介護

ケアマネジメントの現場が今、大きな変革の時を迎えている。
テクノロジーの活用や生産性向上の遅れがしばしば指摘されてきたが、いまや各社が成果を競い合うフェーズに移りつつある。人材確保の難しさが年々増していく事業環境が動きを加速させた。都市部でも地方でも、処遇改善や働きやすい職場づくりが一段と問われるようになっている。
◆「人の力を人のために」
「テクノロジーを使って業務を効率化し、人が人と向き合う時間を取り戻す。人の力を真に人のために解き放つ」。長谷川徹代表の視座は明快だ。
横浜市の「トライドケアマネジメント」を取材した。2016年に創業し、居宅介護支援1本に専念。在籍する約10名のケアマネジャーが地域で活動を展開している。
経営理念は「ホスピタリティ」と「人材育成」の2本柱。生産性向上や負担軽減の取り組みが高く評価され、8月に今年度の「働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰」を受けた。
出発点は、ボトルネックとなっている紙文化・アナログ思考への不満、このままではいけないという焦りだった。
各種書類の印刷、郵送、回収、確認、転記、FAX、電話…。時間も費用も慣習の重みに押し流され、ケアマネジャーが本来持つべき時間が失われていく。長谷川代表は、「業務の効率化を実現しなければ、最も重要な人と人との関わりが脇に追いやられてしまう」と話す。だからこそ課題を言語化し、工程を分解して業務の再設計に乗り出した。力を入れた取り組みは、ケアプランデータ連携システムの本格運用と事務職員の役割拡張、そして事業所内の合意形成・納得感の醸成だ。
◆ データ連携の波を自ら起こす
ケアプランデータ連携システムの導入率は、横浜市もいまだ限定的な水準にとどまっている。
「トライドケアマネジメント」はこれを踏まえ、まずケアプランの作成・交付や給付管理などの業務を精査。現実的にどの部分をシステムで置き換えられるか、ひとつひとつ明確にしていった。同時に、事業所内での運用方法を具体的に検討。実際に導入する前から、定期的な会議で職員に得られるメリットを繰り返し説明した。
「便利そうだからやってみよう、というよりは、解決すべき課題を皆で一緒に確認しながら、『これなら進められるね』という合意を積み上げていった」と長谷川代表。疑問や不満をできるだけ残さないようにして、チームの意識を1つにまとめることを重んじた。システムの導入後は活用ルールを明確にし、それが徹底されるようきめ細かくサポートしている。
長谷川代表は、「ケアプランデータ連携システムを活用することは、もはや業界の大きな流れになっている。好きか嫌いかは置いておいて、皆で協力して取り組まないといけない局面に来た」と強調する。
その姿勢は、周囲の介護サービス事業者への働きかけにもつながっている。導入初期の“面倒”を共有しつつ、システムを活用することの重要性の周知に取り組んでいるほか、普及促進に向けたセミナー活動にも参画してきた。
システムの連携先は運用2年強で35事業所へと拡大した。フリーパスキャンペーン開始以降、8月時点で76社と連携。現在も増加を続けている。「必要なら最初の一歩は私たちも一緒に歩み出す。仕組みが回れば便利さは自然に理解されていく」。システムの普及を待つだけでなく、「自ら広げて便利な環境を作り出す」という積極的な姿勢で臨んでいる。
まず、事業所で必要な事務作業の内容を丁寧に確認。事務職員とケアマネジャーの役割分担を段階的に進めていった。
事務職員にケアマネジメントプロセスを理解してもらう勉強会も開催。無理のない範囲で、関連する知識を深めてもらっている。制度改正や報酬改定などの際には、ケアマネジャーと事務職員が定期的にミーティングを行うことで、適切な分業の実現を継続的に図っている。
こうした積み重ねの結果、これまでケアマネジャーが抱えていた定型業務の一部が事務職員に移り、ケアマネジャーが“専門職にしかできない業務”に集中できる体制を作った。
