介護
2023年「老人福祉・介護事業者」新設法人調査
2023年に全国で新しく設立された法人のうち、「老人福祉・介護事業者」(以下、新設介護法人)は、3,203社(前年比6.1%増)だった。5年連続で前年を上回ったが、過去10年で最多の2014年(3,611社)には408社及ばなかった。新設介護法人は、介護報酬がプラス改定された2018年を境に増加をたどるが、2023年の増加率は全産業の新設法人の前年比7.8%増に1.7ポイント届かなかった。
介護事業者は人手不足に加え、物価高で運営コストが上昇するなか、介護報酬の伸び悩みなどで増加ペースは緩やかだ。過去10年間の新設介護法人は、2014年(3,611社)をピークに2018年(2,351社)まで4年連続で減少をたどった。2015年度の介護報酬のマイナス改定や恒常的な人手不足が影響したとみられ、一方で倒産や休廃業・解散は増加した。
2018年度のプラス改定後はコロナ禍もあったが、新設法人は緩やかに増加に転じ、2023年には3,203社まで増えた。新設法人数が減少すると、倒産や休廃業・解散が増加する相関関係にあったが、2018年以降は倒産・休廃業・解散ともに一進一退を繰り返しながら増加傾向にあり、新設法人の参入で市場競争は激化している。
今後、本格化する高齢化社会で、市場拡大をにらみ介護事業者の新規参入は増加が見込まれる。しかし、2024年1-5月の介護事業者の倒産は、すでに上半期(1-6月)の過去最多を大幅に上回り、苦境が続いている。拡大する市場で介護業界の経営が安定するには、人材確保、賃金上昇とそれを支える効率化が欠かせないだけに、政策支援と同時に介護事業者の自立的な経営革新も求められる。
※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象約400万社)から、2023年(1-12月)に全国で新しく設立された「老人福祉・介護事業」3,203社を分析した。調査対象期間は2011年から2023年。
新設法人数は5年連続で増加
2023年の新設介護法人数は、3,203社(前年比6.1%増)だった。一方、市場から退出した倒産は122社(同14.6%減)、休廃業・解散は510社(同3.0%増)で、伸び率は新設介護法人が上回った。単純計算の純増数(新設法人から倒産と休廃業・解散の合計を引いた数)は2,571社で、過去10年では2014年3,340社、2015年2,729社に次いで3番目に多かった。
2023年は新設介護法人数の伸びが寄与したが、2024年1-5月の介護事業者の倒産は過去最多の72社に達し、増勢を強めている。人手不足や物価高などの事業環境の悪化などで休廃業・解散が増えたことも影響したとみられる。倒産が増えている状況から、2024年は新設法人数の伸び次第で、純増数が落ち込む可能性も出てきた。
都道府県別 新設介護法人数は大阪府が最多、増加率トップは山梨県
新設介護法人の地区別は、最多は近畿の915社(構成比28.5%)で、関東の892社(同27.8%)を上回り、2年ぶりにトップへ返り咲いた。次いで、九州の451社(同14.0%)が続く。
都道府県別は、最多が大阪府の562社(構成比17.5%、前年比8.7%増)。次いで、東京都の279社(同8.7%、同9.4%増)、愛知県の207社(同6.4%、同5.0%減)、福岡県の174社(同5.4%、同1.1%減)、兵庫県の173社(同5.4%、同16.1%増)と、上位は人口の多い都市部に偏った。
一方、最も新設法人数が少なかったのは山形県の4社(同0.1%、同42.8%減)だった。
増加率は、山梨県が前年比266.6%増でトップ。次いで、山口県の同122.2%増、島根県の同100.0%増の順。減少率は、最大が福井県の同57.1%減。山形県の同42.8%減、栃木県の同32.4%減と続く。新設介護法人の減少は、将来の介護サービスへの影響が危惧される。(東京商工リサーチ記事より)
個人的な自己研鑽のため、という理由で、提示後も数時間残っている職員がいます。自己研鑽のためとはいえ、実際には利用者のケアにも入っており、仕事をしているのと変わりわないように思います。本人からは「仕事をしているわけでないので報酬はいらない」と言っていますが、この場合には払わなくていいのでしょうか?
