介護
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『職員を定年後継続雇用する際の留意点』
Q:
当施設の就業規則は、定年を60 歳とし、定年後は希望者全員を65 歳まで継続雇用すると規定しています。このたび、半年後に60 歳を迎える職員がいるのですが、この職員の定年後の処遇や手続きなど、具体的にどのように進めていけばよいのか教えてください。
A:
定年が近い職員がいる場合、まずは継続雇用の希望について意思確認を行う必要があります。継続雇用を希望する場合には、個別に面談を行った上で、労働条件を提示し、雇用契約を締結します。継続雇用を希望しない場合はそのまま定年退職となり、退職手続きを行います。
詳細説明:
1.60 歳定年と希望者全員の継続雇用制度
2013 年4 月1 日に改正された高年齢者雇用安定法により、定年を65 歳未満に定めている場合、次のいずれかの措置をとる必要があります。
① 65 歳以上への定年引上げ
② 希望者全員の65 歳までの継続雇用制度の導入
③ 定年制の廃止
貴施設は、希望者全員の65 歳までの継続雇用制度を導入しているため、就業規則等において定年を60 歳と規定していたとしても、本人が65 歳までの継続雇用を希望するのであれば、原則として継続雇用することが求められます。よって、近々定年を迎える職員がいる場合、まずは60 歳定年以降も、継続雇用を希望するか否かの意思確認を行う必要があります。
2.継続雇用の手続き
定年を迎える職員が継続雇用を希望する場合は、継続雇用後の労働条件を提示します。労働条件は必ずしも定年前と同等である必要はなく、賃金、労働時間、仕事内容等を見直すことができます。職員本人との面談を通じて、労働条件を決定するとよいでしょう。
なお、賃金を引き下げる場合、社会保険の資格喪失と資格取得を同日にすることで、継続雇用された月から、引き下げ後の賃金に応じた標準報酬月額の適用、雇用保険から高年齢雇用継続給付の受給ができる場合があります。要件に該当する場合は、忘れずに手続きを行いましょう。
2021 年4 月には、更なる高年齢者の就業促進を目指した改正高年齢者雇用安定法が施行され、70 歳までの就業機会確保が努力義務となります。高年齢者を継続雇用する際には、一定の配慮をしつつ、その豊富な経験や知識を活かして職場を活性化できるよう、高年齢者が働き続けやすい環境を整備することが求められます。
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福祉施設等におけるOFF-JT の実施状況
職員への教育訓練の実施は、施設の成長に不可欠な要素です。ここでは今年5 月に発表された調査結果※から、福祉施設等(以下、医療,福祉)におけるOFF-JT の実施状況をみていきます。
医療,福祉はOFF-JT の実施割合が高い
上記調査結果から、医療,福祉の事業所におけるOFF-JT の実施状況をまとめると、下グラフのとおりです。
医療,福祉では、正社員と正社員以外の両方にOFF-JT を実施した割合が68.2%となっています。全体の結果である総数は35.1%ですから、30 ポイント以上高い割合です。
一方、OFF-JT を実施していない割合は、医療,福祉が13.0%で総数より10 ポイントほど低い状況です。
コミュニケーション能力を重視
医療,福祉の事業所が実施したOFF-JT の内容をまとめると、下表のとおりです。
医療,福祉では、新規採用者など初任層を対象とする研修の実施割合が62.6%で最も高くなりました。次いで、コミュニケーション能力、新たに中堅社員となった者を対象とする研修、技能の習得、キャリア形成に関する研修が40%以上になっています。
総数と比較すると、医療,福祉では、キャリア形成に関する研修やコミュニケーション能力、技能の習得の実施割合が高い状況です。半面、品質管理や新規採用者など初任層を対象とする研修、ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識、マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)の実施割合が10 ポイント以上低くなっています。
福祉介護の現場に対して、職員の負担軽減に向けた様々な政策が進められています。今後はそうした政策に関する研修なども増えてくるかもしれません。
※厚生労働省「令和元年度能力開発基本調査」
常用労働者30 人以上を雇用している企業・事業所および調査対象事業所に属している労働者を対象にした、2019 年(令和元年)10 月1 日時点の状況についての調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450451&tstat=000001031190&cycle=8&tclass1=000001140208&tclass2=000001140212&tclass3=000001140218
(次号に続く)
慰労金、従業員支給時の留意点
7 月より新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金の申請受付が始まり、順次給付も行われています。今回は、申請から支給までの介護サービス事業所・施設等(以下、介護施設等)における処理上の注意点をご案内します。
慰労金の支給は源泉徴収なしで
この慰労金は、介護に直接携わる職員に限らず、事務職員や給食調理員、リネン業務員、運転手等、利用者との接触機会のある職種が幅広く支給対象となります。要件や支給額は、厚生労働省のホームページ等でご確認ください。
