介護
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『試用期間の延長と本採用を見送る際の留意点』
Q:
当施設では、就業規則において、3 ヶ月間の試用期間を設けています。先日採用した職員は問題行動が多く、上長が再三にわたり注意・指導を行っているところです。今後、もうしばらく様子を見るため試用期間を延長するか、試用期間満了をもって本採用を見送るか検討しているところですが、その際の留意点を教えてください。
A:
まずは、試用期間があること、その期間や延長の可能性があること、本採用を見送る場合があること、そしてその具体的な基準について、就業規則等に定め、あらかじめ本人へ説明しておくことが重要です。なお、たとえ試用期間中であっても、労働契約は成立しているため、試用期間満了後に本採用を見送るのであれば解雇となり、解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要になる場合があります。
詳細解説:
1.試用期間の位置づけと延長
試用期間とは、施設が、新たに採用した職員の適性や能力について評価し、本採用するか否かを判断するための期間です。必ず設けなければならないものではなく、その期間についても明確な基準はありませんが、試用期間中は身分が不安定になることから、6 ヶ月以内で設定している施設がほとんどでしょう。
あらかじめ設定した試用期間において、その職員の適性や能力について判断することが望ましいですが、中にはあらかじめ設定した試用期間では判断できずに、試用期間を延長して判断するケースがあります。その場合、就業規則等に試用期間の延長に関する規定が必要となりますが、規定に基づいて延長するときでも、合理的な理由が必要になります。なぜ試用期間を延長することになったのか、本人へ理由を説明し、あわせて本採用へ向けて改善すべき点を明確に示すことが求められます。
2.試用期間満了により本採用を見送る際の留意点
職員に問題があれば一方的に本採用を行わないことができるわけではありません。どのような場合に本採用が見送りとなるか、就業規則等で具体的な基準を規定し、それを本人へ事前に説明しておく必要があります。そのうえで、その職員の適性や能力が施設としての基準に達しない点について、注意・指導を繰り返したけれども、改善に至らなかったために本採用を行わないこととしたというプロセスが重要になります。
気づいたら試用期間が過ぎていた、試用期間の満了が直前に迫っていたというケースは少なくありません。試用期間を設定するのであれば、本採用となる基準等について現場や上長等に共有し、職員の適性や能力に問題があれば、注意・指導を行い、記録を残すことが求められます。
(次号に続く)
福祉関連業種の夏季賞与支給状況
新型コロナウイルスの感染拡大は、福祉施設等の経営に大きな影響を与えています。こうした中で、夏季賞与の支給時期を迎えます。ここでは厚生労働省の調査結果※から、福祉関連業種の夏
季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)等の推移をみていきます。
老人福祉・介護事業は増加に転じる
福祉関連の業種別に1 人平均支給額等の推移をまとめると、下表のとおりです。
2019 年の結果では1 人平均支給額は、児童福祉事業と障害者福祉事業は30~99 人が増加、老人福祉・介護事業は5~29 人と30~99 人のどちらの規模も増加しました。きまって支給する給与に対する支給割合は、児童福祉事業は1 ヶ月分以上に、老人福祉・介護事業は1 ヶ月分未満に、障害者福祉事業は30~99 人が1 ヶ月分を超えました。
新型コロナウイルスの感染状況が地域によって異なるため、今年の夏季賞与支給は例年とは異なる状況になることが予想されます。
※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。きまって支給する給与に対する支給割合は、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
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「業務改善×賃金アップ」の助成金
「業務改善助成金」は、業務時間や人員を効率化して生産性を向上させ、「事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)」の引上げを実施する中小・小規模事業者を支援する助成金。福祉の現場でも幅広く活用されています。
設備導入等の費用が助成されます
業務改善助成金は、次を行った場合に、その費用の一部を助成してもらえます。本年度の申請期限は、令和3 年1 月29 日までです。
✓ 生産性向上のための設備投資(設備、コンサルティングの導入や人材育成・教育訓練)等を行う
✓ 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ
例えば次のような設備投資の事例があります。
主な支給要件
✓ 賃金引上計画を策定すること
✓ 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた(就業規則等に規定)上で、その賃金額を支払うこと
✓ 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
✓ 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
助成額
