コラム
社会保険の適用拡大等が盛り込まれた年金制度の改正
社会保険の制度は定期的に見直しが行われています。6月に閉会した国会でも、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的とした「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度改
正法」という)が成立しました。改正内容は多岐にわたりますが、企業が押さえておきたい2点を解説します。
1.社会保険の適用拡大
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となる人は、適用事業所に勤務する正社員(常時使用される人)のほか、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイト等とされています(4分の3基準)。
これに加え、4分の3基準に該当しない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす人は、被保険者になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の適用事業所に勤めていること
年金制度改正法では、5.の要件について、2022年10月に101人以上の適用事業所に、2024年10月に51人以上の適用事業所に拡大することとしています。
また2.の要件が2022年10月に廃止され、正社員と同様に「雇用期間が2ヶ月超見込まれること」となります。
2.2ヶ月超の雇用見込者の早期加入
社会保険では「日雇いで働く人」や「4ヶ月以内の季節的業務に使用される人」等、一定の被保険者とならない人が定められています。そのひとつに、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される人」というものがありますが、2ヶ月以内の雇用見込みの人であっても所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となるとされています。
年金制度改正法では、雇用契約の期間が2ヶ月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断される場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被保険者になるとされました。
具体的には、以下のようなケースでは原則として当初から被保険者となります。
- 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
- 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
特に社会保険の適用拡大に関して、多くのパートタイマーやアルバイト等が新たに被保険者になる企業では、社会保険料の負担が相当大きなものになると予想されます。また、新たに被保険者となる従業員にとって、手取り収入が減ることにもなるため、早めに丁寧な説明をしておくことが求められます。
(次号に続く)
社会保険の適用拡大等が盛り込まれた年金制度の改正
社会保険の制度は定期的に見直しが行われています。6月に閉会した国会でも、より多くの人がこれまでよりも長い期間にわたり多様な形で働くようになることが見込まれる中で、今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的とした「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(以下、「年金制度改
正法」という)が成立しました。改正内容は多岐にわたりますが、企業が押さえておきたい2点を解説します。
1.社会保険の適用拡大
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者となる人は、適用事業所に勤務する正社員(常時使用される人)のほか、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパートタイマーやアルバイト等とされています(4分の3基準)。
これに加え、4分の3基準に該当しない場合であっても、以下の5つの要件をすべて満たす人は、被保険者になります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上あること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 賃金の月額が8.8万円以上であること
- 学生でないこと
- 厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の適用事業所に勤めていること
年金制度改正法では、5.の要件について、2022年10月に101人以上の適用事業所に、2024年10月に51人以上の適用事業所に拡大することとしています。
また2.の要件が2022年10月に廃止され、正社員と同様に「雇用期間が2ヶ月超見込まれること」となります。
2.2ヶ月超の雇用見込者の早期加入
社会保険では「日雇いで働く人」や「4ヶ月以内の季節的業務に使用される人」等、一定の被保険者とならない人が定められています。そのひとつに、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される人」というものがありますが、2ヶ月以内の雇用見込みの人であっても所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となるとされています。
