介護
介護離職の防止に活用できる助成金
介護離職者数は1年間で10万人いるとされ、国は介護離職ゼロを目指し、介護離職を防止するための助成金(両立支援等助成金(介護離職防止支援コース))を設けています。この助成金は以前からありましたが、今年度、支給対象の変更、要件の一部緩和が行われています。そこで今回は、この助成金の概要をとり上げます。
1.介護離職防止支援コースとは
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)は、中小企業を対象としたもので、介護支援プラン(以下、「プラン」という)を策定し、このプランに基づいて従業員の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ、または介護両立支援制度を導入し利用する従業員が生じた場合に、助成されるものです。
①介護休業
介護休業に対する助成は、休業取得時と職場復帰時の2つに分かれます。主な要件は以下のとおりです。
<休業取得時>
・介護休業の取得、職場復帰についてプランにより支援する措置を実施する旨を、就業規則等に規定し従業員へ周知すること。
・介護に直面した従業員との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望などを確認の上、プランを作成すること。
・作成したプランに基づき、業務の引き継ぎを実施し、対象となる従業員に合計14日以上の介護休業を取得させること。
<職場復帰時>
※休業取得時と同一の対象従業員であるとともに、休業取得時の要件かつ次を満たすことが必要です。
・休業取得時にかかる同一の対象従業員に対し、その上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること。
・上記面談結果を踏まえ、対象従業員を原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も引き続き雇用保険の被保険者として3ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していること。
②介護両立支援制度
介護両立支援制度についても、①の介護休業の主な要件と同様に、就業規則等に規定・周知し、作成したプランに基づき業務体制の検討を行うことが必要です。さらに、以下のいずれか1つ以上の介護両立支援制度を導入し、対象従業員に利用させ、制度利用終了後も引き続き雇用保険の被保険者として1ヶ月以上雇用し、支給申請日においても雇用していることが必要になります。
・所定外労働の制限制度・介護のための在宅勤務制度
・時差出勤制度・法を上回る介護休暇制度
・深夜業の制限制度・介護のためのフレックスタイム制度
・短時間勤務制度・介護サービス費⽤補助制度
2.助成額
①介護休業
<休業取得時>1人につき28.5万円(36万円)
<職場復帰時>1人につき28.5万円(36万円)
②介護両立支援制度1人につき28.5万円(36万円)
※①②とも1企業1年度5人まで助成
()内は生産性要件を満たした場合
上記のほか、助成金には様々な要件が設けられていますので、活用を検討される場合は事前にその内容を確認しておきましょう。
(次号に続く)
「社員の紹介制度」を浸透させるコツ
スタッフに協力を要請し、新たな人員として友人を紹介してもらうシステムを「紹介制度」と言います。この制度と合わせて是非入れて頂きたいのが、入社が決まった場合に、紹介したスタッフとその友人に数万円づつ支給する「お祝い金」制度です。最近では導入する事業所も増えてきました。スタッフと求職者にとってはよい臨時収入ですし施設側もある程度信頼のおける人が採用でき、求人広告を掲載するよりも大幅にコストが改善されるので双方ともにメリットがあります。さらに、この制度は「口コミ」ならでは魅力があります。
この紹介制度は、友人紹介の為、事業所のリアルなだけでなく、非常に信頼度の高い情報が得られます。そのため、入社後にギャップを感じることもなく、結果的に定着率も高くなります。この制度で大人数を採用することは難しいと思いますが、うまく制度が定着すれば大きなメリットがあります。
とはいっても、紹介制度が定着するまでには、ある程度時間を要します。「お金が欲しくて友達を紹介すると思われたくない」と抵抗を感じるスタッフも少なくないようです。では、実際に制度を浸透させるには、どのようなポイントを押さえておく必要が有るのでしょうか。
ポイント1
「職場にとってのメリットを説明する」
