介護

介護事業所様向け情報(経営)3月号②

介護サービス別の収支状況

2019 年12 月に発表された調査結果※から、介護サービス別の1 人あたり収入や支出に関するデータをみていきます。

居宅介護支援以外はプラスに

2018 年度決算における介護サービスごとの利用者1 人あたり収入や支出の状況をまとめると、下表のとおりです。

※のサービスは集計数が少なく、参考数値。
収支差率=(介護サービスの収益額-介護サービスの費用額)/介護サービスの収益額
厚生労働省「令和元年度介護事業経営概況調査結果の概要」より作成

サービスの種類によって金額に差はありますが、居宅介護支援以外は利用者1 人あたり収入が支出を上回りました。収支差率では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が8.7%で最も高くなっています。

収支差率は半分以上が前年度から減少

収支差率について2017 年度からの増減をみると、22 サービス中14 サービスがマイナスとなりました。プラスとなった8 サービスの中では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が2.4%で最も高い状況です。

現状確認として、貴施設の数値と比較してみてはいかがでしょうか。

※厚生労働省「令和元年度介護事業経営概況調査結果の概要」
すべての介護保険サービスを対象に、層化無作為抽出した15,208 施設・事業所を対象に、2019 年5 月に行われた調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/153-4a.html

(次号に続く)

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介護事業所様向け情報(経営)3月号①

令和2 年度税制改正 福祉施設編

令和2 年度税制改正の大綱が閣議決定されました。その中から、福祉施設に関連の深い項目に注目します。(実際の改正内容は、改正法令の公布後に官報等でご確認ください。)

障害者雇用による割増償却制度の延長

障害者を多数雇用する場合の機械等の割増償却制度について、適用期限が2 年延長される予定です。これに伴い、機械装置の割増償却率が12%に引き下げられます。現行の割増償却率(24%)は、令和2 年3 月31 日までの適用となります。

認可外保育、消費税非課税の範囲拡大

令和2 年10 月1 日以後、1 日当たり5 人以下の乳幼児を保育する一定の認可外保育施設の保育料に係る消費税が、非課税となる予定です。

未婚のひとり親、寡婦(夫)控除の対象に

令和2 年分以後の所得税より、未婚のひとり親についても、寡婦(夫)控除の対象となることが盛り込まれました。適用条件は、死別・離別の場合と同様になります。

少額減価償却資産の特例も延長

中小企業者等が、30 万円未満の少額減価償却資産を取得した場合、その取得価額の全額が損金算入(即時償却)できる特例(年300 万円が限度)についても、2 年の延長が盛り込まれました。なお、対象事業者の従業員要件が現行の1,000 人以下から500 人以下に引き下げられ、連結法人が対象から除外される予定です。

その他の改正事項

上記の他、以下の改正も予定されています。

  • 国民健康保険税の課税限度額の見直し及び低所得者に係る国民健康保険税の軽減判定所得の見直し
  • 介護保険制度の見直しに伴う税制上の所要の措置
  • 認定NPO 法人等のPST 算定における休眠預金等からの助成金の除外

【参考】
財務省「令和2 年度税制改正の大綱」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/20191220taikou.pdf
厚生労働省「令和2 年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000579030.pdf

(次号に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)3月号④

子の看護休暇・介護休暇2021年1月より時間単位での取得へ改正

育児・介護休業法では、子どもが病気になったりケガをしたときに世話をしたり、子どもに予防接種や健康診断を受けさせるために、従業員が請求することで取得できる子の看護休暇があります。また、要介護状態にある家族の介護やその他の世話をするために、介護休暇が用意されています。今回、育児・介護休業法施行規則が改正され、これらの休暇を時間単位で取得させる制度が導入されることになりました(施行:2021年1月1日)。

1.改正内容

子の看護休暇・介護休暇は、制度創設当時は1日単位での取得に限られていましたが、その後、取得する従業員の利便性を考慮し、半日単位でも取得できるように改正され、さらに今回、時間単位での取得ができるように改正されます。

この「時間」とは1時間の整数倍の時間(1時間、2時間、3時間等)をいい、1日の所定労働時間よりも短い時間のことを指します。会社は従業員から時間単位での取得の希望があったときは、その希望する時間について取得させなければなりません。

取得は始業時刻から連続する時間または終業時刻まで連続する時間となっており、労働時間の間で休暇を取得するいわゆる「中抜け」を認めることを求めるものではありません。

2.変更が必要となる就業規則

今回の改正により、現在、子の看護休暇および介護休暇を規定している就業規則(育児・介護休業規程等)を変更することが必要になります。

変更後の規定例は、次のとおりであり、時間単位での規定を盛り込みます。

<就業規則の規定例(子の看護休暇の場合)>

第○条
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
2 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。

