コラム
1. はじめに:人手不足の裏に潜む「採用リスク」
医療、介護、保育の現場において、人手不足は深刻な経営課題です。「一人でも多くの職員を確保したい」という切実な思いから、採用基準が緩やかになってしまったり、選考時の確認が不十分になったりするケースは少なくありません。
しかし、こうした状況を背景に、近年増えているのが「経歴詐称」を巡るトラブルです。 「以前の職場をトラブルで辞めたことを隠していた」「持っていると言っていた資格が実は嘘だった」……。発覚した時、経営者や事務局長が抱く憤りは計り知れません。
「嘘をついて入職したのだから、即刻解雇だ!」 そう考えるのは自然な反応ですが、労働法という枠組みの中では、たとえ嘘があったとしても「直ちに解雇」が認められるとは限りません。一歩間違えれば、法人側が「不当解雇」として訴えられるリスクすら孕んでいます。
本記事では、医療・介護・保育専門の社労士の視点から、経歴詐称があった場合の解雇の妥当性と、組織を守るための具体的な実務対応について詳しく解説します。
2. 経歴詐称と解雇の法的判断基準
職員の採否を判断する際、応募者の経歴は極めて重要な判断材料です。法人は「誰を雇うか」を決める「採用の自由」を持っており、その判断のために真実を申告させる権利があります。
履歴書の記載や面談での回答に虚偽があり、「もし真実を知っていたら採用しなかった」と言えるほど重大なものであれば、解雇の理由は「客観的に合理的な理由」があるとみなされやすくなります。
しかし、裁判例では「全ての詐称が解雇有効になるわけではない」という厳しい現実があります。解雇が有効になるためには、その詐称が「採用の判断にどれほど決定的な影響を与えたか」という重要性と、それによって「職場秩序がどれほど乱されたか」という程度が厳格に問われます。
主に対象となる4つのパターンから、具体的なリスクを見ていきましょう。
3. 経歴詐称の4つの類型と解雇の有効性
① 資格・免許の詐称(重要度:高)
医療・福祉業界において最も深刻なのがこれです。 医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、保育士などの国家資格が必要な職種において、無資格であるにもかかわらず資格を偽った場合、これは単なる「嘘」に留まりません。
-
リスク: 無資格者による業務提供は法律違反であり、診療報酬や介護報酬の不正受請求、さらには行政処分や実地指導での全額返還へと直結します。
-
判断: この場合の解雇は、有効とされる可能性が極めて高いといえます。業務遂行の前提条件を欠いているため、雇用の継続は不可能と判断されるからです。
② 職歴の詐称(重要度:中〜高)
「転職回数が多いと不利になるから隠す」「前職を能力不足や素行不良(ハラスメント等)で懲戒解雇されたことを隠す」といったケースです。
-
リスク: 医療・介護現場はチームケアが基本です。前職でのトラブル隠しは、現場の人間関係を崩壊させる火種となります。
-
判断: 単なる数ヶ月の期間のズレなどは「軽微」とみなされがちですが、懲戒解雇歴の隠匿や、重要な役職経験の捏造(例:施設長経験があると偽る)などは、重大な詐称として解雇が認められる可能性があります。
③ 学歴の詐称(重要度:低〜中)
かつては「高卒を大卒と偽る」ことが重い詐称とされましたが、実務能力重視の昨今では、学歴だけで解雇を有効にするのは難しくなっています。
-
リスク: 学歴によって初任給や手当が細かく規定されている法人の場合、不当に高い賃金を支払わされることになります。
-
判断: 給与計算の根拠が学歴に依存しており、それによって大きな賃金格差が生じていた場合、秩序を乱したとして懲戒対象になる可能性はありますが、解雇まで認められるかは慎重な判断が必要です。
④ 犯罪歴の隠匿(重要度:ケースバイケース)
意外かもしれませんが、犯罪歴があることだけをもって直ちに解雇できるわけではありません。
-
判断: 裁判例では、刑の執行から10年以上経過している場合や、業務と無関係な軽微な罰金刑などは、告知義務がない、あるいは解雇理由として不十分とされる傾向があります。
-
