コラム

医療事業所様向け情報(経営)12月号②

医療機関の年末賞与1 人平均支給額の推移

コロナ禍で年末賞与の支給時期を迎えます。ここでは年末賞与支給の参考資料として、厚生労働省の調査結果※から病院と一般診療所における、直近5 年間(2015~2019 年)の年末賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などを、事業所規模別にご紹介します。

病院の支給労働者数割合は100%に

上記調査結果から、病院と一般診療所の別に1 人平均支給額の推移をまとめると、下表のとおりです。

病院の2019 年の結果をみると、1 人平均支給額は5~29 人が約13 万円で、2017 年に比べて減少しています。30~99 人は約36 万円で直近5 年間では最も高くなりました。きまって支給する給与に対する支給割合は、30~99 人は1.14 ヶ月と2 年連続で1 ヶ月分を超えました。支給労働者数割合と支給事業所数割合は両規模とも100%です。

一般診療所は20 万円台を維持

一般診療所の2019 年の結果をみると、1 人平均支給額は5~29 人が前年より減少したものの、20 万円台が続いています。30~99 人は約24 万円で2 年連続の増加です。きまって支給する給与に対する支給割合は、30~99 人が1 ヶ月分に満たない状況が続いています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、30~99人は90%台になりました。

新型コロナウイルスの影響で経営が悪化している医療機関もあることでしょう。今年の年末賞与はどのようになるでしょうか。

※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する事業所で常用労働者を雇用するもののうち、常時5 人以上を雇用する事業所を対象にした調査です。きまって支給する給与に対する支給割合とは、賞与を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページから確認いただけます。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&bunya_l=03&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015912

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(経営)12月号①

令和3 年度予算の概算要求 福祉編

今回は、厚生労働省による来年度予算の概算要求から、福祉に関する内容に注目します。基本的な枠組みは前年度と同額で、別枠にて新型コロナウイルス感染症対応の緊要経費を要望しているところに、今回の特徴があります。

テーマは「ウィズコロナ時代への対応」

2 度にわたる令和2 年度の補正予算では、「まずは国民のいのちや生活を守ることが先決」として、介護分野ではマスクや消毒用エタノール等の物資の確保や緊急包括支援交付金による支援等に重点が置かれてきました。令和3 年度はこれらに加え、緊急時やパンデミック発生時でも福祉サービスの提供が安定的に維持できるよう、施設・設備の整備等にも力点が置かれます。緊要経費として要望された福祉項目は、次のとおりです。

介護・福祉サービス提供体制の継続支援

感染者が発生した事業所等に対し、職員確保や消毒等のかかり増し経費や衛生用品の備蓄、緊急時の応援派遣体制の構築を支援。

マスク等衛生用品の確保

感染等発生時の事業所等の消毒・洗浄に必要な費用を補助。感染が発生した事業所等に対する個人防護具等の円滑供給の確保。

個室化等の環境整備

簡易陰圧装置・換気設備の設置や多床室の個室化等に必要な費用を補助。

研修や業務継続計画(BCP)の策定

職員のための感染症対策相談窓口の設置、感染対策マニュアルの作成、専門家による実地研修やセミナー、業務継続計画(BCP)の作成支援、職員のメンタルヘルス支援等。

ICT・ロボット等の導入

感染拡大防止・生産性向上・介護等業務の負担軽減と、安全・安心なサービス提供のため、ICT・ロボット等の導入を支援。

高齢者等に対する PCR・抗原検査支援

一定の高齢者や基礎疾患を有する者が希望により検査が行えるよう、市区町村を支援。

なお、概算要求策定の段階でこの冬以降の感染状況を予測することは難しく、今回の概算要求では、具体的な金額や施策の詳細には触れられていません。今後、予算編成作業が行われる中で、その時々の最新情報から追加・調整が行われていくため、大幅に変更されることも予想されます。引き続きご注目ください。

参考:厚生労働省「令和3 年度厚生労働省所管予算概算要求関係」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/21syokan/

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)12月号①

令和 3 年度予算の概算要求 医療編

今回は、厚生労働省が行った来年度予算の概算要求から、医療に関する内容に注目します。基本的な枠組みは前年度と同額で、別枠にて新型コロナウイルス感染症対応の緊要経費を要望しているところに、今回の特徴があります。

