コラム
Q
当施設では、業務に必要とする資格以外にも一定の資格を保有している場合、資格手当に5,000 円を上乗せして支払っています。2021 年4 月に本人から手当の対象となる資格を取得したと聞いていたのですが、手当に上乗せして支払うのを忘れていました。今回、本人の申告によって発覚したのですが、いつまで遡さかのぼって支払えばよいでしょうか?
A
本人から未払い賃金支払いの請求があったのであれば、本来支払うべきだった日に遡って支払うことが必要です。現在、職員が未払い賃金を請求できる権利(以下、賃金請求権)は3 年であり、今回のケースは本来払うべき2021 年4 月まで遡って支払う必要があります。
詳細解説
1.賃金請求権について
未払い賃金があったときには、遡って支払う必要があります。賃金請求権の消滅時効期間は2020 年4 月1 日に2 年から5 年に延長され、その上で、当面の間は3 年とする猶予期間が設けられました。今回のケースは、この消滅時効にかからない期間での請求ですので、2021 年4 月まで遡って支払う必要があります。
なお、延長された賃金請求権の消滅時効期間である3 年は、2020 年4 月1 日以降に支払われる賃金に関するものについて適用されます。
2.給与計算上の注意点
給与計算の誤りによって、賃金の支払い漏れが発覚した場合、実務上は職員の合意を得て、次の給与で漏れていた分を上乗せして支払うことが多くありますが、本来、支払わなければならない賃金が支払われていなかったことを考えると、できるだけ早く支払うことが求められます。
また、給与計算の誤りによって賃金を遡って支払うことになったとき、その賃金が割増賃金の基礎となる賃金だった場合は、時間外労働等の単価も変わってくることになり、結果として未払い残業代が発生することもありえます。遡って支払うだけでなく、割増賃金の基礎となる賃金として算入しなければならない賃金か否かの確認も必要です。
そもそも、職員の賃金にかかる変更があった場合は、支払い漏れや支払い過ぎといった給与計算の誤りが発生しやすくなります。今回のように、本人からの申告がなければ、施設が把握することのできない状況であれば、書面で申請してもらい、確認した上で支払いの対象とするといったルールを定めておくことで支払い漏れを防止しましょう。
今年も夏季賞与の支給時期を迎えます。ここでは福祉・介護関連業種における、夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)等の推移を規模別にみていきます。
1 人平均支給額は一部を除き減少
厚生労働省の調査結果※から、福祉・介護関連の業種別に1 人平均支給額等の推移をまとめると、下表のとおりです。
2021 年の支給状況をみると、1 人平均支給額は障害者福祉事業の30~99 人だけが前年より増加しました。児童福祉事業の30~99 人は2 年連続の減少です。また児童福祉事業は、どちらも直近5 年間で最も低い額となりました。
きまって支給する給与に対する支給割合は、児童福祉事業の5~29 人と老人福祉・介護事業の5~29 人を除いて1 ヶ月以上になりました。
支給労働者数割合は、児童福祉事業の5~29人と障害者福祉事業の5~29 人が前年より減少しました。どちらも2 年連続の減少です。支給事業所数割合は、児童福祉事業の5~29人を除いて前年より増加しました。どの業種も5~29 人では60~70%台ですが、30~99 人は90%台となりました。
2022 年の夏季賞与はどうなるでしょうか。
※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約200 万事業所から抽出した約3.3 万事業所を対象にした調査です。支給労働者1 人平均支給額は、賞与を支給した事業所の全常用労働者についての1 人平均賞与支給額です。きまって支給する給与に対する支給割合は、賞与を支給した事業所ごとに算出した、きまって支給する給与に対する賞与の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合は、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページから確認いただけます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001015911&result_back=1&tclass2val=0
