クリニックの勤怠管理【タイムカードの打刻時間が労働時間か】
厚労省から平成13年に出されている「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」のガイドラインでは下記内容が定められています。
- 労働日ごとに、何時から業務を開始し、何時に業務を終了したかを確認し、記録すること。
- 使用者が自ら確認し記録するか、タイムカード、ICカードなどの客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
- 労働者の自己申告とする場合には、労働時間の実態を正しく記録し、適性に申告するように十分に説明すること。必要に応じて実態調査をすること。
- 労働時間の記録に関する書類は、3年間保存すること。
とあります。全ての事業所は、このガイドラインに沿った管理が求められているということを、まずご理解いただきたいと思います。
一方で、多くのクリニックや医療機関の管理方法をみると、出勤簿を自己申告させていますが、タイムカード等の客観的な記録と自己申告された時間に乖離が生じているケースが多々あるようです。時間外申請はほとんど出てないのに、タイムカード記録は所定労働時間をかなり超過しているケースもあります。これらの要因として・・・
- 業務と位置付けられる院内研修や勉強会が業務として申告されていない
- 看護師の「前残業」が常態化している
- 業務はほとんどしていないが、おしゃべりなどで時間を費やしている 等
結果としてこの状況は先述のガイドラインにおける2、3に抵触することになっています。
タイムカードの打刻時間が労働時間か?
この問題については多くの判例がありますが、「イエス」か「ノー」は明確に定まってはいません。ただ傾向としては「ノー」が優勢ですが、適切管理を怠ると「イエス」とみなされますよ、ということが言えます。
「ノー」の優勢説については、タイムカードは単に事業所内における滞在時間を示しているにすぎず、「労働時間を記録するものではなく、勤怠管理のための記録にすぎない」というのが一般的な考え方です。だから労働時間として残業の対象にすべきかは、タイムカードの時間からは画一的には決められないという考え方です。
一方「イエス」優勢説については、例えば残業の許可を出さずに残業している職員を放置しているなど、管理者が時間管理を怠っていたために、タイムカードの記録がそのまま労働時間とみなされた裁判例もあります。
ただ、そうはいっても「おしゃべりばかりしていて時間を過ごしていた」「指示もしていないのに職員が勝手に残業をしていただけ」といった言い分が管理者にもあります。そうであるならばなおさら、タイムカードだけではなく、それ以外の方法でも労働時間の実態を適正に把握し管理する必要があります。
それでは、クリニックにはどのような管理方法が必要なのか。
タイムカードの記録は、出勤・退勤時刻の記録であり、始業・終業の記録ではありません。
始業・終業の記録を自己申告で行っている場合、双方にどれだけの時間の差異があるのかを管理者は常に管理しなければならないことになります。その時間の差異が認められた残業の場合には所定外残業時間として賃金を支払いますが、残業申請が無い場合には残業とは認められないので賃金の支払いはないということになります。
ただし、その差異時間が不合理に大きくなると(例えば30分以上など)その時間も実際は仕事をさせていたのではないかとみなされ、未払い残業代を支払うことにもなりかねません。
従って、その差異時間について管理者は常に管理しておかなければならないとともに時間外申請、承認手続きも適正に行われるよう指導する必要があります。
クリニックの勤怠管理【タイムカードの打刻時間が労働時間か】まとめ
- 厚労省のガイドラインでは「ICカード等の客観的な記録と自己申告の整合性」を求めている。
- 労働時間管理が適切に行われない場合にはタイムカード打刻時間が労働時間とみなされてしまう可能性もある
- 管理者は時間外申請、承認手続きを適切に行いながらエビデンスを残し、実態を常に把握しておく必要がある。