事業場内最低賃金の額、賃金の引上げ額、引き上げる労働者の数等によって、助成率や上限額が異なります。詳しくは、下記厚生労働省のホームページをご参照ください。
厚生労働省HP:業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
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妊娠中の従業員等に対し実施が求められる母性健康管理措置
妊娠をした従業員から、つわりがひどいため勤務時間を短縮して欲しいといった相談が会社に寄せられることがあります。妊娠や出産は病気ではないものの、企業には一定の母性健康管理措置が求められます。そこで以下ではこの措置の内容に関して確認しておきましょう。
1.母性健康管理措置
男女雇用機会均等法では、妊娠中および出産後1年以内の女性従業員が保健指導・健康診査の際に主治医や助産師(以下、「主治医等」という)から指導を受け、会社に申し出た場合、その指導事項を守るために必要な措置を講じることを会社に義務付けています。
この指導事項を守るために必要な措置としては、以下の3つが挙げられます。
① 妊娠中の通勤緩和
例:時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段・通勤経路の変更
② 妊娠中の休憩に関する措置
例:休憩時間の延長、休憩回数の増加、休憩時間帯の変更
③ 妊娠中または出産後の症状等に対応する措置
例:作業の制限、勤務時間の短縮、休業、作業環境の変更
主治医等から指導を受けた内容を会社に伝えるために、「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用が勧められており、このカードで会社はいつまでの期間、どのような措置が求められるのかを把握することができます。
2.新型コロナウイルス感染症に関する措置
新型コロナウイルス感染症への感染には緊急事態宣言が解除された後にも留意が必要とされますが、職場の作業内容等によっては、新型コロナウイルス感染症への感染について、妊娠中の女性従業員が不安やストレスを抱えるケースが出てきています。そのため、母性健康管理が適切に図られるように新たな措置が追加されました。
追加された内容は、妊娠中の女性従業員が、保健指導・健康診査に基づき、その作業等における新型コロナウイルス感染症に感染するおそれに関する心理的なストレスが母体または胎児の健康保持に影響があるとして、主治医等から指導を受けた場合で、それを女性従業員が会社に申し出たときには、会社はこの指導に基づき、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務または休業)等の必要な措置を講じなければならないというものです。
今後、主治医等からこのような指導があった場合、まずは母性健康管理指導事項連絡カードを会社に提出してもらったうえで、実情に合わせた対応を検討することが求められます。
なお、この措置の対象期間は、2020年5月7日から2021年1月31日までとなります。
実際の措置として勤務時間を短縮した場合、給与の取扱いについて対応に困ることがあり 。ます。就業規則に特別な記載がない場合の基本的な考え方は、ノーワークノーペイに基づき、短縮した部分については給与を支払う義務はありません。会社の方針を決めた上で、定めをしておくとよいでしょう。
(来月に続く)
2020年5月25日に廃止されたマイナンバーの通知カード
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
社労士:
従業員を採用したとき等には、従業員やその家族の個人番号(マイナンバー)の確認が必要になりますが、実は5月25日にマイナンバーの通知カードが廃止されました。
総務部長:
えっ!?すでに通知カードが廃止されているのですか?
社労士:
はい。以前から行政手続きを原則、電子申請としていく動きがあります。この行政手続きの電子化には、マイナンバーカードの活用が不可欠であるものの、マイナンバーカードの普及率は16.4%(2020年5月1日現在)となっていることから、その普及のために、通知カードが廃止されました。
総務部長:
なるほど。確かにこれまでマイナンバーの確認でマイナンバーカードを提示してきた従業員はほとんどいませんでした。普及していないという想像はしていましたが、かなり低迷しているのですね。
社労士:
そうですね。一方、マイナンバーカードの活用は徐々に進んでおり、身分証明書になったり、コンビニで各種証明書を取ることができたり、また、スマートフォンやパソコンを使って、オンラインで確定申告や子育てに関する行政手続きができるようになっています。更に2021年3月からは、マイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになる予定です。
総務部長:
今回、通知カードが廃止されたということですが、今後、従業員に子どもが生まれたような場合には、どのようにマイナンバーが通知されるのでしょうか。また、すでに交付されている通知カードを引き続き使ってもよいのでしょうか。
社労士:
今後は通知カードの代わりに個人番号通知書が送付されます。これにはマイナンバー、氏名、生年月日、個人番号通知書の発行日等が記載されていますが、マイナンバーを証明する書類として利用はできません。なお、すでに交付されている通知カードを使うことは問題ありません。その際、通知カードに記載された氏名、住所等が記載されている事項と一致している場合にのみ使用できるということに注意が必要です。
総務部長:
