医療
医療機関でみられる人事労務Q&A
『採用選考時の履歴書はどのような点をみて面接に臨むのがよいか』
Q:
このところ、入職してもすぐに退職してしまう職員が多いため、採用選考のときにできるだけ
長く勤めることができそうか見極めたいと思っています。今回の応募者からは履歴書を提出
してもらっているのですが、どのような点を確認して面接に臨むとよいでしょうか。
A:
履歴書や数回の面接だけで人柄や能力のすべてを見極めることは非常に難しいですが、履歴書
から前職などの勤務歴を把握すること以外に、志望意欲などを推測することも可能です。
そのため、履歴書から読み取れること、読み取れないことをまとめた上で面接を行うことが
できれば、効果的な選考が期待できます。
詳細解説:
応募者が提出する履歴書からは、記載されている事実の情報だけではなく、働くことに対する
意識やスキルを推測できる部分があります。例えば、履歴書を丁寧に作成していない人材は、
実際の仕事でも丁寧さに欠ける可能性があるといったことです。履歴書の記載内容や項目から
読み取れる、応募者の傾向について考えましょう。
1.応募先の医院にあった志望理由や職務経験の記載がない
応募先である医院を加味しない志望理由の記載がある、これから就く予定の仕事に活かせる
経験やスキルがあるのにもかかわらず記載がない、ということがあります。この場合は、
働くことへの意識や応募した医院への志望度が低い、という推測ができます。また、自己分析や
希望する仕事への理解が浅い、ということも想定できます。このような人は実際に働いても、
意欲的に勤務しない、あるいはすぐに退職する可能性があります。
2.十分な情報が記載されていない
最近では、パソコンで作成された履歴書が見受けられるようになりました。この場合、応募者が
一定のパソコンスキルを有していることが考えられる反面、オリジナルの履歴書を作成することが
できるため、応募者自身が都合のよいように項目を削除したり、スペースを減らしたりすることが
でき、結果、採用する側にとって十分な情報が記載されていない可能性があります。パソコンで
作成されていること自体が悪いのではありませんが、履歴書に記載されている情報では十分でない
可能性があることを、念頭に置いておきましょう。
その他、必要に応じて志望理由書や職務経歴書の提出を求めることや、面接の際に通常履歴書には
記載しない前職の退職理由や仕事をしていない期間がある場合の理由の確認などを行い、応募者に
関する情報が不足しないよう、選考を進めたいものです。
(来月に続く)
一般診療所の開設・廃止状況
一般診療所の開業や廃業が年間にどのくらい発生しているか、ご存じですか。
ここでは2018 年12 月に発表された調査結果※から、全国の一般診療所の開設や廃止等の状況を
みていきます。
10 万件を超える一般診療所数
厚生労働省によると2012 年以降、全国の一般診療所数は10 万件程度で推移しています。
また上記調査結果から、2017 年には101,471 件の一般診療所が存在し、毎年、開設や廃止等に
よる増減があります。
開設・廃止等の状況
一般診療所の開設や再開、廃止や休止(以下、開設・廃止等)の状況をまとめると、下グラフ
のとおりです。開設・再開、廃止・休止ともに2014 年に大きく増加しています。
さらに詳しく、直近10 年間の開設・廃止等の推移を詳細にまとめると、下表のとおりです。
開設は2014 年に7,000 件を超えて以降、7,000件台で推移しています。廃止は開設と同様に
2014 年に大幅な増加を示し、2017 年には7,000件も突破しました。再開は200~400 件台で、休
止は500~1,000 件程度の間で増減を繰り返しています。
この結果をみる限り、開設・廃止等は3 年ごとに増加する傾向があるようです。
事業承継への対応は早めに
新規開業はもちろん、医療法人化による法人開設と個人の廃止、医師の高齢化等による廃止
や休止など、開設・廃止等の理由はさまざまです。とはいえ、医師の高齢化が進展しているこ
とから、一般診療所での事業承継は今後増加することが予想されます。準備が必要な医療機関
では、早めに対策を講じていくことがスムーズな事業承継に役立ちます。
※厚生労働省「平成29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
全国の医療施設を対象にした調査です。ここで紹介したデータは、前年10 月から9 月までの1 年間の動きを、その年の数字としていま
す。詳細は次のURL のページからご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/
(次号に続く)
平成31 年度税制改正 医療機関編
