クリニック・病院の現場Q&A

Q、弊社では各事業所の責任者(所長)である管理者は、労基法上の管理監督者としての扱いで、残業代や休日労働の手当を支給していません。ただ、遅刻、早退、欠勤があった場合には、一般社員と同様に給与を減額しています。管理監督者の扱いに関してこの方法で問題ないでしょうか?

A 労働基準法41条の除外規定として、労基法上の管理監督者は深夜業務を除く、労働時間に関する規定は適用されないと定めています。まずは、労基法上の管理監督者とはどのよう方を指すのかを確認しておきたいと思います。ここでいう、「管理監督者」とは下記の要件を全て満たす方を指します。

 

 

 

 

 

 

 

これらの3点を、勤務の実態として適用されている必要があります。単に役職名では判断できません。つまり休日、時間外労働の規制をうけない「管理監督者」に該当するかどうかは、具体的な権限や給与、勤務実態で判断が必要ということになります。

例えば、多くの介護事業所ではシフト勤務で勤怠管理を行っていますが、常態として勤務シフトに入っている働き方をしているような管理者がいた場合、勤務時間の自由裁量がないと判断され、管理監督者ではなく、一般社員とみなされる可能性もあります。

先ほど、管理監督者に該当するか否かを判断するときに、単に役職名での判断ではなく、勤務の実態で判断しなければならないとしましたが、多くの介護事業では職責(役職)で、それを判断している場合が多い上に、介護保険制度における「管理者」と労基法における管理監督者を混同してしまうケースもあるので注意が必要です。一般的には、理事長、社長、施設長、事業所長、事務長くらいまでの立場の方がそれに該当するケースが多いと考えられます。もし、それ以下の役職の方(例えば、主任、副主任やリーダー等)を管理監督者の扱いにして残業代などを支給していない場合は、一度、その方の業務や給与の実態を確認してみる必要があると思います。その結果、管理監督職に該当しない方に、残業手当等を支給していない場合には、労基署からは残業代未払いの扱いとして、「3年間分を遡及して」支払うといった是正勧告を受けるリスクがあります。

 

 2,また、管理監督者には残業代は支給されませんが、勤務時間管理自体は必要となります。これは、給与計算上の必要性ではなく、管理監督者の健康管理の問題によるものです。管理監督者はその責任の重さから、過重労働になってしまうケースは相変わらず多く、それが深刻化するとメンタル疾患につながる場合も見られます。従って、経営者や人事担当者は

  管理監督者の労働時間には常に注意を払い、管理監督者の健康管理に十分注意することが重要です。

 

 3,さて、今回ご質問のあった管理監督者における遅刻・早退・欠勤に関する給与の扱い

についてですが、その方が管理監督者に該当することを前提とした場合に、先述の要件

の「勤務時間の自由裁量」の点が問題になります。

  つまり、管理監督者は勤務時間に裁量が認められていることから、始業時刻から遅れて

出社(遅刻)しても給与減額扱いにはなりませんし、また終業時刻より遅くなっても残

業手当はつかないことになります。

ただ、欠勤の扱いにつきましては、管理監督者であっても「就業義務」自体はありますので、その義務が果たされない場合に該当すると判断され、給与も欠勤控除として減額することになります。

 

Q、事務処理時間の簡便化のために、特定職員の残業代を定額支給にしていますが、職員から実際の残業にみあった金額が支給されているのか疑問の声が上がっています。医師の給与についても残業代を含めた年俸制で支給していますが、現状に何か問題があるでしょうか。

A, 残業代の定額支給は法令違反を招きやすいだけでなく、長時間労働の温床にもなりやすいものです。医師の年俸制の問題も、労働時間の管理方法とともに見直すべき課題の一つです。

サービス残業が発生してしまう要因の一つに、「固定残業代」の問題があります。例えば、月給30万円、40時間分の残業代を含む、というように、割増残業を毎月定額手当として支給するもので、労働基準法上認められた制度です。

固定残業代は本来、事務処理の簡便化のために認められた制度です。残業時間がゼロの人にも40時間分まるまる支給されるため、仕事のできる人と、できない人の不公平感をなくす意味もありました。しかし、定額40時間分を超えた労働時間分は、割増分を支払うことになるため、定額支給にしたところで労働時間を把握する必要があり、それほどのメリットのある制度ではありません。結果的に50時間残業しても40時間の定額分しか支給されないなどサービス残業の温床になっています。