長谷川代表は「単なる電話番や紙ベースの事務処理など、退屈で非効率な業務に人を縛らない。事務職員が後方支援のプロとして価値を生めるようにしている」と語った。役割の再定義・拡張は事務職員のやりがいを高め、相互尊重にも結びつく。テレワークも柔軟に認め、働きやすさと成果が両立する環境の整備に心血を注いでいる。
◆「仕事の仕方を大きく変えていく」
生産性向上の果実は、処遇改善へと確実に結びついている。
ケアマネジャーの平均年収は427万円から491万円へ(役員・新入を除く)アップ。ケアマネジャー1人当たりの担当要介護者数は平均で34.5人から43.7人に増えたが、過負荷はなく無理な残業にも至っていない。
紙の提供票の枚数は月2100枚から1350枚へ削減され、FAXに費やす時間も月4.75時間から2.75時間に短縮した。さらに、有給休暇の取得率も74%から83%へ上昇させた。
長谷川代表は言う。「今はもう、単にテクノロジーを使えればいいという段階ではない。業務フローの中核に位置付け、仕事の仕方を大きく変えることを考えるべきではないか」。ケアプランデータ連携システムの活用と分業を核に、テクノロジーが脇を固め、人が主役としてさらに活躍する環境づくりを目指している。
人材確保の競争が厳しさを増すなか、事業者にとって処遇改善や働きやすさの追求の意味合いは変わった。「あれば喜ばれる施策」から「無いと敬遠される施策」へ。いまや事業継続の最重要戦略と言っていい。
◆ 適切な分業が相互尊重に
並行して進めたのが、ケアマネジメントを支える後方支援の強化だ。
まず、事業所で必要な事務作業の内容を丁寧に確認。事務職員とケアマネジャーの役割分担を段階的に進めていった。
事務職員にケアマネジメントプロセスを理解してもらう勉強会も開催。無理のない範囲で、関連する知識を深めてもらっている。制度改正や報酬改定などの際には、ケアマネジャーと事務職員が定期的にミーティングを行うことで、適切な分業の実現を継続的に図っている。
こうした積み重ねの結果、これまでケアマネジャーが抱えていた定型業務の一部が事務職員に移り、ケアマネジャーが“専門職にしかできない業務”に集中できる体制を作った。
長谷川代表は「単なる電話番や紙ベースの事務処理など、退屈で非効率な業務に人を縛らない。事務職員が後方支援のプロとして価値を生めるようにしている」と語った。役割の再定義・拡張は事務職員のやりがいを高め、相互尊重にも結びつく。テレワークも柔軟に認め、働きやすさと成果が両立する環境の整備に心血を注いでいる。
◆「仕事の仕方を大きく変えていく」
生産性向上の果実は、処遇改善へと確実に結びついている。
ケアマネジャーの平均年収は427万円から491万円へ(役員・新入を除く)アップ。ケアマネジャー1人当たりの担当要介護者数は平均で34.5人から43.7人に増えたが、過負荷はなく無理な残業にも至っていない。
紙の提供票の枚数は月2100枚から1350枚へ削減され、FAXに費やす時間も月4.75時間から2.75時間に短縮した。さらに、有給休暇の取得率も74%から83%へ上昇させた。
長谷川代表は言う。「今はもう、単にテクノロジーを使えればいいという段階ではない。業務フローの中核に位置付け、仕事の仕方を大きく変えることを考えるべきではないか」。ケアプランデータ連携システムの活用と分業を核に、テクノロジーが脇を固め、人が主役としてさらに活躍する環境づくりを目指している。
人材確保の競争が厳しさを増すなか、事業者にとって処遇改善や働きやすさの追求の意味合いは変わった。「あれば喜ばれる施策」から「無いと敬遠される施策」へ。いまや事業継続の最重要戦略と言っていい。
長谷川代表は、「大切なのは事業所内で進む方向を確認すること。あとは当たり前を徹底していくだけ」と説明し、こう続けた。「業務の効率化は目的ではなく手段。その先に、人と人が向き合える職場をどう作るかが問われている」。
現場の小さな改善の積み重ねが、未来の標準を形づくる。他のあらゆる業界と同じように、介護現場にもこれと正面から向き合うことが求められている.
