医療
2019 年の医療機関等の賃金改定状況
今年も厚生労働省から、賃金改定状況に関する調査結果※が発表されました。ここでは、医療機関等の2019 年の賃金改定状況をみていきます。
62.3%が賃金引上げを実施
上記調査結果から、医療機関等(以下、医療,福祉)の賃金改定状況をまとめると、表1 のとおりです。
2019 年の改定状況をみると、医療,福祉では、1~6 月に賃金引上げを実施した事業所(以下、引上げ実施事業所)割合は62.3%となりました。2018 年の割合はもちろん、産業計の割合よりも高く、医療,福祉では引上げ実施事業所割合が高いことがわかります。
一方、医療,福祉で賃金引下げを実施した事業所(以下、引下げ実施事業所)割合は0.0%で2018 年よりも低く、産業計よりも低くなりました。賃金改定を実施しない割合は24.6%で、1/4 程度の割合になりました。
7 月以降に賃金改定を行う予定の事業所割合が13.2%あることから、今年賃上げを行う事業所割合はさらに高まるでしょう。
引上げ実施事業所の改定率は1.9%
次に賃金改定事業所の改定率をまとめると、表2 のとおりです。
2019 年の改定率をみると、医療,福祉の引上げ実施事業所は1.9%でした。産業計よりも0.6ポイント、2018 年の医療,福祉よりも0.8 ポイント低くなりました。引上げは行うものの、改定率は低い事業所が多いようです。
なお、この調査結果による一般労働者とパートタイム労働者(以下、パート)の1 時間当たり賃金額をみると、医療,福祉の一般労働者は1,445 円で2018 年より32 円高くなりました。パートは1,277 円で同じく26 円の増加です。ちなみに産業計は一般労働者が1,626 円でパートが1,087 円です。医療,福祉と比べると、一般労働者は医療,福祉の方が低く、パートは医療,福祉の方が高いことがわかります。
医療,福祉では、今年は昨年に比べて引上げを行う割合が高いものの、改定率は低くなりました。賃金の引上げは自院の実情に合わせて、できる範囲で行うべきでしょう。
※厚生労働省「令和元年賃金改定状況調査結果」
2019 年(令和元年)6 月1 日現在の常用労働者数が30 人未満の企業に属する民営事業所で、1 年以上継続して事業を営んでいる約16,000事業所を対象にした調査です。回答事業所数は5,009 事業所です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000529789.pdf
(次号に続く)
休息時間を設けて受けられる助成金
働き方改革の一環として、勤務間インターバルの導入が事業主の努力義務となりました。勤務間インターバルとは、勤務終了から次の勤務までの間に、一定時間の「休息時間」を設ける制度。導入には助成金が活用できます。
導入には助成金が活用できます
この制度の導入に取り組む中小企業事業主は、時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)が受給できます。受給額は最大100 万円。申請の受付は、令和元年11 月15日までです(それ以前に予算額に達した場合には、募集が締め切られます。ご注意ください)。
この助成金でいう「勤務間インターバル」は、休息時間数を問わず、就業規則等において「就業から次の始業までの休息時間を確保することを定めているもの」です。
- 例えば、就業規則等において、「○時以降の残業は禁⽌、かつ、○時以前の始業を禁⽌」「所定外労働を⾏わない」等の定めによって、終業から次の始業までの休息時間が確保されている場合、「勤務間インターバルを導⼊している」とみなされます。
- 「○時以降の残業を禁⽌」もしくは「○時以前の始業を禁⽌」のように、いずれか⼀⽅のみを定めている場合は、導⼊しているとはみなされません。
助成金の対象となる事業主
医療機関のようなサービス業においては、資本または出資額が5,000 万円以下、もしくは常時使用する労働者が100 人以下の場合で、次のいずれかに該当する事業場を有する場合に、助成の対象となります。
- 勤務間インターバルを導⼊していない
- 既に休息時間数が9 時間以上の勤務間インターバルを導⼊しているが、対象労働者がその事業場の労働者の半数以下
- 既に休息時間数が9 時間未満の勤務間インターバルを導⼊している
医療機関における活用例としては…
作業効率の向上やスタッフの負担軽減のための投資が対象です。例えば、次の場合に活用ができます。
(次号に続く)
労災保険が適用されるか判断に迷いやすい具体的事例
従業員が業務上でケガをしたり、疾病にかかったとき、通勤途上でケガをしたとき等には、原則として、労災保険から給付を受けることができます。給付を受けるときには、負傷したときの状況を各書類に記載して請求しますが、その際、労災保険の給付対象となる災害か否かの判断に迷う事例が発生することがあります。今回は、そうした事例をとり上げ、労災保険の適用について確認しましょう。
