コラム
年次有給休暇の取得義務化に関する実務上の注意点
働き方改革関連法が順次施行されることに伴い、4月から年10日以上の年次有給休暇
(以下、「年休」という)が付与される従業員について、会社は年5日の年休を確実に
取得させることが義務となります。この年休の取得義務化に関する通達が、昨年12月に
厚生労働省より発出されたことから、実務上の注意点を確認しておきましょう。
1.取得日の指定と就業規則の変更
年休の取得義務化により、会社は年5日の年休について、従業員に取得を希望する時季を
聞き、その希望を尊重しつつ取得日を指定し、取得させる必要があります。ただし、従業員
が自ら取得した日数や労使協定による計画的付与で取得した日数(いずれも取得する予定
の日数を含む)はこの5日から差し引くことができます。
なお、今回新設された使用者による時季指定を行う際には、就業規則に時季指定の対象
となる労働者の範囲や時季指定の方法などを記載する必要がありますので、就業規則の変
更を忘れずに行うようにしましょう。
2.取得義務化の対象者
今回の取得義務化の対象者には、管理監督者や年10日以上の年休が付与されるパートタ
イマーも含まれます。また、年度の途中に育児休業等から復帰した従業員も対象者となる
ため、復帰後に年5日を取得させる必要があります。ただし、復帰した日によっては、年休
を取得させることとなる残りの期間の労働日数が、会社が取得日の指定を行う必要のある
年休の残日数より少なく、5日を取得させることが不可能なこともあり、このような場合は
対象になりません。
3.年5日の対象となる年休の単位
年休は、1日単位で取得することが原則ですが、通達で半日単位での取得も認められてい
ます。また、労使協定を締結することで時間単位での取得も認められています。今回の取
得義務化では、半日単位の年休については、取得義務化となる5日から差し引くことが認め
られます。これに対し、時間単位の年休については、会社が取得日を指定する年休に含め
ることはできず、従業員が自ら取得したときであっても、取得義務化となる5日から差し引
くことはできません。
既に時間単位の年休の制度を導入している会社はもちろんのこと、年休の取得率を向上
させるため、より柔軟に取得できる時間単位の年休の導入を検討する会社も、導入前にこ
の点を押さえておきましょう。
年休の取得義務化では、従業員に確実に年休を取得させる必要があります。仮に、会社が
指定した取得日に、従業員が取得を希望せず勝手に勤務をするというケースも想定されます。
その場合は、その日について年休を取得したとは判断されません。その結果、年5日の年休
を取得しない従業員が発生したとしても、法違反の指摘を免れることはできません。罰則が
定められた制度であり、法律の施行が4月に迫っていることから、対応に向けてお困りのこ
とがあるときには、当事務所までお気軽にご相談ください。
(次号に続く)
今年10月開始の「新たな処遇改善加算」の最新情報及び注意点について確認しておきましょう
新たな処遇改善加算の名称が「特定処遇改善加算」に決定
「来年10月の増税実行のタイミングに合わせて、10年以上の介護福祉士の給与を月8万円程度
引き上げる財源を準備する」そんな情報が歪曲解釈され、今なお業界を大きく揺るがせている、
新たな処遇改善施策。2019年2月13日に開催された第168回社会保障審議会介護給付費分科会に
おいて、その施策の名称は“特定処遇改善加算”(以降、新加算と表記)となることが公表され
ました。今回のニュースレターではこの新加算に関する現在の最新情報を確認すると共に、
現時点で考えられる代表的な注意点・懸念点について確認してまいります。
「特定処遇改善加算」新たになった加算率
それでは、早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは、特定処遇改善加算を取得できる
事業者の前提条件についてです。
(こちらは2018年12月に公表された情報です)
【新加算(特定処遇改善加算)の取得要件】
1)現⾏の介護職員処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得していること
2)介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を⾏っていること
3)介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた⾒える化を⾏っていること
現行の処遇改善加算取得事業者の大多数は(Ⅰ)から(Ⅲ)を取得されていることを含め、上記3点の取得条件はそれほど高いハードルにはならないのではないかと思われます。続いては、各サービスにおける加算率についてです(下記)。
((介護予防)訪問看護 、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)福祉用具貸与、
特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導、居宅介護支援、介護予防支援は
対象外)
※第168回社会保障審議会介護給付費分科会資料より抜粋
「新加算I」を算定するためには、「サービス提供体制強化加算(通所介護など)」「特定事業所
加算(訪問介護など)」「日常生活継続支援加算(特養など)」「入居継続支援加算(特定施設
