介護

介護事業者様向け情報(経営❷)1月号

来年10月開始の「新たな処遇改善加算」の仕組みについて確認しておきましょう

「月8万」という言葉が独り歩きした「新たな処遇改善加算」の大枠が決定

「来年10月の増税実行のタイミングに合わせて、10年以上の介護福祉士の給与を月8万円程度引き上げる財源を準備する」そんな言葉が独り歩きして業界を大きく揺るがせた(or揺るがせている)、新たな処遇改善施策(以降、「新加算」と表記)。従来の処遇改善加算とは異なる仕組みをつくり、運用することまでは決定していましたが、20181212日に開催された「第166回社会保障審議会介護給付費分科会」において、その全体像・大枠がようやく見えてまいりました。各社の人材確保・定着にも様々な影響を及ぼしかねない同施策、今回は内容の理解と共に、特に事業者として注視すべき点をポイントとして採り上げ、お届けしてまいります。

「新たな処遇改善加算」の全体像とは

それでは、早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは、新加算の大枠のコンセプトについて確認してまいります。

今回の新加算は、「(1)経験・技能のある介護職員に重点化しつつ、介護職員の処遇改善を行う」という当初の趣旨を担保しつつ、「(2)その趣旨を損なわない程度において、その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」という特徴を伴っています。(1)を実現するためには「経験・技能のある介護職員を数多く雇用しているサービス・事業所」に多くの額が行き渡るように配分する必要がある訳ですが、その考え方を如何に仕組みの中に反映させることができるか?というのが、先ずは、論点の1点目。その上で「その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」にあたり、どのような基準を設けることで(1)の考え方を担保していくか?というのが論点の2点目にあたります。上記説明を図で表すとすると、下記になるでしょうか。

※第166回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋

上記を前提に、「論点1」「論点2」の内容を順に確認してまいりましょう。先ずは論点1のポイントをお伝えしていきたいと思います。論点1のポイントとしては大きく3点が挙げられます。

【ポイント1:新加算の対象要件について】

1)これまでの処遇改善加算と同様のサービス種類を対象とする(=訪問看護・居宅等は対象外)。

2)「①現行の処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得している」
「②処遇改善加算の職場環境等要件に関し、職場環境等についての改善の取組を複数行っている」
「③処遇改善加算に基づく取組について、HPへの掲載などを通じた見える化を行っている」
以上3点を満たしている事業者を対象とする。

続いてはいよいよ各論を確認してまいります。先ずは「経験・技能のある介護職員を数多く雇用している“サービス”に多くの額が行き渡るかどうか」については、次のような考え方が示されています。

【ポイント2:サービス種類ごとの加算率について】

介護職員確保に向けた処遇改善を一層進めるとともに、人材定着にもつながるよう、経験・技能のある介護職員が多いサービスを高く評価することとし、サービス種類毎の加算率は、それぞれの勤続10年以上の介護福祉士(※)の数に応じて設定することとしてはどうか。

※ 現在、介護福祉士の資格を有する者であって、同一法人・会社での勤続年数が10年以上の者

上記内容の通り、新加算も従来の加算と同様、各サービス毎の加算率が設定されることになる訳ですが(詳細の加算率は来年早期に発表予定)、例えば介護給付費分科会では、本議論における参考資料として「(A)全サービス毎の介護職員割合(看護師・療法士・栄養士・事務職等を含んだ全職員中)」「(B)全サービス毎の“勤続10年以上介護福祉士”割合(全介護職員中)」というデータが添付されています。下記表の通り、(C)=(A)×(B)を行えば「経験・技能のある介護職員を数多く雇用しているサービス」が大枠で見えてきますので、(C)の値を参考に、加算率のウェイト付けが行われるかもしれない、と考えることも出来るでしょう(あくまで現時点における仮説に過ぎませんこと、ご理解下さい。ただ、この論拠に基づけば、例えば新加算の加算率は訪問介護(17.3%)>通所リハ(13.0%)>老健(12.5%)>特養(12.3%)の順に高くなるかもしれません)。

