クリニックの職場でもたまにある「突然出勤しなくなった職員への対応」
1,就業規則の自動退職規定を確認する
職員が突然、出勤しなくなり、携帯にも出ず、音信不通となることが増えています。万が一そのような職員が発生したときに、問題なく対応する方法をお伝えします。
本来退職は、本人から退職する旨の意思表示が無ければ、原則、退職の手続きを行うことはできません。
しかし、就業規則の退職に関する理由の項目で「一定期間、行方不明、無断欠勤となった場合に自動退職となる旨」の規定があれば、退職の手続きを行うことが可能になります。
その理由は、就業規則をあらかじめ職員に周知することで、職員から包括的に同意を得られているということになるからです。
従って、院長は、まずクリニックを確認し、退職の手続きを進めるようにしてください。
2,出勤しなくなった職員の所在を確認する
院長は、無断欠勤が2~3日続くようであれば、必ずその職員の自宅を訪れ(他の職員に代理で行かせてもよい)所在を確認するようにします。
自宅にいる気配があるかないかによっても、その後の対応が変わります。寮や社宅の場合で、荷物をまとめて出て行ったのであれば、黙示の退職意思表示ともとれますので、その場合には退職の手続きを進めることになります。
出勤しなくなった原因は「事故に遭遇した」「事件に巻き込まれている」「家庭の問題」「多重債務問題」「心の病発症」など様々なものが考えられます。
仮にその原因が職場の人間関係や仕事によるものであれば、クリニックの責任が問われることもありますので、そのまま放置することは避けてください。
場合によっては身元保証人に連絡をとったり、捜査に協力することも必要になります。
クリニック側は、職員の行方不明や無断欠勤中に連絡をとるための努力をしたという形跡(エビデンス)を必ず残し、後でクリニックの対応が問題にならないようにしなければなりません。
院長は、専門家としっかり連絡をとり、法的なトラブルを起こさないように対応を進めてください。
3,退職をメールで伝えてきた場合
退職の申し出について、多くのクリニックでは「言った」「言わない」のトラブルを避けるために、口頭での退職の申し出を避け、文書(退職願)を提出させる方法をとっています。
メールは文章の類ではありますが、第三者が本人になりすまして作成、送信することも想定されます。
本人からのメールであっても、最近は自分の気持ちを簡単に伝えるツールとして、SNSがよく利用されます。その瞬間の気持ちを伝えることが目的であることから、その内容が一過性のものであることが少なくありません。
通常、職員がメールで退職の旨を伝える相手は、同僚や先輩の職員が多いものです。
しかし、院長など人事権をもったものでない限り、退職の承諾は出来ませんので、同僚や先輩職員あてのメールは、退職の申し出先としては適当ではありません。
退職の申し出は、口頭でも効力は認められますが、退職という重大な事項について、本人が相違ないものとしての署名・捺印した文書(退職願)を提出させることが必要となりますので、仮にメールでの意思表示を受けた場合でも、正式には退職届を提出するよう指導してください。