医療

医療事業者様向け情報(経営)4月号②

医業関連職種別の初任給の推移

新年度の始まりである4 月は、新卒採用を行っている医療機関等にとっては新入職員を迎える
時期でもあります。ここでは人事院が毎年行っている調査※から、医業関連職種別の初任給を
ご紹介します。

2018 年は医師と栄養士以外は増加に

上記調査結果から、医業関連の職種別に直近10 年間の初任給の推移をまとめると下表のと
おりです。

2018 年の結果をみると、金額は医師が最も高く40 万円を超えました。次いで薬剤師、診療放
射線技師、看護師が20 万円を超えています。准看護師と栄養士大学卒、栄養士短大卒は20 万
円には届きませんでした。前年からの増減では、医師と栄養士大学卒、栄養士短大卒が前年を下
回りました。増減率では、診療放射線技師の3.9%増が最高です。

なお、2018 年の結果によると、全回答事業所のうち初任給の増額を行った割合は大学卒が
34.3%、高校卒が36.8%、据置きは大学卒が65.5%、高校卒が62.7%となり、実際には初任
給は据置きの事業所割合が高くなっています。

10 年間の平均は

直近10 年間の初任給データから平均額を求めると、医師が40.9 万円、薬剤師が22.1 万円、
看護師が20.7 万円となりました。診療放射線技師は19.7 万円、准看護師は17.6 万円、栄養
士は大学卒が18.3 万円、短大卒が16.2 万円です。

10 年間の初任給の最高額と最低額の差をみると、医師は13 万円弱、栄養士短大卒が3 万
円程度、診療放射線技師と薬剤師が2 万円弱となっています。一方、看護師、准看護師、栄養
士大学卒は1 万円以下で、職種によって違いがみられます。

新卒や中途採用を行う医療機関では、こうした初任給のデータなども参考にされてはいか
がでしょうか。

※人事院「民間給与の実態(職種別民間給与実態調査の結果)」
条件を満たした企業規模50 人以上、かつ事業所規模50 人以上の事業所を対象にした調査です。2018 年は無作為抽出した12,479 事業所を
対象に実施されています。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)4月号①

働き方改革関連法 段階的にスタート

この4 月から、働き方改革関連法が順次施行されます。今回は、この4 月から全ての使用者に
適用される「年次有給休暇(以下、年休)の取得義務」にクローズアップするとともに、
今後の施行スケジュールをご紹介します。

年休の取得が義務化されます

2019 年4 月より、年休の付与日から1 年以内に5 日の年休を従業員に取得させることが、使
用者の義務となります。対象は、年休が10 日以上付与される従業員で、ここには管理監督者や
パートタイマー等も含まれます。
これにより使用者は、時季を指定して5 日になるまで年休を取得させなければならず、この
指定する時季は、従業員の希望を尊重するよう努めなければなりません。なお、従業員自らの
申出や、労使協定による計画的付与として取得した年休は5 日に含めることができます。

また、この時季の指定を行う場合には、一定の事項を就業規則へ記載しなければならず、就
業規則の変更が必要となります。
更にこの年休の取得義務に関連し、従業員ごとに「時季」「日数」「基準日」を管理する年休
管理簿を作成し、これを3 年間保存することも義務付けられました。あわせて確認しましょう。
働き方改革関連法のうち2021 年までに施行するその他の主な項目は、下表のとおりです。
該当する項目について確認しましょう。

※ 医療業はサービス業に該当するため、「資本金の額もしくは出資の総額が5,000 万円以下」
または「常時使用する労働者数(企業全体)が100 人以下」の場合、中小企業となります。
資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断します。この場合の労働者数には、
パート・アルバイトであっても、常態として使用される場合には、労働者数に含まれます。また、
労働者数は法人格単位で合計するため、例えば都道府県をまたいで事業を行っていても全て
合算して判定します。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)4月号④

中小企業にも適用されることとなる
月60時間超の時間外労働への割増賃金率引上げ

すでに大企業では、1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上とされて
いますが、2023年4月1日より中小企業にもその適用が拡大されます。今回は、割増賃金率と
中小企業への適用拡大について確認しておきましょう。