特例: ただし、保育現場での児童性犯罪歴や、高齢者施設での虐待・窃盗歴など、「対象となる利用者への安全確保に直結する職歴・犯罪歴」については、より厳しく判断される傾向にあります。
4. 医療・介護・保育現場だからこそ問われる「管理責任」
一般企業と異なり、私たちの業界には「公費」が投入されています。 もし経歴詐称(特に資格や職歴)を見逃したまま雇用を続け、現場で事故が起きた場合、法人が受けるダメージは「解雇の有効性」というレベルでは済みません。
-
利用者・家族からの訴訟: 「資格のない人間にケアをさせていたのか」という追及。
-
行政処分: 指定取り消しや加算の返還。
-
社会的信用の失墜: 地域での評判が悪化し、採用難に拍車がかかる。
だからこそ、経歴詐称への対応は単なる「不誠実な職員の排除」ではなく、「法人のガバナンス(統治)と利用者の安全を守るための必須業務」なのです。
5. トラブルを未然に防ぐ「3つの防衛策」
発覚してから解雇を争うのは、多大な時間と労力、そして弁護士費用を要します。最初から「嘘をつかせない」「嘘を見抜く」体制を作ることが最善の策です。
防衛策1:エビデンス(証拠)確認の徹底
「原本」の確認を徹底してください。
-
資格証の確認: コピーではなく原本を持参させ、裏書き(更新履歴)まで確認します。必要に応じて、厚労省のデータベース等で登録番号を照合します。
-
離職票・年金手帳の確認: 入社手続き時に提出される書類の履歴と、履歴書の職歴が合致しているか、事務担当者が必ずクロスチェックを行います。
防衛策2:採用選考の精度向上
面接だけでは嘘を見抜くのは困難です。
-
リファレンスチェックの検討: 本人の同意を得た上で、前職に勤務状況を確認する。
-
実技試験の導入: 介護現場なら移動介助、保育現場ならピアノや読み聞かせなど、短時間の「実技」を取り入れるだけで、職歴詐称(未経験なのに経験者と偽る等)は一目で見抜けます。
防衛策3:入職時のリーガル・セットアップ
万が一の時に「解雇の正当性」を主張できるよう、仕組みを整えます。
-
誓約書の提出: 「提出書類の内容に相違ないこと」「虚偽があった場合は解雇を含む懲戒処分に異議を唱えないこと」を明記した誓約書を入職時に取ります。
-
就業規則の整備: 懲戒規定の中に「重要な経歴を詐称して採用されたとき」を明確に盛り込み、具体的な懲戒の種類を定めておきます。
6. まとめ:専門家の視点をバックオフィスに
経歴詐称が発覚した際、感情的に「明日から来なくていい」と伝えてしまうのが、最も危険な初動です。たとえ相手に非があっても、手続きを誤れば「解雇権の濫用」となり、多額の解決金を支払う羽目になりかねません。
まずは、その詐称が業務にどのような影響を及ぼすのかを冷静に分析し、就業規則に基づいた正しいステップ(事情聴取、弁明の機会の付与など)を踏むことが重要です。
私たち「社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング」は、医療・介護・保育業界に特化した人事労務のプロフェッショナルとして、数多くの現場トラブルを解決してきました。
私たちのBPOサービスでは、給与計算などの事務代行だけでなく、こうした「入職時のリスク管理」や「就業規則の運用サポート」をセットで提供しています。事務局の負担を減らしつつ、法人のガバナンスを強化したい経営者の皆様、ぜひ一度ご相談ください。
「正しい採用」が「質の高いケア」を生み、それが「健全な経営」へと繋がります。あなたの法人のバックオフィスを、リスクに強い、創造的な組織へと変えていきましょう。
執筆者:社労士法人ヒューマンスキルコンサルティング 代表 林 正人 (医療・介護・保育専門社会保険労務士)
ベースアップ評価料が、大きく変わります
ベース評価料の対象が拡大
ベースアップ評価料の対象となる職員に、事務職員、40 歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師が加わります( 経営者、役員等は除く)。
また、歯科技工所や薬局等にも対象が拡大され、「歯科技工所ベースアップ支援料」と「調剤ベースアップ評価料」が新設されます。
新しいベースアップ評価料の仕組みは?
