介護
働き方改革に取り組む中小企業が人材を確保する際に活用できる助成金
新年度となり、さまざまな助成金制度が新設・変更されていますが、中小企業対象の注目の助成金として、「人材確保等助成金(働き方改革支援
コース)」が新設されました。これは人材の雇入れに対する助成金制度で、活用する場面も比較的多いと思われますので、以下ではこの制度の概要をとり上げましょう。
1.助成金の概要
この助成金は、働き方改革を進める上で、人材を確保することが必要な中小企業が、新しく労働者を雇入れ、人材の配置の変更、労働者の負担軽減に取り組む場合に助成されるものです。
助成金の対象となる事業主は時間外労働等改善助成金の支給を受けた中小企業です。具体的には平成29年度であれば旧職場意識改善助成金の指定されたコース、平成30年度以降であれば時間外労働等改善助成金の指定されたコースの支給を受けていることが必要です。
なお、平成31年度以降に指定されたコースの支給を受けた事業主も対象になります。
2.助成額
助成金を受給するためには、労働者を初めて雇入れる予定日の属する月の初日の6ヶ月前の日から1ヶ月前の日の前日までに、雇用管理改善計画を作成し、都道府県労働局の認定を受ける必要があります。
その後、認定された雇用管理改善計画に基づき、新たな労働者を雇入れた上で、雇用管理改善を実施し、1年間取り組んだ後に申請することで、各種要件を満たした場合に「計画達成助成」、計画開始から3年経過後に生産性要件等を満たした場合に「目標達成助成」が支給されます。支給額は以下のとおりです。
[計画達成助成]
雇入れた労働者1人当たり60万円
短時間労働者※1人当たり40万円
支給対象となる労働者は10人を上限とし、
雇用管理改善計画認定通知書に記載された認
定金額を上限に支給されます。
[目標達成助成]
労働者1人当たり15万円
短時間労働者※1人当たり10万円
ただし、支給の算定人数の上限があります。
※週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者
3.活用にあたっての注意点
新たに労働者を雇入れても、計画開始前後の労働者数を比較し、人員増とならない場合には助成金が支給されないなど、細かな要件が設けられています。そのため、活用を検討している場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
この助成金を受給するための前提となる時間外労働等改善助成金の指定されたコースには、時間外労働上限設定、勤務間インターバル導入、職場意識改善の3つがあります。働きやすい環境づくりに向けて、労務管理担当者に対する研修、タイムカードなどの労務管理用機器や労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新などの取組みを予定している企業については、時間外労働等改善助成金への取組みをした上で、更に人材確保が必要なときには本助成金の活用を検討することになります。
(次号へ続く)
リーダー職・管理者層の育成に関して、幹部の方から御相談をお受けすることがあります。「うちの現場のリーダーは、仕事は素晴らしいけど、部下からあまり信頼されていない」「部下に仕事を任せられなくて、自分で抱え込んでしまい部下が育たない」など・・・
職場の風土を創り出すためには、リーダーはとても大きな存在です。リーダーの振る舞い一つで、職場の雰囲気がガラッと変わることもよくあります。
介護業界に長年携わっている社労士として、今、介護現場に求められるリーダー像とはどんなリーダーなのかを、現場の多くの職員と話しながら一緒に考えてきました。それを形にした研修が「リーダーの職場実戦力&人間力向上研修」なのです。
職員の定着率を安定させるには、職場のリーダーはとても大きな存在です。ただ、そこには管理者のマネジメントスキルだけではなく、リーダーとして必要な「人間力」もまた求められます。
この研修では、リーダーが職場で抱える問題に対処出来る「マネジメント力」を身に付けて頂くと共に、リーダーシップを発揮するために必要な「人間力」も事例を通じて学んで頂きます。また、ワークを通じて、受講者の「気づき」を促し、各職場での実践力も養います。
介護リーダーに必要なマネジメント力(職場実践力)とは
例えば、介護現場では、いつも何かに追われているのが介護リーダーではないでしょうか?とにかく忙しい、介護リーダーの方々に、その役割を聞いてみると、様々なご意見を聞くことできます。
「スタッフの不安や不満を聞く役割」
「全体をまとめて引っ張る役割」
「介護職のまとめ役」
「上からも下からも不満をぶつけられる役目(板挟み)」
「休んだ現場スタッフの代わりに現場に入る役割」
「看護師(他職種)との連携係。連携というより調整業務」 など等。
主任やリーダーは、業務量が多く、一方では仕事に対する充足感や満足感を得ている人は少ないように思われます。また、自分がリーダーに向いていると、自信を持って言える人もなかなかいません。多くのリーダーが現状の課題に向き合う中で、日々悩み葛藤し、ご利用者の方々と接しているのが現状ではないでしょうか?