採用内定者にメンタル不調が発覚した時の対応
このような場合、一度出した内定を取り消すことができるものでしょうか。というご質問です。
内定取り消しのハードルは高い
1,採用内定とは、やむを得ない事情があった場合には内定を取り消すことがという条件付きの労働契約と解されます。内定を取り消すことが可能な事由とは「採用内定当時は知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として取り消すことが趣旨、目的に照らして、客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものに限られる」とされています(最高裁判例)。つまり採用内定時に知っていたら採用することはなかった、という客観的に合理的で社会通念上相当とみとめられるような重大な事実が存在しなければ、採用内定の取り消しは認められません。ご相談のメンタル疾患の場合、症状が重く通常の勤務ができないと予測される場合には、採用内定の取り消しが認められる可能性は高いと思われます、一方で、採用面接の際に、メンタル疾患が疑われるような言動があったにも関わらず内容を出した場合には取り消しが難しくなる場合もあります。
ではどうしたらいいのか(対応策)
まず、業務遂行能力や適性を判断する材料として、内定者に「病歴の申告」を求めることは有効でしょう。メンタル疾患を理由としての採用拒否は必ずしも違法ではありませんが、採用前の健康診断にメンタルヘルス疾患の検査を行うことは応募者の同意が必要になります。またプライバシー保護や人権侵害にならないように細心の注意が必要です。
また採用内定時に書面を取り交わしておくことも有効です。たとえば、入社時の労働条件を記載した「採用意向確認書」をわたし、同時に「入職承諾書」に署名・捺印をしてもらいます。この入職承諾書に「入職時期、疾病などで就業困難と認められるとき」という一文をいれることで、不測の事態が生じた場合の抑制効果あるものと思います。
65歳以上の就業者数は介護現場を含む「医療・福祉」の伸びが際立っている
総務省が「敬老の日」にあわせて14日に公表した統計によると、65歳以上の就業者数は介護現場を含む「医療・福祉」の伸びが際立っている。
「医療・福祉」の65歳以上の就業者数は2024年で115万人。10年前の約2.3倍に増え、産業別で「卸売業・小売業(133万人)」に次ぐ2番目の多さとなった。
他の産業と比べても増加幅が大きく、「サービス業」や「卸売業・小売業」、「建設業」などの増加幅を上回っている。
「医療・福祉」の就業者に占める65歳以上の割合は、2024年で12.5%。10年前(6.7%)より高齢者の比重が大きく増加
「医療・福祉」の就業者に占める65歳以上の割合は、2024年で12.5%。10年前(6.7%)より高齢者の比重が大きく増していることが分かった。
また、2024年の65歳以上の就業者数は全体で930万人に達し、2004年以降21年連続で前年を上回り、過去最多を更新した。高齢者の労働参加は一層進んでおり、就業者全体のおよそ7人に1人が65歳以上となっている。
少子高齢化の進行とともに、社会・経済を支える高齢者の存在感が一段と強まっている。65歳以上の人口は3619万人に達し、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を記録した。
A、命令がなく、業務とは無関係な早めの出勤については、給料を支払う必要はありません。
労働時間とは
労働時間とは原則として「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことを言います。つまり、院長の指示命令がないのもかかわらず勝手に出勤している時間というのは労働時間ではありません。
業務命令はなくとも業務上必要な時間は労働時間
しかし、始業時間8時30分からでも「8時15分に出勤して、これとこれをやっておかなければ、診察の受付時間である8時30分には開始できない」という場合があります。このことを院長がわかっていながらスタッフの善意に頼ったままで積極的な対策を講じない場合、
この15分は黙示の業務命令の下行った業務として業務時間として扱われます。命令がなくとも15分前出勤が常態化しているのであれば、業務上必要な時間であり、それは労働時間になる可能性が高いといえます。
そもそもクリニックの始業時案は、診療受付までの準備を要する時間を見積もったうえで設定されますから8時30分の受付開始時間と同時に労働時間がスタートするといったところは聞いたことがありません。つまり、準備時間を15分と見積もるなら、8時15分が始業時間になるわけです。
