コラム

Q、人事評価の項目は「一般的」「抽象的」な評価項目が多いため、評価が難しく、どうしても評価者の主観で評価してしまい、職員の納得が得られない。

A,

 評価項目を具体的な「行動表現」にすることで、評価がより客観的になり、また職員の課題を具体的に指導できます。

評価することは非常に難しく、評価者訓練を受けないと評価は出来ないと言われています。しかしそれは、評価項目が抽象的で何を評価すればいいのかわからないという原因が考えられます。

評価を行う難しさには、①人によって評価が変わる ②評価項目が不明確なので評価する人も、される人もわかりにくい、さらに③誤評価の原因(ハロー効果、偏り傾向、寛大化など)評価するということに困難さが付きまとっています。例えば「協調性」という表現で終わってしまう評価項目の場合、何が協調性なのか評価者が判断しなければなりません。抽象的な表現は職員をいろいろな視点から評価できることになり有用ですが、評価の公平性や客観性からみるとかなり深い問題が含まれています。具体的な行動表現にすることで、だれでも同じ理解とすることが大切です。

 

【具体的行動表現の実例】

評価項目:「感謝の気持ちをもってご利用者、職員に接する」

を具体的な評価項目にした場合に、例えば下記のような例となります。

例1:ご利用者や職場の仲間に感謝の気持ちで接することが出来、「○○さんのおかげです」や「ありがとう」が素直に笑顔で言える。

例2:ご家族様や見学、来訪者の目を見て、笑顔でお名前を添えて「ありがとうございます」と伝えている。

例3:他部署等の協力や理解があって自分が仕事ができる事に感謝して、相手の状態を配慮し、「お手伝いしましょうか」「何か私にできる事はないですか」と声掛けしている。

①医療分野キャリアパス

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②介護分野キャリアパス

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③保育園のキャリアパス

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Q 当法人では残業は、所属長による許可制としていますが、課長や主任により対応がまちまちでルールが形骸化しています。運用面でどのように改善していけば良いでしょうか。

A 労働時間管理は「時間外労働の管理」といっても過言ではありません。各部署の所属長が残業の必要性を判断し、適切時間を指示するなど、管理職の役割は重要です。職員、個々に勤務時間内に仕事を終える意識をいかにもたせるかが重要です。

一方、始業時刻=出勤時刻、終業時刻=退勤時刻 という認識で時間管理を行っている事業もいまだ多くあります。このような事業所には、労働時間の定義についてまずは指導教育する必要があります。つまり始業終業時刻と出退勤時刻は違うという認識をまずは持っていただくことです。労働時間に関する意味を理解することで、その時間管理意識を持って業務を遂行していくことは、今後、さらに重要なポイントになります。そのためには、まず指導いただきたいのは、時間外労働の「許可制」です。当然ながら業務は所定時間内に行うのが前提ですが、事情により残業になりそうな場合には、その理由と終業時刻を明記し、許可制とする必要があります。それにより、所定外労働割増をつける時間が明確になりますし、何より大切なことは各職員の時間管理意識を高めることができます。ただし、残業の許可制を規定に定めていても、許可を受けない残業のすべてが無効になるかというとかならずしもそうではありません。通常の業務をこなすうえで,所定時間内終わらないような業務量を要求したならば、残業時間に対して、黙示の承認があったということになり、残業時間に該当するという判断になりますので、適宜の指導が必要になります。

 

ただ、残業を所属長の許可制にしていても、申請された残業内容をよく理解せずに全部承認していたり、逆に、明らかに残業が必要な業務量にも関わらず許可をしなかったりと、所属長により対処の仕方はまちまちになりがちです。本当に必要な残業かどうか、どの程度の時間が必要かなどを判断して、適切な許可を与える必要があります。

 

残業許可制運用のポイント

  • 残業の理由を明確にさせる

 「何のために残業をするのか」「なぜ、その業務が残ってしまったのか」を確認します。例えば、許可申請の残業理由に「介護記録作成の為」とだけ記入させるのではなく、「なぜ

介護記録作成業務が残ってしまったのか」を記入させます。そうすることで、原因を本人と上司が確認しあうことで改善に繋げることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別指導や業務の標準化を進める必要があります。

