コラム
はじめに|なぜ今、人材紹介会社の使い方が重要なのか
保育士不足が慢性化する中、「求人を出しても全く応募が来ない」「ハローワークや求人サイトでは限界」という理由から、人材紹介会社(有料職業紹介)を利用する保育園が増えています。
確かに、人材紹介会社は即戦力となる保育士と出会える可能性が高い一方で、
-
採用コストが高い
-
早期離職リスクがある
-
契約内容をよく理解せずにトラブルになる
といった相談も、保育園専門社労士として数多く受けてきました。
本記事では、
「人材紹介会社を使う前に必ず押さえるべき留意点」
を、労務・法務・実務の観点からわかりやすく解説します。
人材紹介会社を使うメリット・デメリットを正しく理解する
人材紹介会社の主なメリット
まずはメリットから整理しましょう。
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自園では出会えない潜在層(転職を迷っている保育士)にアプローチできる
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採用までのスピードが早い
-
書類選考や日程調整などの工数が削減できる
特に、急な欠員補充や年度途中の採用では、有効な手段となります。
一方で見落とされがちなデメリット
一方、次のようなデメリットも存在します。
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採用成功報酬が高額(年収の20〜30%が相場)
-
採用のミスマッチが起きやすい
-
園の採用力が育たない
「とにかく人が欲しい」という焦りから安易に利用すると、
結果的にコストだけが膨らみ、定着しないという悪循環に陥りがちです。
留意点① 紹介手数料と契約条件を必ず確認する
紹介手数料の相場と注意点
人材紹介会社の手数料は、一般的に以下のような水準です。
-
正社員:理論年収の20〜30%
-
パート:一律〇万円、または月給×〇か月分
重要なのは、**「いくらかかるか」だけでなく「いつ・どんな条件で支払うのか」**です。
よくある契約トラブル例
保育園で実際に多いのが、次のようなケースです。
-
試用期間中に退職したのに全額請求された
-
返金規定(返戻金)が契約書に明記されていなかった
-
分割返金だと思っていたら一切返金なしだった
👉 契約書の返戻金規定(返金条件・期間)は必ず書面で確認してください。
留意点② 「早期離職=返金される」ではない
返金規定は会社ごとに全く違う
多くの園長先生が誤解しがちなのが、
「すぐ辞めたら返金されるはず」という思い込みです。
実際には、
-
1か月以内:全額返金
-
3か月以内:50%返金
-
6か月以内:返金なし
など、返金条件は紹介会社ごとにバラバラです。
労務設計が弱い園ほど早期離職リスクが高い
社労士として見ていると、
-
就業規則が実態と合っていない
-
雇用条件通知書の説明不足
-
配置・人間関係の配慮不足
こうした園ほど、紹介採用でも早期離職が起こりやすい傾向があります。
👉 「返金があるから安心」ではなく、「辞めさせない体制づくり」こそ重要です。
留意点③ 紹介会社任せにしない採用面接が重要
面接を丸投げするとミスマッチが起きる
人材紹介会社が間に入ると、
「紹介会社がスクリーニングしているから大丈夫」と思いがちです。
しかし、紹介会社が重視するのは、
**「とりあえず内定が出るかどうか」**であり、
園の文化や方針との相性までは見きれていないことも多いのが実情です。
園側が必ず確認すべきポイント
面接では、以下を必ず園長・主任が確認しましょう。
-
保育観・価値観(安全重視か、自由保育か 等)
-
チーム保育への適応力
-
過去の退職理由(人間関係・業務量など)
👉 紹介会社+園のダブルチェック体制がミスマッチ防止の鍵です。
留意点④ 同一候補者の「二重紹介」に注意
複数の人材紹介会社を利用していると、
同じ保育士が別会社から紹介されるケースがあります。
この場合、
-
どちらの会社に手数料を支払うのか
-
先に接触したのはどちらか
といったトラブルに発展することも。
👉 候補者管理表を作成し、
👉 「どの紹介会社経由か」を必ず記録する
このひと手間が、無駄なコストを防ぎます。
留意点⑤ 人材紹介は「最終手段」と位置づける
紹介依存の採用は危険
人材紹介に頼りすぎると、
-
採用コストが慢性化する
-
園の魅力が言語化されない
-
職員定着率が改善しない
という構造に陥ります。
社労士が勧める理想的な採用戦略
理想は、
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自園採用(HP・SNS・直接応募)
- 現在の職員などの紹介(リファラル採用)
-
ハローワーク・求人媒体
-
どうしても必要な場合のみ人材紹介
という段階的な活用です。
そのためには、
-
労働条件の整理
-
就業規則・評価制度の整備
-
職員が紹介したくなる職場づくり
といった労務設計の見直しが欠かせません。
まとめ|人材紹介会社は「使い方次第」で成果が変わる
保育士採用において、人材紹介会社は確かに有効な手段です。
しかし、
-
契約内容を確認せず
-
面接を任せきりにし
-
定着の仕組みを整えない
まま利用すると、高い採用コストだけが残る結果になりかねません。
保育園専門社労士としてお伝えしたいのは、
👉 **採用は「点」ではなく「仕組み」**だということ。
人材紹介を「最後の一手」として活かすためにも、
ぜひ一度、園の労務体制・採用戦略を見直してみてください。
はじめに
介護事業所、保育園、クリニックにおいて、「有給休暇の管理が煩雑で困っている」「職員ごとに付与日がバラバラで把握できない」といった相談は非常に多く寄せられます。
その解決策としてよく検討されるのが、有給休暇の付与日を全職員で統一する運用です。
確かに、付与日を統一すれば管理は楽になります。しかし、制度設計を誤ると労働基準法違反になるリスクもあるため注意が必要です。
本コラムでは、介護・保育・クリニックに特化した社労士の視点から、有給休暇の付与日統一のメリットと注意点を、できるだけわかりやすく解説します。
有給休暇の基本ルール(おさらい)
まず前提として、年次有給休暇は労働基準法第39条により、以下の要件を満たす労働者に付与する義務があります。
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雇入れ日から 6か月継続勤務
-
その期間の 出勤率が8割以上
この要件を満たした時点で、最低10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
重要なのは、「この付与日は原則として個々の職員ごとに発生する」という点です。
有給休暇の付与日を統一するとは?
