当額(率)を前
もって取り決めておくと良いかもしれません。実際に
は用心のために休んでもらうケースが多いと思います。
2.安全配慮義務意識の高まり
安全配慮義務とは、会社が従業員の安全を確保しな
がら労働することができるよう、必要な配慮をするこ
とですが、コロナの影響により、その意識が高まって
います。
●感染への不安増大
確かに、毎日発表される感染確認者数を見れば不安が
増大するのは当然です。テレワーク・リモートワーク
が良いと言っても中小企業ではまだまだ少数派です。
ほとんどは、従来と変わらず出勤し仕事をしています。
もし、社内にこれといった感染防止策がとられていな
ければ、感染への不安はさらに増大します。
●「〇〇すら、やっていなかった」
もちろん、コロナに限ったことではありませんが、
何か事件・事故が起きますと「〇〇すら、やっていな
かった」ということになります。仮に自社も同じくら
いのことしかやっていないのに、他社のことは批判し
やすいものですし、さらに尾ひれがついて拡散します。
世間はこのような話が好きなのです。
●見えるカタチで従業員への周知
どこまでやっておけば会社の安全配慮義務を果たせる
かというのはありませんが、行政などから発表されて
いる最低限の措置は必要です。例えば、毎日の体調、
検温報告、マスク着用、手洗い、体調不良者への休暇
取得奨励などですが、これを紙に書いて職場に貼り出
して周知します。口頭だけより周知しやすくなります。
3.採用リスクの高まり
コロナの影響で転職を余儀なくされる人も多くなり、
いろいろな業界から多様な人材が応募対象になります。
応募者数は増えますが、同時に採用リスクも高まります。
●他業界からの転職
できれば慣れた仕事が良いので、多くの場合は似たよ
うな業界からの転職になります。しかし、コロナの影
響による転職の場合はそうもいっておられず、まった
く違う業界からの転職も増えてきます。求人難の会社
にとっては、応募者が増えてありがたいのですが、
応募者が多いということは、採用リスクも高まるとい
うことにもなります。
●通じにくい業界の常識
良い悪いは別にして、業界には雇用関係においても常
識というものがあります。しかし、他業界から来た人
にとっては、その常識は非常識であるかもしれません。
もちろん、その逆もあります。今までなら、口にしな
くても何となく通じていたことが通じにくく、下手に
こちらの常識を押し付ければトラブルの元です。
●まずは法律を基準にする
お互いの常識が一致していない、または一致している
かどうか分からない場合に、最もおすすめは法律を基
準にすることです。法律には基本的に感情もなければ
期待もないので、客観的だからです。具体的には、
労働条件を取り決め、契約書にして取り交わしてから
働いてもらう、採用時の健康診断をキチンと行うこと
などです。
ウィズ・コロナの労務においては、今まで以上にYES
とNOを明確にしておく必要があるように思います。
感情や常識はもちろん重要ですが、その前に法律に基づい
て雇用することにより会社の真価、つまり本当の価値が問
われる時代なのかもしれません。
何かのご参考になれば幸いです。
社会保険の適用拡大等が盛り込まれた年金制度の改正
社会保険の制度は定期的に見直しが行われています。6月に閉会した国会でも、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的とした「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度改
正法」という)が成立しました。改正内容は多岐にわたりますが、企業が押さえておきたい2点を解説します。
1.社会保険の適用拡大
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となる人は、適用事業所に勤務する正社員(常時使用される人)のほか、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイト等とされています(4分の3基準)。
これに加え、4分の3基準に該当しない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす人は、被保険者になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の適用事業所に勤めていること
年金制度改正法では、5.の要件について、2022年10月に101人以上の適用事業所に、2024年10月に51人以上の適用事業所に拡大することとしています。
また2.の要件が2022年10月に廃止され、正社員と同様に「雇用期間が2ヶ月超見込まれること」となります。
2.2ヶ月超の雇用見込者の早期加入