  • 残業内容の緊急性・必要性を判断する

その業務が「要当日処理」か「翌日処理で可」なのかをメリハリをつけて確認します。

またその業務は、「あなたがやらなければならない業務」なのか「次の交代勤務者で対応できる業務」なのかを確認します。

  • 業務の上限時間(目安)を指示する

「その業務は30分で終えて」と目標時間を指示します。業務内容応じて適切な時間を指示することは必要です。但し、このことは「30分以上の残業は認めない」と上限設定をすることではありません。上限を超えて残業していても、事実上、黙認している状況であれば

それは「黙示の承認」に該当します。

 

  • 職員の健康状態にも配慮する

休憩はきちんととれたか、体調にお問題はないか、などを確認します。こうしたことは、日頃の部下とのコミュニケーションで行っておきたいところです。

 

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報酬基準 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

クリニック・医療業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

保育業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

介護業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

 

介護報酬改定の審議会、新たなフェーズに 関係団体の意見を聴取 秋から具体策の議論へ

来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている国の審議会は、今月末に予定されている次の会合から新たなフェーズへ入っていく。

今月7日の会合で、サービスごとに課題や論点などを整理する“第1ラウンド”を終えた。次回からは、審議会に委員を出していない関係団体などを招いてヒアリングを実施していく。厚生労働省は医療・介護の事業者、専門職など幅広い団体から意見、要望を聴取する考えだ。


ヒアリングの後は、いよいよサービスごとに具体策を固めていく“第2ラウンド”へ入る。議論の主要テーマの1つとして「人材確保と現場の生産性向上」を掲げており、これが最大の焦点となりそうだ。


“第1ラウンド”では、多くの委員が介護職員、ホームヘルパー、ケアマネジャーなどの人手不足の深刻さを強調。他産業で賃上げが進むなか人材流出が起きている、との声も続出した。


厚労省は処遇改善に向けた既存の加算の一本化を図る方針。テクノロジーの活用による業務の効率化、負担の軽減を促す新たな施策も検討していく。このほか、医療と介護の連携の強化、自立支援・重度化防止の推進、科学的介護の展開、給付費の抑制などの具体策も提案していく構えだ。

12月には施策の大枠を固める予定。介護報酬改定に全体としていくらの予算を投じるかは、政府・与党が年末に決定する。物価高騰などで苦しむ各サービスの基本報酬がどうなるか、処遇改善がどれだけ進むかもこの決定次第。事業者らは大幅なプラス改定を求めているが、財政が逼迫する中で厳しい判断が下される可能性もある。(介護ニュースより)

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迫りくる通所介護の環境変化 来年度の改正で厳しく問われる事業者のマネジメント力【小濱道博氏】

 

◆ カギは自立支援・重度化防止の成果


今年5月に成立した改正介護保険法では、看多機の役割の1つとして「機能訓練」が明記された。今後、こうした多機能型サービスも機能訓練の場としての役割が強化されていくことになる。リハビリ特化型の多機能型サービスも、今後の差別化の中で登場してくると想定される。


その時、機能訓練を提供しない預かり中心のデイサービスは、更なる苦戦を強いられることになる。すでに、コロナ禍の影響で利用者のニーズやケアマネジャーの価値観は大きく変化しており、機能訓練を提供しないデイサービスが選ばれなくなってきている。


来年度に創設される予定の新しい複合型サービスが、大方の予想通り、デイサービスと訪問介護、もしくは、デイサービスと訪問介護、訪問看護の組み合わせとなった場合、これもデイサービスとの競合関係になることは避けられない。その場合、競争力で勝るのは機能訓練で成果を出す事業所となるだろう。


同時に、LIFEを活用できることも重要となる。LIFEは6月30日から、利用者別フィードバックの提供が始まっている。今はどの事業者もスタートラインで横一線にあるが、今後は確実に事業者間格差が開いていくはずだ。

また、政府が今年の年末までに結論を出すとした、利用者負担2割の対象者の拡大(全体の20%から30%へ)が確定した場合、確実に利用控えが生じて“使われなくなる事業所”が出てくる。そうならないためには、利用者負担が倍額となっても使いたいサービス、使わなければならないサービスであることが求められる。