事務スタッフの少ない医療機関でも導入しているケースがありますが、「ダラダラ残業を招く」といった弊害を招くこともあります。

 例えばある整形外科病院では、理学療法士に対して、残業代を30時間の定額制で支給していました。ところが、残業をした時間分だけ支給額が増える本来のやり方ではないので、

残業時間に関する意識が薄れ、中には「どうせ残業代がでないから」と間違った認識でダラダラと居残る職員が増えてしまいました。そのためこの病院では固定残業代を廃止して、タイムカードと時間外勤務申請を併用して厳格に労働時間を管理する方法に改めました。結果的に、固定残業を廃止したことで、残業時間は15時間ほどに半減したといいます。

 残業代の定額支給の問題は、高額の年俸制で支給される医師の給与でもたびたび問題視されます。最近、医師の年俸に残業代が含まれているかが争われた裁判では、最高裁は「含まれていない」と判示したケースもあります(H2977日)「残業代と基本給を区別できない場合には残業代が支払われたとはいえない」として無効と判断されました。

 この最高裁判決は、残業代の区分が不明確な給与の支払い方法は例外なく認められないとの立場を鮮明にし、労働基準法の立場を遵守するよう管理者に求めたもので、医師の労務管理にも少なからず影響を与えそうです。

Q 仕事のできない1年生(新人看護師)や、私語が多く問題行動が多い職員に対して、管理者の判断で時間外勤務申請を認めなくてもよいでしょうか。また、1年生の時間外勤務については、3カ月の試用期間を経過した後に認める事にしてもよろしいでしょうか。

A, 仕事が遅くても、業務であれば労働時間。試用期間でも残業をすれば時間外労働です。新人は仕事が出来なくて当たり前。「仕事が出来ないから残業と認めない」のではなくそもそも新人には残業させない、新人の指導体制がきちんと確立されているかが問題です。

 一般にこのような旧態依然の管理を行っている病院・クリニックは未だにあるようです。

その原因として、医療機関特有の問題が挙げられます。

①労働時間の管理が難しい

 「患者」を相手に24時間 365日稼働している為、労働時間管理が通用しない場面が多々あります。労働基準法をはじめとした規制だけでなく、医療法、医師法、保健師看護師法、診療報酬制度など、医療機関特有の法律規制を受けるため、医師の労働時間をはじめ労働関係法令の観点だけでは労働時間管理はうまくいきません。

 

②国家資格保有者が多数を占める専門家集団

医師・看護師・コメディカル等の国家資格保有者であり、また限られた地域内での人材確保、職員の定着を意識した労務管理が必要になります。さらに、医療従事者特有の個性も労務管理の難しさに拍車をかけています。労務管理は人の管理と言いますが、クリニックなど規模が小さくなるほど、「人」の管理のウェイトが増してきます。

 

③病院の労務管理の肝は「看護師の管理」

 

医療機関の中でも病院で働く半数以上は看護師です。病院の労務管理は看護師の管理と言っても過言ではありません。しかしながら質問にもあえるような旧態依然の管理を行っているケースがいまだに存在します。

例えば、教える先輩は「残業」で、教わる新人は「自己研鑽」

昔ながらのプリセプターシップの悪い例ですが、一部の病院の話ではありません。新人は残業をつけてはいけないという意識がほかのどの職種よりも強く、これが離職の引き金につながるケースは多いです。多くの場合、労務管理を現場任せにしているなど法令に関する認識不足などがその要因です。

 医療機関は特殊ですが、特殊だから許されるという時代ではありません。長時間労働は修正していかなければなりません。人材確保・定着のためにも働きやすい職場作りが益々、必要になっています。 

Q「70 歳まで働くことができるようにすること」というニュースを少し前に見 ました。当院では60 歳を定年としており、希望者は65 歳まで働き続けることが できます。65 歳以降は、職員が働くことを希望し、当院が必要と認めたときに は70 歳まで働くことができます。この取扱いのままで問題ないのでしょうか?