※厚生労働省資料をもとに弊社作成

然しながら、多くの方がお気づきの通り、例えば訪問介護を例にとった場合、全ての訪問介護事業所が勤続10年以上の介護福祉士を“17.3%”づつ均等に雇用している訳では決してなく、実際には事業所によって大きなバラつきが生まれている事は明らかです。他方、だからといって、事業所ごとに“勤続10年以上介護福祉士の割合”を精緻に把握し、その実値に基づいて各事業所に配分していく仕組みが創れるか?となると、そのようなデータを収集する事は不可能に近く、それはそれで現実的ではありません。そこで今回は、代替策として、下記のような基準が設けられることになるようです。

【ポイント3:サービス種類内の加算率について】

1)同じサービス種類の中であっても、経験・技能のある介護職員の数が多い事業所や、職場環境が良い事業所について、更なる評価を行うこととしてはどうか。その際、現時点で把握可能なデータや、事業所や自治体の事務負担、新しいサービス種類・事業所があることに、一定の留意をする必要。

2)具体的には、介護福祉士の配置が手厚いと考えられる事業所を評価するサービス提供体制強化加算等(※)の取得状況を加味して、加算率を二段階に設定してはどうか。

※ サービス提供体制強化加算のほか、特定事業所加算、日常生活継続支援加算

3)なお、経験・技能のある介護職員が多い事業所や職場環境が良い事業所を的確に把握する方法について、

今後検討を進めることとしてはどうか。

上記方向性が実行されるとなると、サービス提供体制強化加算・特定事業所加算・日常生活継続支援加算といった、いわゆる“体制加算”を「取得しているか」「取得していないか」によって加算率が2段階に分かれてくることになります。各体制加算の詳細説明については割愛しますが、体制加算を取得していない事業所は今後の取得の是非について、早めに検討を進める必要が出てくるかもしれないことを頭に留めておく必要があるでしょう(下記は上記内容のイメージとして、厚生労働省が作成したものです。こちらも含めて内容ご確認下さいませ)。

それでは続いて論点の2点目、事業所内での配分方法についてです。新加算については、「リーダー級の介護職員について。他産業と遜色ない賃金水準を目指し」「経験・技能のある介護職員に重点化しつつ」「介護職員の更なる処遇改善を行うこととし」「その趣旨を損なわない程度において、その他の職種にも一定程度処遇改善を行う」柔軟な運用を認める、という内容が「基本的考え方」として挙げられています。その前提のもと、下記①②③の3種類に職員を定義した上で、

1)「①経験・技能のある介護職員」

勤続年数10年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、「勤続10年」の考え方については、事業所の裁量で設定できることとする。

2)「②他の介護職員」

「①経験・技能のある介護職員」以外の介護職員。

3)「③その他の職種」

介護職員以外の全ての職種の職員

配分の考え方については下記の通り、ポイントとして1点の整理が為された次第です。

【ポイント4:事業所内での配分方法について】

1)他産業と遜色ない賃金水準を目指し、「①経験・技能のある介護職員」の中に、「月額8万円」の処遇改善となる者又は「改善後の賃金が年収440万円(役職者を除く全産業平均賃金)以上」となる者を設定すること。

2)「①経験・技能のある介護職員」は、平均の処遇改善額が「②その他の介護職員」の2倍以上とすること。

3)「③その他の職種」は、平均の処遇改善額が、「②その他の介護職員」の2分の1を上回らない等一定のルールに基づくこと。

※ 小規模な事業所で開設したばかりであるなど(1)を行うことが困難な場合は、合理的な説明を求める。

※ 「①経験・技能のある介護職員」、「②他の介護職員」、「③その他の職種」に配分するに当たり、①②③それぞれの区分の平均の処遇改善額で比較することとし、それぞれの区分内での一人ひとりの処遇改善額は柔軟に設定できるようにする。

※ 「③その他の職種」については、今般の更なる処遇改善でリーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指すものであるため、役職者を除く全産業平均賃金(年収440万円)との整合性に留意し、改善後の賃金額がこれを超えない場合に改善を可能とする等一定のルールを検討。