掃除などをしてくれる場合には
質問のポイントは 例えば8時30分からの勤務時間開始でよいにも関わらず、8時からきて作業をしている場合にはどうするか」という点にあります。指示していないけれど、何かやっている、そしてタイムカードをおしている、するとこの時間に対価を支払うべきであるか、という疑問が出てくるであろうと思います。
しかし冒頭に述べたように、あくまで労働時間は指揮命令下にある時間です。自主的に作業をしていることに対して原則、給与の支払いは必要ありません。
職場の人間関係にも配慮する
また「8時30分始業なのに、一番の先輩社員が8時に出勤しているため他のスタッフが全員8時に出勤している」といったケースもあります。そうすると新しく入ったスタッフから「事実上強制的に出社させられているのになぜ給料がでないの」といった文句が出てきます。そのような場合に、早く出勤するスタッフに「ほかのスタッフが影響を受けるので、あまり早く出勤しないように配慮してほしいこと」もしくは「早く出勤するのは構わないが、他のスタッフに同時の時間に出勤することを強制しないように」と伝える必要があります。
自主的に早く出勤するスタッフにも、それぞれの理由があるのでしょう。準備をしっかりとしてから仕事を始めたいというプロ意識から早く出勤するスタッフもいるでしょう。仕事の喜び、積極性、職場への貢献やチームワークといった仕事観を否定することのないよう、伝え方には十分配慮する必要があると思います。
タイムカードの管理
タイムカードの打刻時間は原則としてクリニックに入った時間と出た時間を示しており、必ずしもそのすべてが労働時間になるわけではありません。業務がおわりスタッフ間でおしゃべりをして帰る場合などその時間まで給料を支払う必要はないのです。
ただし注意しなければならないのは、おしゃべりの時間わからないと、タイムカードの出勤時間から退勤時間までの時間がそのまま労働時間とみなされてしまう可能性があるということです。そのため「時間外労働は、院長の指示で行うものでおこなうものである」と周知しておくとともに、院長が承認しなかった時間がある場合にはその都度記載しておくなど、適切に把握しておくことが必要です。よくあるのは、タイムカードと時間外労働申請を並行して取り入れているケースです。例えば、17時間までの勤務の人が17時半にタイムカードが押されているような場合、時間外申請が「患者対応のため15分残業」となっていれば15分の残業代を支払えばよいということになります。このように時間外労働の管理があれば、タイムカードを押していたとしても、その分の給料をすべて支払う必要はないということになります。
介護報酬の「処遇改善加算」の取得率が、今年4月時点で95.3%にのぼったことが分かった。
厚生労働省が5日に開催した審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)に最新データを報告した。
各区分の取得率は表の通り。最上位の「加算Ⅰ」は44.6%の事業所が取得していた。「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」の合計は81.2%。

※ 旧3加算を一本化した「介護職員等処遇改善加算」は、昨年6月から創設された。今年4月からは、
経過措置区分の加算Ⅴが廃止されたほか、取得要件の弾力化も適用されている。
取得率をサービス別にみると、格差が非常に大きい。
例えば最上位の「加算Ⅰ」。特養では79.1%と約8割に達する一方、訪問介護
(39.5%)や通所介護(39.2%)、グループホーム(33.0%)では4割を下回っている。最低は地域密着型通所介護の23.9%。
厚労省が審議会に提示した資料によると、介護職員の賃金水準は依然として全産業平均を大幅に下回っている。
統計の最新データ(2024年賃金構造基本統計調査)では、全産業平均が月38.6万円なのに対し、介護職員は月30.3万円。その差は8.3万円となっている。
こうした状況を背景に、審議会では委員からさらなる処遇改善の実現を求める声が相次いだ。
厚生労働省は今月から、介護報酬の「処遇改善加算」の見直しに向けた具体的な議論を開始した。
来年度の期中改定を見据えた動き。介護職の賃上げを前に進めるために何をすべきか、5日に開催した審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で委員から意見を聴取した。
賃上げを本当に実施するのか、その規模、幅、財源のあり方などの根幹部分は、今秋に誕生する新たな政権の枠組みが年末までに決めることになるが、今のうちからディテールの議論を重ねていく狙いがある。