「付与日を統一する」とは、本来は入社日ごとに異なる有給休暇の付与日を、
例えば以下のように 特定の日にまとめて付与する運用を指します。
-
毎年4月1日に全職員へ一斉付与
-
毎年10月1日に統一付与
-
半期ごとに区切って付与 など
介護・保育・クリニックでは、人員入替が多いため、管理負担軽減を目的に導入されるケースが増えています。
付与日統一のメリット
① 有給管理が圧倒的に楽になる
シフト制が多い介護・保育、非常勤職員が多いクリニックでは、有給付与日がバラバラだと管理が煩雑です。
付与日を統一することで、残日数管理・5日取得義務の管理が一気に楽になります。
② 職員への説明がシンプル
「あなたの有給は〇年〇月〇日からです」という個別説明が不要になり、
職員側も制度を理解しやすいというメリットがあります。
ここが重要!付与日統一の5つの注意点
注意点① 法定基準を下回らないこと
最も重要なのは、法定基準を下回らないことです。
たとえば、
-
本来6か月経過で10日付与される職員に対し
-
統一付与の都合で「まだ付与しない」
これは 明確な労基法違反となります。
➡ 統一付与は「前倒し」はOK、後ろ倒しはNG
これが大原則です。
注意点② 中途入社職員への配慮が必須
介護・保育・クリニックでは中途採用が多いため、特に注意が必要です。
よくある誤りが、
「4月1日一斉付与だから、途中入社の人は次の4月まで有給なし」
これは完全アウトです。
実務では、
-
入社から6か月経過時点で比例付与(前倒し付与)
-
次回の統一付与日に本付与
という 二段階設計が安全です。
注意点③ パート・非常勤も対象になる
「パートだから有給は少しでいい」「付与日は別扱い」という運用も要注意です。
所定労働日数が少ない場合は、比例付与にはなりますが、
付与義務そのものは正社員と同じです。
特に保育園や介護事業所では、
-
短時間職員
-
曜日固定勤務
が多いため、比例付与日数の設計を誤らないよう注意が必要です。
注意点④ 就業規則への明記が必須
有給休暇の付与日を統一する場合、
就業規則に明確なルールとして記載することが必須です。
記載がないまま運用だけ変えてしまうと、
-
職員とのトラブル
-
労基署是正指導
につながるリスクがあります。
特にクリニックでは「昔からの慣習」で運用しているケースが多く、要注意ポイントです。
注意点⑤ 5日取得義務との関係
2019年から義務化された「年5日の有給取得義務」も忘れてはいけません。
付与日を統一すると、
-
付与日
-
取得管理期間
が明確になる一方、管理を怠ると一斉に未取得が発生します。
➡ 統一付与を行う場合は、
計画的付与や取得促進ルールとセットで設計することが重要です。
介護・保育・クリニック特有の実務ポイント
これらの業界では、
-
シフト制
-
人手不足
-
急な欠勤
が日常的に発生します。
有給付与日を統一するだけでなく、
-
時季変更権の適切な使い方
-
有給取得ルールの見える化
まで含めて設計しないと、**「制度はあるが使えない有給」**になってしまいます。
有給休暇の付与日を全職員で統一する場合のQ&A
Q1.有給休暇の付与日を全職員で同じ日にしても、法律上問題ありませんか?
A.一定の条件を満たせば問題ありません。
労働基準法では、有給休暇は「雇入れから6か月後」に発生するのが原則ですが、それより前に付与する(前倒し付与)ことは禁止されていません。
そのため、法定基準を下回らない形であれば、付与日を統一することは可能です。
Q2.「4月1日一斉付与」にしたいのですが、途中入社の職員はどうすればいいですか?
A.途中入社職員への配慮が不可欠です。
「次の4月1日まで有給なし」という運用は違法になります。
実務では、
-
入社6か月経過時点で先行付与
-
次の統一付与日に本付与へ切替
という二段階設計が安全です。
Q3.パート職員や非常勤職員も同じ付与日にしなければなりませんか?
A.はい、基本的には同様に考える必要があります。
所定労働日数が少ない場合は比例付与になりますが、
「パートだから対象外」「付与日は別」という扱いはできません。
特に保育園・介護事業所では短時間勤務者が多いため、注意が必要です。
Q4.付与日を統一すると、有給日数はどう計算すればいいですか?
A.勤続年数に応じた日数を基準にします。
たとえば4月1日一斉付与の場合、
-
勤続6か月以上1年6か月未満:10日
-
1年6か月以上:11日
といったように、勤続年数別に付与日数を整理します。
ここを曖昧にすると、トラブルの元になります。
Q5.有給付与日を統一すると、職員に不利になることはありませんか?
A.設計次第で不利にも有利にもなります。
前倒し付与を行えば、職員にとっては「早く有給がもらえる」メリットになります。
一方で、後ろ倒しになる設計は違法かつ職員不信につながるためNGです。
Q6.就業規則にはどこまで書く必要がありますか?
A.付与日・付与方法・日数は必ず明記してください。
最低限、
-
有給休暇の付与日
-
勤続年数別の付与日数
-
中途入社者の取扱い
は就業規則に記載が必要です。
「慣例でやっている」は通用しません。
Q7.口頭説明だけで運用しても大丈夫ですか?
