介護
時間単位年休を導入する際の注意点
年次有給休暇(以下、「年休」という)は1日単位での取得を原則としていますが、半日単位、
時間単位で取得することも認められています。特に時間単位年休は、従業員の都合にあわせて
柔軟に取得できることもあり、育児や介護、治療などとの両立の観点で従業員から導入の要望が
多く、導入を検討する企業もあるでしょう。そこで以下では、この時間単位年休を導入する
際の注意点を確認しましょう。
1.時間単位年休の導入要件
時間単位年休を導入するためには、過半数代表者等との間で労使協定を締結し、以下の
①~④の事項を定めなければなりません。併せて、就業規則に時間単位年休について規定
する必要があります。
①時間単位年休の対象者の範囲
対象者を定めるに当たり全従業員を対象にすることもできますが、製造ラインで一斉に
作業を行う場合など、時間単位年休を取得することが事業の正常な運営を妨げることがあ
ります。そのような場合、あらかじめ取得できる従業員の範囲を定めておきます。なお、
利用目的は従業員の自由となるため、育児や介護等、利用目的によって範囲を定めること
はできません。
②時間単位年休の日数
時間単位での年休取得は1年に5日が上限であり、5日以内で時間単位年休の日数を定めま
す。また、残日数(残時間数)は翌年へ繰り越すこともできますが、1年において時間単位
で取得できる日数は繰り越し分も含めて5日以内となります。
③時間単位年休1日の時間数
時間単位年休の1日当たりの時間数は所定労働時間を基に定めますが、1日の所定労働時間
に1時間未満の端数がある場合は、1日当たりで時間単位に切り上げることが必要です。そ
のため、所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位年休の1日当たりの時間数は8時間とな
ります。
④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
時間単位年休の最小単位は1時間であり、30分など1時間未満の時間を単位とするとはでき
ません。また、1時間以外の時間(2時間、3時間など)を単位とするときには、その時間数
を定めておきます。
2.時間単位年休の残日数管理
時間単位年休を導入した場合、1日単位だけでなく時間単位について取得時間数と残日数
(残時間数)を管理していく必要があります。これまでよりも年休の管理が煩雑になること
から、どのように管理していくか、事前に検討しておきましょう。
4月より年休の年5日取得義務化がスタートしましたが、この時間単位年休については5日
のカウント対象とはなりません。働き方改革の一環として導入を検討する企業もあるかと思
いますが、1日単位と半日単位の年休で確実に5日を取得できるようにしましょう。
(来月に続く)
今年の10月から適用される、
総合事業の訪問・通所介護の新たな単価が
先週8日(水)、公表されました。
関心をお持ちの皆様は、下記をご確認くださいませ
https://report.joint-kaigo.com/_src/26308/vol727.pdf?v=1557445365942
※単価部分のみ抜粋したものはこちら
https://report.joint-kaigo.com/_src/26309/vol7270001.pdf?v=1557445365942
ティーチングおよびコーチング活用時の注意点
メリットとデメリット
ティーチングにもコーチングにもメリット・デメリットがあります。つまり、すべての場面で活用できる万能型のアプローチは存在しないということです。
ティーチング
ティーチングは、正解に導く方法であり、方法や手順を相手に理解させるのに適しています。ただし、相手に考えさせたり、自ら行動させたりするきっかけを与えないため、
結果的に指示待ちスタッフになってしまう可能性もあります。そして、場合によっては指導が押しつけとなり、「納得感」が得られずに終わってしまったというデメリットが考えられます。
コーチング
では、コーチングはどうでしょうか。コーチングは質問を通して相手に考えさせ、整理させ、はっとした閃きや気づきを与えることができます。すると、
自ら考え行動を起こすことができる人材への成長が期待できます。ただし、アプローチの最初の時点で精神的に落ち込んでいたり、全く目の前のことが理解できず
あにさまよったりしている場面でコーチングをしても、結局自ら考えられず、さらに混乱を与えてしまうことが考えられます。
また、自身の持っている知識や能力だけを使って納得しようとすると、物事のとらえ方を間違ってしまい、正解から逸脱した行動をしてしまうかもしれないと
いったデメリットも考えられます。
「理解」と「納得感」