すべてのベースアップ評価料が、2026 年6 月と2027 年6 月の2 段階で引き上げられます。
外来・在宅ベースアップ評価料、歯科外来・在宅ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料は、2025 年度以前から継続的に賃上げ
を行っているかどうかで、評価が異なります。継続して行っている医療機関等には追加の評価が加えられる仕組みです。
入院ベースアップ評価料には、異なる評価方法は設けられていません。代わりに、次のいずれかを満たさない医療機関には、入院基本料など入院基本料等に減算規定が適用されます。
・2026年3月31日時点で入院ベースアップ評価料の届出をおこなっている
・2024年3月と比較して、継続的な賃上げを行っている
・2026年6月1日以降に新規開設した
さらに、届出や実績報告等の簡素化も行われます。詳しくは下記サイトでご確認ください。
参考: 厚生労働省 令和8 年度診療報酬改定について
ht t ps: //www. mhl w. go. j p/s t f /newpage_ 67729. ht m
保育・教育施設向けICTサービスを提供する株式会社コドモン(本社:東京都品川区、代表取締役CEO:小池義則、以下 コドモン)は、豊中市と連携して推進する「保育ICTラボ事業」の成果報告の場として、オンラインセミナー「豊中市と学ぶ!保育AIによるデータ利活用と保育ICT化の加速のヒント」を開催しました。
本セミナーには全国各地から100名にお申込みいただき、業務省力化にとどまらない保育ICTの活用や、地域全体でのICT活用支援のあり方をテーマに、保育AIの導入や往還型研修などの取り組みを通じて得られた成果を紹介しました。
保育ICTに蓄積されたデータと保育AIを活用した「保育実践の向上」に取り組む先進的な事例として、聖ミカエル保育園による実証の内容と、現場におけるAI活用の可能性についても報告されました。
■こども家庭庁が推進する「保育ICTラボ事業」とは
保育ICTラボ事業とは、こども家庭庁の助成のもと、保育ICTの導入・利活用における効果的
なロールモデルを創出し、全国への魅力発信を図る事業です。コドモンでは、2025年度に茨城県つくば市と大阪府豊中市と連携していました。
■豊中市での「保育ICTラボ事業」の取り組みと背景
保育現場では、ICT導入が進みつつある一方で、以下の課題が全国的に共通して見られます。
●保育ICTの必要性を感じていない
●今、保育ICTに使えるお金や時間がない
●保育ICTの導入をどのように進めれば良いのかわからない
こうした課題を解決するため、本事業では「保育ICTの導入効果が分かる事例の創出」と「ICT導入や活用を後押しできる支援体制の構築」に重点を置いた検証を行いました。
具体的に、豊中市の「保育ICTラボ事業」の取り組みでは、①保育AIを活用した保育の質向上の検証、②保育ICTの活用に関する往還型研修の2つの取り組みを通じて、ICT活用が保育実践の向上および現場の意識変化に寄与することを確認しました。
■主な取り組みと成果
① 保育AIを活用した保育実践の向上
【取り組みの特徴】
保育現場で作成された連絡帳や指導計画、写真などのデータをもとに、保育知見に特化したAIを、保育者の振り返りや検討支援に活用し、以下のような分析・示唆が提供されました。
●園児の特性の可視化
●保育内容の整理・分析
●次の発達を促す「遊び」の提案
【成果】
現場では、主に次のような変化が見られ、保育AIの活用により、保育実践の向上に寄与することが確認されました。
●子ども理解の向上
●保育者の声かけの質の変化
●園全体での情報共有の促進
② 往還型研修
【取り組みの特徴】
豊中市内の9施設を対象に、学びと実践を繰り返す「往還型研修」を実施しました。
●年4回の集合研修
●各回ごとに実践課題を設定
●他施設との対話・共有
【成果】
●ICT未導入施設の導入決定・検討開始
●ICT導入施設における情報共有のデジタル化や、保育業務そのものの見直し等
成果報告会の参加者からは、「他園の取り組みを知ることで前向きになった」「業務改善のきっかけになった」といった声が寄せられました。
■本事業から得られたポイント
本実証により、以下の重要な知見が得られました。
●ICT活用の「成功事例の可視化」が導入意欲を高める
●施設同士の「横のつながり」が推進力になる
●ICT活用は「業務改善」と一体で進めることが重要
●データの蓄積が将来的な保育実践向上の基盤となる
厚生労働省は28日、「介護情報基盤(*)」を導入する事業所を後押しする助成金の今年度の支給について、5月7日(木)から申請の受け付けを開始するとアナウンスした。