A.おすすめできません。
労基署調査や職員トラブル時には、就業規則の記載内容が判断基準になります。
特にクリニックでは、院長が善意で運用していても、書面がないことで是正指導を受けるケースがあります。
Q8.有給の「年5日取得義務」との関係はどうなりますか?
A.統一付与とセットで管理が必要です。
付与日を統一すると、全職員の取得期限も同時に管理することになります。
そのため、
-
取得状況の定期確認
-
計画的付与の活用
をしないと、一斉未取得リスクが高まります。
Q9.忙しくて有給を取らせられない場合はどうすればいいですか?
A.「忙しい」は取得拒否の理由になりません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には時季変更権の行使が可能です。
介護・保育・医療現場では、
「取得時期を調整する」運用設計が重要になります。
Q10.有給を使わずに退職した職員にはどう対応すればいいですか?
A.原則として買い取り義務はありません。
ただし、退職時に残っている有給を消化させることは可能です。
「統一付与にした結果、有給が残りやすくなった」という相談も多いため、退職時の取扱いも事前にルール化しておきましょう。
Q11.派遣職員や契約社員も対象になりますか?
A.雇用主が誰かで判断します。
自法人と雇用契約がある職員であれば、雇用形態に関わらず有給付与義務があります。
派遣職員の場合は、派遣元が付与主体になります。
Q12.付与日を年度途中で変更しても問題ありませんか?
A.慎重な対応が必要です。
不利益変更にならないこと、職員への十分な説明、就業規則改定が必須です。
特に保育園・介護事業所では、監査時に説明できる状態が求められます。
Q13.労基署から指摘されやすいポイントは何ですか?
A.次の3点が特に多いです。
-
中途入社職員への付与漏れ
-
パート職員の比例付与ミス
-
就業規則と実態の不一致
付与日統一は「管理が楽」になる反面、ミスが一斉に発生する点に注意が必要です。
Q14.小規模なクリニックでも付与日統一はした方がいいですか?
A.人数が少ないほど、ルール明確化の効果は高いです。
院長の頭の中で管理できていた時代は終わっています。
トラブル予防の観点からも、制度として整理する価値は十分にあります。
Q15.専門家に相談するタイミングはいつがベストですか?
A.「問題が起きる前」がベストです。
有給休暇は、退職・労基署調査・職員不満の引き金になりやすいテーマです。
付与日統一を検討する段階で、介護・保育・医療に詳しい社労士に相談することが、結果的にコストとリスクを下げます。
まとめ(社労士コメント)
有給休暇の付与日統一は、
正しく設計すれば、管理効率・職員満足度の両方を高める制度です。
一方で、設計を誤ると一気に法令違反リスクを抱えることになります。
介護・保育・クリニックという人手不足業界だからこそ、
「楽にするための統一」ではなく、
**「安心して働けるための制度設計」**が重要です。
Q) 体調不良で欠勤を繰り返している職員がいます。ここ1ヶ月間に何日も欠勤しており、業務への支障も大きくなっています。施設としては、急な欠勤は人員配
置の面で問題が多く、また職員本人の健康のためにも療養に専念し、場合によっては退職してもらった方がよいのではないかと考えていますが、どのように対応
したらよいでしょうか?
A) 就業規則などで私傷病に係る休職制度を設けている場合は、すぐに退職してもらうことはできません。施設は職員に対して療養のための休職を命じることにな
ります。その後、休職期間を経過しても復職が難しいのであれば、退職となります。まずは体調不良が続くようであれば、医療機関への受診を促しましょう。
詳細解説:
1.欠勤とは
一般的に「欠勤」とは、職員が本来出勤しなければならない日に、個人的な事情で出勤しないことを指します。労働契約では、職員は所定労働日・所定労働時間に労務を提供する義務を負っており、一方で施設は、労務提供に対し職員に賃金を支払う義務を負っています。職員が私傷病によって一定期間、労務を提供できない場合には、労働契約に基づく労務提
供義務を果たせないことになり、施設は、労働契約の債務不履行として、契約解除を検討することになります。
2.私傷病による休職制度
多くの施設では、職員が病気やケガ、またはその他の事由により、労務提供が困難になった場合、すぐには解雇せず、職員との労働契約を維持したまま、一定期間の労務提供義務を
免除し、回復を待つための休職制度を設けています。休職制度は、解雇を留保とする「解雇の猶予措置」に位置付けられており、休職期間を経過しても復職できない場合には、就業規則の定めに則って退職となります。よって、休職制度は、職員の一定期間の雇用を保障しつつ、無用な退職トラブルを防ぐことにもつながります。
3.休職発令の重要性
休職制度は、職員が施設へ取得の申請をするものではなく、あらかじめ定められた一定の休職事由に該当したときに、施設が職員に命じるものです。休職期間が満了すると退職
となることから、休職期間満了時にトラブルが発生しがちです。このようなトラブルを防ぐために、休職を開始するときには、職員へ書面で通知を行うようにしましょう。
休職制度は、法律上義務付けられるものではなく、任意に制度の設計・運用を行うことができます。休職制度の有無の確認と、休職制度がある場合には、休職の期間や復職の取扱い
に問題ないかを見直すとよいでしょう。
今年度の補正予算に基づく新たな補助金について、申請に必要な計画書の記入方法を解説する動画がYouTubeに公開された。厚生労働省が4日、介護保険最新情報Vol.1467で現場の関係者に広く周知した。
公開された動画は、今回の補助金の申請に必要な「計画書(Excelファイル)」の入力方法に特化した内容となっている。尺は14分弱で、実際の様式画面を映しながら記入の手順を解説している。複雑な書類作成に悩む担当者にとって、実務の頼もしい手引きとなりそうだ。
今回の補助金は、介護職員1人あたり最大で月額1.9万円を支給するもの。ベースは月額1万円で、要件を満たせばプラス5千円、追加でさらに4千円と上乗せされる「3階建て」の設計だ。居宅介護支援や訪問看護などは、ベース部分の1万円のみが支給対象となる。
厚労省はあわせて、今回の補助金の仕組みを分かりやすくまとめたリーフレットも公表した。申請から受給、報告までの流れを、以下の4つのステップで整理している。
ステップ1|まずは所在地の都道府県に届け出よう!