1.割増賃金率の確認

割増賃金率は大きく分けると、下表の3種類となります。

①時間外労働

労働基準法では原則として1日8時間、1週40時間を上限とする法定労働時間が定められて
おり、法定労働時間を超える労働(時間外労働)には25%以上の率で計算した割増賃金の
支払いが必要とされます。さらに、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えるときには、この割
増賃金率が25%以上から50%以上に引上げられています。

②法定休日労働

労働基準法における休日は、少なくとも週1日または4週間に4日であり、この法定休日に
おける労働(法定休日労働)に対しては、35%以上の率で計算した割増賃金の支払いが
求められます。

③深夜業

①の時間外労働と②の休日労働とは別に、午後10時から翌日午前5時までの深夜に労働さ
せたときには、25%以上の率で計算した割増賃金の支払いが必要です。

2.中小企業への適用拡大

現在、1ヶ月60時間を超えた際の割増賃金率(50%以上)は大企業のみの適用となってい
ますが、2023年4月1日より中小企業にも適用が拡大され全ての企業が対象となります。
50%以上の割増が必要となる時間は、①の時間外労働のみであり、②の法定休日労働は含
めません。
一方で、①の時間外労働が深夜に及んだときは、③の深夜業に対する割増賃金の支払い
も必要となり、その結果、割増賃金率は①の1ヶ月60時間超と②の深夜業を合わせた75%以
上で計算することになります。

時間外労働が多い会社にとっては、この割増賃金率の引上げは人件費の大幅な増加になる
可能性もあります。また、タイムカードの集計方法の変更や、勤怠システムの導入等の費用
の負担が発生することもあります。働き方改革により時間外労働の削減が社会的なテーマに
なっていますので、将来的な割増賃金率の引上げも念頭に置きながら取組みを強化していき
たいものです。

(来月号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)4月号③

平成31年度の社会保険料率

全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率は、例年3月分
(4月納付分)から見直しが行われています。平成31年度の健康保険料率については
各都道府県によって、引上げ・引下げ・据え置きに分かれ、介護保険料率は引上げ
(全国一律)となりました。料率を確認し、徴収のタイミング間違いや保険料率の
変更漏れがないようにしましょう。

1.3月分からの協会けんぽの健康保 3.その他の社会保険料率険料率

協会けんぽの健康保険料率は、平成21年9月より、全国一律の健康保険料率から、各都
道府県支部別の健康保険料率に変更されており、平成31年3月分から適用される健康保険
料率は下表のとおりとなりました。全都道府県のうち、もっとも高い保険料率は佐賀県の
10.75%、もっとも低い保険料率は新潟県の9.63%となっており、両県の保険料率には実に
1.12%の開きがあります。

2.引上げとなった介護保険料率

介護保険の保険料率は毎年見直しが行われますが、平成31年3月分からは、1.57%から
1.73%への引上げとなりました。

3.その他の社会保険料率

①労災保険率
労災保険率はそれぞれの業種の過去3年間の災害発生状況等により、原則3年ごとに見
直すことになっています。前回は平成30年度に見直しが行われたため、平成31年度は変更
されません。
②雇用保険率
雇用保険率は毎年度、財政状況に照らして見直しが行われますが、平成31年度は平成30
年度から据え置きとなります。
③厚生年金保険料率
厚生年金の保険料率は、平成16年から段階的に引上げられましたが、平成29年9月を最
後に引上げが終了し、18.3%で固定されています。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)4月号②

男性はいつから育児休業を取得できますか

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社会保険労務士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:今度子どもが生まれる男性従業員から、育児休業の取得を考えているという相
     談がありました。まだ、取得時期について具体的な話はありませんが、男性の
     場合、いつから育児休業を取得できるのでしょうか?

社労士 :女性が出産をし、引き続き育児休業を取得するケースでは、産後休業の後に育児
     休業が開始となります。これに対し、男性の場合は、産前産後休業はありません
     ので、出産予定日から育児休業を取得することができます。

総務部長:出産日からではなく、出産予定日から取得することができるのですか。子ども
     が出産予定日より早く生まれたり、遅く生まれたりしたときはどのような取扱
     いになるのですか。

社労士 :はい。出産予定日より早く生まれたときは、育児休業開始日を繰り上げることが
     できます。これに対し、出産予定日に生まれていないときは、出産予定日から取
     得することになります。

総務部長:え! 生まれていないのに育児休業を取得できるのですか!?