A,
使用者が指揮命令をしていないのであれば、残業代を支払う義務はありません。ただし使用者が残業を明確に命令していなくても、残業代を支払う義務が生じるケースもあるので注意が必要です。これには、言葉や書面で明確に指示をしていなくても、実質的に指示があったと推定される場合があります。例えば、定時後に数時間残っている理由が、他の利用者をケアする職員が不足していた、あるいはいなかったなどの事情があった場合、使用者が残業指示をしていなくても黙示的な指示があったとみなされ残業代を支払う必要があります。
対策としては、残業する場合には、上司の許可を受け、かつその内容に関し職員から報告をうけるなど、職員が勝手に残業をすることのないよう制度として定着させることをお勧めいたします。
訪問介護は20代から80代まで幅広い年齢層の職員が担っています。ある意味、かなり進んだ多世代交流が実現できている現場なんです。【黒澤加代子】
◆ 若者に戸惑う高齢ヘルパー
ひと昔前は、高齢のヘルパーさんに対して若いサービス提供責任者がどう接すればよいか分からない、という時代がありました。私もその1人でした。
しかし今では、平均年齢がおよそ55歳と高齢化が進行した結果、逆の現象を見る機会が増えました。例えば20代、30代と仕事をする機会が減り、高齢のヘルパーさんが“今どきの若者”とどう接するべきかと戸惑う事態が多く発生しています。
世代間ギャップの1つとして、「時間感覚の違い」を感じる場面はありませんか?
忙しく予定が詰まりがちな訪問介護の業務は、「時間感覚」が重要です。どうすれば質の高いケアを、1分1秒でも早く効率的に提供できるのか − 。私も常にそう考えて行動しています。毎日着実にスケジュールをこなしていくと、体内に時計が埋め込まれているかのように感じることもあります。
例えば訪問時間が10時であれば、できる限り10時ピッタリに到着することが昨今の主流ではないでしょうか。10年ほど前までは、いわゆる「5分前行動」で9時55分に着くことを良しとする暗黙のルールがありました。
ただ、これは昔の話に変わってきています。身体介護に続く生活援助の算定時間の細分化や「身体01」の導入など、数分を大事にする介護報酬の改定もきっかけになりました。
◆ 伝えることの難しさ
こうした「暗黙の了解」は、世代間コミュニケーションの落とし穴になりがちです。先日、そのことを実感した出来事がありました。
専門学校・大学の若い実習生とのやり取りです。10時の訪問に向けて事前に「9時45分に出ます」とお伝えし、いざその時間になったので「さぁ行きましょう」と声をかけたら、相手がそこから出かける準備を始めたのです。私たちの感覚では、9時45分には準備を済ませていつでも出れる状態にしておくこと、を当たり前にイメージしていました。
まさに時間間隔のギャップです。私はいつも偉そうに、「相手に伝えることと伝わることは別」と説いているにも関わらず、「自分が駄目じゃん」とハッとさせられました。初めからしっかり説明すればいいだけの話。教える側、伝える側の私が悪い…。
時間間隔のギャップの多くは、丁寧なコミュニケーションによって徐々に解消していけるのではないでしょうか。この実習生も、次の日から「10時に訪問したいので9時45分には出れるよう靴を履いて準備しておいて下さい」と伝えたところ、その通りに行動してくれました。
◆ 世代間ギャップを楽しもう
インターネットがある時代とない時代、黒電話とスマホの時代ではコミュニケーションの形が変わります。そこにメリット・デメリットが生じるのも自然の流れです。当然、世代間の感覚も大きく変わってくるでしょう。多世代交流が進む訪問介護の現場では、そのことをより強く意識する必要があるのかもしれません。
これまで通りの暗黙の了解は、誰も了解していないかもしれない勘違いの入り口です。1から10だけでなく20まで、詳細を明確に言葉で伝えて共有することが大事ではないでしょうか。利用者宅で1対1で展開される訪問介護だからこそ、丁寧な言語化が必要だと感じます。
世代間のギャップに焦点を当てて書きましたが、このことは直接会う機会が少ないヘルパーさんとの関係でも大切です。私は今回、実習生からコミュニケーションを改善するきっかけを得ることができました。