今年も夏季賞与の支給時期を迎えます。ここでは病院と一般診療所における、直近5 年間の夏季賞与支給労働者1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などの推移をみていきます。
病院は3 年連続の減少に
厚生労働省の調査結果※から、病院と一般診療所の夏季賞与の支給状況をまとめると、下表のとおりです。
病院の2021 年の結果をみると、5~29 人はデータがありませんでした。30~99 人の1 人平均支給額は21.9 万円でした。3 年連続の減少で、直近5 年間では最も低い額でもあります。きまって支給する給与に対する支給割合は0.81 ヶ月で、2 年連続の減少です。この支給割合も直近5 年間では最も低い割合となっています。支給労働者数割合と支給事業所数割合は、2 年連続で100%という状況です。
一般診療所は30~99 人が厳しい状況に
2021 年の一般診療所の結果をみると、1 人平均支給額は5~29 人が16.9 万円で2 年連続の増加です。30~99 人は11.5 万円で2 年連続の減少、直近5 年間では最も低い額になりました。きまって支給する給与に対する支給割合は5~29 人が0.81 ヶ月、30~99 人は0.49 ヶ月です。支給労働者数割合は5 ~ 29 人が87.1%、30~99 人は77.7%でした。支給事業所数割合は、どちらも85%程度です。
2021 年の結果では、一般診療所で30~99 人が5~29 人の数字をすべて下回りました。2022年の夏季賞与はどうなるでしょうか。
※厚生労働省「毎月勤労統計調査」
日本標準産業分類に基づく16 大産業に属する、常用労働者5 人以上の約200 万事業所から抽出した約3.3 万事業所を対象にした調査です。
支給労働者1 人平均支給額は、賞与を支給した事業所の全常用労働者についての1 人平均賞与支給額です。きまって支給する給与に対する支給割合は、賞与を支給した事業所ごとに算出した、きまって支給する給与に対する賞与の割合(支給月数)の1 事業所当たりの平均です。支給労働者数割合は、常用労働者総数に対する賞与を支給した事業所の全常用労働者数(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)の割合です。支給事業所数割合は、事業所総数に対する賞与を支給した事業所数の割合です。詳細は次のURL のページから確認いただけます。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450071&tstat=000001011791&cycle=7&year=20210&month=0&tclass1=000001015911&result_back=1&tclass2val=0
福祉業界でも導入実績が多いIT 導入補助金(サービス等生産性向上IT 導入支援事業)。介護保険請求や給与計算、文書作成の効率化、報告や情報共有など、幅広く利用されています。ここでは介護施設の導入事例をご紹介します。
時間的な余裕がサービス向上に
IT 導入補助金は、労働時間の削減や業務効率化のためのIT ツール導入を支援する制度です。ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連などが補助の対象となります。
今年度は、従来の「通常枠」に加え、「デジタル化基盤導入枠」が新設され、インボイス制度対応を視野に、会計・受発注・決済・EC ソフトに特化し補助率が引き上げられた他、PC・タブレットなどのハードウェア購入にも活用できるようになりました。
過年度の導入事例をご紹介します。
■介護計画・報告書などをクラウド管理
・ ペーパーレス化により、記録簿の保管スペースが不要に
・ 検索機能で、資料を探す時間も短縮
・ 複数のスタッフで担当する場合でも、ケアや投薬などの重要事項が確認でき、申し送りの漏れも防止
・ ケア内容の詳細や状況について、選択式の報告形式に変更したことで、報告時間が短縮でき、集計も容易に