厚生労働省ホームページ:「介護サービス事業所・施設等における感染症対策支援事業等及び職員に対する慰労金の支給事業」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00144.html
慰労金を受け取ることができるのは職員本人ですが、その手続きは介護施設等が行います。
- 職員の委任状を集め、代理申請(所定の申請書を作成し、各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)にオンライン等で提出)します。
- 交付決定後、国保連より介護施設等に慰労金がまとめて振り込まれます。
- 介護施設等から対象となる職員に対し、個々に慰労金を給付します。
- 支給に関する書類を介護施設等で保管します。
職員に支給する際、以下の点にご注意ください。
【介護施設等における慰労金の取扱いの留意点】
✓ 受給は1 人につき1 回限り
複数事業所に従事している職員については、重複申請とならないように注意しましょう。医療分と介護分両方の受給も禁止されています。
✓ 「収入」として会計処理をしない
介護報酬の振込口座に振り込まれます。この慰労金は、介護施設等にとって「収入」ではありません。会計処理上、「預り金」や「仮受金」などの通過勘定を用いて、収入として計上しないように注意しましょう。
✓ 支給の際に源泉徴収しない
この慰労金には税金がかかりません(非課税所得)。源泉徴収しないように留意しましょう。
✓ 必ず全額、職員に支給を
慰労金は留保することなく、対象職員に確実に支給します。受給権の譲渡や差押えは禁止されています。この点にもご留意ください。
(次号に続く)
深夜業に従事する従業員に実施が必要な健康診断
企業が実施すべき主な健康診断には、雇入れ時の健康診断と定期健康診断があります。そのほかに深夜業などの特定の業務に常時従事する従業員(以下、「特定業務従事者」という)に対する健康診断があり、配置替えの際と6ヶ月に1回、実施する必要があります。今回は、この特定業務従事者の健康診断をとり上げます。
1. 深夜業を含む業務とは
特定業務従事者の健康診断の対象となる人は、例えば多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務や、深夜業を含む業務などに従事する人で、労働安全衛生規則に定められています。
このうち深夜業を含む業務は、常態として深夜業(午後10時から午前5時まで)を1週間1回以上または1ヶ月に4回以上行う業務と通達されています。工場で交替制勤務により深夜業を行っているような場合が該当しますが、これ以外にも、所定労働時間の一部が午後10時から午前5時までの時間帯に及ぶ場合も該当します。
2.パートタイマーの健康診断
短時間労働者(いわゆるパートタイマー)についても、以下の①と②の両方を満たす場合は、雇入れ時の健康診断と定期健康診断を実施する必要があります。
-
期間の定めのない労働契約により使用される人であること(※)。
-
1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
※期間の定めのある労働契約により使用されるパートタイマーの場合は、契約期間が1年以上である場合や契約更新により1年以上使用されることが予定されている場合、および1年以上引き続き使用されている場合(特定業務従事者健診の対象となる人については、1年以上を6ヶ月以上に読み替え)。
3.パートタイマーで特定業務従事者の場合
2.についてはあくまでも雇入れ時の健康診断と定期健康診断について指しているものです。2のa.およびb.に該当しないパートタイマーが特定業務従事者に該当するときには、雇入れ時の健康診断や定期健康診断の実施が不要な場合であっても、特定業務従事者の健康診断を実施しなければなりません。
例えば週3日、午後5時から午後11時まで勤務をする場合、特定業務従事者の健康診断の実施が必要です。
法令改正により、健康診断個人票等に対する医師等の押印と、定期健康診断結果報告書等の産業医の押印が不要になりました。この背景には、健康診断に関する情報を活用するために電子化を進める狙いがあるようです。
(来月に続く)
厚生年金保険の標準報酬月額の上限の改定
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
社労士:
健康保険・厚生年金保険では、会社や被保険者が負担する保険料額の決定や、傷病手当金等の給付額の決定、老齢年金額の計算等に標準報酬月額が用いられますが、2020年9月分から厚生年金保険の標準報酬月額の上限が改定されました。
総務部長:
少し前に日本年金機構から届いた案内で見たような覚えがありますが、どのように変更されたのでしょうか。
社労士:
1等級から31等級まであったものに、新等級である32等級(標準報酬月額650千円)が追加されました。31等級に該当するのは報酬月額が60万5,000円以上63万5,000円未満の場合となり、32等級に該当するのは報酬月額が63万5,000円以上の場合となっています。
総務部長:
なるほど。当社でも取締役クラスで数名の被保険者が該当しそうですね。ところで、なぜ上限が改定されたのでしょうか。
社労士:
標準報酬月額の上限は、厚生年金保険法で年度末(3月31日)の状態により見直すと規定されています。具体的には、年度末における全厚生年金被保険者の平均報酬月額の概ね2倍が上限額を超え、その状態が継続するときには、その年の9月1日から上限を改定することになっています。
総務部長:
そうですか。てっきり厚生年金保険の保険料収入が不足しているので、上限を改定するのかと思ってしまいました。