いずれにしても、来年度の制度改正・報酬改定は、預かり中心の昔ながらのデイサービスにとって大きな逆風となる可能性が高い。今のうちから機能訓練の取り組みを始めないと手遅れになる。そしてLIFEの活用は必須だ。


もっとも、機能訓練の取り組みとはパワリハの導入だけではない。機能訓練には、椅子やボールなど身近な備品を使ってできるプログラムが多数ある。重要なのは、利用者の身体能力を分析して目標を立てるアセスメント課程で、ひとりひとりの状態をしっかりと把握し、利用者に寄り添った機能訓練を提供できるかどうかである。


デイサービスの事業所数は飽和状態にある。2016年から今に至るまでの8年間、事業所数はおよそ4万3000ヵ所でほとんど変わっていない。毎年、相当数のデイサービスが新規開業する裏で、同数の事業所が廃業していることは前回も触れた


その事業所数が、小多機などのケアマネジメントの居宅介護支援への移行や、新たな複合型サービスの創設によって減少に転じる可能性がある。来年度の制度改正・報酬改定がひたひたと近づくなか、デイサービスの経営者にはマネジメント力が問われている。(介護ニュースより)

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東京都多摩市 保育園選考、不公平感なく 「マッチング理論」活用

東京都多摩市がサイバーエージェントと組み、「マッチング理論」と呼ばれるアルゴリズムを活用して待機児童問題の改善に取り組んでいる。認可保育園の入園は、保護者の就労や家庭の状況などに応じた点数(係数)で優先順位が決まることが多い。同市はより公平なルールになるように同理論に基づき見直し、保護者が入園確率を上げるため、あえて人気が低い保育園を希望するといった「保活の裏技」に悩む必要がなくなった。

 多摩市は保育園の入園希望者の選定にマッチング理論を導入している(多摩保育園)

 「素直に入所したい順に記入してください」。同市子育て支援課の窓口では、認可保育園の入園申請に訪れた保護者にこう案内している。

 子どもの保育園を探す「保活」では、点数が低い保護者が、駅に近く便利なため競争倍率が高い保育園を第1希望にすると、落選する可能性が大きい。そこで何とか「当選」を勝ち取るため、定員に余裕がありそうな保育園をあえて第1希望にするような裏技が、SNS(交流サイト)などで知られるようになった。

 多摩市でも、例えば1歳児がいる保護者3人が同じ点数で並んだ場合、人気の保育園を素直に第1希望にした保護者が「待機」になり、定員に余裕がありそうな保育園をあえて第1希望にした保護者は入園が決まるというケースがあった。

 こうなると保護者は入園の可能性を探って、希望する園をどこにするか深読みする必要がでてくる。入園が決まっても、本当の希望ではないため不満が残りやすい。そこで、市はサイバーエージェントが東京大学マーケットデザインセンターの小島武仁教授と研究しているマッチング理論に基づき、点数の配分ルールを一部見直した。具体的には希望順位の高さを点数に加算する「調整ルール」を22年度から廃止した。

 すると、第1希望が通らなかった保護者は第2希望の保育園に決まり、あえて希望ではない保育園を第1希望にした保護者の子どもが待機になるようになった。子育て支援課の吉田和正氏は「保護者は素直に希望する保育園を申請すればよく、他の条件などを考える負担が減った。公平感が高まった」と話す。

 東京都の202341日時点の待機児童数は前年比14人減り、286人と過去最少になった。保育園の新設や拡充が進んだためだが「希望する保育園に入れない」「兄弟姉妹で同じ保育園に入れない例がある」など課題は残る。多摩市の鈴木恭智・子ども青少年部長は「保護者と子どもの満足度向上につながっているか、中長期で確認する必要がある」と話す。

 同センターは保育園の入園制度と似た事例として、公立高校受験の単願制や都立高校の男女別定員制を挙げる。「競争率が低そう」という基準で受験校を選んだり、男子生徒より高得点だった女子生徒が不合格になったりと、同センターの小田原悠朗特任研究員は「結果の公平性がない」と指摘する。