・ 介護保険請求までのトータル管理で転記作業を減らし、ミスの防止と作業時間の削減に
■タブレットの導入
・ 訪問先からも報告書を登録できるので、移動や報告書作成工数が短縮
・ 急な予定変更があった場合でも、すぐに出先の担当者に連絡でき、トラブルが減少
・ 現場の状況をリアルタイムに撮影・報告できるため、キャリアの浅い訪問スタッフでも、その場で助言を受けて適切に対応することが可能に
■スマホアプリによるタイムカード
・ 労働時間や給与計算の自動化を実現
・ 利用者様宅に直出直帰できるように
■給食管理システムの導入
・ 献立作成での栄養計算や食材発注管理を自動化し、作業時間が大幅に減少
・ 食材ロスの削減にも貢献
施設介護や訪問介護などの業態や規模など、背景の違いにより使い方もさまざまですが、時間的余裕が生まれ、サービスに集中できるようになったとの声が大きいようです。
※ 制度が変更される場合がございます。申請の際は、必ず最新の交付規程・公募要領をご確認ください。
IT 導入補助金 特設サイト https://www.it-hojo.jp/
医療現場でも導入実績が多いIT 導入補助金(サービス等生産性向上IT 導入支援事業)。患者情報の管理、会計業務の効率化、電子カルテやレセプト管理、訪問診療への応用など、幅広く利用されています。導入事例をご紹介します。
工数削減やミス防止に効果あり
IT 導入補助金は、労働時間の削減や業務効率化のためのIT ツール導入を支援する制度です。ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連などが補助の対象となります。
今年度は、従来の「通常枠」に加え、「デジタル化基盤導入枠」が新設され、インボイス制度対応を視野に、会計・受発注・決済・EC ソフトに特化し補助率が引き上げられた他、PC・タブレット・レジなどのハードウェア購入にも充当できるようになりました。
使い方はさまざまですが、工数削減とミス防止に役立つ例が多く見受けられます。過年度の導入事例をご紹介します。
■電子カルテの導入
・紙と異なり、場所も取らず、紛失も心配なし
・簡単に検索でき、お待たせの時間も短縮
・患者ごとの情報に院内チャット機能を紐づけ、伝え漏れや聞き間違いを防止
・他の医療機関、施設と情報連携がスムーズに
・パソコンが苦手な先生には、手書き入力も
・タブレット端末で確認できる電子カルテは、訪問診療でも威力を発揮
■電子カルテとの連携
レセプト
・自動処理で点数計算の正確性が向上
・作業時間も大きく削減
検査機器
・入力ミスが防止でき、確認作業負担も軽減
患者の個人情報
・必要なスタッフが必要な情報だけを閲覧でき、プライバシーに対するセキュリティが向上
・自宅電話番号で家族の情報を連携させ、家族ぐるみの健康提案で信頼の向上に
薬剤在庫管理
・必要な薬剤を確実に用意できるように
・デッドストックも減少
■オンライン予約管理システムの導入
・電話対応時間と手間を大きく削減
■在庫管理ツールの導入
・在庫が切れる前に自動発注され、発注・管理の手間が大幅に削減
・薬剤などの使用期限も同時に管理
※ 制度が変更される場合がございます。申請の際は、必ず最新の交付規程・公募要領をご確認ください。
IT 導入補助金 特設サイト https://www.it-hojo.jp/
A ハラスメントの問題は、事実の深刻さや結果によっては行為者だけでなく、使用者(医療機関)の責任も問われます。使用者の安全配慮義務、損害賠償責任、結果によっては刑事責任まで問われるケースもあります。
詳細
使用者には、従業員が安全で、健康に働くことができるように配慮する義務があります。この義務は「安全配慮義務」といい、労働契約法5条に定めています。
労働契約法5条 「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保し、労働することが出来るよう、必要な配慮をするものとする。」
労働契約法には罰則はありませんが、使用者が安全配慮義務を怠り、労働者に損害が発生した場合、使用者は労働者に民事上の不法行為として損害賠償義務をおいことになります。