「紹介制度を導入するから、皆さん協力してください」と言ったアナウンスだけでは、スタッフは積極的に動きません。ポイントは、紹介者個人ではなく、職場全体にとってのメリットをきちんと説明することです。信頼できる人材の採用は「スタッフの働きやすさ」にもつながるはずです。その点をしっかり説明しましょう。
ポイント2
「紹介実績はオープンに」
いざ、紹介制度を通じて入社に至った場合は、全体のミーティングなどで公表することをお勧めします。運営側が公表しなければ、「あの人、○○さん紹介してお祝い金をもらったらしいよ」といった噂のような形で情報が広まる可能性があります。そうなると、紹介して「お祝い金」を受け取ることが、後ろめたいことに感じられてしまいます。ある事業所ではミーティングの際に、「今回は〇〇さんが新しいスタッフを紹介してくれました!」と発表し、みんなで拍手して讃える、という風土を作って成功しています。気持ちよく紹介と入社をしてもらえる素地を作ることが大切です。
ポイント3
「根気よく発信し続ける」
制度が浸透するまでは、申し送りやミーティングなど定期的にスタッフが集まる場で繰り返し発信し続けることが大切です。ある事業所では、一か月毎日申し送りで伝え続け、やっとスタッフに認知されてきたといいます。根気よく、浸透するまで紹介制度の協力してもらえるよう、発信し続けてみましょう。
2019年8月末の届出期限が近づく中、一層の関心が高まりつつある「介護職員等特定処遇改善加算(以降、本加算と表記)」。そんな中、4月12日に公表された介護保険最新情報Vol.719 Q&A(第一弾)に引き続き、今月7月23日には第二弾Q&Aが示されました。第二弾で示されたQ&Aの数は全部で21項目。中には「当初より柔軟性が増したな」と感じられるような内容も含まれています。今回のニュースレターでは、その各々の項目の内容について確認・解説してまいります。
問1】
介護福祉士の配置等要件(サービス提供体制強化加算等の最も上位の区分を算定していることとする要件。以下同じ。)について、年度途中で、喀痰吸引を必要とする利用者の割合に関する要件等を満たせないことにより、入居継続支援加算等を算定できない状況が常態化し、3ヶ月以上継続した場合に、変更の届出を行うとされているが、特定加算(介護職員等特定処遇改善加算をいう。以下同じ。)の算定はいつからできなくなるのか。
⇒上記問いの中にも記載がある通り、「喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせないことにより、入居継続支援加算等が算定できなくなった場合については、直ちに変更することを求めるものではなく、当該状況が常態化し、3か月間を超えて継続した場合に変更の届出を行えばよい」というルールが存在しています。そのルールを前提に、本加算についてもその届出と合致させたタイミングでの届出が必要となることを意識しておく必要があるでしょう(=変更届を出した翌月、即ち4か月目より本加算の算定が出来なくなる)。続いて2つ目のQ&Aについてです。
【問2】
問1のような特定加算の区分の変更の届出に関する3か月間の経過措置について、訪問介護における特定事業所加算も同様の特例が認められるのか。
⇒考え方としては同様です。が、訪問介護については、「特定事業所加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)の算定により介護福祉士の配置等要件を満たすことができる」となっており、喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせず特定事業所加算(Ⅰ)が仮に算定できなくなったとしても、特定事業所加算(Ⅱ)の要件を満たしていれば3ヶ月の経過措置の対象とはなりません。更に付言すると、特定事業所加算(Ⅱ)を算定できない場合には本加算(Ⅱ)を 算定することとなるため、変更の届出が必要であることを認識しておきましょう。続いて3つ目のQ&Aについてです
【問3】
特定加算(Ⅰ)について、計画届出時点において、介護福祉士の配置等要件を満たしてなければ算定できないのか。
⇒原則的には計画書策定時点においてサービス提供体制強化加算等を算定している等、介護福祉士の配置等要件を満たしていることが必要ですが、それらは絶対条件ではなく、「計画書策定時点では算定していないものの、特定加算(Ⅰ)の算定に向け、介護福祉士の配置等要件を満たすための準備を進め、特定加算の算定開始時点で、介護福祉士の配置等要件を満たして」いれば算定することが可能であることも理解しておきましょう。続いて4つ目のQ&Aについてです。
【問4】
介護予防・日常生活支援総合事業における訪問介護従前相当サービスについては、 特定事業所加算がないところ、特定加算(Ⅰ)を算定するにはどうすれば良いか。