上記を視覚的にイメージすると、下記のような形になるでしょうか(介護給付費分科会資料より抜粋)。

ポイント4の3)に「等一定のルールに基づくこと」とある通り、上記内容で最終確定と理解するのは早計かもしれませんが、いずれにせよ、上記の様な方向性の基準が来年早期に示される事は間違いないと言えそうです。

早め早めの思考と準備を

以上、介護給付費分科会の資料よりポイントを抜粋してお伝えさせていただきました。既存職員の定着や新たな介護人材の確保にも影響を及ぼしかねない本情報、経営者・幹部の皆様としては「体制加算を取得するべきかどうか?(未取得の場合)」「上記内容が実行された場合、社内にどのような影響が出るだろうか?」「それらに対する対策は?」「何より、攻めの戦略としてどのように有効活用していくか?」等々、早め早めに頭を働かせておく&準備を進めていくことが重要だと言えるでしょう。“人材=財産”、私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

 

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202420_00011.html

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(経営)1月号③

福祉施設でみられる人事労務Q&A

『採用選考において不適切とされている質問』

Q:

先日、採用面接をした応募者から内定辞退の電話がありました。理由を考えた
ところ、面接で家族の職業を尋ねた際に、かなり怪訝そうな顔をしていた気がし
ます。面接で尋ねてはいけない質問があるのでしょうか。

A:

業務に直接関係のない質問によって、意図せず応募者が就職差別をされている
ように感じ、それだけを理由に内定を辞退するということがあります。また、公
正な採用が行われるよう、法令でも本人に責任のないことや本来自由であるべき
こと等、禁止されている質問事項があります。

詳細解説:

採用の際には、求職者がどのような人かを施設が見極めるため、面接でさまざまな質
問をしますが、ときに施設が行う質問が応募者に不快な思いをさせ、結果、内定辞退を
招いてしまうということがあります。今回の家族の職業を尋ねる質問は、家族の扶養
義務があるかどうか、育児や介護等で時間の配慮が必要ではないかといった目的で
質問するケースがあり、目的自体には何ら問題がないように思われます。しかし、応
募者によっては答えたくない内容もあり、気分を悪くさせてしまうことが考えられます。
また、国は差別のない採用選考が行われるよう法令で制約を設けており、応募者の適性
や能力のみを基準として選考を行うことを原則としています。法令で具体的に不適切とさ
れている質問事項としては、次の事項が挙げられます。

1.本⼈に責任のない事項
 本籍地や出⽣地に関すること(⼾籍謄本等を提出させることもこれに該当)
 家族に関すること(職業、続柄、病歴、地位、収⼊、家族構成等)
 住宅状況に関すること(住宅の種類、間取り等)
 ⽣活環境・家族環境に関すること 等
2.本来⾃由であるべき事項
 宗教に関すること
 ⽀持政党に関すること
 ⼈⽣観、信条に関すること
 尊敬する⼈物に関すること
 労働組合に関する情報(加⼊状況や活動歴等)
 購読新聞、雑誌などに関すること 等

面接では一緒に働くことになる人をなるべく知ろうとして、さまざまな質問をすること
になりますが、中には就職差別につながってしまう質問が含まれていることがあり、それ
によって内定を辞退されてしまうだけでなく、SNS 等で批判的な書き込みをされてしまう
ことも考えられます。不適切とされる質問事項を押さえ、応募者の気分を悪くさせること
のないよう、注意して選考活動を進めることが重要です。

(来月に続く)

介護事業者様向け情報(経営)1月号②

都道府県別 要介護(要支援)認定状況

高齢化が進展する中、要介護や要支援認定を受ける高齢者も増えています。
ここでは2018 年8月に発表された調査結果※から、介護保険第1 号被保険者
(65 歳以上、以下、第1 号被保険者)数や第1 号被保険者における要介護
(要支援)認定者(以下、認定者)数などをみていきます。

全国の認定率は18.0%

都道府県別の第1 号被保険者数と認定者数、認定率をまとめると下表のとおりです。
2016 年度の全国の第1 号被保険者は3441 万人、認定者数は619 万人、認定率は18.0%と
なりました。13 年度が17.8%、14 年度と15 年度は17.9%で、徐々に高くなっています。

