コラム
厚生労働省は新年度の介護報酬改定で、デイサービスの複数の事業所が利用者を共同で送迎することを認める。今月、新たに公表した改定のQ&Aでその解釈を明示した。
例えば、A事業所の利用者をB事業所の職員が送迎する場合。A事業所がその職員と雇用契約を結び、費用負担や責任の所在といった条件を事業所間で話し合って決めていれば、利用者を同乗させる運用も「差し支えない」とした。
※ 上記解釈はQ&A問66
あわせて、複数の事業所で送迎を第3者へ共同委託する場合にも言及。同様に事業所間で条件を合議・決定することを前提に、「利用者を同乗させることは差し支えない」と明記した。
※ 上記解釈はQ&A問67
事業所の共同送迎を認めるのは、より効率的で利便性の高い仕組みを作れる環境の整備が狙い。対象サービスは通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション、療養通所介護などとされた。厚労省は介護職、ドライバーの確保が難しくなっている現状を考慮した。
今回のQ&Aには、「障害福祉サービスの利用者の同乗も可能」と記載。「送迎範囲は利用者の利便性を損なうことのない範囲、各事業所の通常の事業実施地域の範囲とする」との認識も示した。
厚労省はこのほか、事業所から利用者の住まい以外の場所(親族の家など)へ送迎する場合の取り扱いも説明。「利用者の居住実態がある場所で、事業所のサービス提供範囲内など運営上支障がなく、利用者・家族それぞれの同意が得られている場合に限り、送迎減算を適用しない」と記載した。
※ 上記解釈はQ&A問65
なぜ人事評価制度は形骸化していまうのか。
評価制度の運用の改善やサポート業務で、ご相談を頂きますが、何にお悩みかというと
いわゆる形骸化です。
形骸化とは「実質的な意味を失い、中身のない形式だけ残ること」です。
まさしく、「ただ やっているだけ」という状態と言っていいかもしれません。評価制度を導入して3年ぐらい経過するとこのような状況に陥るケースはとても多いように感じています。
なぜ、このようなことになってしまうのか。管理者やTOPの方にやる気が無いからでしょうか?それもあるかもしれませんが、それを考えてもなかなか改善にはつながらないので
もう少し構造的に考えてみたいと思います。
その視点で「重要度、緊急度のマトリックス」で考えてみると、人事評価のポジションは
「重要度は高い」が「緊急度は低い」ということになります。つまり、今やらなくても問題はない仕事となり、この結果「先延ばし」となり「緊急度の高い仕事」が終わったら取り組もうと思っているうちに、気が付いたら期末になってしまう。このようなことを繰り返しているうちに、評価制度は「形骸化」へまっしぐらとなります。誰が悪いわけではなく、そのような構造になっているのが評価制度の運用というわけです。
そのうえで、評価制度の形骸化にどうすれば
歯止めがかけられるか
- 評価制度の評価内容を毎年見直す
評価項目のブラッシュアップ、とりわけ評価項目が今の時代に即しているか、人の成長に合わせてよりレベルアップしていく項目に変わってきているかを毎年実施する重要なイベントごととして、必ず行っていただきたいと思います。
もちろん、見直した結果として、前年と同じでいこう、という結論であればそれもOK
です。
- 本人評価と上司評価(一次評価)を別々に行う
良き聞く声で、「どうしても本人評価に引っ張られてしまう」という相談があります。
その場合のアドバイスは、本人評価とは別シートで一次評価を行うことです。そのメリットとして、今まで以上に評価への真剣度が変わります。そもそも本人評価は評価エラーも多く、スキルを持っている人は少ないので、あまりアテにしない方がいいと思いおます。いずれにしてもこの変更は評価者にとっては大きな変更なので、異論はありますが、実際におこなった事業所に例を見ると、評価に対する真剣度は変わり、形骸化にはなりません
- 運用委員会などを作り機能させる
人事制度は構造上、「緊急度は低い」業務であることは、事業所のTOPや管理者でも同じです。そこでTOPも含めて、評価制度全体をマネジメントする「担当者」や委員会をつくることをお勧めしています。年間のスケジュールを決めたり、いつまでに●●を実施してくださいというように指示手配する役割と責任をもった委員会などがあることで全体が機能するようになります。
- 期初に、一年間のスケジュールに付を入れて決めておく
