医療

医療事業所様向け情報(経営)6月号②

診療科目別の一般診療所数の増減

厚生労働省の発表によると、全国の一般診療所数は10 万施設を超えて推移しています。では診療科目別ではどうでしょうか。ここでは昨年12 月に発表された調査結果※から診療科目別の一般診療所の数などをみていきます。

1 万施設を超える診療科目は8 つ

上記調査結果から、2017 年と2008 年の診療科目別の一般診療所数をまとめると、下表のとおりです。

2017 年の施設数では内科が63,994 施設で最も多く、施設数全体に占める割合は63.1%となっています。次いで小児科が19,647 施設、消化器内科(胃腸内科)が18,256 施設になりました。また、外科、循環器内科、整形外科、皮膚科、リハビリテーション科も1 万施設を超えています。

10 年間の増減は

次に2008 年と2017 年の間の増減をみると、下表の一般診療所を除く39 診療科目のうち、増加が20、減少が19 となりました。

増加の中でも増減率が100%以上となったのが、腎臓内科、乳腺外科、病理診断科、糖尿病内科(代謝内科)の4 つでした。減少では、気管食道外科、放射線科、感染症内科、消化器外科(胃腸外科)が20%以上の減少となりました。

貴院の診療科目の状況はいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
全国の医療施設を対象にした調査です。ここで紹介した数値は、重複計上されていますので、診療科目別の一般診療所数を合計しても一般診療所数とは合致しません。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)6月号①

外国人旅行者への医療提供の課題

国が目指す観光立国、来年の東京オリンピック・パラリンピック、2025 年の大阪万博と、外国人旅行者の増加が予想されますが、医療現場ではその受入れが課題です。今回は厚生労働省の調査結果※1 より、費用請求の実態に注目します。

1 点あたりいくらを請求するか

自由診療である外国人旅行者の診療価格設定は悩ましい問題。調査では「訪日外国人旅行客の医療費をどう設定しているか」の問いに対し、90%が「1 点あたり10 円」と回答しました。
外国人患者受入れの多い病院(観光庁訪日外国人旅行者受入医療機関等)では、「1 点あたり10 円」との回答は61%に留まり、27%が「1 点あたり20 円以上」で請求しています。

外国人旅行者の受入れには、言語対応や文化・風習への配慮等にも費用と時間を要します。しかし同調査によると、通訳料を別途請求している病院はわずか1%にすぎず、大半の病院において通訳料を請求していません。医療通訳の費用は自由診療だけでなく、社会保険診療においても請求可能です。

また、外国人旅行者の診療に伴い発生する旅行者保険に関する事務費用や、診療・治療に必要な患者情報について、外国と連絡を取る際に生じる事務費用についても、患者へ請求をすることができます。
今回の調査結果を受け、厚生労働省は通知※2を発し、この件の周知に取組んでいます。

18.9%が未収を経験

回収についても課題が浮き彫りとなりました。昨年10 月の1 ヶ月間に外国人患者を受け入れた病院のうち、18.9%が外国人患者による未収を経験しています。
病院あたりの未収金の発生は平均8.5 件、総額の平均は42.3 万円ですが、中には総額が100万円を超す病院もみられました。

(※1)厚生労働省「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(概要版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html
(※2)厚生労働省「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について(通知)医政総発0328 第1 号」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000497174.pdf

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号④

働き方改革の一環として注目すべきフレックスタイム制

4月に施行された働き方改革関連法のうち、フレックスタイム制は導入が進んでいませんが、比較的大きな効果が見込まれることから、その改正のポイントと総労働時間に関する例外について確認しておきます。

1.フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間の中で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めて働くことができる制度です。通常の労働時間制度であれば、始業が午前9時、終業が午後6時(途中1時間の休憩)の1日8時間労働というように、始業および終業時刻が固定的に決定されていますが、フレックスタイム制の場合、忙しい日については午前8時から午後8時まで11時間勤務し、比較的余裕がある日には午前11時から午後5時まで5時間勤務とすることなどにより、従業員が柔軟な働き方をすることができます。

2.清算期間を3ヶ月に延長

今回の大きな変更が清算期間の延長です。これまでフレックスタイム制は清算期間の上限が1ヶ月とされていましたが、これが3ヶ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。例えば7月が繁忙期で9月が閑散期の場合、7月は法定労働時間の総枠を超えて働く一方、9月は7月の法定労働時間の総枠を超えた分だけ減らして働くことができます。ただし、時間外労働となる割増賃金の取扱いは複雑なため、厚生労働省のリーフレットなどを参考にあらかじめシミュレーションしておくことが求められます。

