医療

医療事業者様向け情報(経営)12月号②

医療機関の年末賞与 1 人平均支給額の推移

今年も年末賞与支給の季節を迎えます。ここでは病院と一般診療所の別に、直近5 年間
(平成25 年~29 年)の年末賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを、
事業所規模別にご紹介します。

1 人平均支給額は減少傾向に

厚生労働省の調査結果※から、1 人平均支給額などの推移をまとめると、
以下のとおりです。

・病院
5〜29 ⼈規模は、26 年、27 年と30 万円台だった1 ⼈平均⽀給額が、29 年は約22 万円と
減少しました。データのなかった28 年を除いて、2 年連続の減少です。30〜99 ⼈規模の
1 ⼈平均⽀給額は増減を繰り返しています。29 年は約29 万円で、28 年から5.2%の減少、
30 万円台を割り込みました。

・ ⼀般診療所
29 年の1 ⼈平均⽀給額は、どちらの規模も28年より減少し、20 万円台を割り込みました。
30〜99 ⼈規模は特に減少幅が⼤きく、28 年に⽐べて24.8%の減少です。きまって⽀給する
給与に対する⽀給割合は、5〜29 ⼈規模が0.94 ヶ⽉分、30〜99 ⼈規模が0.82 ヶ⽉分と、
どちらも1 ヶ⽉分を下回る割合になりました。

今年の支給額は、どのような変化をみせるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
詳細は次のURL のページからご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)12月号①

医療機関における「経営力向上計画」

「経営力向上計画」は、「中小企業等経営強化法」(平成28 年7 月施行)に基づいて
策定する計画で、認定されると税制の優遇や金融支援を受けることができます。
医療機関での活用イメージをご紹介します。

医療,福祉業の認定数、業種別で第4 位

「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業・小規模事業者は、固定資産税の軽減措置等
の税制面の支援や、低利融資、信用保証等の資金繰り等の支援を受けることができます。
中小企業庁の発表によると、平成30 年8 月31 日現在、68,532 件が認定されています。
「医療機関が取得する医療機器や建物附属設備については即時償却や税額控除は適用されない」
等の制約もあり、医療,福祉業の認定数は3,681件で全体の5.4%程度ですが、4 番目に多い業
種となっています。

医療分野での活用法

医療分野における「経営力向上」として、中小企業庁の事例集では、歯科用CAD/CAM の導入で
治療期間を大幅短縮して患者満足度の向上を図る事例、医療器材自動洗浄機の導入で省力化・
効率化する事例が紹介されています。
医療は「人」が支えるサービス業。厚生労働省の指針も、人材確保と定着、医療等従事者の
勤務環境への配慮を重視しています。診療所等については、以下の実施方法が例示されていま
す。ぜひ参考になさってください。

【実施方法例】

サービス品質向上 ・地域のニーズや他の医療機関等の存在をふまえた質の向上の実施(治療の選択肢の複数定時)
コストの把握・効率化 ・医療材料や医薬品について、近隣の医療機関等と連携した共同購入
・内部効率化のための、バックオフィス業務のICTツール活用

マネジメント

・曜日ごとの医師等の柔軟な配置
・地域にある他の病院又は診療所、介護事業者等と連携
ICT投資・設備投資 ・電子カルテ等のICTの利活用
・地域の他の病院等とのデータ共有
・ICT利活用の為の人材確保
・エネルギー使用量の見える化、省エネ設備導入、エネルギー管理体制の構築等を通じた省エネ推進
その他 ・介助・介護に資するロボットの導入による業務の負担の軽減

 

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)12月号④

年次有給休暇取得義務化への対応に活用できる計画的付与制度

働き方改革関連法の成立により2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」
という)が付与される従業員について年5日の取得義務化が始まります。
これにあわせて年休の計画的付与制度を導入することを検討している企業もあるかと
思いますので、その手続きについて確認しておきましょう。

1.年休を取得する時季

年休の取得については、従業員が希望する時季に年休を与えることが原則となっています。
ただし、従業員が請求した時季に与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合には、
他の時季に変更することができることになっています(年休の時季変更権)。
また、労使協定を結ぶことで、5日を超える分については計画的に会社が与える時季を
決めることができます(年休の計画的付与)。