など)」のいずれかを取得していることが要件となります。
ただ、それらの加算さえ取得していれば無条件に新加算Ⅰの取得がOK、ということではなく、
例えばサービス提供体制強化加算の場合は最も高い区分(加算I イ)のみが新加算Ⅰの対象と
なることや、特定事業所加算についても介護福祉士の割合など従事者要件のある区分しか
認められないことには注意が必要です。
事業者としては今回の加算率を参照しながら、上記に挙げた各種体制加算を現状において
取得していない場合の対応策について検討される必要があるのではないでしょうか。
(事業所内の配分方法については前々回で触れさせていただきましたので、ここでは割愛
させていただきます)
「特定処遇改善加算算」施行に伴う懸念点・注意点
以上、新加算に対する現時点での公表内容について簡単に触れてまいりました。続いては様々な
介護経営者と議論を行う中、この新加算の実行に伴い、多くの方々が懸念されていた点について
触れさせていただきたく思います(大きくは4点)。
【懸念その1】
「経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)」の多くの方が、「自分は月8万給与が上がる」と勘違いしてしまっている可能性が高い。
冗談のように聞こえるかもしれませんが、上記のように思い込んでいる介護職員の方々が
多いことに本当に驚かされます。原因は、「国からの発信の表現方法」に在ることは明らかなのですが、「10月から月8万円給料が上がる」と思い込んでいる職員の方々に、「全員が8万円上がる訳ではない」と説明するのは彼ら・彼女らの期待を裏切ることにつながる可能性もあり(勿論、経営者の方々の責任ではありませんが)、下手をするとそれを理由にモチベーションを下げてしまう方が出てくるかもしれません。
他方、前述の加算率を見る限り、事業者によっては月8万円の待遇改善など「そもそも無理」という場合もあるように思われます(特に小規模の事業所で、“経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)”を複数抱えている場合等)。経営者としては先ず、新加算を取得することで得られる自社の加算額を把握すると共に、(全員の月8万円上乗せは難しい、ということについて)伝えるタイミングや説明方法も含め、慎重な対応が必要となる場合もあるでしょう。
次に、2点目の懸念点についてです。
【懸念その2】
配分方法によっては、組織内の不満が高まる可能性も考えられる。
今回の加算を取得する場合、経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)の中に、「月額8万円の処遇改善となる者」又は「改善後の賃金が年収440万円(役職者を除く全産業平均賃金)以上となる者」を最低でも一人は設定する必要があります。そうなると、組織の中で「あの人は“月額8万円の上乗せ”或いは“年収440万円以上”の待遇改善となったのに、なんで私はそうならないの?」という不満が生じる可能性も十分に考えられ、上記同様、モチベーションの低下や、場合によっては不満を感じた方々の“退職”という最悪の事態も招きかねないことも考えられるのではないでしょうか。
続いて3点目の懸念点についてです。
【懸念その3】
同一地域内で、人材の流動化(=経験・技能がある方々の引き抜き)が促進される可能性も考えられる。
今回の新加算に伴い、たとえば経営体力を有する法人(例えば、比較的大規模の法人)などは、経験・技能のある介護職員(=10年以上のキャリアを持つ介護福祉士)を確保することを目的に、「我が社に転職してくれれば、該当される方は全て、“月額8万円”給与を上乗せ支給しますよ」というメッセージを戦略的に発信してくる可能性もなくはないかもしれません。そうなると、特に小規模事業者等においては人材流出が促進される可能性も考えられ、ますます厳しい経営を余儀なくされる事業者も出てきてしまう、ということも考えられるのではないでしょうか。
それでは懸念点の最後、4点目についてです。
【懸念その4】
他職種の方(看護職員やケアマネ、生活相談員)の中から「介護職に戻してほしい」という要望が出てくるかもしれない。
現時点においても介護職員の待遇は生活相談員やケアマネージャー等、異なる専門職のそれらに肉迫してきているケースも少なくありません。そのような中、今回の新加算が更に上乗せされることで、地域・事業者によっては待遇の“逆転現象”が発生するかもしれず(=ケアマネや生活相談員等の専門職より“経験・技能のある介護職員”の給与が高くなる)、場合によっては10年以上の介護職経験を持ち、かつ、介護福祉士資格を有しているケアマネージャーや生活相談員から「介護職に戻りたい」或いは「給与をもっと上げて欲しい」という要望が出てくる可能性も考えられるかもしれません。
冷静かつ早めの思考と準備を
以上、現時点での最新情報、及び事業者が感じられている懸念点の代表例についてお伝えしてまいりました。更なる詳細情報が今年度末までに発出されることを含め、今後も引き続きの情報収集が必要となる「特定処遇改善加算」ですが、少し考えただけでも様々留意しなければならない点が見えてくる等、事業者にとっては正に“諸刃の剣”的な施策であると言えなくはないのかもしれません。経営者としては特定処遇改善加算取得後のメリット・デメリットを自社の現状に合わせて具体的に整理しつつ、どのように対応していくか?について、早め早めに頭を働かせておく&準備を進めていくことが重要だと言えるでしょう。私たちも今後、引き続きの情報収集を含め、新たな視点が得られ次第、皆様に向けて発信してまいります。