※介護休暇も同様の変更が必要になります

3.労使協定の見直し

就業規則の変更とともに、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得することが困難な業務がある場合は、労使協定を締結することにより、時間単位の休暇の対象からその業務に従事する従業員を除外することができます。

必要に応じ、労使協定の内容を見直し、再締結しておきましょう。

子の看護休暇や介護休暇を取得した時間は、無給として扱って問題ありませんが、有給の制度を導入し、休暇を取得した従業員が生じたとき等、一定の要件を満たしたときには、両立支援等助成金が支給されます。この機会に併せて検討してもよいかもしれません。

(来月に続く)

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介護事業所者様向け情報(労務)3月号③

2020年度の社会保険料率の変更見込み

社会保険の料率は、財政状況等により、定期的に見直しが行われています。特に年度が切り替わるタイミングで変更されることが多いことから、今回は2020年度の社会保険料の料率の動向についてお伝えします。

1.健康保険料率の変更

協会けんぽの健康保険料率は例年3月分(4月納付分)から変更されています。2020年度についても、都道府県ごとの3月分からの健康保険料率が下表のとおり決定しました。

2.介護保険料率の変更

協会けんぽの介護保険料率は全国一律であり、健康保険料率の変更と同じタイミングである2020年3月分から1.79%に変更されます。この介護保険料率は、単年度で収支が均衡するよう、介護納付金の額を総報酬額で除したものを基準として保険者が定めることになっています。

3.雇用保険料の控除に関する留意点

雇用保険料率は現在、労働保険徴収法の改正案が国会に提出されており、今のところ決定していないため、動向を注視する必要があります(2020年2月14日現在)。

雇用保険料に関しては、今年度(2019年度)まで64歳以上の雇用保険の被保険者について徴収が免除されていましたが、4月からは徴収が始まるため雇用保険料を給与から控除することになります。

 

この他、労災保険率は3年に1度、見直しが行われていますが、前回は2018年度に変更されたため、2020年度には変更されない予定です。給与から控除する社会保険料については、4月の給与計算を始める前に、確認するようにしましょう。

(次号に続く)

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介護事業所様向け情報(労務)3月号②

労働基準監督署の調査でよく聞かれる36協定(特別条項)に関する事項

※2019年4月施行の改正労働基準法の内容を前提としています。

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長

来月、労働基準監督署の調査が行われることになりました。事前の準備物に「時間外・休日労働に関する協定届」(以下、「36協定」という)とありますが、どのようなことを確認されるのでしょうか?

社労士

御社では、36協定に特別条項をつけて届出をされています。特別条項は過重労働の原因になりやすいということで2019年4月の法改正でも様々な規制が加えられ、労働基準監督署の調査でも重要事項とされています。そこで今回は以下の4点を取り上げましょう。

  1. 限度時間を超えて労働させる場合における手続きが、特別条項に該当する月ごとに行われているか
  2. 限度時間を超えて労働させることができる回数が年6回以内となっているか
  3. 延長することができる時間数および休日労働の時間を超えていないか
  4. 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(健康福祉確保措置)を実施しているか

総務部長

1.について当社は、過半数代表者に事前の申し入れを行うことにし、書面を渡しています。

社労士

それは素晴らしいですね。調査では、その事前の申し入れが行われているか確認されるので、申し入れ書の控えやメールで申し入れをしていればその文面等を残しておく必要があります。

総務部長

なるほど。当社では限度時間を超えて労働させることは稀ですが、②の年6回以内とは、会社として年6回以内でしょうか、それとも従業員ごとに年6回以内でしょうか?

社労士

従業員ごとに年6回以内です。そのため、従業員ごとにカウントし、年6回を超えないようにする必要があります。③については、36協定で定めた時間の範囲に収まっていることが必要です。その上で、例えば特別条項で90時間と記載してあり、90時間の範囲に収まっていたとしても、2~6ヶ月平均で月80時間を超えてはいけないという時間外労働の上限規制の内容がありますので、それを遵守する必要があります。

総務部長

なるほど。36協定に記載した内容だけを遵守していたとしても、問題となるケースがあるのですね。④については、対象労働者に医師の面接指導を実施することにしていますが、それを実施しておくということですね。

社労士

はい。実施と併せて、実施状況に関する記録を36協定の期間中と有効期間満了後3年間保存することになっています。実施後は記録を残しておくことまでが求められます。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  限度時間を超えて労働させる場合、事前に定められた手続きを行い、その書面等を残しておく。
  2.  36協定に記載された内容とともに、時間外労働の上限規制も遵守する。
  3.  健康福祉確保措置を実施した場合、記録を残し、36協定の期間中と有効期間満了後3年間は保存しておく。