社労士:
確かにそのように感じられるかもしれませんね。厚生労働省が公表している資料を確認すると、2016年3月末から先ほど説明した平均額の概ね2倍を超えていたようです。
総務部長:
ちなみに今回の上限の改定に伴って、会社で何か手続きすることはあるのでしょうか。
社労士:
改定された上限である32等級に該当する被保険者がいる場合には、日本年金機構で自動的に変更され、9月下旬に会社へ通知が届くようです。そのため、手続きは必要ありません。ただし、厚生年金保険料は当然変更になるため、給与から控除している厚生年金保険料は変更してくださいね。
総務部長:
承知しました。それでは日本年金機構からの通知を待ちたいと思います。
【ワンポイントアドバイス】
1. 2020年9月1日より厚生年金保険の標準報酬月額の上限が改定されて32等級(標準報酬月
額650千円)が追加された。
2. 新等級に該当する被保険者がいた場合でも届け出は不要であり、日本年金機構から通知
が届く。
3. 新等級に該当する被保険者がいた場合には、給与から控除する厚生年金保険料を変更し
なければならない。
(次号に続く)
短縮される雇用保険の基本手当の給付制限期間
会社を退職し転職活動をするような場合には、雇用保険の基本手当を受給するケースが多いかと思います。基本手当は就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態にある場合に支給されるものですが、離職理由によっては一定の期間、基本手当を受け取れない期間が設けられています。今回、この取扱いが変更されることとなりました。
1.待期期間と給付制限期間
雇用保険の基本手当は、会社がハローワーク(公共職業安定所)で手続きをした雇用保険被保険者離職票を、従業員が退職後にその住所地のハローワークに持参し、受給手続きをすることにより支給されます。
受給手続きを行った後には7日間の待期期間があり、待期期間後に原則として4週間に1回失業していることの認定を受けて、基本手当が支給されます。
ただし、自己の責に帰すべき重大な理由で退職した場合(以下「懲戒解雇による退職」という)と、正当な理由のない自己都合により退職した場合(以下「自己都合による退職」という)には待期期間後、一定期間基本手当が支給されない給付制限期間が設けられています。
2.短縮される給付制限期間
給付制限期間は3ヶ月間となっていますが、2020年10月1日以降の自己都合による退職の場合、この給付制限期間が2ヶ月間に短縮されます。短縮される退職は5年間のうち2回までであり、3回目の退職以降の給付制限期間は3ヶ月間となります。
なお、懲戒解雇による退職の給付制限期間は、これまでどおり3ヶ月間のままです。
3.正当な理由のある自己都合退職
給付制限期間が設けられるのは、1.で示したとおり正当な理由のない自己都合による退職ですが、退職理由には「正当な理由のある自己都合退職」もあります。例えば結婚に伴う住所の変更や、会社が通勤困難な場所へ移転したこと等がこれに該当します。正当な理由のある自己都合退職の場合には、給付制限期間は設けられていません。
給付制限期間は従業員が退職した後のことになるため、会社に直接関係はしませんが、自己都合による退職の場合であっても、給付制限期間なく基本手当を受け取りたいという従業員は多くいるものです。離職理由についてはトラブルになりやすいため、退職時にしっかりと確認するとともに、給付制限期間のルールも押さえておきましょう。
(次号に続く)
先月末、全サービスの厚労省が発表した
介護サービス別
“従業者勤務体制及び勤務形態一覧表”
の参考様式が公表されました。
事業所の勤怠、シフト管理、労働時間管理の雛形
として参考になるものと思いますので共有化させて
頂きます。
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou/detail?gno=7443&ct=020060090
2020年度の最低賃金40県で1円~3円の引上げに
1.最低賃金の種類と改定タイミング
賃金は都道府県ごとに最低額(最低賃金)が定められており、企業はその額以上の賃金を労働者に支払うことが義務付けられています。
この最低賃金には、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。このうち「地域別最低賃金」は毎年10月頃に改定されることになっており、2020年度についても全都道府県の各地方最低賃金審議会で調査・審議が終了し、「地域別最低賃金」の改定額が決定しました。
2.今年度の地域別最低賃金と発効日
2020年度の地域別最低賃金と発効日は、下表のとおりとなっています。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、大幅な引上げはされず、40県で1円~3円の引上げ、7都道府県で据え置きとなりました。
パートタイマー・アルバイト等の時給者の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するとともに、月給者についても1時間あたりの賃金額を算出し、最低賃金を下回っていないかを確認するようにしましょう。
(次号へ続く)
9月に開催された“介護給付費分科会”のポイントを理解しておきましょう
2021年度法改正・報酬改定に向けた議論、いよいよ各論へ