※上記内容の参照先URLはこちら
↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000202420_00014.html
(次号に続く)
2021年の介護保険制度改正に向けて国は動き始めました。
以下、今回の第75回社会保障審議会介護保険部会資料についての記事を
ご紹介します。
厚生労働省は25日に社会保障審議会・介護保険部会を開き、2021年度の制度改正に向けた議論を開始した。年内に大枠の方向性を固め、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する。
最重要の争点は大きく2つだ。まずは利用者の自己負担。2割、3割の所得ラインを下げて対象を広げるか、居宅介護支援のケアプラン作りでも新たに徴収していくかが俎上に載る。もう1つは地域支援事業。介護予防をいかに推進していくかも大事だが、より多くのサービスを総合事業へ移すか否かがやはり核心だ。これらが利用者・事業者に与える影響はかなり大きい。どれも財務省が繰り返し注文してきた経緯があり、政府も審議会で議題とすることを既に決めている。
「現役世代の負担は既に限界に達している」「今回こそ踏み込んだ施策を講じて欲しい」。
この日の会合では、日本経団連や日本商工会議所など経済団体を代表して参加している委員から、膨らみ続ける給付費を抑制する手を打つよう迫る意見が続出した。経済界はこの分野で基本的に財務省の考えを支持している。40歳から64歳の保険料を多く負担している立場で発言力は強い。
もっとも、一部の現場の関係者や利用者の団体などは過度な抑制策に強く反対する見通しだ。年の瀬が近づくにつれて対立は激化していき、最終的な判断は政治サイドに委ねられることになる。意思決定のプロセスが動き出すのは夏の参院選の後。国政選挙はしばらくない、という環境下で政府・与党が思い切った結論を出す可能性も否定できない。
重要課題に「2025年以降」
介護保険の改革は3年に1度。前回は2018年度で次は2021年度だ。具体策は2つの審議会で論じていくのが慣例となっている。介護給付費分科会と介護保険部会。前者は各サービスの単価や運営基準など、主として報酬改定をテーマとする。一方、後者が主に扱うのは法改正・制度改正だ。ここで形成されたコンセンサスが法案となり、翌年の通常国会で審議される。
厚労省はこの日の介護保険部会で、これから議論を進めていくうえで重視していく視点を提示。地域包括ケアシステムの推進、制度の持続可能性の確保といったお馴染みの価値観に加えて、新たに「2025年以降の現役世代急減への対応」も打ち出した。労働力の制約が強まる中でサービスをどう確保するか、社会の活力をどう維持するかを重大な課題と位置付けている。
主な検討事項(案)について
これから取り上げられていく論点は非常に多い。部会のスコープは報酬を除いた介護保険の全域に及ぶ。厚労省は共通点の多い横断的なテーマとして、
○ 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
○ 保険者機能の強化(地域保険としての地域のつながり機能・マネジメント機能の強化)
○ 地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
○ 認知症「共生」「予防」の推進
○ 持続可能な制度の再構築・介護現場の革新
の5つをあげた。
今後、夏までは概ね月1回のペースでこの横断的なテーマを中心に意見交換を行っていく。各論に入るのは秋以降の予定。この日の会合では、深刻な人手不足の解消につなげる新たな対策の検討を求める意見が多くあがった。
「スタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」
前号に引き続き、テーマは「ワークライフバランス」です。今回は、「導入に向けた取り組みについて」から始めます。
1、導入に向けた取り組み
事業所の経営者の方々と話していると、こんな声をよく聞きます。「大切な取り組みであることはわかっているけども、ただでさえ人手不足なのにそのうえ、残業削減、有給休暇取得促進によって現場が回っていくのか、サービスの低下につながるのではないか」。初めての取り組みゆえに、このような心配はよくわかります。しかし、取り組まないことへのデメリット、取り組むことへのメリットを考えて判断していくことが大切なのではないでしょうか。介護業界を取りまく環境の変化への対応と、人材の確保(採用と定着)、今後の法人イメージなどについて、それぞれに影響を洗い出したうえで考えてみてはいかがでしょうか。まずは、出来ることからスタートすることが大切だと思います。
それでは、その取り組み方について、大まかなステップについて説明させていただきます。
(1) ステップ1
まずは、ワークライフバランスや働き方改革への取り組みについて、その目的を明確にして、それを社員に伝えていくことです。例えば、なぜワークライフバランスや働き方改革が必要なのか、なぜわが社はとり組むのか、どんなメリットがあるのか等をしっかり伝え、理解浸透を深めることが必要です。