では、そもそも、リーダーに期待される本当の役割とは何なのでしょうか?
チームを引っ張る? スタッフをまとめる? 上司と部下のパイプ役?
では、これらは具体的にどのような行動を言うのでしょうか?
多くのリーダーや主任が、そんなイメージに縛られて見えない虚像と戦っているように思えてなりません。
一方、例えば、介護の現場では、求められる介護もユニットケアや小規模ケアが主流になるなか、ケアシステム自体も大きく変化してきています。その変化に対応するためには、期待される介護スタッフのあり方も、また変化しています。ご利用者の為に、今自分ができる事、すべき事は何なのかを、自分の頭で考え、行動ができるスタッフが求められているのです。そのために必要なものは、スタッフ一人一人の「自律」です。
まさにこれからのリーダーに期待される本当の役割は、「スタッフ一人一人が自律を目指すチーム作り」なのです。
それは例えば、リーダーからの「責任と権限の移譲」や「目標設定と実践に向けた取り組みと評価制度」であり、また職場内で、それぞれのスタッフの意見が尊重される風土作り、といった「職場環境づくり」です。
そのような職場作りのために必要な職場で必要な「具体的な行動」ついて研修では学び
ます。
研修の内容はこちらから
⇒https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-2/
2019年4月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう
財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催
2021年度法改正に向けての論点整理を行う“介護保険部会”がそろそろ始動しつつある2019年4月。1年前の法改正(2018年度)が軟着陸したことに伴い、数多くの課題が積み残しとなっており、そろそろ“待ったなし(=これ以上の課題先延ばしは難しい?)”の局面を迎えている介護業界ですが、そんな折、財政的観点から「抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が4月23日に開催されました。“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は特に事業者として注視すべき内容6点をトピックスとして採り上げ、お届けしてまいります。
財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。財政性分科会の資料においては、「論点」→「(論点を踏まえた)改革の方向性(案)」という構成で14点のポイントが公表されています(前述の通り、本ニュースレターでは6点のポイントを抜粋)。先ずは要介護1・2の方々の地域移行に関する案についてです。
【論点1:要介護1・2の生活援助サービス等の地域移行について】
- 介護保険給付の増加が見込まれる中、引き続き、軽度者(要支援、要介護1・2)への介護サービスに係る保険給付の範囲を見直す必要。
- 特に、要介護1・2への訪問介護サービスの約1/2を占める生活援助型サービスは、要支援向けサービスと同様、地域の実情に応じた 多様な主体によるサービス提供を行うことにより、給付の重点化・効率化を進めつつ、質の高いサービスを提供することが可能。
↓
【改革の方向性(案)】
要支援者向けサービスの地域支援事業への定着・多様化にも引き続き取り組むとともに、軽度者のうち残された要介護1・2の者の生活援助サービス等についても、第8期介護保険事業計画期間中の更なる地域支援事業への移行や、生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定又は利用者負担割合の引上げなどについて、具体的に検討していく必要。
要支援者向けの訪問介護(生活援助サービスのみ)及び通所介護の地域移行が今期(第7期)に進みつつある中、財務省としては「要支援者の受け皿となる総合事業の枠組みは第7期中に一定程度完成する訳だから、そのスキームにそのまま要介護1・2の方々を載せていけば円滑に移行することができるのではないか」と考えていることがうかがえます。仮にもし、財務省の進言通りの地域移行が現実的に起こったとするならば、基礎報酬カットは必至です。その意味でも事業者としては「仮に要支援者の地域移行と同様のスキームで要介護1・2が地域移行になった場合、自社の経営はどうなるか?(例えば、要支援者等向けサービスの基準緩和A型のように、報酬単価が凡そ15~20%近く下がった場合にはどうなるか?)」等について、事前にシミュレーションを行っておく必要があるかもしれません。続いて2つ目の論点を見てまいりましょう。