事業計画の発表日や、社内的なイベントの日付を決めるのと同じように、評価制度の運用を重要なイベントとして、評価実施期間、評価者ミーティング、フィードバック面談等をあらかじめ1年間の日付を確定させておきます。そして、これは会社の最重要イベントということで、他の予定が入っても、この予定を最優先すると決めて通知をするぐらい徹底したいものです。
以上、過去の事例に基づき、代表的な方法を挙げましたが、
対策の必要があれば、出来ることから始めて行くことをお勧めします。
以上
Q 当法人では新卒採用・中途採用ともの計画的に行っていますが、せっかく採用しても
なかなか定着せず、早いと3か月未満で退職する人もいます。何とか定着をしていただくように取り組みを行っていますが、採用面接ではどのような点に気をつけたら良いでしょうか。
A 「採用での失敗は、育成でカバーすることは難しい」とも言われます。
どのような人を採用するか、これは言うまでもなく、事業運営の中で最も重要な事項といっても過言ではないでしょう。社員の定着のためには「定着するような人材を採用する」といった方が現実的かもしれません。しかし、実際には人手不足の際には、「応募してくれた方は、多少気になる点があってもほとんど採用する」という状況は、決してめずらしいことではありません。このようなことを繰り替えしていると「すぐに辞めるような人」を採用していることになりかねません。
それでは「辞めない人材」とはいったいどんな人材なのでしょうか。それは法人理念に共感できる職員を選ぶことです。理念に共感できるとは、法人として「大切にしたい価値観」の共有ができる方と言ってもいいかもしれません。
現場が人手不足の状況なので、ついつい早く人を「補充」したいという考えから、候補者の過去の経験、職務のスキル、資格などを重視した基準で採用を決定する場合も多いと思います。ただ、結果として、このような情報は、意外とあてにならないという経験をされた経営者も多いのではないかと思います。そこで、重要なのは「その方の価値感が法人の価値観や考え方に合うかどうか」ということになるのですが、問題はそれをどのように見極めるか、ということになります。もちろん、価値観が垣間見れるような質問内容を、事前にしっかり準備しておく必要がありますし、その結果を面接官複数の目で見て、客観的な指標にまで落とし込んでいくことをお勧めしています。
一方、候補者もそれなりに準備をして面接に臨みますので、なかなかホンネの部分までは見極めるのは難しいものです。ある法人の理事長は、法人創設の経緯や経営理念をできる限りわかりやすく、そして何度も何度もしつこいぐらいに伝え(これが重要ということです)、それを聞いている表情や反応で、十分判断できるということをおっしゃいます。また、ある施設長は、事前に施設見学(かなり細部にわたる現場見学)を行っていただき、そこで感じた内容を、どれだけ自分の言葉で伝えられるかをみている、と言います。このような方法ですと、事前の準備ではなく、過去の経験が本人の言葉で出てくることが多く、その方の現在の感じ方や価値観が、よりリアルに伝わってくるといいます。
下記に面接のときの質問の留意点をお伝えいたしますのでご参考にしてください。
- 具体的な内容を質問する
漠然とした回答ではなく、具体的な回答を聞くことで本音を見出します。
・「なぜこの仕事を選んだのか、人の役に立つとはということは、どういうことなのか
具体的に言ってください」
・「採用された場合、あなたの能力をどういった仕事に活かしたいですか。具体的にこたえてください」
- 人間関係についてどう考えているか確認する。
人間関係の関する質問は、入職後のトラブル回避にためにも非常に重要です。
・「入職後、法人とあなたの方向性や想いが異なる時、あなたはどのようにしますか?」
・「同僚との意見が食い違う場合、あなたは意見を通しますか、黙りますか、また通すとしたらどんな方法で?」
- 求職者からの質問を引き出す
面接試験で一通り質問が終わったら、必ず求職者に対して質問がないか確認します。面接が終わったという安心感から本音が見え隠れすることがあり、人間性を確認できることもあるようです。求職者が質問する内容は、採用された場合のことを想定していることが多いため、「どの部分に興味を示しているか=本当の志望動機」がわかることも多いように思います。