ティーチングは「理解させること」、コーチングは「納得させること」に注力しているところに大きな違いがあります。人は、理解してから納得します。
例えば、排泄介助について考えてみましょう。
おむつの当て方をティーチングすることで、おむつを漏れなく当てることが出来るようになり、利用者が不快な思いをすることもなくなります。すると、
ティーチングを受けたスタッフは「おむつの当て方」を学び「理解」します。
ただし、「この利用者のためには、おむつを当てることが正しいことだ」といった納得感を与えることはできません。ここで、コーチングを使って、例えば
「この利用者にとって、何をしてあげることがいいのかな?」といった質問を投げかけてみます。すると、スタッフは排泄介助をしている姿をイメージし、
頭の中を整理しながら考え、そして自分なりの答えを導き出します。そこで、場合によっては「そもそもおむつをつけるのではなく、自らトイレに行って
排泄をすることが大事なのでは?」といった考えに行きつき、「漏れないようにおむつを当てる」から「おむつを外す」を目標とした行動に移るかもしれません。
ここには、スタッフ本人の納得感が伴っているということが分るでしょう。
組み合わせ
それぞれにメリット・デメリットがある中で、必ずしもどちらか1つを使ってかかわっていかないわけではありません。先ほどの例のように、組み合わせて
活用することもあります。また、使う順番を変えることも考えられます。
例えば、ケアプランに合わせてどのようなかかわり方をすればよいのか、コーチングを使いながらスタッフに考えさせていたけれど、観点がずれていてなかなか
考えが整理できないような場面を目にしたとします。これは、ケアプラン自体の理解ができていないことが考えられるので、いったん戻って、ケアプランの内容を
ティーチングで理解させることが必要になります。
このように、ティーチングとコーチングの特徴やメリット・デメリットを理解することで、「この場面では、ティーチングだな」「今コーチングを使ってみたけど、
なかなか反応が悪いから、いったんティーチングを使った方がよいかも」「本人の行動を後押ししてあげたいから、コーチングを使ってみよう」などと使い分けたり
組み合わせたりできるようになります。
いずれも、「スタッフが今何を求めているのか?」といった視点を持ち、場面を予測しながらかかわっていくことが大事です。そのためには、まず自分だけの視点
だけでかかわるのではなく、スタッフを観察し、相手の視点に立つ必要があります。
次回に続きます。
電子申請で行うことが義務化される大企業の社会保険手続き
行政へ提出する書類は、これまで書面(紙媒体)で行うことが一般的となっています。電子化の
流れの中、政府は以前から電子申請での手続きを促してきましたが、特に社会保手続きでは利用
率が向上しない状態が続いてきました。そのため大企業では、2020年4月より一定の社会保険手
続きについて電子申請で行うことが義務化されます。
1.2020年4月以降の電子申請の義務化
電子申請が義務となる大企業とは、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人
ならびに相互会社、投資法人および特定目的会社に係る適用事業所です。義務となる時期
は、対象企業の2020年4月1日以後に開始する事業年度からです。
なお、社会保険労務士または社会保険労務士法人が、大企業に代わって社会保険の手続
きを行う場合も、同様に電子申請で行うことが義務となります。
2.電子申請が義務となる手続き
電子申請で行うことが可能な社会保険手続きは多数ありますが、今回義務化される手続
きは以下のとおりです。
①厚⽣年⾦保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
・70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届
②健康保険
・被保険者報酬月額算定基礎届
・健康保険被保険者報酬月額変更届
・被保険者賞与支払届
③労働保険
・労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書
・⽯綿健康被害救済法⼀般拠出⾦申告書
④雇用保険
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届
・雇用保険被保険者転勤届
・⾼年齢雇用継続給付支給申請
・育児休業給付支給申請
これらの手続きを電子媒体(CDやDVD)で行っている企業もありますが、電子媒体での
手続きも電子申請に切り換えることになります。
3.行政手続きの簡素化
電子申請の義務化は、行政手続きの簡素化が念頭にあり、事業主における手続きの簡素
