コラム
A、「何をどうすれば、いい評価が得られるのか」。被評価者からすれば当然知りたい内容ですし、それが法人の求めている職員像につながることになるわけです。ところが、評価者側の都合で、もしくは評価者側の裁量の幅をできるだけ大きくできることを目的に、評価項目を抽象的な表現にしたり、評価点のつけ方などがブラックボックスにしているケースがあります。この場合、「求められる職員像」が明確にはならないので、目標自体に具体性が欠けることになります。
弊社が推奨する職能評価や行動評価は、事前に評価される内容が具体的に分かっているだけではなく、点数のつけ方もオープンにしているので、透明性が担保されるだけでなく、各職員においては自己成長の実感が可能になります。評価制度が本当の意味で職員を育てるための制度にするには、次に述べる視点がとても大切になります。
- 組織全体のレベルアップを図ることを目的とする。
評価によって優秀な職員を発見することも大切ですが、それよりも先に行わなければならないことは、普通の職員の能力を高めることによって組織全体のサービスの質を上げることなのです。一人の優秀な職員のヤル気を高めるよりも、多くを占める普通の職員のヤル気を高めることの方が大切であることを理解してください。
- 部署別、職種別、そして等級別に「期待される職員の努力」を具体的に明記する。
- はじめから「どんな努力をすれば良い評価(SまたはA評価)になるか」を明示しておく。この内容が「期待される職員像」となり、全ての職員に、期の初めから「こんな努力をしてほしい」と明示する。
評価は学校で行われるような試験や通信簿ではありません。学校の教育では、教科書に基づいて教えていき、期末または年度末に試験をして結果だけを測定し、評価すればいいのですが、職場ではそうではなく、どんな問題を出すのか(つまりどんな行動を期待しているのか)を初めに明確にしておいて、出来るだけ多くの職員が優秀な成績、つまり5段階評価ならS評価やA評価を取ってもらうようにすることが必要なのです。
その場合、必ず意見として聞こえてくるのが、「良い評価が増えれば、人件費が増加してしまうのでは?」という懸念です。もちろん、評価結果を反映させる処遇の財源(例えば、処遇改善加算)は確保しておきながら、その財源の限度内で分配を行う管理手法は必要になってきます。
私は、法人が園を経営していく上で最も大切な価値観表しているものが、法人理念であると捉えています。多くの園では法人理念を、HP、入園のしおり、パンフレットなどの印刷物をはじめ様々な方法で保護者や職員に周知しています。
ただ、周知はしているものの、どこまで「浸透」しているかというと、なかなか難しいところです。ある園では、職員に理念を改めて尋ねたところ、ほとんどの職員が応えられなかったということをお聞きしています。「浸透」している状態とは、職員が理念の意味を理解し
しそれを日々の実践に活かせる状況を言います。そのような状態にもっていくために経営は、経営理念の周知に努力するだけでなく、それを行動に移せる職員をどれだけ育てることができるのかを日々の活動のかなで考えていく必要があります。
求める職員像を的確な言葉で表現する
保育現場では職員一人一人の自律的な判断、行動が求められます。しかし保育者不足から中途採用の職員やぱーと職員の増加により、法人理念の背景や創立者の思いが継承できていなかったり、これまでの暗黙の前提が成立しなくなっている園もあるでしょう。法人の、園の、保育実践において、拠り所となるものが必要になるのも自然な流れと言えるかもしれません。そこで、私は法人理念を具体的に実現できる「人財」を「求める職員像」として可視化することをご提案しています。法人理念に基づき、どのように行動してほしいのか、どのような人となりであってほしいのかを整理し、的確に表現する言葉で「可視化」し、職員に示すことが重要です。そのための方法はいろいろあると思いますが、当社では、法人理念を
いくつかのキーワードに凝縮し、各キーワードの意味とそれを実現できる行動を職員の発想で具体的にしていきます。例えば、
キーワード:「思いやり」⇒出来ることに手を出すのではなく、見守って、助けが必要な時は、思いやりの気持ちをもち笑顔で、声をかけて手伝っている。