9 府県で認定率が20%を超える

都道府県別では、和歌山県や長崎県、島根県、大阪府、愛媛県、熊本県、秋田県、岡山県、
徳島県で認定率が20%を超えました。また29 都道府県で全国平均を超えています。
一方、認定率が最も低いのは埼玉県で、茨城県とともに、15%未満になりました。

ここでは都道府県別の状況を紹介しましたが、市町村別のデータ等も公表されていますので、
貴施設の地域の認定率がどのようになっているか、状況を把握してみてはいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成28 年度介護保険事業状況報告(年報)」
介護保険事業の実施状況について、保険者(市町村等)からの報告数値を全国集計したものです。
千人未満を四捨五入しているため、計に一致しない場合があります。
詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/16/index.html

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(経営)1月号①

補助金による機器導入で職場改善

福祉施設が活用できる補助金・助成金の中から、人材確保等支援助成金「介護福祉機器助成
コース」をご紹介します。介護福祉機器の導入で最大150 万円、目標達成で更に最大150 万円の
助成を受けることができます。

機器導入+目標達成の2 段階助成

この助成金は、介護事業主が、介護労働者の身体的負担を軽減するために介護福祉機器を
導入し、労働者の離職率の低下が図られた場合に、導入費用の一部が助成されるものです。ま
ずは「機器導入助成」、その上で「目標達成助成」が設けられた2 段階構造の助成金です。
それぞれの支給要件は以下の通りです。

機器導⼊助成

① 導⼊・運⽤計画の認定
 介護労働者の労働環境向上のための介護福祉機器の導⼊・運⽤計画を作成し、管轄の労働局
 ⻑の認定を受けること。
② 介護福祉機器の導⼊等
 ①の導⼊を実施し、導⼊効果を把握すること。

目標達成助成

「機器導⼊助成」の実施の結果、計画期間の終了から1 年経過までの期間の離職率を、
計画提出前1 年間の離職率よりも、⼀定の目標値以上に低下させること。

 

対象となる機器は、移動・昇降用リフト(立位補助機、非装着型移乗介助機器を含む)、
装着型移乗介助機器、自動車用車いすリフト 、エアーマット、特殊浴槽、ストレッチャー
です。
また対象となる費用は、機器の導入費用(設置費用等は除く)、保守契約費、機器使用徹底の
研修費です。

導入・運用計画とは?

介護福祉機器を導入する事業所の管轄都道府県労働局に、導入・運用計画の認定を受ける
ことが大前提となります。計画の提出期限は、計画開始日から遡って6 ヶ月~1 ヶ月前の日の
前日まで。計画期間は3 ヶ月以上1 年以内です。
所定の様式で作成し、以下を記載します。

  • 導⼊する介護福祉機器の品目、台数、費⽤、メンテナス方法
  • 導⼊機器の使⽤を徹底するため研修予定⽇、内容、費⽤
  • 導⼊効果を把握するスケジュール

この機会をぜひご活用ください。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)1月号④

より適正な選出が求められる従業員の過半数代表者

年度単位(4月から翌年3月)で36協定を締結している企業では、新年度に向けて36協定の準備を
進める頃かと思います。36協定では、従業員の過半数で組織する労働組合がない場合、従業員の
過半数代表者(以下、「過半数代表者」という)を選出する必要がありますが、その適正な
選出の重要性が増しています。

1.過半数代表者の適正な選出

過半数代表者を選出するときは、管理監督者に該当しないこと、どのような労使協定を
締結するかを明確にした上で、投票、挙手、従業員による話し合い等の民主的な手続きが
とられていることといった要件を満たしている必要があります。
現状では、会社側が過半数代表者を指名するといった不適切な取扱いをしていた事例が
見られることから、2019年4月より、「使用者の意向に基づき選出されたものではないこ
と」という要件がさらに追加されます。 

