コラム
介護・保育業界における導入に向けた取り組み
事業所の経営者の方々と話していると、こんな声をよく聞きます。「大切な取り組みであることはわかっているけども、ただでさえ人手不足なのにそのうえ、残業削減、有給休暇取得促進によって現場が回っていくのか、サービスの低下につながるのではないか」。初めての取り組みゆえに、このような心配はよくわかります。しかし、取り組まないことへのデメリット、取り組むことへのメリットを考えて判断していくことが大切なのではないでしょうか。業界を取りまく環境の変化への対応と、人材の確保(採用と定着)、今後の法人イメージなどについて、それぞれに影響を洗い出したうえで考えてみてはいかがでしょうか。まずは、出来ることからスタートすることが大切だと思います。
それでは、その取り組み方について、前回引き続き3つ目のステップについて説明させていただきます。
(3) ステップ3
ステップ2で組織風土の醸成が少しずつ出来てきたら、今度はいろいろな「制度」や人事施策を導入し、「職場ルールの変革」などに取り組んでいきます。
下記には、その一例をご紹介いたします。
●両立支援制度:育休・時短期間延長、子供手当・家族休暇の創設など。
●多様な働き方:フレックス制度導入、短時間正社員制度導入、副業制度など。
●効率化:IT活用、ペーパーレス化、仕組の見直しなど。
●人事評価制度:部下のワークライフバランス推進や休暇取得推進を評価。
●インセンティブ:残業削減分を社員に還元(賞与、ベースアップなどで)。
●オフィス革命:レイアウト、オフィス機能の見直しなど。
5、事業所で活用している「制度」や「ルール」の事例
それでは、実際に行っている介護事業者が具体的にどのような取り組みをされているのかを、いくつかの事例でご紹介させていただきます。
●風土づくり
ある法人では、職員満足度調査を10年間以上継続して実施し、その結果を理事会で共有化して審議しています。その効果として、徐々に建設的な意見が増えてきており、社員一人一人の意識の変化を実感していると言います。また、「風土改善チーム」といった委員会活動も行われており、活動資金的な財源も準備され、極力自主的な運営ができるような配慮がなされています。
●両立支援制度
産前産後の休暇制度を産前産後ともに8週間として、法定の制度を延長運用して出産前の「つわり」の期間に、休むことができるような配慮がなされている法人もあります。また、子女の看護休暇も法定の5日/人を10日/人として、職場復帰後の育児にも配慮して運用されています。
●多様な働き方
相談員・ケアマネ・事務職・栄養士にはフレックスタイム制を導入し、介護職には職場の状況に合わせて退勤時間を調整できる「退勤フレックス制」を導入している法人もあります。また、夜勤専従職員という働き方を用意し、日勤と夜勤の分業制度を導入することで、社員の体調管理面での働きやすさが大幅に改善されています。また副次的な効果として、3か月後などといった長期間のシフトが非常に作りやすくなったので、長期休暇も含めた有給休暇が取りやすくなったとのことです。また、別の法人では介護職が月に1日「日勤フリー」と呼ばれる日を設け、その日は一般業務にはつかず日ごろたまったデスクワークなどの片付けや、残った時間で利用者さんとお出かけや食事をしたり、スポーツ観戦に行ったりするなど一緒に過ごす時間にするといった取り組みも行われています。
●ICTの活用
ある法人では、介護ソフトを導入し、iPhoneな どの端末で日々の記録を入力するとともに、長い文章の記録を行う際は、音声入力(ボイスファン)を活用することで、職員の記録業務の負担を軽減しています。これにより記録作成時間を2分の1に短縮することができ、その結果ケア時間を増加させています。情報が集約されたiPhoneを持ち寄り、会議を行うことで会議時間の短縮にも繋げています。また見守りシステムを導入し、入居者の状態を見える化することで、夜間の見守りなど職員の不安や負担感を軽減することが出来、結果としてこの法人では残業ほぼ「ゼロ」を実現しています。
5、課題とまとめ
ご承知の通り、これからの事業の運営にとって、最も大切な視点は、社員の「採用力」と「定着力」です。そのためには社員目線に立って、「社員が働き続けたくなるような職場」とはどのような職場なのかを、今一度見つめなおすことで、事業所ごとに取るべき施策は見えてくるのではないでしょうか。そこで重要なことは、職場の現状を踏まえ
着実に、かつ継続的に推進してゆくことができる事。つまり無理をして、現場に「やらされた感」的な(または一方的な)「制度」ありきで推進するのではなく、現状の課題を社員が認識し、課題解決に向けて自発的に取り組むことができるような組織風土づくりから始められてはいかがでしょうか。そして、変化が少しずつ職場に表れてきた段階で、経営的な影響も熟慮しながら、具体的な「制度」やルールの見直しの行っていかれることをお勧めしたいと思います。
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『メンタルヘルス不調による休職後の配慮』
Q:
メンタルヘルス不調で休職していた職員が、このたび復職することとなりました。診断書には復職可能と記載されていますが、残業をする等、休職前と同じような業務ができるのか、また、させてよいのか、施設として心配があります。配慮が必要なのか、配慮するのであればどのような配慮を考えるのがよいでしょうか?