【論点2:保険者機能の強化について】
- 要介護認定率や一人当たり介護給付費については、性・年齢階級(5歳刻み)・地域区分を調整してもなお大きな地域差が存在。その背景には高齢化の進展状況や介護供給体制など様々な要因が考えられるが、例えば、軽度者の認定率に地域差が大きいことも一因。介護費適正化の観点から、この地域差を縮減するため、保険者機能強化推進交付金への適切なアウトカム指標の設定・活用や、調整交付金等の活用を通じて、保険者機能のより一層の強化を進めるなど取組みを強化すべき。
↓
【改革の方向性(案)】
- 介護の地域差に係る要因を検証の上、問題と考えられる介護費の地域差の縮減に向け、保険者機能強化推進交付金(インセンティブ交付金)への適切なアウトカム指標の設定・活用(例‥軽度・重度に分けて要介護度を評価)やそのPDCAサイクルの確立、調整交付金等の活用を通じて保険者機能の一層の強化を進めるべき。その際、成果検証のためにも、医療費の地域差縮減の取組等も参考に、国として地域差半減を目指して保険者の支援等を行うなど目標を設けて取り組むべき。
- インセンティブ交付金について、より適切なアウトカム指標の設定・活用や配点のメリハリ付けを行うことで給付費適正化等に向けた財政的インセンティブを強化すべき。また、保険者(市町村)ごとの取組状況も公表し、PDCAサイクルを一層推進すべき。
「地域差」の具体例としては、例えば下図のようなバラつき状況が挙げられます。このような地域差を縮減するための手段として検討されているのが上述の通り、調整交付金等の財源を活用する形での「保険者向けインセンティブ」即ち、「一定の成果を達成した自治体には予算を上乗せするが、成果達成に満たない自治体には逆に予算を縮減する」という仕組みです。自治体からの反発は必至ですが、今後の財政的観点や保険者の取り組みを加速化させるためには「不可避」なことなのかもしれません。同時にもし、このような仕組みが導入されたとなると、地域によっては必要以上に認定審査を厳格化する自治体も出てくることは間違いないでしょう。自社の属する自治体がどのような状況にあるのか(全国平均的に見て厳しいのか?緩いのか?)については本分科会の資料に一定程度の情報が載っていると思われますので、関心をお持ちの方は是非、目を通されておくことをおススメ致します。では、次の論点に移りましょう。
【論点3:介護事業所・施設の経営の効率化について】
- 介護サービス事業者の事業所別の規模と経営状況との関係を見ると、規模が大きいほど経費の効率化余地などが高いことから経営状況も 良好なことが伺える。
- 介護施設の設備・運営基準については、長らく変更されておらず、近年の介護ロボットやICT等の普及効果が反映されていない。
(「改革の方向性(案)」は次ページへ続く)
↓
【改革の方向性(案)】
- 介護サービス事業者の経営の効率化・安定化の観点に加え、今後も担い手が減少していく中、介護人材の確保や有効活用、更にはキャリアパスの形成によるサービスの質の向上といった観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくべき。
- 介護ロボット等の設備に応じて設備・運営基準や報酬に差を設けるなど、生産性向上に向けたインセンティブを強化し、底上げを図るべき。
「統合・再編」に関しては主に、社会福祉法人に関する議論だと認識して差し支えないでしょう。こちらについては既に2019年4月19日より、「社会福祉法人の事業展開等に関する検討会」にて議論が開始されており、こちらの議論の流れを受けつつ足並みを揃えていくことになるものと思われます。医療の世界に「地域医療連携推進法人」という法人間連携のスキームが確立されたように、今後、社会福祉法人同士による連携スキーム(2015年前後に盛んに議論された“非営利ホールディングカンパニー型法人”のようなもの?)も正式に法制度の中で位置付けられるかもしれません。社会福祉法人の皆様にとっては「要注目」の情報と言えるでしょう。それでは続いての論点に入ります。