いじめ・いやがらせ行為は不法行為として、損害賠償責任を負う可能性があります。(民法709条)。パワハラを行ったものだけでなく、医療機関がそれを放置していれば、病院は使用者責任(民法715条)を問われることもあります。さらにパワハラ行為の程度によって、パワハラ行為者は、暴行・傷害、脅迫といった刑法上の処罰対象になることもあります。
医療機関が安全配慮義務違反に問われないためには、院内でパワハラ行為が問題になった場合、問題を放置せず、当事者や関係者から事情聴取を行うなど迅速に対応し、今後発生しないような対応が必要になります。また関係者に精神的なケアの措置も必要になります。
ハラスメントの問題が発生しないように、定期的に管理者研修を実施するなど、日頃から「予防」の措置を講じることが重要です。
ハラスメント研修
⇒
職場のハラスメント研修(ハラスメントを正しく理解し、パワハラを起こさない組織を作る) | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
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社会保険労務士顧問業務 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
2018年から2022年にかけて、5年連続で「幸福度ランキング世界一」を達成したフィンランド。その背景にあるのは、“人こそが最大の資源で宝”という哲学。立場を問わずすべての国民が平等に、そして幸福に暮らすことを可能にする、「仕組み」とは――? そして、日本はそこから何を学べるのでしょうか? 『フィンランド 幸せのメソッド』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。本稿では、子育て世帯を支える保育制度を中心に紹介します。
■親を支える保育所 フィンランドの保育には、日本の保育園のような「集団保育」と、保育士が自宅で自分の子どもを含めて4人までを預かる小規模な「家庭的保育」の2種類がある。 全体の約8割が集団保育所を利用しており、家庭的保育は7%ほどだ。家庭的保育は最近では減りつつあるが、家庭的な雰囲気の中で保育をするため、3歳未満の子どもを持つ親や、短期間だけ保育が必要な場合に人気がある。 一方の集団保育所も、国の基準で3歳未満は子ども4人につき最低1人の保育専門職、3歳以上は7人につき1人以上の保育専門職が必要だと定められており、少人数制だ。他にベビーシッターや家族、親戚に頼るという選択肢もあるが、その割合はそれほど多くはない。
1996年に改正された保育園法に従って、自治体には全ての子どものニーズに応えられるよう保育所を確保する責任があり、夜勤やシフトワークによって昼間以外の時間に働く人のためにも保育所が用意されなければならない。 保育の申し込みは通常4カ月前までに行わなければならないが、急な仕事や就学、資格取得等のために保育が必要となった場合には、2週間以内に自治体はサービスを確保する義務があると定められている。 ただ、希望の保育所に必ず入れるわけではなく、エリアによってはギリギリの数しかないため、仕事の内容によっては優先順位がつけられて待たされることもある。
教育は大学院まで無料のフィンランドだが、保育は無料ではない。日本と同じく、料金は所得に応じた金額となっている。それでも、子どもの年齢にかかわらず、利用料の上限は月288ユーロ(2021年)と比較的手ごろな価格となっていて、逆に所得が低い場合は無料となる。 また、多くの保育所では朝食と昼食が無料で提供されている。朝食はおかゆのようなオートミールなどシンプルなものだが、ただ子どもを起こして連れていけばいいだけなのは楽だ。
ただし、朝食サービスを利用するには早くに行かなければならないため、私の友人の多くは家で食べさせた方がいいと、サービスを利用していない。さらに、保育所に預けられる時間は最長で10時間と決められているため、残業をしている余裕はなく、親は定時で仕事を切り上げて迎えに行くことが求められている。 ■インクルーシブの方針 保育所は、毎日フルタイムで利用する人もいれば、週に何回か、あるいは半日だけの利用の人もいて比較的多様だ。また、フィンランドでは障がいがある子どもも、そうでない子どもも、同じように共に学ぶことを目指すインクルーシブの方針を採っている。障がいがあっても地域の保育所に通えるし、健康上の理由で通うのが難しい場合は、自宅に保育士が来て幼児教育が受けられる。