2.計画的付与の方法

年休の計画的付与の方法としては、以下の3つの方法が挙げられます。

①企業全体等の休業による一斉付与

企業全体で年休を取得する日を決める方法で、製造業など一斉に休みにした方が効率的な
業態に向いている方法です。

②班・グループ別の交替制付与

企業全体で一斉に休みを取ることが難しい業態で、班・グループ別に交替で年休を与える
方法です。流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業で用いられることが
多くなっています。

③個人別付与

年次有給休暇付与計画表を作成することにより、与える日を従業員ごとに個人別で定め
る方法です。夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など、
従業員の個人的な記念日を優先的に与えるケースも多くあるようです。

3.計画的付与を導入する際の手続き

計画的付与を実施するためには、就業規則に計画的付与により年休を与える旨を
記載した上で、労使協定を締結する必要があります。
労使協定で定める項目は以下のとおりです。

①計画的付与の対象となる従業員(あるいは対象から除く従業員)
②対象となる年次有給休暇の日数
③計画的付与の具体的な内容
④年次有給休暇を持たない従業員の取扱い
⑤計画的付与日の変更

なお、労使協定の労働基準監督署への提出は不要ですが、制度を導入するために
就業規則を修正した場合、届出が必要です。

年休の取得義務化により、年10日以上の年休が付与される従業員に対して、企業は何らか
の対応が必要になります。特にこれまで年休の取得率が低い企業や、1日も取得していない
従業員が多い企業では、計画的付与の導入も含め早急な検討が必要になります。就業規則の
見直しや労使協定の締結においてご不明点があれば、当事務所までご連絡ください。

(1月号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)12月号③

省略が認められた雇用継続給付
申請時の従業員の署名

社会保険の各種給付を受けるときなどには、申請書に従業員(被保険者)本人の
記名押印または署名(以下、「署名」という)が必要になります。2018年10月より、
雇用保険の雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付)について、
一定の手続きを行うことで、従業員の申請書等への署名が省略できるよう手続きが
簡素化されました。そこで以下では、高年齢雇用継続給付の手続きを例に挙げて、
簡素化された手続きの内容を確認することにします。

1.雇用継続給付の申請手続きの流れ

高年齢雇用継続給付を受給するときには、まず「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金
証明書」および「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続支給申請
書」をハローワークに提出します。これらを提出することにより、対象となる従業員の高
年齢雇用継続給付の受給資格があるかを確認でき、また、給付額の基礎となる賃金月額が
決定します。
その後、原則として2ヶ月に1回、ハローワークから指定された支給申請の時期ごとに
支給申請の手続きを行うことで、従業員に給付金が支給される仕組みとなっています。

2.簡素化された手続き

1.に掲げた手続きでは、それぞれの申請書等に被保険者が署名する欄があり、申請の都
度、署名が求められることから、会社と被保険者間で申請書等のやり取りが頻繁に発生し
ていました。
これを簡素化するために、会社が申請内容等を被保険者に確認し、被保険者の合意のも
と「記載内容に関する確認書・申請等に関する同意書」(以下、「同意書」という)を作
成し保存しておくことで、申請書等への署名を省略することが認められました。

3.署名を省略する場合の申請書

2.に掲げる方法により被保険者の署名を省略して申請書等を提出する際には、通常通り
申請書等を作成した上で、署名する欄に「申請について同意済」と記載することになって
います。なお、この署名の省略については電子申請で申請するときも同様です。

ここでは、高年齢雇用継続給付を例としてとり上げましたが、育児休業給付および介護休
業給付においても同様の取扱いとなります。特に育児休業中の従業員とは、郵送での申請書
等のやり取りが多いかと思いますので、会社・従業員双方の利便性を考慮し、このような仕
組みを積極的に活用したいものです。なお、同意書についてハローワーク等に提出する必要
はありませんが、完結の日から4年間の保存が求められます。同意書を適切に保存していな
い場合は、不正とみなされる場合があるため、注意しましょう。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)12月号②

