コラム

介護事業所様向け情報(経営)8月号②

福祉施設等におけるOFF-JT の実施状況

従業員の教育訓練は、日常の業務に就きながら行われるOJT が多くなる傾向があります。ここでは、福祉施設等(以下、医療,福祉)の事業所における、業務命令に基づき通常の仕事を一時的に離れて行うOFF-JT の実施状況をみていきます。

OFF-JT の実施割合は76.9%

今年4 月に発表された資料※から、医療,福祉における2017 年度(平成29 年度)のOFF-JT 実施状況をまとめると表1 のとおりです。

医療,福祉の実施割合は76.9%で、総数の77.2%を若干下回りました。実施対象では、医療,福祉は正社員と正社員以外、両方に対して
実施した割合が最も高くなりました。

中堅社員への実施割合が最高に

次にOFF-JT の実施割合を階層別にまとめると、表2 のとおりです。

医療,福祉では中堅社員への実施割合が最も高くなっています。また、管理職層よりも正社員以外への実施割合が高い状況です。

新人や中堅向け研修の実施割合が高い

実施割合が高いOFF-JT の内容をまとめると、表3 のとおりで、医療,福祉で最も実施割合が高いのは、初任層を対象とする研修でした。

医療,福祉で実施されるOFF-JT の特徴として、総数に比べてキャリア形成に関する研修やコミュニケーション能力、技能の習得に関する内容の実施割合が高いことがあげられます。

自施設でのOFF-JT の実施内容と、比べてみてはいかがでしょうか。

※厚生労働省「平成30 年度能力開発基本調査」
日本標準産業分類に基づいて抽出した常用労働者30 人以上の民営企業から抽出した7,345 企業および7,176 事業所などを対象にした調査です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450451&bunya_l=07&tstat=000001031190&cycle=8&tclass1=000001127956&tclass2=000001127977&tclass3=000001127980

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)8月号②

年代別にみる医療機関を受診する際の情報の入手先

総務省によると、インターネットの人口普及率は80%を超えており、さまざまな情報収集に活用されるようになっています。ここでは、外来患者が医療機関を受診する際の情報の入手先につ
いて、年代別にみていきます。

情報を入手する割合は70%超に

2019 年3 月に発表された厚生労働省の調査結果※によると、ふだん医療機関にかかる時に情報を入手する割合は、男性が76.4%、女性が78.9%です。年代別にみても、男女ともすべての年代で70%以上となっています。

入手先では口コミがトップに

次に、情報を入手している人における入手先の割合をまとめると、下表のとおりです。男性全体、女性全体ともに家族・知人・友人の口コミが最も高く、次いで、医療機関が発信するインターネットの情報、医療機関の相談窓口の順になりました。

年代別にみると、65 歳未満では医療機関の相談窓口よりも、医療機関・行政機関以外が発信するインターネットの情報(SNS、電子掲示板、ブログの情報を含む)が高くなっています。イ
ンターネット上の口コミ情報などを入手する割合が高いことがうかがえます。

インターネットの普及により、誰もが手軽に情報発信できるようになっています。医療機関においても、こうした状況を踏まえた情報発信や患者応対をしていく必要があるでしょう。

※厚生労働省「平成29 年受療行動調査」
全国の一般病院を利用する患者(外来・入院)を対象として、層化無作為抽出した一般病院を利用する患者を客体とした、3 年ごとに行われる調査です。今回は2017 年(平成29 年)10 月中旬の3 日間のうち、医療施設ごとに定める1 日に行われた結果です。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450024&tstat=000001030975&cycle=7&tclass1=000001126235&tclass2=000001126238&tclass3=000001126239

(次号に続く)

介護事業所様向け情報(経営)8月号①

常勤介護職員の平均月給が30 万円超に

10 月から介護職員の処遇向上ため、「特定処遇改善加算」が始まります。今回は、厚生労働省が発表した「平成30 年度介護従事者処遇状況等調査結果」※の内容から、現時点での介護職員の処遇についてみていきましょう。

平均給与額は10,850 円UP

常勤の介護従事者等の9 月時点の平均給与額(月給)は次のとおりです。

介護職員の平均給与額は10,850 円増加し、平成30 年は30 万円を超えました。その他の全ての職種においても、5,000 円~10,000 円弱の改善がみられます。