しかし、全てがうまくいっているわけではない。緊縮財政による保育士不足は深刻で、2016年には3歳以上の子どもに対する保育士の割合を、従来の子ども7人あたり1人から、8人あたり1人へと一旦引き上げたり、親の就業状況によっては保育所に預けられる時間を制限したりした。 しかし、2019年に社会福祉の充実を目標としている社会民主党が政権に返り咲き、人数や時間の制限は以前の状況に戻った。そうした動きの一方で、現在では保育の無償化や5歳からの幼児教育の義務化の議論も行われ、実際、全国規模の実証実験も行われている。
保育所と同じぐらい大切な親への支援制度が、「在宅保育の休業制度」だ。子どもが3歳になるまでは仕事を休んでも職場が確保され、復帰後に必ず同じポジションに戻ることが保障されるというものだ。 休業補償が出る育休は子どもが1歳になる頃に終わるため、通常はこれが仕事に復帰するきっかけとなる。しかし、この在宅保育の制度があるので、もっと子どもと過ごしたいと望めば、最長3年間、父親でも母親でも安心して休むことが可能だ。
私の友人も、この育児休暇取得中に所属先の会社で大掛かりなリストラがあったが、「私が元に戻る権利は法的に保障されているから、絶対にリストラにあわない」と断言し、子育てに専念していた。 在宅で保育をしたら、その間には保育所を利用しないことになる。そこで、在宅保育をしている親に国からお金を給付する「在宅保育手当」も1985年に誕生した。 この制度が生まれた背景には、施設での保育のニーズがそれほどなかった農村部から、保育施設を利用している都会の人たちにばかり税金が費やされ、自分たちには何のメリットもなく不平等だという訴えがあったことが影響している。都市部の自治体にとっても、手当を出すことで在宅保育が増えれば、保育所の利用が減るというメリットもあった。
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「園長を困らせる労務問題とその解決策」 ~保育の現場から頂く質問をもとにしたQ&Aを中心に~ | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
保育は自治体にとってかなりのコストがかかるので、在宅保育をする親には国からの在宅保育手当に加え、多くの自治体が独自に手当を支給してきた。 ■自宅での保育に手当はいくら出るのか? 具体的には、国からの手当は3歳以下の子ども1人に対して毎月350.27ユーロ(2021年現在)。私の友人の場合は上の子も同時に在宅で育てていたため、自治体独自の保育手当などが加わると月あたり約6~7万円ほどを受給していた。
こういった手当は保育者が祖父母の場合でも受給可能だ。自宅での保育はお金をもらうのに値する立派な仕事であり、それは「自宅で保育という大変な仕事をしてくれてありがとう」という国による感謝のメッセージにも見える。 この在宅保育手当は給与よりは少ないが、無給になるよりはよっぽどいい。実際、2018年には82%の家庭が一定期間、在宅保育手当を利用している。 一番多かったのは子どもが1歳半になるまで受給したというもので、最長期間の子どもが3歳になるまで利用する人は、年々減少していて約10%。利用者は決して多くはないのだが、休暇が切れるから、仕事がなくなるから、新学期が始まるから……と慌てて保育所に入れるのではなく、親と子どもの心と体の準備ができたところで預けることが可能になる制度だ。
実際、保育利用の割合を見ても、子どもが1歳未満で預けている家庭はわずか0.9%、2歳未満で36.8%だ。女性の就業率も、子どもの年齢が3歳未満の場合には48.2%と一時的に低くなる。これは他の北欧諸国と比べても、かなり低い。 年々、在宅保育の割合は減少し、女性の就業率は上がっているが、こういった制度が女性のキャリアの妨げになっているのではないか、という議論は常にある。在宅保育手当撤廃に関する提言は、国内外から聞こえてくる。この手当の利用者はまだまだ母親であることが多い。