※ 申請先は都道府県。申請時点では要件が揃っていなくてもOK!
ステップ2|補助金額に相当する賃上げを行おう!
※ 今年度内に受給する場合、今年3月までに賃上げを行う必要がある。
ステップ3|生産性向上の取り組みを1つ行おう!
※ 訪問系・通所系サービスは「ケアプランデータ連携システム」への加入、施設系サービスは「生産性向上推進体制加算」の取得。
ステップ4|都道府県ごとの期限までに実績報告をしよう!
厚労省は介護保険最新情報Vol.1467で、幅広い介護従事者の速やかな賃上げの実現に向けて、今回の補助金の積極的な活用を改めて呼びかけている。
厚生労働省が1月30日に新たに公表した介護経営の「協働化・大規模化ガイドライン」。この中では、法人の合併やM&Aといったハードルの高い手法だけでなく、中小の事業者が独立性を保ちながら経営課題を解決する「協働化」の重要性と、その実践的なノウハウが詳しく紹介されている。
介護ニーズの変化や深刻な人材難、物価の高騰、賃上げ競争の激化、制度の複雑化、生産性の向上…。経営課題が幾重にも重なるなか、個々の事業所・施設が独力でサービスを安定的に維持していくことは、かつてないほど難しくなっている。
今回のガイドラインでは、地域の事業者が協働化を通じてスケールメリットを得るための選択肢が提示されている。ガイドラインが提唱する協働化のファーストステップは、「仲間をつくる」ことだ。
必ずしも最初から緻密な設計図を描く必要はない。
ガイドラインで紹介されている社会福祉法人東北福祉会(仙台市)の事例では、業界団体の会合などを通じて元々つながりのあった法人同士が、協定書や契約書を作成しないまま、必要な各種研修の共同開催を実現したという。お互いの事業所を見学し合い、課題認識を共有するという「日常的な関わり」の延長線上で、各種研修のマンネリ化や講師の固定化の解消、満足度の向上、人材の定着といった成果を生み出した。
その結果、地域内で経営課題を率直に共有・相談できる環境が構築され、赤字から黒字への転換など具体的な経営改善につながっている。今後については、「より実践的な方向性へ移行したい」。事務作業や人材育成の協働化も含め、「人的・時間的・資本的なリソース不足を補っていければ」との前向きな言葉が寄せられている。
個々の事業所の状況に合わせて、まずは身近な仲間づくりから始めてほしいと呼びかけている。
厚労省はガイドラインで協働化の効果について、人材確保・育成の合理化や事務作業の効率化、コストの削減、災害対応の強化などに加えて、「法人の交流を通じた知見やノウハウの共有が、結果として事業所・施設の経営改善にも寄与する」と指摘した。そのうえで、個々の事業所の状況に合わせて、まずは身近な仲間づくりから始めてほしいと呼びかけている。
はじめに|「人件費が限界」という院長の本音
ここ数年、院長先生方から最も多く聞く言葉があります。
それは――
**「もうこれ以上、人件費は上げられない」**という本音です。
最低賃金は毎年のように引き上げられ、看護師・医療事務の採用市場は売り手優位。
一方で、医療報酬は簡単には上がらず、収益構造は大きく変わらない。
「職員には辞めてほしくない」
「でも賃上げ原資はない」
このジレンマに、多くのクリニックが直面しています。
2026年を見据えたいま、院長が知っておくべきなのは、
**“賃上げ一択ではない人件費対策”**です。
1.なぜ今、クリニックの人件費はここまで重くなったのか
最低賃金の上昇は「点」ではなく「流れ」
最低賃金は一時的な政策ではありません。
政府は明確に「持続的な賃上げ」を掲げており、今後も上昇基調が続くことはほぼ確実です。
特に影響を受けやすいのが、
-
医療事務
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看護助手
-
パート職員
といった時間給中心の職種です。
「新しく入る人の時給が、長く勤めている職員を追い抜いてしまう」
そんな逆転現象が、すでに多くの現場で起きています。
採用コストも“見えない人件費”
さらに見落とされがちなのが、採用コストの高騰です。
-
求人広告費
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紹介会社への手数料
-
採用後の教育・引き継ぎ時間
これらはすべて、人件費の一部です。
「賃上げはできないから、辞めたらまた採用すればいい」
この考え方が、結果的に最もコストがかかる経営になっているケースは少なくありません。
2.「賃上げできない=ブラック」ではない時代の考え方
最近は、SNSや口コミサイトの影響もあり、
「賃上げしないクリニック=悪」という短絡的な見方が広がりがちです。
しかし、社労士の立場から断言できるのは、
賃上げをしないこと自体が問題なのではないという点です。
問題になるのは、次のような状態です。
-
なぜ給与が上がらないのか説明がない
-
評価の基準が不明確
-
頑張っても報われるイメージが持てない
職員が不満を感じる本質は、
「金額」そのものよりも、納得感の欠如にあります。
3.人件費をコントロールしながら満足度を上げる3つの視点
視点① 給与を「固定費」から「設計できる費用」へ
多くのクリニックでは、給与が
「なんとなく決めた金額」のまま固定化されています。
しかし、今後は次のような設計が不可欠です。
-
基本給は抑え、役割・責任で差をつける
-
手当の意味を明確化する
-
昇給ルールを“感覚”ではなく“仕組み”にする
これにより、人件費の総額をコントロールしながら、
頑張る人が報われる構造を作ることができます。
視点② 「評価制度がない」ことが最大のコストになる
評価制度がないクリニックでは、必ず次の問題が起きます。
-
真面目な職員ほど不満を溜める
-
声の大きい職員が得をする
-
院長が毎回、判断に悩む
結果として、
優秀な人から辞めていくという最悪の循環が生まれます。
評価制度は、大企業のためのものではありません。
むしろ、少人数のクリニックほど効果が大きいのです。
視点③ 「お金以外の報酬」を本気で整える
実務の現場で感じるのは、
「給与以外で満足している職員」は想像以上に多いという事実です。
たとえば、
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シフトの融通
-
院長との関係性
-
役割を任されている実感
-
成長している感覚
これらが整っているクリニックでは、
多少の賃金差があっても、離職率は低くなります。
4.社労士が見てきた「人件費で失敗するクリニック」の共通点
人件費で悩み続けるクリニックには、共通点があります。
-
問題が起きてから制度を考える
-
職員の不満を「わがまま」と捉える
-
就業規則や給与規程が何年も更新されていない
これらはすべて、
経営判断の遅れによるものです。
人件費は、削るものではなく、