A:
施設としては、復職の是非の判断を行うだけでなく、スムーズに復職できるよう復職後の流れについても検討しておくことが望まれます。例えば、復職はするものの、リハビリのように一時的に業務の負担を減らし、ならしながら徐々に休職前と同じ程度の業務を行えるレベルまで戻していく方法が考えられます。このような配慮について必要性を示す裁判例も見られることから、ルール化も含めて、取り扱い方法をあらかじめ検討するようにしましょう。
詳細解説:
メンタルヘルス不調により休職をしていた職員について、施設は休職するに至った症状が回復し、休職前と同じ程度の業務を行えることを条件にして復職の判断をすることが一般的です。しかし、そもそもメンタルヘルスの症状や治癒を確認することは、専門機関であっても難しいといわれており、すぐに再発してしまうケースも多く見られることから、復職の是非だけでなく、復職後どのようなステップで業務にあたるのかといったことも、検討することが望まれます。具体的には、すぐに休職前と同じ業務量や責任の状態で復職させることは身体的・精神的な負担がかかるため、一定期間、業務や労働時間を制限する配慮期間を設けることを検討する方法が考えられます。
実際、裁判例においても、休職前の業務の提供が十分にできないとしても、その能力、経験、企業規模等に応じて当該従業員を配置できる業務がないか検討する必要があること(片山組事件 最判平成10 年4 月9 日)や、復職のための準備時間等を提供することが信義則上求められること(全日本空輸事件 大阪高裁判平成13 年3 月14 日)が示されています。つまり、施設は配置転換や残業の免除の措置を検討するといった配慮をする、道義上・信義則上の責任があると考えられます。
一方で、配慮期間を設けるにしても、その期間中、他の職員が業務を負担することが考えられるため、長期間にわたることは避けたいところです。そのため、配慮する期間の長さや労働時間を短縮する場合の時間数の上限、一時的に行う業務内容例といった具体的な基準をあらかじめ決めておきましょう。
復職の際には、復職者が休職前と同じ業務をスムーズに行えることが理想ですが、必ずしもそうとは限りません。そのため、このように一定期間業務ができるかどうか、施設と復職者の双方が様子を見ることができる配慮期間があることで、安心して業務に復帰できることが期待されます。
(来月に続く)
非常勤介護従事者等の平均給与額と平均基本給額
2019 年8 月号では、常勤介護従事者等の平均給与額を職種別にご紹介しました。ここでは今年4月に発表された調査結果※から、介護従事者等(非常勤・時給)の平均給与額と平均基本給額を職種別にご紹介します。
介護職員の平均給与額は10.5 万円に
上記調査結果から、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における、介護従事者等(時給・非常勤)の平均給与額を職種別にまとめると、表1 のとおりです。
2018 年の平均給与額が最も高いのは、介護支援専門員で 122,500 円でした。次いで、看護職員、生活相談員・支援相談員、介護職員の順に高く、いずれも 10 万円を超えました。
なお介護職員の平均給与額は 105,030 円で、2017 年に比べて 1,730 円の増加です。
表中の 8 職種のうち、2017 年から平均給与額が増加したのは、介護職員の他では、介護支援専門員、管理栄養士・栄養士のみとなりました。
介護職員の平均基本給額は1,110 円に
次に平均基本給額をまとめると表2 のとおりです。
2018 年の平均基本給が最も高かったのは、理学療法士、作業療法士等で、1,540 円です。次いで、看護職員、介護支援専門員、介護職員、生活相談員・支援相談員、管理栄養士・栄養士の順に高く、1,000 円を超えています。2017 年からの増減では、据え置きだった管理栄養士・栄養士を除いた7 職種が2017 年よりも高くなりました。
非常勤で時給の場合、給与額が労働日数や時間に左右されるため、増減については幅のある結果になっています。一方、基本給額は増加した職種が多くなりました。貴施設の状況はいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成30 年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
平均給与額は各年9 月の実績で、基本給(時給)×実労働時間+手当+一時金(4~9 月支給金額の1/6)で求めた金額です。両年とも在籍している者の金額を比較しています。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/dl/30gaiyou.pdf
(次号に続く)
軽減税率導入目前 食事提供は何%?
