コラム
福祉施設等における 2020 年の入・離職状況
コロナ禍が長期化し、福祉施設等の経営にもさまざまな影響が及んでいます。ここでは、8 月に発表された調査結果※から、2020 年の福祉施設等(以下、医療,福祉)の入・離職率の状況をみていきます。
全体の状況
上記調査結果によると、2020 年の医療,福祉全体の入職率は 14.7%(入職者数は約 112 万人)、離職率は 14.2%(離職者数は約 107 万人)となりました。入職超過率は 0.5 ポイントです。直近 10 年間の入・離職率の推移は下グラフのとおりです。
2011 年から 2019 年の入職率は 15~18%台で推移しており、2020 年の落ち込みが目立ちます。一方、離職率は 13~16%台で推移しており、2020 年はこの期間で 2 番目に低い割合となりました。
医療,福祉では、直近 10 年間は入職超過の状態が続いています。
就業形態別の状況
一般労働者とパートタイム労働者(以下、パート)の別に、2020 年の入・離職率をまとめると、下表のとおりです。
一般労働者の入職率は男女とも 14%台、離職率は 12~13%程度となり、どちらも入職超過となりました。パートの入職率は男性が 20.4%、女性が 15.1%、離職率は男性が 19.9%、女性が17.0%で男性は入職超過、女性は離職超過となっています。
一般労働者に比べてパートの方が入・離職率ともに高くなっていますが、これは医療,福祉に限ったことではなく、他の産業においても同様の傾向がみられます。
医療,福祉全体では、2020 年は離職率が低かったものの、入職率が直近 10 年で最も低くなりました。人材採用がうまくいかず、人手不足を解消できなかった福祉施設等があるのではないかと思われる結果になりました。貴施設の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「令和 2 年雇用動向調査結果の概要」
5 人以上の常用労働者を雇用する事業所から、産業、事業所規模別に層化して無作為に抽出した約 15,000 事業所を対象にした調査です。常用労働者は期間を定めずに雇われている者または 1 ヶ月以上の期間を定めて雇われている者をいいます。入(離)職率は、年初の常用労働者数に対する入(離)職者数の割合をいい、入職超過率は入職率から離職率を引いたもので、プラスであれば入職超過、マイナスであれば離職超過となります。詳細は次の URL のページから確認いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/index.html
職員の自己啓発への取組状況
自己啓発を行う医療機関等の職員はどのくらいの割合か、ご存じですか。ここでは、今年 6 月に発表された調査結果※から、医療機関等(以下、医療,福祉)の職員の自己啓発への取組状況をみていきます。
自己啓発の実施割合は 3 割程度
上記調査結果によると 2019 年度に自己啓発を行った人の割合は、全体では 32.2%です。医療,福祉は 32.6%で、全体より 0.4 ポイント高くなりました。なお正社員と正社員以外の別にみると、医療,福祉の正社員は 38.8%、正社員以外が 26.4%で、正社員の方が自己啓発を行った人の割合が高い状況です。
自主的な勉強会への参加が 5 割弱
上記調査結果から自己啓発の実施方法をまとめると、表 1 のとおりです。
医療,福祉では社内の自主的な勉強会、研究会への参加が最も高く 48.3%です。全体ではe ラーニング(インターネット)による学習が37.0%で最も高くなっていますが、医療,福祉では 18.4%に留まっています。
自己啓発を行った理由
自己啓発を行った理由をまとめると、表2のとおりです。
医療,福祉では、現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるためが 83.4%と最も高くなりました。その他、将来の仕事やキャリアアップに備えて、資格取得のためも高くなりました。全体と比べても同様な状況といえます。
能力向上を進めるなら OFF-JT 等も
なお、自己啓発の年間延べ受講時間をみると、医療,福祉は 34.3 時間で、全体に比べて6 時間ほど少ない状況です。自己啓発は職員が自主的に行うものであり、時間や費用の問題などによって、継続的に行うことが難しい場合もあります。医療機関として職員の能力向上を目指すのであれば、OJT はもちろん、OFF-JT などの教育訓練等を多く実施することも重要でしょう。
※厚生労働省「令和 2 年度能力開発基本調査」
常用労働者 30 人以上の民営事業所約 7,100 事業所とその事業所に属する常用労働者約 3 万人などを対象に、2020 年 12 月 1 日時点もしくは2019 年度の状況について行われた調査です。詳細は次の URL のページから確認いただけます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450451&tstat=000001031190
平時から備える「感染症流行対策」
新型コロナウイルス感染症に加え、インフルエンザにも気を配る季節を迎えます。たとえ感染者が出たとしても、高齢者施設は簡単にサービスを止めることができません。感染予防だけでなく、感染後を想定した備えも不可欠です。
実例から学ぶ対応策
施設内で感染者が出た場合にどう行動すればよいのか、心の準備はできていますか?