社会保険では「日雇いで働く人」や「4ヶ月以内の季節的業務に使用される人」等、一定の被保険者とならない人が定められています。そのひとつに、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される人」というものがありますが、2ヶ月以内の雇用見込みの人であっても所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となるとされています。
年金制度改正法では、雇用契約の期間が2ヶ月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断される場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被保険者になるとされました。
具体的には、以下のようなケースでは原則として当初から被保険者となります。
- 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
- 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
特に社会保険の適用拡大に関して、多くのパートタイマーやアルバイト等が新たに被保険者になる企業では、社会保険料の負担が相当大きなものになると予想されます。また、新たに被保険者となる従業員にとって、手取り収入が減ることにもなるため、早めに丁寧な説明をしておくことが求められます。
(次号に続く)
新型コロナウイルス感染症に関連した雇用保険の特例
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大を背景に、家族の介護や子どもの世話のために退職せざるをえなくなったり、また、雇止めや解雇された労働者が多く発生しています。今回はこのような離職者が受けられる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)に関する特例について確認します。
1.給付制限が行われない措置
失業手当は、離職理由により一定期間、給付を受けることのできない給付制限の期間が設けられています。ただし、特定受給資格者(倒産や解雇等が理由の離職者)や、特定理由離職者(一定の雇止め、転居や婚姻等による自己都合退職等が理由の離職者)は、この給付制限の期間が設けられていません。
新型コロナの影響として、2020年2月25日以降に、以下の理由により離職した人は特定理由離職者として扱うことにより、給付制限の期間が設けられないこととなっています。
- 同居の家族が新型コロナに感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナの影響で子(小学校、高等教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
2.給付日数の延長
新型コロナにより、経済状況は急激に悪化し、以前の状況に戻るには相当の時間を要するとも言われています。求人倍率も大幅に減少し、離職者の求職活動の長期化等が予想されます。
そのため、失業手当の受給者について、給付日数が延長されることになりました。対象となる離職者は、2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人で、以下の通りとなっています。
- 離職日が2020年4月7日以前の人離職理由を問わない(全受給者)
- 離職日が2020年4月8日から5月25日までの人特定受給資格者および特定理由離職者
- 離職日が2020年5月26日以降の人 新型コロナの影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者および特定理由離職者(雇止めの場合に限る)
延長される日数は原則60日ですが、35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人および45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人は30日となります。
所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合等、対象とならないこともあります。
これらの他、新型コロナにより求職活動ができない場合やハローワークに出向いて失業の認定が受けられない場合の特例も設けられています。新型コロナの影響で離職する従業員には特例が設けられていることを伝えるとよいでしょう。
(次号に続く)
先週末の17日、
国の中心的な羅針盤となる“経済財政運営と改革の基本方針2020”
通称、“骨太方針2020”がようやく示されましたね。
その中で、介護、医療分野の部分の抜粋版をお示しします。
ご参考になさってください。
(医療・介護分野におけるデータ利活用等の推進)
