コラム
3 歳未満の子どもを養育するときの年金の特例と添付書類の省略
このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。
総務部長
先日、男性の従業員が、育児参加として、子育てに携わる時間を確保するため、仕事の時間を制限すると、収入面で心配になると言っていました。公的な支援として何かあるのでしょうか。
社労士 生産性を上げることにより、勤務時間が短くなっても給与の絶対額が下がらないようにするということが理想ですが、なかなか難しいですよね。公的な支援としては、出産手当金や育児休業給付金といった給付が中心になりますが、産前産後休業期間中や、育児休業期間中には社会保険料の免除、育児(養育)期間中の将来の年金額に関する特例が設けられています。
総務部長 将来の年金額の特例もあるのですね。
社労士 将来受給する厚生年金は、被保険者であったときの標準報酬月額を基にして受給額が決まります。そのため、一般的には給与額が下がると年金の受給額も下がります。養育期間(子どもが3 歳になるまでの期間)で標準報酬月額が下がったときであっても、将来の年金額の計算では下がらないようにするものが「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」です。様式の名称から「養育特例」と呼ばれています。
総務部長 どのような制度ですか。
社労士 厚生年金保険料は実際の給与額に基づく標準報酬月額から計算する一方で、将来の年金は養育前の標準報酬月額で計算するというものです。養育特例の申出には、養育する子どもが、従業員の3 歳未満の子どもであることの証明となる「戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書(以下、「戸籍謄本等」という)」と、養育の前提である同居していることを確認する証明として「住民票の写し」の2 つの原本が必要になります。ただし、10 月から従業員の個人番号(マイナンバー)と子どものマイナンバーの両方を様式に記載することで、住民票の写しの原本は添付不要となりました。
総務部長 そうでしたか。でも、なぜ戸籍謄本等は添付を続ける必要があるのですか。
社労士 住民票の情報はマイナンバーに紐づけられていますが、戸籍の情報は今のところ紐づけられていないので、マイナンバーを記載しても確認できないということなのでしょう。今後、紐づけられる可能性もあるので、情報を確認していくことになりますね。
総務部長 ありがとうございます。従業員に周知するとともに、今後の情報をしっかり確認するようにします。
ONE POINT ① 3歳未満の子どもを養育する従業員は、申出をすることで養育期間前の標準報酬月額で計算した年金を受給できる特例が設けられている(養育特例)。
② 養育特例の申出に従業員とその子どものマイナンバーを記載することで、住民票の写しの原本の添付が不要となった。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
65 歳以上複数就業者の雇用保険マルチジョブホルダー制度
雇用保険では、主たる事業所で1 週間の所定労働時間が20 時間以上、かつ31日以上の雇用見込み等の適用要件を満たした場合に被保険者となります。兼業・副業が普及する中、複数の事業所で働く労働者が増加している状況に対応するため、2022 年1月から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設され、まずは65 歳以上の労働者に対し適用されることになりました。
1.マルチジョブホルダー制度
雇用保険マルチジョブホルダー制度は、1 つの事業所では雇用保険の適用要件は満たさないものの、2 つの事業所での勤務を合計して次の要件をすべて満たす場合に、特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度です。
■適用要件
• 複数の事業所に雇用される65 歳以上の労働者であること
• 2 つの事業所(1 つの事業所における1 週間の所定労働時間が5 時間以上20 時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20 時間以上であること
• 2 つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
なお、申出の日に被保険者資格を取得し、要件を満たさなくなった日に資格を喪失します。さらに、いったん被保険者となった後は、任意脱退はできません。
2. 取得手続き等の流れ
通常の雇用保険資格の取得・喪失手続きは、事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度は、マルチ高年齢被保険者としての適用を希望する労働者本人が手続きを行います。
事業主は、労働者本人から手続きに必要な雇用の事実や所定労働時間等の証明を求められたときに、その証明を行います。この証明に基づき、労働者本人が適用を受ける2 つの事業所の必要書類を揃えてハローワークに申し出ます。
ハローワークでは申出の内容を確認し、取得手続きを行ったうえで、労働者本人および適用となった2 つ事業所に通知します。事業主はこの通知に基づき、給与から雇用保険料の控除をし、年度更新において雇用保険料を納付します。
ちなみに、マルチ高年齢被保険者が失業した場合で一定の要件を満たしたときは、被保険者であった期間に応じ、基本手当日額の30 日分または50 日分の一時金として高年齢求職者給付金を受給することができます。
マルチ高年齢被保険者は労働者の希望に基づき適用するためのものであり、また、現状では65 歳以上の労働者に限られているため、被保険者となる対象者は限定的であると思われます。
しかし、適用要件を満たした従業員が手続きを行うことで、ハローワークから会社に対して資格取得の通知が来るため、制度の概要は押さえておきましょう。
2022 年4 月より中小企業で義務化となるパワハラ防止措置
職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)の防止措置が2022 年4 月より、中小企業についても義務化されます。そこで、厚生労働省が職場におけるパワハラの実態を調査した結果と、実施すべき防止措置の内容をとり上げます。