消費税率の引上げに伴い、飲食料品等について軽減税率制度が導入されます。一方で、外食は対象外として、標準税率の10%が課税されます。介護サービス事業所における食事の提供は、この「外食」になるのでしょうか。
有料老人ホーム等の食事は原則8%
まず、特養、老健等の一定の施設サービスでの食事提供は非課税ですが、利用者の自己選択による特別メニューの料金は消費税の対象です。役務を伴い提供されるため、外食と同様に軽減税率は適用されず、税率は10%となります。
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の設置者又は運営者が、一定の条件を満たす入居者に行う食事の提供には、軽減税率が適用されます。この時、金額の上限があり、同一の日に同一の者に対して行う飲食料品の提供の対価(税抜き)が一食につき640 円以下、かつその累計額が1,920 円に達するまでとされています。
この累計額の計算は、原則、提供時間順に行いますが、計算対象とする食事を予め書面で明らかにしている場合には、その書面で明らかにした食事の額により累計額の計算を行います。
この場合、いずれの食事も一食640 円以下の基準は満たしています。税額を比較します。
この例では3 円の差ですが、施設での食事提供は毎日のこと。積み重なると大きな差です。なお、入居者に対する食事の提供は軽減税率の対象ですが、給食事業者との取引には軽減税率は適用されません。ご注意ください。
領収書等の対応もお忘れなく
10 月1 日からは、原則、軽減税率の適用がある場合には、レシートや領収書、請求書等に、分かるように記載することが求められます。「軽減税率対策補助金」も活用できます。レジシステムもお忘れなくご対応ください。
(次号に続く)
医療機関でみられる人事労務Q&A
『メンタルヘルス不調による休職後の配慮』
Q:
メンタルヘルス不調で休職していた職員が、このたび復職することとなりました。診断書には復職可能と記載されていますが、残業をする等、休職前と同じような業務ができるのか、また、させてよいのか、医院として心配があります。配慮が必要なのか、配慮するのであればどのような配慮を考えるのがよいでしょう
か?
A:
医院としては、復職の是非の判断を行うだけでなく、スムーズに復職できるよう復職後の流れについても検討しておくことが望まれます。例えば、復職はするものの、リハビリのように一時的に業務の負担を減らし、ならしながら徐々に休職前と同じ程度の業務を行えるレベルまで戻していく方法が考えられます。このような配慮について必要性を示す裁判例も見られることから、ルール化も含めて、取り扱い方法をあらかじめ検討するようにしましょう。
詳細解説:
メンタルヘルス不調により休職をしていた職員について、医院は休職するに至った症状が回復し、休職前と同じ程度の業務を行えることを条件にして復職の判断をすることが一般的です。しかし、そもそもメンタルヘルスの症状や治癒を確認することは、専門機関であっても難しいといわれており、すぐに再発してしまうケースも多く見られることから、復職の是非だけでなく、復職後どのようなステップで業務にあたるのかといったことも、検討することが望まれます。具体的には、すぐに休職前と同じ業務量や責任の状態で復職させることは身体的・精神的な負担がかかるため、一定期間、業務や労働時間を制限する配慮期間を設けることを検討する方法が考えられます。
実際、裁判例においても、休職前の業務の提供が十分にできないとしても、その能力、経験、企業規模等に応じて当該従業員を配置できる業務がないか検討する必要があること(片山組事件 最判平成10 年4 月9 日)や、復職のための準備時間等を提供することが信義則上求められること(全日本空輸事件 大阪高裁判平成13 年3 月14 日)が示されています。つまり、医院は配置転換や残業の免除の措置を検討するといった配慮をする、道義上・信義則上の責任があると考えられます。
一方で、配慮期間を設けるにしても、その期間中、他の職員が業務を負担することが考えられるため、長期間にわたることは避けたいところです。そのため、配慮する期間の長さや労働時間を短縮する場合の時間数の上限、一時的に行う業務内容例といった具体的な基準をあらかじめ決めておきましょう。
復職の際には、復職者が休職前と同じ業務をスムーズに行えることが理想ですが、必ずしもそうとは限りません。そのため、このように一定期間業務ができるかどうか、医院と復職者の双方が様子を見ることができる配慮期間があることで、安心して業務に復帰できることが期待されます。
(来月に続く)
医療法人1 法人あたりの交際費等支出額