フィンランドの子ども家族を支える制度は、幼児の親に柔軟で幅広い選択肢を与えている一方で、現実には母親が自宅で保育をする方に向かわせているのではないかという批判は、ある面から見れば事実だ。 そこで、ここ最近は自治体の保育手当は撤廃、もしくは支給期間を短縮する傾向にある。例えばトゥルク市では既に撤廃されているし、ヘルシンキ市は1歳まで、その隣のヴァンター市も1.5歳までとなっている。 ■社会も企業も2、3年の休職に寛容
それでも、在宅保育制度の満足度は高い。しかもフィンランド統計局の調査によると、子どもが3歳以上になると女性の就業率が80%を超え、小学校に通う年齢になれば、89.4%(2019年)にまで上がることから、利用者は元の職場に復帰しやすく、社会も企業も2、3年の休職に対して寛容なことがうかがえる。 実際、私の友人は育休と夫の海外赴任への同行で合計6年間休職していたが、その間に会社が合併し、元いた部署がなくなってしまった。復職時にはどこかの部署に仕事復帰することもできたのだが、彼女は思いきって社内公募されていたポジションに応募して見事選ばれた。元の仕事よりも昇進した形で復帰したわけだ。
同じように他の友人も、3人目の育児休暇を終えて、他社の部長職に応募して仕事復帰と転職、より責任のある仕事へのステップアップを同時に叶えていた。 産休・育休で欠員が出た場合、雇用主は代わりの人材を雇い、周りにしわ寄せがいかないようにするのが通常だ。しかもそれが半年や1年ではなく2~3年となれば、経験の浅い若者にとっては経験や実力をつけ、能力をアピールする好機になるし、企業にとっても新たな人材発掘のいい期間となり、うまくいけば正社員として採用する道も拓ける。
このように賛否両論ある在宅保育の制度だが、今のところは大きく変化する様子は見られない。ただ、今後は徐々に利用は減るのではないかと推測されている。いずれにしても、どの保育形態でも公的支援が得られ、親の選択肢が広いことはフィンランドの特長である。 ■共働きを前提とし、配偶者控除はなし 保育所の確保や在宅保育手当以外にも多種多様な支援制度がある。例えば、子どもが17歳になるまで一定額を支給する児童手当があるし、産休・育休も1960年代以降に充実し、父親も休暇が取れるように時代と共に変わっていった。
税制にも変化があった。1976年には扶養控除や配偶者控除を撤廃し、夫婦であっても1人ひとりに課税をする「個人単位課税」が導入された。 これは配偶者の収入状況が自分の所得税に影響しないことを意味していて、日本のようにパートで働いて年収を抑えた方が世帯としては節税になるといった状況が成り立たないことを示す。それよりも男女にかかわらずフルタイムで仕事をし、納税することが求められるようになったのだ。 北欧諸国の社会に詳しい東洋大学の藪長千乃教授も私の取材に対し、「福祉国家と女性の社会参加の関係には、税制が影響している」「個人課税方式の導入で、専業主婦やパートで働くことへのインセンティブがなくなりました。実は、夫婦単位での税制は、いまだにヨーロッパでは多くの国で選択的に使用されています。日本は個人単位の税制となっていますが、扶養控除制度や社会保険制度での非課税配偶者の優遇など、実質的には夫婦単位課税に近くなっており、女性が補助的な労働者となることを固定化させています」と語ってくれた。
さらに、1970年代、職場での男女差別を禁止する法律ができたことで、女性は牧師や軍隊の幹部以外であればどんな仕事にも就けるようになった。現在は、全ての職業で性別による制限はない。 政治の世界でも、かつては社会保健大臣や教育大臣が女性議員のためのポストで、財政大臣や国防大臣は男性という暗黙の了解があったが、1990年代からは女性も財政や国防の大臣職に就くようになり、男女間での暗黙の壁が壊れ始めた。また、大統領選にも女性が出馬して、男性候補者とほぼ変わらない投票数を獲得するようになっていった。(東洋経済オンラインより)
後藤茂之厚生労働相は5日の閣議後会見で、光熱費や食材費などの高騰が医療機関、介護施設・事業所の経営に打撃を与えていることについて、現場への追加的な支援策を検討していくと表明した。
ただ、追加的な支援策を実際に行うかどうかの言及は避けた。このまま静観していくつもりではないか、との懸念の声も噴出しそうだ。