平成31 年度税制改正大綱が発表されました。その中から、医療機関に関連の深い項目に
注目します
(※実際の改正内容については、改正法令の公布後に官報等でご確認ください)。
消費税問題は診療報酬改定で対応
最も注目されていた10 月の消費税率引上げへの対応は、税制による手当ては行われず、
診療報酬改定のみで解決することとなりました。
医療に係る設備投資減税の拡充・延長
現行の医療用機器の特別償却制度が対象機器見直しの上で2 年延長される他、右の2 つの
設備投資について減税が実施される予定です。
社会医療法人等の認定要件見直し
認定要件の一つ「社会保険診療収入等」の内容に新たに「障害福祉サービスの給付」が
追加されます(平成31 年3 月改正予定)。
10 月の消費増税対応改定 改定率が決定
上述のとおり、税制において対処は行われませんが、消費税率引上げと共に、診療報酬改定等が
実施されます。その改定率が決定しました。
診療報酬改定は、全体で+0.41%でした。
この内訳は、医科+0.48%、歯科+0.57%、調剤+0.12%です。
同時に実施される薬価等の改定については、薬価はマイナス改定で▲0.51%、
材料価格は+0.03%です。
(次号に続く)
2019年4月より事務手続きが大幅に簡素化される一括有期事業の手続き
労働保険では、本店、支店、工場、事務所のように、一つの経営組織として独立性を持った
経営体を「事業」とし、その事業ごとで適用を行うことを原則としています。この事業は、
事業の性質上、事業の期間が予定されているか否かにより、継続事業と有期事業に分けられます。
建設の事業や立木の伐採の事業等は、一定の目的を達するまでの間に限り活動を行う事業であり、
有期事業に分類されます。2019年4月から、この有期事業に関する事務手続きが一部変更になる
ことから、変更内容を確認しておきましょう。
1.一括有期事業の対象となる事業
有期事業は、その事業ごとに労働保険の成立手続きを行う必要があります。ただし、それぞれの
有期事業が次のすべての要件に該当したとき、それらの事業は法律上、一つの事業とみなされ、
継続事業と同様に保険料の申告等を行うことになります。これを一括有期事業と呼んでいます。
①事業主が同一人であること。
②建設の事業または⽴⽊の伐採の事業であること。
③事業の規模について、概算保険料額が160万円未満であって、かつ、建設の事業においては、
請負⾦額(消費税額を除く)が1億8,000万円未満、⽴⽊の伐採の事業においては、素材の
⾒込⽣産量が1,000⽴⽅メートル未満であること。
④建設の事業においては、事業の種類が、労災保険率表における事業の種類と同一であること
(一部例外あり)。
⑤事業に係る保険料納付の事務所が同一で、かつ、一括事務所の所在地を管轄する都道府
県労働局の管轄区域、またはそれと隣接する都道府県労働局の管轄区域内で⾏われるも
のであること(地域要件)。
2.一括有期事業開始届の廃止
一括有期事業においてそれぞれの事業を開始したときには、翌月10日までに一括有期事
業開始届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。
今回の改正では、一括有期事業開始届が廃止され、2019年4月1日以降に開始する有期事
業は、提出が不要となります。
3.一括有期事業の地域要件の廃止
1.の⑤に挙げたとおり、一括有期事業が可能となる事業には、地域要件が定められてお
り、定められた地域の範囲外で行われる事業は一括することができず、個別に有期事業と
して労働保険の事務手続きを行う必要があります。
この地域要件も廃止され、2019年4月1日以降に開始する有期事業は、遠隔地で行われる
有期事業も含めて一括して事務手続きを行うことができます。
有期事業が多くある企業では、一括有期事業開始届を毎月作成し、届出することの事務手
続きの負担はかなり大きいものです。また、広域で有期事業を行っている企業では地域要件
を満たすことができない有期事業について一括することができず、この事務手続きの負担も
かなり大きいものでした。変更点を踏まえ、適切な事務手続きを進めることにしましょう。
(来月号に続く)
平成31年度より上限が変更される任意継続被保険者の標準報酬月額
会社を退職する従業員が退職後に加入できる健康保険は複数あります。その一つが退職前に
加入していた健康保険に退職者が任意で継続的に加入する「任意継続」です。今回、
この制度における保険料の上限が変更となることから、制度の概要と変更点をまとめて
おきましょう。
1.職後の健康保険
退従業員が会社を退職し、健康保険の被保険者資格を喪失した後に利用できる健康保険の
選択肢は、主に①任意継続被保険者となる、②健康保険の被扶養者となる、③国民健康保