年金制度改正法では、雇用契約の期間が2ヶ月以内であっても、実態としてその雇用契約の期間を超えて使用される見込みがあると判断される場合は、最初の雇用期間を含めて、当初から被保険者になるとされました。
具体的には、以下のようなケースでは原則として当初から被保険者となります。
- 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
- 同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
特に社会保険の適用拡大に関して、多くのパートタイマーやアルバイト等が新たに被保険者になる企業では、社会保険料の負担が相当大きなものになると予想されます。また、新たに被保険者となる従業員にとって、手取り収入が減ることにもなるため、早めに丁寧な説明をしておくことが求められます。
(次号に続く)
新型コロナウイルス感染症に関連した雇用保険の特例
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大を背景に、家族の介護や子どもの世話のために退職せざるをえなくなったり、また、雇止めや解雇された労働者が多く発生しています。今回はこのような離職者が受けられる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)に関する特例について確認します。
1.給付制限が行われない措置
失業手当は、離職理由により一定期間、給付を受けることのできない給付制限の期間が設けられています。ただし、特定受給資格者(倒産や解雇等が理由の離職者)や、特定理由離職者(一定の雇止め、転居や婚姻等による自己都合退職等が理由の離職者)は、この給付制限の期間が設けられていません。
新型コロナの影響として、2020年2月25日以降に、以下の理由により離職した人は特定理由離職者として扱うことにより、給付制限の期間が設けられないこととなっています。
- 同居の家族が新型コロナに感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナの影響で子(小学校、高等教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
2.給付日数の延長
新型コロナにより、経済状況は急激に悪化し、以前の状況に戻るには相当の時間を要するとも言われています。求人倍率も大幅に減少し、離職者の求職活動の長期化等が予想されます。
そのため、失業手当の受給者について、給付日数が延長されることになりました。対象となる離職者は、2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人で、以下の通りとなっています。
- 離職日が2020年4月7日以前の人離職理由を問わない(全受給者)
- 離職日が2020年4月8日から5月25日までの人特定受給資格者および特定理由離職者
- 離職日が2020年5月26日以降の人 新型コロナの影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者および特定理由離職者(雇止めの場合に限る)
延長される日数は原則60日ですが、35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人および45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人は30日となります。
所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合等、対象とならないこともあります。
これらの他、新型コロナにより求職活動ができない場合やハローワークに出向いて失業の認定が受けられない場合の特例も設けられています。新型コロナの影響で離職する従業員には特例が設けられていることを伝えるとよいでしょう。
(次号に続く)
新型コロナウイルス感染症に関連した雇用保険の特例
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大を背景に、家族の介護や子どもの世話のために退職せざるをえなくなったり、また、雇止めや解雇された労働者が多く発生しています。今回はこのような離職者が受けられる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)に関する特例について確認します。
1.給付制限が行われない措置
失業手当は、離職理由により一定期間、給付を受けることのできない給付制限の期間が設けられています。ただし、特定受給資格者(倒産や解雇等が理由の離職者)や、特定理由離職者(一定の雇止め、転居や婚姻等による自己都合退職等が理由の離職者)は、この給付制限の期間が設けられていません。
新型コロナの影響として、2020年2月25日以降に、以下の理由により離職した人は特定理由離職者として扱うことにより、給付制限の期間が設けられないこととなっています。
- 同居の家族が新型コロナに感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナの影響で子(小学校、高等教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
2.給付日数の延長
新型コロナにより、経済状況は急激に悪化し、以前の状況に戻るには相当の時間を要するとも言われています。求人倍率も大幅に減少し、離職者の求職活動の長期化等が予想されます。
そのため、失業手当の受給者について、給付日数が延長されることになりました。対象となる離職者は、2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人で、以下の通りとなっています。