【論点4:民間企業の参入とサービス価格の透明性向上・競争推進】
- 介護保険制度の創設以来、在宅サービスについては民間企業の自由な参入が可能とされる一方で、在宅・施設サービスのいずれについても、事業者は介護報酬を下回る価格を設定することが可能とされている(=サービス面のみならず、価格競争も可能)。
- しかしながら現実には、営利法人の参入が進んできた一方で、介護報酬を下回る価格を設定している事業者は確認できず、サービス価格が報酬の上限に張り付いている実態にある。
↓
【改革の方向性(案)】
- 在宅サービスについては、ケアマネージャーの活用等により、介護サービスの価格の透明性を高めていくための取組等を通じて、サービスの質を確保しつつ、確実に価格競争が行われる仕組み(より良いサービスがより安価に提供される仕組み)を構築すべきである。
本論点が何を意図するものなのか?については誠に恐縮ながら、今一つ掴み切れていない、というのが正直なところです。資料内には、「利用者本位に考えれば、ケアマネージャーがケアプランを作成・提供するに当たり、利用者側の求めによらずとも、単なる情報提供に止まらず、複数の事業所のサービス内容と利用者負担(加減算による差等)について説明することを義務化することにより、利用者に比較検討の機会を確保し、サービス価格の透明性を向上すべき」とのコメントがありましたが、その活動が(論点で言うところの)「サービス価格が報酬の上限に張り付いている実態」を是正(?)していく流れにつながるか?と言うと、因果関係として結びつきづらいような印象を覚えます。とはいえ、「財務省はこのような視点も意識している」ということだけは認識しておく必要があるものと思われます。それでは、残り2つのテーマについて、「論点」「改革の方向性(案)」を一気に見ておきましょう。(こちらは読んでいただければ十二分に理解いただける内容かと存じますので、コメントは割愛させていただきます)
【論点5:介護保険の利用者負担について】
- 介護保険の財源構造は、所得の高い者を除き基本的に1割の利用者負担を求めた上で、残りの給付費を公費と保険料で半分ずつ負担する 構造であり、保険料は65歳以上の者(1号被保険者)と40〜64歳の者(2号被保険者)により負担されている。
- また、65歳以上の者の要介護認定率は2割弱であり、介護サービスを実際に利用している者と保険料のみを負担している者が存在。
- 今後、介護費用は経済の伸びを超えて大幅に増加することが見込まれる中で、若年者の保険料負担の伸びの抑制や、高齢者間での利用者負担と保険料負担との均衡を図ることが必要。
↓
【改革の方向性(案)】
- 制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保し、将来的な保険料負担の伸びの抑制を図る観点から、介護保険サービスの利用者負担 を原則2割とすることや利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図るなど、段階的に引き上げていく必要。
【論点6:ケアマネジメントの質の向上と利用者負担について】
- 介護保険サービスの利用にあたっては、一定の利用者負担を求めているが、居宅介護支援については、ケアマネジメントの利用機会を確 保する観点等から利用者負担が設定されていない。このため、利用者側からケアマネージャーの業務の質へのチェックが働きにくい構造。
- ケアマネジメントの質の評価とあわせて、利用者自身が自己負担を通じてケアプランに関心を持つ仕組みとした方が、サービスの質の向上につながるだけでなく、現役世代の保険料負担が増大する中、世代間の公平にも資するのではないか。
↓
【改革の方向性(案)】
- 頻回サービス利用に関する保険者によるケアプランチェックやサービスの標準化の推進と併せ、世代間の公平の観点等も踏まえ、居宅介護 支援におけるケアマネジメントに利用者負担を設けるとともに、ケアマネジメントの質を評価する手法の確立や報酬への反映を通じて、利用者・ケアマネージャー・保険者が一体となって質の高いケアマネジメントを実現する仕組みとする必要。