2021年度介護保険法改正・報酬改定の議論が現在進行形で行われている“介護給付費分科会”。2020年6月より本格始動した本会は6月、7月は各2回、8月は3回、9月は2回開催されており、徐々に各サービスの具体的な法改正の論点が明らかになりつつあります。中でも今回特徴的なのは、「感染症や災害への対応力強化」というトピックスが独立したテーマとして掲げられていること。これらの情報を早めにインプットし、(心構えも含めた)然るべき準備を行っていく事を目的に、今回は、9月4日に開催された会で挙げられた論点について、内容を確認してまいります。
2020年9月開催の「介護給付費分科会」で示された論点(抜粋)とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。
まずは感染症対策等にかかる現状基準の確認です。施設サービスでは、下記のような対応が「義務(≠努力義務)」として定められています。
◯感染症または食中毒の発生、まん延の防止のための以下の措置を実施
①委員会の開催(概ね3ヶ月に1回)、その結果の周知 ②指針の整備 ③研修の定期的な実施
④「感染症及び食中毒の発生が疑われる際の対処等に関する手順」に沿った対応
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
次に災害対策に関する現状基準の確認です。訪問系サービス及び居宅介護支援事業以外の全てのサービスにおいては、下記のような対応が同じく「義務(≠努力義務)」として定められています。
◯非常災害に関する具体的計画の策定
◯関係機関への通報・連携体制の整備、従業者への周知
◯定期的な避難等訓練
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
また、上記に加え、介護サービスの安定的・継続的な提供のための、「業務継続計画(いわゆるBCP)」についての論点も確認しておきます。
○ 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)では、特定接種の登録事業者(※1)について、業務継続計画(BCP)の作成が求められており、対象となりうる事業者に対し、「社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン(※2)」が示されている。
○ また、社会福祉施設等は、災害等にあってもサービス提供を維持していくことが求められており、社会福祉施設等の事業継続に必要な事項を定める「事業継続計画」の作成が推奨され(※3) 、その作成に資するものとして「社会福祉施設等におけるBCP様式(※4)」が示されているところ。
○ 令和2年度第二次補正予算においては、介護サービス事業所のBCPの策定支援のため、各サービス類型に応じたガイドラインの作成や、BCP作成の指導者養成研修のための予算を確保。
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
上記3点を踏まえた上で、今回の法改正に掲げられている「感染症や災害への対応力強化」についても確認しておきましょう。まずは、感染症への対応に関する現状整理についてです。
■感染症への対応として、運営基準においては、
・介護保険施設においては、感染症対策について取組を行うことの義務
・通所系・居住系サービスにおいては、感染症対策に関する努力義務
が設けられている。
また、介護保険施設に対しては、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル(平成31年3月改訂)」を示している。
■今般の新型コロナウイルス感染症への対応においては、
・介護報酬において、一時的に人員基準等を満たせなくなる場合の柔軟な取扱いや、対面での実施が求められる会議の柔軟化、サービス毎の特性に応じた柔軟な取扱いを可能とするなど、臨時的な取扱いを行うとともに、
・補正予算等を活用し、衛生物品の確保や設備整備、サービス継続、応援体制の構築、感染症対策の徹底のための支援や、ICT化の支援を行っている。
・また、社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点や、高齢者施設における感染症発生に備えた対応等を示し、感染症対策の徹底と発生に備えた取組の促進を図っている。
■また、現在、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル(平成31年3月改訂)」や今般の新型コロナウイルス感染症における「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点」を踏まえ、全てのサービス類型が対象となる、感染症対策に関するマニュアルや、事業継続計画(BCP)に関するガイドラインの作成を進めている。
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
次に、災害への対応に関する現状整理についてです。
■非常災害対策として、運営基準においては、
・訪問系サービスを除く全てのサービスで非常災害に関する具体的計画の策定等が義務付けられているほか
・小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護においては、訓練に当たっての地域住民との連携の努力義務が設けられている。
また、交付金等を活用し、高齢者施設等の防災・減災対策を支援するため、耐震化や非常用自家発電や給水設備の整備を進めている。
■また、災害発生時においては、交付金等を活用し、災害復旧に要する費用についての支援を行うとともに、介護報酬の臨時的な取扱いを可能としている。