A,

2021 4 1 日より70 歳までの就業機会確保が努力義務となりました。現状

は努力義務であるため、職員が65 歳以降も働くことを検討した上で、現状のよう

な基準を継続することで問題はありません。将来的には70 歳までの就業機会確保

が義務化されることも考えられますので、労使間で十分に継続協議をしていくこ

とが求められます。

以下に詳細を解説いたします。

160 歳以降の雇用や就業機会の確保現在、65 歳未満の定年を定めている事業所は、原則として希望者全員を65 歳まで働くことができるようにする必要があります。これに加え、20214 1 日より、65 歳から70 歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。具体的には、以下の選択肢の中から措置を講ずるように努めなければなりません。

70 歳までの定年引き上げ

② 定年制の廃止

70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

70 歳まで継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入

70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

  1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
  2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

2.必要な対応として考えられること

高年齢者雇用安定法では、65 歳以降の雇用等について、希望者全員ではなく、希望者の

うち、一定の基準を満たす職員に限定することも可能とされていますが、「医院が必要と

認めたときには70 歳まで働くことができる」という基準では対象者を医院が恣意的に

決めることができ、高年齢者を排除しようとする等、高年齢者雇用安定法の趣旨や他の労

働関係法令、公序良俗に反する可能性もあります。基準を決めるのであれば、その基準を

労使協議の上、明確にする必要があるものと思います。

 

3.今後の労働局の指導について

厚生労働省は都道府県労働局に対し、70 歳までの就業機会確保は努力義務であることか

ら、制度の趣旨や内容の周知徹底を主眼とする啓発・指導を行うよう方針を示していま

す。今後、70 歳までの就業機会確保について、周知や指導が強化されることも想定さ

れ、また、いずれは努力義務から措置義務になることも考えられます。各事業所におかれましては、現状の取扱いについて、職員の希望を踏まえながら労使協議を進めていかれることをお勧めいたします。

4 65歳超雇用推進助成金

 70歳までの雇用継続制度を奨励するための助成金も創設されました。本助成金制度は、生涯現役社会の実現に向けて、65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換した事業主に対して助成し、高年齢者の雇用の推進を図ることを目的としています。

本助成金3コースのうちの代表的な「65歳超継続雇用促進コース」に関して、雇用継続に関する支給要件をご説明いたします。雇用継続方法としては4パターンあり、

. 65歳以上への定年引上げ、B. 定年の定めの廃止、C. 希望者全員を対象とする66歳以

上の継続雇用制度の導入、D. 他社による継続雇用制度の導入 のいずれかを導入した事業

主に対して助成を行うことになっています。また、助成金支給額も25万円から160万円まで施策内容によって支給額が決められています。ご興味ございましたら厚労省のリーフレットをご覧いただくか、またはお近くの社会保険労務士までお問い合わせください。

Q,週三日勤務のパート看護職がフルタイムの常勤に変わるとき、逆にフルタイムの常勤職員が、育児などを理由に週3日勤務のパート職員に変わるときの有休休暇の付与に日数について教えてください。また夜勤専従の看護師の有休休暇についてはどの様に考えればいいでしょうか?

A, 週三日のパート職員からフルタイムの常勤に変更する場合、変更した直後の基準日の勤務日数によります。16時間拘束の夜勤を行う場合の付与日数は、1勤務について2日分付与します。

 

詳解

 

 有給休暇の権利は6か月継続勤務した時点で発生します。この日を「基準日」と言います(4月1日入社なら10月1日)。短時間勤務のパート職員がフルタイムの常勤に雇用形態を変更する場合、有給休暇の付与日数について下記の通達があります。

 

 「年次有給休暇の権利は、基準日に発生するので、基準日に予定されている労働日数の年次有給休暇が付与されなければならない。従って、入社時に比例付与の対象者(短時間労働者)であったとしても6か月経過後に比例付与の対象者でなくなっていたとしたら、10日の年次有給休暇を付与しなければならない」昭和63、3、14発150号)

 

従って、勤務日数の少ないパート職員がフルタイムの常勤に登用されて雇用形態が変わったときは、有給休暇が新たに発生する日(フルタイムになった直後の基準日)の勤務形態に応じた有給休暇を付与します。また仮に、年度途中で所定労働日数が変わったとしても、その時点で付与日数を増やすのではなく、直後の基準日においてフルタイム勤務に応じた日数の付与となります。フルタイムから短時間労働に変更する場合も同じ考え方です。

 

 また、病棟勤務看護職の16時間拘束の夜勤1勤務に対して有給休暇の付与日数は「2日」となります。行政通達の内容は下記となります。「休日は原則として暦日休日制

(午前0時から午後12時)をとっています。1勤務16時間隔日勤務など、1勤務が2暦日にわたる場合も原則通り暦日制が適用されて、年次有給休暇の付与についても当該1勤務(16時間夜勤)の免除が2労働日の年次有給休暇の付与とされます。尚、この場合の手当(年次有給休暇の賃金)については、2労働日分の平均賃金などを支給しなければなりませんが、これは結局1勤務分(16時間夜勤分)に相当します。

Q 手術室や訪問看護ステーションにおいて、休日に自宅待機(オンコール)をする場合   オンコール明けに代休を与えても問題はないでしょうか?また、オンコール明けを   事業所の方から有休休暇として処理しても問題ないでしょか?