キーワード:「報告・連絡・相談」⇒何を相談したいのか整理し、自分なりの考え方をもって、先輩や同僚に積極的に相談し、アドバイスは素直に受け入れている。
求める職員像が育成指針として活用し、また人事評価に組み入れ定期的に振り返る機会をつくりました
法人理念から「求める職員像」を可視化し、周知と浸透を図っている園長先生にお伺いしました。
先日の職員会議で、園児への声掛けやかかわり方が議題に上がったのですが、中途採用の新人職員の一人から「求める職員像」を根拠にその関わり方の提案が出ました。参加していた職員からは賛同と納得を得ただけでなく、この発言は刺激になったようです。
また、年2回の評価の中に、その実践度合いに関する評価項目を入れて、定期的自己を振返る機会を持っています。いい評価がもらえればモチベーションにもつながっているようです。また上司・部下の間で、現状と今後について話し合う良いコミュニケーションの機会にもなっています。
園としては、引き続き「求める職員像」に基づく職員の働きぶりを承認し、育成に繋げていければと考えています。
Q 上司Aが部下Bに対し、Bが作成した文書の誤字脱字が多くミスが多いとして、業務上の注意指導をしたが、それでも改まらなかったので、再度、前回よりきつく注意したところ、Bは「パワハラです」と言って注意指導を受け入れない、注意指導はどのような場合にパワハラになりますか?
A
パワハラに関し実際に何をすればパワハラになるのか、十分に理解できている方は以外と少ないのではないでしょうか。そのため本来、部下を指導監督する上司が、これはパワハラにあたるのか、などと判断に迷ってしまうこともあると思います。さらに本設問のようにちょっと厳しく注意すると部下から「パワハラだ」などと言われると上司は注意する出来ないのではないかと思ってしまうケースも散見されます。そこで、まずはパワハラに関する基本的な考え方について検討したいと思います。
パワハラにつては、法律上の定義があるわけではありませんが、厚生労働省は「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と定義しています。
つまり注意指導そのものがパワハラにあたるものではなく、注意指導の程度や態様が度を越している場合にはパワハラにあたる可能性があるということになります。裁判上も、注意指導の目的は正当なものであったとしても、感情的になって大きな声を出したり、部下の人間性を否定するかのような表現を用いて叱責した点などは「社会通念上、許容される範囲を超える」としています。
御質問のケースでは、上司は部下の誤字脱字が多いことを、業務を対象にして注意指導を行っていると言えます。しかしながら部下は注意されたにも関わらず改善されないだけでなく、反抗的な態度をとってきたとのことですから、その分厳しく注意するのは当然と言えます。もちろん、先に述べた人格否定を行う、大声で怒鳴るといった注意指導は行き過ぎですが、そうでない限り、上司の注意指導はパワハラとはいえないでしょう。注意指導を行うときには、くれぐれも冷静に行うことが大切です。
生後8カ月の男児が給食後に重体になった新居浜上部のぞみ保育園(愛媛県新居浜市中村2丁目)は5日、同園で会見を開いた。検証委員会が3月25日に報告書をまとめたことを受けた対応。同園を運営する社会福祉法人新居浜社会福祉事業協会の石井孝允理事長は「重大事故を起こし、ご家族に大変な負担をおかけし、あらためておわび申し上げます」などと述べ、報告書で示された提言や課題に早急に取り組むとした。
会見冒頭で石井理事長らが謝罪。報告書に対応した「離乳食や給食に関して国のガイドラインとコミュニケーションの徹底」や「安全管理体制の再構築」、「保護者との連携強化」など五つの再発防止策を示した。
事故の責任を取って石井理事長は来年6月に辞職。事故当時の園長の降格や主任保育士2人の減給など、計8人の処分を明らかにした。