具体的には、平成30年度以降、7回、臨時的な取扱いの対象となった災害があったが、その際には、被災により一時的に人員基準等を満たせなくなる場合や、避難所等で生活している者に居宅サービスを提供した場合、被災した要介護高齢者の受け入れにより高齢者施設等で人員超過等した場合に柔軟な取扱いを可能とするなど、臨時的な取扱いを行ったところ。
■さらに、現在、全てのサービス類型を対象に、事業継続計画(BCP)に関するガイドラインの作成を進めている。
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
これらを踏まえた、感染症や災害への対応力強化についての論点は下記の通りとなっています。
<論点>
■今般の新型コロナウイルス感染症や、昨今の自然災害における介護サービスの被災状況等も踏まえ、感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に対して必要な介護サービスが安定的・継続的に提供される体制を構築していくため、日頃からの発生時に備えた取組や発生時における業務継続に向けた取組を推進する観点から、現行の運営基準等も踏まえて、どのような方策が考えられるか。
■各事業所において、災害や感染症が発生した場合でも業務を継続していくための業務継続計画(BCP)の策定を進めていくために、どのような方策が考えられるか。
■災害発生時や新型コロナウイルス感染症への対応における介護報酬の臨時的な取扱いについて、災害や感染症への対応力強化や生産性向上等の観点から、ICTの活用をはじめ、平時からの取扱いとすべきものについて、どのように考えるか。
※2020年9月4日 介護給付費分科会資料より抜粋
「感染症対策や災害対策を強化すれば、加算が取れるようになるのでしょうか?」過去、そのような質問を幾度かいただく機会がありました。考え方としては「~という対策をしている法人には〇〇単位」という“一対一対応”型の加算が新設されるのか、或いは体制加算(特定事業所加算やサービス提供体制強化加算等)の充実という形で評価・インセンティブが新たに設計されるのか、いずれかのパターンが想定されるかと思いますが(勿論、それ以外の方法もあるかもしれませんが)、どんな形になるにせよ、社会的使命から介護施設には「感染症対策や災害対策の強化」が強く求められてくることは間違いなく、同時にそれらの充実は職員確保・ご利用者確保に対しても影響を及ぼしてくるものと思われます。そのような観点を総合的に斟酌した上で、今後の対策・対応について検討を重ねておく必要があるのではないでしょうか。
議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切
上記情報はあくまで「現時点における議論のプロセスから得られる示唆」であり、今後、時間の経過と共に、更に内容が煮詰められたり、或いは、場合によっては議論の風向きがいきなり転換するような状況も発生するかもしれません。介護経営者としては「こうなりました」という最終的な結論だけでなく、「何故このような内容に着地したのか?」という、言葉の裏に潜む意図や背景を温度感も含めて理解する姿勢が重要となってくるのではないでしょうか。
そのためにも早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しておく事が重要だと思われます。「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。
私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
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第184回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13243.html
【介護・保育】人材定着ブログ9月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑮」
の続きです。
今回も前回同様、制度構築と同様に重要な「キャリアパスの運用」についてお伝えします。
運用における課題は事業所によって異なると思われますが、その中でも比較的共通している課題を下記のようにQ&A形式にてご紹介したいと思います。
Q2、頑張っている職員を評価してもポストが少なく、昇進と昇給が思ったようにできていない
A2、例えば、パートさんやヘルパーさんを含めて10人規模の訪問介護事業所や、通所介護(デイサービス)事業所でも十分にキャリアパスは構築できます。規模が小さい事業所は職責や組織のポジションが少なく、また給与財源が限られているという理由で、キャリアパスを作っても、意味がないとお考えの事業所は多いようです。ただ、社内のポジションで考えてみると、資格等級制度における「昇進」と「昇格」は異なります。「昇進」は確かにポジションが空かなければ上に進むことはできませんが、「昇格」は等級要件がクリアできれば全員昇格するのが、キャリアパスにおける資格等級制度の考え方です。例えば、取得した資格のレベル、勤続年数、人事評価などで、各等級の要件を定め、その昇格要件を決め、給与や時給に連動させれば、立派なキャリアパスです。また、昇給財源ですが、前述の処遇改善加算金を、財源に充当させることも十分可能ですし、むしろ国もそれを奨励しています。もしかしたら、従業員教育に時間をかけられない小規模事業所だからこそ、その仕組みにより自発的に能力を高めるようになるといった、キャリアパス効果は大きいかもしれません。
Q3、現場での仕事が好きで、管理者にはなりたくない(なれない)職員には、
キャリアアップの仕組みを適用できない?