若者にもっと訪問介護の現場に来てもらいたい − 。本当にそう願うなら、きっと我々も変わらなければいけません。
経験や勘は重要ですが、相手からすればそれは理解しにくいでしょう。そのことを前提に、自分はこう考えている、思っていると伝えることが大事だと感じています。
時代の変化を踏まえ、世代感のギャップを楽しむくらいの柔軟さが求められています。それが先駆的な取り組みを生み、より良い現場を作るきっかけになるのではないでしょうか。(介護ニュースより)
東京商工リサーチは25日、介護業界にフォーカスして法人の新設の動向をまとめたレポートを新たに公表した。
それによると、昨年1年間に新設された介護事業者の法人は3203社。5年連続で前年を上回った。訪問介護や通所介護などの展開を計画する事業者が多い。
厚生労働省は24日、ケアマネジメントをめぐる目下の様々な課題の解決策を話し合う検討会を開き、介護支援専門員の更新研修の負担軽減に向けた施策の方向性を提案した。
講義の科目を全国で統一的に実施したり、ケアマネジャーがそれぞれのペースで少しずつ受けられるようにしたりすることを、今後の論点として提示。オンラインを有効に活用することも含め、より具体的な議論を深めていく構えをみせた。
例えば、次の更新までの間に複数年をかけて、それぞれが望むタイミングで研修動画をオンデマンドで見ることで受講を重ねていける、といった柔軟な形とすることが想定されている。
更新研修の効率化を図るとともに、働きながらでも受講しやすい方法に変える狙いがある。講義を全国で統一的な内容とすれば、運営コストの削減や受講料の軽減などにもつなげられそうだ。
会合では多くの委員がこうした見直しに理解を示し、検討の方向性を共有した。少なからぬケアマネジャーが不満を抱いている更新研修を国はどう改善していくのか − 。そのアウトラインが見えた格好だ。更新制の廃止を促す委員も1人だけいた。
日本医師会の江澤和彦常任理事は、「全国統一のオンデマンド研修の具体化を検討していくことが必要。費用も大幅に軽減できる」と提言。日本介護支援専門員協会の柴口里則会長は、「個々の介護支援専門員が自らの課題と向き合い、必要なタイミングで必要な科目を受講できるようにすることが重要」と述べた。
奈良県生駒市の田中明美特命監は、「研修をオンデマンドにする場合、適切に受講したか否かをどう確認するか考えないといけない。講義後に簡単なチェックテストを行うなどの工夫が必要」と指摘。青い鳥合同会社の相田里香代表社員は、「受講料は事業所が支払い、保険者や都道府県が事業所を助成で支えることなどにより、ケアマネジャーの個人負担は実質なしとするのが望ましい」と要望した。(介護ニュースより)
政府が21日に閣議決定した今年度の「骨太の方針」− 。各分野の施策の基本的な方向性が描かれたが、その中に今後の介護保険制度の見直しに向けた考え方も盛り込まれている。
政府は今回、要介護1、2など相対的に状態の軽い高齢者への訪問介護と通所介護、とりわけホームヘルパーの生活援助を市町村の総合事業へ移管することを、これから検討していく考えを改めて打ち出した。
高齢者の自己負担の引き上げにも重ねて言及。2割負担の対象者の拡大、居宅介護支援の自己負担の導入などを検討していく意向を示した。
こうした論点を俎上に載せ、2027年度に控える次の制度改正の前までに結論を得ると明記。介護費の膨張を抑制して制度の持続可能性を高める狙いで、現役世代の保険料の上昇をできるだけ抑えることも重視している。
具体的な議論は、厚生労働省の審議会などで来年度から本格化する見通し。現場の関係者から強い反発の声が上がるのは必至で、実際に制度改正の中身が決まるまでには紆余曲折がありそうだ。
政府はこのほか「骨太の方針」で、高齢者向け住宅の入居者へ過剰に介護サービスを提供する事業者がいることを問題として提起。「実効性ある対策を講ずる」と記した。また、介護DXやテクノロジーの活用を強力に推進していく姿勢も改めて明示した。(介護ニュースより)
政府は21日、今年の「高齢社会白書」を閣議決定した。特集の一環として、高齢者が人とコミュニケーションをとる頻度の調査を盛り込んでいる。
それによると、「人と毎日話す」と答えた高齢者は72.5%。5年前に行われた前回調査の90.2%から大幅に減っていた。