後藤厚労相は会見で、現場の状況を引き続き注視していくと説明。「更にどのような対応が必要なのか、できるのか、このことを検討していきたい」と述べた。
医療機関や介護事業所の主な収入源は、公定価格の診療報酬・介護報酬。患者や利用者の負担も定率だ。たとえコストが膨らんでも、それをサービス料の引き上げなどで回収することはできない。物価高騰が止まらず長期化していくなか、その影響はより深刻になっていくと危惧されている。
政府はこれまで、コロナ禍を踏まえた臨時交付金を活用した補助などが可能と自治体にアナウンスしてきた。ただ、光熱費や食材費などの高騰に苦しむ医療機関、介護事業所には十分に届いていないのが実情。独自の取り組みを始める自治体も出てきているが、国による追加的な支援策を求める声が大きくなっている。
相は5日の閣議後会見で、光熱費や食材費などの高騰が医療機関、介護施設・事業所の経営に打撃を与えていることについて、現場への追加的な支援策を検討していくと表明した。(介護ニュースより)
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福祉医療機構(WAM)は6日、特養を運営する社会福祉法人を対象に先月行った「経営動向調査」の結果を公表した。回答した法人の約9割が前年度比でコスト増となっていることが分かった。
調査結果によると、昨今の物価高騰を受けてコスト増の「影響あり」とした法人は88.5%。このうち、今年度上半期のサービス活動費が前年同期より5%以上増加する見込みと答えた法人は、およそ半数の48.9%だった。
経営上の課題として「人件費以外の費用の増加」をあげたところは49.0%。サービス活動費が5%以上増加する見込みとした法人で影響が大きい勘定科目は、多い順に水道光熱費(95.6%)、ガソリン代(52.5%)、給食費(52.5%)となっている。
この調査はWAMが6月1日から22日にかけてWebで実施したもの。全国418の社会福祉法人から有効な回答を得ている(介護ニュース)。
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この季節は、これまで以上に熱中症への対策が求められています。安全衛生の観点から職場環境の整備は重要であり、事務所(事務室)内の温度においても適切な設定にすることなどが、法令で定められています。そこで今回は、職場環境に関して守らなければならない基準を確認しておきましょう。
1. 事務所の室温・湿度
労務管理に関しては、労働基準法や労働安全衛生法など様々な法令がありますが、職場環境や衛生等については事務所衛生基準規則や労働安全衛生規則で定めがなされています。
[冷房]
事務所を冷房する場合は、事務所の気温を外気温より著しく低くしてはならない。
[暖房]
事務所の気温が10 度以下の場合は、暖房する等の適当な温度調節をしなければならない。
[室温・湿度]
空気清浄や温度、湿度を調整する空気調和設備(いわゆる「空調」)がある場合は、事務所の気温が18 度以上28 度以下および相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない。
室温については、2022 年4 月より「17 度」から「18 度」に変更となっています。室温や湿度は体感で調整することが多いかと思いますが、実際に事務所の温度等がどのようになっているのか、この機会に確認してみるとよいでしょう。
2. 照度
部屋の明るさは、現状、表1 のとおり、作業の区分に応じて基準が設けられています。
この基準が2022 年12 月より、表2 のように変更となります。
※資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものが該当する。
表2 の「一般的な事務作業」は表1 の「普通の作業」に相当するものです。照度不足の際に生じる眼精疲労や、文字を読むために不適切な姿勢を続けることによる上肢障害等の健康障害を防止する観点から、全企業に適用されます。
コロナ禍で在宅勤務を実施している企業もあるかと思います。自宅での業務は、その環境について従業員任せになりやすいですが、自宅での業務においても室温や照度、作業姿勢等について適切な対応をすることが必要になります。