**“設計し直すもの”**なのです。
5.2026年に向けて、院長が今やるべきこと
今すぐ大幅な賃上げをする必要はありません。
しかし、次の3点は必ず着手すべきです。
-
給与・手当・評価の「見える化」
-
職員に説明できる昇給ルールの整理
-
院長一人で抱え込まない体制づくり
これらを整えることで、
人件費の不安は「経営のコントロール下」に置くことができます。
おわりに|人件費対策は「守り」ではなく「攻め」
人件費対策というと、
「我慢」「節約」「抑制」というイメージを持たれがちです。
しかし本来は、
**クリニックを安定成長させるための“攻めの経営戦略”**です。
職員が安心して働ける環境は、
患者満足度にも、院長自身の働き方にも直結します。
もし今、
「人件費の話題が出ると気が重くなる」
そう感じているなら、それは仕組みを見直すサインかもしれません。
クリニックの規模や診療科に合った方法は、必ずあります。
一人で悩まず、専門家の視点を活用することも、立派な経営判断です。
2025年12月25日「介護保険制度の見直しに関する意見」が上梓
2025年12月25日の介護保険部会にて提示された、「介護保険制度の見直しに関する意見」(以下、「本資料」という)。本部会では2027年度介護保険法改正・報酬改定に向けた論点整理、及び視点の提示が行われています。今回の本資料の特徴は何と言っても「ページ数が多い」こと。3年前は42ページでしたが今回は何と、67ページと25ページも増えており、1回のニュースレターでは採り上げづらいボリュームになっています。そこで今回は、今年から新たに方針が示された地域3分類(中山間・人口減少地域、大都市部、一般市等)の内容に絞り、特に中山間・人口減少地域に対する論点を中心に採り上げてお伝えしてまいります。
「介護保険制度の見直しに関する意見」地域3分類に関する論点とは
それでは早速、中身に移ってまいりましょう。先ずは中山間・人口減少地域における柔軟な対応等に関し、「特例介護サービスの枠組みの拡張」についてです。
◯地域の実情に応じてサービス提供体制を維持・確保するため、人材確保、ICT機器の活用等の生産性向上の方策など、自治体が必要な施策を講じた上で、それでもなおやむを得ない場合、中山間・人口減少地域に限定した特例的なサービス提供を行う枠組みとして、特例介護サービスに新たな類型を設けることが適当である。
◯この新たな類型においては、
・職員の負担への配慮の観点から、職員の賃金の改善に向けた取組、ICT機器の活用、サービス・事業所間での連携等を前提に、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和等を行うこと
・サービスの質の確保の観点から、市町村の適切な関与・確認や、配置職員の専門性への配慮を行うことを前提とすること
が考えられ、今後、詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
なお、これらの要件が自治体で厳しく解釈されると、必要な配置基準の緩和が進まなくなるのではないかとの意見があった。
◯新たな類型の特例介護サービスについては、現行の基準該当サービス・離島等相当サービスの対象となっている居宅サービス等(訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援等)に加え、施設サービスや居宅サービスのうち特定施設入居者生活介護も対象とすることが適当である。また、市町村が指定権者となり実施している地域密着型サービスにおける同様のサービスについても、同様の対応を実施できるようにすることが適当である。
◯なお、新たな類型の特例介護サービスについては、
・サービスの質の担保について、事後の確認を行う仕組みについても検討が必要ではないか
・介護保険制度は全国どこでも必要なサービスを提供すべきものであり、配置基準の緩和は、慎重に対応するものとして、あくまでも緊急的な対応として行うものとすべきではないか
・ICT機器の活用などの業務効率化の取組は、必要人員を代替し得るものであるかどうか精査が必要ではないか
・まずは現行の居宅サービス等に限定し、施設サービス等を対象に含めるかどうかについては、ICT機器等の活用実績を踏まえ慎重に検討すべきではないか
・夜勤要件の緩和については、特に職員の負担感などへの配慮が必要ではないか
との意見があったことにも留意し、今後詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
続いて、「地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み」についてです。
◯中山間・人口減少地域においては、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動に係る負担が大きく、また、高齢者人口の減少に伴うサービス需要の縮小、季節による繁閑の激しさ等から、年間を通じた安定的な経営が難しく、サービス基盤の維持に当たっての課題となっている。
◯このため、特例介護サービスの新たな類型の枠組みにおいて、安定的な経営を行う仕組みとして、例えば訪問介護について、現行のサービス提供回数に応じた出来高報酬と別途、包括的な評価(月単位の定額払い)を選択可能とすることが適当である。
◯こうした包括的な評価の仕組みについては、
・利用者数に応じて収入の見込みが立つため、特に季節による繁閑が大きい地域や小規模な事業所において、経営の安定につながる
・移動時間など、地域の実情を考慮した報酬設定が可能となるほか、突然のキャンセル等による機会損失を抑制し、予見性のある経営が可能になる
・利用回数や時間の少ない利用者を受け入れた場合でも、収益が確保できる
・安定的かつ予見性のある経営が可能となることで、常勤化が促進されるなど、継続的かつ安定的な人材確保につながる
・利用者の状態変化により利用回数や時間が増えた場合でも、負担が変わらず、安心感がある
等のメリットが期待される。
◯その一方で、
・利用者ごとの利用回数・時間の差にも配慮しながら、利用者間の不公平感を抑制する必要がある
・利用者の費用負担が急激に増えることや、区分支給限度基準額との関係でサービス利用に過度な制約がかからないよう、適切に配慮を行う必要がある
・保険料水準の過度な上昇を抑制する観点や、対象地域の内外での報酬水準の均衡等も踏まえて、サービス提供量と比べて過大な報酬とならないようにする必要がある
・利用回数や時間にかかわらず一律の報酬となることにより、利用者が必要以上にサービスを利用する、事業者が必要なサービス提供を控える、といったモラルハザードを抑制する必要がある
といった点に十分な留意が必要である。