2024年4月からの医師の時間外・休日労働への上限規制導入で、全国約7000医療機関のうち49医療機関において、大学等からの派遣医師引き揚げによる診療体制縮小が見込まれることが、厚生労働省の「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」で明らかになった。一方、24年4月時点で時間外労働時間数等が年1860時間超の見込み医師数は1人にまで減少。医療機関の労働時間短縮の取り組みが進んでいることがうかがえた。調査結果は3月14日の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」に報告された。
厚労省は23年10月末から11月末にかけて、大学病院本院を除く全ての病院と、分娩を取り扱う産科の有床診療所を対象に調査を実施。その後、24年1月及び3月に調査対象施設へのフォローアップを行い、データを更新した。
それによると、回答した7326施設のうち、24年4月の医師の働き方改革施行後に診療体制縮小の「見込みあり」と回答したのは457施設、「見込みなし」は6869施設。さらに縮小見込みの457施設に地域の医療提供体制への影響を聞いたところ、「影響あり」(132施設)との回答が「影響なし」(77施設)を大きく上回った。248施設は「不明」と回答した。
■49施設中21施設は地域の医療提供体制にも「影響あり」と回答
大学病院等からの派遣医師の引き揚げによる診療体制の縮小が見込まれる施設は49あり、その約4割にあたる21施設が、地域の医療提供体制にも「影響がある」と回答した。
これに対して、宿日直許可の取得や労働時間短縮の取り組みを行なっても24年4月時点で副業・兼業先を含む時間外労働等が年1860時間相当を超える見込みの医師数は、病院が1人、産科有床診療所が0人だった(この質問のみ回答施設数7918)。
調査結果を踏まえて厚労省は、都道府県や医療勤務環境改善支援センターに、①医療計画、救急医療、小児周産期医療等の担当部門と連携して、医療提供体制を維持するための地域における議論や都道府県による調整等の実施、②派遣医師の引き揚げ予定があると回答した医療機関については、必要に応じて派遣元病院や地域の状況を確認し、都道府県としての評価や対応を実施、③時間外労働等が年1860時間超の医師がいる医療機関については状況を確認し、解消に向けた具体的な対応を実施―などを要請したことを明らかにした。出典:Web医事新報
◆自治体の独自補助をフル活用
◆「60分休憩、残業なし、完全週休2日」も掲げる
保育現場の状況や保育士増による好循環について話す社会福祉法人「風の森」で統括を務める野上美希さん=東京都杉並区の「Picoナーサリ和田堀公園」で
新年度から居宅介護支援のケアマネジャーに新たに認めるオンラインモニタリングについて、厚生労働省は15日に公表した介護報酬改定のQ&A(Vol.1)で適切な運用のあり方などを解説した。
利用者の同意を文書で得る手段を取り上げ、重要事項説明書などにチェック欄を設ける形でも差し支えないと明記。オンラインモニタリングのメリット、デメリットを含めて具体的な実施方法を丁寧に説明する、というルールを守ることが大前提だと強調した。
居宅介護支援のオンラインモニタリングの解禁は、ケアマネの業務負担の軽減やより効率的な体制の構築が目的。厚労省は運営基準を改正して要件を定め、より詳しいルールを規定する解釈通知も発出している。
今回のQ&Aでは、ケアプラン作成後の初回のモニタリングをオンラインで実施することについて、「要件を満たしていれば可能」と記した。ただし、「ケアプランの実施状況などを適切に把握する観点から、初回のモニタリングは利用者の居宅を訪問して行い、その結果を踏まえて検討することが望ましい」と促した。
また、他のサービス事業所との情報共有にも言及。国の「情報連携シート」の項目と照らして必要な情報が得られるよう担保すれば、介護ソフトやアプリの記録機能などを代わりに活用することも可能との解釈を示した。(介護ニュースより)
厚生労働省は新年度の介護報酬改定で、介護現場のテクノロジーの導入を後押しする「生産性向上推進体制加算」を新設する。
今月15日、その基本的な考え方や算定要件の詳細などを明らかにする通知を発出。介護保険最新情報のVol.1218で広く周知した
新たな「生産性向上推進体制加算」は、介護職の業務負担の軽減、職場環境の改善に向けた施策の一環。実際にテクノロジーを導入し、それを適切に運用しようと努める事業所・施設を評価するインセンティブで、一連の取り組みにより生じるコストを補填する意味合いがある。