(次号に続く)

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介護事業者様向け情報(労務)3月号①

4月より健康保険の被扶養者の要件に国内居住が追加されます

外国人労働者の中には、母国に扶養する家族を残して日本で働いているケースが少なくありません。そうした扶養の要件については、所得税・健康保険の各々で決まっていますが、今年4月より、健康保険の被扶養者として認定される要件(被扶養者の認定要件)が変更され、国内居住要件が追加されます。

1. 被扶養者の認定要件

現在の被扶養者の認定要件は、以下のとおりです。

①被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
②被保険者と同一の世帯(※)で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
(1)被保険者の三親等以内の親族(①に該当する人を除く)
(2)被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
(3)(2)の配偶者が亡くなった後における父母および子
※同一の世帯とは、同居して家計を共にしている状態を指します。

なお、これらに該当する人であっても、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、被扶養者に該当しません。

2. 追加される国内居住要件とその例外

4月からは、新たに国内居住要件が追加され、日本国内に住所があること(住民票が日本にあること)が必要となり、健康保険の被扶養者の異動に関する手続きを行う際には、この国内居住要件に関する確認が行われます。

なお、日本国内に住所がない人であっても、日本に生活の基礎があると認められる下表の人については、被扶養者の異動に関する手続きの際に、証明書類を添付することで国内居住要件の例外として取り扱われることになります。

証明書類が外国語で作成されている場合、その書類に翻訳者の署名がされた日本語の翻訳文の添付が必要になります。該当者がいる企業はさほど多くないとは思いますが、国内居住要件の例外に該当するときには、証明書類が求められることになりますので、従業員へ周知しておきましょう。

(次号に続く)

社会保険労務士法人
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同一労働同一賃金、来月から 基本給や手当 整理進む

「仕事と対価」に入念な点検
同一労働同一賃金、来月から 基本給や手当 整理進む
日本経済新聞 

 

4月から始まる正規と非正規の従業員の間で不合理な格差を禁じる「同一労働同一賃金」ルールの施行を前に、大企業が対応に追われている。正社員や派遣社員の雇用状況や待遇、各種の手当てなどを確認したり見直したりする過程で、様々な問題が浮かび上がっている。労務トラブルを防ぐためにも「仕事と対価」の入念な点検が必要になっている。

 「この手当A、手当Bとは何ですか」
 企業の労務担当者と顧問弁護士の間で、賃金や手当の最終チェックが大詰めを迎えている。4月からは正社員と非正規労働者の業務内容が同じ場合、基本給や手当などの待遇差が禁じられる。ある企業では何の職務の対価か説明できない手当が問題になった。労務部門のベテランにも確認したが「入社前からある。だが、いつ何の目的で作ったのかは分からない」。
 結局、手当AとBは廃止し、基本給に組み込む方向で調整するという。多くの企業がこうした以前から存在する「正社員向けの手当」の整理を迫られている。
 4月の施行前に企業がとる対応策は大きく3つある。(1)正規・非正規の職務内容の確認(2)待遇差がある場合は説明できる理由を明確にする(3)必要ならば賃金体系を見直す――ことだ。
 まず正規と非正規の従業員の職務内容をチェックする。例えば総務部で同じ給与計算の業務に就いているようにみえても、待遇が異なる場合がある。正社員は「転勤あり」で、キャリア形成の一環として他部署への「異動あり」が条件である場合が多い。
 木下潮音弁護士は「これまで正規と非正規で人材活用の期待値が違うのは暗黙の了解だった。今後、企業は明確にする必要がある」と指摘する。
 事業主は「説明義務」を負う。非正規の従業員から求められれば正社員との待遇差の内容や理由について合理的な説明をしなければならない。「できない場合は、訴訟を起こされる可能性がある」(東京大学の水町勇一郎教授)。待遇の差がある場合は、理由を文書にして明示しておくといった作業も必要になる。
 正規・非正規の待遇差を禁じる厚生労働省のガイドラインには、対象に「家族手当」や「住宅手当」が入っていない。住宅手当は、正社員に転勤の可能性があるかといった企業や職場の事情に合わせて判断する必要がある。家族手当も価値観の多様化や独身者の増加を背景に「見直す企業が増えている」(水町氏)。
 賞与など賃金体系の見直しが必要になる場合もある。ここでもポイントは合理的かどうかだ。賞与を単純に「基本給の数カ月分」と機械的に決める仕組みが不合理と認定される可能性があるという。安西愈弁護士は「基本給に職能制を導入したり賞与に成果を反映させたりするといった見直しが必要」と指摘する。
 気をつけなければならないのが、正社員の待遇を一方的に下げる「不利益変更」にならないようにすることだ。同一労働同一賃金の制度の趣旨は、非正規社員の待遇を正規並みに引き上げることだ。ただ企業の中には人件費が増えると警戒するところもある。菅俊治弁護士は「労組は経営側と安易に合意しないことが大切だ」と話している。