感染症、災害、救急等の対応に万全を期すためにも、医療・介護分野におけるデータ 利活用やオンライン化を加速し、PHRの拡充も含めたデータヘルス改革を推進する。 被保険者番号の個人単位化とオンライン資格確認の導入のための「保健医療データプ ラットフォーム」を2020 年度に本格運用を開始するとともに、患者の保健医療情報を患 者本人や全国の医療機関等で確認できる仕組みに関し、特定健診情報は2020 年度中に、 レセプトに基づく薬剤情報については2021 年中に稼働させ、さらに手術等の情報につい ても2022 年中に稼働させる。それ以外のデータ項目については、情報連携の必要性や費 用対効果等を検証しつつ、技術動向等を踏まえ、2020 年中を目途にデータヘルス改革に 関する工程を具体化する。医療分野の個人情報の保護と利活用の推進策を検討する。保 険者のデータヘルス計画の標準化等の取組を推進する。本年3月の「審査支払機関改革 における今後の取組」等に基づき、審査支払システムや業務を整合的かつ効率的に機能 させる等の改革を着実に進める。科学的介護・栄養の取組を一層推進する。 オンライン診療等の時限的措置の効果や課題等の検証について、受診者を含めた関係 者の意見を聞きエビデンスを見える化しつつ、オンライン診療や電子処方箋の発行に要 するシステムの普及促進を含め、実施の際の適切なルールを検討する。電子処方箋につ 32 いて、既存の仕組みを効率的に活用しつつ、2022 年夏を目途に運用を開始する。医師に よる遠隔健康相談について、既存事業の検証を行いつつ、効果的な活用を図る。 AIを活用した医療機器の開発や、医薬品等の開発の促進に資する薬事規制の体制の 整備・合理化を進める。 感染症の下、介護・障害福祉分野の人手不足に対応するとともに、対面以外の手段を できる限り活用する観点から、生産性向上に重点的に取り組む。ケアプランへのAI活 用を推進するとともに、介護ロボット等の導入について、効果検証によるエビデンスを 踏まえ、次期介護報酬改定で人員配置の見直しも含め後押しすることを検討する。介護 予防サービス等におけるリモート活用、文書の簡素化・標準化・ICT化の取組を加速 させる。医療・介護分野のデータのデジタル化と国際標準化を着実に推進する。
詳細は下記でご確認ください
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf
医療機関でみられる人事労務Q&A
『試用期間の延長と本採用を見送る際の留意点』
Q:
当院では、就業規則において、3 ヶ月間の試用期間を設けています。先日採用した職員は問題行動が多く、上長が再三にわたり注意・指導を行っているところです。今後、もうしばらく様子を見るため試用期間を延長するか、試用期間満了をもって本採用を見送るか検討しているところですが、その際の留意点を教えてください。
A:
まずは、試用期間があること、その期間や延長の可能性があること、本採用を見送る場合があること、そしてその具体的な基準について、就業規則等に定め、あらかじめ本人へ説明しておくことが重要です。なお、たとえ試用期間中であっても、労働契約は成立しているため、試用期間満了後に本採用を見送るのであれば解雇となり、解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要になる場合があります。
詳細解説:
1.試用期間の位置づけと延長
試用期間とは、医院が、新たに採用した職員の適性や能力について評価し、本採用するか否かを判断するための期間です。必ず設けなければならないものではなく、その期間についても明確な基準はありませんが、試用期間中は身分が不安定になることから、6 ヶ月以内で設定している医院がほとんどでしょう。
あらかじめ設定した試用期間において、その職員の適性や能力について判断することが望ましいですが、中にはあらかじめ設定した試用期間では判断できずに、試用期間を延長して判断するケースがあります。その場合、就業規則等に試用期間の延長に関する規定が必要となりますが、規定に基づいて延長するときでも、合理的な理由が必要になります。なぜ試用期間を延長することになったのか、本人へ理由を説明し、あわせて本採用へ向けて改善すべき点を明確に示すことが求められます。
2.試用期間満了により本採用を見送る際の留意点
職員に問題があれば一方的に本採用を行わないことができるわけではありません。どのような場合に本採用が見送りとなるか、就業規則等で具体的な基準を規定し、それを本人へ事前に説明しておく必要があります。そのうえで、その職員の適性や能力が医院としての基準に達しない点について、注意・指導を繰り返したけれども、改善に至らなかったために本採用を行わないこととしたというプロセスが重要になります。
気づいたら試用期間が過ぎていた、試用期間の満了が直前に迫っていたというケースは少なくありません。試用期間を設定するのであれば、本採用となる基準等について現場や
上長等に共有し、職員の適性や能力に問題があれば、注意・指導を行い、記録を残すことが求められます。
(来月に続く)