介護
未経験者の人材獲得・育成を積極支援
令和2 年度第3 次補正予算により、介護分野に関する就職支援が厚みを増しています。創設された新制度「雇用と福祉の連携による離職者への介護・障害福祉分野への就職支援パッケージ」に注目します。
コロナ離職者の獲得と育成をサポート
新型コロナウイルス感染拡大により離職者が増加する一方、介護業界は依然として人手不足が続いています。今回の制度は、その人手不足を補うために、他業種から人材を獲得し、戦力に育てるための支援策です。具体的には、
- ハローワーク、訓練機関及び福祉人材センターの連携強化による就職支援
- 介護・障害福祉分野向け訓練枠の拡充、訓練への職場見学・職場体験の組み込み、訓練委託費等の上乗せ
- 都道府県社会福祉協議会による介護分野、障害福祉分野に就職した訓練修了者への貸付金制度の創設
等が実施されます。その内容の一部をご紹介します。
未経験者に手厚い訓練体制の強化
未経験者の参入を促進すべく、教育に力点が置かれます。訓練機関との連携を拡大し、資格取得支援や職場見学・職場体験等、求職者と施設の双方がメリットを享受できる、人材育成推進計画です。
訓練委託費等は、1 人当たり月1 万円の増額が予定されています(令和3 年度末まで)。
貸付金の拡大と返済免除
訓練修了者には、都道府県社会福祉協議会による、介護分野・障害福祉分野就職支援金20 万円の貸付け制度が創設されます。この貸付金は、介護分野等に就職し、2 年間継続して従事した場合に、返済が免除されます。
他にも第3 次補正予算では、既存の「介護福祉士修学資金等貸付事業」の貸付原資の積み増しも計上されました。これは介護福祉士養成施設に通う学生に対する修学資金の貸付事業で、資格取得後、福祉・介護職に5 年間継続従事した場合に返済が全額免除されます。
これらの支援策は長年人材確保に悩んできた介護業界にとって、現況の労働需要の構造変化をチャンスに変える呼び水です。最新情報は、厚生労働省ホームページでご確認ください。
参考:厚生労働省「令和2 年度 厚生労働省第三次補正予算案(参考資料)」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/dl/20201221_02.pdf
(次号に続く)
新型コロナによる休業時の労働者支援の動き
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)については、様々な支援策が設けられているものの、企業が助成金の活用を行わないことにより、本来、労働者が享受できる支援が行き渡らない状況も発生しています。そこで、給付金等を企業を経由せず、直接労働者に給付する仕組みの構築が進んでいます。以下では、大企業のシフト労働者等に対する休業の支援と、小学校等が臨時休業になった際の支援について確認します。
1.大企業にも拡大される休業支援金・給付金
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」という)は、当初、新型コロナの影響により事業主が労働者を休業させたものの、休業手当が支払われない中小企業の労働者を対象に、労働者の直接申請により給付が行われるものでした。
この対象が大企業で雇用されるシフト労働者等にも拡大されており、労働契約上、労働日が明確でない人としてシフト制、日々雇用、登録型派遣の人についても支給されることになりました。
2.直接申請による小学校休業等対応助成金
小学校休業等対応助成金は、小学校等の臨時休業等に伴い、子どもの世話を行うため仕事を休まざるを得ない保護者に対して有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主が、休暇中に支払った賃金相当額を受給できる制度です。今回、この基本的な考え方は崩さずに、2020年2月27日から3月31日までの休みについては小学校休業等対応助成金を労働者が直接申請し、2020年4月1日から2021年3月31日までの休みについては、休業支援金の仕組みにより労働者が直接申請することにより給付する運用が開始されました。
支給対象は、以下を満たす必要があります。
- 助成金について労働局に労働者から相談があり、労働局から事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかった。
- 小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、通常通りの賃金等が支払われていない部分がある。
- 小学校休業等対応助成金(個人申請分)および休業支援金の申請にあたって、事業主記載欄の記載や証明書類の提供について、事業主の協力が得られる。
- 2020年4月1日から2021年3月31日までの期間の休業支援金の申請にあたり、その労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意する。