ここでは、今年6 月に国税庁より発表された「会社標本調査」※の最新結果などから求めた、直近3 年間の医療法人1 法人あたり年間の交際費等支出額をみていきます。
利益計上法人の平均は209.9万円
上記調査結果から、直近3 年分の医療法人1 法人あたり年間の交際費等支出額を、資本金階級別にまとめると下表のとおりです。
利益計上法人の資本金階級計は、2015 年度分以降は200 万~210 万円台で推移しており、直近3 年間の平均は、209.9 万円になりました。
2017 年度分の資本金階級別交際費等支出額をみると、100 万円超1,000万円以下の階級は、200 万円未満ですが、その他の階級では200 万円を超えています。
欠損法人の平均は157.1 万円
欠損法人の資本金階級計は増加を続けています。2016 年分では150 万円を、2017 年度分では160 万円を超えました。3 年間の平均は157.1 万円です。
資本金階級別では、3 年とも5,000万円以下の階級で200 万円未満の額となっています。
自院の交際費等支出額は、どの程度なのか、このデータと比較してみてはいかがでしょうか。
※国税庁「会社標本調査」
内国普通法人(休業、清算中の法人や一般社団・財団法人及び特殊な法人を除く)を対象に、4 月1 日から翌年3 月31 日までの間に終了した調査対象法人の各事業年度について、翌年7 月31 日現在でとりまとめたものです。ここでの交際費等支出額は、資本金階級別に集計された合計金額を法人数で除して求めた数字になります。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon/toukei.htm#kekka
(次号に続く)
軽減税率導入目前 これは8%?10%?
消費税率の引上げに伴い、軽減税率制度が導入されます。対象となるのは飲食料品と新聞。医薬品や栄養ドリンク、栄養食品等は人が口にするものですが、これらも「飲食料品」として軽減税率の対象となるのでしょうか。
医薬品、医薬部外品等は10%
ここでは、医療機関の窓口で取り扱う品目の消費税率について確認します(下図)。軽減税率の対象となる「飲食料品」には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に規定する「医薬品」「医薬部外品」及び「再生医療等製品」は含まれません。保険適用の医薬品には消費税はかかりませんが、それ以外は処方箋の有無に関わらず、標準税率の10%が課税されます。
栄養ドリンクや健康食品、美容食品も、ラベル等に「医薬品」「医薬部外品」の記載があれば10%課税です。院内売店で販売する飲食料品も、軽減税率の対象となります。
病院食は非課税、特別メニューは10%
入院患者に提供する病院食は、健康保険法等の規定に基づく入院時食事療養費に係る場合は、消費税が課されません。一方で、患者の自己選択で提供される特別メニューの料金は消費税の対象で、外食と同様に軽減税率の対象外となり、消費税率は10%となります。
領収書等の対応もお忘れなく
10 月1 日からは、原則、軽減税率対象のものがある場合には、レシートや領収書、請求書等に分かるように記載しなければならず、対応が必要です。中小企業・小規模事業者は、複数税率対応レジ等の導入・改修等に「軽減税率対策補助金」も活用できます。ご確認ください。
(次号に続く)
「らっせーらー、らっせーらー」。青森市の郊外にある特別養護老人ホーム和幸園。8月9日、子どもたちが元気にねぶたの踊りを披露すると、高齢者たちの顔がほころんだ。
老人ホームを訪れたのは同じ市内の和幸保育園の子どもたち。保育園と老人ホームを運営する別々の法人が2016年に合併したのを機に交流が始まった。理事長の今村良司(58)は「郊外ではいずれ保育士余りの時代が来る」と危機感を抱く。
青森県の17年の出生数は16年から591人減って8035人まで落ち込んだ。人口比の私営保育園の数は全国1位だが、保育園が多いというより子供が少ないことの裏返しだ。都市部を中心に問題になっている待機児童の数は、青森はすでにゼロ。さらに子供が減れば保育所の運営は厳しくなる。
和幸保育園で働いていた保育士の吉田司(32)は合併後、老人ホームに異動し、今は高齢者と向き合う。「保育も介護も人と接する点では同じ。異動は福祉とは何かを考える契機になっている」。吉田は仕事の幅を広げることに前向きだ。
子供の面倒をみるのは保育士、高齢者の世話は介護福祉士。そんな区分はなくしていくべきなのか。ヒントは海外にある。
「福祉の国」として知られるフィンランドには「ラヒホイタヤ」と呼ばれる資格がある。「寄り添う人」を意味し保育、介護、看護と幅広い仕事に就ける。1993年に導入されて以来、30万人近くが取得した。