* 介護情報基盤=介護保険証や要介護認定、主治医意見書、ケアプラン、LIFEデータといった現場で必要な情報を、利用者、事業所、医療機関、市町村などがオンラインで迅速に閲覧・共有できる新たなインフラ。厚労省は今年度から活用を順次スタートし、2028年4月までに全国すべての市町村で運用を始める準備を進めている。
介護保険最新情報のVol.1497で現場の関係者へ広く周知している。
昨年度に続いて実施される支援策で、申請期間は5月7日から来年3月12日(金)まで。厚労省は「介護情報基盤ポータル」経由で申請を受け付ける。「予算には限りがあるのでぜひ早めの申請を」と呼びかけている。
対象経費は、カードリーダーの購入費や介護情報基盤との接続サポートに要する費用など。「ケアプランデータ連携システム」の接続サポートを一体的に受ける場合も対象となる。
助成金の上限額(消費税分を含む)はサービス種別ごとに設定されている。以下の通りだ。
▽ 訪問・通所・短期滞在系=最大6.4万円(カードリーダー3台まで)
▽ 居住・入所系=最大5.5万円(同2台まで)
▽ その他=最大4.2万円(同1台まで)
同一の事業所で複数のサービスを提供している場合は、それぞれの限度額を合算することが可能。申請の詳細は「介護情報基盤ポータル」で確認できる。
2027年度介護保険法改正・報酬改定に向け、いよいよ議論が開始
2025年12月25日に介護件部会から報告書「介護保険制度の見直しに関する意見」が公表され、いよいよ具体的な各論についての深い議論が行われる「介護給費費分科会」が開始となった2026年4月27日。2027年度の法改正・報酬改定の動向が気になる皆様にとっては今後、要注目の会となる訳ですが、初回の会議では「令和8年度介護従事者処遇状況等調査の実施について(案)」「令和8年度介護従事者処遇状況等調査調査票(案)」「介護分野の最近の動向」そして「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について」計4種類の資料をもとに議論が進みました。今回のニュースレターにおいてはその中から、大枠ながらも今後の議論の全体像がイメージしやすい「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について(以下、「本資料」と表記)」の資料の内容について皆様にお届けしてまいります。
「令和9年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について」に記載された内容とは
では、早速、中身を確認してまいりましょう。以下は本資料に記載されたすべての内容をそのまま反映しています。先ずは、前回の法改正に関する総括・論点整理についてです(重要と思われる部分については下線を引いています。以下、同じ)。
○ 令和6年度介護報酬改定においては、いわゆる団塊の世代がすべて 75 歳以上となる 2025 年を見据え、診療報酬との同時改定であること等を踏まえ、以下の4つの項目を柱とし、改定を行った。
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
2.自立支援・重度化防止に向けた対応
3.良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
4.制度の安定性・持続可能性の確保
次に、昨年度、2027年度報酬改定を待たずに今年度(2026年度)から先行して開始された処遇改善、及び食材料費の緊急対応に関するあらためての確認についてです。
〇 また、「「強い経済」を実現する総合経済対策」(令和7年 11 月 21 日閣議決定)において、「介護分野の職員の処遇改善については、累次の取組を講じてきた結果、介護職員の賃金は改善してきたものの、他産業とはまだ差があり、人材不足が厳しい状況にあるため、他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度介護報酬改定において、必要な対応を行う」とされたことを踏まえ、令和9年度介護報酬改定を待たずに期中改定を実施し、介護分野の職員の他職種と遜色のない処遇改善に向けた措置に加え、近年の食材料費の上昇を踏まえた緊急的な対応として、食費の基準費用額の引上げを行うこととした。
上記を踏まえ、令和9年度報酬改定に向けた大枠の概念が下記の通り示されています。
○ こうした状況を踏まえれば、令和9年度介護報酬改定においては、介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもと、介護サービス事業者の経営状況等について把握した上で、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施する必要がある。
一方、報酬改定面だけでなく、法改正全体に関する基本的な考え方や方向性、及び議論すべき論点についての記載も為されています。