対象は幅広く、施設系サービス、居住系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービスが取得可能。区分は次の2種類だ。
《新設》生産性向上推進体制加算
加算(I)=利用者1人100単位/月
加算(II)=利用者1人10単位/月
算定要件としては、テクノロジーの導入や委員会の開催、実績データの国への報告などが定められた。上位区分の加算(I)では、更に複数のテクノロジーを導入していること、業務内容の明確化や役割分担を図っていること、実際に業務改善の成果が確認されたことなども求められる。
厚労省は新たな通知で、まず加算(II)を取得することが原則だと説明。「介護現場の生産性向上を段階的に支援していく。一定期間は加算(II)に取り組み、それから加算(I)へ移行していくことを想定している」との認識を示した。
注)以前から生産性向上の取り組みを推進しており、算定要件を満たす事業所・施設であれば最初から加算(I)を取得可能。
対象となるテクノロジーについては、下記の3つに整理。加算(I)は全て、加算(II)は事業所・施設の実態に合うものを1つ以上導入すべきとした。
(1)見守り機器=離床センサーなどを有するもの。全居室に設置。利用者・家族の意向で機器の使用を停止する運用は可。
(2)インカム=職員間の連絡調整を迅速化する機器で、ビジネス用チャットツールなどの活用も含む。同じ時間帯に勤務する全ての介護職員が使用すること。
(3)介護記録の作成を効率化する機器=記録ソフトやスマートフォンなど。複数機器の連携も含め、データ入力から記録・保存・活用を一体的に支援するものに限る。
た、厚労省は委員会の開催について「3ヵ月に1回以上」と明記。管理者やユニットリーダー、ケアを担う幅広い職種の参画を求め、オンライン開催も可能と説明した。
必要な検討事項としては、サービスの質の向上や利用者の安全、職員の負担軽減、必要な研修・講習などを提示。利用者の状態の変化やヒヤリハット事例を把握・分析すること、職員の負担の増減をヒアリングで確認することなども要請した。
実績データの国への報告については、事業年度ごとに1回、原則としてオンラインで実施することとした。
厚労省は報告事項として、利用者の満足度の評価、総業務時間・超過勤務時間、年次有給休暇の取得状況などを列挙。これらの調査票の様式も併せて示した。加算(I)の取得には、更に介護職の心理的負担の評価、業務時間のタイムスタディ調査の結果も必要だとした。
新たな通知には、こうした「生産性向上推進体制加算」の算定ルールが詳細に記載されている。(介護ニュースより)
厚生労働省は19日、新年度の介護報酬改定の解釈などを明らかにするQ&AのVol.2を公表した。
介護施設やグループホームに新設する「認知症チームケア推進加算」について、対象の利用者や算定要件などを詳しく解説している。
施設・居住系サービスの「協力医療機関連携加算」も取り上げ、次のような認識を示した。
「要件を満たす協力医療機関を複数定める場合、加算算定にあたっての定期的な会議は、その協力医療機関のうち1つと行うことで差し支えない」
厚労省は介護保険最新情報のVol.1229で広く周知している。
このほか、今回のQ&Aでは施設・居住系サービスの「退所時・退居時情報提供加算」、老健の「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)」、「かかりつけ医連携薬剤調整加算」などの要件も説明した。また、今月15日に公表したQ&A第1弾の問97(*)の修正も掲載している。(介護ニュースより)
厚生労働省は2024年度に、社員の健康増進を図る中小企業への補助金を新設する。死亡や転落など重大な事故が減る一方、転倒や腰痛といった労働災害が増加している。身体機能の衰えにより発生するケースも多く、運動指導などを促す。
理学療法士ら専門家による体力チェックや運動指導を実施する企業に、費用の4分の3を100万円を上限に給付する。転倒や腰痛は日常生活や業務への負担が残りやすく、企業活動に影響する。事故を起こす前の備えを促す。
5月にも実施計画の受け付けを始め、審査を経て補助を決める。
労災による死亡者数は減少傾向にある。22年に774人と20年前の半分以下に減った。ケガなどで4日以上休業した死傷者数は13万2355人と過去20年で最多となっている。このうち転倒が27%と最も多く、次いで腰痛などが16%を占める。老人ホームといった福祉施設での事故が目立つ。