把握が必要となる管理監督者の労働時間の状況

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:働き方改革関連法の時間外労働の上限規制に対応するため、取組みを進めて
     います。その結果、一部の部門で、部下に一定時間以上の残業をさせること
     ができず、溢れた業務を管理監督者がカバーするという状況が発生しています。
社労士 :そうですか。いまの状態は部下の業務が、管理監督者に移っているだけです
     ので、問題がありますね。管理監督者の過重労働が懸念されます。
総務部長:当社では管理監督者も含めて、原則午後10時以降の残業を禁止し、また法定
     休日についても出勤を禁止するなど、最低限の過重労働対策はできているよ
     うに思いますが、実際、管理監督者が何時に出社し、何時まで残っているの
     かを正確に把握できていない状況にあります。
社労士 :管理監督者であっても、深夜労働(午後10時から翌朝5時まで)に対する割増
     賃金の支払いが必要となります。原則午後10時以降の残業を禁止していると
     いう話でしたが、もし管理監督者が午後10時以降に業務を行っていた場合は、
     どのような手続きを行うことにしているのでしょうか?
総務部長:はい、深夜労働については一般従業員と同様に残業申請を行い、本人の申請
     に基づいて割増賃金を支給しています。当社では一般社員についてはタイム
     カードを利用していますが、今後は管理監督者についても、タイムカードに
     より労働時間を把握した方がよいのでしょうか?
社労士 :はい、そうですね。そもそも労働時間の把握については、「労働時間の適正
     な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2017年1月20日
     策定)」に基づいて行うことになりますが、管理監督者は対象者から除かれ
     ています。しかし、働き方改革関連法の一つとして労働安全衛生法が改正さ
     れ、2019年4月より、過重労働対策の観点から、タイムカードやパソコンのロ
     グオフの記録など客観的な方法その他適切な方法により、労働時間の状況を
     把握していく必要があるとされました。
総務部長:割増賃金の支払いではなく、過重労働対策から労働時間の状況を把握する必要
     があるのですね。それでは来年4月より、管理監督者についてもタイムカード
     を利用できるように準備を進めたいと思います。

【ワンポイントアドバイス】
1. 労働安全衛生法が改正され、2019年4月より管理監督者についても過重労働対策から労働
時間の状況の把握が必要となる。
2. 管理監督者は、労働基準法の労働時間や休憩、休日等の規定は適用されないが、深夜労働
に対する割増賃金の支払いは必要である。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)12月号①

2019年4月より電子メール等による労働条件の明示が可能に

雇用契約を締結する際、会社は労働基準法の定めに従い、従業員に対して労働条件を明示する
必要があります。明示する労働条件の一部については、書面で行うことが義務付けられて
いますが、労働基準法施行規則が改正され、2019年4月から書面以外で明示する方法が
認められることになりました。

1.書面での明示が必要な労働条件

労働基準法で定められている労働条件の明示事項は全部で14項目あります。そのうち、
以下の①~⑥(⑤のうち、昇給に関する事項を除く)については、従業員への書面の
交付による明示が義務付けられています。

①労働契約の期間に関する事項
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
③就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
 並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
⑤賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの
 方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

2.電子メール等を用いた明示

今回、1.に掲げた項目について、従業員が希望した場合にはファクシミリの送信や
電子メールなど、書面以外により明示することが認められることになりました。
ただし、電子メール等で明示するときには、従業員自身が電子メール等の記録を
出力することにより書面を作成することができるものに限るとされているため、
この条件を満たしているかを確認しておく必要があります。

3.パートタイマーに必要な明示事項

パートタイマーやアルバイトなどのパートタイム労働者については、1.に掲げた
項目に加え、パートタイム労働法により「昇給の有無」、「退職手当の有無」、
「賞与の有無」、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」の
4つの項目について、文書の交付等による明示が義務付けられています。
上記4つの項目については既にファクシミリの送信、電子メールの送信が
認められています。ただし、電子メール等で明示するときには、2.と同様に
従業員自身が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することが
できることが条件となっています。