報告書は、同園が男児に刻んだ生のリンゴを食べさせ、加熱するといった国のガイドラインに沿っていなかったと指摘。この点について、「現場の知識が足りなかった」と説明。119番通報の際に指示があった心臓マッサージをしなかったことに関しては「ぐったりした男児を見て現場はパニックになり、指示の声が耳に入らなかった」とした。
検証委は離乳食の提供方法や誤嚥(ごえん)リスクの認識不足など複数の問題点が重なったと結論づけ、保育現場と行政側に再発防止のため計10点の提言をしている。(4月6日朝日新聞デジタル版)
新年度の介護報酬改定では、事業所・施設が運営基準で必ず実施すべきと求められる取り組みが増える。
例えば感染症への対策や虐待防止の措置。昨年度までの経過措置が終わり、委員会の開催や指針の整備、担当者の配置などの義務化が完全適用される。基本的に全てのサービスが対象だ。
こうした取り組みの担当者について、厚生労働省は昨年度末に公表した解釈通知で配置の考え方を明らかにした。
例えば感染対策や虐待防止、褥瘡予防、事故防止、身体拘束の適正化など複数の担当者を兼務できると説明。既存の「専任」の記載をなくし、「同じ事業所・施設内での複数担当の兼務、他の事業所・施設との担当の兼務について、各担当者としての職務に支障がなければ差し支えない」と追記した。
あわせて、「日常的に兼務先の事業所・施設の業務に従事しており、利用者や現場の状況を適切に把握しているなど、各担当者としての職務を遂行するうえで支障がないと考えられる人を選任すること」と要請。感染対策や褥瘡予防などの担当者について、「看護師が望ましい」との認識も示した。
このほか、各種の委員会はオンライン開催が可能。関連する他の委員会と一体的に開く運用も認められている。(介護ニュースより)
厚生労働省は3月29日、新年度の障害福祉サービス報酬改定の解釈通知やQ&Aなどを公表した。
各サービスの運営基準や報酬の加算、その算定要件などの見直しについて、具体的な考え方を明らかにした。各種の申請書類などの様式もあわせて公表した。
今回の改定で一本化する新たな処遇改善加算については、既に3月26日に通知やQ&Aを発出していた。29日には各サービスの施策の留意事項、解釈などを明示した。
厚労省は公式サイトに、新年度の障害福祉サービス報酬改定のポイントや省令、告示、解釈通知、Q&A、申請書類の様式などをまとめたページを設け、現場の関係者らに広く周知している。(介護ニュース)
新年度の介護報酬改定で一本化する新たな処遇改善加算について、厚生労働省は4日、運用の解釈などを明らかにするQ&Aの第2版を公表した。
介護保険最新情報のVol.1247で広く周知している。
3月15日に発出した第1版に続き、今回も多くの問答を掲載。賃上げの方法、対象者の範囲、キャリアパス要件、職場環境等要件などの規定を取り上げ、その具体的な考え方を解説している。通知全体のボリュームは第2版の方が多い。
例えば賃上げの方法。「賃金改善の基準点はいつの時点になるか」「時給・日給の引き上げは基本給の引き上げに当たるか」「決まって毎月支払われる手当とはどんなものか」などの質問が紹介されている。
また、賃上げの対象者については、「派遣労働者も対象となるか」「一部の介護職員に賃上げを集中させることは可能か」といった質問への回答が示されている。
(介護ニュースより)
介護予防に効果のある体操やおしゃべりを、公民館などに集まって楽しむ「通いの場」に月1回以上参加する県内の高齢者の割合が、10年連続で日本一になった。今月公表された2022年度の参加率は15・2%で、前年度から0・5ポイント上昇した。県は「行政の支援と住民の協力の成果。より多くの人を取り込める魅力のある場を提案していきたい」と話している。
厚生労働省が13年度から調査を始め、大分県は当初からトップを守っている。県高齢者福祉課によると、高齢者の筋力とバランス能力を高められるよう開発した「めじろん元気アップ体操」の普及や、優秀団体への表彰など、通いの場を増やす取り組みを12年度から進めている。
各市町村も支援に力を入れる。週1回体操をする集まりを推奨するケースが多く、指導者の派遣やリーダー養成で後押ししている。
杵築市の取り組みをサポートする大分大福祉健康科学部の田中健一朗助教(42)=地域理学療法学=は「高齢者の活動量を増やす導入としては週1回の体操が最適。地域に出るきっかけにもなる」と説明する。