新型コロナウィルスに伴う介護サービス人員基準の取り扱いQ&A

新型コロナウィルスに伴う介護サービスの人員基準の取り扱いについて
現在の情勢を受けての緩和措置通知が発信されています。
詳細は下記内容をご覧ください。

⇒ コロナ介護人員基準

 

社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング
代表社員  林  正人

新型コロナウィルスに伴う臨時休校における所定労働日の扱いについて

いつもありがとうございます。
さて、主題、新型コロナウィルスの対応に関しては、
日々対応に苦心されているものと思います。

新型コロナウイルス感染症対策として、
すべての小学校、中学校および高等学校に
2020年3月2日から春休みに入るまで臨時休校とするよう
政府から要請があったことに伴い、子育てをする従業員への支援として、
勤務が困難となる所定労働日についての取り扱いに関する社内文書案
として、
添付文書サンプルをご参考までにいたします。

尚、当文書はあくまで文書サンプルとして取り扱っていただき、
各事業所の方針に従い加筆修正してご活用ください(特に給与の取り扱い)

また、これに伴う助成金制度についても合わせて資料を
送付いたしますのでご参考にしてください。

(様式例)臨時休校対応.docx

新助成金について.pdf

社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング
代表社員 林 正人

ニュースレター3月号

来年度に予算が倍増される
「保険者インセンティブ」の大枠・方向性について確認しておきましょう

2020年度(令和2年度)の「保険者インセンティブ」の大枠・方向性が明らかに

「経済財政運営と改革の基本方針2019(いわゆる『骨太方針2019』)」に明文化され、その後の「介護保険制度の見直しに関する意見(20191227日上梓)」でも大きく採り上げられる等、徐々に業界内でもその重要性が認識されつつある「保険者インセンティブ(今年度までの正式名称は『保険者機能強化推進交付金』)」。その予算が来年度より200億円から400億円に倍増されることが既に決定している中、本インセンティブに対する大枠・方向性が、先月開催された「全国厚生労働関係部局長会議(以降、『同会議』と表記)」にて新たに発表されました。本ニュースレターでは今回、新たに発表された内容のポイントをピックアップし、皆様にご紹介してまいります。

 

「保険者インセンティブ」2020年度(令和2年度)の大枠・方向性とは

令和2年度においては、公的保険制度における介護予防の位置付けを高めるため、保険者機能強化推進交付金に加え、介護保険保険者努力支援交付金(社会保障の充実分)を創設し、介護予防・健康づくり等に資する取組を重点的に評価することにより配分基準のメリハリ付けを強化

では、早速、中身の確認に移ってまいりましょう。同会議の老健局資料には、介護予防・健康づくり等に資する取組を重点的に評価することを目的に、次のような新たな文言(下記枠内の下線)が記載されています(これが今回のニュースレターの最大のポイントです)。

前述の通り、2019年度(令和元年度)においては「保険者機能強化推進交付金」しか枠組みが存在しておらず、故に今回の予算倍増もこの「保険者機能強化推進交付金」の予算額が200億円から400億円に増額される、との解釈が一般的でした。しかしながら今回は、予算使途の意味付け、及び予算倍増に伴うメッセージをより一層明確化すべく、「保険者機能強化推進交付金で総予算200億円(内、都道府県分として10億円、市町村分として190億円)」「介護保険保険者努力支援交付金で総予算200億円(内、都道府県分として10億円、市町村分として190億円)」の2段構造へと変更になった次第です(下記はそのイメージ)。

※令和2年1月17日「全国厚生労働関係部局長会議」老健局資料より抜粋

上記イメージ図に記載がある通り、新設された「介護保険保険者努力支援交付金」は「予防・健康づくりに関する項目のうち重要な項目」に重点的に振り分けられることになります。使途として重なる部分は色々と出てくると思われますので精緻な区分にはなり得ませんが、雑駁に整理してしまえば、保険者機能強化推進交付金は各保険者の「基盤(機能)整備」を中心に運用され、介護保険保険者努力支援交付金は予防・健康づくりに対する「アウトカム(成果)」を中心に運用される、と理解することが出来るのではないでしょうか。

では、予防・健康づくりに対する「アウトカム(成果)」とは一体、どのようなものなのでしょうか?