テーマは「ウィズコロナ時代への対応」

2 度にわたる令和2 年度の補正予算では、「まずは国民のいのちや生活を守ることが先決」として、検査体制・医療提供体制の整備や緊急包括支援交付金の支給等に重点が置かれてきました。令和3 年度はこれらに加え、緊急時やパンデミック発生時でも医療提供が安定的に維持できるよう、施設・設備の整備等にも力点が置かれます。「医療体制の確保」の側面では、次の項目が緊要経費として要望されています。

緊急包括支援交付金による体制整備推進

受入病床の確保、応援医師等の派遣、軽症者の療養体制の確保等の取組の包括的支援。

陰圧化等の施設整備

新型コロナウイルス感染症患者受入医療機関等における陰圧化や個室化等の施設整備。

G-MIS の機能拡充

緊急事態における必要物資の配布や病床の円滑確保のため、医療機関等の各種情報を効率的・横断的に把握する調査プラットフォームとして「医療機関等情報支援システム(G-MIS)を改修。

マスク等の医療用物資の備蓄・配布

サージカルマスク、ガウン、フェイスシールド等の医療用物資を感染症拡大局面でも円滑供給するための、国による継続した確保・備蓄の実施。

医薬品の安定確保のための支援

パンデミック発生時や国外製造、輸出停止等による支障が生ずることがないよう、海外依存度の高い必要不可欠な医薬品を国内で製造するための製造所の新設、設備更新や備蓄の積み増し等を支援。

なお、概算要求策定の段階でこの冬以降の感染状況を予測することは難しく、今回の概算要求では、具体的な金額や施策の詳細には触れられていません。今後、予算編成作業が行われる中で、その時々の最新情報から追加・調整が行われていくため、大幅に変更されることも予想されます。引き続きご注目ください。

厚生労働省「令和3 年度厚生労働省所管予算概算要求関係」
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/21syokan/

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号④

新型コロナの影響に伴う休業による社会保険料の随時改定特例の対象期間延長

標準報酬月額は毎年1回定時決定で見直すほか、固定的賃金に変動があったとき等に、変動があった月から3ヶ月間に支払われた給与に基づき、4ヶ月目に見直します(随時改定)。この随時改定について、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に係る特例が設けられ、その対象となる期間が延長されました。

1. 4月から7月の特例改定

新型コロナの影響で発生した2020年4月から7月の休業により給与額が大幅に下がったときは、下がった月の1ヶ月分の給与により、翌月からの標準報酬月額を見直すことができる特例が設けられています。特例は、以下のすべてを満たす従業員について、会社が届け出たときに対象となります。

  1. 新型コロナの影響による2020年4月から7月の休業(時間単位の休業を含む)により給与が著しく低下した月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

2. 8月から12月の特例改定

1.の特例に加え、2020年8月から12月の休業により給与額が大幅に下がった場合についても特例が設けられました。この8月から12月の特例には2種類があります。

<急減月の翌月の改定>

  1. 新型コロナの影響による2020年8月から12月の休業により給与が著しく下がった月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

<定時決定に係る特例>

  1. 新型コロナの影響による休業により2020年4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に1.の特例を受けた
  2. 8月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

なお、8月から12月の特例改定は、2021年3月1日までに管轄の年金事務所へ届け出ることになっています。

1.および2.のいずれの特例も、休業が回復した月(※)に受けた給与の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合には、標準報酬月額を改定することになっています。1.と2.においてこの回復時の取扱いが異なりますので、詳細は日本年金機構のホームページをご覧いただくか、当事務所までお問合せください。
※休業状況に何らか改善が見られ、給与の支払いの基礎となった日が17日以上となった月

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)12月号④

新型コロナの影響に伴う休業による社会保険料の随時改定特例の対象期間延長

標準報酬月額は毎年1回定時決定で見直すほか、固定的賃金に変動があったとき等に、変動があった月から3ヶ月間に支払われた給与に基づき、4ヶ月目に見直します(随時改定)。この随時改定について、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に係る特例が設けられ、その対象となる期間が延長されました。

1. 4月から7月の特例改定

新型コロナの影響で発生した2020年4月から7月の休業により給与額が大幅に下がったときは、下がった月の1ヶ月分の給与により、翌月からの標準報酬月額を見直すことができる特例が設けられています。特例は、以下のすべてを満たす従業員について、会社が届け出たときに対象となります。

  1. 新型コロナの影響による2020年4月から7月の休業(時間単位の休業を含む)により給与が著しく低下した月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