1.業務災害と通勤災害の考え方
労災保険では原因や事由が、仕事によるものである場合に「業務災害」、通勤によるものである場合に「通勤災害」として取扱われます。
給付対象となるかの判断は、業務災害の場合は従業員が会社の支配下にあるか(業務遂行性)と、業務とケガ等との間に一定の因果関係があるか(業務起因性)により行われ、通勤災害の場合は、就業に関して合理的な経路および方法として一定基準を満たした通勤であるかにより行われます。
2.判断に迷いやすい具体的事例
①従業員同士のけんか
けんかによりケガをしたときは、その原因がプライベートによるものか、仕事上の意見の食い違いによるものかにより業務災害と判断されるかが異なります。
例えばプライベートのことが原因によるけんかであれば、業務遂行性・業務起因性がともにないため、たとえ社内でけんかが起きたとしても、業務災害として認められません。
②運動会(社内行事)でのケガ
近年、社内のコミュニケーションを活発化させるために、運動会など従業員間の交流を図る取組みをするところが増えています。このような運動会に参加している際にケガをした場合は、従業員間の交流を図るために自由参加で開催されているものであれば、業務遂行性の要件を満たさないことから、業務災害とは判断されません。こうした行事の中でのケガについて労災の対象となるかは、行事の主催者、目的、内容、参加方法、運営方法、費用負担などから総合的に判断されます。
③早退して病院へ行った後のケガ
勤務中に体調が悪くなったため、早退して会社近くの病院で受診した後、帰宅することも日常的に想定される事例です。このような事例で、帰宅途中の駅でケガをしたことを想定すると、病院の受診は日常生活上必要な行為と判断され、受診後、通常用いると認められる通勤経路に戻ったところから、また通勤が始まることになっています。そのため、通常用いると認められる経路に復した後に、駅でケガをしたのであれば、通勤災害と判断されます。
2.の③の事例で、病院が会社の最寄り駅とは反対の方向にある場合は、通常用いると認められる経路を外れてから再び戻るまでの間はいわゆる「逸脱」となり、この間に発生したケガは通勤災害と認められません。そして、通常用いると認められる経路に戻った後に発生したケガのみが通勤災害と判断されます。このように状況によって取扱いが異なることを理解しておきましょう。
(来月に続く)
労働基準監督署の監督指導で指摘を受けやすい事項
先日、厚生労働省より「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」が公表されました。これは全国の労働基準監督署(以下、「労基署」という)が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき、企業への監督指導を行った結果について公表したものです。調査により問題を指摘された企業は賃金不払残業を解消するための取組みを行うことが求められます。具体的な取組事例の一部が、是正結果とともに公表されているため、企業における実際の取組事例を見てみましょう。
1.賃金不払残業の状況
・割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
・会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離があり、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
2.企業が実施した解消策
会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
①支店長会議において、経営陣から各支店長に対し、労働時間管理に関する不適切な現状及びコンプライアンスの重要性を説明し、労働時間管理の重要性について認識を共有した。
②労働時間の適正管理を徹底するため、自己申告による労働時間管理を見直し、ICカードの客観的な記録による管理とした。
③ICカードにより終業時刻の記録を行った後に業務に従事していないかを確認するため、本店による抜き打ち監査を定期的に実施することとした。
これはあくまでも一事例に過ぎませんが、このように、労働時間の適正把握のために、ICカードなどの客観的な記録による管理を行うことが求められ、またICカード導入後についても、その記録が適正なものになっているか抜き打ち監査を行うなど、確認することが求められています。取組事例を参考に、監督指導を受けないように対策をしていきましょう。
労基署の調査では、労働時間に関するもののほか、管理監督者として取り扱っている従業員が労働基準法で認められた範囲であるかについて指導が行われるケースがあります。具体的には、労基署が職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金の処遇等を確認した上で、企業に対して、管理監督者の範囲を見直し、適正ではない疑いがあるときは、必要な改善を図るよう指導が行われています。自社の取扱いを確認し、問題があれば改善しましょう。