◯このため、具体的な報酬設計については、利用者像ごとに複数段階の報酬区分を設定することや、区分支給限度基準額との関係性にも配慮しつつ包括化の対象範囲を設定するなど、きめ細かな報酬体系とする方向で検討を進める必要がある。こうしたことも踏まえて、報酬水準の設定に当たっては、現状の十分なデータ分析の下、包括的な評価の仕組みを導入する事業者の経営状況や、サービス提供状況等に与える影響を考慮しつつ、今後、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
◯また、ニーズを有する地域の事業者が迅速に対応できるよう、希望する自治体においては、第10期介護保険事業計画期間中の実施を可能とすることを目指し、第9期介護保険事業計画期間中に検討を進めることが適当である。
続いて、「介護サービスを事業として実施する仕組み」についてです。
◯今後、2040年を見据えると、サービスを提供する担い手だけでなく、更なる利用者の減少が進む地域も想定される中、上述のような給付における特例の仕組みを活用しても、なおサービス提供体制を維持することが困難なケースが想定される。
◯こうした地域においても、契約に基づき利用者本位でサービスを選択するという介護保険の制度理念を維持するとともに、利用者が住み慣れた地域を離れ、在宅での生活を継続することが困難となる状況を防ぐことが重要である。
◯このため、こうした場合に備えた中山間・人口減少地域における柔軟なサービス基盤の維持・確保の選択肢の一つとして、給付の仕組みに代えて、市町村が関与する事業により、給付と同様に介護保険財源を活用し、事業者がサービス提供を可能とする仕組みを設けることが適当である。
◯この仕組みにおいては、要介護者等に対して、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護等といった給付で実施するサービスを実施できるようにするとともに、こうしたサービスを組み合わせて提供することが考えられる。このようなサービス提供についても、利用者との契約に基づき、適切なケアマネジメントを経て、要介護者に対して介護サービスを提供するという点においては、給付サービスと変わりがない仕組みとすることが適当である。また、本事業は、人口減少社会の中で、被保険者(住民)のために介護サービスを維持・確保することが目的であり、その導入に当たっては、対象地域の特定と併せて、介護保険事業(支援)計画の策定プロセスの一部として、被保険者(住民)等の関係者の意見を聴きながら検討することが想定される。
◯今回の新たな事業の仕組みによる事業費については、例えば、圏域を超えて訪問する際の経費など、中山間・人口減少地域へのサービス提供に係る追加的な費用も勘案することも考えられる。なお、複数のサービスを組み合わせて弾力的に提供するケース等が想定されることを踏まえると、単独の事業所等におけるサービス提供時に要するコストと比べて、一定程度効率的に実施することも可能になることも想定される。
◯その上で、新たな事業は、地域支援事業の一類型として実施することが考えられ、その財源構成は、国、都道府県、市町村、1号保険料、2号保険料ごとに、現行の給付サービスと同様の負担割合とすることが考えられる。
◯中山間・人口減少地域における居宅サービスが継続的に提供されることにより、当該地域における在宅の要介護高齢者が引き続き在宅で生活することが可能となること等を踏まえると、この事業の実施が当該市町村の介護保険財政に与える影響は、施設サービス等の他の給付費を含めて総体的に見ればそれほど大きなものとはならないと考えられるものの、保険財政規律を確保する観点から、当該事業費の総額についても、他の地域支援事業と同様に、高齢者の伸び率等を勘案した上限額を設定することが考えられる。
◯包括的な評価の仕組みと同様、中山間・人口減少地域における事業者の経営やサービス提供の状況等を十分に検証の上、こうした地域において実際に活用可能なものとなるよう、都道府県や市町村の負担軽減の観点も含めて、関係者の意見を丁寧に伺いながら、検討を進めることが必要である。
◯なお、介護サービスを事業として実施する仕組みについては、制度の導入により、市町村に責任が集中することにならないよう、都道府県が一定の関与をする仕組みとするなど、丁寧な検討を行うべきとの意見があった。
最後に、「大都市部・一般市等における対応」に関し、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の統合」についてです。
◯定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、要介護高齢者の在宅生活を24時間支えるサービスとして、日中・夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を提供し、「定期巡回」と「通報による随時対応」を行っており、特に今後増加する都市部における居宅要介護者の介護ニーズに対して柔軟に対応することが期待されている。一方で、夜間対応型訪問介護は、夜間における「定期巡回」と「通報による随時対応」を行うもので、これまでの本部会等の議論においても、両サービスは機能が類似・重複しており、将来的な統合・整理に向けた検討の必要性について指摘があったところである。
◯両サービスの機能・役割や、将来的なサービスの統合を見据えて段階的に取り組んできた状況を踏まえ、また、
・夜間対応型訪問介護の多くの利用者は日中の訪問介護を併用しており、日中・夜間を通じて同一の事業所によって24時間の訪問介護(看護)サービスを一体的に受けられることは、夜間対応型訪問介護の利用者にとって効果的と考えられること
・8割以上の夜間対応型訪問介護事業者が定期巡回・随時対応型訪問介護事業所も運営しており、定期巡回・随時対応型訪問介護事業所にとっては、事業所の指定手続や報酬請求事務等が効率化されるなど、限られた地域資源の有効活用にも資すること
・令和6年度介護報酬改定で設けた定期巡回・随時対応型訪問介護看護の新区分について、利用者に不利益は生じていないと考えられることから、夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と統合することが適当である。
◯なお、この際、必要な人員の確保やサービスの認知度向上など、利用者・事業者双方への影響にも十分配慮する必要があることから、一定の経過措置期間を設けた上で、人員配置基準や報酬に関して特例的な類型を設けることが適当である。
タイムリーにキャッチアップしつつも、過度に振り回されないように
以上、今月は「介護保険制度の見直しに関する意見」から一つのテーマに絞り、お伝えしました。今回の資料により、2027年の法改正・報酬改定へ向けての大きな方向性は概ね示されたと思われます。今後の手続きとしては、議論は介護給付費分科会へと引き継がれ、より細かな改正法案・改定報酬案に関する審議が展開されることになります。経営者・幹部の皆様は是非、ご自身でも情報を追いかけていただくと共に、制度の活用は重要である一方、そこにばかり心が奪われ、結果、制度に振り回される、ということがないよう気をつけていただく必要もあるかもしれません。