A3、キャリアパスは個人の能力・適正に応じて、「指導・監督層」になるコースとは別に「専門職」コースを準備し、専門職のキャリアステップと昇給制度で運用しています。
現場では、「優秀な職員ほど役職にはつきたがらない」とか、「知識・技術面でわからないことについて、皆が教えてもらえる職員は決まっており、しかもその職員は役職者ではない」、といった話がよく聞かれます。そこで考えるべきなのが、キャリアパスにおける「複線化」です。つまり、キャリアパスに描かれた昇格ラインによらずに、役職にはつかずに専ら専門性を高め、組織に貢献するキャリアパスを作ることです。この階層を「専門職」として、上級介護職の水準を超える水準をもって処遇します。この場合、当該職員はマネジメント業務を行わず、専ら好きな介護の道を追い続けても、相応の処遇が保障されることになります。専門性の高さを認められてこその処遇なので、職員のプライドも充足することができます。
また、優秀な人材を滞留させては離職につながりかねません。中小企業の中には職員が自らポストの数を読んで、諦めムードが漂っているようなケースも散見されますが、「専任職」を設けて、「当法人は、管理上の役職だけがポストではない。専任職というスキル面のリーダーもあり、相応に処遇する」と周知すれば閉塞感が一気に変わるはずです。
下記に専門職群の役割と業務の参考例を示します。
Q4、人事評価の項目は「一般的」「抽象的」な評価項目が多いため、評価が難しく、どうしても評価者の主観で評価してしまい、職員の納得が得られない。
A4、評価項目を具体的な「行動表現」にすることで、評価がより客観的になり、また職員の課題を具体的に指導できる。
評価することは非常に難しく、評価者訓練を受けないと評価は出来ないと言われています。しかしそれは、評価項目が抽象的で何を評価すればいいのかわからないという原因が考えられます。
評価を行う難しさには、①人によって評価が変わる ②評価項目が不明確なので評価する人も、される人もわかりにくい、さらに③誤評価の原因(ハロー効果、偏り傾向、寛大化など)評価するということに困難さが付きまとっています。例えば「協調性」という表現で終わってしまう評価項目の場合、何が協調性なのか評価者が判断しなければなりません。抽象的な表現は職員をいろいろな視点から評価できることになり有用ですが、評価の公平性や客観性からみるとかなり深い問題が含まれています。具体的な行動
表現にすることで、だれでも同じ理解とすることが大切です。
【具体的行動表現の実例】
評価項目:「感謝の気持ちをもってご利用者、職員に接する」
を具体的な評価項目にした場合に、例えば下記のような例となります。
例1:ご利用者や職場の仲間に感謝の気持ちで接することが出来、「○○さんのおかげです」や「ありがとう」が素直に笑顔で言える。
例2:ご家族様や見学、来訪者の目を見て、笑顔でお名前を添えて「ありがとうございます」と伝えている。
例3:他部署等の協力や理解があって自分が仕事ができる事に感謝して、相手の状態を配慮し、「お手伝いしましょうか」「何か私にできる事はないですか」と声掛けしている。
次回も引き続き運用に関するQ&Aをお伝えいたします。