⇒「地域支援事業実施要綱」では「対象事業所が、併設の指定訪問介護事業所において特定事業所加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定していることを要件とする」と定められています。届出の際には、併設の訪問介護事業所の特定事業所加算の取得有無を確認する必要があることを踏まえておきましょう。続いて、5番目のQ&Aについてです。
【問5】
事業所において、介護プロフェッショナルキャリア段位制度を導入し、人事考課と連動している場合、職場環境等要件の「資質の向上」の取組を行っている事業所として取り扱って良いか。また、現行加算のキャリアパス要件を満たしたことになるのか。
⇒結論として、「現行加算のキ ャリアパス要件(Ⅱ)は満たされる」「職場環境等要件の「資質の向上」の項目の一つである「研 修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動」の取組を行っているものとして取り扱われる」ことになります。続いて6番目のQ&Aについてです。
【問6】
見える化要件(特定加算に基づく取組についてホームページへの掲載等により公表することを求める要件。以下同じ。)について、通知に「2020年度より算定要件とすること」とあるが、2019年度においては特定加算に基づく取組を公表する必要はないのか。
⇒当該要件については、特定加算も含めた処遇改善加算の算定状況や、賃金以外の処遇 改善に関する具体的な取組内容に関する公表を想定しているため、2019年度においては要件としては求めず、2020年度からの要件となっています。続いて7番目のQ&Aについてです。
【問7】
情報公表制度の報告対象外でかつ事業所独自のホームページを有しない場合、見える化要件を満たすことができず、特定加算を算定できないのか。
⇒本要件はあくまで「外部の者が閲覧可能な形で公表」することが求められているものであり、公表方法はホームページに限った訳ではなく、事業所・施設の建物内の入口付近など外部の者が閲覧可能な場所への掲示等の方法により公表することでも要件として充足されることを認識しておきましょう。続いて、8番目のQ&Aについてです。
【問8】
特定加算(Ⅱ)の算定に当たっては、介護福祉士の配置等要件を満たす必要がないが、この場合であっても、経験・技能のある介護職員のグループを設定する必要があるのか。
⇒介護福祉士の配置等要件はあくまで特定加算(Ⅰ)の算定要件である一方、経験・技能のある介護職員のグループの設定等は事業所内における配分ルールとなっており、根本的に質が異なる要素となっています。このため、特定加算(Ⅱ)を算定する場合であっても、経験・技能のある介護職員のグループの設定が必要となります(なお、事業所の事情に鑑み経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいない場合の取扱いについては、(Vol.1)問5を参照下さい)。続いて、9番目のQ&Aについてです。
【問9】
2019 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(平成 31 年4月 12 日)問6に「月額8万円の処遇改善を計算するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分と分けて判断することが必要」とされているが、「役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)以上か」を判断するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することは可能か。
⇒年収 440 万円を判断するに当たっては、現行の介護職員処遇改善加算による改善を含めて計算することが可能です。続いて、10番目のQ&Aについてです。
【問10】
経験・技能のある介護職員のグループにおいて、月額8万円の改善又は年収 440 万円となる者を設定することについて、「現に賃金が年額 440 万円以上の者がいる場合には この限りでない」とは、具体的にどのような趣旨か。
⇒「特定加算による改善を行わなくとも、経験・技能のある介護職員のグループ内に既に賃金が年額 440 万円以上である者がいる場合には、当該者が特定加算による賃金改善の対象となるかに関わらず、新たに月額8万円の改善又は年収 440 万円となる者を設定しなくても特定加算の算定が可能」という趣旨となっています。 続いて11番目のQ&Aについてです。
【問11】