A  オンコールはそもそも労働時間とは認められないため、代休を付与する必要はありません。実際に呼びだされて勤務した場合に代休を付与するかしないかは、病院の裁量で決めて構いません。ただし、オンコール翌日を事業所から有休休暇として処理するのには問題があります。

詳解

オンコール(宅直)をどのように扱ったらいいか、労基法に明確な基準はありません。自宅待機の時間について、一般的には労働時間とみなされないことから賃金の支払いを義務付ける法的な規定もありません。

但し、判例の中には、「高速性が強い場合には労働時間と判断される場合がある」と大学病院側に労基署が指導を行ったケースも過去にあります。尚、病院施設内で待機する場合には「て待ち時間」として労働時間と扱われます。

 そこで、オンコール明けの取り扱いについて、実際に呼び出されて働いた場合に限りますが、翌日勤務を代休とするかどうかは、病院の裁量できめることができます。代休を与える場合にはきちんと制度化し、就業規則などに明記しておく必要が有ります。また代休を与えないまでも出勤時刻を遅らせるなどの配慮が必要でしょう。

 また、オンコール明けの有給休暇で処理をするケースですが、そもそも有給休暇は従業員の意思で取得するもので事業所側からの一方な処理をすることはできません。オンコール体制をとっていても病院からの呼び出しが無く、実際に勤務していない場合には、オンコールが法的に労働時間と解されない以上、病院は代休や有休休暇を与える義務はありません。

 とはいえ、オンコールであるときは、自分の自由に使えるかというと現実には難しい状況です。従って病院によっては、2000円から4000円程度のオンコール手当を支給しているケーもありますが、まったく支給指定していない病院もあります。

 

 

Q最近、医療従事者もワークライフバランスを重視する人が増えてきたように感じます。休日数が多い病院、有給休暇が取りやすい病院は求人効果も高いと聞きます。当院でも年間休日数増やすことを検討中ですが、他の病院ではどのような対応をとっているのでしょうか?

A 年間の総労働時間を維持しつつ、日勤の所定労働時間を延長して休日数を増やすやり方が一般的。但し、「休日を増やす」こととのどちらに職員ニーズがあるのか、十分に検討した上で変更していく必要があります。

 

看護職の確保と人材定着のために、年間休日数を増やしている医療機関は最近増えているように思います。ある病院では、日勤の所定労働時間を7時間30分から7時間45分に延長して、年間の総労働時間を維持しつつ、休日数を五日間増やして年間最大124日に変更しました。この病院は、平均年齢37歳の看護師の6割が育児世代ですが「給与を上げるより休日を増やす方が育児世代の看護師ニーズに適する」と考えたからです。

 また別の病院では、病院全体で、所定労働時間を7時間から7時間15分に延長し、年間休日を4週6休から4週8休に変更して9日間、年間112日に拡充することで、サービス残業も大幅に削減することが出来たといいます。

 たしかに、年間休日数100日の病院と120日の病院では求人効果に差があるかもしれません。しかし例えばこんなケースもあります。日勤の所定労働時間7時間、4週6休年間休日100日の介護型療養病院において、休日増を検討した際、看護職は否定的な意見が多かったと言います。なぜなら、看護職の多くは、日勤7時間(17時終業)の勤務時間の短さや17時に帰れることに惹かれて中途入職した職員が多かったからです。

 やみくもに休日を増やせばいいというものではなく、休日増なのか勤務時間短縮なのか、年齢層や家族の事情などによってもニーズが違うことを考慮したうえで、十分に検討する必要があると思います。

Q 副業を希望している職員がいます。副業を認めることで、長時間労働となり疲労で業務に支障が出る可能性もあるため、できれば副業を禁止したいと考えています。副業を禁止することはできますか?