化も進められています。その一つとして昨年10月から雇用保険の継続給付(高年齢雇用継
続給付金、育児休業給付金、介護休業給付金)における被保険者の署名・押印の省略が
可能となりました。
これは、継続給付の申請を行うときに必要な、申請書への従業員の署名・押印を省略で
きるものです。署名・押印を省略するためには、従業員本人に、「記載内容に関する確認
書・申請等に関する同意書」により事業主が申請を行うことに同意することの確認を行い、
その同意書を保存することになっています。
このような簡素化が今後も行われると想定されます。
自社で電子申請を行うためには、電子証明書の取得を行うことが必要であり、また、社内
における社会保険手続き業務の流れも見直す必要が出てきます。書面での提出から、電子申
請に切り換えるまでには一定の時間を要することが考えられますので、早めに検討を進めま
しょう。
(次号に続く)
確認しておきたい傷病手当金の支給要件(被保険者期間)
このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の
総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:今年4月に入社した従業員が、休日にサッカーをしていて転んだそうです。足を
骨折しており、数日は入院、その後も自宅での療養が必要とのことでした。ま
だ年次有給休暇が付与されていないこともあり、欠勤として給与を減額するこ
とになります。このようなケースで健康保険の傷病手当金は支給されるので
しょうか。
社労士 :傷病手当金の支給要件には、①業務外の事由による病気やケガの療養のための休
業であること、②仕事に就くことができないこと、③連続する3日間を含み4日以
上仕事に就けなかったこと、④休業した期間について給与の支払いがないこと、
という4つがあります。今回のお話についても、これらの要件をすべて満たした
ときに傷病手当金が支給されることになります。
総務部長:なるほど。実は入社して間もないにも関わらず、傷病手当金は支給されるのか
ということが気になっていました。
社労士 :傷病手当金の支給要件に、被保険者期間はないため、資格取得後すぐに病気に
なったりケガをしたりしたとしても、先ほど挙げた4つの支給要件を満たせば支
給されます。一方で、傷病手当金には資格喪失後の継続給付がありますが、この
継続給付には被保険者期間が関係します。
総務部長:なるほど。詳しく教えていただけませんか。
社労士 :資格喪失後の継続給付は、傷病手当金を受給している(受給する要件を満たして
いる)上で、資格を喪失したときに、その後も継続して傷病手当金が支給される
制度です。支給されるためには、被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)
までに継続して1年以上の被保険者期間が必要になります。
総務部長:こちらは被保険者期間の要件があるのですね。
社労士 :はい、そうです。ちなみに、ここでいう「1年以上の被保険者期間」には任意継
続被保険者による期間は含まれず、また、任意継続被保険者の期間中に傷病手当
金の支給要件を満たしたとしても、支給されません。
総務部長:あくまでも資格喪失後の継続給付は、任意継続被保険者となる前の被保険者資格
により支給されるということですね。よく分かりました。ありがとうございまし
た。
【ワンポイントアドバイス】
1. 傷病手当金は、原則としてそれまでの被保険者期間に関わらず、支給要件に該当したとき
に支給される。
2. 傷病手当金が資格喪失後にも支給されるための条件のひとつに、資格喪失日の前日(退職
日)までに1年以上の被保険者期間が必要ということがある。
3. 任意継続被保険者の期間中に傷病手当金の支給要件に該当しても、傷病手当金は支給され
ない。
(次号に続く)
今後さらに重要性が増すハラスメント防止対策
企業には、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
(以下、「ハラスメント」という)の防止措置を講じることが、法律で義務付けられて
います。今後、法改正によりパワーハラスメントの防止措置についても同様の対応が
求められることになりそうです。
そこで今回は、企業に求められるハラスメント防止措置をとり上げます。
1.企業に求められているハラスメント防止措置
ハラスメント防止措置として会社が行うべきポイントは、大きく分けて以下の5つにまと
めることができます。
①事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を
解消するための措置(※)