いずれにせよ2027年の改正・改定へ向け、2026年はさらに具体的な議論が始まります。
我々もしっかりと追いかけ、タイムリーな情報提供を心掛けてまいりますので、引き続きよろしくお願い致します。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622725.pdf
結論:週休3日制は「魔法の制度」ではないが、正しく設計すれば定着率を高める有効策
介護業界では慢性的な人材不足が続く中、「週休3日制」を導入する事業所が徐々に増えています。
結論から言えば、週休3日制は万能ではありません。しかし、勤務時間設計・給与制度・シフト管理を適切に行えば、
-
採用力の向上
-
職員の定着率アップ
-
離職防止・燃え尽き防止
といった効果が期待できる制度です。
一方で、制度設計を誤ると
「職員の不満が増える」「現場が回らない」「人件費が逆に増える」
といったリスクもあります。
本コラムでは、介護事業所における週休3日制の導入時の注意点を社労士視点で解説します。
週休3日制の成否は、就業規則でも給与制度でもなく、シフトと人員配置の再設計が重要
週休3日制で現場が苦しくなる事業所の共通点
これまで多くの介護事業所を支援してきましたが、
週休3日制がうまくいかないケースには、はっきりした共通点があります。
それは、
**「従来の人員配置のまま、休みだけを増やそうとしている」**ことです。
-
1人あたりの勤務時間は長くなった
-
しかし、時間帯ごとの配置は見直していない
-
結果、忙しい時間帯がスカスカになる
この状態では、どれだけ理念が良くても、現場は確実に疲弊します。
介護の仕事は「人数」ではなく「時間帯」で考えるべき
介護保険制度上、人員配置基準は「常勤換算」で語られることが多く、
つい「トータル人数」で考えがちです。
しかし、現場で起きているのは、
時間帯ごとの負荷の偏りです。
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朝の起床・排泄・送迎
-
昼の入浴・記録
-
夕方から夜の食事・就寝介助
この“山”の時間に人が足りないと、
事故リスク、職員の苛立ち、利用者満足度の低下が一気に表面化します。
そこで重要になるのが、
**勤務時間が重なる「オーバーラップ時間」**です。
なぜ「重なる時間」がないと、週休3日制は破綻するのか
週休3日制(給与維持型)の多くは、
1日10時間勤務が前提になります。
このとき、
「誰かが来たら、誰かが帰る」
というシフトを組んでしまうと、現場はこうなります。
-
申し送りは紙だけ
-
忙しい時間を1人で回す
-
トラブルが起きても応援がない
これは、**制度以前に“無理な現場”**です。
私が支援に入ったある事業所では、
重なる時間を設けていなかったため、
「休みは増えたのに、勤務中は前よりきつい」
という声が続出しました。
重なる時間が生む「3つの余白」
重なる時間を意図的に作ると、現場に余白が生まれます。
① 業務の余白
一番忙しい時間に人がいることで、
介助・対応の質を落とさずに済みます。
② 判断の余白
「これ、どう対応する?」
とその場で相談できる相手がいることは、
職員の心理的負担を大きく下げます。
③ 人間関係の余白
忙しさを分かち合えることで、
「自分だけ大変」という不公平感が生まれにくくなります。
これは、離職防止の観点でも非常に大きい効果です。
社労士として必ず勧める人員配置の考え方
私が週休3日制の支援で必ず提案するのは、
次のような設計です。
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1日10時間勤務を前提に
-
開始・終了時刻をずらす
-
2〜3時間以上の重なりを作る
たとえばデイサービスであれば、
-
早番:7:30〜18:30
-
遅番:9:00〜20:00
こうすることで、
**9:00〜18:30という“人を厚くする時間帯”**が生まれます。
ここに入浴・記録・家族対応などを集中させることで、
現場は驚くほど安定します。
週休3日制は「人を減らす制度」ではない
誤解されがちですが、
週休3日制は人件費削減の制度ではありません。
むしろ私は、
**「人を守るための配置転換制度」**だと考えています。
-
ずっと張り付かなくていい
-
1人で抱え込まなくていい
-
無理な我慢をしなくていい
この環境を作れなければ、
どんなに先進的な制度も、現場には根付きません。
まとめ:週休3日制は“設計図”で決まる
介護事業所の週休3日制は、
「導入するかどうか」よりも、
**「どう設計するか」**がすべてです。
特に人員配置では、
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時間帯別に業務量を見る
-
重なる時間を意図的に作る
-
忙しさを分け合える構造にする
この視点が欠かせません。
週休3日制を、
現場を壊す制度にするか、守る制度にするか。
その分かれ道は、
この「人員配置の再設計」にあります。
介護職員の賃上げに向けて支給する今年度の補正予算による新たな補助金について、厚生労働省が運用ルールの細部を明らかにするQ&A(第1版)を公表した。介護保険最新情報Vol.1462で広く周知している。
厚労省はこの中で、補助金の一部を充てることができる職場環境改善の経費について、パソコンやタブレットなどの購入には使えないとする解釈を明示した。ICT機器などの導入を検討している事業者は注意が必要だ。
厚労省は今回のQ&Aで、職場環境改善の経費の使途を説明。「PC端末などの機器の購入費用は対象経費として適当ではない」との認識を示した。
また、見守りセンサーやインカム、記録ソフトなどの購入費用も対象ではないと改めてアナウンスした。こうした機器の活用に向けては、介護テクノロジーの導入を推進するための補助金を用いるよう促しており、今回の賃上げ補助金では機能・役割を切り分けている。
今回の賃上げ補助金は、介護職員1人あたり最大で月額1.9万円の「3階建て」の設計とされた。事業者はこのうち「3階部分(プラス4千円相当)」を、職場環境改善の経費としても活用することができる。現場の裁量でより柔軟に使える枠だが、今回、その対象経費の範囲に制限があることがクリアになった形だ。
厚労省はあわせて、充当が認められる職場環境改善の経費の例も示している。
具体的には、職場環境改善のための研修や介護助手の募集にかかる費用などが対象となる。また、現場の課題の見える化や委員会の設置、役割分担の明確化といった取り組みを進める経費も認められる。あくまで「人」や「仕組みづくり」への投資が対象で、ハードやシステムに直接振り向けることはできないといった整理になっている。