 

A

職員が労働時間以外の時間をどのように過ごすかは、基本的には職員の自由とされているため、一律に副業を禁止することは難しいでしょう。ただし、明らかに疲労が蓄積すると考えられる長時間にわたる副業のように、職員の心身の健康の確保が難しく、本業の業務に支障をきたす可能性が高いと想定される場合などは、副業の禁止や制限をすることができます。

詳細解説

1.副業の基本ルール

 厚生労働省は、平成30 年1 月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しました。ガイドラインの中では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的に労働者の自由である」という裁判例を取り上げ、職員の希望に応じて、原則として、副業を禁止したり、制限を設けたりできないことを示しています。
 その一方で、職員が働く大前提として、施設は、職員が健康で安全に働けるように配慮する義務があります。また、職員には、施設で働く上で、業務上の秘密を守る義務や、施設と競合する業務を行わない義務、誠実に勤務する義務を負っています。そのため、以下の場合は、例外的に副業について禁止したり、制限を設けたりすることが認められています。
 ・労務提供上の支障がある場合
 ・ 業務上の秘密が漏洩する場合
 ・ 競業により施設の利益が害される場合
 ・ 施設の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

2.副業を許可する場合の注意点

 副業を認める場合は許可制とし、あらかじめ副業の許可基準について就業規則などで定めることが重要です。例えば、職員の心身の健康に悪影響があると施設が判断した場合は、副業を許可しないといったルールを作ることが考えられます。
 副業をする場合は、職員から副業の事業内容や従事する業務、労働時間などを施設へ届出してもらいます。許可後も、月1 回程度、実働時間の報告をしてもらうことで、長時間労働になっていないかを確認しましょう。また、副業の許可基準に反する副業をした場合は、副業を禁止または制限することの検討も求められます。
 副業は多様な働き方への期待から普及が促進されており、施設は、職員の副業を希望する理由も確認した上で、許可の判断をしたいものです。今後、副業希望者が出てくることを想定し、施設の就業規則を確認しておくとよいでしょう。

Q 当法人では残業は、所属長による許可制としていますが、課長や主任により対応がまちまちでルールが形骸化しています。運用面でどのように改善していけば良いでしょうか。

A 労働時間管理は「時間外労働の管理」といっても過言ではありません。各部署の所属長が残業の必要性を判断し、適切時間を指示するなど、管理職の役割は重要です。職員、個々に勤務時間内に仕事を終える意識をいかにもたせるかが重要です。

一方、始業時刻=出勤時刻、終業時刻=退勤時刻 という認識で時間管理を行っている事業もいまだ多くあります。このような事業所には、労働時間の定義についてまずは指導教育する必要があります。つまり始業終業時刻と出退勤時刻は違うという認識をまずは持っていただくことです。労働時間に関する意味を理解することで、その時間管理意識を持って業務を遂行していくことは、今後、さらに重要なポイントになります。そのためには、まず指導いただきたいのは、時間外労働の「許可制」です。当然ながら業務は所定時間内に行うのが前提ですが、事情により残業になりそうな場合には、その理由と終業時刻を明記し、許可制とする必要があります。それにより、所定外労働割増をつける時間が明確になりますし、何より大切なことは各職員の時間管理意識を高めることができます。ただし、残業の許可制を規定に定めていても、許可を受けない残業のすべてが無効になるかというとかならずしもそうではありません。通常の業務をこなすうえで,所定時間内終わらないような業務量を要求したならば、残業時間に対して、黙示の承認があったということになり、残業時間に該当するという判断になりますので、適宜の指導が必要になります。

 

ただ、残業を所属長の許可制にしていても、申請された残業内容をよく理解せずに全部承認していたり、逆に、明らかに残業が必要な業務量にも関わらず許可をしなかったりと、所属長により対処の仕方はまちまちになりがちです。本当に必要な残業かどうか、どの程度の時間が必要かなどを判断して、適切な許可を与える必要があります。

 

残業許可制運用のポイント

  • 残業の理由を明確にさせる

 「何のために残業をするのか」「なぜ、その業務が残ってしまったのか」を確認します。例えば、許可申請の残業理由に「介護記録作成の為」とだけ記入させるのではなく、「なぜ

介護記録作成業務が残ってしまったのか」を記入させます。そうすることで、原因を本人と上司が確認しあうことで改善に繋げることができます。残業理由が本人の能力の問題であれば、個別指導や業務の標準化を進める必要があります。

