《 厚労省 》コロナ禍に伴う介護事業所の"かかり増し経費"を補填する国の新たな補助金について、サービスごとの上限額など具体像が分かった
介護
2022 年1月から変更となる傷病手当金の支給期間の通算
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
当社にはガンの治療をしながら仕事をしている従業員がいます。最初にガンが判明したとき、手術のために1ヶ月ほど入院していました。その後、仕事を続けながら、治療が必要なときには年次有給休暇を取りながら通院していました。
社労士 そうですか。治療と仕事の両立をされていたのですね。
総務部長 はい、周りの従業員も協力的だったのでその後の抗がん剤の治療もできたのですが、先日、残念ながら再発が判明し、再度入院をすることになりました。そこで、本人が収入の心配をしています。以前に受給した健康保険の傷病手当金を今回も受給できますよね。
社労士 傷病手当金は、業務外の病気やケガで会社を休んだ時に一定の要件を満たすことで受給できるものです。同じ病気やケガの場合には支給される期間が決まっており、受給を開始した日から最長1年6 ヶ月までとなっています。前回、入院されたのはいつ頃でしょうか。
総務部長 確か1年ほど前だったような覚えがあります。ただ、休んだ期間も1ヶ月程度だったので、まだ1年5 ヶ月くらいはもらえると思っています。
社労士 現在の傷病手当金の支給期間は、暦で通算することになっており、仕事に復帰した期間も含め、1年6 ヶ月です。そのため、受給した期間がたとえ1ヶ月しかなくても、すでに1年間受給していることになります。
この従業員の方のように、治療と仕事の両立で、働くことのできない期間と働くことのできる期間が交互になることもあります。そのため、2022 年1月1日からは暦の通算ではなく、支給された期間を通算して最長1年6 ヶ月受給できるように変わります。
総務部長 それは良い変更ですね。この従業員の場合、受給を開始した日からすでに1年ほど経過していますが、どのように考えるのでしょうか。
社労士 はい、2021年12 月31日までは現在の法律である暦での通算が適用されます。そして、2022 年1月1日時点で1年6 ヶ月に満たない期間(残っている期間)があるときは、支給された期間を通算することになります。
総務部長 なるほど、今回の治療でどのくらいの期間休むかわかりませんが、いずれにしても1年前から暦での通算が始まっていることを伝えて、治療計画にも役立ててもらう必要がありますね。ありがとうございました。
ONE POINT
①2022年1月1日以降、傷病手当金の支給期間が暦の通算から支給期間の通算に変更となる。
②2021年12月31日に傷病手当金を受給している被保険者は2021年12月31日まで暦の通算となり、2022年1月1日以降は支給期間の通算となる。
くるみん・プラチナくるみん認定で50 万円が支給される助成金
次世代育成支援対策推進法では、常時雇用する労働者数が101人以上の企業に、一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ることを義務付けています。この行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の基準を満たした場合、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。今回、10 月より、くるみん認定を受けた際の助成金の制度が設けられました。
1.くるみんの認定基準
くるみんの認定を受けるには、10 項目の認定基準をすべて満たす必要があります。以下ではその中から5 つをとり上げます。
① 次の(1)または(2) のいずれかを満たしていること
(1) 男性従業員のうち育児休業等を取得した人の割合が7%以上であること
(2) 男性従業員のうち、育児休業等を取得した人および企業独自の育児を目的とした休暇制度を利用した者の割合が、合わせて15%以上であり、かつ、育児休業等を取得した人が1人以上いること
② 女性従業員の育児休業等取得率が75%以上であること
③ 3 歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること
④ 計画期間の終了日の属する事業年度において次の(1) と(2) のいずれも満たしていること
(1) フルタイムの従業員等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45 時間未満であること
(2) 月平均の法定時間外労働60 時間以上の従業員がいないこと
⑤ 以下のいずれかの措置について、成果に関する具体的な目標を定めて実施していること