政府が見せている前向きな姿勢が後退しないかどうかが焦点だ。
石破政権は今年の「骨太の方針」に、「介護・障害福祉職員の他職種と遜色のない処遇改善に取り組むとともに、これまでの処遇改善の実態を把握・検証し、今年末までに結論が得られるよう検討する」と書き込んでいた。厚労省は今回、こうした「骨太の方針」の記載内容を踏襲する形で、次のような認識を明示した。
「介護など公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」
「過去に類のない異次元の賃上げを」
この日の意見交換は、早期の十分な賃上げの実現を求める委員の大合唱となった。
日本医師会の江澤和彦常任理事は、「来年度は過去に類を見ない異次元の力強い処遇改善が不可欠」と強調。「介護職員がいなくなれば我が国の介護は消滅してしまう。処遇改善の財源が必要不可欠であることは、全員で共有すべきこと」と呼びかけた。
全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は、「介護業界を崩壊させないためにも、少なくとも他産業に引けを取らない賃上げが必要。来年度からではなく、補正予算などによる今年度内の賃上げ対応も必須」と主張した。
日本介護支援専門員協会の濵田和則副会長は、「介護職員の処遇改善が図られるのであれば、介護支援専門員については少なくとも同等か、これまで処遇改善加算の対象でなかったことも考慮した対応を強く要望する」と訴えた。
このほか、健康保険組合連合会の伊藤悦郎常務理事は、「利用者負担や保険料負担とのバランス、あるいはそれぞれの納得感も非常に大切」とクギを刺した。今後、厚労省は政局の行方も横目に見つつ具体策の議論を進めていく考えだ。
「介護労働実態調査」の調査結果が発表
2025年7月28日、2005年度から続く「介護労働実態調査」が公益財団法人介護労働安定センターより発表されました。本実態調査は「事業所における介護労働実態調査」と「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の2種類に分かれておりますが、今回のニュースレターでは「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の中から、「離職(⇔定着)」というテーマに沿って、事業者として特に認識・確認しておいた方が宜しいかもしれない情報・データを大きくピックアップし、皆様にお届けいたします。「この視点において、自社の実情はどうなっているのだろうか?」是非、そのような視点を持ちつつ、目を通していただければ幸いです。
【厚生労働省「雇用動向調査」における離職率】
介護職員の離職率は12.8%、訪問介護職員の離職率は11.4%、と、今回の調査結果では過去の実績と比較して最も低い数値を更新しています。また、「厚生労働省「雇用動向調査」における離職率」に目を移してみると、令和6年度の数値はまだ出ていないものの、傾向から推測する限り、恐らく全産業平均よりも低い数値で収まっている可能性が高く、その意味でも注目すべきデータではないかと思われます。
では、次のデータを確認してまいりましょう。「2職種計の採用率と離職率の分布」についてです。
【2職種計の採用率と離職率の分布】
離職率に関しては「10%未満」と回答している事業所が53.6%に上っています。その他の数値も含めて見る限り、また、筆者の現場感覚を踏まえても、「低い離職率で収まっている事業所」と「そうでない事業所」の2極化が現実として進んでいるのではないか、と推測できるところです(この傾向は以前からありましたが、離職率10%未満が53.6%にまで上昇しているのも注目すべきところかと思います)。
次のデータは「訪問介護員、介護職員の年齢階層別採用率と離職率」についてです。
【訪問介護員、介護職員の年齢階層別採用率と離職率】
2職種各々で見ても29歳以下、即ち若手世代の離職が多いことがわかります。転職先が業界内であれば、「流出していない」という意味でまだ安心(?)できるところではありますが、他業界へ流出している可能性もあるかもしれないことを考えると、やはりこの「若手」の離職についてはより一層、様々分析を行うことが必要ではないかな、と感じる次第です。
次のデータは「現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている職場の取り組み(複数回答)」についてです。
【現在の職場を辞めずに働き続けることに役立っている職場の取り組み(複数回答)】