厚労省の既存の補助金は60歳以上の労働者をかかえる企業が対象だった。労災の統計では、とくに女性で50代から転倒や腰痛が増える傾向にある。「身体機能は60歳で急に衰えるわけではない。継続的な維持が重要だ」(同省安全衛生部)といい、高齢者に限らない補助の新設を決めた。補助率も既存の2分の1から4分の3に高める。
企業の労災対策はソフト面で遅れている。22年の厚労省の労働安全衛生調査によると、手すりの設置や段差解消に57%の事業所が取り組むものの、体操や運動を実施していたのは21%だった。同省は23年度からの第14次労働災害防止計画で「ハード・ソフト両面から対策に取り組む事業場の割合を50%以上」にする目標を打ち出した。
日本経済新聞 朝刊 経済・政策(5ページ)2024/3/22
過剰な介護、報酬減で抑制
厚労省、高齢者向け住宅併設の事業所対象
訪問介護サービス事業者が高齢者向けの集合住宅を併設し、入居者に過剰なサービスを提供する事例が相次ぐ。利用者の「囲い込み」で利益を上げるのは公費のムダにつながる。厚生労働省は4月から過剰介護の抑制を念頭に、こうした事業者への報酬を減らす。
報酬減額の対象とするのは、高齢者住宅を併設する介護事業所で、2024年度の介護報酬改定で対応する。訪問介護の利用者の9割以上が併設住宅の入居者であれば、12%減らす。
介護支援専門員(ケアマネジャー)を対象とした介護サービス計画書(ケアプラン)の作成業務の報酬も、併設住宅の入居者へのサービスなら5%減らす。
「入居者に必要以上の介護サービスを提供していた」。安否確認や生活相談を受けられるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を併設する福島県内の介護事業所で働いていた元職員は日本経済新聞の取材にこう証言した。
同事業所では併設する住宅の入居者向けにケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づき自らの事業所で訪問介護もしていた。介護サービスの適正さを判断する外部の目は存在しない。
元職員は「制度上の利用上限まで介護を提供するプランをつくっていた」と明かす。
必要以上のサービスであっても、提供すればするほど事業者は介護報酬を多く受け取れる。報酬の財源は保険料や税金などだ。
ケアプランも介護される一人ひとりに寄り添って考えるべきで、過剰な介護は利用者本位をかかげる制度の理念に反する。
厚労省によると現在、全国の高齢者住宅の3割ほどがケアプランを作成する事業所と併設・隣接している。こうした施設で介護保険サービスを利用する入居者の6割以上が併設・隣接事業所でプランを作成している。
問題の「囲い込み」は高齢者住宅と介護サービスの運営が同一事業者である場合に生じやすい。
高齢者住宅の賃料を低くして赤字覚悟で入居率を高め、継続的な介護でそれ以上の利益を得られれば全体として黒字にできる。過剰な介護はこうして誘発される。
サ高住は11年に制度化した。本来は有料老人ホームと異なり、自宅と同様に自由度の高い生活ができ、施設職員による安否確認といった見守りサービスなども受けられるというのが売りだった。
次第に「囲い込み」を巡る問題が顕在化した。厚労省は過剰介護の横行を防ごうと、21年に過剰サービスが疑われるケアプランを自治体が点検できる仕組みを導入した。
23年3月の調査で、点検を実施した市区町村は24%にとどまった。点検対象のケアプラン数や事業所数に対して職員数が足りないといった課題がある。
点検を実施した自治体に、改善すべきケアプランの傾向を聞いたところ「過剰なサービス」が45%だった。事業所に働きかけても「改善が進まない」との回答も59%に上った。
問題を把握しながらも是正できないでいる実態が浮かぶ。
サ高住と介護事業所の併設には、要介護者が集合住宅にまとまって住んでいるため介護職員の移動コストを省け、収益性が高いという利点はある。
今回の措置も厚労省は「囲い込み」を全否定するものではないとの立場で、根本解決への機運に欠く。
是正に向け、外部の目を通じて必要なサービスを吟味し、過剰な介護に歯止めをかける仕組みが重要となる。ニッセイ基礎研究所の三原岳上席研究員は「ケアプランを作成するケアマネジャーを高齢者住宅の運営事業者から切り離して独立性を高める必要がある」と話す。日本経済新聞 朝刊 経済・政策(5ページ)2024/3/22 2:00