現時点においては2020年度(令和2年度)の評価指標は未だ開示されていないため、「まだ分からない」というのが正直なところですが、参考として、例えば2019年度(令和元年度)においては次のようなアウトカム指標が設定されていました。

【その1:ケアマネジメント領域】

<指標>個別事例の検討等を行う地域ケア会議における個別事例の検討件数割合はどの程度か

(個別ケースの検討件数/受給者数)

ア 個別ケースの検討件数/受給者数 ○件以上(全保険者の上位3割)

イ 個別ケースの検討件数/受給者数 ○件以上(全保険者の上位5割)

<配点>ア12点 イ6点 ア又はイのいずれかに該当すれば加点

<時点>20184月から201812月末までに開催された地域ケア会議において検討された個別事例が対象

 

【その2:医療・介護連携領域】

<指標>居宅介護支援の受給者における「入院時情報連携加算」又は「退院・退所加算」の取得率の状況

ア ○%以上(全保険者の上位5割)入院時情報連携加算

イ ○%以上(全保険者の上位5割)退院・退所加算

<配点>各6点 ア又はイのいずれかに該当すれば加点

<時点>20193月時点及び20183月から20193月の変化率が対象

 

【その3:介護予防/日常生活支援】

<指標>介護予防に資する住民全体の通いの場への65歳以上の方の参加者数はどの程度か

(【通いの場への参加率=通いの場の参加者実人数/高齢者人口】 等)

ア 通いの場への参加率が⭕%(上位3割)

イ 通いの場への参加率が⭕%(上位5割)

<配点>ア15点 イ8点 ア又はイのいずれかに該当すれば加点

<時点>前年度実績(20184月から20193月)

 

【その4:要介護状態の維持・改善の状況等】

<指標>

  1. 軽度【要介護1・2】(要介護認定基準時間の変化)

一定期間における、要介護認定者の要介護認定等基準時間の変化率の状況はどのようになっているか。

  1. 軽度【要介護1・2】(要介護認定の変化)

一定期間における要介護認定者の要介護認定の変化率の状況はどのようになっているか。

  1. 中重度【要介護3~5】(要介護認定基準時間の変化)

一定期間における、要介護認定者の要介護認定等基準時間の変化率の状況はどのようになっているか。

  1. 中重度【要介護3~5】(要介護認定の変化)

一定期間における要介護認定者の要介護認定の変化率の状況はどのようになっているか。

<指標(1~4共通)>

ア 時点(1)の場合⭕%(全保険者の上位5割を評価)

イ 時点(2)の場合⭕%(全保険者の上位5割を評価)

<配点(1~4共通)>

15点 ア又はイのいずれかに該当すれば加点

<時点(1~4共通)>

(1)2018年1月→2019年1月の変化率

              (2)2018年1月→2019年1月と2017年1月→2018年1月の変化率の差

※以上「2019年度保険者機能強化推進交付金(市町村分)に係る評価指標」より抜粋

 

上記4点については次年度も引き続き評価指標に盛り込まれる可能性も高く、加えて私見ながら、今後、上記以外にも“科学的介護”との連動の中で「ADLのアウトカム(バーセルインデックスetc)」「認知症のアウトカム指標(認知症行動障害尺度としてDBD13・意欲指標としてのバイタリティインデックスetc)」その他にも栄養管理、口腔ケア、排泄ケア等の重要領域についても様々な指標が新設される可能性も考えられるでしょう(保険者インセンティブのスキームを活用する場合もあれば、現状のADL維持等加算のように“事業者向け加算の拡充”というスキームを活用する場合もあるかもしれませんが)。

 

自社に影響を及ぼしそうな内容、及び自社が貢献できそうな内容を読み取り、早めに取り組みの準備・整備を

以上、次年度に新設される「介護保険保険者努力支援交付金」の大枠・方向性、並びに2019年度(令和元年度)の「保険者機能強化推進交付金」で採用された主なアウトカム指標についてご紹介させていただきました。昨今の議論の流れから、国としてもこの“保険者インセンティブ”の取り組みを重視していることは誰もが知るところだと思います。その意味でも事業者の皆様としては今後、公表される評価指標の内容全体にしっかり目を通した上で「自社に影響を及ぼしそうな指標」「自社が貢献できそうな指標」等についてピックアップし、早めに準備・整備を行っておく必要があると言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報・事例等を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

 

※本状の引用元資料はこちら

令和元年度 全国厚生労働関係部局長会議

https://www.mhlw.go.jp/topics/2020/01/tp0107-1.html

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