例えば、ワークライフバランスを実現するための手段の一つである「ロボット・ICT導入」でも、重要なことは「なぜ導入するのか?」「導入して何を目指すのか?」など目的や目標を含めた「定義づけ」をあらかじめしっかりと行っておくことです。そのうえで導入後の「あるべき姿」を職員間で共有することです。さもないと「面倒だ」「邪魔だ」などの理由で、使用を拒絶されることもあります。ロボット・ICT導入に限らず、「導入の定義づけ」、「あるべき姿」を共有していき、それを実現する為の手段という位置づけで推進することがとても重要です。
(2) ステップ2
意識や風土の醸成から取り組みを始めることです。よく、こんな声を聴きます。育児介護と仕事の両立に向けて制度を整えたが実際には使ってもらえない、または、業務効率化に向けて従業員に「インカム」を持たせてコミュニケーションの円滑化をはかったが、実際にはあまり使用されない。これらは、「制度」から入った失敗例といえるのではないでしょうか。制度を導入して、取り組みを行ったつもりでいるのは上層部だけで、実際にはそのような制度を活用できる「風土」がないと制度は機能しません。言ってみれば、「上」からの指示でスタートしても、「やらされた感」的な印象で取り組む限りそれは長続きしません。社員がその目的と必要性をよく理解し、主体的に取り組めるような状況(組織風土)が必要なのです。
それでは、組織風土の醸成にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。例えば、ある法人では「理念」の共通理解を促進するためにセミナーや研修、ワークショップなどを行い、さらに職員満足度調査を行ってアンケート調査やヒアリング、座談会などを行っている組織もあります。それらに共通している取り組みは、「一方通行ではないコミュニケーションの充実化」です。職場におけるコミュニケーションの充実化が最も重要であると言われる経営者や管理者の方々は非常に多いのですが、それを具体的な取り組みとして、どれだけの時間と人的パワーを捻出しているでしょうか?大事だとわかっていても、社員との面談も行えていないという職場も多いのではないかと思います。熱心に取り組む法人のなかには、毎月1回上司との面談を行い、管理者に向けては施設長や理事長とも定期的に面談する機会を設けているところもあります。なんとこの介護施設は延べで年間4000回の面談を設けているそうです。また別の法人では社員の意見に耳を傾け、その中で貴重な意見があれば、経営にも取り込むといった真摯な姿勢、また面談だけではなく、説明会・研修会・小グループでの懇談会などを通じて、社員全員の理解と共有化を推進しているところもあります。そのような取り組みを継続して行っていくことで、徐々に良好な風土が醸成されていき、その結果として、働き方改革やワークラーフバランスなどの「新しい取り組み」に対しても前向きな姿勢で「やってみよう」という雰囲気が生まれ、自主的な取り組みにつながっていくのではないかと思います。
次号に続きます。
「介護スタッフが働き続けられるワークライフバランス支援の仕組みづくり」
前号に引き続き、テーマは「ワークライフバランス」です。今回は、「導入に向けた取り組みについて」から始めます。
1、導入に向けた取り組み
事業所の経営者の方々と話していると、こんな声をよく聞きます。「大切な取り組みであることはわかっているけども、ただでさえ人手不足なのにそのうえ、残業削減、有給休暇取得促進によって現場が回っていくのか、サービスの低下につながるのではないか」。初めての取り組みゆえに、このような心配はよくわかります。しかし、取り組まないことへのデメリット、取り組むことへのメリットを考えて判断していくことが大切なのではないでしょうか。介護業界を取りまく環境の変化への対応と、人材の確保(採用と定着)、今後の法人イメージなどについて、それぞれに影響を洗い出したうえで考えてみてはいかがでしょうか。まずは、出来ることからスタートすることが大切だと思います。
それでは、その取り組み方について、大まかなステップについて説明させていただきます。
(1) ステップ1
まずは、ワークライフバランスや働き方改革への取り組みについて、その目的を明確にして、それを社員に伝えていくことです。例えば、なぜワークライフバランスや働き方改革が必要なのか、なぜわが社はとり組むのか、どんなメリットがあるのか等をしっかり伝え、理解浸透を深めることが必要です。
例えば、ワークライフバランスを実現するための手段の一つである「ロボット・ICT導入」でも、重要なことは「なぜ導入するのか?」「導入して何を目指すのか?」など目的や目標を含めた「定義づけ」をあらかじめしっかりと行っておくことです。そのうえで導入後の「あるべき姿」を職員間で共有することです。さもないと「面倒だ」「邪魔だ」などの理由で、使用を拒絶されることもあります。ロボット・ICT導入に限らず、「導入の定義づけ」、「あるべき姿」を共有していき、それを実現する為の手段という位置づけで推進することがとても重要です。
(2) ステップ2