3.新設された完全週休2日制の例外

これまで完全週休2日制であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまい、総労働時間のみの勤務であっても、時間外労働が発生することがありました。
例えば清算期間の暦の日数が30日の月で所定労働時間が8時間、所定労働日数が22日(完全週休2日で当月8日の所定休日)であった場合、総労働時間は176時間となりますが、法定労働時間の総枠は171.4時間であり、4.6時間については時間外労働として割増賃金を支払う必要がありました。
この取扱いが改正され、週の所定労働日数が5日(完全週休2日制)の従業員を対象に、労使協定を締結することで、法定労働時間の総枠を清算期間内の所定労働日数に8時間を乗じた時間数を労働時間の限度とすることが可能となりました。これにより、上記の例では、所定労働時間を176時間とし、その時間を勤務したとしても、時間外労働は発生せず割増賃金の支払いも不要となります。

フレックスタイム制の活用は、育児や介護、病気の治療等と仕事との両立だけでなく、従業員のより効率的な働き方のひとつとして考えることができます。フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などがございましたら、当事務所までお問い合わせください。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号③

社会保険の添付書類の廃止や署名・押印の省略の動き

現在、行政手続きのコスト削減のための様々な取組みが進められています。資本金1億円超等のいわゆる大企業では、2020年4月1日以後に開始する事業年度から電子申請が義務化されるなど、電子化による効率化、生産性の向上は注目のポイントとなっています。一方、電子化以外にも手続き自体の省略や、添付書類の省略が認められるようになっていることから、ここではそうした動きについて確認しておきましょう。

1.添付書類の廃止

社会保険の手続きでは添付書類が求められるものがありますが、今回、以下に該当する手続きについて添付書類が廃止されることとなりました。

①資格喪失届および被保険者報酬月額変更届
の届出の受付年月日より60日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合

なお、添付書類の廃止に伴い、事業所が適正な届出処理を行っているかを確認するため、年金事務所が適用事業所の調査を重点的に行うことにしています。添付書類を用意すること自体は不要ですが、該当するような手続きの場合には、必ず確認の記録を残しておきましょう。

2.署名・押印等の省略

社会保険の届出は、事業主が提出者となるものと、被保険者等の申請者が事業主を通じて提出するものがあり、後者については申請者の署名または押印が必要になります。
次の届出の署名または押印は、事業主が申請者本人が届出を提出する意思を確認し、各届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することにより、省略することができるようになりました。

①被保険者生年月日訂正届
②被扶養者(異動)届・第3号被保険者関係届
③年金手帳再交付申請書
④養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(申出の場合)
⑤養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(終了の場合)

なお、電子申請および電子媒体による申請では、署名または押印ではなく委任状を添付することになっていますが、この委任状が省略できることになりました。

3.適用開始時期と留意点

1および2の内容は2019年3月29日に、厚生労働省から日本年金機構へ通達されています。
通達の内容を確認すると、通達された日から適用されるように判断できますが、一方で2019年9月1日までは従前の例によることができるという記載もあり、年金事務所や事務センターによっては当面の間、添付書類や署名・押印が求められることもあるようです。
実務上は、管轄の年金事務所や事務センターに省略が認められるかを必ず確認の上、手続きを行うようにしましょう。

現状、届出書に被保険者等の署名または押印をもらうために、事業主と従業員の間で書類のやり取りが行われ、手続きが煩雑になったり、手続きに時間を要することになっています。
2のような取扱いにより、自社での書類の流れを整理し、業務効率化を目指したいものです。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号②

年次有給休暇と子の看護休暇の違いの整理

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の 総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:4歳の子どもを育てる従業員から、子どもが体調不良で病院に連れて行きたいので、
     子の看護休暇を取りたいという申し出がありました。当社の子の看護休暇は無給の
     ため、年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得を勧めようと思いますが、問
     題ありませんか。

社労士 :年休と子の看護休暇の内容について整理をしておきましょう。年休は入社してから 
     6ヶ月経過し、その期間の全労働日の8割以上を出勤した場合に付与される有給の休
     暇のことです。ストレス解消やリフレッシュの目的で付与される休暇ですが、取得
     目的は特に問われません。

総務部長:当社でも取得目的は様々で、旅行や銀行・役所に行く必要のある用事、自分の体調
     不良等があります。

社労士 :そうですね。一方、子の看護休暇は小学校に入学する前の子どもを育てている従業
     員が、子どもが病気になったりケガをしたりしたときに、看護のために取得できる
     休暇です。取得目的には子どもに予防接種や健康診断を受けさせることも含まれて
     いますが、これらの内容に限られています。なお、取得した日については無給でも
     構いません。

総務部長:そうですね。確か取得できる日数は、対象となる子どもが1人のときは1年に5日、2
     人以上のときは年に10日でしたよね。

社労士 :はい、その通りです。他にも細かな違いがありますが、年休は取得目的が問われな
     いのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定される点が従業員にとっては大きな違
     いになります。例えば、子の看護休暇は今回のように子どもが体調不良のときに取
     得できますが、自分が体調不良のときには取得できません。