⑤①~④と併せて講ずべき措置(相談者等のプライバシー保護のための措置、相談した
こと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと従業員への周知等)
※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントのみ
2.具体的な防止措置と実務上の注意点
上記5つのポイントのうち、ハラスメントを未然に防ぐための①、ハラスメント発生時に
適切に対応するための②、そして、ハラスメントの原因となる根本原因を解決するための
④について確認します。
[ポイント①]
事業主よりハラスメントがあってはならない旨の方針を示すとともに、ハラスメントを
行った人に対しては、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し
ておく。
[ポイント②]
あらかじめ相談窓口を設置した上で、従業員に周知を行う。窓口は形式的に設けるだけ
ではなく、実質的に対応が可能な窓口にする必要がある。
[ポイント④]
業務体制の整備など、企業は妊娠等した従業員等の実情に応じ、必要な措置を講ずる。
取組例として、妊娠等した従業員の周囲の従業員への業務の偏りを軽減するために、業務
分担を見直すことが挙げられる。これは、ハラスメントの原因や背景となり得る要因の一
つとして、周囲の従業員の業務負担の増大があると考えられていることによる。
企業としては、これらのポイントを押さえた対応が行われているか、就業規則の定めや
従業員への周知などの実態を確認し、不備があれば対応を行いましょう。
現在、パワーハラスメント防止対策の法制化が盛り込まれた法律案が、国会に提出されて
います。法律案が成立すると、パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置義務(相
談体制の整備等)が新しく設けられます。今後、企業におけるハラスメント対策の重要性が
より一層増すことは確実です。ハラスメント対策では、パワーハラスメントについても含め
て対応を進めましょう(※2019年4月15日時点の情報に基づいています)。
(次号に続く)
職員の定着につながる新人・後輩の指導育成法・・・・「ティーチング」と「コーチング」
職員の定着を考えるときに、入職したばかりの新人さんが定着できるかどうかは、とても大切な
視点です。なぜなら、職員のなかで一番「不安」を感じながら仕事をしているのは新人さん
だからです。その新人さんを周りの職員が皆で支援出来れば、新人さんも安心して働くことが
出来ますし、何とか入職1年の壁を乗り切ってくれれば、5年以上は定着してくれる職員に成長
してくれる可能性が高いことも事実です。
そして数ある後輩への支援方法の中で、最も大切なものが職場での「OJT教育・指導」では
ないでしょうか。今回から、定着につながるような「OJT教育指導」の進め方やその具体的
手法のティーチングやコーチングについてお伝えいたします。
1、 OJTの進め方
(1)成長段階における指導方法の3ステップ
新人の成長段階3ステップ 指導方法の3ステップ
ステップⅠ :手順によって仕事を進める力を養う段階 「教える指導」→ティーチング
ステップⅡ :ミスなく、安全、確実に仕事を進める力を養う段階 「気づかせる指導」→コーチング①
ステップⅢ :工夫を加えて仕事を進める力を養う段階 「考えさせる指導」→コーチング②
① ステップⅠ「教える指導」
就職直後数か月間の新人は、右も左もわからない状況です。しかしこの時期の新人は、
先輩たちのように自分の力でどんどん仕事ができるようになりたい、早く仕事を覚えたいと
大変意欲的です。この時期には、まずは業務遂行マニュアルに従って、「仕事をきっちりと
進められるようになる」ことを目的に、「教える指導」を実施します。
「教える指導」の進め方
・指導者自身が「何を、いつまでに、どのレベルまで」指導するかを確認する。
・新人の緊張をほぐし、業務・学習の準備をさせる
・すでにできること、知っていることを確認し、指導ニーズを把握する
・業務の全体像をイメージさせ、知識を系統的に覚えられるように説明する
・ポイントを強調する
・理解できていない様子があれば、繰り返し説明する
② ステップⅡ「気づかせる指導」
そもそも技能を身につけるとは動作を身につける(運動的技能)ことであり、仕事の上で
必要となる勘やコツ・判断力を身につける(知的技能)、という事です。従って学習者が身に
つけるところなので、指導者の教えられる部分は限られます。指導者が教えられることは、
学習者がより主体的になれるように、ゴールや手順を具体的にイメージさせることにとどまり