都道府県労働局に「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」が設けられ、労働者からの相談内容に応じて、企業への特別休暇制度導入・助成金の活用の働きかけ等を行うことになっています。労働者が相談した場合には、労働局から問い合わせが入るため、制度の概要を押さえておきましょう。
(次号に続く)
5月7日に発出された、厚労省からの通知概要です。
高齢者施設における過去の誤対応も示されている本通知、
関心をお持ちの皆様は、下記をご確認下さい。
https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/koureisyashisetu_ryuijiko.pdf
出向者の社会保険の取扱い
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。
総務部長:
今後、当社の従業員の能力開発を進めるために、取引先の企業に在籍出向をさせたいと考えています。詳細はこれから検討することになりますが、社会保険の取扱いについて教えてください。
社労士:
わかりました。まず雇用保険については、出向者は出向元企業と出向先企業の双方と雇用関係がありますが、両方で適用されるわけではありません。生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている企業の方で適用します。
総務部長:
いまのところ、本人には当社から賃金を支給し、出向先企業から当社へ賃金の負担金を支払ってもらう予定です。この場合には、雇用保険は当社のまま加入し続けることになりますね。
社労士:
そうですね。次に労災保険ですが、実際に出向者が労務提供を行う先で適用となるため、出向先企業で適用します。出向先で被保険者となる手続きは不要ですが、労災保険料は出向先の被保険者として算入することになるため、出向元で出向者の賃金を支払っている場合には、出向先企業に支払った賃金額を連絡し、出向先で出向者の賃金を含めて労災保険料を算出します。
総務部長:
労災事故は実際に働いている現場で起きるため、労務提供を行う出向先で加入するのですね。
社労士:
その通りです。最後に、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業と出向先企業のうち、使用関係があり報酬を支払う企業(一方または双方)で適用を受けます。今回は、自社で賃金を支払う予定ですので、現行のままの適用になります。なお、出向元企業と出向先企業の両者で適用となる場合には、二以上事業所勤務届を提出することになりますので、ご注意ください。
総務部長:
ややこしい手続きになるのですね。
社労士:
賃金の支払い方等で取扱いが異なってくるため、出向規程で社会保険の取扱いを定め、具体的な出向の内容を出向先企業との出向契約書など書面で取り交わすべきでしょう。
総務部長:
なるほど。以前に、出向規程を作成していたと思いますので、中身を確認してみます。また不明点が出てきたら、相談します。
【ワンポイントアドバイス】
- 雇用保険、健康保険・厚生年金保険は、出向元企業・出向先企業の賃金の支払い状況によって適用が異なる。労災保険については、賃金の支払い状況に関わらず、出向者が労務提供を行う企業で適用となる。
- 出向における社会保険の取扱いを出向規程に定め、実際に出向を行う場合には、出向元企業と出向先企業との出向契約書の中で社会保険の取扱いを明確にする。
(次号に続く)
次世代法の一般事業主行動計画策定と指針改正
次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するために、国、地方公共団体、企業、国民が担う責務を明らかにすることを目的として次世代育成支援対策推進法(以下、「次世代法」という)が制定され、2005年4月1日に施行されました。当初は10年間の時限立法でしたが、法改正により2025年3月31日まで10年間延長されています。さらに、2021年2月には次世代法に基づく行動計画策定指針(以下、「指針」という)が改正され、2021年4月1日に適用となることから、ここでは次世代法の内容と改正された指針について確認します。
1.行動計画の策定
次世代法では、常時雇用労働者数101人以上の企業に対し一般事業主行動計画(以下、「行動計画」という)を策定し、一般への公表および従業員への周知を求めており、さらに行動計画を策定した旨を、都道府県労働局に届け出ることを義務としています(100人以下の企業は努力義務)。
行動計画の内容は各企業で検討し、決定することになりますが、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むにあたって、「計画期間」、「目標」、「目標を達成するための対策の内容と実施時期」を盛り込むことになっています。
2.行動計画策定指針の改正
行動計画の策定においては、指針の「一般事業主行動計画の内容に関する事項」に掲載されている項目を参考にするとよいでしょう。