険の被保険者となるの3つがありますが、それぞれ加入資格や保険料の負担額が異なりま
す。
2.任意継続被保険者とは
会社を退職して資格を喪失した後でも、退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期
間があれば、退職日の翌日から20日以内に申請することで任意継続被保険者になることが
できます。その際の保険料は退職時の退職者自身の標準報酬月額により決定されますが、
前年9月30日(※)における協会けんぽの全被保険者の標準報酬月額の平均額を標準報酬
月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額が上限となっています。なお、
在職中は保険料を会社と折半で負担していましたが、退職後は任意継続被保険者が全額を
負担します。加入できる期間は最長2年間です。
※1月から3月までの標準報酬月額については、前々年
3.平成31年度の標準報酬月額の上限変更
2.の上限は毎年度見直されることとなっており、平成31年度は全被保険者の標準報酬月
額の平均額が291,181円になったことに伴い、上限となる標準報酬月額が28万円から30万円
に引き上げられることになりました。
今回の変更は、ここ数年に亘る最低賃金の大幅引き上げや人手不足に伴う賃金の引き上
げが影響しているものと推測されます。なお、平成31年4月より前に任意継続に加入してい
る被保険者で、標準報酬月額の上限が適用されている人についても自動的に上限の変更が
適用されるため、負担している健康保険料が増加します。
任意継続被保険者の手続きは退職後のことであるため、通常従業員が自分で行うものです
が、従業員から任意継続をする際の保険料等について会社に問い合わせがくることもありま
す。アドバイスできるように任意継続の仕組みを理解しておくとよいでしょう。また、任意
継続被保険者となる手続きは会社を管轄する都道府県支部ではなく、従業員の住所地にある
協会けんぽの都道府県支部で行うため、この点についても伝えておくとよいでしょう。なお、
健康保険組合に加入している方については、組合ごとに標準報酬月額の上限が異なるため、
組合へご確認ください。
(次号に続く)
4月より作成が必要となる年次有給休暇管理簿
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:4月より年10日以上の年次有給休暇(以下、「年休」という)が付与される
従業員に対し、年休を付与した日(基準日)から1年以内に少なくとも5日の
年休を取得させることが必須になると聞きました。今のところ最初から年休
の取得日を会社が指定するのではなく、従業員が自主的に5日の年休を取得
することにより対応したいと考えています。よって従業員が確実に年次有給
休暇を取得するための管理が必要だと考えています。
社労士 :そうですね。全従業員が自主的に5日以上の年休を取得できれば問題はありま
せんが、1人でも5日未満の従業員がいると法違反になります。まずは5日以上
の年休を確実に取得するように周知するとともに、基準日から一定期間が過
ぎたときに、取得日数が5日に満たない従業員を洗い出す必要があるでしょう。
その後、必要に応じて会社が取得時季を指定する方法も考えることになりま
す。
総務部長:なるほど。そのような流れになると、年休の取得日数の管理が重要になりま
すね。
社労士 :はい。今回の法改正で、会社には年次有給休暇管理簿(以下、「年休管理
簿」という)を作成し、3年間保存することが義務となりました。年休管理簿
には従業員ごとに、①年休を取得した日、②基準日、③基準日から1年以内に
取得した年休の日数を記載することになります。決められたフォーマットは
ないため会社ごとに自由に作成でき、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作成
することも認められています。
総務部長:なるほど。現在は勤怠を管理するためのシステムを導入しており、そのシス
テム上で従業員が年休取得の申請を行う流れになっています。システムで従
業員ごとの基準日を設定することにより、勤続年数に応じた年休日数の付与
も自動的に行われるため、このシステムから年休管理簿が出力できるかを確
認しようと思います。
社労士 :そうですね。そのような方法ができると比較的、手間を掛けずに年休管理簿
の作成・保存をすることへの対応が終わりそうですね。法律で作成・保存が
必要な帳簿に年休管理簿が加わることで、今後、労働基準監督署の調査が行
われるときに、賃金台帳や出勤簿とともに提出が求められることが想定され
ます。そのような視点においても確実な作成・保存をお願いします。