特に有期契約のパートタイム労働者が多い企業では、労働条件通知書を書面で作成し、
交付することに多くの時間を割いているかと思います。また、労働条件の明示が適切に
行われていなかったことでトラブルが発生することもあります。電子メール等での交付も
含め、これを機会に労働条件の明示の徹底を進めておきたいものです。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)11月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A
『職員が麻しんに感染した場合、法令を根拠として就業を
制限することができるのか?』

Q:ある職員が麻しん(はしか)に感染してしまったそうです。本人は出勤する
  つもりでいるようですが、他の人への感染を防ぐため、当該職員を休ませたいと
  思っています。法的に可能なのでしょうか。また、休ませた場合の賃金の取扱いは
  どのようにしなければならないのでしょうか。

A:感染の危険性が高い疾病については、利用者や他の職員が感染してしまうおそれが
  あるため、感染症法等の法令に就業制限に関する取扱い方法が定められています。
  麻しんの場合においては、法令上、就業を制限できない感染症と考えられ、
  施設の判断で休ませた場合は、休業手当の支払いが必要になります。

詳細解説:

1.法令に基づく就業制限等の措置

感染症法による就業制限は、末尾参考の1 類から3 類、または新型インフルエンザが該当し、
都道府県知事の通知により、保健所等からの指示に基づいて対応することとなります。
一方、労働安全衛生法による就業禁止は、あらかじめ産業医や専門の医師に聞いた上で
対応することが規定されています。

2.就業制限の際の給与の取扱い

感染症にかかり休む場合、本人が希望すれば年次有給休暇の取得も可能ですが、
今回のように職員が出勤するといった場合、就業制限の対象となる感染症か否かで
給与の取扱い方法が変わってきます。
具体的には、就業制限の対象である感染症にかかって当該職員を休ませた場合、
使用者の責に帰すべき事由にはあたらないため、労働基準法第26 条に基づく
休業手当の支払いは不要です。
しかし、今回の麻しんのように就業制限とされていない5類の感染症にかかり、
施設の判断によって休ませた場合は、休業手当の支払いが必要となると考えられます。
職員が罹患した疾病によって、就業制限の取扱い方法が異なります。
まずは当該職員の治療に配慮しつつ、感染が拡大しないよう就業を認めるか否か、
それにともなう給与の取扱い方法について適切に対処したいものです。

[参考:感染症法に定められる感染症の分類]
・1類感染症:エボラ出血熱、痘そう、ペスト、ラッサ熱等
・2類感染症:急性灰白髄炎、結核、ジフテリア等
・3類感染症:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症等
・4類感染症:E型肝炎、A型肝炎、マラリア等
・5類感染症:インフルエンザ(鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ等は除く)、
       ウイルス性肝炎(E型肝炎、A型肝炎を除く)、麻しん等
これらの他、類型とは分類されていないものの、新型インフルエンザ等感染症・
指定感染症・新感染症等も感染症と定義されています。
なお、4 類、5 類については、感染症法上、就業制限の対象とはなっていません。

(12月号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)11月号②

都道府県別 介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費

今年8 月に発表された調査結果※によると、介護保険第1 号被保険者(65 歳以上)の数は、
平成28 年度末時点で3440 万人。最近10 年ほどの間でみても、700 万人ほど増加しています。
また、介護保険給付費も高齢化等によって増加しています。ここでは上記調査結果から、
都道府県別に介護保険第1 号被保険者1 人あたり給付費をみていきます。

全国平均は25.2 万円

平成28 年度の第1 号被保険者1 人あたり給付費を都道府県別にまとめると、以下の
リンク先のとおりです。
全国平均は25.2 万円で、居宅介護(介護予防)サービス(以下、居宅サービス)が
12.94万円、地域密着型介護(介護予防)サービス(以下、地域密着型サービス)が3.97 万円、
施設介護サービス(以下、施設サービス)が8.3 万円となりました。

最高額は島根県の30.99 万円

都道府県別では、1 人あたり給付費は島根県の30.99 万円が最も高く、唯一30 万円を
超えました。
最も低いのは埼玉県の19.92 万円で、両県の額には10 万円以上の開きがあります。
サービス別では、居宅サービスは沖縄県が、地域密着型サービスは鹿児島県が、
施設サービスは新潟県と鳥取県が最も高くなりました。全国平均と比べると、
居宅サービスは23 都府県、地域密着型サービスは31 道県、施設サービスは34 府県が
全国平均より高くなりました。
サービス別の給付費割合をみると、居宅サービスの給付費割合が高い地域がある一方、
施設サービスの割合が高い地域があるなど、地域によって違いがあることがわかります。
貴施設の所在地の状況はいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成28 年度介護保険事業状況報告(年報)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/index.html