日本経済新聞 朝刊 首都圏東京

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休めども 7割の目標遠く 有給休暇の取得率、58%に改善でも 職場改革、世界に遅れ

企業で働く人の有給休暇の取得率が高まっている。2021年は58.3%3年連続で過去最高を更新した。19年の労働基準法改正で企業に対し、従業員の有給取得に関する義務が加わったことが後押しした。ただ義務内容を正確に理解していない企業も多く、21年の有給関係の法令違反件数は前年の2.8倍となった。25年までに有給取得率70%という政府目標を前に、企業が抱える課題は多い。

 高い有給取得率は人材確保につながる(7月、横浜市のSCSKサービスウェア横浜センター)

「このままなら、正社員の今年度末の有給取得率は94.8%になる」。全国に約5500人の従業員を抱え、コールセンターなどを手がけるSCSKサービスウェア(東京・江東)。7月末、同社の幹部社員ら約100人が集まる連絡会で、秋庭洋一郎・労務部長が推定値を報告した。同社は社員の有給取得に力を入れ、毎月の連絡会で細かい数値を共有する。

秋庭部長は「13年度ごろまで取得率は約6割だったが、19年度80%22年度に84.2%と改善した。社長からは100%取得を目指すよう指示されている」と話す。様々な顧客からの問い合わせに応じなければならないコールセンター業務はストレスを伴う。しっかり有給を取れる環境づくりは、社員のつなぎ留めや採用で効果が大きいという。

  労働基準法39条は、企業などの使用者は、6カ月以上勤務した従業員に基本的に10日間の有給休暇を与えなければならないと定める。有給の日数は、勤続年数によって年20日まで増える。正社員だけでなく、パートタイマーにも勤務日数に応じて有給が与えられる。いつ有給を取るかは原則的に労働者の自由だが、「事業の正常な運営を妨げる」場合は、使用者がその時期(時季)を変更できる。

 

 与えられた有給のうち実際に消化した割合を示す有給取得率は2000年から17年間にわたり5割を切っていたが、17年ごろから大幅に改善。21年は16年に比べ8.9ポイント上昇し、6割に迫る水準になった。取得率向上の大きな後押しになったとみられるのが、19年の労基法改正だ。

 企業にも義務

 働き方改革の一環の法改正で、企業は労働者に有給を与えるだけでなく、実際に取得させる義務も負うようになった。10日以上の有給の権利を持つ労働者に対しては、5日分の時期を指定し取得させねばならない。義務違反には、対象の労働者1人につき30万円以下の罰金が定められている。

 当時法改正を担当した厚生労働省幹部は「過労死するほど追い詰められても休まない日本の実態を変えるため、法学者から異論は出たが労使ともこの形の義務化で合意した」と明かす。

 「人的資本経営」を重視する動きも、企業が従業員の有給取得を促すことを後押ししている。

エスビー食品は、5月に策定した263月期までの中期経営計画で「有給取得率80%」を非財務目標のひとつに入れた。有給が子育て支援や社員の自己研さんなど人的資本充実に効果的とみるためだという。濱畠啓子・人事総務室長は「当社のミッションである『グローバル社会に対応した多様化の推進』に沿った目標設定だ」と話す。 同社は独自の取得促進策を進めてきた。19年には5日間の一斉取得で83%に達したこともある。2122年度とも取得率は76%台で、80%は目前にある。

違反2.8倍に

取得率が改善する一方、問題も露呈している。厚労省の就労条件総合調査によれば従業員1000人以上の企業の取得率63.2%に対し、3099人では53.5%にとどまる。企業規模による取得格差は深刻だ。

さらに21年には、全国の労働基準監督署が定期調査で約122千カ所の事業所を調べた結果、有給関係の違反を指摘されたのが約9800カ所と、前年の約2.8倍になった。

 どの業種もまんべんなく違反が増えている。厚労省担当者は有給について、5日間の時期を指定して取得させる義務を果たしていない例が多いようだと話す。

 司法処分に発展する悪質な例も出ている。217月には愛知県あま市の給食会社が、従業員6人に年5日以上の有給を取らせなかったことで書類送検された。今年5月にも複数店舗を展開する茨城県内の飲食店が、時期指定をせず従業員に有給を取らせなかったことで書類送検された。