【ワンポイントアドバイス】
1. 4月よりすべての会社に年休管理簿の作成が義務付けられる。
2. 年休管理簿には、労働者ごとに年休を取得した日、基準日、取得日数を記載する。
3. 年休管理簿は、年休を付与する期間中および期間満了後3年間の保存義務がある。
(次号に続く)
年次有給休暇の取得義務化に関する実務上の注意点
働き方改革関連法が順次施行されることに伴い、4月から年10日以上の年次有給休暇
(以下、「年休」という)が付与される従業員について、会社は年5日の年休を確実に
取得させることが義務となります。この年休の取得義務化に関する通達が、昨年12月に
厚生労働省より発出されたことから、実務上の注意点を確認しておきましょう。
1.取得日の指定と就業規則の変更
年休の取得義務化により、会社は年5日の年休について、従業員に取得を希望する時季を
聞き、その希望を尊重しつつ取得日を指定し、取得させる必要があります。ただし、従業員
が自ら取得した日数や労使協定による計画的付与で取得した日数(いずれも取得する予定
の日数を含む)はこの5日から差し引くことができます。
なお、今回新設された使用者による時季指定を行う際には、就業規則に時季指定の対象
となる労働者の範囲や時季指定の方法などを記載する必要がありますので、就業規則の変
更を忘れずに行うようにしましょう。
2.取得義務化の対象者
今回の取得義務化の対象者には、管理監督者や年10日以上の年休が付与されるパートタ
イマーも含まれます。また、年度の途中に育児休業等から復帰した従業員も対象者となる
ため、復帰後に年5日を取得させる必要があります。ただし、復帰した日によっては、年休
を取得させることとなる残りの期間の労働日数が、会社が取得日の指定を行う必要のある
年休の残日数より少なく、5日を取得させることが不可能なこともあり、このような場合は
対象になりません。
3.年5日の対象となる年休の単位
年休は、1日単位で取得することが原則ですが、通達で半日単位での取得も認められてい
ます。また、労使協定を締結することで時間単位での取得も認められています。今回の取
得義務化では、半日単位の年休については、取得義務化となる5日から差し引くことが認め
られます。これに対し、時間単位の年休については、会社が取得日を指定する年休に含め
ることはできず、従業員が自ら取得したときであっても、取得義務化となる5日から差し引
くことはできません。
既に時間単位の年休の制度を導入している会社はもちろんのこと、年休の取得率を向上
させるため、より柔軟に取得できる時間単位の年休の導入を検討する会社も、導入前にこ
の点を押さえておきましょう。
年休の取得義務化では、従業員に確実に年休を取得させる必要があります。仮に、会社が
指定した取得日に、従業員が取得を希望せず勝手に勤務をするというケースも想定されます。
その場合は、その日について年休を取得したとは判断されません。その結果、年5日の年休
を取得しない従業員が発生したとしても、法違反の指摘を免れることはできません。罰則が
定められた制度であり、法律の施行が4月に迫っていることから、対応に向けてお困りのこ
とがあるときには、当事務所までお気軽にご相談ください。
(次号に続く)
医療機関でみられる人事労務Q&A
『病気による通院のため早く帰る必要が出た正職員への対応』
Q:
優秀な看護師の正職員から、病気の治療のため3 ヶ月の間、月曜日と火曜日は通常よりも
1 時間早く帰りたいという相談がありました。このようなとき、これまではパートタイマーに
転換してもらっていましたが、本人には正職員として勤務を続けたい意向があり、パート
タイマーへの転換を打診すると退職してしまうかもしれません。どのような対応方法が
あるのでしょうか。
A:
所定労働時間に勤務できない職員には、医院が特別に早退を認め、正職員のまま雇用し続ける
方法が考えられます。また、始業・終業時刻を繰り上げるなど1日の労働時間数を
変えないように対応する方法や、早退する日とは別の日に長い時間勤務することが可能であれば、
変形労働時間制を活用する方法があります。
詳細解説:
病気の治療を受けるために時間の制約がある職員を正職員として雇用し続けるには、
次の3 つの方法が考えられます。
1.医院が特別に認めた早退
基本的に雇用契約は所定労働時間を勤務することを前提とするため、早退など所定労働時間を
働くことができないというのは問題です。しかし、医院が治療のためといった理由や期間を
限定し、特別に早退を認めるものの、他の職員とのバランスをとるためにも勤務できない
時間数相当分の賃金を控除して対応する方法がとられることがあります。併せて、通常本人が
行う業務を他の職員が代わって行うこととなるため、他の職員への説明や協力の依頼をした上で