1人暮らしの高齢者に限ってみると、「人と毎日話す」としたのは38.9%。およそ3割の29.7%が1週間に1回以下で、14.7%は「週に1回未満・ほとんどしない」だった。
白書は、「望まない孤独・孤立を防ぐ施策を推進する必要がある」と指摘。「今後、1人暮らしの高齢者の増加が見込まれる中で、日常生活の支援を地域や社会がどう担っていくかが重要」と指摘した。
この調査は、内閣府が昨年10月から11月にかけて実施したもの。全国2677人の高齢者の回答を集計している。
高齢者が孤独・孤立を深めている要因について内閣府の担当者は、「コロナ禍の影響もあったのではないか」と分析。「国として必要な対策・支援は何か。また、それを必要としている人へどう届けるかを考えていきたい」と話した。(介護ニュースより)
厚労省は20日、
新たな処遇改善加算について解説する
“Q&A第3版”
を公表したようですね。
多くの方に関係するであろう本内容、
未だお読み出ない皆様は、下記をご確認下さいませ。
⇒
Q 当施設では、中途採用に試用期間を設けています。過去の経験を見込んで採用した職員でも結果として適正に欠いていたという経験がある為ですが、能力に問題のある職員の本採用を拒否する際にどんな点に注意すべきでしょうか。
A 経験のある職員を中途採用したはいいが、予想外に能力が低くて困ったという話はよく聞きます。複数の施設を渡り歩く問題児でも転職したばかりのころはおとなしく、職場の水に慣れてきたところに少しづつ牙をむき出してくるようなケースもよくあります。
中途採用に関しては、新卒学卒者に比べれば期待値が高いため、そのものの能力や勤務態度等の評価をめぐるトラブルは多いものです。したがって中途採用者であっても、使用期間を設けることは大切です。ただし、トラブル防止のためにも就業規則の規定に基づいて規定を設けること、本採用を拒否する場合があることなどを雇用契約締結の際にきちんと説明しておくべきでしょう。
試用期間満了での本採用拒否は解雇に相当する
試用期間途中の解雇については、採用後14日間を超えて就労した職員には解雇予告が必要です。この場合、少なくとも30日前に解雇を予告するか、即日解雇の場合には30日以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
また、試用期間中はいつでも「解雇」が許されると思い込んでいる経営者の方もいらっしゃいます。これは誤りで、試用期間であろうと解雇については一般の職員と同様、入職後14日を超えれば予告手当が必要ですし、安易に解雇が認められないのは一般職員と同様です。ただ、本採用に拒否(事実上の解雇)事由が就業規則に明記されていて、採用時の「面接などでは予見できなかった事実」として該当すれば、それは認められるケースもあります。ここで大切な事は、「本採用拒否」の事由を就業規則に記載しておくことです。本採用拒否が認められる具体的な基準については、裁判例などから、「勤務態度不良」「勤務成績不良」「業務遂行能力の不足」「協調性にかける」「経歴詐称」などは具体的な理由として挙げられます。問題は、能力が不足しているということをどのように説明するかということです。
・「本採用拒否」に関する就業規則の記載例
一 遅刻、早退、欠勤が複数回あり、出勤状況が不良の場合
二 上司の指示に従わない、同僚との協調性が乏しい、誠実に勤務する姿勢が乏しい等の勤務態度が不良の場合
三 必要な教育を施したものの法人が求める能力に足りず、改善の見込みが薄い場合
四 経歴を偽り、その他不正な方法を用いて採用された場合
五 反社会的勢力若しくはそれに準ずる団体や個人と関係があることが判明した場合
六 督促しても必要書類を提出しない場合
七 健康状態が思わしくなく、今後の業務に耐えられないと認められる場合
八 法人の事業に職員として採用することがふさわしくないと認められる場合
九 懲戒解雇などの解雇事由に該当する場合
問われるのは注意指導したプロセスと記録
試用期間の解約権にもとづく解雇であっても、本採用拒否が有効と求められるための重要なポイントは、能力と適性が欠如している職員に対して「繰り返し注意・指導をしたけども改善の見込みがなかった」という事実とプロセスです。これは、通常の解雇の有効性が問われるプロセスと同様です。また、このような注意・指導を行ったという記録を残しておく必要もあります。