事業所における配分方法における「ただし、その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合はこの限りでないこと。」とはどのような意味か。
⇒その他の職種の平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合においては柔軟な取扱いを認め、両グループの平均賃金改善額が等しくなる(1:1)までの改善が可能となります。続いて、12番目のQ&Aを見てまいりましょう。
【問12】
介護給付のサービスと介護予防・日常生活支援総合事業を一体的に運営している場合であっても、月額8万円の改善又は年収 440万円となる者を2人設定する必要があるの か。また、その場合の配分ルール(グループ間の平均賃金改善額 2:1:0.5)はどのような 取扱いとなるのか。
⇒介護給付のサービスと介護予防・日常生活支援総合事業を一体的に行っており、同一の就業規則等が適用される等労務管理が同一と考えられる場合は、法人単位の取扱いを適用するのではなく同一事業所とみなし、「月額8万円の改善又は年収440 万円となる者を1人以上設定すること」「配分ルールを適用すること」により、特定加算の算定が可能となります。なお、介護給付のサービスと予防給付のサービス(通所リハビリテーションと予防通所リハビリテーションなど)、特別養護老人ホームと併設されている短期入所生活介護、介護老人保健施設と短期入所療養介護等についても、同様の考え方を踏襲することも認識しておきましょう。続いて、13番目のQ&Aについてです。
【問13】
本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員について、 「その他職種」に区分し、特定加算による処遇改善の対象とすることは可能か。
⇒特定加算の算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、その他の職種に含めることができます。 続いて、14番目のQ&Aについてです。
【問14】
事業所内での配分方法を決めるにあたり、「他の介護職員」を設定せず、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」のみの設定となることは想定されるのか。
⇒事業所毎に「経験・技能のある介護職員」のグループを設定することが必要となりますが、介護職員の定着が進み、勤続年数が長くなったこと等により、当該事業所で働く介護職員全てが、「経験・技能のある介護職員」であると認められる場合には、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」のみの設定となることも想定することができます。なお、その場合における配分ルールについては、当該事業所における「経験・技能のある介護職員」の平均賃金改善額が、「その他の職種」の平均賃金改善額の4倍以上となることが必要です。続いて、15番目のQ&Aについてです。
問15】
特定加算によって得られた加算額を配分ルール(グループ間の平均賃金改善額が 2:1:0.5)を満たし配分した上で、更に事業所の持ち出しで改善することは可能か。
⇒各事業所において特定加算による処遇改善に加え、事業所の持ち出しで処遇改善を行うことは可能です。尚、この場合においては、特定加算による賃金改善分について配分ルールを満たしていることを確認するため、実績報告書における賃金改善所要額、グループごとの平均賃金改善額等においては、特定加算による賃金改善額を記載のうえ、持ち出しにより更なる賃金改善を行った旨を付記する必要があることに注意が必要です(改善金額の記載までは不要)。続いて、16番目のQ&Aについてです。
【問16】
看護と介護の仕事を 0.5 ずつ勤務している職員がいる場合に、「経験・技能のある介護職員」と「その他の職種」それぞれに区分しなければならないのか。
⇒勤務時間の全てでなく部分的であっても介護業務を行っている場合は、介護職員として「経験・技能のある介護職員」もしくは「他の介護職員」に区分することは可能です。なお、兼務職員をどのグループに区分するか、どのような賃金改善を行うかについては、労働実態等を勘案し、事業所内でよく検討し、合理的な判断を下すことが求められます。続いて、17番目のQ&Aについてです。
【問17】
介護サービスや総合事業、障害福祉サービス等において兼務している場合、配分ルールにおける年収はどのように計算するのか。
⇒どのサービスからの収入かに関わらず、実際にその介護職員が収入として得ている額で判断して問題ありません。続いて、18番目のQ&Aについてです。
【問18】
その他の職種に配分しない場合、計画書は空欄のままでよいか。