 米旅行会社のエクスペディアが2323月に16の国と地域の約14000人を対象とした調査で、上司・会社が休暇取得に協力的か聞いたところ、日本から回答した人のうち「はい」と答えたのは58%で、香港の83%や米国の79%、ニュージーランドの76%に劣る。まだ職場風土の改革は進んでいない。国の目標である取得率70%に近づくためにも、労使双方の努力と考え方の変革が必要となる。 

日本経済新聞 朝刊 2023/8/7 

【核心】その仕事、医師じゃなくても

かつて医療界には動かし難い身分格差が存在した。

 

 山本薩夫がメガホンを握った「白い巨塔」(1966年)は、外科教授の総回診に助教授、助手、看護婦長がつき従い、病室では看護婦がかしずく大学病院の日常を映し出す。こんな因習にとらわれている病院は、よもやもうなかろう。看護師のみならず薬剤師や療法士などとのチーム医療なしには、医師の診察・診療は成立しない時代である。

 

 厚生労働省は来春、病院経営者に医師の残業規制を義務づける。勤務医の働き方改革だ。年間の残業時間上限を過労死ラインとされる960時間(月平均80時間)とする。時限つきの例外として、救急医療などの維持に不可欠と病院側が判断して都道府県に届け出たときは年間1860時間まで残業を認める。

 

 

 

 福岡県久留米市で新古賀病院などを経営する社会医療法人天神会の島弘志・総病院長(日本病院会副会長)は、働き方改革に精通した一人だ。

 

 前職の聖マリア病院(久留米市)で院長をしていた2017年、労働基準監督官の立ち入り調査を受けた経験をもつ。サブロク(36)協定に定めた以上の時間外勤務を医師や研修医にさせた、残業代の割り増しが不足している――などの法違反を指摘され、是正勧告された。

 

 これを受けて乗り出した人事・組織制度の大改革で、島氏は各診療科の外来部門の診療日・診療時間を縮小した。聖マリアは一千床規模の地域中核病院だ。その責務として夜間・休日を含めた救命救急センターには、手厚い医師配置が必要だと考えた末の決断だった。未払いだった時間外賃金は遡って払った。

 

 19年の取材時「最初は、はらわたが煮えくり返る思いだった」と島氏は振り返った。過酷な病院勤務は当然というある種の業界常識にお構いなく、不備を指摘されたことへの恨み節にも聞こえた。だが働き方改革という時代の流れにはあらがえない現実に気づくのも早かった。

 

 この7月、新古賀病院に島氏を再訪した。開口一番「勤務医を(時間規制から外し職務や成果をもとに報酬を決める)高度プロフェッショナルにすればよかった。厚労省内で旧厚生(医療政策)と旧労働(雇用政策)がうまく連携できなかったのは残念だ」と前置きしつつ、改革で医師が患者と接する時間が短くなったとしても「ミスを起こさない体制をつくる」と語った。

 

 基本給が低い若手医師は時間外手当を生活給に繰り入れている現実もある。改革で時間外勤務が減るぶんは手当で補い、総人件費を大きく減らないようにした。

 

 島氏が改革成功のカギを握るとみる一つが、ほかの医療職が医師の仕事の一部を代わって担うタスクシフトだ。

 

 

 

 医療現場がおかれた状況は都市圏と過疎地とで異なる。大学病院からの医師派遣に頼ってきたが、改革で派遣が細り、外来部門を中心に廃止・縮小に追い込まれるのを危惧する病院は地方に多い。患者の不利益を抑えるためにもタスクシフトが肝要だろう。

 

 長崎大病院の松本武浩・医療情報部長も看護師や薬剤師の専門性に期待する。離島や半島、中山間地が多い長崎県は医療界と自治体が連携して拠点病院と診療所をつなぐ患者情報システム「あじさいネット」を構築し、地域医療の質向上に努めている。

 

 その運営委員を兼ねる松本氏は「院内で働く薬剤師は処方箋しか確認できない調剤薬局と異なり、カルテ情報を医師と共有できる。この利点を生かして最新の薬の効果効能や副作用の説明など、本来あるべき服薬指導に専門性を発揮できる」と話していた。