昨年度は処遇改善に関する改定は実施されていません。つまり、上記の結果にみられる給与額の増加は、改定の影響ではなく、各施設の努力によるものといえます。

介護職員の増加額10,850 円の内訳は、基本給が3,230 円、手当が3,610 円、賞与等の一時金が4,010 円となっています。

勤続年数に従い、増額幅は逓減

介護職員の平均給与額を勤続年数別にみると、増加額に大きなばらつきがあります。

全体として、勤続年数が増えるにつれ、増額幅は逓減していることが分かります。

なお、「1 年」は28,590 円と最も大きな増額幅を示していますが、これは賞与の算定期間が他に比較して短く、平均給与額も低く算定されている等の事情に起因しています。

10 月から始まる「特定処遇改善加算」は、「勤続10 年以上」が一つの基準となります。今後の給与額にどのように影響するか、次年度以降の調査結果にもご注目ください。

(※)厚生労働省「平成30 年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/index.html

(次号に続く)

医療事業所様向け情報(経営)8月号①

医師等の働き方改革と特別償却制度

医師の働き方改革の一環として、平成31 年度税制改正では、医師・医療従事者の勤務時間短縮に資する一定の設備について、特別償却ができることになりました。これは医療保健業を営む青色申告書を提出する法人又は個人が対象です。

特別償却制度とは?

特別償却は、対象設備の供用初年度に、「普通償却費」に加え、「特別償却費」として追加で償却できる制度です。将来の減価償却費の先取りで、特別償却割合(今回の措置では15%)の減価償却費を前倒し計上できます。

例)個⼈のクリニック、もしくは12 ⽉決算の医療法⼈が9 ⽉に対象設備を供した場合

普通償却費 ×4 ヶ⽉(9〜12 ⽉)/ 12 ヶ⽉+ 特別償却費※

(※)普通償却費は供用開始月によって変わりますが、特別償却費はこれに関わらず全額を計上できます。

対象となる勤務時間短縮用設備とは?

次の全てを満たす設備が対象となります。

① 医療機関が、都道府県の医療勤務環境改善⽀援センターの助⾔の下に作成した医師勤務時間短縮計画に基づき取得した未使⽤のもの
② 下表のいずれかの類型に該当するもの
③ 1 台⼜は1 基(通常⼀組⼜は⼀式をもって取得単位とされるものについては、⼀組⼜は⼀式)の取得価額が30 万円以上のもの

この措置は、平成31 年4 月から令和3 年3月までの期間に取得・製作され、同期間中に医療保健業の用に供したものに適用されます。

(次号に続く)

医師の勤務実態調査 厚労省 

厚生労働省は14万人の医師を対象に勤務状況の実態を調査する。9月第1週の1週間について毎日、勤務時間を記入してもらう。勤務医は長時間労働が常態化しており、実態を把握することで労働時間の短縮に向けた検討に生かす。

医師の働き方改革で厚労省は、2024年度から勤務医の残業時間の上限を原則年960時間とする。地域医療に欠かせない一部の病院や研修医などでは例外として1860時間まで許容する。労働時間を短縮する計画や健康を確保するための措置などを病院に義務づけ、進捗を確認する仕組みも設ける方針だ。

今回の調査結果をもとに有識者検討会で議論し、制度の詳細を詰める。医療法の改正を念頭に、2020年の通常国会で法案提出をめざす。

調査票は病院や診療所など計約1万9千施設に配布する。医師の勤務実態や業務分担の状況のほか、施設ごとに仕事と育児の両立支援策や保育所の有無などを調べる。

勤務医は長時間労働が常態化している。大学病院の9割近くで残業時間が年1860時間超に達する勤務医がいるとみられる。過労死や医療ミスにつながる恐れがあり対策が急務となっている。

2019年8月17日日経新聞

医療事業所様向け情報(労務)8月号④

同一労働同一賃金への対応でいま行うべきこと

働き方改革の本命である同一労働同一賃金は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月に改正法が施行されます。実際にこの対応に着手すると、最終的には人事制度の見直しまで必要となることもあり、早めに取り掛かることが重要です。そこで今回は同一労働同一賃金の基礎知識と、当面求められる実務対応についてとり上げます。