- 離職日が2020年4月7日以前の人離職理由を問わない(全受給者)
- 離職日が2020年4月8日から5月25日までの人特定受給資格者および特定理由離職者
- 離職日が2020年5月26日以降の人 新型コロナの影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者および特定理由離職者(雇止めの場合に限る)
延長される日数は原則60日ですが、35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人および45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人は30日となります。
所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合等、対象とならないこともあります。
これらの他、新型コロナにより求職活動ができない場合やハローワークに出向いて失業の認定が受けられない場合の特例も設けられています。新型コロナの影響で離職する従業員には特例が設けられていることを伝えるとよいでしょう。
(次号に続く)
新型コロナウイルス感染症に関連した雇用保険の特例
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大を背景に、家族の介護や子どもの世話のために退職せざるをえなくなったり、また、雇止めや解雇された労働者が多く発生しています。今回はこのような離職者が受けられる雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)に関する特例について確認します。
1.給付制限が行われない措置
失業手当は、離職理由により一定期間、給付を受けることのできない給付制限の期間が設けられています。ただし、特定受給資格者(倒産や解雇等が理由の離職者)や、特定理由離職者(一定の雇止め、転居や婚姻等による自己都合退職等が理由の離職者)は、この給付制限の期間が設けられていません。
新型コロナの影響として、2020年2月25日以降に、以下の理由により離職した人は特定理由離職者として扱うことにより、給付制限の期間が設けられないこととなっています。
- 同居の家族が新型コロナに感染したことなどにより看護または介護が必要となったことから自己都合離職した場合
- 本人の職場で感染者が発生したこと、または本人もしくは同居の家族が基礎疾患を有すること、妊娠中であることもしくは高齢であることを理由に、感染拡大防止や重症化防止の観点から自己都合離職した場合
- 新型コロナの影響で子(小学校、高等教育学校(小学校課程のみ)、特別支援学校(高校まで)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る)の養育が必要となったことから自己都合離職した場合
2.給付日数の延長
新型コロナにより、経済状況は急激に悪化し、以前の状況に戻るには相当の時間を要するとも言われています。求人倍率も大幅に減少し、離職者の求職活動の長期化等が予想されます。
そのため、失業手当の受給者について、給付日数が延長されることになりました。対象となる離職者は、2020年6月12日以後に基本手当の所定給付日数を受け終わる人で、以下の通りとなっています。
- 離職日が2020年4月7日以前の人離職理由を問わない(全受給者)
- 離職日が2020年4月8日から5月25日までの人特定受給資格者および特定理由離職者
- 離職日が2020年5月26日以降の人 新型コロナの影響により離職を余儀なくされた特定受給資格者および特定理由離職者(雇止めの場合に限る)
延長される日数は原則60日ですが、35歳以上45歳未満で所定給付日数270日の人および45歳以上60歳未満で所定給付日数330日の人は30日となります。
所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合等、対象とならないこともあります。
これらの他、新型コロナにより求職活動ができない場合やハローワークに出向いて失業の認定が受けられない場合の特例も設けられています。新型コロナの影響で離職する従業員には特例が設けられていることを伝えるとよいでしょう。
(次号に続く)
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)
に関するQ&A(第2版)が先日公開されました。
詳細は下記をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000652801.pdf
【介護・保育】人材定着ブログ7月号~介護・保育 「福祉事業に必要なキャリアパスとは⑬」
の続きです。
今回も前回に引き続き、介護業界「賃金」についてお伝えしします。
(1)賃金水準
業界全体の職種別賃金水準と比較して、どんなレベルなのか、また地域の中の同業と比較したときに問題はないか、など。厚労省の職種別賃金や地域のハローワークからの情報を入手し、分析してみることをお勧めいたします。
(2)職場における賃金バランス
職場における賃金バランスの実態を把握することで、課題を把握し、不満因子になる前に、改善に向けて具体的に推進していくことが必要です。
①年齢別バランス
②管理職と一般職のバランス
③中途採用者とのバランス
④職種別のバランス
5、再構築の制度設計の方向性
(1)基本給の考え方
基本給は何で決定されるか。基本給は賃金制度における核であり、これをどのような決め方にするかで賃金制度の骨格が定まるといってよいと思います。基本給には、年齢給、勤続給、職能給(能力給)、成果給といった性質の給与で決められているという理解が一般的ですが、今回のキャリアパス導入に伴う性質からは、職能給的な性格で、能力に応じて基本給が決まるという考え方です。