2. 8月から12月の特例改定

1.の特例に加え、2020年8月から12月の休業により給与額が大幅に下がった場合についても特例が設けられました。この8月から12月の特例には2種類があります。

<急減月の翌月の改定>

  1. 新型コロナの影響による2020年8月から12月の休業により給与が著しく下がった月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

<定時決定に係る特例>

  1. 新型コロナの影響による休業により2020年4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に1.の特例を受けた
  2. 8月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

なお、8月から12月の特例改定は、2021年3月1日までに管轄の年金事務所へ届け出ることになっています。

1.および2.のいずれの特例も、休業が回復した月(※)に受けた給与の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合には、標準報酬月額を改定することになっています。1.と2.においてこの回復時の取扱いが異なりますので、詳細は日本年金機構のホームページをご覧いただくか、当事務所までお問合せください。
※休業状況に何らか改善が見られ、給与の支払いの基礎となった日が17日以上となった月

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(労務)12月号④

新型コロナの影響に伴う休業による社会保険料の随時改定特例の対象期間延長

標準報酬月額は毎年1回定時決定で見直すほか、固定的賃金に変動があったとき等に、変動があった月から3ヶ月間に支払われた給与に基づき、4ヶ月目に見直します(随時改定)。この随時改定について、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)に係る特例が設けられ、その対象となる期間が延長されました。

1. 4月から7月の特例改定

新型コロナの影響で発生した2020年4月から7月の休業により給与額が大幅に下がったときは、下がった月の1ヶ月分の給与により、翌月からの標準報酬月額を見直すことができる特例が設けられています。特例は、以下のすべてを満たす従業員について、会社が届け出たときに対象となります。

  1. 新型コロナの影響による2020年4月から7月の休業(時間単位の休業を含む)により給与が著しく低下した月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

2. 8月から12月の特例改定

1.の特例に加え、2020年8月から12月の休業により給与額が大幅に下がった場合についても特例が設けられました。この8月から12月の特例には2種類があります。

<急減月の翌月の改定>

  1. 新型コロナの影響による2020年8月から12月の休業により給与が著しく下がった月(急減月)が生じている
  2. 急減月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

<定時決定に係る特例>

  1. 新型コロナの影響による休業により2020年4月または5月に給与が著しく下がり、5月または6月に1.の特例を受けた
  2. 8月に支払われた給与の総額(1ヶ月分)が、9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がっている
  3. 特例改定について、従業員が書面により同意している

なお、8月から12月の特例改定は、2021年3月1日までに管轄の年金事務所へ届け出ることになっています。

1.および2.のいずれの特例も、休業が回復した月(※)に受けた給与の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合には、標準報酬月額を改定することになっています。1.と2.においてこの回復時の取扱いが異なりますので、詳細は日本年金機構のホームページをご覧いただくか、当事務所までお問合せください。
※休業状況に何らか改善が見られ、給与の支払いの基礎となった日が17日以上となった月

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(労務)12月号③

パートタイマーへの賞与支給~最高裁判決の考え方~

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長

少し前に、新聞やテレビで「契約社員やアルバイトには賞与や退職金を払わなくてよい」というような報道がされていました。当社では、同一労働同一賃金への対応としてパートさんにも賞与を支給する方向で検討していましたが、支給しなくてもよいのでしょうか?

社労士

2020年10月に言い渡された5つの最高裁判決の中で、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件についてご覧になったようですね。大阪医科薬科大学事件は主にアルバイトに対する賞与の支払いについて、メトロコマース事件は主に契約社員の退職金について争われた事件です。

総務部長

確か、それら以外にも郵便局に関する事件がありましたね。

社労士

はい、東京、大阪および佐賀の3つの日本郵便事件がありました。こちらは、正社員と契約社員の休暇や手当に関する訴訟でした。大阪医科薬科大学事件では、先ほどもお話したようにアルバイトの賞与が主な争点になり、原告であるアルバイトに賞与を支払わないことは「不合理と認められるものに当たらない」と判断されました。

総務部長

ポイントは、正社員とアルバイトの仕事が異なっていたことなのでしょうか。

社労士

おっしゃるとおり、判決文ではアルバイトの職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」と表現されており、正社員とは職務内容が異なっていました。ただ、それだけではなく、雇用期間に上限があり、実際に3年2ヶ月の雇用期間であったこと、その間に私傷病で1年強、休職していたことも影響しているかと思います。

総務部長

なるほど、単純に「アルバイトだから」と一括りにしてはいけないように感じますね。

社労士

そうですね。また、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、実際に登用制度により契約社員や正社員になった人も多数います。つまり、登用されることで賞与が支払われる契約社員や正社員になることができる機会もあったのです。