社労士 :そうです。育児休業の取得のために、会社としてはすでに育児休業期間中の人員
     手配や業務分担等を進めていますので、たとえ子どもが生まれていなくても予定
     通り取得することになります。もちろん、出産予定日より遅く生まれたときは、
     従業員からの申出により育児休業開始日を繰下げることができるという規定も考
     えられます。

総務部長:なるほど。育児休業は、原則子どもが1歳に達するまでとなっていますが、出産
     日が出産予定日より遅くなった場合、この終了日はどのように考えるのでしょうか。

社労士 :この場合、出産予定日から子どもが1歳まで育児休業を取得することができます
     ので、1年よりも長い期間となります。育児休業の期間はこのようになりますが、
     雇用保険から支給される育児休業給付金は取扱いが異なり、出産日(出生日)か
     らが対象となります。

総務部長:そうか、男性も要件を満たせば、育児休業給付金を受給することができるのですね。

社労士 :これまでは育児休業の取得の申出は女性からが多く、会社ではその対応をスムー
     ズに行ってきましたが、今後は、男性からの申出が増加すると予想されますので、
     その対応も重要になります。また疑問点が出てきましたら、いつでもご相談ください。

【ワンポイントアドバイス】
1. 男性は、出産予定日から育児休業を取得することができる。
2. 男性も、要件を満たしていれば育児休業給付金を受給することができるが、出産日が出産
予定日より遅くなった場合、雇用保険から受給できる育児休業給付金は、出産日から対象
となる。

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)4月号①

2019年4月からの産業医の機能強化等に伴い企業に求められる取組み

2019年4月から、働き方改革の一環として、改正労働安全衛生法が施行され、産業医・産業保健
機能の強化が行われます。今回はこの改正に伴い、産業医の選任を行っている企業において、
今後どのような取組みが求められるのかについて解説します。

1.従業員の健康管理等に必要な情報の提供

従業員の健康確保の観点から産業医の重要性が高まっています。そこで産業医がより一層効果的な
活動を行うことができるようにするため、企業は産業医に対し、以下のⅠ~Ⅲの情報を提供する
必要があります。

Ⅰ 以下の3項目に関する実施後に講じた(講じようとする)措置の内容に関する情報(措置
を講じない場合は、その旨・その理由)
①健康診断
②長時間労働者に対する面接指導
③ストレスチェックに基づく面接指導
①~③の結果についての医師または歯科医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく提供する
ことが求められます。

Ⅱ 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた従業員の氏名・その従業員の1月当たり
80時間を超えた時間に関する情報
1月当たり80時間を超えた時間の算定を行った後、速やかに提供することが求められます。

Ⅲ 従業員の業務に関する情報であって産業医が従業員の健康管理等を適切に行うために
必要と認めるもの
産業医から情報の提供を求められた後、速やかに提供することが求められます。

なお、ⅡおよびⅢにある「速やかに」とは、おおむね2週間以内をいいます。

2.実務上の注意点

1.のとおり、企業は産業医に必要な情報を提供することになりますが、実務上の注意点
として、Ⅱの時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた従業員がいない場合、該当
者がいないという情報について産業医に提供する必要があります。
情報提供の方法は書面により行うことが望ましいとされており、事前に提供方法を産業
医と決めておくとよいでしょう。また、Ⅰ~Ⅲの情報については企業の中で取扱う人が異
なる場合があるため、確実に産業医への情報提供が行われるよう、誰が、どのようなタイ
ミングで産業医に報告をしていくか、流れを作っておくことで提供漏れを防ぎましょう。
なお、産業医の選任が必要ない事業場については、医師または保健師に対して、Ⅰ~Ⅲ
の情報について、各情報区分に応じて提供するよう努力義務が課されています。

これら以外にも法改正により、従業員に対して産業医の職務の具体的な内容・産業医に対
する健康相談の申出の方法、産業医による従業員の心身の状態に関する情報の取扱い方法を
周知することが義務付けられました。周知方法は、常時各作業場の見やすい場所に掲示し備
え付けるなど、就業規則の周知方法と同様になります。産業医等とより緊密な連携を築き、
適切に従業員の心身の健康管理をしていきましょう。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)3月号③