日本出身のフィンランド人、テーリカンガス里佳(47)はヘルシンキ郊外で働くラヒホイタヤだ。訪問介護会社に所属し高齢者宅を訪問。食事援助から点滴注射までする。死が目前の高齢者にモルヒネを投与することすらある。技能は2年間通った専門学校の研修で身につけた。
同僚には保育から介護に移った人もいる。ラヒホイタヤなら柔軟に対応できるが、介護や保育の質は落ちないのか。テーリカンガスは「保育も介護も相手に寄り添う仕事。同じ資格で向き合う方が自然」と話す。
日本でも変化の兆しはある。例えば介護や福祉で共通の基礎課程を設け、複数の資格を取りやすくする。この試みに関わる慶応大学教授の堀田聡子は「暮らしを支える共通の視点を持つことにつなげたい」と話す。従来の常識にとらわれない発想力が必要になる。
(敬称略、日経電子版)
企業に求められる従業員の精神障害発症を防ぐための対応
従業員が精神障害を発症した際、その原因が長時間労働や職場のパワーハラスメントによるものだと考え、労災請求をしたいと会社に相談する従業員が増加しています。実際、どのくらいの件数の請求があり、労災の認定がされているのか、厚生労働省が発表した平成30年度の労災補償状況に関する集計結果を見てみましょう。
1.精神障害の労災補償状況
平成30年度の精神障害に関する労災請求件数は1,820件となり、前年の1,732件から88件増加し、過去最多となりました(下図参照)。
支給決定件数は465件で、認定率は31.8%となっています。認定率は過去5年間の中で最低となっていますが、それでも申請の3件に1件の割合で労災として認定されていることが分かります。
2.精神障害発症の理由
精神障害の集計では、精神障害を発症した理由と考えられる支給決定事案における具体的な出来事別の分類がされていますが、上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。
第1位に、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」があることを考えると、企業は、異動により仕事の内容が変わったり、同僚の退職等で業務量が増えたりする等、大きな変化があるときには過重な負担となっていないか面談を行ったり、管理職や一般職向けにパワーハラスメントに関する研修を定期的に実施する等、必要な措置をとることが重要となります。
パワーハラスメントについては、先に行われた国会で、パワーハラスメント防止対策が法制化され2019年6月5日に公布されました。施行は公布後1年以内の政令の定める日(中小企業は公布後3年以内の政令で定める日までは努力義務)とされています。施行はまだ先の予定ですが、日々の労務管理を行う上で、パワーハラスメントの防止に向けた取組みを進めていきましょう。
(来月に続く)
企業に求められる従業員の精神障害発症を防ぐための対応
従業員が精神障害を発症した際、その原因が長時間労働や職場のパワーハラスメントによるものだと考え、労災請求をしたいと会社に相談する従業員が増加しています。実際、どのくらいの件数の請求があり、労災の認定がされているのか、厚生労働省が発表した平成30年度の労災補償状況に関する集計結果を見てみましょう。
1.精神障害の労災補償状況
平成30年度の精神障害に関する労災請求件数は1,820件となり、前年の1,732件から88件増加し、過去最多となりました(下図参照)。
支給決定件数は465件で、認定率は31.8%となっています。認定率は過去5年間の中で最低となっていますが、それでも申請の3件に1件の割合で労災として認定されていることが分かります。
2.精神障害発症の理由
精神障害の集計では、精神障害を発症した理由と考えられる支給決定事案における具体的な出来事別の分類がされていますが、上位項目は次のとおりとなっています(「特別な出来事」を除く)。
第1位に、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」があることを考えると、企業は、異動により仕事の内容が変わったり、同僚の退職等で業務量が増えたりする等、大きな変化があるときには過重な負担となっていないか面談を行ったり、管理職や一般職向けにパワーハラスメントに関する研修を定期的に実施する等、必要な措置をとることが重要となります。
パワーハラスメントについては、先に行われた国会で、パワーハラスメント防止対策が法制化され2019年6月5日に公布されました。施行は公布後1年以内の政令の定める日(中小企業は公布後3年以内の政令で定める日までは努力義務)とされています。施行はまだ先の予定ですが、日々の労務管理を行う上で、パワーハラスメントの防止に向けた取組みを進めていきましょう。
(来月に続く)