⇒その他の職種に配分しない場合等においては、人数部分について「0(ゼロ)」等と記載する等、記入漏れと判断されることがないように対応しておくことが必要です。続いて、19番目のQ&Aについてです。
【問19】
「役職者を除く全産業平均賃金(440 万円)」とはどのような意味か。440 万円を判断するにあたり、役職者は抜いて判断する必要があるのか。
⇒年額 440 万円の基準を満たしているか判断するに当たっては役職者であるかどうかではなく、事業所毎で設定された、経験・技能のある介護職員の基準に該当するか否かで判断することが可能です。
【問20】
本来は 10月から特定加算を算定し、これによる賃金改善を行うことになるが、法人・ 事業所の賃金制度が年度単位であることに合わせるため、年度当初から特定加算を織り込んで賃金改善を行いたいと考えた場合、4~10 月分の賃金改善に特定加算を充てることは可能か。(例:10 月から月2万円の賃金改善を行うのではなく、4月から月1万円の賃金改善を行う場合)
⇒今般の特定加算については年度途中から開始するものであり、給与体系等の見直しの時期が、年に1回である事業所等において、既に年度当初に今回の特定加算の配分ルールを満たすような賃金改善を行っている場合も十分に想定されます。
こうした場合にはその年度当初から 10 月より前に行っていた賃金改善分について、介護 職員等特定処遇改善加算を充てることも可能です。 なお、当該取扱いを行う場合にあっても介護職員の賃金低下につながらないようするとともに、事業所内でよく検討し、計画等を用いて職員に対し周知することが必要です。
【問21】
法人単位で複数事業所について一括申請しており、そのうち一部事業所において加算区分の変更が生じた場合、変更届出は必要か
⇒計画書における賃金改善計画、介護福祉士の配置等要件に変更が生じた場合は、必要な届出を行うことが必要となります。
以上、第二弾のQ&Aについて雑駁ながら内容の確認及び解説をさせていただきました。筆者個人の見解としては、「問13」「問19」「問20」のQ&Aに注目した次第です。本ニュースレターに目を通していただいているのは恐らく、届出締切まであと約1か月を切り始めている頃かと思われますが、事業者としては(Q&A第一弾含め)あらためて現時点の全情報を網羅しつつ、経営目線、職員目線(=新たな仕組みが職員から見て魅力的に映っているか?定着促進のインセンティブとして機能出来そうか?etc)」、そして地域内競合目線(=同地域内の法人はどのような手を打ってくるか?etc)」という3つの目線に気配り・目配りを行いながら、「これがベストだ」と思うことができる水準に達するまで想定額の算出や職員の区分割りなどに対して頭を働かせること(=心構えを含めた事前準備)が重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続きの情報収集を含め、新たな視点が得られ次第、皆様に向けて発信してまいります。
今回は職員採用についてです。
多くの事業主様とお話していて、人手が足りない、募集しても集まらない・・・などの
声はよく聞かれます。また、一方では、人手不足でも全く悩みがほとんどない、といった
事業所もあります。つまり事業所単位で状況は大分異なるというのが実情のようです。
つまり「世間でいう人手不足と個別の事業所の人手不足は全然違うこと」という事なのではないかと思います。
例えば、業界は違いますが、コンビニ業界も人手不足は深刻といった話は聞きますが、
なぜか人が集まるお店の店長からは、「この店ならいろいろ学べて、店長もしっかり叱ってくれ、自分が成長できる」という趣旨の内容の口コミ(SNS)で人が集まってくる、といった話をお聞きしました。
また、介護事業所でも同様なことはよくお聞きします。つまり人材不足に悩んでいない事業所の共通点は・・・「今いるスタッフの口コミで人が集まる」事業所といっても良いのではないかと思います。
考えてみますと、求人広告の出し方、媒体の選び方、派遣、人材紹介など・・・いろいろ手段を尽くすことも大切なのですが、せっかく来てくれてもいい人は辞めてしまう、といった状況を変えていかなければ結局同じことです。
「今いるスタッフの口コミで人が集まる」事業所とは、結局は「ひとに紹介したような職場になっているか」ということだと思います。
やはり、大切なことは「人に紹介したくなうような職場の「雰囲気」「組織風土」であること」なのだろうと、現場を見ていてつくづく感じます。
そんな事業所のエピソードを一つご紹介いたします。この内容は、ある事業所の社内報から抜粋させて頂いております。
「働きたくなる職場づくり」へ
居心地の良い事務所作りから、活きたコミュニケーションを通じて