医療機関でみられる人事労務Q&A

『採用選考時の履歴書はどのような点をみて面接に臨むのがよいか』

Q:

このところ、入職してもすぐに退職してしまう職員が多いため、採用選考のときにできるだけ
長く勤めることができそうか見極めたいと思っています。今回の応募者からは履歴書を提出
してもらっているのですが、どのような点を確認して面接に臨むとよいでしょうか。

A:

履歴書や数回の面接だけで人柄や能力のすべてを見極めることは非常に難しいですが、履歴書
から前職などの勤務歴を把握すること以外に、志望意欲などを推測することも可能です。
そのため、履歴書から読み取れること、読み取れないことをまとめた上で面接を行うことが
できれば、効果的な選考が期待できます。

詳細解説:

応募者が提出する履歴書からは、記載されている事実の情報だけではなく、働くことに対する
意識やスキルを推測できる部分があります。例えば、履歴書を丁寧に作成していない人材は、
実際の仕事でも丁寧さに欠ける可能性があるといったことです。履歴書の記載内容や項目から
読み取れる、応募者の傾向について考えましょう。

1.応募先の医院にあった志望理由や職務経験の記載がない

応募先である医院を加味しない志望理由の記載がある、これから就く予定の仕事に活かせる
経験やスキルがあるのにもかかわらず記載がない、ということがあります。この場合は、
働くことへの意識や応募した医院への志望度が低い、という推測ができます。また、自己分析や
希望する仕事への理解が浅い、ということも想定できます。このような人は実際に働いても、
意欲的に勤務しない、あるいはすぐに退職する可能性があります。

2.十分な情報が記載されていない

最近では、パソコンで作成された履歴書が見受けられるようになりました。この場合、応募者が
一定のパソコンスキルを有していることが考えられる反面、オリジナルの履歴書を作成することが
できるため、応募者自身が都合のよいように項目を削除したり、スペースを減らしたりすることが
でき、結果、採用する側にとって十分な情報が記載されていない可能性があります。パソコンで
作成されていること自体が悪いのではありませんが、履歴書に記載されている情報では十分でない
可能性があることを、念頭に置いておきましょう。

その他、必要に応じて志望理由書や職務経歴書の提出を求めることや、面接の際に通常履歴書には
記載しない前職の退職理由や仕事をしていない期間がある場合の理由の確認などを行い、応募者に
関する情報が不足しないよう、選考を進めたいものです。

(来月に続く)

医療事業者様向け情報(経営)3月号②

一般診療所の開設・廃止状況

一般診療所の開業や廃業が年間にどのくらい発生しているか、ご存じですか。
ここでは2018 年12 月に発表された調査結果※から、全国の一般診療所の開設や廃止等の状況を
みていきます。

10 万件を超える一般診療所数

厚生労働省によると2012 年以降、全国の一般診療所数は10 万件程度で推移しています。
また上記調査結果から、2017 年には101,471 件の一般診療所が存在し、毎年、開設や廃止等に
よる増減があります。

開設・廃止等の状況

一般診療所の開設や再開、廃止や休止(以下、開設・廃止等)の状況をまとめると、下グラフ
のとおりです。開設・再開、廃止・休止ともに2014 年に大きく増加しています。

さらに詳しく、直近10 年間の開設・廃止等の推移を詳細にまとめると、下表のとおりです。
開設は2014 年に7,000 件を超えて以降、7,000件台で推移しています。廃止は開設と同様に
2014 年に大幅な増加を示し、2017 年には7,000件も突破しました。再開は200~400 件台で、休
止は500~1,000 件程度の間で増減を繰り返しています。

この結果をみる限り、開設・廃止等は3 年ごとに増加する傾向があるようです。

事業承継への対応は早めに

新規開業はもちろん、医療法人化による法人開設と個人の廃止、医師の高齢化等による廃止
や休止など、開設・廃止等の理由はさまざまです。とはいえ、医師の高齢化が進展しているこ
とから、一般診療所での事業承継は今後増加することが予想されます。準備が必要な医療機関
では、早めに対策を講じていくことがスムーズな事業承継に役立ちます。