「人間関係が良好な職場づくり(47.2)」「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(43.2)」が突出して高いことはあらためて注目かもしれません。一方、これらを実現するとなると、「ギリギリの人員で現場を維持する」という考えではなかなか難しいかもしれず、逆に申し上げるなら、「多少の人員余裕を許容できる程度の経営基盤をどうつくっていくか」が大きなポイントになるかもしれない、と感じる次第です。
それでは最後に「直前の介護の仕事を辞めた理由」についてのデータを2つ続けて見てまいりましょう。こちらは毎年、「職場の人間関係」及び「事業理念や運営のあり方への不満」が最上位に上がってくるわけですが、それらをもう一段階掘り下げたデータを確認してまいりたいと思います。下記のデータは「辞めた理由が職場の人間関係の問題の場合の具体的な内容(複数回答)(直前の仕事が介護関係)」についてです。
【辞めた理由が職場の人間関係の問題の場合の具体的な内容(複数回答)
(直前の仕事が介護関係)】
大きな要因の多くに「上司」「先輩」という言葉がみられるところは要注目かもしれません。「リーダー陣の言動や振る舞いが人間関係に大きな影響を及ぼす傾向が高い」とするならば、リーダーの選抜は勿論のこと、スキル面やメンタル面においても、法人としてリーダーへのサポートをより充実させる必要があるかもしれないな、と感じた次第です。
最後のデータは「辞めた理由が事業理念や運営のあり方への不満の場合の具体的な内容(複数回答)(直前の仕事が介護関係)」についてです。
【辞めた理由が事業理念や運営のあり方への不満の場合の具体的な内容(複数回答)
(直前の仕事が介護関係)】
人間関係に関するデータと異なり、突出した要因がない(とはいえ多くの要因が30%以上)ところが大きな特徴のように見えますが、総じて経営陣が考える「理想」と現場の「現実」のギャップに依るところが大きいかもしれず、その意味においてはこの点におけるコミュニケーションの充実がより一層求められるのかもしれないな、と感じた次第です。
自社の現状を把握し調査結果と比較することで対応を検討
以上、概要・ポイントをお届けいたしました。まだまだ様々な視点のデータが公表されておりますので、詳細は下記URLを参照いただければと思います。
介護経営に携わる方や人事・組織づくりに携わる皆様は、自社の現状を把握し、調査結果と比較することにより、様々な気付きや学び、或いは改善のヒント等を得ることが出来るものと思われます。そのような視点で是非、本情報を有効に活用していただければ幸いです。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※引用元資料はこちら
事業所における介護労働実態調査結果報告書(令和6年度)
https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。
まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。
1,人事権を持ち、事業経営にも参加している(ここでいう人事権とは、いわゆる異動を含む人事権で、人事評価しているだけでは不十分)
2,自分自身の勤務時間について自由裁量が認められている
3、一般社員と比べて、十分な報酬を得ている
これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。
例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。
先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。
2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。
これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。
3,今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱いについて
その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残業手当はつかないことになります。
ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。
国の今年度の「デジタル中核人材養成研修」が開催される。厚生労働省が1日に介護保険最新情報のVol.1416で周知し、現場の関係者に広く参加を呼びかけた。