今回の改正により、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」として、以下の内容が盛り込まれました。
- 不妊治療のために利用することができる休暇制度(多目的休暇を含む)、半日単位・時間単位の年次有給休暇制度、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワーク等の導入や、その他の措置を講ずる。
- 1.の場合、以下の取組みを併せて行うことが望ましい。
・両立の推進に関する取組体制の整備
・従業員に対するニーズ調査と、その結果を踏まえた措置を講ずること
・企業の方針や休暇制度等の具体的措置について従業員への周知、社内の理解促進、相談対応の実施 - 休暇制度等の運用にあたって、不妊治療に係る個人情報の取扱いに十分留意することが必要。
厚生労働省では、働きながら不妊治療を受けられるように、不妊治療と仕事の両立を支援しています。不妊治療をしている多くの従業員が会社にその旨を伝えられていない現状もあるようです。まずはニーズの調査といった取組みから始めてもよいかもしれません。
(次号に続く)
今国会で審議が進められる男性育休取得促進等
厚生労働省が行った令和元年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業(以下、「育休」という)の取得者の割合は7.48%となり、平成30年度の6.16%と比較すると上昇はしているものの、その上昇幅はわずかに留まりました。少子高齢化を止めるためにも男性の育休取得促進は最重要の政策となっており、今国会では以下の法改正(主だったもの)が審議されています。
1.男性育休取得促進策
①出生時育休の創設
子どもの出生後8週間以内に、4週間まで取得することができる柔軟な育休の枠組みが創設される予定です(出生時育休)。出生時育休では、より休業を取得しやすいように、休業の申出期限を原則休業の2週間前までとし、2回に分割して取得することができるよう検討されています。
また、労使協定を締結している場合に、従業員と事業主の個別合意により、事前に調整した上で出生時育休中に就業できるようにすることも改正法案に含まれています。
②雇用環境整備と個別の周知・意向確認義務
妊娠・出産をした従業員や、配偶者が妊娠・出産をした従業員が申し出たときに、個別に育休等の制度の周知および育休の取得意向の確認のための措置を講ずることが、事業主に義務づけられる予定です。
③育休の分割取得
現行の育休は、一定の事由がない限り1子につき1回のみの取得です。これを分割して2回まで取得することができるようになる予定です。
④育休取得状況の公表義務付け
常時雇用労働者数が1,000人超の企業に対し、育休取得状況の公表が義務付けられる予定です。
⑤有期雇用労働者の取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業および介護休業について「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という取得要件が廃止される予定です。ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することができるように検討されています。
2.社会保険関係の改正
1.の変更に伴い、雇用保険の育児休業給付に関しても必要な変更が行われ、また、出産日のタイミングによって育児休業給付の受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例が設けられる予定です。
さらに、短期の育休の取得に対応するため、月内に2週間以上の育休を取得した場合には、その月の社会保険料が免除されるようになり、
賞与に係る社会保険料については1ヶ月を超える育休を取得している場合に限り、免除の対象とすることも検討されています。
4月13日現在、国会で審議が行われている状況ですが、成立後には就業規則(育児・介護休業規程等)の大幅な変更が必要になる内容であるため、事前に概要を確認しておきましょう。なお、改正法が成立すると2022年4月以降、複数回に分けて施行される予定です。
※2021年4月13日現在の情報に基づき作成しています。
(次号に続く)
2021年4月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう
財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催
2021年4月より第8期の法改正・報酬改定が施行され、落ち着きを取り戻すまでにはあと約1ヶ月~2ヶ月程度は必要であろうと思われる介護業界。そんな折、財政的観点から「抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が4月15日に開催されました。“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料「社会保障について」の中で特に介護事業者に関連するであろう10点の論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる5点の内容を採り上げ、お届けしてまいります。