はじめに|すべてを一度にやろうとしなくて大丈夫です
労務対策というと、
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就業規則
-
人事評価
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勤怠管理
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ハラスメント
-
処遇改善加算
など、やることが多すぎて「結局何も進まない」園が少なくありません。
そこで重要なのが、
「労務リスクの大きさ × 今すぐ性」を基準にした優先順位付けです。
労務リスク優先順位マップ【全体像】
【最優先①】労働時間・残業管理(最も危険)
なぜ最優先か?
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未払い残業代請求に直結
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労基署是正勧告の対象
-
退職後に一気に噴き出す
園長が今すぐ確認すべきポイント
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開園前・閉園後の準備は労働時間か
-
行事準備・書類作成はどこで行っているか
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「自主的」という言葉で処理していないか
👉 ここが曖昧な園は、他が整っていても一発アウトです
【最優先②】休憩が本当に取れているか
よくある誤解
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「休憩時間はシフトに入れているからOK」
→ ❌ 実態が取れていなければ違法
チェックポイント
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休憩中に子ども対応をしていないか
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電話・呼び出しが常態化していないか
-
一斉休憩になっていないか
【次に対応③】就業規則が現場とズレている問題
危険な状態
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何年も見直していない
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法人用のひな型のまま
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園長自身が内容を把握していない
起こるトラブル
-
退職時の揉め事
-
問題職員への対応ができない
-
園のルールが守られない
👉 就業規則は**「あるかどうか」ではなく「使えているか」**が重要です。
【次に対応④】ハラスメント・人間関係トラブル
最近増えている相談
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主任・ベテラン職員の強い指導
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感情的な叱責
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「保育のため」という名目の圧力
園長の盲点
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「悪気はないから大丈夫」
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「保育業界はこういうもの」
👉 **ハラスメントは「受け手基準」**です。
【中長期⑤】人事評価制度(定着率に直結)
後回しにされがちだが重要
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評価基準がない
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昇給理由が説明できない
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園長の感覚評価になっている
効果
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定着率アップ
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不満の見える化
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園長の判断負担が激減
【中長期⑥】給与・処遇改善加算の説明不足
トラブル例
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「加算はどこに行ったの?」
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職員間で不信感が広がる
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退職理由として表面化しないが根深い
👉 支給している=納得している、ではありません
【余力が出たら⑦】キャリアパス・育成制度
これは「攻め」の労務対策です。
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若手が将来像を描ける
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中堅が辞めにくくなる
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採用時のアピールにも使える
【保育園専門社労士のコメント】園長が全部背負う必要はありません
労務トラブルが多い園ほど、園長先生が一人で抱え込んでいます。
しかし、リスクの大半は「仕組み」で減らすことができます。
重要なのは、完璧を目指すことではなく、
「危ないところから順に手を打つ」ことです。
まとめ|労務リスク対策は「順番」が9割
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最初にやるべきは 労働時間・休憩
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次に 就業規則・ハラスメント
-
その後に 人事評価・処遇説明
この順番を間違えなければ、
労務トラブルは確実に減っていきます。