意識や風土の醸成から取り組みを始めることです。よく、こんな声を聴きます。育児介護と仕事の両立に向けて制度を整えたが実際には使ってもらえない、または、業務効率化に向けて従業員に「インカム」を持たせてコミュニケーションの円滑化をはかったが、実際にはあまり使用されない。これらは、「制度」から入った失敗例といえるのではないでしょうか。制度を導入して、取り組みを行ったつもりでいるのは上層部だけで、実際にはそのような制度を活用できる「風土」がないと制度は機能しません。言ってみれば、「上」からの指示でスタートしても、「やらされた感」的な印象で取り組む限りそれは長続きしません。社員がその目的と必要性をよく理解し、主体
的に取り組めるような状況(組織風土)が必要なのです。
それでは、組織風土の醸成にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。例えば、ある法人では「理念」の共通理解を促進するためにセミナーや研修、ワークショップなどを行い、さらに職員満足度調査を行ってアンケート調査やヒアリング、座談会などを行っている組織もあります。それらに共通している取り組みは、「一方通行ではないコミュニケーションの充実化」です。職場におけるコミュニケーションの充実化が最も重要であると言われる経営者や管理者の方々は非常に多いのですが、それを具体的な取り組みとして、どれだけの時間と人的パワーを捻出しているでしょうか?大事だとわかっていても、社員との面談も行えていないという職場も多いのではないかと思います。熱心に取り組む法人のなかには、毎月1回上司との面談を行い、管理者に向けては施設長や理事長とも定期的に面談する機会を設けているところもあります。なんとこの介護施設は延べで年間4000回の面談を設けているそうです。また別の法人では社員の意見に耳を傾け、その中で貴重な意見があれば、経営にも取り込むといった真摯な姿勢、また面談だけではなく、説明会・研修会・小グループでの懇談会などを通じて、社員全員の理解と共有化を推進しているところもあります。そのような取り組みを継続して行っていくことで、徐々に良好な風土が醸成されていき、その結果として、働き方改革やワークラーフバランスなどの「新しい取り組み」に対しても前向きな姿勢で「やってみよう」という雰囲気が生まれ、自主的な取り組みにつながっていくのではないかと思います。
次号に続きます。
平成31年度厚労省予算案 介護経営に影響を及ぼす内容について理解しておきましょう。
厚生労働省内の各部局の方針が明らかに
2019年1月18日に開催された「全国厚生労働関係部局長会議」。そこでは各部局における来年度の予算案があらためて示されており、そこから読み取れる“注力領域”は今後、介護事業者の経営にも様々な影響を及ぼしてくるものと思われます。今回のニュースレターでは老健局及び社会・援護局の資料を中心に、特に介護業界として注目すべきと思われる6点の事業・予算案についてご紹介・確認させていただきます。
「平成31年度厚生労働省老健局予算(案)」おさえておくべきポイントとは
では、早速、確認してまいりましょう。先ずは1点目の事業・予算案についてです。
【その1】新しい包括的支援事業(217億円(平成30年度) → 267億円(平成31年度)+50億円予算増)
全ての市町村で、以下の①から④までの事業を実施。
①認知症施策の推進 認知症初期集中支援チームの関与による認知症の早期診断・早期対応や認知症地域支援推進員による相談対応、社会参加活動の体制整備、認知症カフェの設置や認知症の本人が集う取組を推進する。
②生活支援の充実・強化 生活支援コーディネーターの配置や協議体の設置等により、地域における生活支援の担い手やサービスの開発等を 行い、高齢者の社会参加及び生活支援の充実を推進する。
③在宅医療・介護連携の推進 地域の医療・介護関係者による会議の開催、在宅医療・介護関係者の研修等を行い、在宅医療と介護サービスを一体的 に提供する体制の構築を推進する。
④地域ケア会議の開催 地域包括支援センター等において、多職種協働による個別事例の検討等を行い、地域のネットワーク構築、ケアマネジメント支援、地域課題の把握等を推進する。
⇒中でも注目すべきは、“①認知症施策”において新たに出てきた「社会参加活動の体制整備」でしょう。
「認知症を有する人をはじめとする高齢者の中には、これまでの経験等を生かして活躍したいとの声が少なくない。地域において「生きがい」をもった生活や認知症予防等の介護予防に資するよう、認知症地域支援推進員の取組として、新たに社会参加活動のための体制整備を地域支援事業に位置づけ、その取組を支援する」とされています。
具体的な取り組み例、及び主な経費助成内容として挙げられているのは下記の通りです。
【具体的な取り組み例】
・市町村が適当と認めた者による農業、商品の製造・販売、食堂の運営、地域活動等の社会参加に対する支援
・専門家を派遣する等、利用者に対する技術・専門知識の指導・助言
・マルシェ等イベントの開催支援
・社会参加活動を行うために必要な農業生産者や企業等とのマッチング支援
・好事例を収集し、関係者で共有するなどの普及活動
【主な経費助成例】
・作業実施の指導・訓練に関する人件費(農家等への謝礼)や介護支援が必要な場合の人件費
・作業実施のための諸経費(器具の購入)やイベント(マルシェ)の開催
・商品売上げは、支援の対象者である高齢者の有償ボランティアの謝金等として事業費に充てつつ、不足部分を支援