5月25日以降に引越をし、住所が変更となった場合は、通知カードは使えないということですね。この場合、どのようにすればよいのでしょうか。
社労士:
マイナンバーカードを発行することが一番ですが、マイナンバーが記載された住民票の写しまたは住民票記載事項証明書を取得することも考えられます。
【ワンポイントアドバイス】
- 2020年5月25日にマイナンバーの通知カードが廃止された。
- 新たに付番される人には個人番号通知書が送付される。
- 通知カードに記載された氏名、住所等が住民票に記載されている事項と一致しているときは、引き続き通知カードをマイナンバーを証明する書類として使用できる。
(次号に続く)
新型コロナに感染の疑いがあり休む場合の傷病手当金の申請
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染拡大に伴う緊急事態宣言が、全国で解除されました。これからは新しい生活様式を取り入れた生活が求められ、例えば、従業員に発熱症状があったときには会社を休むような行動が重要になります。そこで新型コロナへの感染が疑われるために、会社を休んだ場合の傷病手当金の取扱いについて確認しておきましょう。
1.傷病手当金とは
病気やけがにより労務の提供ができず、会社を休むときで、以下の4つの要件を満たすときには、傷病手当金が支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のために休業すること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与が支給されないこと
2.については通常、傷病手当金支給申請書に、医師の「労務の提供ができないこと」(労務不能)という意見を受けて申請します。
2.感染が疑われる場合の休業に対する補償
新型コロナに感染したときは当然に傷病手当金の対象になりますが、従業員が発熱などの自覚症状があるため自宅療養を行うときの傷病手当金の考え方について、厚生労働省から、協会けんぽおよび健康保険組合(以下、まとめて「保険者」という)宛に、以下の内容が含まれた通達が発出されています。
新型コロナについて、以下のような相談・受診の目安として示されている。
- 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
- 重症化しやすい人で発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
- これら以外の人で、発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
発熱などの症状があり、新型コロナに罹患していることが疑われるため従業員が自宅療養を行っていた期間は、療養のため労務に服することができなかった期間に該当することとなる。
なお、やむを得ない理由により医療機関への受診を行わず、医師の意見書を添付できない場合には、支給申請書にその旨を記載するとともに、事業主からの当該期間、従業員が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類を添付すること等により、保険者において労務不能と認められる場合、傷病手当金を支給する扱いとする。
以上のように申請には、医師の意見が必ず必要とは言えないため、最終的な判断は保険者が行うことになるものの、会社は医師の意見がないことから傷病手当金を申請できないと判断しないように注意しましょう。
傷病手当金はあくまでも社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となっている従業員について支給されるものであり、所定労働時間が短いこと等により社会保険に加入していない従業員は対象になりません。従業員も誤解しやすいため注意しましょう。
(次号に続く)
休業手当を支給したときの定時決定(算定基礎)の方法
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から、従業員を休業させ、通常の給与より低額の休業手当を支給することがあります。この休業手当が、4月から6月の間に支給された場合には、社会保険の定時決定の取扱いにおいて注意が必要となります。以下ではそのポイントを確認しておきましょう。
1.社会保険の定時決定
社会保険の標準報酬月額は、会社が実際に従業員に支給する給与と、標準報酬月額との間に大きな差が生じないようにするため、7月1日に在籍している従業員について、4月から6月の間に支給した給与の額を届け出ることで見直しが行われます。これを社会保険の定時決定(算定基礎)と呼びます。
定時決定で見直された標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年の8月まで適用されます。
なお、6月1日から7月1日までに被保険者の資格を取得した従業員等、一部の従業員は、この届出の対象から除外されます。
2.休業手当を支給した場合の取扱い
社会保険の標準報酬月額を決定する元となる給与には、基本給をはじめ家族手当や役職手当、通勤手当等の各種手当も含まれ、また、会社都合の休業により支給された休業手当も含まれます。休業手当を支給した日は、定時決定における支払基礎日数に含めることになっています。
3.休業手当の支給と定時決定
4月から6月の間に休業手当を支給した場合の定時決定の取扱いは、7月1日時点で休業が終わっている(休業手当を支給しておらず、その後も休業手当を支給する予定がない状況)か否かにより、取扱いが異なります。