2.過半数代表者を必要とする協定

36協定のほかにも、過半数代表者との書面による協定等を必要とするものがあります。
主なものは次のとおりです。

・賃⾦控除に関する労使協定
・1ヶ月単位の変形労働時間制の労使協定(就業規則で規定しない場合)
・1年単位の変形労働時間制の労使協定
・1週間単位の変形労働時間制の労使協定
・専門業務型裁量労働制の労使協定
・事業場外労働の労使協定(みなし時間が8時間を超える場合のみ)
・一⻫休憩の適⽤除外に関する労使協定
・年次有給休暇の時間単位の取得の労使協定
・年次有給休暇の計画的付与の労使協定
・育児・介護休業等の適⽤除外者に関する労使協定
・就業規則の意⾒聴取

協定の種類によって、毎年、締結が必要なものがあるため、有効期限が到来していない
か点検しておきましょう。また、労働基準監督署への届出の要否についても協定ごとに異
なります。

3.就業規則・36協定の本社一括届

労使協定等の労働基準監督署への届出は、複数の事業場がある企業では、原則として事
業場ごとに行うことになっています。
就業規則や36協定については、本社と各事業場の内容が同一である場合等の要件を満た
した場合、本社において一括して届け出ることが可能です。ただし、36協定については、
各事業場の従業員の過半数で組織された労働組合があることが、一括で届け出る要件と
なっているため、過半数代表者を選出する企業では、36協定を本社において一括して届け
出ることができません。

従業員の過半数代表者の選出母数となる従業員には、管理監督者を含み、その事業場で雇
用される従業員全員が対象になります。管理監督者は過半数代表者にはなれませんが、選出
母数には含める必要があります。選出母数となる人数が正確に把握されていないと、適正な
過半数代表であるかどうかの確認ができないことになります。労働基準監督署による監督指
導などで指摘を受けないようにするためにも、適正な選出を行うようにしましょう。

(来月に続く)

介護事業者様向け情報(労務)1月号③

10月1日からマイナポータルで作成が可能となった就労証明書

子どもを認可保育所に預けて働く従業員は、居住地の市区町村に働いていることの証明である
「就労証明書」を提出することが求められます。会社は従業員の求めに応じて、定期的に
就労証明書を発行しますが、10月1日よりこの作成をマイナポータルで簡単に行うことが
できるようになりました。

1.就労証明書とは

認可保育所は、両親等を始めとした子どもを保育するべき人が、働いている等の理由から
保育ができないときに、代わりに子どもを保育するということが前提になっています。
そのため、会社に勤務している従業員が入所を申込む際には、入所の申請書に会社が
作成した就労証明書を添付します。
また、働いている事実を証明することが定期的に確認され、子どもを保育所に入所させ
た後も、度々、就労証明書の提出が求められます。ちなみに就労証明書には、勤務の実態
を記載するため、勤務先、勤務形態、就労日、就労時間、雇用開始日、収入等、かなり
多くの項目を記入します。

2.利便性が向上した就労証明書の作成

就労証明書は保育所のある市区町村に提出しますが、その様式は市区町村ごとに異なっ
ており、通常、従業員が白紙の様式を会社に提出したり、会社が各市区町村のホームペー
ジにアクセスして、白紙の様式をダウンロードしたりして、その様式に手書きをすること
で証明書の作成を行っています。
2018年10月1日より、マイナポータルに「就労証明書作成コーナー」が設けられ、
このマイナポータル内で市区町村ごとの様式を検索、ダウンロードができるように
なりました。さらにウェブの画面上(マイナポータル上の作成コーナー)で就労証明書に
記載すべき項目を入力することにより、就労証明書が作成できる機能の提供が開始
されました。なお、企業の人事管理ソフトによっては、ソフト操作の一環として
作成することができるようになるとのことです。

3.就労証明書の提出方法

作成が完了した就労証明書は、紙に印刷し社印を押印の上、従業員に交付します。従業
員は交付された証明書をこれまでどおり市区町村に提出するほか、一部の市区町村ではマ
イナポータルを通じ、電子申請を行うことも可能です。

マイナポータルで作成した就労証明書は、電子ファイルとしてダウンロードし、保存する
ことができます。1名の従業員に対し、定期的に発行が必要なことがあるため、従業員の基
本的な情報を入力した上でファイルを保存し、変更のある部分のみ手書きで追記するような
利用法も考えられるでしょう。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)1月号②

通勤手当の過払いを従業員から返還してもらえるか

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:従業員が引越しをして、通勤手当の額が変更になっていたにも関わらず、会社に届
     出をしていないことが分かりました。この場合、過払いとなった通勤手当を返して
     もらうことは可能でしょうか?