ます。学習者がその段階をクリアできたら、そのあとは「気づかせる」指導法に移行し、
自分の仕事の癖は何か、成功の要因や失敗の要因は何だったのかを自らが考え、状況にあった
仕事の進め方ができるようになります。
例えば、トイレ訓練などの介助行為は手順に沿って行う運動的技能よりも、その時々の状況で
判断する知的技能が問われます。つまり「気づかせる指導」が必要になります。トイレに誘導する
タイミングが悪く、声をかけたときには既にお小水は出た後だった、という場合に、
「何分ぐらいで誘導すれば間に合った」といった教える指導をしても、結局いい結果は
得られません。判断するための情報は何に基づいていたのか、判断基準は何をよりどころに
行ったかなど、指導者が聞き出しながらズレを考えさせる指導が必要です。
「気づかせる指導」の進め方
・キーワードは「任せて・見る」(仕事を「自分ごと」にする第一歩)
・教えた内容を実際にやらせてみる
・仕事を始める前から、進行途中、そして終了時のそれぞれのタイミングで、丁寧に解説やフィードバックを行う
・ミスの原因は何か、質問して整理させる。
・ミスを未然に防ぐための方法を質問し、気づかせる。
・改善ポイントを説明し、必要なら手本をみせる。
この指導の段階には「コーチング」のスキルが非常に大切になります。
③ ステップⅢ「考えさせる指導」
この段階では、新人に対して「工夫を加えて仕事を進める力を養う指導」を実施することが
ポイントになります。手順をしっかり自分のものにすることができて、仕事の確実性やスピードも
ついてきた。しかし、ここで指導を終わりにせず、常に良い介護を提供するためには、今の仕事に
工夫や改善を加えられる人材になることが求められます。
この段階は、日常業務の流れが自分なりにつかめるようになると、新人の仕事に対する意識は、
「利用者様の個別性に応じた介護を提供して信頼されたい」と高まり始めます。ステップⅢの
ポイントは「教える」ではなく、質問を投げかけて「考えさせる」ことを通じて、新人のスキルを
高める働きかけをしていくことが大切です。「考えさせる」指導の留意点を下記に示します。
・キーワードは「任せ・きる」(仕事を「自分ごと」にできた状態)
・手を貸したいという気持ちを抑えて、周囲を巻き込みながら自力で乗り越えさせる
・仕事の進め方にも自由裁量度を与える
・チューターは後方から見守り介入したくなるのをじっと我慢、黒子に徹した支援
・「自分の力でやり切った」と思えるような達成感。
この指導の段階にもまた「コーチング」のスキルが非常に大切になります。
次回は、「ティーチング」と「コーチング」に関する具体的な留意点をお伝えしたいと思います。
お楽しみに。
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『健康保険の扶養となることの可否を判別するための収入額の基準』
Q:
職員から、勤務先を退職した子どもを扶養にしたい、という連絡がありました。
その子どもは正社員として勤務していたため、今年は既に130 万円以上の収入があり、さらに
雇用保険から失業給付(基本手当)を受ける予定とのことです。扶養にすることができるので
しょうか。
A:
健康保険の扶養(被扶養者)は、扶養される者の生計を職員本人が維持していることが必要で
あり、扶養される者の収入や親族の範囲、同居の有無、別居の場合は仕送り額などによって
可否を判別します。このうち、収入は、今後1 年間の収入が130 万円(60 歳以上または一定の
障がい者の場合は180 万円)未満であり、この収入には失業給付等も含まれます。
詳細解説:
1.収入の計算期間
税務上の扶養は、1 月から12 月の期間の収入が通常103 万円以下であるか否かによって判別され
る(厳密には所得)のに対し、協会けんぽ等の健康保険の扶養は、今後1 年間の収入見込み額が
130 万円未満であるか否かで判別します(昭和52 年4 月6 日保発第9 号・庁保発第9 号)。
例えば扶養される者が10 月末日まで勤務し、その暦年中の給与収入が250 万円であっ
た場合、税務上は既にその年の収入が103 万円を超えているため、当年中は税務上の扶養
とすることができません。それに対し、健康保険は今後1 年間の収入見込み額で判別する
ことから、退職後の11 月は収入がなく、その後1 年間の収入見込みがないのであれば、退
職日の翌日から扶養にすることができます。
また仮にアルバイト等で勤務を再開した場合には、130 万円を12 ヶ月で除した金額である
月額108,333 円以下であれば継続して扶養にすることができます。
2.収入見込み額の種類
扶養となることの可否を判別する際の収入見込み額は、給与収入のみであることが大多