総務部長:そうか、なるほど!申し出をしてきた従業員は、確かに年休があと1日しか残ってい
     ないと言っていました。

社労士 :そうでしたか。もしかしたら年休は、子どもの体調不良以外の理由で休みを取得し
     たいときに残しておきたいと考えているのかも知れませんね。

総務部長:そうですね。良かれと思って年休の取得を勧めようと考えていましたが、従業員な
     りに考えて申し出たことだと思いますので、このまま子の看護休暇で処理します。

社労士 :それが良いでしょう。ちなみに、子の看護休暇は無給で構いませんが、欠勤とは違
     い従業員の権利として取得できます。また、取得したことで会社が不利益な取扱い
     をすることは禁じられていますので、賞与の査定で勤務成績をマイナス評価にする
     ようなことがないようにご注意ください。

総務部長:無給であると欠勤と変わらないと思われがちですが、大きな違いがありますね。あ
     りがとうございました。

【ワンポイントアドバイス】
1. 年休は取得目的が制限されないのに対し、子の看護休暇は取得目的が限定的である。
2. 年休は有給の休暇であるが、子の看護休暇は無給でも構わない。
3. 子の看護休暇を取得したことに対し、不利益な取扱いをしてはならない。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)6月号①

働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金

新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。

1.助成金の概要

この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。

2.助成額

助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。

[計画達成助成]

雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。

[目標達成助成]

労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

3.活用にあたっての注意点

新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。

この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。

(次号へ続く)

医療事業所様向け情報(経営)5月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A
『休日と設定していた祝日に出勤を命じる場合の注意点』

Q:

これまですべての祝日を休日扱いとするルールにしてきましたが、祝日でも出勤を命じられる
ようにしておきたいと考えています。どのようなことに注意して進めればよいのでしょうか。

A:

祝日に出勤命令をすることが一時的で済む場合は、その日を休日にしたまま出勤を命じることが
考えられます。この場合、36 協定の締結、届け出を行っておくことを前提とし、協定の範囲内
で休日出勤を命じることとなります。また、勤務に応じた割増賃金の支払いが必要となります。
休日と定めていた日を所定労働日とするルールに変更する場合においては、変更自体が労働条件
の不利益変更に該当する可能性があるため、職員の合意を得た上で就業規則の変更・届け出を
行う必要があります。

詳細解説:

1.休日と割増賃金

休日とは職員が労働義務を負わない日を指しますが、これには法令で定められる法定休日(原則
1 週1 日)と、法定休日以外の医院が定めた所定休日の2 つがあります。休日出勤を命じるには、
時間外・休日労働に関する協定書(36協定)を締結の上、管轄の労働基準監督署へ届け出をし、
協定した範囲内で休日出勤を命じる必要があります。その際、法定休日に労働をした職員には
その時間に対して3 割5 分以上、所定休日で法定労働時間(原則1 週40時間、1 日8 時間)を
超える時間に対しては2割5 分以上の割増賃金の支払いが必要です。

2.祝日は休日にしなければならないか

就業規則の休日の条項に祝日と定めている場合、すべての祝日が労働義務を負わない日として
労働契約を締結されていると考えられます。しかし、休日は法定休日が確保されていれば必ずしも
祝日を休日にしなくても問題ないことから、昨今の祝日が増えている状況に備えて就業規則の
見直しを行ってもよいでしょう。

3.休日として設定されていた日を所定労働日に変更することは可能か

就業規則で祝日を休日と定めており、特定の祝日を所定労働日に変更する際には就業規則の変更が
必要です。しかし、職員にとっては労働日が増えることとなり不利益変更に該当することから、
職員に丁寧に説明するなどして合意を得ることが重要となります(労働契約法第8 条)。なお、
医院が一方的にルールを変更した場合には、職員の受ける不利益の程度や変更の必要性等に
よってルールの変更についての合理性があったか判断されます。
変更の合理性が認められない場合、その変更内容自体が無効となってしまうことから、職
員の合意を得た上で、変更した就業規則の届け出が必要です。

休日出勤を命じるにしても、医院の休日のルールを変更するにしても、できるだけ早い
タイミングで出勤を命じることの周知・連絡をし、的確な変更手続を行って気持ちよく出
勤してもらえるように配慮したいものです。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(経営)5月号②

一般診療所における在宅医療サービスの実施状況

高齢化の進展などにより、在宅医療サービスの必要性が高まっています。ここでは、2018(平成
30)年12 月に3 年ぶりに発表された調査結果※から、一般診療所における在宅医療サービスの実
施状況を、都道府県別にみていきます。