社労士 :過払いですので、通勤手当を減らすべきだったということですね。いつ引越しをさ
     れたのでしょうか?

総務部長:6ヶ月前になります。就業規則には引越し等により通勤経路が変わったときは届け出
     ることを規定してあり、通勤手当はこの届出に基づき変更するとしてあります。た
     だ、従業員自身は、届出が必要であることを知らなかったようです。

社労士 :なるほど。その従業員には届出なかったことに対する悪意はないようですが、今回
     の過払い分については、従業員から返還してもらうことが可能です。民法には不当
     利得返還請求権の定めがあり、本来受け取るべき金額を超えて手当を受け取ってい
     る場合には、その差額の返還請求をすることができます。

総務部長:なるほど。今回は従業員本人の届出漏れですが、届出があったものに対し、会社が
     届出の処理を失念し、過払いとなった場合も返還してもらうことが可能でしょう
     か?

社労士: この場合も可能です。不当利得は従業員、会社のいずれの過失の有無に関係なく、
     返還してもらうことができます。

総務部長:なるほど。今回は6ヶ月分ですが過去何年分まで、返還してもらうことができるので
     しょうか?

社労士: 賃金の請求権は2年、退職金の請求権は5年で時効により消滅しますが、この不当利
     得返還請求権は原則10年となっています。

総務部長:もし過去3年間にわたって過払いとなっていても、返還してもらうことが可能という
     ことですね。

社労士: そのとおりです。金額が大きい場合には、分割で返還をするというような配慮は必
     要になろうかと思います。併せて、就業規則や賃金規程を整備しておくことが望ま
     しいでしょう。具体的には、届出をいつまでにするのか、届出が遅れた場合の手当
     の支給はどうなるのか、また返還させることがあることなど、取扱いを定めておく
     とよいですね。

総務部長:確かに就業規則や賃金規程に定めをしておくと、従業員にとって分かりやすく、返還
     を求める際の根拠も明確になりますね。

【ワンポイントアドバイス】
1. 従業員本人の届出漏れや給与計算の誤りにより過払いがあった場合、
 不当利得返還請求権により原則として10年前までさかのぼって返還
 させることが可能である。
2. 就業規則や賃金規程に、届出のルールや返還の義務があることなどを
 規定しておくことが望まれる。

(次号に続く)

介護事業者様向け情報(労務)1月号①

確認しておきたい2019年4月からの長時間労働者に対する医師の面接指導の流れ

2019年4月から働き方改革関連法が施行されますが、労働時間の上限規制などが行われる
労働基準法だけでなく、労働安全衛生法も改正されており、産業保健の機能強化が
行われます。特に長時間労働者に対する医師による面接指導(以下、「面接指導」
という)については、対象となる従業員の基準が変更となり、また面接指導前後の流れに
実施項目が追加されていることから、企業も対応の流れを確認する必要があります。

1.面接指導の対象となる従業員

面接指導の対象となる従業員は、1ヶ月の時間外・休日労働(以下、「時間外労働」
という)が100時間を超える従業員とされていますが、2019年4月からはこの時間数が
80時間に引き下げられます。また、80時間を超えた従業員に対し、超えた時間数に
関する情報を通知することが義務付けられました。実務では時間数を通知すると共に、
疲労の蓄積が認められるときには、面接指導を受けるように勧めることになるのでしょう。
なお、管理監督者を含むすべての労働者について、労働時間の状況の把握が義務付けられ、
面接指導や通知は時間外労働が適用とならない管理監督者も対象になります。