○ その上で、令和9年度介護報酬改定に向けては、65 歳以上の高齢者数がピークを迎え介護と医療の複合ニーズを抱える 85 歳以上人口も増加する 2040 年を見据えつつ、自治体・地域の規模によって、高齢化や人口減少のスピードには大きな差が生じることが見込まれ、サービス需要の変化が様々となり、地域の実情に応じたサービス提供体制を構築していくことが重要であることや、介護保険制度の持続可能性を確保するために介護給付の効率化・適正化に取り組む必要があることなどを踏まえ、令和6年度及び令和8年度の介護報酬改定に関する審議報告並びに令和7年の社会保障審議会介護保険部会意見書における指摘などに基づき、各サービスの論点とあわせ、例えば以下のような分野横断的なテーマを念頭に置き、議論してはどうか。
・人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
・地域包括ケアシステムの深化
・介護人材確保に向けた処遇改善等と職場環境改善やケアの質の向上に向けた生産性向上等
・制度の安定性・持続可能性を確保する報酬の在り方
※今後議論を進める中で変更することは想定される。
最後に、上記議論を進行していく上での今後のスケジュール感についてです。
【スケジュール案】
令和8年
4月~夏頃 : 主な論点について議論
事業者団体等からのヒアリング
10~12 月頃 : 具体的な方向性について議論
12 月中 : 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ
※地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う。
令和9年度政府予算編成
令和9年
1月頃 介護報酬改定案 諮問・答申
議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切
以上、今回は4月27日の給付費分科会の内容から、1つの資料に絞って内容をお届けしてまいりました。上記の通り、今後は2026年末~2027年初めに向けて様々な議論が展開される訳ですが、介護経営者としてはそれら全体に目を通す中、「こうなるかもしれない」という最終的な結論だけでなく、「何故このような改正が行われる可能性が高いのか?」という、文字の裏に潜む意図や背景、メッセージを温度感も含めて理解する姿勢がますます求められることと思います。その意味においても早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しつつ、「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」等々、幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。
私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。
※本ニュースレターの引用元資料はこちら
↓
第256回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72489.html
人事評価制度の構築サポートをしていると、必ずといってよいほど出てくるご質問があります。
「役職と等級って、分けた方がいいんですか?」
これ、本当によくいただきます。ちょっとモヤモヤしている経営者さまや人事担当の方も多いのではないでしょうか。
■まず「役職」と「等級」って何が違うの?
「役職」というのは、課長・部長・マネージャーなど、組織上の「ポスト(席)」のことです。
一方「等級」とは、その人の習熟度や役割の大きさを段階的に表したものです。
「部長」「課長」という役職と、「M1」「L2」といった等級が混在している会社はとても多いのですが、これが混在したままだと、どちらかが形骸化しやすくなってしまいます。
■なぜ分けた方がよいのか
例えば、役職(ポスト)に等級が連動してしまっていると、こんなことが起きやすくなります。
・ポストが空かないと昇進できない(=優秀な人が昇格できない)
・役職がないと評価や給与が上がりにくい(=専門職の人が報われない)
・役職を外すと給与も一気に下がって本人が傷つく(=必要な人事異動ができない)
これは、役職と等級が「くっついてしまっている」状態から起きることです。
役職はあくまでも「今その会社でどのポストに就いているか」であって、「その人のスキルや役割の大きさ」とは必ずしも一致しないのです。
■役割等級制度では「等級」が主役
A4一枚評価制度でおすすめしている役割等級制度では、まず「等級」を中心に設計します。
管理職(M)・指導監督職(L)・一般職(S)といった大きなくくりと、その中の段階(M1・M2・M3など)が「等級」です。