(次号に続く)
派遣先会社の立場で考える派遣労働者の同一労働同一賃金
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:2020年4月から派遣労働者についても同一労働同一賃金が適用されると聞きました。当社でも派遣会社と契約を結び、労働者を派遣してもらっていますが、対応することがありますか。
社労士 :派遣労働者の同一労働同一賃金は、派遣先会社および派遣元会社の企業規模に関わらず、2020年4月から適用となります。原則は「派遣先均等・均衡方式」として派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を実現することが求められます。
総務部長:「派遣先の通常の労働者」ということですので、当社の従業員と比較するということですか。
社労士 :はい。派遣先均等・均衡方式では、御社の比較対象となる通常の労働者(正社員等)と派遣労働者の待遇を比較します。そのため、賃金や賞与、退職金等の御社の従業員に対する待遇の情報を、派遣元会社に提供する必要があります。なお、この待遇には慶弔休暇等の福利厚生に関する事項も含まれます。
総務部長:なるほど。かなり細かい内容まで派遣元の会社に伝える必要があるのですね。
社労士 :そうですね。派遣元会社は提供された情報に基づき、派遣労働者の待遇を個別に決定します。そのため、派遣労働者は派遣先が変わるたびに待遇が変わることになります。そのようなことを避けるためにも、例外として「労使協定方式」で行うことが認められています。これは一定の要件を満たす労使協定を派遣元会社の労使が締結することにより、その協定に沿った待遇とすることができるというものです。
総務部長:労使協定方式にすると、賃金の取扱いはどうなるのですか。
社労士 :毎年度、厚生労働省から同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金水準が公表されます。この賃金の額と同等以上の賃金額を派遣元の会社が支払うことで、派遣労働者の同一労働同一賃金が確保されていると判断されることになります。
総務部長:なるほど。当社から待遇の情報を提供する必要がなくなるということですね。
社労士 :そうです。ただし、教育訓練と福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)は、労使協定方式とする場合でも派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保することが求められるので、情報提供の必要があります。ご注意ください。
総務部長:承知しました。ありがとうございました。
【ワンポイントアドバイス】
1. 派遣労働者の同一労働同一賃金の対応には、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」がある。
2. 「派遣先均等・均衡方式」では派遣元に自社の従業員の待遇の情報を提供する義務がある。
3. 「労使協定方式」の場合でも教育訓練と福利厚生施設は、派遣先での均等・均衡が必要であり、派遣元に対して情報提供をしなければならない。
(次号に続く)
今年も大幅な引き上げとなる最低賃金
1.最低賃金の種類と改定タイミング
賃金については、都道府県ごとにその最低額(最低賃金)が定められており、企業はその額以上の賃金を労働者に支払うことが義務付けられています。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。このうち「地域別最低賃金」は、毎年10月頃に改定されることになっており、2019年度についても全都道府県の地域別最低賃金の改定額が決定しました。
2.2019年度の地域別最低賃金と発効日
2019年度の地域別最低賃金と発効日は、下表の予定となっています。すべての都道府県で26円以上の引き上げとなり、中でも東京都と神奈川県はついに1,000円台に引き上げられました。
パートタイマー・アルバイト等の時給者の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するとともに、月給者についても1時間あたりの賃金額を算出し、確認するようにしましょう。
(次号に続く)
医療機関でみられる人事労務Q&A
『メンタルヘルス不調による休職後の配慮』
Q:
メンタルヘルス不調で休職していた職員が、このたび復職することとなりました。診断書には復職可能と記載されていますが、残業をする等、休職前と同じような業務ができるのか、また、させてよいのか、医院として心配があります。配慮が必要なのか、配慮するのであればどのような配慮を考えるのがよいでしょう
か?