数ですが、この給与収入は残業手当や通勤手当も含めた総支給額で確認をします。税務上
での判別は、扶養される者が退職後に受け取る失業給付や出産手当金などの非課税となる
給付は除いて判別するものの、健康保険での判別はこれらも収入として考えます。そのた
め、給付を受けている場合であっても、130 万円を360 日(30 日×12 ヶ月)で除した金額で
ある日額3,611 円以下であれば扶養にすることができます。なお、失業給付は通常、退職
してから給付制限期間であるおよそ3 ヶ月間は受給できないことから、給付制限期間中で
あれば収入見込み額は0 円となり、健康保険の扶養にすることができます。
扶養は、税務上と健康保険上の異なる基準があるため、誤った手続となることがありま
す。扶養の手続を行う際は、具体的な給与収入額のほか、失業給付などの受給の有無を確
認し、確実に行いましょう。
(来月に続く)
福祉施設等の学歴別初任給の推移
4 月は新年度の始まりであり、新卒採用を行った福祉施設にとっては、新入職員を迎える時期で
もあります。ここでは、学歴別に福祉施設等の初任給に関するデータをご紹介します。
大学卒は男女とも20 万円超に
厚生労働省が毎年実施している調査結果の最新版※などから、福祉施設等(以下、医療,福祉)
の直近3 年間の初任給の推移を学歴別にまとめると、表1 のとおりです。
2018(平成30)年の結果をみると、男性は大学院修士課程修了と大学卒が20 万円を超えま
した。高専・短大卒は19.0 万円、高校卒が16.0万円です。女性は大学卒が20 万円を超えまし
た。大学院修士課程修了は19.8 万円、高専・短大卒は18.3 万円、高校卒は15.9 万円でした。
2017 年からの増減については、男性では高校卒以外は増加しました。女性は大学院修士課程修
了と大学卒が減少しましたが、高専・短大卒と高校卒は増加しています。
高専・短大卒は産業計を上回る
2018 年の産業計の初任給を100 としたときの、医療,福祉の初任給をまとめると表2 のと
おりです。
高専・短大卒が男性103.9、女性101.2 と産業計を上回りました。他の学歴は産業計を下
回っています。大学卒と高校卒が90 台後半なのに対して、大学院修士課程修了は男女ともに
80 台となり、産業計との差が目立つ結果になりました。
全体的には賃上げ傾向が依然として続いていますが、2019 年の初任給はどのようになるで
しょうか。
※厚生労働省「平成30 年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」
10 人以上の常用労働者を雇用する民間事業所のうち、有効回答を得た事業所の中で新規学卒者を採用した15,663 事業所を対象に、初任給
が確定している15,155 事業所について集計したものです。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/18/index.html
(次号に続く)
働き方改革関連法 段階的にスタート
この4 月から順次施行される働き方改革関連法。施行日は規模により異なるた
め、まずは規模の判断が必要です。ただし、「年次有給休暇(以下「年休」)の
取得義務」は、規模に関わらず4 月より全ての使用者に適用されます。
大企業、それとも中小企業?
働き方改革関連法のうち、2021 年までに開始する主な項目と、施行のスケジュールは下表の
とおりです。
一部の項目で、中小企業が遅れての適用となります。この区分は日本標準産業分類の業種区
分により判定要素が異なります。医療機関・福祉施設はサービス業に該当するため、「資本金
の額もしくは出資の総額が5,000 万円以下」または「常時使用する労働者数(企業全体)が100
人以下」の場合、中小企業となります。資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで
判定します。この労働者数のカウントについて、ポイントを2 つご紹介します。
大企業では、「時間外労働の上限規制」もこの4 月から開始です。特別条項があっても、年720
時間以内、単月100 時間未満の時間外労働の上限が設けられました(医師等を除く)。時間外労
働削減に向け、早急な対応を要します。
年休の取得が義務化されます
4 月より、従業員に年5 日の年休を取得させることが、全ての使用者の義務となります。対
象は、年休が10 日以上付与される従業員で、管理監督者や有期雇用労働者にも適用されます。
この年休の取得義務に関連し、従業員ごとに「時季」「日数」「基準日」を管理する年休管理
簿を作成し、これを3 年間保存することも義務付けられています。あわせて確認しましょう。
(次号に続く)