国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、財政制度分科会内の資料「社会保障」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら↓
(来月に続く)
前回コーチングとティーチングのメリット、デメリットその使い分けについてお伝えしました。
今回は、具体的な介護現場でのコーチング話法の使用事例をお伝えし、皆様にイメージを持っていただけたらと思います。
ケース1
施設の方針や理念を理解・把握していないスタッフがいる場合にコーチングを使って、自身の実体験を思い出させる
「どの法人にも理念や方針があります。筆者は、これまで数多くの介護施設に訪問してきましたが、理念や方針がない法人を見たことがありません。ただし、働くスタッフは、理念や方針を「知っている」程度で、「理解」「把握」といったレベルまでには達していないかもしれません。理念や方針は、法人としての存在意義や目的が記されたものです。それだけ大事なものでありながら、いまいちピンときていないスタッフもいるでしょう。
理念や方針は抽象的に示されていることが多いため、言葉で伝えるだけでは理解が深まりません。本人の実体験を振り返りながら、法人として大事にしていること(理念)と経験を結びつけるように伝えて「気づかせる」ことが重要です」
そのためには、コーチングを用いるとよいでしょう。
例えば、理念に「利用者に、安心と安らぎ・生きがいを届ける」と記されているならば、「今まで、利用者に安心感を与えたことで喜んでもらえた出来事はある?」と、自身の経験を思い出してもらうような質問をします。思いでしてもらいながら、それが理念に沿った行動であることに気づかせるのです。印象に残っている自身の体験と結びつけるような働きかけが有効です。
ケース2
スタッフとの面談で評価結果を伝える場合に、コーチングを使って、スタッフを徹底的に承認する
リーダーとして、いわゆる「上司評価」を部下へ伝える機会が多いと思いますが、評価面談でどう伝えるかによって、部下のその後の行動や評価自体のとらえ方が大きく変わります。では、どうやって伝えたらよいのでしょうか。
まず、評価面談とは、評価結果のみを伝える場ではないことを認識してください。筆者が推奨しているのは、全体の8割はこれまで取り組んできた事実を伝える時間に充てることです。これは、コーチングでは「承認」と言われています。
評価期間内に「できたこと」「できなかったこと」「取り組んだ(チャレンジした)こと」などについて、リーダーが見てきたことをそのまま伝えるのです。部下は、「これまでの行動を見てくれていたんだ」という印象を持ち、それが「認めてくれた」という感覚につながります。
さらに、承認によって相手を納得させることができ、行動を促進します。評価面談は、結果を伝える場ではなく、あくまで次の行動を促進させる場です。承認させ、納得したうえで評価結果を伝え「じゃあ、明日からどういった行動をしてみる?」を質問してみてください。このステップで面談を実施することで、評価面談がリーダー自身にとっても
部下にとっても、行動を促進させる貴重な場であることを認識させることが大事です。
コーチング研修はこちらから
https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-3/
評価者・面談研修はこちらから
https://www.hayashi-consul-sr.com/service2/menu2-6/
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『休日と設定していた祝日に出勤を命じる場合の注意点』
Q:
これまですべての祝日を休日扱いとするルールにしてきましたが、祝日でも出勤を命じられる
ようにしておきたいと考えています。どのようなことに注意して進めればよいのでしょうか。
A:
祝日に出勤命令をすることが一時的で済む場合は、その日を休日にしたまま出勤を命じることが
考えられます。この場合、36 協定の締結、届け出を行っておくことを前提とし、協定の範囲内
で休日出勤を命じることとなります。また、勤務に応じた割増賃金の支払いが必要となります。
休日と定めていた日を所定労働日とするルールに変更する場合においては、変更自体が労働条件
の不利益変更に該当する可能性があるため、職員の合意を得た上で就業規則の変更・届け出を