 高齢者など慢性患者がいくつもの診療科にかかり、多種多様な薬を同時に出される多剤投与の問題点を医師に説明し、改善を求めるのも薬剤師の使命になる。

 

 主体的に医療を担う点では看護師も同様だ。日本看護協会の井本寛子常任理事は、働き方改革が「専門性を発揮するよい機会になる」とみる。たとえば救急外来で採血や検査をし、その結果を踏まえた重要な患者情報を医師の診察までにそろえておく。

 

 このケースは、医師の事前指示などがあれば採血が医師法20条に定める治療にあたらず、看護師の意志でできる。済生会熊本病院(熊本市)は従前から、三重大病院(津市)は働き方改革をにらみ、こうした取り組みを強めている。全国に浸透させるには、師長らのリーダーシップで個々の看護師に責任と自覚を促すのが課題になろう。

 

 長寿化で疾病構造は変わりつつあり、患者の暮らしを支える医療の必要性が強まっている。一方、デジタル化と医薬品・医療機器の技術革新は医療現場の密度と作業の煩雑さを高めた。タスクシフトにとって働き方改革はきっかけにすぎない。構造変化を見すえ、もっと踏み込むべきだ。

 

 英国にはナース・プラクティショナー(診療看護師)と呼ばれる資格があり、医師の指示がなくとも一定の患者を診察・診療し、処方箋を出せる。患者の満足度は医師に対するのに劣らず高い。日本で処方箋発行は医師独占だ。

 

 タスクシフトの先駆は高齢者施設のヘルパーに、たん吸引を認めた10年ほど前の規制改革だった。当時この実現には相当の時間をかけた。いま医療界にほしいのは、身分格差を取り払い、フラットな医療チームによる診察・診療を日常にするための、根拠に基づくスピード改革である。日本経済新聞 朝刊 2023/8/7

クリニック・医療業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)

Q 評価者であるリーダーや管理者が、評価や面談に不安感を感じ、職場での実践ができない。どのように指導したらいいでしょうか

A 評価者研修やフィードバック面談研修を受講し、方法論を学び実践で活用している。

 

人事評価を行うことは、上司にとってかなりの負担で、ましてやその結果を部下に説明するフィードバック面談等は大変重荷、などと言うご意見は、評価者の方々からよく伺います。ただ、それは、「評価」という言葉の印象にとらわれている結果であって、実際には評価の仕方を具体的に理解していないがゆえに誤解されているケースがとても多いのです。

評価者として「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を理解し、それを実践すれば、だれでも評価を行うことができます。そのためには、評価者研修等で評価や面談の「ハウツー」をまず学び、それを実践に活かしながら経験を積んでいただく。これ以外に方法はないように思います。

 

①医療分野キャリアパス

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②介護分野キャリアパス

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③保育園のキャリアパス

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【医師の実体験】「患者を見殺しにするのか!」「訴えてやる!」…理不尽な要求を繰り返すモンスターペイシェントとの“壮絶バトル”

スーパーマーケットや飲食店における「クレーマー」や教育現場における「モンスターペアレント」と同様、医療現場においても自己中心的で理不尽な要求を繰り返す「モンスターペイシェント」が現れスタッフを疲弊させていると、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭氏はいいます。今回は筆者の実体験をもとに、モンスターペイシェントの実態と対策についてみていきましょう。

「モンスターペイシェント」とは

「モンスターペイシェント」とは、医師や看護師、医療事務などのスタッフに対して暴力や暴言をふるう、理不尽な要求を繰り返す、診療費を踏み倒す、診療行為を邪魔するなど、自己中心的な行動により医療機関の機能低下をもたらす迷惑な患者のことを指します。

医療スタッフを心身ともに疲労困憊させるモンスターペイシェントですが、境界性パーソナリティー障害など精神疾患をもっているケースも散見されます。実際に遭遇した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

ここでは、筆者が経験した実体験をもとに、モンスターペイシェントに遭遇した際の対策を考えていきましょう。

「どうしてくれる!」…高圧的な態度で理不尽な要求を繰り返した48歳男性

48歳の男性患者Aさんの当院受診の契機は、市町村で実施している特定健診でした。

通常であれば電話予約で日時を決めて実施するものですが、Aさんは初診にもかかわらず「一緒に腹部超音波検査を実施しろ。これまで受診していた病院では健診とセットでしていたからできるだろ。それと、健診だから当然待ち時間もないよう配慮しろ」と、高圧的な口調であり得ない要求をしてきました。