「信頼関係」づくりへ
社内報からのエピソードを抜粋
「ヘルパーさんは入り口で用を済ませるとすぐに帰ってしまいます。なので、事務所の移転の際に事務所の奥にヘルパーさんがゆっくり作業できる場所を作りました。ヘルパーさんが中に入ってくることで、利用者の方の様子を伺えたり、仕事の悩みを聴く機会が増えました。会話が増えることで、新規の依頼もお願いしやすくなってきました。4月以降は稼働時間を増やしたいと言ってくれるヘルパーさんが増えてきています。
又、二人の優秀なサ責の力がとても大きいです。今後私の目標は常勤の二人が有給をしっかり消化できる環境を作りたいと考えています。良い介護を提供するには心も体も元気でなくてはなりません。しっかり休みをとり自分の楽しむ時間を確保してあげたいです。収支も改善し、さらに一名増やしたいと思っています」。
この事業所も、従来は、人が集まらず、来てもやめてしまうような職場であったと聞いています。ただ、いまは「社員の紹介」で来られる社員、パート、ヘルパーが最も多いと言われていました。
次回は、「社員の紹介制度」に関し、事例をもとにご紹介したいと思います。
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『就業規則を改定した際の職員への周知』
Q:
服務規律に違反する行為があった職員に就業規則を示して注意を行ったところ、「見せてもらったことがないので、そんなルールには従えない」と言われてしまいました。数年前に就業規則の改定をした際、職員代表から意見書を提出してもらいましたが、それ以降は施設長室に保管されたまま、職員が閲覧することができない状態です。今回、就業規則を適用するのは問題ないのでしょうか。
A:
労働基準法には、就業規則の作成や改定にあたって、職員代表からの意見聴取、及び労働基準監督署への届出が必要とされていますが、あわせて職員にその内容を周知することが必要であると定められています。周知を怠ったときには、その就業規則の有効性が否定される場合があるため、就業規則が周知できている状態を整えることが必要です。
詳細解説:
就業規則は、そもそも必ず記載しなければならない項目(絶対的必要記載事項)が網羅されていることが必要不可欠となりますが、記載内容だ
けではなく、労働基準監督署への届出など、以下の事項の実施が求められています。
① 就業規則を適⽤する事業所の職員のうち過半数を代表する者の意⾒を聴くこと(労働基準法第90 条)
② 管轄する労働基準監督署への届け出を⾏うこと(労働基準法第89 条)
③ 作成した就業規則を職員に周知していること(労働基準法第106 条)
このうち③の周知とは、職員が見やすい場所に掲示したり、職員が閲覧できるパソコンに保存、印刷した就業規則を交付するといった方法が挙げられます。
就業規則を作成・改定した際に①、②まで行っても、施設長や人事担当者等の限られた者のみが開閉できる書庫に保管しているなど、事実上、周知がなされていない場合があります。このとき、職員に周知していなかったことを理由に、就業規則に定めた施設内のルールに従わせることができない場合があります。そのため、就業規則を周知できていない場合には、違反行為に苦慮していることを説明し、今後の行動を改めてもらうように話すとともに、今後、就業規則が施設内のルールとして有効となるよう、閲覧できるようにするなどの対応を行うことが必要です。
この周知に関しては、就業規則だけでなく時間外・休日労働に関する協定書、年次有給休暇の計画的付与に関する協定書など、職員への周知が必要とされる労使協定もあります。周知が十分にできていないと考えられる場合は、すぐに対策を行うようにしましょう。
(来月に続く)
福祉関連業種における夏季賞与の支給状況
ここでは夏季賞与支給の参考資料として、厚生労働省の調査結果※から直近5 年間(2014~2018年)における、福祉関連業種の夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを事業所規模別にご紹介します。
児童福祉事業の30~99 人以外は減少に
上記調査結果から業種別に1 人平均支給額などをまとめると、下表のとおりです。
2018 年の1 人平均支給額をみると、児童福祉事業の30~99 人以外は前年より減少しました。きまって支給する給与に対する支給割合では、老人福祉・介護事業が5~29 人、30~99 人ともに1 ヶ月分未満が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、児童福祉事業と障
害者福祉事業の30~99 人で直近5 年中4 年が100%ですが、5~29 人ではどの業種も100%になった年はありません。