1.同一労働同一賃金とは何か

同一労働同一賃金について、一般的には「正社員と同じ仕事をしている非正規社員に同じ額の賃金を支給しなければならない」と考えられていますが、この理解は正確ではありません。パートタイム・有期雇用労働法では、この「同じ仕事」であるかどうかを判断する要素として、以下の3つが挙げられています。

①職務の内容(担当する業務の内容と業務に伴う責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲(職種転換・転勤の有無および範囲)
③その他の事情(定年後の雇⽤であること、労働組合等との交渉の状況など)

正社員と非正規社員の仕事を比較して、①と②がまったく同じ場合には「均等待遇」として、非正規社員であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。しかし、現実的には、非正規社員は正社員と比べ、担当する仕事の内容が定型的である、責任の程度が低いといった状況も多く存在し、①と②がまったく同じというケースはさほど多くないと思われます。
その際に求められるのが「均衡待遇」です。①または②が異なる場合の非正規社員の待遇は、①と②の違いに加えて③を考慮して、正社員との間に不合理な待遇差のない、バランスが取れた待遇であることが求められます。
つまり、①または②が異なるという理由で、非正規社員の待遇を不合理に低く抑えることは認められません。

2.当面求められる対応

実務上、当面求められる対応は、各雇用区分における待遇の差異をまとめることです。具体的には、正社員、パートタイマー、契約社員、嘱託社員など自社の雇用区分を横軸に、基本給、諸手当、賞与、退職金、福利厚生、安全衛生などの待遇を縦軸にした労働条件比較表を作成し、その差異を把握します。そして、雇用区分によって待遇に差異のある項目は、その差異が不合理ではないと説明できるか検証します。その差異が不合理であると考えられる場合には、次のステップとして、その待遇の見直しを検討することになります。

昨年6月に同一労働同一賃金に関する初めての最高裁判決が言い渡され、その後も様々な裁判が継続しています。そうした判例により、諸手当や福利厚生については概ね求められる対応法がわかりつつありますが、基本給、賞与、退職金、扶養手当など、最も重要な論点については未だ不明確な状態にあります。それらも今後、裁判を通じて対応すべき水準が明らかになっていくと予想されます。まずは労働条件比較表の作成を通じ、自社の課題抽出を優先して行っておきましょう。

(来月に続く)

保育事業所様向け情報(労務)8月号④

同一労働同一賃金への対応でいま行うべきこと

働き方改革の本命である同一労働同一賃金は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月に改正法が施行されます。実際にこの対応に着手すると、最終的には人事制度の見直しまで必要となることもあり、早めに取り掛かることが重要です。そこで今回は同一労働同一賃金の基礎知識と、当面求められる実務対応についてとり上げます。

1.同一労働同一賃金とは何か

同一労働同一賃金について、一般的には「正社員と同じ仕事をしている非正規社員に同じ額の賃金を支給しなければならない」と考えられていますが、この理解は正確ではありません。パートタイム・有期雇用労働法では、この「同じ仕事」であるかどうかを判断する要素として、以下の3つが挙げられています。

①職務の内容(担当する業務の内容と業務に伴う責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲(職種転換・転勤の有無および範囲)
③その他の事情(定年後の雇⽤であること、労働組合等との交渉の状況など)

正社員と非正規社員の仕事を比較して、①と②がまったく同じ場合には「均等待遇」として、非正規社員であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。しかし、現実的には、非正規社員は正社員と比べ、担当する仕事の内容が定型的である、責任の程度が低いといった状況も多く存在し、①と②がまったく同じというケースはさほど多くないと思われます。
その際に求められるのが「均衡待遇」です。①または②が異なる場合の非正規社員の待遇は、①と②の違いに加えて③を考慮して、正社員との間に不合理な待遇差のない、バランスが取れた待遇であることが求められます。
つまり、①または②が異なるという理由で、非正規社員の待遇を不合理に低く抑えることは認められません。