実務上は「退職勧奨」が一般的
本採用を拒否する場合、実務上は就業規則に基づいて退職勧奨をおこなうのが一般的です。試用期間中の評価をきちんと説明すれば、本人も「試用期間だからしかたない」と退職勧奨に応じるケースが多いように思います。そのためにも、就業規則には具体的な本採用基準を規定しておくことで、退職勧奨の説得材料にもなるわけです。
今年度の介護報酬改定では、福祉用具の貸与と販売の選択制が新たに導入された
スタートから2ヵ月半が経過したが、多くのケアマネジャーが今も日々の活動の中で試行錯誤を重ねている。どうすれば個々の利用者の最適な選択を下支えできるのだろうか − 。
「私も色々と試しながら、より良い運用のあり方を模索している」
こう話すのは、日本介護支援専門員協会の七種秀樹副会長。厚生労働省の検討会に委員として参画し、選択制の導入をめぐる議論に当初から関わってきた。そのプロセスでは、現場のケアマネジャーの負担が重くなり過ぎないように繰り返し働きかけてきた経緯がある。
七種副会長に選択制との正しい向き合い方を尋ねると、「あまり難しく考えないこと」という答えが返ってきた。新たなルールを理解・遵守する必要はあるものの、「利用者の自己決定を支援するという仕事の本質は全く変わらない」という。
まず、選択制の概要を簡単に振り返る。そのうえで、七種副会長が語った制度の捉え方、運用のポイントを紹介していく。
◆ 求められるきめ細かい情報提供
ケアマネジャーからみた場合、選択制の対象となる福祉用具(*)をケアプランに位置付ける際に最も意識すべきことは、貸与か販売かを利用者ができるだけ的確に選択できるようにすることだ。常に完璧な提案をし続けることは困難かもしれないが、誤った判断に導くような関わり方は避けなければならない。
* 選択制の対象となるのは、固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖。
厚労省の通知などで示された居宅介護支援の規定を以下にまとめた。貸与か販売か、それぞれの長所・短所を丁寧に伝えることを前提として、利用者のアセスメント結果を考慮する、医師やリハ職らの意見を聴取する、サービス担当者会議などの結果を踏まえる、といった流れが想定されている。
居宅介護支援の運営基準の解釈通知|概要
◯ 貸与か販売かを利用者が選択できることやそれぞれのメリット・デメリットなど、利用者の選択に資する必要な情報を提供しなければならない。
◯ 対象福祉用具を提案する際は、利用者のアセスメント結果に加えて、医師やリハビリテーション専門職などからの意見聴取、退院・退所前カンファレンス、またはサービス担当者会議などの結果を踏まえる。
厚労省は介護報酬改定のQ&Aで、こうした規定に明記した「利用者の選択に資する必要な情報」の内容を、より詳しく解説している。以下の通りだ。
介護報酬改定のQ&A(Vol.1)|概要
利用者の選択に資する必要な情報としては、
◯ 利用者の身体状況の変化の見通しに関する、医師やリハ職などから聴取した意見
◯ サービス担当者会議などでの多職種による協議の結果を踏まえた、生活環境などの変化や福祉用具の利用期間に関する見通し
◯ 貸与と販売、それぞれの利用者負担額の違い
◯ 長期利用が見込まれる場合は、販売の方が利用者負担額を抑えられること
◯ 短期利用が見込まれる場合は、適時適切な福祉用具に交換できる貸与が適すること
◯ 国が示している福祉用具の平均的な利用月数
などが考えられる。
貸与か販売かを選択した後のモニタリングやメンテナンスなどについても、同様に様々なルールが設けられている。ただ、このフェーズはどちらかというと福祉用具事業所の出番が多い。例えば貸与を選択した場合。利用開始から少なくとも6ヵ月以内に一度、福祉用具専門相談員がモニタリングを行って貸与継続の必要性を検討する決まりとされた。こうした制度を踏まえ、ケアマネジャーにも適切に連携していくことが求められている。
「介護支援専門員の専門性を発揮できる余地が更に広がった」
日本介護支援専門員協会の七種副会長はこう話す。選択制をうまく機能させるためにはどんなことに留意すればいいのか、詳しく話を伺った。
−− 4月から新たに導入された選択制ですが、運用の際に最も意識すべきことはなんですか?