財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは
では、早速、中身に移ってまいりましょう。ここでは本分科会で示された資料を紹介する形で進めてまいります。先ずは、「制度創設時からの介護保険費用等の推移」という資料についてです。
「介護費用は制度創設時に予測した水準に比べて増加しており、保険料についても当初見込みを上回るペースで上昇している一方、(財源別国民医療費における保険料の減少効果が芳しくないこと等)制度設計時に想定していた費用対効果には程遠い状況である」、即ち、「財政面においては、もっとシビアに見ていく必要があるのでは?」というメッセージ(先制パンチ?)かと思われます。
続いて2番目の資料を確認してまいりましょう。上記文脈からの、「利用者負担の見直し」というタイトルの資料についてです。
「介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることや利用者負担2割に向けてその対象範囲の拡大を図ることを検討していく必要」というメッセージは、次期改定にどのような影響を及ぼすのか、注目すべきポイントの一つだと思われます。
続いて3番目の資料を確認してまいりましょう。「介護人材確保の取組とICT化等による生産性向上」というタイトルの資料についてです。
「令和4年6月までに施行される社会福祉連携推進法人制度の積極的な活用を促す」・・・・とても印象に残る言葉だな、と感じた次第です。続いて4番目の資料を確認してまいりましょう。「ケアマネジメントのあり方の見直し」というタイトルの資料についてです。
あらゆる観点から、「ケアマネジメントにも利用者負担を導入すべき」というメッセージを伝えたい財務省の意図が明快に反映された資料だと感じる次第です。
最後に、5番目の資料を確認してまいりましょう。「区分支給限度額のあり方の見直し」というタイトルの資料についてです。
「区分支給限度額の対象外となっている加算がもし限度内に収められたら、自社の売上はどうなるだろうか・・・・」現実的かどうかは別にして一度計算をしてみると、財務省のメッセージが今の介護事業者にとって如何にシビアなものかが分かると思われます。
国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を
以上、財政制度分科会内の資料「社会保障」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら↓
共有が遅れましたが、第9弾のQ&Aが発出されした。
ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)及びLIFEに関する内容です。
未だご覧になられていない皆様は、下記をご確認下さいませ。
↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000775913.pdf
【介護・保育】人財定着ブログⅣ4月号~ 「福祉事業所のキャリアパスとは㉒ 」
の続きです
今回は、評価を行った後にその結果を伝えるフィードバック面談を中心についてお伝えしたいと思います。すでにお伝えしていますが、人事評価の目的を「人材の育成」とするならば、面談というコミュニケーションの場を通じて、頑張った点を「認め」また、課題とすべき点に関して指導・アドバイスをしていくことは評価者の役割として非常に大切です。
1.人事評価のフィードバック面談
評価後の面談を、単に結果のフィードバックを行う場とするのではなく、部下のモチベーションアップのために、是非有効に活用してほしいと思います。具体的には、下記の点に留意をしながら面談を行うことで、部下が出来るだけ話しやすい環境を作ることはとても重要です。
(1) 面談時の環境のポイント
①面談場所の確保
面談の様子が他人から見えないように部屋を確保します。もし用意できない場合でもパーテーションなどで区切った環境を用意します。(特にマイナスの内容があった場合、聴いている姿は誰にも見られたくないし、その内容は聴かれたくないものです。)
②面談場所の広さ
理想的な面談場所は、適度な広さで清潔に整理整頓されている環境です。窓や植物があれば気持ちも和み、なお良い環境となります。
特に、狭過ぎるのは要注意です。お互いの目と目の距離が近く、窮屈で気が抜けず、言いたいことが言えなくなるか、または、反対に、熱が入り過ぎて、険悪になる可能性もあります。
③面談時の距離
物理的な距離により上司と部下の心の距離も決まるといわれ、意外と重要です。部下に近づきすぎずかつ遠すぎず、また、面談資料が見えない距離(1.2m~1.5m)が理想的です。
④座る位置
机の角を使って相手と90度になるように座ると、相手の表情が視野に入り、かつ緊張感を与えずに話しやすいと言われています。
・向かい合って座る場合