今年の夏季賞与は、どうなるでしょうか。
※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。今回のデータは 2019 年 4 月に発表されたものです。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の 1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次の URL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015911&tclass2=000001040061&second2=1
(次号に続く)
キャッシュレス・消費者還元事業と介護
今秋の消費税率引上げとともに始まるキャッシュレス・消費者還元事業。消費者のみならず、導入する中小・小規模事業者にもメリットがあります。介護事業との関連はどうでしょうか。確認してみましょう。
キャッシュレス・消費者還元事業とは
この事業は、消費税率引上げ後の9 ヶ月間、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段(クレジットカード等)を使ったポイント還元等を支援する事業です。
消費者が5%の還元を受けられることは報道等でも広く周知されていますが、キャッシュレス決済を採用する事業者も、この事業により自己負担なしで決済端末の導入ができる他、期間中の決済手数料について3 分の1 を国が補助する制度など、メリットがあります。
このメリットを享受するには登録が必要ですが、介護サービスや社会福祉事業等を行う事業者は、この登録の対象外に設定されています。
医療・介護分野は基本的に対象外
医療・介護分野では、以下の事業者は、原則として登録対象外となります。
- 健康保険法、国⺠健康保険法、労災保険、⾃賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を⾏う保険医療機関及び保険薬局
- 介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスを提供する介護サービス事業者
- 社会福祉法に規定する第⼀種社会福祉事業、第⼆種社会福祉事業及び更⽣保護事業法に規定する更⽣保護事業を⾏う事業者
ただし、上記の事業者が行う事業であっても、例えば特定福祉用具販売事業所が行う特定福祉用具販売等、一部補助対象となる場合もあります。下表でご確認ください。
(次号に続く)
キャッシュレス・消費者還元事業と医療
今秋の消費税率引上げとともに始まるキャッシュレス・消費者還元事業。引上げ後の9 ヶ月間、中小・小規模事業者のキャッシュレス手段を使ったポイント還元等を支援する事業ですが、医療機関との関連はどうでしょうか。
診療は全て補助対象外
消費者への還元が広く周知されているこの事業ですが、自己負担なしでの決済端末の導入や、決済手数料の一部補助が受けられるなど、事業者側にもメリットがあります。
このメリットを享受するには登録が必要ですが、保険医療機関は登録対象外です。また、要領※1 によれば、保険医療機関であるか否かに関わらず、保険適用外のいわゆる自由診療(自費診療)についても補助が受けられません。つまり、全ての医療機関が行う診療は、保険・自費に関わらず補助の対象外となります。
売店は MS法人の運営なら対象に?
その他、FAQ※2 によれば、運営者が保険医療機関の院内売店は登録対象外ですが、たとえばMS(メディカルサービス)法人であれば、当該法
人の規模で判断します。
なお、保険薬局や介護福祉事業者は原則として登録対象外ですが、補助の対象となる事業もあります(下表参照)。ご留意ください。
(※1)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「加盟店登録要領」
https://cashless.go.jp/assets/doc/kameiten_tourokuyouryou.pdf
(※2)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・消費者還元事業 決済事業者向けFAQ」
http://cashless.go.jp/assets/doc/cashless_kessai_FAQ.pdf
(次号に続く)
いよいよ9月に発効となる日・中社会保障協定
諸外国の中で、日本と人的交流がもっとも多い中国との社会保障協定ですが、2018年5月9日に署名が行われ、今年9月に発効となることが正式に決定しました。