・ 所定外労働の削減のための措置
・ 年次有給休暇の取得の促進のための措置
・ 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
なお、2022 年4 月1日からくるみん認定・プラチナくるみん認定(くるみん認定企業のうち、より高い水準の取組みを行った企業が、一定の要件を満たしたときの認定)の基準について見直しが予定されています。
2.10 月より創設された助成金
従業員の仕事と家庭の両立を図るために必要な取組みを支援するために、くるみん認定・プラチナくるみん認定を受けた常時雇用する労働者数300 人以下の中小企業に対し、50 万円の助成を行う制度が設けられました。
中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業として内閣府が実施するものであり、事業の実施は一般財団法人 女性労働協会が行います。対象期間は今年10 月から2027 年3 月末までの予定となっています。
くるみん認定を受けると、くるみんマークを広告や商品、ホームページ、パンフレットなどに使用でき、広く仕事と育児の両立を行っている企業として対外的にアピールできます。今後、従業員の仕事と家庭の両立を図るための取組みのひとつとして、このくるみんの認定を検討してみてもよいでしょう。
20 年ぶりに改正された脳・心臓疾患の労災認定基準
業務による過重な負荷が加わり、脳内出血や心筋梗塞をはじめとした一定の脳・心臓疾患を発症したときには、厚生労働省が示す基準に沿って、業務に起因する疾病として労災保険の給付対象となるかの判断が行われます。この基準であるいわゆる「過労死認定基準」が今回、20 年ぶりに改正されました。以下では、新しい基準のポイントを確認します。
1. 労働時間以外の判断基準
認定基準は、長期間の過重業務、短期間の過重業務、異常な出来事の3 つに分けて判断されます。このうち、長時間の過重業務の判断では、発症前1ヶ月におおむね100 時間または発症前2ヶ月間ないし6 ヶ月間にわたって、1ヶ月あたり80 時間を超える時間外労働が認められる場合について、業務と発症との関係が強いと判断されていました。
この時間外労働にかかる基準に加え、これらの時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、2 の「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと判断されることになりました。
2. 労働時間以外の負荷要因の見直し
長期間の過重業務、短期間の過重業務では、労働時間以外の負荷要因も評価されます。この負荷要因については以前から示されていましたが、今回、「休日のない連続勤務」、「勤務間インターバルが短い勤務」等が追加されました。勤務間インターバル(※)は、おおむね11 時間未満での勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討し、判断に用いられます。
※終業から次の勤務の始業までのことをいう。
3. 業務発症と関連性が強いとされる内容
短期間の過重業務、異常な出来事では、業務と発症との関連性が強いと判断される負荷要因が示されています。具体的には以下の内容です。
[ 短期間の過重業務]
・ 発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
・ 発症前のおおむね1週間継続して、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合
[ 異常な出来事]
・ 業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与した場合
・ 著しく暑熱な作業環境下で水分補給が阻害される状態や著しく寒冷な作業環境下での作業、温度差のある場所への頻回な出入りを行った場合 等
特に休日が取れないような連続勤務や勤務間インターバルが労働時間以外の負荷要因に追加されたことは注目すべきことであり、連続勤務となっていれば最低限週1日は休ませたり、長時間労働が続いている場合には次の日の始業時刻を遅くしたりするなどして、過重労働を防止するための取組みが一層求められます。
《 後藤茂之厚労相 26日 》
岸田文雄首相は26日の閣議後に、新型コロナウイルス対策の決め手になると期待されている飲み薬について、年内の実用化を目指すよう後藤茂之厚生労働相に指示した。必要量の確保に注力することも併せて要請した。
岸田文雄首相は26日の閣議後に、新型コロナウイルス対策の決め手になると期待されている飲み薬について、年内の実用化を目指すよう後藤茂之厚生労働相に指示した。必要量の確保に注力することも併せて要請した。