  • 残業内容の緊急性・必要性を判断する

その業務が「要当日処理」か「翌日処理で可」なのかをメリハリをつけて確認します。

またその業務は、「あなたがやらなければならない業務」なのか「次の交代勤務者で対応できる業務」なのかを確認します。

  • 業務の上限時間(目安)を指示する

「その業務は30分で終えて」と目標時間を指示します。業務内容応じて適切な時間を指示することは必要です。但し、このことは「30分以上の残業は認めない」と上限設定をすることではありません。上限を超えて残業していても、事実上、黙認している状況であれば

それは「黙示の承認」に該当します。

 ・職員の健康状態にも配慮する

休憩はきちんととれたか、体調にお問題はないか、などを確認します。こうしたことは、日頃の部下とのコミュニケーションで行っておきたいところです。

Q,当法人では新卒採用・中途採用ともの計画的に行っていますが、せっかく採用しても  なかなか定着せず、早いと3か月未満で退職する人もいます。何とか定着をしていただくように取り組みを行っていますが、採用面接ではどのような点に気をつけたら良いでしょうか。

A 「採用での失敗は、育成でカバーすることは難しい」とも言われます。

どのような人を採用するか、これは言うまでもなく、事業運営の中で最も重要な事項といっても過言ではないでしょう。社員の定着のためには「定着するような人材を採用する」といった方が現実的かもしれません。しかし、実際には人手不足の際には、「応募してくれた方は、多少気になる点があってもほとんど採用する」という状況は、決してめずらしいことではありません。このようなことを繰り替えしていると「すぐに辞めるような人」を採用していることになりかねません。

それでは「辞めない人材」とはいったいどんな人材なのでしょうか。それは法人理念に共感できる職員を選ぶことです。理念に共感できるとは、法人として「大切にしたい価値観」の共有ができる方と言ってもいいかもしれません。

 現場が人手不足の状況なので、ついつい早く人を「補充」したいという考えから、候補者の過去の経験、職務のスキル、資格などを重視した基準で採用を決定する場合も多いと思います。ただ、結果として、このような情報は、意外とあてにならないという経験をされた経営者も多いのではないかと思います。そこで、重要なのは「その方の価値感が法人の価値観や考え方に合うかどうか」ということになるのですが、問題はそれをどのように見極めるか、ということになります。もちろん、価値観が垣間見れるような質問内容を、事前にしっかり準備しておく必要がありますし、その結果を面接官複数の目で見て、客観的な指標にまで落とし込んでいくことをお勧めしています。

 

一方、候補者もそれなりに準備をして面接に臨みますので、なかなかホンネの部分までは見極めるのは難しいものです。ある法人の理事長は、法人創設の経緯や経営理念をできる限りわかりやすく、そして何度も何度もしつこいぐらいに伝え(これが重要ということです)、それを聞いている表情や反応で、十分判断できるということをおっしゃいます。また、ある施設長は、事前に施設見学(かなり細部にわたる現場見学)を行っていただき、そこで感じた内容を、どれだけ自分の言葉で伝えられるかをみている、と言います。このような方法ですと、事前の準備ではなく、過去の経験が本人の言葉で出てくることが多く、その方の現在の感じ方や価値観が、よりリアルに伝わってくるといいます。

下記に面接のときの質問の留意点をお伝えいたしますのでご参考にしてください。

 

  • 具体的な内容を質問する

 漠然とした回答ではなく、具体的な回答を聞くことで本音を見出します。

 ・「なぜこの仕事を選んだのか、人の役に立つとはということは、どういうことなのか

  具体的に言ってください」

 ・「採用された場合、あなたの能力をどういった仕事に活かしたいですか。具体的にこたえてください」

  • 人間関係についてどう考えているか確認する。

 人間関係の関する質問は、入職後のトラブル回避にためにも非常に重要です。

 ・「入職後、法人とあなたの方向性や想いが異なる時、あなたはどのようにしますか?」

 ・「同僚との意見が食い違う場合、あなたは意見を通しますか、黙りますか、また通すとしたらどんな方法で?」

  • 求職者からの質問を引き出す

 面接試験で一通り質問が終わったら、必ず求職者に対して質問がないか確認します。面接が終わったという安心感から本音が見え隠れすることがあり、人間性を確認できることもあるようです。求職者が質問する内容は、採用された場合のことを想定していることが多いため、「どの部分に興味を示しているか=本当の志望動機」がわかることも多いように思います。

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