そして「役職」(課長・部長・チームリーダーなど)は、あくまでも「今の組織上のポスト名」として分けて考えていきます。
こうすることで、
・ポストがなくても等級は上がれる
・役職を外れても等級が下がるわけではないので本人のプライドも守れる
・専門職コースなど、管理職にならなくても処遇を上げていける
という柔軟な運用ができるようになります。
■ただし「分けない方がよいケース」もある
一方で、社員が5~10名程度の小さな会社では、等級と役職を分けることで「なんだか複雑になりすぎてわかりにくい」という声も出てきます。
そういった場合は、等級と役職をほぼ同義で運用してしまうシンプルな設計の方が現実的に機能することも多いです。
大事なのは「正解の形」を求めることではなく、
「今の自社の規模・組織・課題に合った形にする」こと。
役職と等級を分けることで、複雑さと引き換えに柔軟さが手に入ります。どちらをより重視するか、自社の状況で判断していきましょう。
人事評価制度は、精緻に作ることが目的ではありません。
社員が「自分はどこに向かって成長すればよいか」を理解でき、会社が「誰をどう育て、どう処遇するか」を整理できる。
そのための「道具」として機能してこそ、はじめて意味を持ちます。
役職と等級の設計も、そんな視点で一度ご自身の会社の現状を確認してみてはいかがでしょうか。
■ 記事
求人サイト「ジョブメドレー」を通じて保育士として入職した5,830人のデータを分析した結果、応募から入職までにかかる日数は「平均54.3日」であることが分かりました。求職者の就業状況によって大きな差があり、離職中の場合は平均36.3日ですが、働きながら転職活動をしている(就業中)の場合は平均64.3日かかっています。一方で、20代から50代まで年代による入職期間の差はほとんどなく、どの年代でも入職までに平均50日以上を要していることが明らかになりました。
■ 採用担当者にとっての学び
労働力不足が深刻化する中、「いつまでに人材が欲しいか」という自社のニーズに対して、採用活動のスタート時期を逆算して設計することは人事の基本かつ最重要項目です。特に優秀な人材や経験豊富なベテラン層は、在職中から転職活動を行っているケースが多く、前職での引き継ぎやクラス担任の都合で入職までに2ヶ月以上の期間を要することを前提にする必要があります。焦って採用基準を下げることのないよう、データに基づいた余裕のある採用スケジュールの構築が求められます。
■ 自分の事業所で検討できること
自園の年間採用スケジュールを再点検し、「欠員が出てから慌てて募集する」のではなく、数ヶ月先を見据えた継続的な母集団形成を行う体制へシフトしましょう。
また、就業中の優秀な応募者(特に経験豊富な50代以上のシニア層を含む)を取りこぼさないよう、オンライン面接の導入や、土日・夜間の面接対応など、相手の状況に合わせた柔軟な選考プロセスを整備することが重要です。内定を出してから入職までの期間が空く場合は、定期的な連絡や事前見学会への招待など、入社意欲を維持するためのフォローアップ(内定者リテンション)の仕組みづくりも併せて検討してください。
生労働省は21日、LIFE(科学的介護情報システム)の運営主体を国保中央会へ移管することに伴う通知を出し、介護保険最新情報Vol.1495で周知した。
事業所・施設がLIFE関連加算を詳細な運用ルールを明らかにした。
今回の運営主体の移管は「介護情報基盤」の稼働開始に伴うもの。今回、厚労省はQ&Aで全サービス共通の留意事項を整理している。実務上の主なポイントは以下の通りだ。
◯ 提出する様式情報に変更はなく、情報の提出先が国保中央会へ切り替わる。
◯「少なくとも3ヵ月ごと」という情報の提出頻度は、厚労省が運用していた旧システムへ最後に提出した月から起算して差し支えない。
◯ 既に旧システムを利用している事業所・施設は、移行作業を終えれば改めて新システムで新規の利用申請をする必要はない。
厚労省はあわせて、「旧システムへ既に提出している様式情報は、新システムへ再び提出する必要はない」と説明した。
ただし、システムの移行作業を行った月のサービス提供分のデータを提出する際は注意が必要だ。同月中に旧システムで一部の利用者のデータを提出している場合、移行後の新システムで改めて全員分を提出する必要があるという。
厚労省はこのほか、旧システムでの新規の利用申請を4月22日19時で締め切ることや、運営主体の移管に伴う「ADL維持等加算」の経過措置なども提示した。
今回の運営主体の移管は「介護情報基盤」の稼働開始に伴うもの。事業所・施設には、7月末までの移行期間内に電子証明書の取得や利用者情報の再登録といった対応が求められる。
「少し気に入らないことがあるとすぐに『辞める』と言い出す職員がいる」
介護施設、保育園、クリニックの現場で、このような相談は非常に多く寄せられます。