※厚生労働省「平成29 年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
全国の医療施設を対象にした調査です。ここで紹介したデータは、前年10 月から9 月までの1 年間の動きを、その年の数字としていま
す。詳細は次のURL のページからご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(経営)3月号①

平成31 年度税制改正 医療機関編

平成31 年度税制改正大綱が発表されました。その中から、医療機関に関連の深い項目に
注目します
(※実際の改正内容については、改正法令の公布後に官報等でご確認ください)。

消費税問題は診療報酬改定で対応

最も注目されていた10 月の消費税率引上げへの対応は、税制による手当ては行われず、
診療報酬改定のみで解決することとなりました。

医療に係る設備投資減税の拡充・延長

現行の医療用機器の特別償却制度が対象機器見直しの上で2 年延長される他、右の2 つの
設備投資について減税が実施される予定です。

社会医療法人等の認定要件見直し

認定要件の一つ「社会保険診療収入等」の内容に新たに「障害福祉サービスの給付」が
追加されます(平成31 年3 月改正予定)。

10 月の消費増税対応改定 改定率が決定

上述のとおり、税制において対処は行われませんが、消費税率引上げと共に、診療報酬改定等が
実施されます。その改定率が決定しました。
診療報酬改定は、全体で+0.41%でした。
この内訳は、医科+0.48%、歯科+0.57%、調剤+0.12%です。
同時に実施される薬価等の改定については、薬価はマイナス改定で▲0.51%、
材料価格は+0.03%です。

(次号に続く)

医療事業者様向け情報(労務)3月号④

2019年4月より事務手続きが大幅に簡素化される一括有期事業の手続き

労働保険では、本店、支店、工場、事務所のように、一つの経営組織として独立性を持った
経営体を「事業」とし、その事業ごとで適用を行うことを原則としています。この事業は、
事業の性質上、事業の期間が予定されているか否かにより、継続事業と有期事業に分けられます。
建設の事業や立木の伐採の事業等は、一定の目的を達するまでの間に限り活動を行う事業であり、
有期事業に分類されます。2019年4月から、この有期事業に関する事務手続きが一部変更になる
ことから、変更内容を確認しておきましょう。

1.一括有期事業の対象となる事業

有期事業は、その事業ごとに労働保険の成立手続きを行う必要があります。ただし、それぞれの
有期事業が次のすべての要件に該当したとき、それらの事業は法律上、一つの事業とみなされ、
継続事業と同様に保険料の申告等を行うことになります。これを一括有期事業と呼んでいます。

①事業主が同一人であること。
②建設の事業または⽴⽊の伐採の事業であること。
③事業の規模について、概算保険料額が160万円未満であって、かつ、建設の事業においては、
請負⾦額(消費税額を除く)が1億8,000万円未満、⽴⽊の伐採の事業においては、素材の
⾒込⽣産量が1,000⽴⽅メートル未満であること。
④建設の事業においては、事業の種類が、労災保険率表における事業の種類と同一であること
(一部例外あり)。
⑤事業に係る保険料納付の事務所が同一で、かつ、一括事務所の所在地を管轄する都道府
県労働局の管轄区域、またはそれと隣接する都道府県労働局の管轄区域内で⾏われるも
のであること(地域要件)。

2.一括有期事業開始届の廃止

一括有期事業においてそれぞれの事業を開始したときには、翌月10日までに一括有期事
業開始届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要があります。
今回の改正では、一括有期事業開始届が廃止され、2019年4月1日以降に開始する有期事
業は、提出が不要となります。

3.一括有期事業の地域要件の廃止

1.の⑤に挙げたとおり、一括有期事業が可能となる事業には、地域要件が定められてお
り、定められた地域の範囲外で行われる事業は一括することができず、個別に有期事業と
して労働保険の事務手続きを行う必要があります。

この地域要件も廃止され、2019年4月1日以降に開始する有期事業は、遠隔地で行われる
有期事業も含めて一括して事務手続きを行うことができます。

有期事業が多くある企業では、一括有期事業開始届を毎月作成し、届出することの事務手
続きの負担はかなり大きいものです。また、広域で有期事業を行っている企業では地域要件
を満たすことができない有期事業について一括することができず、この事務手続きの負担も
かなり大きいものでした。変更点を踏まえ、適切な事務手続きを進めることにしましょう。

(来月号に続く)

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