1. パワハラの実態調査の内容
2020 年10 月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31. 4%でした。また、受けたパワハラの内容としては、以下のとおりです。
• 精神的な攻撃 49.4%
• 過大な要求 33.3%
• 個の侵害 24.0%
• 過小な要求 21.2%
• 人間関係からの切り離し 20.5%
• 身体的な攻撃 5.8%
• その他 3.9%
男女別でみてみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。
2. 実施が義務付けられる 防止措置
今回の法改正により、企業がパワハラを防止するために講ずべき措置として次の4 つが義務付けられています。
① 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。
② 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
③ パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行う。また、再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置
プライバシーを保護し、不利益な取扱いがされないこと等を定め、従業員に周知する。
これらの防止措置は中小企業でもすでに努力義務になっていますが、2022 年4 月からは措置義務となります。措置を講じていないものがあれば早めに準備を進めましょう。
今回の法改正で、従業員の責務として、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の従業員( 取引先等の他社の従業員や、求職者も含む) に対する言動に注意を払うことや、会社が講じる雇用管理上の措置に協力することが法律上明確化されました。今後、パワハラ防止研修を行うこと等により、パワハラの予防に向けた取組みが求められます。
2022 年4 月より中小企業で義務化となるパワハラ防止措置
職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)の防止措置が2022 年4 月より、中小企業についても義務化されます。そこで、厚生労働省が職場におけるパワハラの実態を調査した結果と、実施すべき防止措置の内容をとり上げます。
1. パワハラの実態調査の内容
2020 年10 月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31. 4%でした。また、受けたパワハラの内容としては、以下のとおりです。
• 精神的な攻撃 49.4%
• 過大な要求 33.3%
• 個の侵害 24.0%
• 過小な要求 21.2%
• 人間関係からの切り離し 20.5%
• 身体的な攻撃 5.8%
• その他 3.9%
男女別でみてみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。
2. 実施が義務付けられる 防止措置
今回の法改正により、企業がパワハラを防止するために講ずべき措置として次の4 つが義務付けられています。
① 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。
② 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
③ パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行う。また、再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置
プライバシーを保護し、不利益な取扱いがされないこと等を定め、従業員に周知する。
これらの防止措置は中小企業でもすでに努力義務になっていますが、2022 年4 月からは措置義務となります。措置を講じていないものがあれば早めに準備を進めましょう。
今回の法改正で、従業員の責務として、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の従業員( 取引先等の他社の従業員や、求職者も含む) に対する言動に注意を払うことや、会社が講じる雇用管理上の措置に協力することが法律上明確化されました。今後、パワハラ防止研修を行うこと等により、パワハラの予防に向けた取組みが求められます。
2022 年4 月より中小企業で義務化となるパワハラ防止措置
職場におけるパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)の防止措置が2022 年4 月より、中小企業についても義務化されます。そこで、厚生労働省が職場におけるパワハラの実態を調査した結果と、実施すべき防止措置の内容をとり上げます。
1. パワハラの実態調査の内容
2020 年10 月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した労働者は31. 4%でした。また、受けたパワハラの内容としては、以下のとおりです。
• 精神的な攻撃 49.4%
• 過大な要求 33.3%
• 個の侵害 24.0%
• 過小な要求 21.2%
• 人間関係からの切り離し 20.5%
• 身体的な攻撃 5.8%
• その他 3.9%
男女別でみてみると、「過大な要求」の割合は男性の方が女性より高く、「人間関係からの切り離し」や「個の侵害」の割合は女性の方が男性より高くなっています。
2. 実施が義務付けられる 防止措置
今回の法改正により、企業がパワハラを防止するために講ずべき措置として次の4 つが義務付けられています。
① 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。
② 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
③ パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に把握するとともに、事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置および行為者に対する措置を適正に行う。また、再発防止に向けた措置を講ずる。
④ 併せて講ずべき措置
プライバシーを保護し、不利益な取扱いがされないこと等を定め、従業員に周知する。
これらの防止措置は中小企業でもすでに努力義務になっていますが、2022 年4 月からは措置義務となります。措置を講じていないものがあれば早めに準備を進めましょう。
今回の法改正で、従業員の責務として、ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の従業員( 取引先等の他社の従業員や、求職者も含む) に対する言動に注意を払うことや、会社が講じる雇用管理上の措置に協力することが法律上明確化されました。今後、パワハラ防止研修を行うこと等により、パワハラの予防に向けた取組みが求められます。
《 岸田文雄首相(2021年10月撮影)》
政府は26日の臨時閣議で今年度の補正予算案を決定した。歳出の総額は35兆9895億円で、介護職の給与を来年2月から月額3%程度(9000円)引き上げる財源も盛り込んでいる。
介護分野の賃上げの原資は1000億円。これは全国138万人の介護職員の給与を月額3%程度引き上げる額として計上された。
政府はこれまで、介護職員以外の多職種にも配分する柔軟な運用を認めるとアナウンスしてきたが、メインターゲットはあくまで介護職員とする方針。そもそも介護職員がいない事業所、例えば居宅介護支援や福祉用具貸与などは現時点では対象外とする考えだ。施設などでは多職種にも配れる形を想定。介護報酬の「特定処遇改善加算」に似た対象範囲とする方向で調整を進める。
詳細な配分ルールについては固めておらず、今後も検討を深めていく。居宅のケアマネジャーらが除外されることも含め、補正予算案を審議する臨時国会でも論点の1つとなる見通しだ。
政府は来年2月からの賃上げを全額国費の交付金によって具体化する計画。今回の1000億円は9月までの財源で、10月以降は来年度の当初予算で工面する。交付金から介護報酬の加算などに切り替える案が出ており、10月以降の具体的な対応策も今後の重要な焦点となる。(出典 介護ニュース)
政府は25日に経済財政諮問会議を開き、当面の社会保障制度の改革を俎上に載せた。
新たなテクノロジーの導入を適切に進め、現役世代の急減と高齢者の急増の同時進行という難題に向き合っていく − 。介護分野については、こうした既定路線を踏襲していく現政権の姿勢が改めて明確になった。
岸田文雄首相は席上、「ロボットや見守りセンサーを始め、デジタル技術を積極的に活用することで、人手不足の解消と供給力の向上を同時に実現していく」と表明。「そうすれば働く方々の収入も上がり、需要と供給が共に増加する成長産業にもなっていく」との認識を示した。
政府は来年2月から、新たな交付金によって介護職らの収入を月額3%程度(9000円)引き上げる方針。来年度以降は介護報酬改定などにより、賃上げ効果の維持・拡充を図っていく計画だ。こうした議論の過程では、介護現場の生産性向上も引き続き重要な要素の1つになるとみられる。
この日の諮問会議では、民間議員が「介護の効果を高めるため、状態の改善度合いに応じた報酬体系への更なる見直しを進めるべき」と注文。保険料などの増大によって現役世代の可処分所得が減ることの無いよう、給付費の抑制にも努めるべきと釘を刺した。(出典 介護ニュース)
※ 画像はイメージ
介護施設などの利用者と親族らの面会について、厚生労働省は24日に留意点をまとめた通知を新たに発出した。目下の新型コロナウイルスの感染動向、対策の進捗状況などを勘案して中身をアップデートしている。
利用者と面会者がワクチンを接種済みの場合、または検査での陰性が確認できる場合は、対面による面会の受け入れを検討するよう要請。直近の感染動向も踏まえつつ、相互のつながりや交流が利用者、親族らのQOLを高めるという視点を十分に考慮し、管理者が実施方法を適切に判断するよう求めている。
あわせて、感染経路を遮断するための基本的な対策の継続を指示。ワクチンを接種していない人が不当に扱われることの無いように、とも釘を刺した。
社会福祉施設等における面会等の実施にあたっての留意点について
一時は原則として中止すべきとされていた介護施設などの面会。今年に入ってからは一律の制限が無くなり、個々の実情に応じて現場がそれぞれ受け入れの可否を判断してきた。その対応方針はまちまちで、面会者の来訪をかなり厳しく制限しているところも一部にある。
厚労省は今回の通知で、ワクチン接種などを条件として対面での実施を促した。あわせて、引き続き徹底すべき基本的な対策も改めて整理している。ポイントは以下の通りだ。
【概要】面会を実施する場合の感染防止対策
○ 面会者は原則として以下の条件を満たす人であること。
・濃厚接触者でない
・同居家族や身近な人に、発熱など感染症が疑われる症状がない
・過去2週間以内に感染者、感染の疑いがある人との接触がない
・過去2週間以内に発熱など感染症が疑われる症状がない
・過去2週間以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国や地域への渡航歴がない
○ 面会者に体温を測ってもらい、発熱が認められる場合は面会を断ること。
○ 面会者の氏名、来訪日時、連絡先について、積極的疫学調査への協力が可能となるよう記録しておくこと。
○ 面会者が面会後一定期間(少なくとも2日)以内に、発症、感染していたことが明らかになった場合には、施設にも連絡するよう面会者に依頼すること。
○ 人数を必要最小限とすること。
○ 面会者には、面会時間を通じてマスク着用、面会前後の手指消毒を求めること。
○ 一定の距離を確保するなど、面会者の手指や飛沫などが入所者の目、鼻、口に触れないように配慮すること。
○ 換気を十分に行うこと。
○ 面会場所での飲食、大声での会話は可能な限り控えること。
○ 面会者は、施設内のトイレ使用を必要最小限とすること。
○ 面会後は、使用した机、椅子、ドアノブなどの清掃、消毒を行うこと。