「人生100年時代」が叫ばれ、高齢者に対しても“はたらく(≒社会参加)”というキーワードの重要性が高まる中、自社の今後のサービス提供にも、そのコンセプトを取り込もうとされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「1市町村あたり、3カ所の実施を想定(財源の範囲内で1市町村当たり、最大5カ所まで)」ということですので、活用を検討されたい事業者の方は、早めに自治体にアプローチを試みておくことも必要かもしれません。
では、続いて、2点目についてです。
【その2】介護施設等の整備(423億円(平成30年度) → 467億円(平成31年度)+44億円予算増)
地域密着型特別養護老人ホーム等の地域密着型サービス施設の整備に必要な経費や、介護施設(広域型を含む)の開設 準備等に必要な経費、特養多床室のプライバシー保護のための改修等に必要な経費の助成を行うとともに、地域のニーズ等に適したメニューの充実を行う。
⇒特に特養多床室の改修を検討されている社会福祉法人様には朗報かもしれません。続いて3点目についてです。
【その3】防災・減災対策の推進(19億円(平成30年度)→ 64億円(平成31年度)+45億円予算増)
介護施設等における防災・減災対策を推進するため、スプリンクラーの整備のほか、「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」を踏まえ、施設の耐震化整備等、倒壊の危険性のあるブロック塀の改修等、大規模停電時に医療的配慮が必要な入所者等の安全を確保するための非常用自家発電設備の整備に必要な経費を補助する。
⇒昨年に起こった天災等の被害を踏まえ、施設の防災・減災対策強化を検討されている事業者様には要注目の情報と言えるのではないでしょうか。続いて4点目についてです。
【その4】業務改善支援事業及びICT導入支援事業(予算額不詳・平成31年度新設)
【業務改善支援事業】
生産性向上ガイドラインに基づき業務改善に取り組む介護事業所に対して、第三者がその取組を支援するための費用の一部を助成する。
(対象事業所)
生産性向上ガイドライン(平成30年度作成)に基づき、事業所自らの業務改善に向けた取組を、本事業により後押しすることで、地域全体における取組の拡大にも資すると都道府県又は市町村が認める介護事業所。
※例えば、人材不足に関連した課題を解決することが急務である事業所、団体を通じた取組の横展開が期待できる事業所など
(手続き等)
介護事業所は業務改善計画や市町村の意見書(市町村指定の場合)を添付の上申請する。事業実施後、都道府県へ改善成果の報告を行うetc
【ICT導入支援事業】
介護分野におけるICT化を抜本的に進めるため、ICTを活用して介護記録から請求業務までが一気通貫で行うことができるよう、介護ソフト及びタブレット端末等に係る購入費用の一部を助成する。
(要件)
介護ソフトは介護記録、情報共有、請求業務が一気通貫であることetc
⇒業務改善支援事業・ICT導入支援事業、共に「(1事業所あたり)対象経費の1/2以内(上限30万円)」が助成される案となっています。“1事業所あたり”ということを考えれば、事業者によっては有益に活用できる可能性もあるのではないでしょうか。続いて5点目についてです。
【その5】現任職員キャリアアップ支援事業(予算額不詳・平成31年度新設)
研修実施主体が介護施設や介護事業所に赴き実施する出前研修(初任者研修、実務者研修等)や、研修受講者が事業所近隣で集合して行う研修を実施するための経費に対し助成する(他の事業で助成される経費を除く)。
⇒「代替要員の確保が困難なため、外部研修等への参加が難しい」と悩まれている事業者の方にとっては要注目の内容かもしれません。
それでは最後、6点目についてです。
【その6】外国人介護人材受入環境整備事業(9億円(平成31年度新設))
新たな在留資格「特定技能」の創設等により、今後増加が見込まれる外国人介護人材が国内の介護現場において円滑に就労・定着できるよう、以下のような取組を通じて、その受入環境の整備を推進する。
- 介護分野における特定技能1号外国人の送出しを行う外国において、介護の技能水準を評価するための試験等を実施。
- 介護技能の向上のための研修等の実施に対する支援。
- 介護の日本語学習を自律的に行うための環境整備の推進に対する支援。
- 介護業務の悩み等に関する相談支援等を実施。
(補助率)
定額補助
(実施主体)
- →試験実施機関
- →都道府県(間接補助先:集合研修実施施設等)
- →民間団体(公募により選定)
- →民間団体(公募により選定)
⇒海外人材の積極雇用をお考えになられている事業者は、頭に置いておいたほうが良い情報と言えそうです。
自社に関連しそうな項目・内容については更に深掘りを
以上、次年度予算案から介護事業者に関連が深そうなものを抜粋させていただきました。繰り返しになりますが、年度予算において新設、もしくは予算増額が行われる各項目は、厚生労働省として整備・充実を進めていきたいと考えている内容と捉えることが出来るでしょう。今回のニュースレターでは紙面量の都合上、ポイントをご紹介することしか出来ませんでしたが、関心があるものについては是非、ご自身で更に深く調べてみることをおススメする次第です。我々としても今後、より有益な情報・より有効な打ち手が見え次第、皆様に積極的にお伝えしてまいります。
※平成31年度厚生労働省予算案を更に深くお知りになりたい方はこちら
平成30年度 全国厚生労働関係部局長会議資料