医療保険等によるサービス実施状況

上記調査結果から、都道府県別の在宅医療サービス(以下、サービス)の実施状況をまと
めると、右表のとおりです。
2017 年の医療保険等によるサービス実施一般診療所数は全国で約3.6 万施設、実施割合
は35.7%となりました。2014 年時点の約3.8万施設、38.3%と比べると、減少する結果にな
りました。
都道府県別では、東京都や大阪府をはじめ10 都府県で実施施設数が1,000 を超えました。
実施割合は、32 府県が全国平均を超えています。

介護保険によるサービス実施状況

介護保険によるサービス実施一般診療所数は全国で約1.1 万施設、実施割合は10.4%で
す。2014 年の約1 万施設、10.2%と比べると、増加しています。
都道府県別では、東京都と大阪府が1,000 施設を超えました。実施割合は22 府県が全国平
均を上回っています。
なお、医療保険等によるサービスでは往診が、介護保険によるサービスでは居宅療養管
理指導が最も多く行われています。

※厚生労働省「平成29 年医療施設(静態・動態)調査」ここで紹介した数値は、3 年に1 度
行われる静態調査(開設しているすべての医療機関を対象にした調査)による2017(平成29)年
9 月時点の結果です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450021&tstat=000001030908&cycle=7&tclass1=000001123595&tclass2=000001123598&second2=1

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)5月号①

個人版事業承継税制が創設

今回の税制改正で登場した「個人版事業承継税制」。設備投資額の大きな個人開業の事業承継
対策として、注目を集めています。場合によっては大きなメリットが享受できますが、期間や
手続きの負担等にも注意を要します。

10 年限定、事業承継の優遇制度

この制度は、個人事業者の事業承継を促進するために創設されました。具体的には、一定の
事業資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する、10 年間限定の制度です。
医療機関は診療科によって、診療機器が高額となることがあります。財産としての価値が膨
らむため、事業承継対策の一つとして、この制度が注目を集めています。

特定事業用資産の資産価値が高い時期の承継であれば、大きな税の優遇が期待できる制度
です。事業承継をお考えの場合には、注意点を踏まえた上で、この制度の活用も検討されてみ
てはいかがでしょうか。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)5月号④

時間単位年休を導入する際の注意点

年次有給休暇(以下、「年休」という)は1日単位での取得を原則としていますが、半日単位、
時間単位で取得することも認められています。特に時間単位年休は、従業員の都合にあわせて
柔軟に取得できることもあり、育児や介護、治療などとの両立の観点で従業員から導入の要望が
多く、導入を検討する企業もあるでしょう。そこで以下では、この時間単位年休を導入する
際の注意点を確認しましょう。

1.時間単位年休の導入要件

時間単位年休を導入するためには、過半数代表者等との間で労使協定を締結し、以下の
①~④の事項を定めなければなりません。併せて、就業規則に時間単位年休について規定
する必要があります。

①時間単位年休の対象者の範囲

対象者を定めるに当たり全従業員を対象にすることもできますが、製造ラインで一斉に
作業を行う場合など、時間単位年休を取得することが事業の正常な運営を妨げることがあ
ります。そのような場合、あらかじめ取得できる従業員の範囲を定めておきます。なお、
利用目的は従業員の自由となるため、育児や介護等、利用目的によって範囲を定めること
はできません。

②時間単位年休の日数

時間単位での年休取得は1年に5日が上限であり、5日以内で時間単位年休の日数を定めま
す。また、残日数(残時間数)は翌年へ繰り越すこともできますが、1年において時間単位
で取得できる日数は繰り越し分も含めて5日以内となります。

③時間単位年休1日の時間数

時間単位年休の1日当たりの時間数は所定労働時間を基に定めますが、1日の所定労働時間
に1時間未満の端数がある場合は、1日当たりで時間単位に切り上げることが必要です。そ
のため、所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位年休の1日当たりの時間数は8時間とな
ります。

④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

時間単位年休の最小単位は1時間であり、30分など1時間未満の時間を単位とするとはでき
ません。また、1時間以外の時間(2時間、3時間など)を単位とするときには、その時間数
を定めておきます。

2.時間単位年休の残日数管理

時間単位年休を導入した場合、1日単位だけでなく時間単位について取得時間数と残日数
(残時間数)を管理していく必要があります。これまでよりも年休の管理が煩雑になること
から、どのように管理していくか、事前に検討しておきましょう。

4月より年休の年5日取得義務化がスタートしましたが、この時間単位年休については5日
のカウント対象とはなりません。働き方改革の一環として導入を検討する企業もあるかと思
いますが、1日単位と半日単位の年休で確実に5日を取得できるようにしましょう。

(来月に続く)

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