A:
医院としては、復職の是非の判断を行うだけでなく、スムーズに復職できるよう復職後の流れについても検討しておくことが望まれます。例えば、復職はするものの、リハビリのように一時的に業務の負担を減らし、ならしながら徐々に休職前と同じ程度の業務を行えるレベルまで戻していく方法が考えられます。このような配慮について必要性を示す裁判例も見られることから、ルール化も含めて、取り扱い方法をあらかじめ検討するようにしましょう。
詳細解説:
メンタルヘルス不調により休職をしていた職員について、医院は休職するに至った症状が回復し、休職前と同じ程度の業務を行えることを条件にして復職の判断をすることが一般的です。しかし、そもそもメンタルヘルスの症状や治癒を確認することは、専門機関であっても難しいといわれており、すぐに再発してしまうケースも多く見られることから、復職の是非だけでなく、復職後どのようなステップで業務にあたるのかといったことも、検討することが望まれます。具体的には、すぐに休職前と同じ業務量や責任の状態で復職させることは身体的・精神的な負担がかかるため、一定期間、業務や労働時間を制限する配慮期間を設けることを検討する方法が考えられます。
実際、裁判例においても、休職前の業務の提供が十分にできないとしても、その能力、経験、企業規模等に応じて当該従業員を配置できる業務がないか検討する必要があること(片山組事件 最判平成10 年4 月9 日)や、復職のための準備時間等を提供することが信義則上求められること(全日本空輸事件 大阪高裁判平成13 年3 月14 日)が示されています。つまり、医院は配置転換や残業の免除の措置を検討するといった配慮をする、道義上・信義則上の責任があると考えられます。
一方で、配慮期間を設けるにしても、その期間中、他の職員が業務を負担することが考えられるため、長期間にわたることは避けたいところです。そのため、配慮する期間の長さや労働時間を短縮する場合の時間数の上限、一時的に行う業務内容例といった具体的な基準をあらかじめ決めておきましょう。
復職の際には、復職者が休職前と同じ業務をスムーズに行えることが理想ですが、必ずしもそうとは限りません。そのため、このように一定期間業務ができるかどうか、医院と復職者の双方が様子を見ることができる配慮期間があることで、安心して業務に復帰できることが期待されます。
(来月に続く)
医療法人1 法人あたりの交際費等支出額
ここでは、今年6 月に国税庁より発表された「会社標本調査」※の最新結果などから求めた、直近3 年間の医療法人1 法人あたり年間の交際費等支出額をみていきます。
利益計上法人の平均は209.9万円
上記調査結果から、直近3 年分の医療法人1 法人あたり年間の交際費等支出額を、資本金階級別にまとめると下表のとおりです。
利益計上法人の資本金階級計は、2015 年度分以降は200 万~210 万円台で推移しており、直近3 年間の平均は、209.9 万円になりました。
2017 年度分の資本金階級別交際費等支出額をみると、100 万円超1,000万円以下の階級は、200 万円未満ですが、その他の階級では200 万円を超えています。
欠損法人の平均は157.1 万円
欠損法人の資本金階級計は増加を続けています。2016 年分では150 万円を、2017 年度分では160 万円を超えました。3 年間の平均は157.1 万円です。
資本金階級別では、3 年とも5,000万円以下の階級で200 万円未満の額となっています。
自院の交際費等支出額は、どの程度なのか、このデータと比較してみてはいかがでしょうか。
※国税庁「会社標本調査」
内国普通法人(休業、清算中の法人や一般社団・財団法人及び特殊な法人を除く)を対象に、4 月1 日から翌年3 月31 日までの間に終了した調査対象法人の各事業年度について、翌年7 月31 日現在でとりまとめたものです。ここでの交際費等支出額は、資本金階級別に集計された合計金額を法人数で除して求めた数字になります。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon/toukei.htm#kekka
(次号に続く)
軽減税率導入目前 これは8%?10%?