(上記内容は老健局、社会・援護局の資料から抜粋しています)
↓
https://www.mhlw.go.jp/topics/2019/01/tp0107-1.html
(来月に続く)
医療機関でみられる人事労務Q&A
『病気による通院のため早く帰る必要が出た正職員への対応』
Q:
優秀な看護師の正職員から、病気の治療のため3 ヶ月の間、月曜日と火曜日は通常よりも
1 時間早く帰りたいという相談がありました。このようなとき、これまではパートタイマーに
転換してもらっていましたが、本人には正職員として勤務を続けたい意向があり、パート
タイマーへの転換を打診すると退職してしまうかもしれません。どのような対応方法が
あるのでしょうか。
A:
所定労働時間に勤務できない職員には、医院が特別に早退を認め、正職員のまま雇用し続ける
方法が考えられます。また、始業・終業時刻を繰り上げるなど1日の労働時間数を
変えないように対応する方法や、早退する日とは別の日に長い時間勤務することが可能であれば、
変形労働時間制を活用する方法があります。
詳細解説:
病気の治療を受けるために時間の制約がある職員を正職員として雇用し続けるには、
次の3 つの方法が考えられます。
1.医院が特別に認めた早退
基本的に雇用契約は所定労働時間を勤務することを前提とするため、早退など所定労働時間を
働くことができないというのは問題です。しかし、医院が治療のためといった理由や期間を
限定し、特別に早退を認めるものの、他の職員とのバランスをとるためにも勤務できない
時間数相当分の賃金を控除して対応する方法がとられることがあります。併せて、通常本人が
行う業務を他の職員が代わって行うこととなるため、他の職員への説明や協力の依頼をした上で
認めることが重要です。
2.時差出勤や休憩・業務内容の変更
準備業務などのために始業・終業時刻を繰り上げ、通常の始業の1 時間前に出勤させ、
1時間早く帰ることができるようにする方法が考えられます。また、休憩時間が法定よりも
長いときには本来休憩時間とされている時間に電話番を任せるなどの業務があれば、
そちらを依頼し、1 日の労働時間数を変えずに希望する時間に帰宅させることができる方法も
考えられます。
3.変形労働時間制の活用
例えば、月曜日と火曜日は勤務時間を1 時間短くし、残りの曜日のうち2 日、1 時間長く
勤務をしても差し支えないようであれば、このような働き方をさせることが可能です。
このとき、1 日8 時間を超える日があれば、変形労働時間制を適用しておく必要があります。
継続して働き続けることができる環境を整備することで、医院も人材確保や人材流出の
防止につながるため、対応可能な範囲での労働条件の変更を検討したいものです。
また、治療が予定よりも長期にわたる可能性もあるため、条件変更の措置をいつまで認めるのか
といった制度の整備も検討しておくとよいでしょう。
(来月に続く)
福祉施設でみられる人事労務Q&A
『病気による通院のため早く帰る必要が出た正職員への対応』
Q:
優秀な看護師の正職員から、病気の治療のため3 ヶ月の間、月曜日と火曜日は通常よりも
1 時間早く帰りたいという相談がありました。このようなとき、これまではパートタイマーに
転換してもらっていましたが、本人には正職員として勤務を続けたい意向があり、パート
タイマーへの転換を打診すると退職してしまうかもしれません。どのような対応方法が
あるのでしょうか。
A:
所定労働時間に勤務できない職員には、施設が特別に早退を認め、正職員のまま
雇用し続ける方法が考えられます。また、始業・終業時刻を繰り上げるなど1日の
労働時間数を変えないように対応する方法や、早退する日とは別の日に長い時間
勤務することが可能であれば、変形労働時間制を活用する方法があります。
詳細説明:
病気の治療を受けるために時間の制約がある職員を正職員として雇用し続けるには、
次の3 つの方法が考えられます。
1.施設が特別に認めた早退
基本的に雇用契約は所定労働時間を勤務することを前提とするため、早退など
所定労働時間を働くことができないというのは問題です。しかし、施設が治療のため
といった理由や期間を限定し、特別に早退を認めるものの、他の職員とのバランスを
とるためにも勤務できない時間数相当分の賃金を控除して対応する方法がとられることが
あります。併せて、通常本人が行う業務を他の職員が代わって行うこととなるため、
他の職員への説明や協力の依頼をした上で認めることが重要です。
2.時差出勤や休憩・業務内容の変更
準備業務などのために始業・終業時刻を繰り上げ、通常の始業の1 時間前に出勤させ、
1時間早く帰ることができるようにする方法が考えられます。また、休憩時間が法定よりも
長いときには本来休憩時間とされている時間に電話番を任せるなどの業務があれば、
そちらを依頼し、1 日の労働時間数を変えずに希望する時間に帰宅させることができる方法も
考えられます。
3.変形労働時間制の活用
例えば、月曜日と火曜日は勤務時間を1 時間短くし、残りの曜日のうち2 日、1 時間長く
勤務をしても差し支えないようであれば、このような働き方をさせることが可能です。
このとき、1 日8 時間を超える日があれば、変形労働時間制を適用しておく必要があります。
継続して働き続けることができる環境を整備することで、施設も人材確保や人材流出の
防止につながるため、対応可能な範囲での労働条件の変更を検討したいものです。
