クリニックのスタッフが安心して働ける職場環境を整備する
理想のクリニックを作るためには、まず労働環境から整えることが大切です。風通しが良くて、明るい雰囲気をもつ職場でなければ、安心して長く務めることはできません。またクレーマー対応などのイレギュラーな対応が発生したときにも、職場の信頼関係がとても大切になります。
労働環境を整えるためには何が必要でしょうか。それは職場の「制度」と「風土」の双方がとても大切だと思います。このブログでは、「就業規則、人事評価制度、賃金テーブル等の賃金制度」といった職場の「制度」についてまずお伝えし、そのうえで職場の「風土」づくりについてもお伝えしていきたいと思います。
最初に職場の制度として最も重要になる「就業規則」について確認していきましょう。
就業規則をブラッシュアップし続ける
就業規則とは、院長とスタッフの最低限の取り決めのようなものです。また、何か問題が起きた時にはクリニックにとって最後の盾となります。それほど重要なものであるにも関わらず、就業規則をじっくりと読んだことのない院長も少なからずいらっしゃいます。実際のところ、労働環境は日々変化しているにも関わらず、開業時から就業規則を一度も変更したことが無いという職場も散見されます。その状態では、万が一、労働問題などが起きた時には反論の余地が無いような状況にもなりうるのです。「これまで当院では労働事件になったことはない」のはたまたまであって、将来における安心を担保するものではありません。
就業規則は運用が肝要
就業規則は、ニーズに合わせて内容を修正すれば足りるというものではありません。作成と同時に運用が大事です。
“運用が職場のもの”になっていない就業規則とは
- 職員にみせられていない(周知されていない)
- 労基署へ届けられていない(職員数10以上でも)
- 事案対応を相談するするときに参照にしない
- 実際の運用とは異なった定めになっている
- 人事措置をとろうとしてもあてにならない
- トラブルや紛争で、足をひっぱることばかり
まず就業規則はそれがスタッフ全員に周知されていなければなりません。つまりスタッフがいつでも閲覧できる状況にあることが必要です。院長室の棚に置いてあるだけでは周知があったとは評価されず、就業規則の効力が否定されることもあり得ます。実際の裁判例でも周知性の有無で争われたケースもあります。
また運用という観点からすれば、実際の労務管理が就業規則に基づいて運用されているかという点も重要です。いくら就業規則に定めがあっても、実際の運用が無ければ実際の運用を基礎に判断されてしまいます。
例えば、残業の扱いで、就業規則では残業を許可制にしている場合でも、現場の多忙のために、許可の申請、承認といったプロセスがとられなくなった場合で、残業を黙認しているケースがあります。この状態でスタッフから残業代を請求されれば、「許可をしていない」と反論しても後の祭りです。就業規則が許可制であっても、事実として許可制が運用されていなければ、許可制の効力が否定され「残業代を支払なさい」という判断がなされるであろうと思われます。
就業規則を“職場のもの”にするために
- とにかく周知する
- すぐ参照する
- どういうつもりでそう言っているのか、かみ砕いて説明する(解釈を示す)
- 今のままの定めでいいのか、議論する
- 変更して、自分たちにとって納得できるものにする
就業規則は職場ルールの中核となるものです。注意しすぎることはありません。是非、内容と運用を見直してみることをお勧めしたいと思います。
⇒クリニック・医療業界の経営 | 社会保険労務士法人ヒューマンスキルコンサルティング (hayashi-consul-sr.com)
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