基本的な考え方は、休業が終わっている場合は通常の給与を支給した月を対象として定時決定を行い、休業が終わっていない場合は通常の給与を支給した月と休業手当を支給した月の両方を対象にして定時決定を行います。
ただし、休業が終わっているものの、4月から6月のいずれの月も休業手当が支給されている等の様々なケースが想定されます。詳しくは日本年金機構のホームページに掲載されている例を参考にするほか、管轄の年金事務所に確認するか、当事務所にお問い合わせください。
いずれにしても7月1日時点の状況が、定時決定を行う上での判断基準になり、算定基礎届の内容も大きく変わるため、7月1日以降の休業の予定は早めに見極める必要があります。
日本年金機構では、算定基礎届の提出にあたり、記入に係る基本的な事項から具体的事例、提出方法等についての説明動画を作成し、ホームページ上で公開しています。会社都合による休業により、休業手当を支給した場合の対応は「一時帰休による休業手当が支給されているとき」という項目で説明されているので、併せて確認するとよいでしょう。
(次号に続く)
厚生労働省は6月30日、 「高齢者施設における新型コロナウイルス感染症 発生に備えた対応等について」
というタイトルのもと、“有事への備え” のポイントについて、 改めてまとめた通知を公表しました。
詳細は下記をご確認ください。
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2020/0701090843379/ksvol.853.pdf?from=rss
【介護・保育】人材定着ブログ6月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは⑫」
の続きです。
今回はキャリアパスの大きな柱となる「賃金制度」に関してお伝えしていきます。
賃金制度は各施設の考え方がもっとも強く反映されるために、施設ごとにその制度や仕組みは大きく異なります。したがって、賃金制度の見直しを行う場合でも、実際にはすべて事業所毎個別の対応が必要になります。従って、今回は賃金制度の基本的な考え方とキャリアパス制度を前提にした賃金制度の概論についてお伝えしていきます。
1、賃金に関する基本的な考え方
(1)人件費をコントロールする手段としての賃金制度の考え方
(2)職員にとっての生活を確保する生活費としての考え方
(3)職員をやる気にさせるための機能としての賃金制度の考え方
この3つの考え方をどう融合させるかを検討することが賃金制度を設計するうえで最大のポイントなります。コストとしてだけで賃金を捉えた時に、それがどのような結果
につながるのかはご承知の通りと思います。
2、福祉サービス事業の人件費管理
また、福祉サービス事業は、基本的には利用者定員と単価の掛け算で事業収入の
ほとんどが決定されます。つまり利用者定員に対して、利用率が100%で、かつ
合理性のある加算を全て付与したときに得られる収入が、収入上限ということに
なります。上限はおのずと決まってくることを考えれば、人件費にあてられる
原資、つまり総収入から人件費以外の経費や内部留保等を引いた資金ということ
になります。
そこでの最大の課題は、その原資をどのように分配するかということになります。
例えば、人材確保のための分配、職員のモチベーションを高める為の分配などを
総合的に勘案し、バランスの取れた人件費管理が必要になります。
3、介護業界における賃金制度に関する課題
(1)ベースアップと昇給の混同による昇給額の一律管理
事業の継続的な業績変動によって、職員の基本給を一律で変動させるものがベースアップです(ベースダウンもあり得る)。一方で、一年単位での業績変動に対する職員の貢献度合い手で変動するものが昇給ということになります。したがって、昇給は職員各自の評価によって変動するものということになります。しかしながら、いまだに一律的な管理で昇給を行っている介護施設はとても多いのが現実です。
(2)賞与支給を月数で固定化(保証化)している。
多くの事業が、賞与支給を本給〇か月といった決定方式をとっています。この方式は、職員にとってのわかりやすさや計算の簡便さからシンプルでわかりやすいものですが、ご承知のとおり、この考え方には限られた財源での分配という考え方ではありません。また、法人の業績反映による変動や個人の成績による変動という要素は一切考慮されていないものです。今後のような仕組みは減少傾向になっていくもの思われます。
(3)中途入職者に対し、前職の給与保証という考え方で採用を行うため、現職者とのアンバランスが多く発生している。
(4)介護保険発足当時の高い報酬であった時代に入職されたた職員と最近入職された若年層では水準自体が大きく異なっており「中だるみ減少が職員の不満要因につながっている。
(5)給与制度自体の説明が行われていないことから、職員が給与の仕組みをまったく理解していない。それがモチベーションにも影響している。
上記の通り介護業界には多くの課題を抱えた賃金制度が多い為、これからはキャリアパス制度構築を契機に仕組みの見直を検討していくときに来ているのではないかと考えています。
4、現状の賃金制度の分析
具体的な給与体系の設計に入る前に、現状の賃金実態を分析的な視点で眺めてみることも大切です。この分析により、今後の改善の方向性や留意点が明らかになり、新しい賃金制度の意義も理解しやすくなるはずです。
また分析には、分析用のプロット図を作ってみることが必要です。全体の賃金バラつきがどのような傾向があるのか、またその中で個人はどのような位置にいるかを把握するにはプロット図が必要になります。
職場における賃金バランスプロットサンプルの事例(年齢別の事例)