筆者は、対応した医療事務から要求をのむべきか相談を受けました。

一瞬迷いましたが、「なにかの基礎疾患があるのだろう、そのフォローができれば大丈夫か……」と思い予約を受けつけることにしました。

振り返れば、これが「最悪な事態」のはじまりだったのです。

1週間後、予定通りAさんが来院されました。Aさんの依頼内容は、特定健康診断と肺がん検診(胸部レントゲン2枚)、そして腹部超音波検査の3つです。事前の電話の様子から、「対応注意」として慎重な対応を心がけました。

初めの問診も丁寧に行い、その後のレントゲン撮影まではスムーズでした。そう、レントゲン撮影までは……

“腎臓が悪いのは知っているはずだ!保険診療で検査しろ!”

その後、血液検査を行う際、看護師に対して次のように言いました。

患者A「私の腎臓が悪いのは知っているはずだ。特定健康診断の項目では電解質や腎機能の評価は対象ではない。保険診療で同時にやれ」

……無茶な要求です。

看護師から報告を受けた筆者はAさんを再び診察室に呼び入れ、「健康診断と慢性腎不全の同時検査は保険診療と健康診断との混合診療になるので、腎機能障害の検査と腹部超音波に関しては保険が認められず、すべて自費になります」と説明しました。

すると、Aさんは声を荒げて「この病院はぼったくりだ!」「金がない病んでいる患者から儲けている!」「民間企業ではありえない!」「院長を始めスタッフのカスタマーサービスの基本がなっていない!」などと、わめき始めました。

やむなく警察のお世話になるかと思いましたが、他のスタッフなどが集まってきたことや、他の患者からの視線を気にしたのか、やがて収まりました。結局、腎臓超音波検査と特定健康診断で含まれない腎機能検査は後日行う旨を伝え、なんとか説得した形です。

しかし、その後血液検査で針を刺して抜いた際「ああ、しびれた。左手が全然動かない。これじゃ仕事にならない。どうしてくれるんだ」と言いがかりをつけてきました。筆者は再び看護師から相談を受け、すぐに診察室に案内しAさんのクールダウンを図ります。

「こちらの落度があるかもしれませんが、実際のところは判断できません。こちらは適切に検査を実施したので、改善しなければ客観的な判断を仰ぐため、他医療機関へ紹介して評価します」と、担当したスタッフをフォローしながら返答しました。

Aさんはお金のことになるとスイッチが入るようで、「自分が受診する時間と診察費用、返してもらうからな」と吐き捨てられましたが、なんとかその場をしのぎました。

院長vs.モンスター…「直接対決」の結末は

衝撃の「待ち伏せ」

それから2週間後、Aさんは特定健康診断の結果を聞きに来院されましたが、診療受付時間を10分過ぎていました。

受付スタッフが、その日は対応ができない旨を話したところ、「診療時間外でも普通は診るだろう。患者を見殺しにするのか」と言い残し、去って行きました。

しかし、なんとクリニックの裏口でAさんの妻と思われる女性と落ち合い、筆者が出てくるのをストーカーのように待ち伏せていたのです。診療が終わり、医師会の休日夜間診療所の当番に向かおうと思った矢先、Aさんの顔を見た筆者は唖然としました。

やむなく、その場で話し合いです。「診療時間をもっと延ばせ、診療受付時間と実際の診療時間が異なるのは詐欺だから、しかるべきところに通報するぞ」とAさんは口調を高くしていましたが、筆者が警備員に電話で通報するふりをしたところ、逃げ出しました。

“弁護士に訴えてやる!”