周囲の士気を下げ、業務にも支障をきたすため、「いっそ本当に辞めてもらえないか」と考える経営者・管理職も少なくありません。
では実務上、「辞める」と発言した事実だけで退職扱いにすることはできるのでしょうか。
結論から言うと、一定条件を満たせば可能ですが、慎重な判断が必要です。
本記事では、トラブルを防ぎながら適切に対応するためのポイントを、判例と実務の視点から解説します。
退職の成立は「誰に伝えたか」で大きく変わる
まず重要なのは、「辞める」という発言が誰に対して行われたかです。
権限者に伝えた場合
院長、施設長、理事長、事務長など、人事権を持つ者に対して退職の意思を伝えた場合は、口頭であっても退職の申し出と評価される可能性があります。
つまり、この時点で「退職の意思表示」が成立していると判断される余地があります。
同僚や先輩に話しただけの場合
一方で、同僚や先輩職員などに対して「もう辞める」と話しただけでは、
法的な退職意思表示とは認められません。
現場ではよくあるケースですが、この段階で会社側が「辞めると言っていたから退職扱いにした」という対応をすると、後にトラブルになるリスクが高いです。
判例から見る「退職の成立」と「撤回」
退職を巡るトラブルでは、過去の裁判例が重要な判断基準となります。
① 退職が成立し、撤回できないケース
最高裁判例(昭和62年9月18日)では、
人事部長が退職願を受理したことは、会社側の承諾にあたる
とされ、退職は合意解約として成立し、その後の撤回は認められないと判断されています。
つまり、
- 労働者が退職の意思を示す
- 使用者側がそれを承認する
この2つが揃えば、退職は確定します。
② 撤回が認められるケース
一方、岡山地裁(平成3年11月10日)では、
人事権のない職員が退職届を預かっただけでは承諾とはいえない
とされ、退職の撤回が認められました。
この判例から分かるのは、
👉「誰が受け取ったか(承認権限の有無)」が極めて重要
という点です。
「辞める発言」で退職扱いにするための実務ポイント
では、問題の職員が会議や面談で「辞めます」と発言した場合、どう対応すべきでしょうか。
結論として、適切な手続きを踏めば自己都合退職として扱うことは可能です。
ただし、以下の対応を怠ると、後で「言っていない」「本気ではなかった」と争われるリスクがあります。
① 退職意思の“念押し”を必ず行う
感情的な発言なのか、本気の意思なのかを明確にする必要があります。
具体的には、以下のように確認します。
- 「今の発言は退職の意思で間違いありませんか?」
- 「正式に退職するという理解でよろしいですか?」
この確認を曖昧にすると、後で撤回を認めざるを得ない可能性が高まります。
② 退職日をその場で確定させる
退職意思が確認できたら、退職日を具体的に決めることが極めて重要です。
- 「いつ付けで退職しますか?」
- 「最終出勤日はいつにしますか?」
退職日はトラブルの火種になりやすいため、その場で明確に合意しておく必要があります。
③ 必ず書面(退職届)を提出させる
口頭でも退職は成立する可能性がありますが、実務上は非常に危険です。
必ず以下を行いましょう。
- 退職届の提出
- 日付・署名の確認
- コピー保管
これにより、「言った言わない」の争いを防ぐことができます。
よくある誤解:「口頭だから無効」は間違い
現場では、
「書面がないから無効では?」
という誤解が多く見られます。
しかし実際には、口頭でも退職の意思表示は有効です。
重要なのは、
- 明確な意思表示があったか
- 会社側が承認したか
という点です。
注意点:安易な“退職扱い”は逆にリスク
「辞めると言ったから辞めさせた」と安易に処理すると、以下のリスクがあります。
- 不当解雇と主張される
- 損害賠償請求
- 労基署・労働局対応
特に、感情的発言をそのまま退職扱いにするのは危険です。
実務対応の結論(現場で使える判断基準)
問題職員への対応としては、次のように整理できます。
- 同僚への発言 → 無効(様子見)
- 管理職への発言 → 要確認
- 明確な意思+承認 → 退職成立
そして最も重要なのは、
👉「記録を残すこと」
です。
まとめ:感情的な「辞める」に振り回されないために
「辞める」と繰り返す職員への対応は、現場のストレス要因になりがちです。
しかし、法的にはシンプルで、
- 誰に言ったか
- 本気かどうか
- 承認されたか
この3点で判断されます。
適切に対応すれば、不要なトラブルを防ぎながら、組織運営を安定させることができます。
「退職トラブル」「問題職員対応」でお悩みの方へ
当事務所では、
- 退職トラブル対応
- 問題職員マネジメント
- 労務リスク対策
に関するご相談を多数お受けしています。
単なる法解釈ではなく、現場で使える実務対応をご提案しています。
👉 詳細・お問い合わせはこちら