どの業界も人手不足が顕在化するなか、介護現場でも生産性向上が喫緊の課題。厚労省は通知で、「いま求められているのは、限られた人員でも質の高いケアを継続的に提供できる体制を構築すること」と改めて説明した。
今回の研修は、現場で課題を見つけて改善策を立案・推進できる中核人材、職場の実践力を高めるリーダーシップのある人材を養成することが目的。
導入が進むテクノロジーをより有効に活用することで、介護の質の向上や職員の負担軽減、働きやすい職場環境の整備につなげる狙いがある。
厚労省は7月にまとめた「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ」でも、「デジタル中核人材」を養成・配置することの必要性を強調していた経緯がある。
研修の開催期間は今年10月から来年2月まで。Zoomなどを活用したオンライン形式で行われる。参加費は無料。
研修は事前課題に加え、3日間のオンライン授業や自職場での実践、確認テストなどで構成される。修了者には修了証が発行され、介護サービス情報公表制度の報告事項として活用することもできる。
研修の対象者は、介護事業所・施設での勤務経験が3年以上あり、業務改善やテクノロジーの導入に関わっている、または今後取り組みたいと考えている人。定員は1500人で、申し込みは日本介護福祉士会の研修管理システム「ケアウェル」を通じて行う。
デジタル中核人材養成研修の詳細や参加申し込みはこちらから→
A 1分単位が原則です。ただし、端数を切り上げる場合には15分単位、30分単位でも
構いません。
切り上げにしないと給料未払いに。 給与計算上、よくある質問ですが、基本は1分単位です。例えば、17時までの就業時間で17時42分まで働いた場合、12分カットして30分の残業代を支払った場合、12分の就業に関する支払いは未払いになってしまいます。
給与計算上は楽だということで15分単位の取り入れている事業所はよくあります。もし15分単位とするなら切り上げでなければいけません。つまり17時までの就業時間で17時42分まで働いた場合には45分間の残業代を支払うことになります。管理の手間と数分プラスになる賃金のどちらをとるかの判断になります。
例外として、1か月の時間外労働、休日労働、深夜労働の合計に1時間未満の端数が
ある場合には30分未満の端数の切り捨て、それ以上を1時間に切り上げるといった端数処理は認められます。つまり月のトータル残業時間が3時間20分であった場合には3時間として、3時間40分であった場合を4時間とすることは可能です。
未払い残業は行政指導の対象に
残業代を未払いのまま労基署の監査が行われると「是正勧告書」「指導票」により行政指導が行われます。例えば3か月分の未払い残業の「遡及支払い」を命じられた場合、未払いとなっている時間数及び給料の額を3か月間さかのぼって計算し、当該スタッフへの不足額を支払うなど、まずは行政書道に従い原則対応することになります。
適切な時間管理とは
厚労省から平成13年に出された「労働時間の適正な把握のため講ずべき措置」では以下のように定められています。
- 労働日ごとに、何時から仕事を開始して、何時まで仕事をしたか、確認し記録すること。
- 使用者が自ら確認し記録するか、タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を、適性に申告するように十分に説明すること。必要に応じて実態調査をすること。
- 労働時間の記録に関する書類は3年間保存すること。
労働時間の上限を設定して、上限を超える時間を切り捨てたり、そもそも労働時間の記録がないため「時間外労働がない」としたりしている場合には法律違反になります。
固定残業代として定額を支給する際には慎重に
固定残業代を設定すると仮に残業代が発生しない月があっても残業代を支払わなければなりません。しかも実際に行われた残業が想定された10時間を超えると、別途残業代の支払い義務が発生します。そのため実態を確認した上で「何時間分を固定で支払うか」を決めなければなりません。固定残業手当を適切に運用するためには次の三つが要件とされています。
- 基本給と割り増し賃金部分が明確に区分されていること
- 割増賃金部分には何時間分の残業が含まれているかが明確であること
- 上記②を超過した場合には、別途割増残業が支給されること
この方法は、残業が大体同じ時間発生している場合には適している方法ですが、月によって残業時間が大きく変動したり、人によってばらばらであったりする場合には、かえって管理が煩雑になる場合があります。導入によりメリットとデメリットをよく検討して慎重に判断する必要があります。