また、治療が予定よりも長期にわたる可能性もあるため、条件変更の措置をいつまで認めるのか
といった制度の整備も検討しておくとよいでしょう。
(来月号に続く)
2018 年の福祉施設等における賃金引き上げ割合
他の産業と同様に、福祉介護業界においても人材不足が問題となっています。
そのため福祉施設等においても、人材採用や定着のために賃金の引き上げ等が行われています。
ここでは、2018年11 月に発表された調査結果※から、2018 年の福祉施設等における賃金の
引き上げ状況をみていきます。
賃金引き上げ割合は93.0%に
上記調査結果から、福祉施設等(以下、医療,福祉)の1 ヶ月当たりの1 人平均賃金額(以下、
平均賃金)を引き上げた・引き上げる企業(以下、引き上げ企業)の割合は表1 のとおりです。
2018 年の引き上げ企業の割合は93.0%となりました。2017 年より1.3 ポイントの減少ですが、
回答企業全体(以下、全体)の割合よりも、医療,福祉の方が引き上げ企業の割合が高く
なっています。
なお、医療,福祉で2018 年に賃金引き下げを実施した企業はなく、賃金改定を実施しない
割合は、4.3%(全体は5.9%)となっています。
改定額は3,000 円台に
次に、医療,福祉の平均賃金の改定額をまとめると、表2 のとおりです。
2018 年の改定額は3,632 円で、2017 年よりも901 円の減少となりました。2018 年の全体の
改定額は5,675 円で、医療,福祉よりも2,000円程度高くなっていることがわかります。
改定率は 2%を割り込む
最後に表3 の平均賃金の改定率をみると、医療,福祉の 2018 年は1.7%で、2017 年の
2.1%から0.4 ポイント減少しました。
なお、全体の改定率は2017、18 年とも2.0%となっています。
この結果をみる限り、医療,福祉は、全体よりも平均賃金引き上げ企業の割合は高いものの、
改定額と改定率が低くなっています。ここでの結果は比較的規模の大きな企業のものですが、
新年度に向けて賃金の改定を検討している福祉施設等では、これらをひとつの目安にしても
よいかもしれません。
※厚生労働省「平成30 年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」
会社組織の民営企業を対象に、産業別及び企業規模別に3,543 社を抽出して2018 年8 月に
実施した調査です。有効回答企業数は1,779社、有効回答率は50.2%です。
なお、ここでの結果は常用労働者100 人以上の企業(調査客体企業数は3,212 社、有効回答
企業数は1,578社)について集計したものです。詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/18/index.html
(次号に続く)
医療機関等における育児・介護休業制度の導入状況
働きやすい環境を整備することは、人材の採用や定着のために重要です。
ここでは、2018 年12月に発表された調査結果※から、医療機関等での育児・介護休業制度の
導入状況などをみていきます。
育児・介護休業制度規定の有無
上記調査結果から、2017 年10 月時点における医療機関等(以下、医療,福祉)における
育児休業と介護休業制度の規定の有無をまとめると表1 のとおりです。
医療,福祉の事業所で育児休業制度の規定がある割合は80.7%、介護休業制度の規定が
ある割合は77.3%となりました。いずれも回答事業所全体(以下、全体)よりも高い
割合です。
育児休業期間は法定どおりが50%程度
育児休業制度の規定がある医療,福祉の事業所を、育児休業が可能な最長期間別に
まとめた割合が、表2 のとおりです。
2 歳(法定どおり)とする割合が52.0%と最も高くなりました。全体と比較すると、
2 歳を超え3 歳未満の割合が10.3%と高くなっていることがわかります。
介護休業期間は法定どおりが90%超
介護休業制度の規定がある医療,福祉の事業所では、介護休業期間の最長限度を
定めている割合が97.7%となりました。残りの2.3%については期間の制限はないと
しています。また、最長限度の期間別割合をまとめると表3 のとおりです。
通算して93 日(法定どおり)の割合が92.9%で最も高くなりました。全体と比較すると、
法定どおりの割合が高く、1 年とする割合が低くなっているのが特徴といえます。
育児・介護休業制度以外にも、この調査結果によると、育児や介護を理由に退職した
職員の再雇用制度を導入している医療,福祉の事業所は30%程度あります。
自院で可能な範囲で、必要な制度の充実を検討してみてはいかがでしょうか。
※厚生労働省「平成29 年度雇用均等基本調査」
産業別に常用労働者10 人以上を雇用している民営企業、常用労働者5 人以上を雇用している民営事業所から抽出した企業や事業所を対象
とした調査です。ここでのデータは事業所を対象とした結果です。
詳細は次のURL のページからご確認ください。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450281&tstat=000001051898&cycle=8&tclass1=000001122535&tclass2=000001122537&second2=1
(次号続く)