行う必要があります。
詳細解説:
1.休日と割増賃金
休日とは職員が労働義務を負わない日を指しますが、これには法令で定められる法定休日(原則
1 週1 日)と、法定休日以外の施設が定めた所定休日の2 つがあります。休日出勤を命じるには、
時間外・休日労働に関する協定書(36協定)を締結の上、管轄の労働基準監督署へ届け出をし、
協定した範囲内で休日出勤を命じる必要があります。その際、法定休日に労働をした職員には
その時間に対して3 割5 分以上、所定休日で法定労働時間(原則1 週40時間、1 日8 時間)を
超える時間に対しては2割5 分以上の割増賃金の支払いが必要です。
2.祝日は休日にしなければならないか
就業規則の休日の条項に祝日と定めている場合、すべての祝日が労働義務を負わない日として労働
契約を締結されていると考えられます。しかし、休日は法定休日が確保されていれば必ずしも
祝日を休日にしなくても問題ないことから、昨今の祝日が増えている状況に備えて就業規則の
見直しを行ってもよいでしょう。
3.休日として設定されていた日を所定労働日に変更することは可能か
就業規則で祝日を休日と定めており、特定の祝日を所定労働日に変更する際には就業規則の変更が
必要です。しかし、職員にとっては労働日が増えることとなり不利益変更に該当することから、
職員に丁寧に説明するなどして合意を得ることが重要となります(労働契約法第8 条)。なお、
施設が一方的にルールを変更した場合には、職員の受ける不利益の程度や変更の必要性等によって
ルールの変更についての合理性があったか判断されます。
変更の合理性が認められない場合、その変更内容自体が無効となってしまうことから、職員の合意
を得た上で、変更した就業規則の届け出が必要です。
休日出勤を命じるにしても、施設の休日のルールを変更するにしても、できるだけ早いタイミング
で出勤を命じることの周知・連絡をし、的確な変更手続を行って気持ちよく出勤してもらえるよう
に配慮したいものです。
(来月に続く)
介護サービス等に携わる労働者のストレス
従業員の定着に影響を与える要素のひとつに、職場での各種のストレスがあります。ここでは、
2019 年3 月に発表された調査結果※から、介護サービス等に携わる労働者の仕事や職業生活にお
けるストレスの状況をみていきます。
強いストレスを感じる割合は72.7%
上記調査結果によると、介護サービス職業従事者及び保健医療サービス職業従事者(以下、
介護サービス等従事者)のうち、現在の仕事や職業生活に関することで強いストレスになっ
ていると感じる事柄がある割合は、72.7%となりました。全体の結果の58.3%よりも高い状況
です。
また、職種別の強いストレスの有無をまとめると、表1 のとおりです。
介護サービス等従事者の強いストレスがある割合は、調査対象職種の中で最も高くなって
います。さらに、介護サービス等従事者が含まれる業種である医療,福祉の69.6%と比べても
高い状況です。
ストレスの内容では仕事の質・量が65.5%
次に介護サービス等従事者で、強いストレスとなっている事柄があると感じる人の割合を
100 とした場合の、強いストレスの内容(3 つ以内の複数回答)をまとめると表2 のとおりです。
仕事の量・質に対して強いストレスを感じている割合が、65.5%で最も高くなっています。
次いで、仕事の失敗、責任発生等が31.1%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)が29.4%
などとなっています。この上位3 項目の順位は、全体の結果と同じです。
働き方改革関連法が順次施行され、福祉介護施設も対応を進めていかなくてはなりません。
その際には、こうした結果も踏まえて、職員が働きやすい環境を整えていくことが求められ
ます。
※厚生労働省「平成29 年労働安全衛生調査(実態調査)」
常用労働者10 人以上を雇用する民営事業所のうちから、産業、事業所規模別に層化して無作為に抽出した約14,000 事業所と、その事業所
で雇用されている常用労働者及び受け入れた派遣労働者のうちから無作為に抽出した約18,000 人を対象に、2017(平成29)年11 月に実施さ