2.当面求められる対応

実務上、当面求められる対応は、各雇用区分における待遇の差異をまとめることです。具体的には、正社員、パートタイマー、契約社員、嘱託社員など自社の雇用区分を横軸に、基本給、諸手当、賞与、退職金、福利厚生、安全衛生などの待遇を縦軸にした労働条件比較表を作成し、その差異を把握します。そして、雇用区分によって待遇に差異のある項目は、その差異が不合理ではないと説明できるか検証します。その差異が不合理であると考えられる場合には、次のステップとして、その待遇の見直しを検討することになります。

昨年6月に同一労働同一賃金に関する初めての最高裁判決が言い渡され、その後も様々な裁判が継続しています。そうした判例により、諸手当や福利厚生については概ね求められる対応法がわかりつつありますが、基本給、賞与、退職金、扶養手当など、最も重要な論点については未だ不明確な状態にあります。それらも今後、裁判を通じて対応すべき水準が明らかになっていくと予想されます。まずは労働条件比較表の作成を通じ、自社の課題抽出を優先して行っておきましょう。

(来月に続く)

介護事業所様向け情報(労務)8月号④

同一労働同一賃金への対応でいま行うべきこと

働き方改革の本命である同一労働同一賃金は、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月に改正法が施行されます。実際にこの対応に着手すると、最終的には人事制度の見直しまで必要となることもあり、早めに取り掛かることが重要です。そこで今回は同一労働同一賃金の基礎知識と、当面求められる実務対応についてとり上げます。

1.同一労働同一賃金とは何か

同一労働同一賃金について、一般的には「正社員と同じ仕事をしている非正規社員に同じ額の賃金を支給しなければならない」と考えられていますが、この理解は正確ではありません。パートタイム・有期雇用労働法では、この「同じ仕事」であるかどうかを判断する要素として、以下の3つが挙げられています。

①職務の内容(担当する業務の内容と業務に伴う責任の程度)
②職務の内容・配置の変更の範囲(職種転換・転勤の有無および範囲)
③その他の事情(定年後の雇⽤であること、労働組合等との交渉の状況など)

正社員と非正規社員の仕事を比較して、①と②がまったく同じ場合には「均等待遇」として、非正規社員であることを理由とした差別的取扱いが禁止されます。しかし、現実的には、非正規社員は正社員と比べ、担当する仕事の内容が定型的である、責任の程度が低いといった状況も多く存在し、①と②がまったく同じというケースはさほど多くないと思われます。
その際に求められるのが「均衡待遇」です。①または②が異なる場合の非正規社員の待遇は、①と②の違いに加えて③を考慮して、正社員との間に不合理な待遇差のない、バランスが取れた待遇であることが求められます。
つまり、①または②が異なるという理由で、非正規社員の待遇を不合理に低く抑えることは認められません。

2.当面求められる対応

実務上、当面求められる対応は、各雇用区分における待遇の差異をまとめることです。具体的には、正社員、パートタイマー、契約社員、嘱託社員など自社の雇用区分を横軸に、基本給、諸手当、賞与、退職金、福利厚生、安全衛生などの待遇を縦軸にした労働条件比較表を作成し、その差異を把握します。そして、雇用区分によって待遇に差異のある項目は、その差異が不合理ではないと説明できるか検証します。その差異が不合理であると考えられる場合には、次のステップとして、その待遇の見直しを検討することになります。

昨年6月に同一労働同一賃金に関する初めての最高裁判決が言い渡され、その後も様々な裁判が継続しています。そうした判例により、諸手当や福利厚生については概ね求められる対応法がわかりつつありますが、基本給、賞与、退職金、扶養手当など、最も重要な論点については未だ不明確な状態にあります。それらも今後、裁判を通じて対応すべき水準が明らかになっていくと予想されます。まずは労働条件比較表の作成を通じ、自社の課題抽出を優先して行っておきましょう。

(来月に続く)

医療事業所様向け情報(労務)8月号③

パートタイマーの所定労働時間を見直した際の随時改定の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:先月より1日の所定労働時間を6時間から7時間に延ばしたパートタイマーがいます。これにより給与の総支給額が増え、所定労働時間を変更した月から3ヶ月間の給与から判断すると、現在の標準報酬月額との差が2等級以上になりそうです。