総務部長

雇用期間もそれほど長くない状況で、正社員とは異なる職務内容であった。さらには努力次第で非正規雇用から、最終的に正規雇用にも移ることができるような職場環境であったということですね。

社労士

まさにそのとおりです。当然、最高裁判決ですので人事労務管理の実務に大きく影響しますが、判決の詳細の内容を確認せずに、結果だけで「アルバイト=賞与の支給不要」と考えてしまうと、拙速な判断となりかねないのでご注意ください。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  同一労働同一賃金に関する5つの最高裁判決が言い渡された。
  2.  最高裁判決は人事労務管理に影響を及ぼすが、結果のみでなく個別事案として背景や経緯も見て参考とする必要がある

(次号へ続く)

保育事業所様向け情報(労務)12月号③

パートタイマーへの賞与支給~最高裁判決の考え方~

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長

少し前に、新聞やテレビで「契約社員やアルバイトには賞与や退職金を払わなくてよい」というような報道がされていました。当社では、同一労働同一賃金への対応としてパートさんにも賞与を支給する方向で検討していましたが、支給しなくてもよいのでしょうか?

社労士

2020年10月に言い渡された5つの最高裁判決の中で、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件についてご覧になったようですね。大阪医科薬科大学事件は主にアルバイトに対する賞与の支払いについて、メトロコマース事件は主に契約社員の退職金について争われた事件です。

総務部長

確か、それら以外にも郵便局に関する事件がありましたね。

社労士

はい、東京、大阪および佐賀の3つの日本郵便事件がありました。こちらは、正社員と契約社員の休暇や手当に関する訴訟でした。大阪医科薬科大学事件では、先ほどもお話したようにアルバイトの賞与が主な争点になり、原告であるアルバイトに賞与を支払わないことは「不合理と認められるものに当たらない」と判断されました。

総務部長

ポイントは、正社員とアルバイトの仕事が異なっていたことなのでしょうか。

社労士

おっしゃるとおり、判決文ではアルバイトの職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」と表現されており、正社員とは職務内容が異なっていました。ただ、それだけではなく、雇用期間に上限があり、実際に3年2ヶ月の雇用期間であったこと、その間に私傷病で1年強、休職していたことも影響しているかと思います。

総務部長

なるほど、単純に「アルバイトだから」と一括りにしてはいけないように感じますね。

社労士

そうですね。また、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、実際に登用制度により契約社員や正社員になった人も多数います。つまり、登用されることで賞与が支払われる契約社員や正社員になることができる機会もあったのです。

総務部長

雇用期間もそれほど長くない状況で、正社員とは異なる職務内容であった。さらには努力次第で非正規雇用から、最終的に正規雇用にも移ることができるような職場環境であったということですね。

社労士

まさにそのとおりです。当然、最高裁判決ですので人事労務管理の実務に大きく影響しますが、判決の詳細の内容を確認せずに、結果だけで「アルバイト=賞与の支給不要」と考えてしまうと、拙速な判断となりかねないのでご注意ください。

【ワンポイントアドバイス】

  1.  同一労働同一賃金に関する5つの最高裁判決が言い渡された。
  2.  最高裁判決は人事労務管理に影響を及ぼすが、結果のみでなく個別事案として背景や経緯も見て参考とする必要がある

(次号へ続く)

介護事業所様向け情報(労務)12月号③

パートタイマーへの賞与支給~最高裁判決の考え方~

このコーナーでは、人事労務管理で問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で分かりやすくお伝えします。

総務部長

少し前に、新聞やテレビで「契約社員やアルバイトには賞与や退職金を払わなくてよい」というような報道がされていました。当社では、同一労働同一賃金への対応としてパートさんにも賞与を支給する方向で検討していましたが、支給しなくてもよいのでしょうか?