正面から目線が合い、部下の緊張度が高まります。場合によっては、部下が緊張しすぎて話
しづらくなることがあります。
・隣に座る場合
部下との距離が大変近くなり、親近感は増します。しかし場合によっては、なれなれしい印象を与え、かえって話しづらくなることがあります。
(2) 面談の進め方
①面談は1対1で行う
面談は真剣な場であり短時間に深い意味合いを伝え理解し、納得してもらわなくてはなりません。複数の面談は他人の視線をストレスに感じてしまい、話を集中して聴くことができません。話すときには、部下の目をみて真剣に話すことが基本です。
②開始時の注意点 ~ 開始時はけじめをつけて、礼儀正しく
面談は忙しい時間の中で受けてもらうという姿勢で臨み、部屋で部下を待ち、上司から椅子を勧めます。温かい姿勢で丁寧に応対することで、謙虚な気持ちになり上司と同じ姿勢が保たれることになります。上司は部下を迎え入れる姿勢が大切です。
③面談の流れ
起承転結のように、面談にも流れがあります。フィードバック面談は下記の流れをイメージしてください。
ステップ1: 何気ない会話からスタートして、ねぎらいの言葉、目標の確認から始めます。
ステップ2: 自己評価した内容を説明し感想を述べてもらいます。そして、下記に留意して目標達成度について部下自身の評価の説明してもらいます。
・達成できた目標について …… 成功要因を明確にする
・達成できなかった目標について …… 問題点を確認・把握する
・上司評価とちがう場合 …… 自己評価の理由を詳しく聞く
ステップ3: 評価内容を伝える
上司の評価を話す。もちろん誉めることはモチベーションアップの最短距離につながる
■ポイント
・ステップ2とステップ3の順序を逆にしないこと。最初から上司評価を伝えるのは、絶対にNGです。部下は自分の意見や感想を言いづらくなる為です。
・部下個人をよく理解すること
・ピント外れではない、部下が納得する誉め方をすること
・具体的な誉め方をすること
・心から誉めること
ステップ4: 良い点と改善点の双方を伝える
成功要因と今後の問題点を明確にし,次回への課題とする
ステップ5: 日頃の思い等を聴く。雑談的な時間をもつことも大切です。話を聞くときには「受容」と「共感」を忘れずに、日ごろの思いもしっかりと聞くことが大切です。
ステップ6: お礼を言って終了する。最初と同様に礼儀正しく終了する
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『退職した職員からの未払い残業代請求』
Q:
先月退職した職員から内容証明の郵便が届きました。内容は、「在職時に受け取っていない残業代があるため、追加で支払って欲しい」というものでした。タイムカードで労働時間を管理し、その記録に従って残業代を支払っているため、未払い残業代はないと認識していますが、どのように対応すればよいのでしょうか?
A:
未払い残業代を主張する根拠を確認し、未払いのものがあれば、追加の支払いが必要になります。今後、同じことが起こらないように、実際の手順を確認し、問題があれば改善しましょう。
紹介解説:
1.残業代の請求根拠の確認
まずは退職者に、未払い残業代があると主張している根拠を示してもらいましょう。
例えばタイムカード以外で労働時間が記録されている資料があれば、その資料を送ってもらい、示された資料をもとに、その時間について労働をしていたかを精査します。精査に時間がかかるようであれば、時間の猶予をもらい、回答の日時を伝えます。
なお、未払い残業代の時効は、2020 年3 月31 日までに支払うべきものは2 年であり、2020 年4 月1 日以降に支払うものから3 年に延長されています。
2.問題が生じやすいケース
未払い残業代が請求される原因には、労働時間管理における説明不足や誤った運用があります。
例えば、始業前に職員が自主的に任意参加の勉強会を開催していたところ、時間の経過とともに強制参加のような勉強会になっており、参加しなければ業務に支障が出てくるようなケースです。勉強会や研修はその内容から、労働に該当するのかを事前に確認し、労働ではないとする場合には、誤解のないように説明することが求められます。
また、36 協定で1 ヶ月の上限時間を30 時間として締結し、この内容を遵守するために残業時間を30 時間までしか付けられないと管理者から言われ、タイムカードを打刻し再び業務を行っているということがあります。36 協定の内容を遵守することは重要ですが、仮に36 協定で締結した時間数を超える残業を行ったときであっても、超えた時間数の残業代の払いが必要です。
そもそもこのような運用が行われていないかを確認し、運用に問題があれば、適正に労働時間を申告するように職員と管理者に説明を行い、場合によっては36 協定で締結している時間数を変更する(長くする)などの対応が求められます。
退職者から未払い残業代の請求があった際、対応を放置しておくと、退職者との関係がこじれ、解決に時間を要することがあります。誠実に対応するとともに、請求に至った原因をみつけ、改善を進めましょう。
(次号に続く)