2.面接指導の流れ

面接指導の流れは以下の図のようになります。産業医は面接指導の対象となる時間外労働を
行った従業員の情報を事前に把握すると共に、面接指導事後についても情報を把握し、
会社に必要な勧告を行うことで、より実効性のある対応ができるような仕組みとなっています。

時間外労働の上限規制がスタートすることにより、時間外労働の削減に取組む企業は増え、
そもそも時間外労働が80時間を超えるような従業員が減る傾向になるかと思われます。
一方で、管理監督者は時間外労働の適用対象外であることを理由に、部下が処理しきれな
かった業務を引き受けざるを得ず、これまで以上に管理監督者の長時間労働が問題になる
ケースが増えることも考えられます。管理監督者の過重労働対策は今後、より重要性を増し
ていくことでしょう。

(次号に続く)

介護事業者様向 経営情報【号外】

社会保障審議会介護給付費分科会は12月19日、「2019年度介護報酬改定に関する審議報告」案を了承、26日に公表されました。

その概要について下記にてご報告いたします。


今年の10月の消費増税時に実施する介護報酬改定で、介護職員の処遇改善のための
新たな加算を設けるとともに、各サービスの基本単位数の上基準費用額も増税の影響分を引き上げる。
 処遇改善では、リーダー級の介護職員が他産業と遜色ない賃金水準とすることを目指し 他の介護職員などもある程度処遇改善できるようにする。
加算の取得要件は
▽現行の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の取得
▽同加算の職場環境等要件で複数の取組みを行っている
▽ホームページへの掲載等を通じて取組みの見える化を行っている―の3点。
加算率はサービス種類ごとの勤続10年以上の介護福祉士の数に応じて設定する。
同じサービス種類では、経験・技能のある介護職員の数が多い事業所などを手厚く評価する考えから、サービス提供体制強化加算等の取得状況で2段階の評価を設定する。

また、加算を取得する際、事業所はリーダー級の介護職員を設定して、月額8万円の処遇改善か、処遇改善後の賃金が役職者を除く全産業平均賃金(年収440万円)以上となるようにする。経験・技能のある介護職員の平均の処遇改善額はその他の介護職員の2倍以上とする。介護職員以外のその他の職種は平均の処遇改善額がその他の介護職員の1/2以内とする。

詳細は、下記資料をご覧ください。

12月12日発表

【介護】人材育成・ブログ 12月②

前回のブログで「経営理念が浸透しない法人の共通課題」という視点でお伝えしました。
調査の結果、経営理念が浸透しない法人には次のような共通の課題があることがわかりました。①経営理念の策定時に職員がかかわっていないことが多く、理念策定の背景や意図が共有されていない②経営理念の表現が抽象的過ぎて理解しにくい。そのため、自分は何をすべきかわからない③経営理念浸透に向けた取り組みの本来の目的が見失われ、取り組みが形骸化している。
 特に②および③の課題について、当時弊社が支援させていただいておりました顧問先でも同様な状況の法人が多数存在していました。何とかこの状況を打開する方策はないものか、当時、弊社では検討を重ねました。そして形にしたものが「経営理念を具体的な行動表現にまで落とし込んだ「行動基準(クレド)」です。その内容は、単に具体的な行動表現というだけでなく、職員自らが言葉をつくることで、だれにでもわかりやすく、そして
「感動・関心」の行動基準としてまとめることができました。それを職員皆で一緒に行ってゆくことで、職員の意識改革にもつながるものを目指したのでした。それから早7年が経過しましたが、今ではすでに弊社が行った行動基準作成コンサルティン先は介護施設、保育園、障碍者支援施設で50事業所を超えるまでになりました。この活動を継続することで、組織の理念をより身近なものとして職員が感じ、それを皆で実行してゆくことで、組織風土まで変わってきていることを最近は実感しております。
さらには、前述の③の課題については、人事評価(行動評価)の一環として、
きちっと実践すれば、上司は見ているし、それが評価にもつながる仕組みに落とし込むことで、より一層、職員のモチベーションも高まってきます。
 皆様にも、この行動基準作りは、是非とも自信をもってお勧めしたいと思います。
詳細をお知りになりたい事業所各位は、下記をご覧ください。
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