キャリアパスの導入に伴い、基本給は職能給的な要素となり、今後益々この方式が採用され拡大していくものと考えています。
手当も基本給同様で「仕事的要素」の手当に集約されていく方向にあるものと考えます。
(2)職能給について
職能給とは職員の職務遂行能力に応じて支給する賃金のことです。つまり職業能力の高い職員には高い賃金を、職業能力の低い職員には低い賃金を、という考え方です。その職遂行能力を具体化したものが職能資格制度です。職能資格制度に基づき、個々の職員に対して、職能資格(等級)が決められて、職能資格に対応する賃金が支給されることになります。このようにして決められる賃金のことを職能給と呼びます。
(3)職能給・職能資格制度の功罪
職能給の長所としては、第一に能力開発、自己啓発を推進させるというメリットがあります。職務遂行能力が高まれば給与があがることになるわけですから、職員の能力向上のモチベーション向上につながります。第2に職員を異動させやすいというメリットがあります。業務は違っても等級に応じた役割は他の職場でも同じ前提ならば、配置転換をしても賃金(基本給)を変える必要はありません。したがって、事業の都合や職員の能力開発に応じて異動させることが可能になります。
他方、短所としては、第一に運用を適切に実施しないと年功的な賃金になる恐れがあるということです。それは、職員個々の職務遂行能力を評価することは難しいからです。
第2に職員の担当能力と賃金とのバランスが取れないことがある点です。職員の能力が高まっても、適切な仕事が与えられるとは限らないからです。以上のメリットと課題を理解したうえで、職能給・職能資格制度を取り入れていっていただきたいと思います。
6、基本給の具体的検討事項
(1)等級制度と連動した給与水準(範囲給の設定)
- 範囲給による賃金テーブルのレンジ表の例
(2)人事評価結果の反映の方法
職務役割の遂行度、スキルアップの向上・達成度を人事評価で評価し、その結果で
毎年の賃金を改定します。下記は等級毎の評価結果に対応する上昇号棒数と金額を示します。
- 賃金テーブルと昇給額の連動表の例
・昇給額は、人事評価の結果により等級ごとに変動する号棒数(ピッチ数)を決めます。
上の例では、A評価は3号俸(3ピッチ)UP B評価は2号棒(2ピッチ)UP、
C評価は1号俸(1ピッチ)UPとなっています。
(3)諸手当の見直し
諸手当はそれなりに目的をもって、特定の条件を満たす職員に対して支給しています。したがってどんな手当であろうと、それなりに理由があるのであって、一概の否定することはできません。そうはいっても、むやみやたらに各種手当をもうけるのも問題です。多くの事業所では、これまで様々な手当を設けてきています。諸手当の多くは、賞与や退職金に反映されないという点で、事業者にとって人件費を抑圧するという面があります。しかし、諸手当の種類があまり多すぎると、賃金が複雑になりわかりにくくなるととともに、手当の重複なども懸念されます。
では、どのような手当が必要でしょうか。一般的には、通勤手当、家族手当、役職手当、所定外手当程度でよいのではないかと考えています。各事業所におかれては、現在支給している手当の目的や背景などをもう一度見直し、精査が必要と考えています。
手当の検討ポイントをまとめると下記のようになります。
- 手当の目的・意義の明確化
- 不要な手当の統廃合
- 廃止する手当は一旦、調整手当
- 場合によっては新規採用者から減額や廃止
以上の視点で、現状の手当を見直してみると課題が見えてくるものと思います。
先週末の17日、
国の中心的な羅針盤となる“経済財政運営と改革の基本方針2020”
通称、“骨太方針2020”がようやく示されましたね。
その中で、介護、医療分野の部分の抜粋版をお示しします。
ご参考になさってください。
(医療・介護分野におけるデータ利活用等の推進)
感染症、災害、救急等の対応に万全を期すためにも、医療・介護分野におけるデータ 利活用やオンライン化を加速し、PHRの拡充も含めたデータヘルス改革を推進する。 被保険者番号の個人単位化とオンライン資格確認の導入のための「保健医療データプ ラットフォーム」を2020 年度に本格運用を開始するとともに、患者の保健医療情報を患 者本人や全国の医療機関等で確認できる仕組みに関し、特定健診情報は2020 年度中に、 レセプトに基づく薬剤情報については2021 年中に稼働させ、さらに手術等の情報につい ても2022 年中に稼働させる。それ以外のデータ項目については、情報連携の必要性や費 用対効果等を検証しつつ、技術動向等を踏まえ、2020 年中を目途にデータヘルス改革に 関する工程を具体化する。医療分野の個人情報の保護と利活用の推進策を検討する。保 険者のデータヘルス計画の標準化等の取組を推進する。本年3月の「審査支払機関改革 における今後の取組」等に基づき、審査支払システムや業務を整合的かつ効率的に機能 させる等の改革を着実に進める。科学的介護・栄養の取組を一層推進する。 オンライン診療等の時限的措置の効果や課題等の検証について、受診者を含めた関係 者の意見を聞きエビデンスを見える化しつつ、オンライン診療や電子処方箋の発行に要 するシステムの普及促進を含め、実施の際の適切なルールを検討する。電子処方箋につ 32 いて、既存の仕組みを効率的に活用しつつ、2022 年夏を目途に運用を開始する。医師に よる遠隔健康相談について、既存事業の検証を行いつつ、効果的な活用を図る。 AIを活用した医療機器の開発や、医薬品等の開発の促進に資する薬事規制の体制の 整備・合理化を進める。 感染症の下、介護・障害福祉分野の人手不足に対応するとともに、対面以外の手段を できる限り活用する観点から、生産性向上に重点的に取り組む。ケアプランへのAI活 用を推進するとともに、介護ロボット等の導入について、効果検証によるエビデンスを 踏まえ、次期介護報酬改定で人員配置の見直しも含め後押しすることを検討する。介護 予防サービス等におけるリモート活用、文書の簡素化・標準化・ICT化の取組を加速 させる。医療・介護分野のデータのデジタル化と国際標準化を着実に推進する。