やはり1番は利用者さんの権利、選択を守るということでしょう。それを更に推進するために導入された制度だと捉えています。
ですから介護支援専門員にも、貸与と販売のメリット・デメリットの両方をしっかりと伝える、ケアチームの専門的な見解や金銭面の見通しなども共有する、といった支援が求められます。こうしたルールは、利用者さんと話し合いながらより良いサービスを提供していこう、という趣旨で設計されました。この趣旨こそが、最も意識すべきことではないでしょうか。
−− 選択制の導入で、ケアマネジャーの仕事はどう変わるのでしょうか?
根本はこれまでと同じです。むしろ、私達の使命は全く変わらない、揺るがないと捉えて頂きたいと思っています。難しく考える必要はありません。
選択制の導入により、利用者さんは文字通り選択の機会・幅が更に広がりました。そして、利用者さんの自己決定を支えることは介護支援専門員の基本の1つです。どんな選択が利用者さんにとって最も良いのか − 。この観点からきめ細かい支援をしていくという当然の責務を、今後も愚直に全うすることが重要だと考えています。
「介護職の意見も重要」
−− ケアマネジャーの業務負担が増大する、という懸念の声もあがっています。
業務負担の問題は極めて重要です。厚労省の検討会でも、我々は当初から過大にならないよう繰り返し強く訴えてきました。その結果、適切なサービスを担保するための最小限の範囲に留められたと思っています。
確かに変わることもあるでしょう。利用者さんの選択を下支えする情報の収集・整理、コミュニケーションなどの負担が、少し増える日も出てくるかもしれません。
ただ、これらは多くの介護支援専門員が既に実践してきたことでもあります。従来から利用者さんの判断材料を幅広く集めてきた人、地域のネットワーク作りに努めてきた人などにとっては、さほど大きな変化は生じないのではないでしょうか。日頃からより良い仕事をしてきていたか、という積み重ねが今まさに問われているのかもしれません。
もちろん、事業者には業務の効率化などで現場の職員の疲弊を防ぐ努力が求められます。サービスの質を高めながら介護支援専門員をどう激務から守るか − 。これは業界全体が直面している大きな課題と言えるでしょう。
−− 利用者さんの最適な選択を支えるために、どんなことを伝えれば良いのでしょうか?
国がQ&Aで示した項目は、最低限の情報として共有しなければいけません。重要なのは、それだけで終わらせないことではないでしょうか。
例えば福祉用具だけのケアプランの場合。利用者さんが販売を選べば、介護支援専門員の支援は差し当たり受けられなくなります。自分が継続的に関与することが相手のメリットになると思えば、そのこともしっかり伝えなければいけません。
また、医師やリハビリテーション専門職だけでなく、ぜひホームヘルパーなど介護職の意見にも耳を傾けて頂きたい。福祉用具の使い方が荒っぽいとか、無理な動きが生じてしまっているとか、普段の生活のことを最もよく知っている存在だからです。介護職の意見を注意深く聞くことで、より精度の高い提案ができるようになるはずです。
利用者さんに伝えるべき情報は他にも沢山あるでしょう。様々な判断材料を集めてくるのが介護支援専門員の役割ですので、私も創意工夫を発揮していきたいと思っています。
◆「存在価値を更に示すチャンス」
−− 現場のケアマネジャーへ呼びかけたいことはありますか?
選択制の導入で業務負担が増える場面もあるかもしれません。貸与か販売か、判断がなかなか難しいケースも出てくることでしょう。ただ同時に、介護支援専門員の専門
性を発揮できるチャンスは更に広がりました。
様々な関係者と調整しながら多角的に検討し、利用者さんにとって本当に良いサービスが提供されるように支援していく − 。そうした専門職としての存在価値を、しっかりと打ち出す良い機会にできればと考えています。
皆様にはこれまで蓄積してきた経験やノウハウがあります。ぜひ自分の目を信じて頂きたい。個々の介護支援専門員がプロフェッショナルとして、様々なシーンで利用者に寄り添った質の高い提案をしていくことが重要です。それが地域の要請に応え、社会的な評価を高めていくことにつながるのではないでしょうか。(介護ニュースより)