そこで、この社会保障協定の概要と、現在締結されている各国との社会保障協定についてとり上げます。
1.社会保障協定の前提にある課題
①年金制度への二重加入の課題
従業員を海外勤務させ、勤務している相手国の年金制度の加入要件を満たした場合には、海外で勤務している期間について日本と相手国の年金制度に二重で加入することが必要となります。
その結果、両方の制度で二重に保険料を負担することになります。これは、外国人労働者を雇入れた場合にも同様のことがいえます。
②年金受給資格と保険料負担の課題
老齢年金を受給するためには、通常、日本においても海外の年金制度においても一定期間、該当する年金制度に加入する必要があり
ます。
しかし、短期間海外勤務をさせた場合や外国人労働者を短期間雇用した場合には、その期間だけ年金制度に加入することになり、老齢年金を受給するためには加入期間が不足します。その結果、支払った保険料が掛け捨てになるという問題が生じます。
2.現在締結されている社会保障協定
これらの課題を解決するため、日本と相手国との間で社会保障協定を締結し、いずれかの国の年金制度の加入を免除したり、年金の加入期間を通算して、将来年金を受給できるようにするなどの対応が行われています。この社会保障協定の内容は、国ごとに内容が異なり、年金のみの場合と、年金と医療保険の両方の場合があるため、個別に内容を確認す
る必要があります。
2019年6月1日時点における、日本の社会保障協定の締結状況は下表のとおりとなります。
すでに社会保障協定が締結されている国は現在18ヶ国あり、中国についてもこの9月1日に発効予定となりました。
今回の中国との社会保障協定の実施にあたり、事務手続きの詳細や注意事項等について、6月下旬に日本年金機構のホームページに掲載されることになっています。また日本年金機構(年金事務所および事務センター)では、中国の年金制度への加入が免除されるために必要な書類である「適用証明書」の交付申請を、協定発効日の1ヶ月前(2019年8月1日)より受け付ける予定です。
(来月に続く)
育児休業中に一時的に勤務した場合の育児休業給付金の取扱い
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:現在、経理部門が決算業務で、とても忙しくしています。経理部門の従業員が昨年
12月から育児休業を取っているので、短期間でもいいので一時的に出勤してもらお
うと考えています。特に問題はないのですよね?
社労士 :繁忙期を乗り切るための一つの対策ですね。育児休業中のご本人はどのように考え
ているのでしょうか。
総務部長:育児にも慣れてきて、短時間の勤務であれば問題ないとのことでした。ただし、雇
用保険の育児休業給付金がもらえなくなってしまうのではないかと心配しています。
社労士 :確かに支給単位期間(※)に10日を超えて働き、かつ、80時間を超えて働いている
ときは、育児休業給付金が支給されなくなるというルールがあります。
総務部長:ということは、引続き育児休業給付金が支給されるようにするためには、この基準
を下回るような出勤日数や出勤時間にする必要があるということですね。
社労士 :育児休業給付金の受給ができるかという観点では、おっしゃるとおりです。もう一
つは、勤務したときに支給される給与の額が関係してきます。
総務部長:一時的に出勤してもらうので、給与については休む前の月給を時給換算し、その時
給額に勤務した時間数を掛けた額を支払う予定です。
社労士 :承知しました。育児休業給付金は、支給単位期間に、育児休業を開始したときに算
出する賃金月額の13%を超える給与が支給されると調整の対象となり、80%以上の
給与が支給されると支給されなくなります。
総務部長:休業している従業員が、休業する前にどの程度の給与の額をもらっていたかという
ことが関係してくるのですね。今のところ、決算が終わるまでの2ヶ月弱の間、週2
~3回で1日当たり4時間程度の勤務を考えていましたが、育児休業給付金の支給額と
の調整も含めて、どの程度、働いてもらうかを考えることにします。ありがとうご
ざいました。
※育児休業を開始した日から1ヶ月ごとの期間(育児休業終了日を含む場合は、その育児休
業終了日までの期間)。
【ワンポイントアドバイス】
1. 会社の業務の繁忙等のため、育児休業中の従業員について、休業者本人の同意を得て一時的に労務の提供を受けることは可能である。
2. 育児休業中に、一定の出勤日数・出勤時間を超えて働くと育児休業給付金は支給されなくなる。
3. 育児休業中に一定額以上の給与が支給されたときは、育児休業給付金の一部が減額されたり、支給されなくなったりする。
(次号に続く)