社労士 :なるほど。社会保険の随時改定(月額変更)に該当するかということを、気にされ ているのですね。

総務部長:はい。給与は基本給と通勤手当で構成されており、基本給は時給、通勤手当は実際の出勤日数に応じて支給しています。今回、1日の所定労働時間は見直したものの、基本給・通勤手当ともに単価の変更はしていません。随時改定は、固定的賃金の変動があったときに該当すると認識しているのですが、このパートタイマーを対象にしなくてよいか、判断に迷いました。

社労士 :随時改定の要件の1つに「昇給または降給等により固定的賃金に変動があった」というものがあります。ここでの固定的賃金の変動とは、支給額や支給率が決まっているものをいい、日本年金機構は次のようなものが考えられるとしています。

①昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
②給与体系の変更(⽇給から⽉給への変更等)
③⽇給や時間給の基礎単価(⽇当、単価)の変更
④請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
⑤住宅⼿当、役付⼿当等の固定的な⼿当の追加、⽀給額の変更

総務部長:今回のパートタイマーはいずれにも該当しないように感じます。

社労士 :確かにそう感じられるかもしれませんが、日本年金機構は「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」を出しており、「時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる」としています。

総務部長:ということは、今回のパートタイマーも随時改定の対象となるということですね。

社労士 :はい。随時改定となるかはすべての要件から判断することになりますが、少なくとも随時改定の対象になるかを確認すべきパートタイマーになります。

総務部長:承知しました。確認するようにします。ありがとうございました。

【ワンポイントアドバイス】
1. 随時改定における固定的賃金の変動とは、昇給や降給のほか、給与体系の変更なども含まれる。
2. 所定労働時間の変更も随時改定における固定的賃金の変動に含まれる。
3. 日本年金機構から定時決定と随時改定に関する事例集が出されており、実務の参考にするとよい。

(次号に続く)

保育事業所様向け情報(労務)8月号③

パートタイマーの所定労働時間を見直した際の随時改定の取扱い

このコーナーでは、人事労務管理で頻繁に問題になるポイントを、社労士とその顧問先の総務部長との会話形式で、分かりやすくお伝えします。

総務部長:先月より1日の所定労働時間を6時間から7時間に延ばしたパートタイマーがいます。これにより給与の総支給額が増え、所定労働時間を変更した月から3ヶ月間の給与から判断すると、現在の標準報酬月額との差が2等級以上になりそうです。

社労士 :なるほど。社会保険の随時改定(月額変更)に該当するかということを、気にされ ているのですね。

総務部長:はい。給与は基本給と通勤手当で構成されており、基本給は時給、通勤手当は実際の出勤日数に応じて支給しています。今回、1日の所定労働時間は見直したものの、基本給・通勤手当ともに単価の変更はしていません。随時改定は、固定的賃金の変動があったときに該当すると認識しているのですが、このパートタイマーを対象にしなくてよいか、判断に迷いました。

社労士 :随時改定の要件の1つに「昇給または降給等により固定的賃金に変動があった」というものがあります。ここでの固定的賃金の変動とは、支給額や支給率が決まっているものをいい、日本年金機構は次のようなものが考えられるとしています。

①昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
②給与体系の変更(⽇給から⽉給への変更等)
③⽇給や時間給の基礎単価(⽇当、単価)の変更
④請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
⑤住宅⼿当、役付⼿当等の固定的な⼿当の追加、⽀給額の変更

総務部長:今回のパートタイマーはいずれにも該当しないように感じます。

社労士 :確かにそう感じられるかもしれませんが、日本年金機構は「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」を出しており、「時給単価の変動はないが、契約時間が変わった場合、固定的賃金の変動に該当するため、随時改定の対象となる」としています。

総務部長:ということは、今回のパートタイマーも随時改定の対象となるということですね。

社労士 :はい。随時改定となるかはすべての要件から判断することになりますが、少なくとも随時改定の対象になるかを確認すべきパートタイマーになります。

総務部長:承知しました。確認するようにします。ありがとうございました。

【ワンポイントアドバイス】
1. 随時改定における固定的賃金の変動とは、昇給や降給のほか、給与体系の変更なども含まれる。
2. 所定労働時間の変更も随時改定における固定的賃金の変動に含まれる。
3. 日本年金機構から定時決定と随時改定に関する事例集が出されており、実務の参考にするとよい。

(次号に続く)

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