消費税率の引上げに伴い、軽減税率制度が導入されます。対象となるのは飲食料品と新聞。医薬品や栄養ドリンク、栄養食品等は人が口にするものですが、これらも「飲食料品」として軽減税率の対象となるのでしょうか。
医薬品、医薬部外品等は10%
ここでは、医療機関の窓口で取り扱う品目の消費税率について確認します(下図)。軽減税率の対象となる「飲食料品」には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」「医薬部外品」及び「再生医療等製品」は含まれません。保険適用の医薬品には消費税はかかりませんが、それ以外は処方箋の有無に関わらず、標準税率の10%が課税されます。
栄養ドリンクや健康食品、美容食品も、ラベル等に「医薬品」「医薬部外品」の記載があれば10%課税です。院内売店で販売する飲食料品も、軽減税率の対象となります。
病院食は非課税、特別メニューは10%
入院患者に提供する病院食は、健康保険法等の規定に基づく入院時食事療養費に係る場合は、消費税が課されません。一方で、患者の自己選択で提供される特別メニューの料金は消費税の対象で、外食と同様に軽減税率の対象外となり、消費税率は10%となります。
領収書等の対応もお忘れなく
10 月1 日からは、原則、軽減税率対象のものがある場合には、レシートや領収書、請求書等に分かるように記載しなければならず、対応が必要です。中小企業・小規模事業者は、複数税率対応レジ等の導入・改修等に「軽減税率対策補助金」も活用できます。ご確認ください。
(次号に続く)
企業に求められる従業員の精神障害発症を防ぐための対応
従業員が精神障害を発症した際、その原因が長時間労働や職場のパワーハラスメントによるものだと考え、労災請求をしたいと会社に相談する従業員が増加しています。実際、どのくらいの件数の請求があり、労災の認定がされているのか、厚生労働省が発表した平成30年度の労災補償状況に関する集計結果を見てみましょう。
1.精神障害の労災補償状況
平成30年度の精神障害に関する労災請求件数は1,820件となり、前年の1,732件から88件増加し、過去最多となりました(下図参照)。
支給決定件数は465件で、認定率は31.8%となっています。認定率は過去5年間の中で最低となっていますが、それでも申請の3件に1件の割合で労災として認定されていることが分かります。
2.精神障害発症の理由
精神障害の集計では、精神障害を発症した理由と考えられる支給決定事案における具体的な出来事別の分類がされていますが、上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。
第1位に、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」があることを考えると、企業は、異動により仕事の内容が変わったり、同僚の退職等で業務量が増えたりする等、大きな変化があるときには過重な負担となっていないか面談を行ったり、管理職や一般職向けにパワーハラスメントに関する研修を定期的に実施する等、必要な措置をとることが重要となります。
パワーハラスメントについては、先に行われた国会で、パワーハラスメント防止対策が法制化され2019年6月5日に公布されました。施行は公布後1年以内の政令の定める日(中小企業は公布後3年以内の政令で定める日までは努力義務)とされています。施行はまだ先の予定ですが、日々の労務管理を行う上で、パワーハラスメントの防止に向けた取組みを進めていきましょう。
(来月に続く)