医療事業者様向け情報(経営)11月号①

来年10 月の介護報酬改定に向けた動き

消費税率の引上げが、いよいよ来年10 月に迫ってきました。消費増税は福祉施設の
負担増につながるため、その補てんとして行われる介護報酬改定にも要注目です。
次の改定では「介護人材の処遇改善」も実施されます。

まずは8%増税後の現状調査を実施

介護保険サービスの消費税は非課税ですが、物品等の仕入れは非課税にはなりません。
増税は福祉施設の負担増に直接的につながります。
この負担増を補てんするために、税率引上げの都度、介護報酬改定が行われています。
来年の増税に向け、次の改定の準備も始まりました。改定は、消費税率引上げに合わせ、
来年10 月に実施される予定です。
まず手始めに、事業団体に対しヒアリング調査が実施されています。
8%引上げ時の対応の評価と、10%引上げ時の対応についての意見を聴取した上で、
今後の介護保険サービスに関する消費税の取扱い等が検討される予定です。
議論が本格化するのは年末以降となる見込みです。
同時期に、来年度の税制改正大綱が発表され、消費増税に向けた動きが一気に加速します。
医療分野で講じられる消費税対応からも目が離せません。引き続き、ご注目ください。

全産業平均並みの賃金水準目指す

来年10 月実施予定の介護報酬改定では、介護人材の処遇改善も併せて実施されます。
このことは、昨年末に閣議決定された「新しい経済パッケージ」に以下のように
記載されています。

他の介護職員などの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう
柔軟な運用を認めることを前提に、介護サービス事業所における勤続年数10 年以上の
介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、
公費1000 億円程度を投じ、処遇改善を行う。

8 月末に厚生労働省より提出された来年度の予算要望には、「介護の受け皿整備」
として483億円、「介護人材の確保・処遇改善」として60億円が計上されています。
なお、厚生労働省介護給付費分科会ではこの件に関し、「事業所に一定の裁量を
認めるべき」「職場環境改善も要件に盛り込む必要がある」等の意見が寄せられる一方で、
「勤続10 年月8万円」が独り歩きすることを危惧する指摘もありました。
こちらも進展にご注意ください。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)11月号④

2018年10月より厳格化された協会けんぽの被扶養者認定

健康保険では、一定の要件を満たした被保険者の家族も被扶養者として保険給付を
受けることができます。
被扶養者となるためには、協会けんぽに「健康保険被扶養者(異動)届」
(以下、「異動届」という)を届け出ることになりますが、2018年10月1日から、
被扶養者の認定事務が変更となり、異動届に添付する書類が変わりました。

1.被扶養者の範囲

健康保険の被扶養者となることのできる家族は、以下のとおりとなっています。
①被保険者の直系尊属、配偶者(内縁関係を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、
 主として被保険者に生計を維持されている人
②被保険者と同居し、主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
  a.①を除く被保険者の三親等以内の家族
  b.被保険者と内縁関係の配偶者の父母および子
  c.b.の配偶者が亡くなった後における父母および子
なお、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、これらに該当しても
被扶養者になることはできません。

2.変更となる被扶養者認定

今回は、日本国内に住む家族を被扶養者として認定する際に、身分関係と
生計維持関係の確認について、これまで行われていた申立てのみによる認定ではなく、
証明書類に基づく認定が行われることになりました。
具体的には、届出に際して下表に示す書類の添付が必要になります。

従業員が入社するときには、家族のものも含めマイナンバーの回収を行い、住民票の写しを
提出書類として求めている会社は多くあるかと思います。
また、健康保険の被扶養者は、所得税法上の控除対象の配偶者または扶養家族と
なっていることが多く、添付書類が必要な対象者は限られると考えますが、確実に確認を
するようにしましょう。

(12月号に続く)

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