厚生労働省の事例集※に掲載された職員感染の実例から、事前策を考えてみましょう。
① A 施設で職員が感染!!
濃厚接触者となった職員数名も自宅待機に…
② 残った職員でシフトを組んでギリギリの対応
一人一人の負担が増え、疲れの色が…
対応策(例):
シフト変更後でも必要な休養が取れるよう、普段からこの状況を想定した体制構築と管理者の配慮が求められます。
③ 苛酷な状況に「辞めたい」と言い出す人が…
風評被害を恐れた職員からは「しばらく休みたい」と申し出もあり…
対応策(例):
人員不足に追い打ちをかける離職や出社拒否は、避けたい展開の一つ。職員が気軽に不満や悩みを打ち明けられる相談体制を、日頃から構築しておくことが重要です。
④ B 施設に対し、応援職員の派遣を要請
⑤ 何を依頼したらよいのか分からず、応援職員への引継ぎが混乱…
A 施設職員の負担がますます増える結果に…
対応策(例):
事前のシミュレーションによる備えが必要な場面です。応援体制について、自治体の情報や手順を確認し、応援職員に「誰が」「何を」「どのように」伝えるのか等をまとめた「受援計画」を、前もって用意しておくと安心です。
他にもこの事例集には、日頃の体調確認や面会等の注意点、陽性者発生時の初動対応、クラスター対応等についてまとめられています。体制の点検にもお役立てください。
※厚生労働省「高齢者施設等における新型コロナウイルス感染症に関する事例集」(令和 3 年 3 月 9 日版)
https://www.mhlw.go.jp/content/000750414.pdf
専門性資格、正しく表記していますか?
「〇〇学会会員」「厚生労働省認定〇〇専門医」等の文言を医療機関のサイトでよく見かけますが、実はこの表記方法は医療広告規制で禁止されています。
貴院のサイトは大丈夫ですか? 専門性資格の正しい表記方法を確認します。
広告可能と認められた資格か、まず確認
厚生労働大臣に届出し受理された団体の資格※については、広告が可能です。
このとき、「医師○○○○(××学会認定××専門医)」のように、認定団体の名称を資格名とともに示す必要があります。
良い例 認定団体名+資格名
〇日本内科学会認定 総合内科専門医
〇日本歯周病学会認定 歯周病専門医
誤った例① 資格名の記載がない
×日本内科学会認定専門医
×日本歯周病学会認定専門医
誤った例② 認定団体名の記載がない
×総合内科専門医
×歯周病専門医
誤った例②のように「〇〇専門医」だけを表示するケースは、誤認を与えるものとして「誇大広告」に該当します。
※「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」に記載された資格( 2021 年 8 月時 点 )
https://www.mhlw.go.jp/content/000554375.pdf
その他の資格等なら、問合せ先を明記
これ以外の資格や認定医、指導医、産業医等については原則広告できません。しかし、次の要件を満たし、かつ禁止される広告に該当しない場合は、広告が可能になります。
1. 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
2. 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載すること
その他の方法により明示すること
医療の広告規制違反は罰則等の対象で、その取締りも年々強化されています。薬機法の改正により、8 月より虚偽・誇大広告に対し、新たに課徴金制度も設定されました。
この夏、厚生労働省より事例解説書が提示されました。見落としやすい点が分かりやすく図示されています。貴院のサイトの再点検に、ぜひご活用ください。
厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000808457.pdf
《 特養ホームの居室の様子 》