社労士

2020年10月に言い渡された5つの最高裁判決の中で、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件についてご覧になったようですね。大阪医科薬科大学事件は主にアルバイトに対する賞与の支払いについて、メトロコマース事件は主に契約社員の退職金について争われた事件です。

総務部長

確か、それら以外にも郵便局に関する事件がありましたね。

社労士

はい、東京、大阪および佐賀の3つの日本郵便事件がありました。こちらは、正社員と契約社員の休暇や手当に関する訴訟でした。大阪医科薬科大学事件では、先ほどもお話したようにアルバイトの賞与が主な争点になり、原告であるアルバイトに賞与を支払わないことは「不合理と認められるものに当たらない」と判断されました。

総務部長

ポイントは、正社員とアルバイトの仕事が異なっていたことなのでしょうか。

社労士

おっしゃるとおり、判決文ではアルバイトの職務内容が「相当に軽易であることがうかがわれる」と表現されており、正社員とは職務内容が異なっていました。ただ、それだけではなく、雇用期間に上限があり、実際に3年2ヶ月の雇用期間であったこと、その間に私傷病で1年強、休職していたことも影響しているかと思います。

総務部長

なるほど、単純に「アルバイトだから」と一括りにしてはいけないように感じますね。

社労士

そうですね。また、アルバイトから契約社員、契約社員から正社員への登用制度が設けられており、実際に登用制度により契約社員や正社員になった人も多数います。つまり、登用されることで賞与が支払われる契約社員や正社員になることができる機会もあったのです。

総務部長

雇用期間もそれほど長くない状況で、正社員とは異なる職務内容であった。さらには努力次第で非正規雇用から、最終的に正規雇用にも移ることができるような職場環境であったということですね。

社労士

まさにそのとおりです。当然、最高裁判決ですので人事労務管理の実務に大きく影響しますが、判決の詳細の内容を確認せずに、結果だけで「アルバイト=賞与の支給不要」と考えてしまうと、拙速な判断となりかねないのでご注意ください。

 

【ワンポイントアドバイス】

  1.  同一労働同一賃金に関する5つの最高裁判決が言い渡された。
  2.  最高裁判決は人事労務管理に影響を及ぼすが、結果のみでなく個別事案として背景や経緯も見て参考とする必要がある

(次号へ続く)

保育事業所様向け情報(労務)12月号②

2021年3月に引き上げられる障害者の法定雇用率と障害者雇用納付金制度

障害者の雇用は、一般労働者と同じ水準で常用労働者となり得る機会を設けるために、常用労働者の数に対する雇用割合(法定雇用率)が設定されています。そして国や地方公共団体、民間企業はこの法定雇用率に基づき、障害者の雇用義務が課せられます。今回は、2021年3月に引き上げられる法定雇用率と障害者雇用納付金制度の対象企業をとり上げます。

1. 2021年3月からの法定雇用率

法定雇用率は少なくとも5年ごとに見直すことになっており、直近では2018年4月に2.2%に引き上げられています。その際、2021年4月1日までには2.3%へ引き上げられることが決定しており、今回その引上げが2021年3月に行われることになりました。これに伴い、1人以上の障害者を雇用すべき企業の範囲が、労働者数43.5人以上に広がります。

2.障害者雇用納付金制度

障害者の雇用に伴う企業の経済的負担の調整を図り、障害者の雇用水準を引き上げるため、国が法定雇用率の未達成企業から納付金を徴収し、法定雇用率を達成した企業に対して調整金や報奨金を支給する障害者雇用納付金制度が設けられています。

この納付金の制度は、企業による自主申告・納付を基本としており、申告義務のある企業は、常用労働者数が100人超となる企業です。常用労働者としてカウントされるのは次の1.~3.いずれかに該当する労働者です。

  1. 雇用期間の定めがない労働者

  2. 雇用期間の定めがある労働者であって、その雇用が更新され雇入れから1年を超えて引続き雇用されることが見込まれる労働者

  3. 過去1年を超える期間について引続き雇用されている労働者

週の所定労働時間が30時間以上の場合は常用労働者1人としてカウントする一方で、①から③のいずれかに該当し、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合には、常用労働者数0.5人としてカウントします。

3. 申告対象の判断基準

労働者数は、原則として毎月1日、または毎月の賃金締切日において確認することになっています。労働者の入退社があるため、1年を通じると労働者数が月ごとに前後することがあり、労働者数100人前後の企業では納付金制度の申告が必要か迷いますが、労働者数が100人を超える月が一年度(4月から翌年3月)に5ヶ月以上あれば、申告の対象となります。

なお、年度途中の事業廃止等の場合には、5ヶ月以上でなくても申告が必要となることがあります。

障害者雇用が進まない企業に対しては、ハローワークにより雇用率達成指導が行われ、それでも雇用状況が改善されない場合には、最終的に厚生労働省のホームページにおいて企業名が公表されることになっています。障害者の雇用には時間を要するケースも多いため、早めに採用活動を行うといった対応が望まれます。

(次号に続く)

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