22年度調査では、性別の分かる参加者のうち約8割が女性、約2割が男性だった。県高齢者福祉課の渡辺康弘課長(56)は「男性が参加しやすいよう、eスポーツなどを取り入れるモデル事業を考えている。健康寿命延伸のため支援を続ける」と述べた。
<メモ>
厚生労働省のまとめによると、「通いの場」の参加率は2022年度、全国平均で6・2%(0・7ポイント上昇)。都道府県別では2位が島根県で12・3%、3位は福岡県で10・6%だった。(大分県ニュースより)
厚生労働省は先週末の29日、
“Q&A第三弾”
を新たに公表しました。
取り急ぎ、共有します。
介護人材は全国で足りていないが、不足の度合いには地域差がある。人手不足の介護施設の割合は岐阜県の8割をはじめ半数近い都道府県で7割を超す。一方で55%と最も低い福井県は外国人実習生の受け入れに自ら関わり、週休3日制の導入を施設に促すなど介護の担い手が働きやすい環境づくりを進める。
介護労働安定センター(東京・荒川)が厚生労働省の委託で実施した「介護労働実態調査」によると、全国の介護施設で職員が「大いに不足」「不足」「やや不足」と答えた割合は2022年度で69%だった。10年で18ポイント増えた。要介護認定者は全国で約700万人と増え続けているが、介護職員は約210万人で必要な人数を満たしていない。
福井、宮城、青森、栃木など6県は不足の施設が5割台だった。福井県は21年、県社会福祉協議会に委託してタイの技能実習生の受け入れ窓口となる監理団体を設けた。現地の財団と連携して同国内で介護や日本語を学んだ若者を迎え、18人が県内で働く。
費用を県が負担し、実習生は現地での借金など問題を抱えることなく来日できる。23年度の予算は3440万円。国は技能実習に代えて「育成就労」を創設する。県長寿福祉課の竹内芳隆課長は「新制度は転職しやすくなり福井まで外国人が来てくれなくなる恐れもある。一から人材を育てる」と狙いを説明する。
22年度から県は週休3日制を取り入れる施設にコンサルタント費用などの補助も始めた。導入した5施設の一つ、特別養護老人ホーム運営の大野和光園(同県大野市)は3カ月区切りで職員が週休3日を選べる。26歳の男性職員は「自分の時間が多く取れるようになった」と満足する。
同園では20年以降に10人ほどが退職した。山村正人専務理事は「職員は近隣施設との奪い合い」と危機感を示す。4月からは育児中のパート職員ら10人を勤務が短い短時間正職員とする。タイの女性2人も実習生に迎え、「何とか人手を確保できている」。
淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)は「介護現場は賃金だけでなく休みが少ない。休みが取りにくいと人手が減る負のスパイラルになる。労働環境の整備が人材獲得には重要だ」と強調する。
事業者も知恵を絞る。青森県ではデイサービスのケアスマイル青森(青森市)がリハビリ提案ソフト「4MSシステム」を開発した。利用者がタブレットで質問に答えると16種類の運動メニューから最適なものを示す。理学療法士など専門の職員でなくてもリハビリ支援ができる。
利用者の日常的な動作の維持・改善に一定水準以上で取り組む事業所は介護報酬が加算される。ケアスマイル青森の大里洋志社長は「人手不足対策とリハビリ支援の質の向上を両立できる」と語る。23年には全国の同業者に価格220万円からで売り出し、特許も国内外で取得した。
栃木県は17年度、介護人材の育成や待遇改善に熱心な事業者の認証制度を始めた。3段階あり、働きがいが高い法人の見える化につなげる。認証されると現場の負担軽減に役立つ見守り機器やアシストスーツなどの導入時に県が優先して補助する。
厚労省は24年度から事業者に支払う介護報酬を全体で1.59%引き上げる。このうち6割の0.98%は職員の処遇改善に充てるが、他産業との給与差は大きい。団塊世代が85歳に達する35年には介護人材が約70万人足りなくなるとされる。結城教授は「不足が続けば介護保険制度が持続してもサービスが受けられない恐れが生じる」と指摘する。
(日経新聞新聞 3月30日記事より転載)