れた調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450110&tstat=000001069310&cycle=0&tclass1=000001126955&tclass2=000001126959&second2=1
(次号に続く)
財務諸表等開示システム 4 月1 日開始
3 年目を迎える社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム。今年も入力・届出の時期が
やってきました。4 月1 日から入力シートもダウンロードできるようになりました。今年度の
運用スケジュールを確認します。
届出は6 月30 日まで
社会福祉法人は本システムにアクセスして、財務諸表等を入力、届出をします。社会福祉法
人が行う操作の流れは右の通りです。
入力に必要となる「財務諸表等入力シート」のダウンロードが4 月1 日から始まりました。
届出の期間は、6 月30 日までとなっています。所轄庁に財務諸表等入力シートが届出され
ると、このうち現況報告書、計算書類、注記ファイルがインターネット上で公表されます。
参考:福祉医療機構
「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム関係連絡板」
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/zaihyou/houjin/
(次号に続く)
時間単位年休を導入する際の注意点
年次有給休暇(以下、「年休」という)は1日単位での取得を原則としていますが、半日単位、
時間単位で取得することも認められています。特に時間単位年休は、従業員の都合にあわせて
柔軟に取得できることもあり、育児や介護、治療などとの両立の観点で従業員から導入の要望が
多く、導入を検討する企業もあるでしょう。そこで以下では、この時間単位年休を導入する
際の注意点を確認しましょう。
1.時間単位年休の導入要件
時間単位年休を導入するためには、過半数代表者等との間で労使協定を締結し、以下の
①~④の事項を定めなければなりません。併せて、就業規則に時間単位年休について規定
する必要があります。
①時間単位年休の対象者の範囲
対象者を定めるに当たり全従業員を対象にすることもできますが、製造ラインで一斉に
作業を行う場合など、時間単位年休を取得することが事業の正常な運営を妨げることがあ
ります。そのような場合、あらかじめ取得できる従業員の範囲を定めておきます。なお、
利用目的は従業員の自由となるため、育児や介護等、利用目的によって範囲を定めること
はできません。
②時間単位年休の日数
時間単位での年休取得は1年に5日が上限であり、5日以内で時間単位年休の日数を定めま
す。また、残日数(残時間数)は翌年へ繰り越すこともできますが、1年において時間単位
で取得できる日数は繰り越し分も含めて5日以内となります。
③時間単位年休1日の時間数
時間単位年休の1日当たりの時間数は所定労働時間を基に定めますが、1日の所定労働時間
に1時間未満の端数がある場合は、1日当たりで時間単位に切り上げることが必要です。そ
のため、所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位年休の1日当たりの時間数は8時間とな
ります。
④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
時間単位年休の最小単位は1時間であり、30分など1時間未満の時間を単位とするとはでき
ません。また、1時間以外の時間(2時間、3時間など)を単位とするときには、その時間数
を定めておきます。
2.時間単位年休の残日数管理
時間単位年休を導入した場合、1日単位だけでなく時間単位について取得時間数と残日数
(残時間数)を管理していく必要があります。これまでよりも年休の管理が煩雑になること
から、どのように管理していくか、事前に検討しておきましょう。
4月より年休の年5日取得義務化がスタートしましたが、この時間単位年休については5日
のカウント対象とはなりません。働き方改革の一環として導入を検討する企業もあるかと思
いますが、1日単位と半日単位の年休で確実に5日を取得できるようにしましょう。
(来月に続く)
今年の10月から適用される、
総合事業の訪問・通所介護の新たな単価が