全国老人福祉施設協議会が新たに公表した「加算算定状況調査」− 。LIFE活用のインセンティブとして今年度から導入された「科学的介護推進体制加算」について、サービスごとの取得率に差があると報告されている。
取得率は特別養護老人ホームが49.5%、通所介護が41.1%、地域密着型通所介護が32.3%。小規模な事業所で取り組みがやや遅れている現状が窺える。LIFEへの登録は、特養が81.2%、通所介護が68.8%、地密通所が59.9%となっている。
この調査は今年8月に行われ、7月サービス提供分の実績を把握したもの。全国老施協の会員が対象で、特養2252施設、通所介護1564事業所、地密通所334事業所から回答を得ている。
自由記述の欄では現場から、「データ入力をはじめ関連業務の負担が大きい」「フィードバックの活用が不明確」「LIFE対応ソフトの環境整備が困難で、対応人材の確保も難しい」などの指摘がなされていた。地密通所の事業者からは、「体制を整えるのに時間がかかっている」「取得予定だが準備中」などの声も寄せられている。
《 厚労省 》
コロナ禍に伴う介護事業所の"かかり増し経費"を補填する新たな補助金のスキームが決定した。先週、厚生労働省が全国の自治体へ通知を出して伝えた。
今月から12月までの3ヵ月間にかかった衛生用品、感染防止対策に要する備品などの購入費が対象。補助金のサービスごとの上限額は既報の通りだ。以下のリンクから確認できる。
特養や老健、特定施設、通所介護、訪問介護などは、その規模に応じて上限額が異なる。施設系や通所系の規模は申請時点で、訪問介護の訪問回数は10月分の合計で判断する決まりとされた。
この新たな補助金は、今年9月まで実施されていた介護報酬の特例(0.1%増)の代替措置として支給されるもの。特例を受けていた全ての事業所が対象だ。厚労省は介護報酬の臨時の上乗せをやめ、10月から補助金による実費の補填に切り替えた経緯がある。(介護ニュースより)
《 岸田文雄首相(2021年10月撮影)》
衆院選に勝利した岸田文雄首相が1日に会見した。重要施策の1つに位置付けている看護職、介護職などの賃上げについて、具体策をめぐる議論を来週にも始めると明らかにした。
岸田首相は会見で、「看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくため、来週にも『公的価格評価検討委員会』を設置し、公的価格のあり方を抜本的に見直していく」と表明。「選挙戦という戦いが終わり、これから政権を待ち受けているのは政策実現の戦いだ。成長のための改革に大胆に取り組むとともに、分配のための新たな仕組みを作り動かしていく」と重ねて意欲をみせた。
十分な分配政策を展開するための財源をめぐっては、「財源の裏付けは重要だが順番を間違えてはいけない。まずは経済再生に取り組んでいき、その先にしっかりとした財政の道筋を示していく。この順番に従って財政、財源について考えていくべきだ」と語った。
介護職らの賃上げのために介護報酬を引き上げれば、その分だけ40歳以上の保険料や利用者の自己負担もアップする。こうした"副反応"が強く出ることになれば、重い負担増を強いられる企業(保険料を労使折半で負担)や高齢者などの反発を招くのは必至だ。今後の議論のプロセスでは、こうした利害をどう調整するかも大きな焦点になる見通し。
岸田首相はこのほか、コロナ禍からの再生に向けた追加の経済対策を「11月中旬に策定する」と明言。「年内のできるだけ早期に補正予算を成立させ、一刻も早く国民に届ける」との意向を示した。(介護ニュースより)
充実するインターネットを通じたハローワークの求人サービス
ハローワークでは求人情報を無料で登録することができ、基本手当を受給するときに求職の登録を行った人等を中心に、全国の求職者に求人情報が提供されます。この求人情報は、求人者が希望することにより「ハローワークインターネットサービス」上でも公開されます。今回、このハローワークインターネットサービスの機能が強化されました。強化された内容を確認しましょう。
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