その2週間後、肺がん検診の結果がまだ出ていないにもかかわらず、夕刻にAさんから電話がありました。「院長と話したい。17時に行く。空いているだろう」と一方的に切られ、その後いきなりクリニックに現れたのです。

この時点で、特定健康診断の結果は判明していたため、筆者はAさんに高脂血症があることを伝えました。「内服治療は行わず、生活習慣を改善して検査データを定期にフォローアップしていくと説明し、納得していただきました。

しかし、検査結果を渡す指定の用紙に記載した「判定 3:要医療」という文がお気に召さなかったのか、後日、病院と院長宛てにメールが届きました。

「『判定 3:要医療』とはどういうことだ。院長は『経過観察』と言った。でも要医療ということは、無駄な薬を出そうとしているに違いない」

その後、診察中に電話もかかってきたので、筆者はやむなく話を聞きました。Aさんは、「話の内容は録音しているし、メールも記録を残している。これを弁護士にいって法的に訴え、Google Mapで多数の最低な口コミを書いて受診患者を減らしてやる」と言います。

筆者は考えを巡らせ、患者やスタッフがいない時間外を指定し、警備会社をスタンバイした状態でお越しいただきました。

筆者も録音器具を用意しており、Aさんの「法的に訴える」という言い分は同じでしたので、感情的にならず記録をとり「気に入らなければ管轄の医師会や、保健所、県の医療安全相談にも通告してください。こちらも法的に対処しますし、いまこの場で弁護士さんに電話してもよろしいでしょうか?」と伝えました。

「私の腎臓のフォローはどうしてくれるんだ」というAさんには、「他医療機関へどうぞ」と。肺がん検診の結果に緊急性がない場合、信頼関係がなく医療ができない場合には他医療機関への紹介が妥当で適切であることを示しました。

下記判決※や他クリニックの事例など、客観的な法的根拠を文書などで示したところ、Aさんは以後突然訪問して長く話し込んだり、理不尽な言いがかりをつけたりすることは一切なくなりました。

※ 弘前簡易裁判所(平成23年12月16日判決)では、「診療行為には信頼関係が必要であり、信頼関係が失われたときには、患者の診療・治療に緊急性がなく、他に対応できる医療機関等が存在する場合には、医師がこれを拒絶しても、正当事由がある」と判断された。診療契約が結ばれている場合においても、「基本的な患者医師の信頼関係が破綻しているか」がポイントである。

まとめ

「モンスターペイシェント」に対しては、こちらが感情を乱すことなく、院内スタッフと相談し、また院外の相談窓口を利用し、さらに緊急時に備えて警備会社と連携して、とにかく1人で抱え込まないことが重要です。

また、患者の訴えを無下にせず、同時にスタッフを守るという姿勢を貫くことが難局を乗り越えるポイントになるのだと、身をもって学びました。

今回の事例を参考にされてはいかがでしょうか。

著者:
武井 智昭(たけい ともあき)

小児科医・内科医・アレルギー科医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業。
多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。
感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。
提供:
© Medical LIVES / シャープファイナンス

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介護事業所の書類提出、原則として電子化へ 厚労省が自治体に早期の環境整備を要請

厚生労働省は7月31日、自治体の介護保険の担当者に当面の制度改正や重点課題などを説明する会議(全国介護保険担当課長会議)の資料を公式サイトに掲載した

介護施設・事業所と自治体との書類のやり取りを効率化する「電子申請・届出システム」に言及。事務の効率化に向けてこのシステムの活用を原則化する方針を改めて示し、全国の自治体に早期の利用開始を重ねて要請した。


「電子申請・届出システム」は、ペーパーワークを少なくして介護現場の事務負担を軽減する施策の一環として、国が既存の「介護サービス情報公表システム」を改修して構築したもの。介護施設・事業所の指定申請、変更届出、更新申請、報酬請求などの手続きに必要な書類の提出を、個々のPCからクラウドで実行できるようにする仕組みだ。


厚労省は介護保険のルールを改正し、やむを得ないケースを除いてこのシステムを活用することを介護事業者に求めていくことにした。あわせて全国の自治体には、2026年3月までに必要な準備を完了させるよう指導している。

課長会議の新たな資料では都道府県などに対し、「早期の利用開始について再度ご検討を」と要請。「事業所の負担軽減の観点からも、管内の市区町村に早期の利用開始を強く促して頂き、小規模自治体へのフォローなどもお願いする」と呼びかけた。(介護ニュースより)

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