後藤厚労相が会見で明らかにした。
後藤厚労相は、「経口薬は国民の安心を確保していくための切り札と言えるもの。総理の指示を踏まえ全力を尽くしていく」と説明。「できる限り薬事承認を早く進める。しっかりと準備したい」と述べた。
今後の感染動向の見通しについては、「年末に向けて社会経済活動の活発化が予想されること、気温の低下で屋内の活動が増えることなどもある。引き続き警戒が必要」と指摘。「国民の皆様にはマスクの正しい着用や手指衛生、換気など、基本的な対策の徹底にご協力頂きたい」と呼びかけた。
新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について、厚生労働省は28日、2回の接種を終えた全ての人を対象とする方針を固めた。
この日の「ワクチン分科会」で選択肢として示し、多くの専門家から賛同を得た。
2回目の接種から8ヵ月以上経過した希望者から順に接種できるようにする計画。1回目のような「優先接種」の概念は用いず、自然と医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人、介護職といった順に希望者が接種できる仕組みとする。
厚労省は来月の分科会でこうした方針を正式に決める予定。12月から3回目の接種を始めたい考えだ。
3回目の接種は、感染の予防などワクチンの効果を維持していくことが狙い。全ての人を対象としたのは、自治体の事務が煩雑になるのを回避する狙いもある。分科会では専門家から、3回目の必要性が特に高い高齢者などへの積極的な情報提供を求める声もあがった。
主なサービスの1事業所あたりの上限額は以下の通り。訪問介護や通所介護は1万円から2万円、特養や老健は3万円から7万円などと設定されている。厚生労働省は今月中にも正式に通知を出す。
全サービスの1事業所あたりの補助上限額はこちら。
この新たな補助金は、先月まで実施されていた介護報酬の特例(0.1%増)の代替措置として支給されるもの。10月から12月までの間に生じたかかりまし経費、例えばマスク、手袋、消毒液、パーテーション、パルスオキシメーターの購入費などが対象となる。厚労省は先月末、従来の介護報酬の特例をこうした実費補助へ切り替える方針を示していた。
全ての介護事業所が申請可能。時期や様式、ルールなど手続きの詳細はなお調整中だが、10月から12月までの分をまとめて1回で申請する形となる見通し。申請にあたっては、かかり増し経費を証明するレシート(*)を保存しておく必要がある。申請書へのレシートの添付は不要。詳細は今月中にも通知される。
* 衛生用品などを購入した際のもの。(介護ニュースより)
認知症などで要介護認定を受けたデイサービス利用者らが、社会参加の一環で働き手が不足するコンビニや配達業で有償ボランティアとして働く取り組みが各地で導入されている。人の役に立てる喜びが自立支援や生きがいにつながるとして、関係者は「介護福祉と企業双方の利益になる仕組みとして広めたい」と意気込んでいる。
「ここに来るのは楽しいよ。人に喜んでもらえるし」。セブンイレブンの制服と黒いエプロン姿の川下昌子さん(80)は談笑しながら慣れた手つきで積み上げられた買い物かごを消毒する。
川下さんが働くのは千葉県船橋市内の店舗。この店では、要介護2程度の軽い認知症がある60~90代のデイ利用者が施設職員のサポートを受けながら、接客を除く商品陳列や検品などに従事する。1回1時間、3回働くと系列店で使える千円分の商品券がもらえる。
取り組みを始めたのは介護事業者や店側が参加する「ななしょくプロジェクト」。「働く選択肢を当たり前に」を目標に、介護サービス利用者がレクリエーションの時間を使って働く仕組みとして立ち上げられた。
プロジェクトに加わった船橋市のデイ事業所「やすらぎの森前原」を運営する森重貴之社長は「普段つえを使う人も、店ではつえなしで仕事をするようになった」と驚く。店舗オーナーの鯨井祐介さんも「喜んで働きに来てくれると従業員もうれしい」と歓迎。有償ボランティア受け入れは鯨井さん経営の店舗のうち3店舗に拡大し、職場の活性化につながっているという。
プロジェクトの佐藤亜美事務局長は「仕事が早い、できるできないは認知症に関係なくある。いろんな人が働くコンビニだからこそ受け入れやすかった」と説明する。
厚生労働省は2018年、デイサービスの活動の中で利用者が地域で有償ボランティアに参加できるとする通知を全国の自治体に出した。
福岡県大牟田市では、介護事業所の利用者が徒歩圏でヤマト運輸のダイレクトメール便の配達を担う。9年前から先駆的に取り組む東京都町田市のデイサービス「DAYS BLG!」では、利用者がポスティングや自動車ディーラーでの洗車を行う。