先週8日(水)、公表されました。
関心をお持ちの皆様は、下記をご確認くださいませ
https://report.joint-kaigo.com/_src/26308/vol727.pdf?v=1557445365942
※単価部分のみ抜粋したものはこちら
https://report.joint-kaigo.com/_src/26309/vol7270001.pdf?v=1557445365942
ティーチングおよびコーチング活用時の注意点
メリットとデメリット
ティーチングにもコーチングにもメリット・デメリットがあります。つまり、すべての場面で活用できる万能型のアプローチは存在しないということです。
ティーチング
ティーチングは、正解に導く方法であり、方法や手順を相手に理解させるのに適しています。ただし、相手に考えさせたり、自ら行動させたりするきっかけを与えないため、
結果的に指示待ちスタッフになってしまう可能性もあります。そして、場合によっては指導が押しつけとなり、「納得感」が得られずに終わってしまったというデメリットが考えられます。
コーチング
では、コーチングはどうでしょうか。コーチングは質問を通して相手に考えさせ、整理させ、はっとした閃きや気づきを与えることができます。すると、
自ら考え行動を起こすことができる人材への成長が期待できます。ただし、アプローチの最初の時点で精神的に落ち込んでいたり、全く目の前のことが理解できず
あにさまよったりしている場面でコーチングをしても、結局自ら考えられず、さらに混乱を与えてしまうことが考えられます。
また、自身の持っている知識や能力だけを使って納得しようとすると、物事のとらえ方を間違ってしまい、正解から逸脱した行動をしてしまうかもしれないと
いったデメリットも考えられます。
「理解」と「納得感」
ティーチングは「理解させること」、コーチングは「納得させること」に注力しているところに大きな違いがあります。人は、理解してから納得します。
例えば、排泄介助について考えてみましょう。
おむつの当て方をティーチングすることで、おむつを漏れなく当てることが出来るようになり、利用者が不快な思いをすることもなくなります。すると、
ティーチングを受けたスタッフは「おむつの当て方」を学び「理解」します。
ただし、「この利用者のためには、おむつを当てることが正しいことだ」といった納得感を与えることはできません。ここで、コーチングを使って、例えば
「この利用者にとって、何をしてあげることがいいのかな?」といった質問を投げかけてみます。すると、スタッフは排泄介助をしている姿をイメージし、
頭の中を整理しながら考え、そして自分なりの答えを導き出します。そこで、場合によっては「そもそもおむつをつけるのではなく、自らトイレに行って
排泄をすることが大事なのでは?」といった考えに行きつき、「漏れないようにおむつを当てる」から「おむつを外す」を目標とした行動に移るかもしれません。
ここには、スタッフ本人の納得感が伴っているということが分るでしょう。
組み合わせ
それぞれにメリット・デメリットがある中で、必ずしもどちらか1つを使ってかかわっていかないわけではありません。先ほどの例のように、組み合わせて
活用することもあります。また、使う順番を変えることも考えられます。
例えば、ケアプランに合わせてどのようなかかわり方をすればよいのか、コーチングを使いながらスタッフに考えさせていたけれど、観点がずれていてなかなか
考えが整理できないような場面を目にしたとします。これは、ケアプラン自体の理解ができていないことが考えられるので、いったん戻って、ケアプランの内容を
ティーチングで理解させることが必要になります。
このように、ティーチングとコーチングの特徴やメリット・デメリットを理解することで、「この場面では、ティーチングだな」「今コーチングを使ってみたけど、
なかなか反応が悪いから、いったんティーチングを使った方がよいかも」「本人の行動を後押ししてあげたいから、コーチングを使ってみよう」などと使い分けたり
組み合わせたりできるようになります。
いずれも、「スタッフが今何を求めているのか?」といった視点を持ち、場面を予測しながらかかわっていくことが大事です。そのためには、まず自分だけの視点
だけでかかわるのではなく、スタッフを観察し、相手の視点に立つ必要があります。
次回に続きます。