詳細は下記でご確認ください
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2020/2020_basicpolicies_ja.pdf
医療機関でみられる人事労務Q&A
『試用期間の延長と本採用を見送る際の留意点』
Q:
当院では、就業規則において、3 ヶ月間の試用期間を設けています。先日採用した職員は問題行動が多く、上長が再三にわたり注意・指導を行っているところです。今後、もうしばらく様子を見るため試用期間を延長するか、試用期間満了をもって本採用を見送るか検討しているところですが、その際の留意点を教えてください。
A:
まずは、試用期間があること、その期間や延長の可能性があること、本採用を見送る場合があること、そしてその具体的な基準について、就業規則等に定め、あらかじめ本人へ説明しておくことが重要です。なお、たとえ試用期間中であっても、労働契約は成立しているため、試用期間満了後に本採用を見送るのであれば解雇となり、解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要になる場合があります。
詳細解説:
1.試用期間の位置づけと延長
試用期間とは、医院が、新たに採用した職員の適性や能力について評価し、本採用するか否かを判断するための期間です。必ず設けなければならないものではなく、その期間についても明確な基準はありませんが、試用期間中は身分が不安定になることから、6 ヶ月以内で設定している医院がほとんどでしょう。
あらかじめ設定した試用期間において、その職員の適性や能力について判断することが望ましいですが、中にはあらかじめ設定した試用期間では判断できずに、試用期間を延長して判断するケースがあります。その場合、就業規則等に試用期間の延長に関する規定が必要となりますが、規定に基づいて延長するときでも、合理的な理由が必要になります。なぜ試用期間を延長することになったのか、本人へ理由を説明し、あわせて本採用へ向けて改善すべき点を明確に示すことが求められます。
2.試用期間満了により本採用を見送る際の留意点
職員に問題があれば一方的に本採用を行わないことができるわけではありません。どのような場合に本採用が見送りとなるか、就業規則等で具体的な基準を規定し、それを本人へ事前に説明しておく必要があります。そのうえで、その職員の適性や能力が医院としての基準に達しない点について、注意・指導を繰り返したけれども、改善に至らなかったために本採用を行わないこととしたというプロセスが重要になります。
気づいたら試用期間が過ぎていた、試用期間の満了が直前に迫っていたというケースは少なくありません。試用期間を設定するのであれば、本採用となる基準等について現場や
上長等に共有し、職員の適性や能力に問題があれば、注意・指導を行い、記録を残すことが求められます。
(来月に続く)
病院・一般診療所の夏季賞与支給状況
新型コロナウイルスの感染拡大は、医療機関の経営にさまざまな影響を与えています。こうした中で、夏季賞与の支給時期を迎えます。ここでは厚生労働省の調査結果※から、直近5 年間の、
病院と一般診療所における夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などの推移をみていきます。
病院は支給額が減少
上記資料から病院と一般診療所の夏季賞与1人平均支給額などの推移を、事業所規模別にまとめると下表のとおりです。
病院の1 人平均支給額は、5~29 人で2018 年以降は減少が続き2019 年には10 万円を割り込みました。30~99 人は2018 年に30 万円を超えました。2019 年は若干減少したものの30 万円台を維持しています。
きまって支給する給与に対する支給割合は、5~29 人は2019 年に0.5 ヶ月を下回りましたが、30~99 人は1 ヶ月分を超えました。
一般診療所の支給割合は1 ヶ月分未満
一般診療所の1 人平均支給額は、5~29 人で2018 年から減少が続き、2019 年は15 万円台と、直近5 年間では最も低い額になりました。逆に30~99 人は2018 年から増加に転じ、2019 年に
は22 万円台になっています。
きまって支給する給与に対する支給割合は、5~29 人と30~99 人のどちらも1 ヶ月分を下回る状況が続いています。
今年の夏季賞与は、地域や診療科によって支給状況が大きく異なることが予想されます。
※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約190 万事業所から抽出した約33,000 事業所を対象にした調査です。きまって支給する給与に対する支給割合は、賞を支給した事業所ごとに算出した「きまって支給する給与」に対する「賞与」の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合とは、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&tclass1=000001015911&tclass2=000001040061&second2=1
(次号に続く)