全国の介護事業所にノウハウを伝える同サービスの前田隆行さんは「企業の求めることと利用者の状態や希望を把握し結び付ける人材育成が必要だ」と指摘。前例がないと自治体が消極的なケースもあり、理解促進も課題に挙げている。
日本経済新聞 夕刊 社会(9ページ)2021/10/25 14:30
《 介護保険最新情報Vol.1015 》
厚生労働省は22日から、介護サービス事業所を対象とした新型コロナウイルス対策の実地研修の第4次募集を開始する。20日、介護保険最新情報のVol.1015で周知した。
この研修は、感染症対策の専門家を介護現場に派遣して行うもの。今回の募集期間は11月5日まで。受け付け数は100事業所ほどだという。実施は11月末から来年2月末にかけて。応募要件などの詳細は通知にまとめられている。
「冬期の感染症の流行に備え、適切な対策を学ぶ機会として活用して頂きたい」。厚労省は事業所にそう呼びかけている。
研修内容は例えば、
◯ 事業所の対策の現状把握、助言
◯ 個人防護具の着脱方法
◯ ゾーニングを含め、感染症が発生した場合の対応方法
などが想定されている。このほか、事業所は個々のニーズに応じた相談・指導を受けることも可能。研修は原則として13時30分から17時30分(最大4時間)となっている。(介護ニュースより)
《 東洋大学ライフデザイン学部 高野龍昭准教授 》
今月13日から15日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された「医療と介護の総合展」で、東洋大学ライフデザイン学部の高野龍昭准教授が講演した。
今年度から本格的な運用がスタートしたLIFE(科学的介護情報システム)について、「介護報酬改定の最大のポイント。非常に重要な取り組み」と評価。「今はまだデータを集めている段階。介護現場の皆さんは非常に大変なはず」と思いやりつつ、中長期的にはサービスの質の向上など良い結果につながると呼びかけた。
高野准教授は講演の中で、「データが蓄積されていけば、一定の指標、判断基準が揃っていく。サービスの標準化を促しつつ、質の評価ができるようになる」と解説。そのうえで次のように語った。
「栄養状態を改善するため、手足の動きを良くするため、認知症のBPSDを軽減するためには、こういう対応がその人の状態に最も合っている − 。そうしたことが分かっていく。介護では医療と違ってかなり属人的に判断・決定されることが多いが、本当はサービスの標準化が必要な部分もたくさんある。そのためにはまずデータの整備が欠かせない」
高野准教授はあわせて、「LIFEで介護の全てが標準化できるのかというと、そんなことはまったくない。真に社会的な側面、その人の生き方や価値観、人間関係、意欲、そうした部分はなかなかデータ化になじまない。標準化は難しい」と指摘。「標準化しようとしているのは心身機能の維持・改善と栄養改善の一部の取り組みだけだ、という指摘もある。最初はそれだけでもいいと思う。LIFEもバージョンアップを重ねていく。データをもとに介護サービスを見直していこうという試みは大切なこと」と述べた。(介護ニュースより)
介護報酬を議論する国の審議会で会長を務める慶應大学の田中滋名誉教授が、今月13日から15日にかけて千葉県の幕張メッセで開催された「医療と介護の総合展」で、「地域包括ケアシステムの深化」をテーマに講演した。
※ この記事では当初、「医療と介護の総合展」の開催期間を今月14日から16日と記載しておりましたが、正しくは今月13日から15日でした。お詫びして訂正致します。この記事は訂正後の記事です。
今後は85歳以上の比較的元気な高齢者が急増していくと説明。元気であっても暮らしの中の困りごとが増え、それらの対応が「大きな社会課題になる」と指摘した。医療や介護の充実だけにとどまらず、生活を支えていくという視点に立った施策の強化が一段と重要になるとしている。
田中名誉教授は講演で、足元で約620万人いる85歳以上の高齢者が今後15年弱で約1000万人に達すると分析。その4割ほどが要支援・要介護となる一方で、多くが食事や入浴、排泄などを自力でできる状態を保つとの見方を示した。こうした高齢者は、大掛かりな掃除や電球の交換、通院、買い物などが難しいほか、最新の家電がうまく使えない、キャッシュレス決済に対応できないといった困りごとにも直面するとし、これが今後の社会課題になると問題を提起した。
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田中名誉教授はこのほか、パートナーや友人、ペットとの死別や退職などが高齢者の心身機能を一気に衰えさせると説明。新たなつながりを生み出す仕組みが欠かせないとし、いわゆる"通いの場"が有効だと語った。必ずしも要介護者中心のものだけでなく、元気な高齢者が集まって交流できる場を地域で作る工夫が必要と指摘している