認めることが重要です。
2.時差出勤や休憩・業務内容の変更
準備業務などのために始業・終業時刻を繰り上げ、通常の始業の1 時間前に出勤させ、
1時間早く帰ることができるようにする方法が考えられます。また、休憩時間が法定よりも
長いときには本来休憩時間とされている時間に電話番を任せるなどの業務があれば、
そちらを依頼し、1 日の労働時間数を変えずに希望する時間に帰宅させることができる方法も
考えられます。
3.変形労働時間制の活用
例えば、月曜日と火曜日は勤務時間を1 時間短くし、残りの曜日のうち2 日、1 時間長く
勤務をしても差し支えないようであれば、このような働き方をさせることが可能です。
このとき、1 日8 時間を超える日があれば、変形労働時間制を適用しておく必要があります。
継続して働き続けることができる環境を整備することで、医院も人材確保や人材流出の
防止につながるため、対応可能な範囲での労働条件の変更を検討したいものです。
また、治療が予定よりも長期にわたる可能性もあるため、条件変更の措置をいつまで認めるのか
といった制度の整備も検討しておくとよいでしょう。
(来月に続く)
医療機関等における育児・介護休業制度の導入状況
働きやすい環境を整備することは、人材の採用や定着のために重要です。
ここでは、2018 年12月に発表された調査結果※から、医療機関等での育児・介護休業制度の
導入状況などをみていきます。
育児・介護休業制度規定の有無
上記調査結果から、2017 年10 月時点における医療機関等(以下、医療,福祉)における
育児休業と介護休業制度の規定の有無をまとめると表1 のとおりです。
医療,福祉の事業所で育児休業制度の規定がある割合は80.7%、介護休業制度の規定が
ある割合は77.3%となりました。いずれも回答事業所全体(以下、全体)よりも高い
割合です。
育児休業期間は法定どおりが50%程度
育児休業制度の規定がある医療,福祉の事業所を、育児休業が可能な最長期間別に
まとめた割合が、表2 のとおりです。
2 歳(法定どおり)とする割合が52.0%と最も高くなりました。全体と比較すると、
2 歳を超え3 歳未満の割合が10.3%と高くなっていることがわかります。
介護休業期間は法定どおりが90%超
介護休業制度の規定がある医療,福祉の事業所では、介護休業期間の最長限度を
定めている割合が97.7%となりました。残りの2.3%については期間の制限はないと
しています。また、最長限度の期間別割合をまとめると表3 のとおりです。
通算して93 日(法定どおり)の割合が92.9%で最も高くなりました。全体と比較すると、
法定どおりの割合が高く、1 年とする割合が低くなっているのが特徴といえます。
育児・介護休業制度以外にも、この調査結果によると、育児や介護を理由に退職した
職員の再雇用制度を導入している医療,福祉の事業所は30%程度あります。
自院で可能な範囲で、必要な制度の充実を検討してみてはいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成29 年度雇用均等基本調査」
産業別に常用労働者10 人以上を雇用している民営企業、常用労働者5 人以上を雇用している民営事業所から抽出した企業や事業所を対象
とした調査です。ここでのデータは事業所を対象とした結果です。
詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450281&tstat=000001051898&cycle=8&tclass1=000001122535&tclass2=000001122537&second2=1
(次号続く)
電子カルテの導入・運用の留意点
電子カルテの導入は、業務効率の向上や省スペース化等のメリットがある一方で、安全性に
不安を抱く先生も多くいらっしゃいます。厚生労働省のガイドライン※から、診療情報の
電子保存に関する要求事項をご紹介します。
求められる3 つの基準
電子カルテを日常の診療等で使用するには、診療中いつでも支障なく取り扱えることが
担保されなければなりません。加えて、電子カルテの情報は患者の生死に関わるため、
正確さの確保が強く求められ、訴訟等における証拠能力を有する程度のレベルも要求されます。
ガイドラインでは、電子カルテの要件として、「真正性」「見読性」「保存性」の3 つ基準が
示されています。
※厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5 版」
詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000166275.html
(次号に続く)